海外の食肉や内臓肉の生食実態に関する基礎的情報 の収集支援業務 報告書
2013 年 10 月
人間・生活研究本部
目 次
1. 実施の目的・内容 ... 1
2. 方法 ... 2
3. 調査結果 ... 3
3.1 各国の生肉料理について ... 3
3.1.1 世界各地の食肉調理法の種類の割合 ... 3
3.1.2 先進国における食中毒対策事例 ... 15
3.2 規制・監視等方法の把握 ... 21
3.2.1 米フロリダ州・コロラド州の事例 ... 21
3.2.2 韓国の事例 ... 24
4. まとめと今後の課題 ... 28
1. 実施の目的・内容
2011
年、牛のユッケの生食により複数の死者と多数の患者が発生した集団事例が起きた ことから、牛生食肉によるヒトへの健康被害に関するリスク評価が行われ、その結果として 厳しい規格基準が施行されるとともに、牛肝臓の生食が禁止されたところである。一方、海 外においてもタルタルステーキやユッケなど、郷土料理・伝統料理に供する調理方法として 動物の食肉や内臓肉を生で食することがあり、ここでの食中毒防止のための規制等の内容や 考え方が我が国にも参考となる可能性がある。そこで本業務は、動物の食肉や内臓肉を生で食する実態の基礎的調査として、海外におけ る牛、豚、鶏、野生動物などの食肉や内臓肉の生食の習慣に関する情報の収集・整理を行う ことを目的とする。
2. 方法
海外における牛、豚、鶏、野生動物などの食肉や内臓肉の生食の習慣や、この料理に伴う 食中毒事例を把握するため、インターネットおよび論文情報や大使館への照会によって、事 例情報の収集を行った。ここで、生肉は哺乳類の肉で、火を通していないものと定義した。
(1) 料理に対する調査
料理名
料理の写真
当該料理が食べられている国や地域
料理の概要(原材料、調理方法、食べ方、食べるタイミングなど)
主な消費者
消費量
(2) 当該料理による食中毒の調査
食中毒事例
食中毒防止対策
(3) 調査方法
web
調査(料理に関する調査)調査の第一段階として「生肉」「生食」のような検索キーワードを用い、生肉料理の 名称を調査した。その後、検索された料理名をもとに再度検索を行った。
web
調査(当該料理による食中毒の調査)各国食品安全、健康管理管轄組織の
HP
や、GIDEON等のHP
を使用し、各料理の喫 食に起因する食中毒事例及び食中毒対策に関して調査を行った。 論文調査
GIDEON
による調査で示された論文をPubMed
等で収集し、食中毒事例等に関して調査を行った。
web
調査で把握された内容に関する大使館への聞き取り各国大使館に電話または書面にて質問を行った。質問事項は以下の通りである。
食肉や内臓肉の生食の習慣について
• 郷土料理や伝統料理等における食肉や内臓肉の生食の習慣の有無
• 当該料理の概要:料理名、原材料、調理方法、食べ方や主に食べられている地 域、消費量 等
食肉や内臓肉の生食に関連した食中毒対策について
• 食中毒発生状況:発生件数、食肉や内臓肉の生食に関連した食中毒事例 等
• 食中毒防止対策の概要:所管官庁、関連法令、食中毒対策の具体例(例:消費 者への啓発、衛生指導、抜き打ち検査の実施等)、食中毒対策に対する考え方
(例:自己責任) 等
3. 調査結果
3.1 各国の生肉料理について
3.1.1 世界各地の食肉調理法の種類の割合
図表 3-1に世界各地の食肉の調理法の割合を示す。これは『週刊朝日百科』90冊中の郷 土料理、行事食の中から、世界の肉料理のすべてを(約
1,400
種類)抽出し、肉料理の種類 によって分類し集計したものである1。図を見ると、世界的に肉の調理時には肉を加熱する 傾向が強いことが分かる。また、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南アメリカにおいて生肉 料理の存在が確認できる。図表 3-1 世界各地の食肉調理法の種類の割合2
(1) 生肉料理一覧
情報を収集した諸外国の生肉料理の一覧を図表 3-2に示す。
図表 3-2 収集した生肉料理一覧
地域 料理名 料理名(英語表記) 主に喫食されている
国 原料動物
アジア ユッケ yukhoe 韓国 牛
ソックレック sok lek タイ 牛
1 下村道子, 肉の文化と調理科学, 平成10年度「食肉と健康に関するフォーラム」委員会報告書: 47-70
2 食肉なんでも大図鑑〈http://jbeef.jp/daizukan/encyclopaedia/article.html?encyclopaedia_article_id=665〉(最終 検索日:2013.8.21)
クッベナイエ kibbeh nayyeh レバノン 羊 チーキョフテ cig kofte トルコ 牛
ヨーロッパ
タルタルステーキ steak tartare フランス 馬・牛
メット mett ドイツ 豚
カルネクルーダ carne cruda イタリア 牛 カルパッチョ carpaccio イタリア 牛 タタラーク tatarak チェコ 牛
アフリカ
