圧電フィルムを用いた
フレキシブルパラメトリックスピーカ
Flexible Parametric Speaker using Piezoelectric Film
1W110390-6 二宮 昂士郎 指導教員 及川 靖広 教授
NINOMIYA Koshiro Prof. OIKAWA Yasuhiro
概要:パラメトリックスピーカは,超音波を使うことで鋭い指向性を持たせることができるスピーカである.一般的 なパラメトリックスピーカは,圧電素子を用いた超音波振動子を基板に複数個並列接続して配置したアレイ構造をと ることが多い.一方,PVDFなどの圧電フィルムも存在する.本研究では,圧電フィルムの持つ柔軟性,一体性に着 目したフレキシブルパラメトリックスピーカの作成を目指す.共鳴現象により圧電フィルムの共振周波数を超音波帯 域にする金属板共振型スピーカの優位性を示す.コーン型金属板を用いることによる,超音波の音圧レベルの向上を 示す.可聴音信号と超音波復調信号の同時駆動が可能であることを示す.
キーワード:指向性スピーカ、超音波、非線形音響,共振
Keywords: Directional Speaker, Ultrasonic, Non-linear acoustic,resonance
1.
ま え が き
パラメトリックスピーカ[1][2]は,超音波を使うことで 鋭い指向性を持たせることができるスピーカである.超 音波を搬送波とした変調信号である超音波変調信号を発 生させると,空気中の非線形特性により可聴音が復調さ れる.その指向性の鋭さから,特定の狭い範囲にいる人 間に音を流すことができる.パラメトリックスピーカは,
口径の小さな超音波振動子を基板に複数個並列接続して 配置したアレイ構造をとることが多い.超音波振動子に は,電圧を力に変換する圧電効果を利用した圧電素子が 用いられている. 一方,PVDFなどの圧電フィルムも 存在する.圧電素子と同様の圧電効果を持ちながら,従 来の圧電素子と比較すると大面積であり柔軟性に優れた 素材である.この圧電フィルムをパラメトリックスピー カに用いれば,スピーカ全体を一枚のフィルムで構成す ることができ,小型超音波振動子を並べたパラメトリッ クスピーカに比べて製造容易性が高い.また,フィルム 状の形状を活かし,鋭い指向性を持つパラメトリックス ピーカを変形させることで多様な指向性を持つスピーカ の実現が期待される. 本研究では,圧電フィルムを用い たフレキシブルパラメトリックスピーカの実現に向けて,
構造の検討,応用方法について報告する.
2.
圧電フィルムを用いたパラメトリックス ピーカ
圧電フィルムを用いたパラメトリックスピーカを作成 するためには,圧電フィルムの共振周波数を超音波帯域 にする必要がある.本研究で用いた,圧電フィルムであ るPVDFの共振周波数は超音波帯域には程遠いため,共 鳴現象を利用することが非常に重要である.圧電フィル
ムを超音波帯域で振動させる方法として,金属板共振を 利用する方法が挙げられる.共振周波数が超音波帯域で ある金属板を圧電フィルムに接着し,圧電フィルムの振 動を駆動元として金属板を超音波帯域で共振させる.そ の構造を図–1に示す.圧電フィルムの共振周波数は金属 板の固有振動数にのみ影響を受けるため,制御がしやす い.また,圧電フィルムに金属板を接着するだけの構造 であるため,製造容易性が高い.また,フィルムに小さ な金属板が複数接着されている構造であり,フィルムの 形状を維持でき,形状の変化が可能なスピーカの実現が 期待される.
図–1: 金属板を用いた構造
3.
金属板共振型フレキシブルパラメトリックス ピーカの検討
金属板100枚を圧電フィルムに接着した金属板共振型 フレキシブルパラメトリックスピーカと,コーン付き金 属板を50枚接着したコーン付き金属板共振型フレキシブ ルパラメトリックスピーカを作成した.それぞれ図–2, 図–3に示す.図–4,図–5に,周波数特性を示す.図–4 と図–5を比べると,コーン付き金属板共振型フレキシブ ルパラメトリックスピーカの方が共振が強く表れている.