キットフォー kitfo エチオピア 牛 デュレット dulet エチオピア 牛 テレスガ tere sega エチオピア 牛
(2) 諸外国の生肉料理の特徴
図表 3-2で示した各料理の調査結果を以下に示す。未調査の箇所には-(ハイフン)と表 記している。
1)アジア
1.料理名 ユッケ 2.料理の写真[2]
3.国や地域 韓国
4.概要 赤身の牛肉を細切りにし、生のままし
ょうゆ・ごま油・コチュジャン・おろ しにんにく・すりごまなどと和えたも のの上に卵黄をのせたもの。せん切り にした梨(なし)や松の実を添えること が多い。よく混ぜてから食べる。[1]
5.消費者 -
6.消費量 -
7.食中毒事例 2011年4月から5月の食中毒事件(日本)
8.食中毒対策 -
出所 [1]和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典
〈http://kotobank.jp/dictionary/worldcook/〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] 福岡食い倒れ食べ歩きグルメ
〈http://mirukurukurumi.blog92.fc2.com/blog-date-200811.html〉(最終検索日:2013.7.30)
1.料理名 ソックレック 2.料理の写真[1]
3.国や地域 タイ
4.概要 タイの北部、東北部(イサーン)の料
理である。牛または豚肉の生肉のサラ ダ。肉を細かく切り、様々な香辛料・
調味料で味付けしてある。特徴とし て、調味料に牛の血を加えていること が挙げられる。味自体はユッケに近 い。結婚式や祭りなどのイベント以外 ではあまり食べられない。[1][2][3]
5.消費者 イサーン地方以外の南部、中央部では
あまり食べられていない。
6.消費量 -
7.食中毒事例 免疫のない日本人が食べると、お腹を壊す確率が非常に高い[1]
8.食中毒対策 -
出所 [1] アロイ!!タイ料理〈http://www.cook-thailand.net/cuisine43.html〉(最終検索日:
2013.7.30)
[2] ソックレック知ってる?〈http://30min.jp/item/7356744〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] Yahoo!知恵袋
〈http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11109616006〉( 最 終 検 索 日 : 2013.7.30)
1.料理名 クッベナイエ 2.料理の写真[1]
3.国や地域 レバノン
4.概要 羊の生肉に各種スパイスを入れて叩
いたもの。レバノン風サラダ(タブー レ)や生玉葱と共に食べる。食べる頻 度は高くなく、高級レストランでしか 食べられない。[1]
5.消費者 高級レストランでしか食べられない
6.消費量 -
7.食中毒事例 -
8.食中毒対策 -
出所 [1] ぴよぴよ三兄妹☆親ばか日記
〈http://harukovsky.cocolog-nifty.com/blog/cat20990913/index.html〉( 最 終 検 索 日 : 2013.7.30)
1.料理名 チーキョフテ 2.料理の写真[3]
3.国や地域 トルコ
4.概要 キョフテとはトルコ風ミートボール
のことであり、幅広い範囲で定番の料 理である。一般的なキョフテは焼く、
煮るなどをして火を通すが、チーキョ フテは生肉を使用する。引き割り小麦 を香辛料や生肉と一緒に練って作る。
ケバブ屋などで、前菜や酒のつまみと して登場することが多かったが、最近 は専門店が人気を博し、薄いパンで巻 いてラップサンドにして食べる、ファ ーストフード化が進んでいる。[1]
5.消費者 一般的に食べられている
6.消費量 -
7.食中毒事例 2004年イズミルでチーキョフテを食べた100人以上が食中毒を起こし、入院した。[4]
8.食中毒対策 肉の代替としてジャガイモを使用した肉無しチーキョフテが販売されている[2]
出所 [1] 地球の歩き方
〈http://tokuhain.arukikata.co.jp/istanbul/2006/05/post_8.html〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] イスタンブール写真日記
〈http://blog.livedoor.jp/istanbulcafe/archives/51867141.html〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] トルコ暮らし綴り
〈http://www.geocities.jp/turkey_spicylife/cigkofte.html〉(最終検索日:2013.7.30)
[4] effects of Gamma irradiation on Microbial Safety and Sensory Quality of 'Cig Kofte'(Raw Meatball)
2)ヨーロッパ
1.料理名 タルタルステーキ 2.料理の写真[3]
3.国や地域 フランス
4.概要 牛肉(ヒレやランプなど脂肪が少なく
やわらかい部位を用いる)を生のまま 細かく刻んで塩・こしょうなどで調味 し、丸く形を整え、パセリ・たまねぎ・
ケイパーなどの薬味やケチャップ・マ スタード・ウスターソース・オリーブ オイルなどを添えた料理。肉の中央に くぼみを作り、そこに卵黄をのせるこ とが多い。薬味などは、好みに応じて 肉に混ぜ込みながら食べるが、はじめ から混ぜて作ることもある。[2]
昔は馬肉で作られていた。[3]
5.消費者 一般的に食べられている
6.消費量 オランダ9.3×106kg/年[1]
一人一年あたり約600g
7.食中毒事例 2008年12月から2009年1月の期間中、オランダにてタルタルステーキを食べた20
名が食中毒を発症
1985年8月から10月の間、生、軽く火を通した馬肉を食べた2名が食中毒発症。[4]
8.食中毒対策 -
出所 [1] Nauta MJ, "Risk assessment of Shiga-toxin producing Escherichia coli O157 in steak tartare in the Netherlands", RIVM Rapport; 2001
[2] 和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典
〈http://kotobank.jp/dictionary/worldcook/〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] wikipdia
〈http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%AB
%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%AD〉(最終検索日:2013.7.30)
[4]CPHAZ, "Fact sheet-Steak Tartare", University of Guelph
1.料理名 メット(メッツヴルスト) 2.料理の写真[2]
3.国や地域 ドイツ
4.概要 生ソーセージの意。塩コショウやハー
ブなどで味をつけたペースト状の豚 挽き肉で、パンに塗って食べる。
5.消費者 一般的によく食べられている
スーパー等でも購入可
6.消費量 約2.5kg/年
rohwurstの一人当たり年間消費量(正
確には生産量)は 5.5kg。rohwurstは 大きく分けて二種に分類できるため、
半分の約2.5kgとした。[3]
7.食中毒事例
1982
年アイフェル川ほとりのビトブルクにて自宅で屠殺した豚肉を使用したメットを食べた
402
人が食中毒を起こした。[4]8.食中毒対策 『ドイツには獣医師が検査した生食用の豚肉が流通しているって聞いた
ことがあります』[1]
『ドイツでは「無菌豚」の生肉が食べられるとは噂で聞いていましたが、今回初めて 食べてみました。何でも、法律で定められた基準を満たす環境で育てられた豚を利用 したものらしく、午前中等の限られた時間帯しか出さないお店が多いのだとか。見た 感じは挽き肉そのものですが、塩や香辛料が効いていて、玉ねぎをまぶした状態でパ ンに挟んでありました。味はなかなか美味しかったですし、ドイツの人は普通に食べ ている料理のようです』[5]
出所 [1] FLIGHT LOGBOOK~パイロットの日記~
〈http://f.hatena.ne.jp/flyingtony/20130117090431〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] 噂の豚の生肉料理「メット」を食べてみた
〈http://www.excite.co.jp/News/bit/E1372150154304.html〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] inter meat HP〈http://www.intermeat-tradefair.com/〉(最終検索日:2013.7.30)
[4]"Opinion of the Scientific Panel on Biological Hazards on the 'Risk assessment of a revised inspection of slaughter animals in areas with low prevalence of Trichinella'",The EFSA Journal; 2005, 200
[5] 卒煙魂のSmoke-Free Jorney
〈http://falconkaz.blog46.fc2.com/blog-entry-359.html〉(最終検索日:2013.7.30)
1.料理名 カルネクルーダ 2.料理の写真[1]
3.国や地域 イタリア
4.概要 北イタリアピエモンテ地方を代表す