また,100枚の振動板から成る金属板共振型フレキシブ ルパラメトリックスピーカに比べて,50枚の振動板から 成るコーン付き金属板共振型フレキシブルパラメトリッ クスピーカの方が高い音圧レベルの超音波を出せること がわかる.可聴音を復調させるには高い音圧レベルの超
音波を出すことが重要であるため,コーン付き金属板共 振型フレキシブルパラメトリックスピーカの優位性が確 認された.
図–2: 金属板共振型フレキシブルパラメトリックスピー カ
図–3: コーン付き金属板共振型フレキシブルパラメト リックスピーカ
図–4: 金属板共振型フレキシブルパラメトリックスピー カ
図–5: コーン付き金属板共振型フレキシブルパラメト リックスピーカ
4.
可聴信号と超音波変調信号の両方での駆動
単体の圧電フィルムは,超音波帯域の音は出ないが,可 聴帯域の音は再生されることから,コーン付き金属板共 振型フレキシブルパラメトリックスピーカの可聴信号と 超音波復調信号での同時駆動を確認した.可聴音である 1.5kHz正弦波と,56kHz超音波を4kHz正弦波でAM 変調した信号を1:3の割合で足し合わせた信号で駆動し た時の周波数特性を図–6に示す.図–6より,可聴音で
ある1.5kHz正弦波と超音波による復聴音の4kHz正弦 波が同時に再生されていることがわかる.また,それら は発音の効率が大きく異なることが確認できる.この測 定より,コーン付き金属板共振型フレキシブルパラメト リックスピーカの可聴音信号と超音波変調信号での同時 駆動が可能であることが確認された.
図–6: 可聴信号と超音波復調信号を同時駆動したときの 周波数特性
5.
む す び
本研究では,圧電フィルムを用いたフレキシブルパラ メトリックスピーカの作成に向けた構造の検討を行った.
制御のし易さ,製造容易性の観点から金属板共振型スピー カの優位性が確認され,形状を変化させることのできる フレキシブルパラメトリックスピーカの実現が可能であ ることが確認された.金属板共振型スピーカを更に発展 させ,コーン付き金属板共振型スピーカを作成し,周波 数特性を計測した.コーン付き金属板を用いることで,
パラメトリックスピーカにおいて重要である超音波の音 圧レベルの向上が確認された.また,可聴音信号と超音 波復調信号を同時駆動した結果,金属板共振型フレキシ ブルパラメトリックスピーカには通常のスピーカとパラ メトリックスピーカの特徴があることが確認された.こ れにより,スピーカの帯域別駆動などが期待される.圧 電フィルムを用いたフレキシブルパラメトリックスピー カの性能を向上させるために,超音波の音圧レベルの向 上,指向性の改善などが課題となる.金属板の数増しに よって課題の解決が期待される.今後は,金属板単体の 指向性を改善し,形状がフィルム状であることを活かし た多様な指向性を持つパラメトリックスピーカの構造を 検討していく所存である.
参 考 文 献
[ 1 ] Masahide Yoneyama, Jun-ichiroh Fujimoto, ”An Appli- cation of Nonlinear Interaction of Sound Waves to a New Type of Loudspeaker Design,” J.Acoust.Soc.Am. Vol.73, No.
5, 1532-1536 May 1983.
[ 2 ] 米山正秀,河面ゆう,藤本潤一郎, ”非線形パラメトリック作用の スピーカへの応用,”電子通信学会技術研究報告Vol. 81, No. 237, 41-48(EA81-65), 1982年1月.
[ 3 ] James J. Croft, Chief Technology Officer Joseph O. Nor- ris, Non-Linear Acoustics, Theory, History and The Ad- vancement of Parametric Loudspeakers Rev. E ,American Technology Corporation, 2001-2003