る前菜。タルタルステーキの様なもの で、基本的に塩、コショウ、レモン、
オリーブオイルで味付けされる。チー ズを乗せることもある。[1]
5.消費者 -
6.消費量 -
7.食中毒事例 -
8.食中毒対策 -
出所 [1]ラリベラのイタリアかぶれ〈http://www.mytokachi.jp/lalibera/entry/13〉(最終検索日:
2013.7.30)
1.料理名 カルパッチョ 2.料理の写真[2]
3.国や地域 イタリア
4.概要 牛肉の脂身の無い部分(もも肉)を紙
のように薄くスライスしたもの。塩コ ショウ、オリーブオイルとレモンで食 べる。[1]
5.消費者 -
6.消費量 -
7.食中毒事例 -
8.食中毒対策 -
出所 [1] 和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典
〈http://kotobank.jp/dictionary/worldcook/〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] Mikageマダムの夕食レシピ2006~
〈http://mikage-madame.cocolog-nifty.com/photos/meat/dsc05312.html〉( 最 終 検 索 日 : 2013.7.30)
1.料理名 タタラーク 2.料理の写真[1]
3.国や地域 チェコ
4.概要 チェコ料理のレストランやチェコ料
理の居酒屋の定番メニューとなって いる。とくに牛肉の中で一番良質とさ れるサーロインを100%使用し、生 (黄)卵、各種スパイス、好みでケチャ ップなどを混ぜる。
油で揚げ、生のにんにくを刷り込んだ パンに肉をのせて食べる[1]。
5.消費者 -
6.消費量 -
7.食中毒事例 -
8.食中毒対策 「このメニューはあなたの全責任において頼んでください。食後の体への影響につい
ては一切の責任をレストラン側は負いません」という注意書きが料理メニューに一言 書かれていることが多い。[1]
出所 [1] 阪急交通社現地情報ブログ
〈http://blog.hankyu-travel.com/kaigai/europe/east-eur/2011/088298.php〉(最終検索日:
2013.7.30)
3)アフリカ
1.料理名 キットフォー 2.料理の写真[1]
3.国や地域 エチオピア
4.概要 生肉のたたき。グレードの高い肉部位
味付けして溶かしたバターを加えて いる。カッテージチーズ添えられてい ることが多く、ごちそうとされてい る。生食のほか、軽く火を通したもの、
炒めたものもある。[1][2][3]
5.消費者 -
6.消費量 -
7.食中毒事例 『エチオピアでは飲食による寄生虫症がかなり多い。なかでも生肉は火を通さないの
でその危険性が非常に高い。現地人でさえ生肉をためらう』[2]
『衛生水準は低くインフラ整備が不十分なため,感染性腸炎,消化管寄生虫症等が常 在しています。生水,生野菜,生肉などを摂取すれば,下痢や嘔吐が起こるとお考え 下さい。』[4]
8.食中毒対策 -
出所 [1] その土地の食〈http://tabisite.com/hm/shoku/z08/〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] ボンボリーノっ◎〈http://appai.jugem.jp/?eid=1507〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] 世界の料理 NDISH〈http://jp.ndish.com/world/ethiopia/〉(最終検索日:2013.7.30)
[4]在エチオピア日本大使館〈http://www.et.emb-japan.go.jp/index_j.htm〉(最終検索日:
2013.7.30)
1.料理名 デュレット 2.料理の写真[1]
3.国や地域 エチオピア
4.概要 上述したキットフォーと同じく生肉
のたたきだが、グレードの低い肉部位
(ときにレバーなどの内臓も)を使 い、油(ときに辛みや玉ねぎ)を加え てたたきにしている。キットフォーの 半分以下の値段で食べられる。[1]
5.消費者 -
6.消費量 -
7.食中毒事例 『エチオピアでは飲食による寄生虫症がかなり多い。なかでも生肉は火を通さないの
でその危険性が非常に高い。現地人でさえ生肉をためらう』[2]
『衛生水準は低くインフラ整備が不十分なため,感染性腸炎,消化管寄生虫症等が常 在しています。生水,生野菜,生肉などを摂取すれば,下痢や嘔吐が起こるとお考え 下さい。』[3]
8.食中毒対策 -
出所 [1] その土地の食〈http://tabisite.com/hm/shoku/z08/〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] ボンボリーノっ◎〈http://appai.jugem.jp/?eid=1507〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] 在エチオピア日本大使館〈http://www.et.emb-japan.go.jp/index_j.htm〉(最終検索日:
2013.7.30)
1.料理名 テレスガ 2.料理の写真[1]
3.国や地域 エチオピア
4.概要 エチオピアの伝統料理のひとつだが、
家庭よりもレストランや大衆食堂で 食べるほうが多い。ナイフで肉を一口 サイズに切り分けたものを、バレバレ というトウガラシ調味料につけ、イン ジェラで包んで食べるのが一般的な 食べ方である。[1]
5.消費者 一般的に食べられている。
6.消費量 週に一日定期市が開かれ、新鮮な肉が
入ってくると食べる。
おめでたい日に食べるとのこと。
7.食中毒事例 『エチオピアでは飲食による寄生虫症がかなり多い。なかでも生肉は火を通さないの
でその危険性が非常に高い。現地人でさえ生肉をためらう』[2]
『衛生水準は低くインフラ整備が不十分なため,感染性腸炎,消化管寄生虫症等が常 在しています。生水,生野菜,生肉などを摂取すれば,下痢や嘔吐が起こるとお考え 下さい。』[3]
8.食中毒対策 -
出所 [1] アフリカ便り〈http://afric-africa.vis.ne.jp/essay/eat03.htm〉(最終検索日:2013.7.30)
[2] ボンボリーノっ◎〈http://appai.jugem.jp/?eid=1507〉(最終検索日:2013.7.30)
[3] 在エチオピア日本大使館〈http://www.et.emb-japan.go.jp/index_j.htm〉(最終検索日:
2013.7.30)
【参考】大使館ヒアリングによる補足情報
(2)で示した各国の生食料理が喫食されている国の在日大使館にヒアリングを依頼した結果、
韓国大使館、トルコ大使館、在日フランス大使館、在日ドイツ大使館から回答を得た。その他の 国の大使館からは回答が得られなかった。
韓国大使館及びトルコ大使館の担当者からは「質問に回答できる専門知識を持ち合わせた職員 がいないため、質問への回答は控えさせていただく」との回答を得た。一方、フランス及びドイ ツ大使館からはそれぞれ以下の回答があった。
食肉や内臓肉の生食の習慣について
<フランス>
• 欧米全体的がそうであるように、フランス人も生の肉や内蔵を特別多く食する国民で はない。
• タルタルステーキ(Steack tartare)という料理はあるが、原料や料理手法については サイトで検索してほしい。
• 喫食量や主な喫食者等々は当館では把握していない。
<ドイツ>
• ドイツで一般的に食されている代表的な生肉料理(タルタルステーキ及びメット)に ついては、以下のサイトが参考になる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Steak_tartare http://en.wikipedia.org/wiki/Mett
• ドイツでは生の内臓肉を食する習慣はない。ただし、内臓自体(肝臓、腎臓、心臓等)
は地方の名物料理の材料としてしばしば使われる。そのほとんどが加熱調理品あるい は揚げ物として供される。
• 消費量に関するデータは把握していない。
食肉や内臓肉の生食に関連した食中毒対策について
<フランス>
• フランスは EU 加盟国であるため、EU の規定及び法令を遵守する。EU には衛生パッケ ージ(Hygiene Package)という食品衛生に関する一連の EU 法令が存在する。
• 国民の食の安全・安心はフランスの農業・農産加工業・林業省にある食品総局の管轄 になる。
• フランス食品衛生安全庁の以下の英文サイトも参考になる。
http://www.anses.fr/en/content/hygiene-package
• フランス国内の食中毒発生状況は農業・農産加工業・林業省の以下のサイト(フラン ス語)にまとめられている。
「
Toxi-infections alimentaires, évolution des modes de vie et production alimentaire」
(Foodborne diseases, changing lifestyles and food production)http://agriculture.gouv.fr/IMG/pdf/Analyse_CEP_56_Toxi-infections_cle05f666.pd f
• 上記サイトでは主な食中毒菌と原因食品等に関する一覧表が掲載されており、その中
で
Toxoplasma gondii
については食肉の生食あるいは不完全加熱が主な原因食品として示されている。また、Listeria monocytogenes 等の感染予防のため、特に肉の 生食について注意を払うべき対象として妊婦、子供、高齢者や免疫不全者が挙げられ ている。
<ドイツ>
• 肉の生食に関連した食中毒アウトブレイク件数及び事例について
ドイツでは 2005 年より
BELA
システム(federal system for collecting data infood involved in disease outbreaks)
3を導入し、食中毒のアウトブレイクに関 するデータを収集、記録している。
BELA
システムは連邦リスク評価機関(Federal Institute for RiskAssessment:BfR
4)により運用されている。 収集したデータは定量的リスク評価を行うために活用される。原因食品や疫学的 な関連性を特定する他、新たな病原体や食品、喫食パターンに関連した新たなリ スクを特定するために用いられる。
2 人以上が同じ食品により食中毒を発症した場合にアウトブレイクが疑われる。
一般行政規則(AVV)「フードチェーンにおける人獣共通感染症」に基づき、各 州の規制当局は全てのアウトブレイク事例について調査を実施し、食品のモニタ リングを実施する責任がある。食中毒に関するデータは
BELA1 reporting system
でBfR
に報告される。 生肉及び生肉料理の喫食に起因する食中毒についても、「食肉、食肉製品、及び ソーセージ」というカテゴリで
BfR
によるデータの収集、評価が行われている。※BfRによって生肉の喫食に由来すると評価された食中毒事例は後述(P18)。
• 食中毒対策について
ドイツで行われる食中毒対策は全て EU の法令に適合している。
EU の食品安全に関する基本原理は
Regulation (EC) No 178/2002 laying down the general principles and requirements of food law, establishing the
European Food Safety Authority and laying down procedures in matters of food safety
5に示してある。 食品衛生に関しては、EU では以下の 3 つの主要法令から成る衛生パッケージ
(Hygiene Package)を採用している6。
- Regulation (EC) 852/2004 on the hygiene of foodstuffs
- Regulation (EC) 853/2004 laying down specific hygiene rules for food of animal origin
- Regulation (EC) 854/2004 laying down specific rules for the
organisation of official controls on products of animal origin intended for human consumption
3 BELAシステムの詳細(ドイツ語のみ)
http://www.bfr.bund.de/de/bundeseinheitliches_system_zur_erfassung_von_daten_zu_lebensmitteln__
die_bei_krankheitsausbruechen_beteiligt_sind__bela_-70495.html
4 BfRの詳細http://www.bfr.bund.de/en/foodborne_disease_outbreaks-53818.html.
5 http://ec.europa.eu/food/food/foodlaw/index_en.htm
6 http://ec.europa.eu/food/food/biosafety/hygienelegislation/comm_rules_en.htm
公的な監視
Länder
や食品のモニタリングプログラムは各州(Länder)の責任に よって行われる。食品のモニタリングや獣疫に関する規制当局は行政区画ごとに 設置され、その運用も独立している7。 消費者教育に関する連邦レベルでの啓発資料はBfRや
the Federal Office of Consumer Protection and Food Safety(
BVL)のサイト等から入手できる。7 http://ec.europa.eu/food/fvo/last5_en.cfm?co_id=DE
http://ec.europa.eu/food/fvo/controlsystems_en.cfm?co_id=DE.
3.1.2 先進国における食中毒対策事例
本調査には先進国における肉の生食に起因する食中毒への対策を今後の国内の対策策定 時の参考とするという目的がある。その点を考慮し、前章で列挙した生肉料理の中から、ユ ッケ(韓国)、タルタルステーキ(フランス)、メット(ドイツ)の
3
種類に絞り、具体的な 食中毒事例及び食中毒防止対策に関する調査を行った。(1) ユッケ
1)食中毒事例
2006
年から2008
年の5
月から7
月の期間中に国内焼肉店で15
件、82人に食中毒が 発生した。(原因食物がユッケであるとは限らない)82)食中毒防止対策
韓国医薬品食品安全庁
KFDA
による夏の食中毒注意報発令などによる消費者の意識 醸成9
KFDA
による夏期食中毒予防のためのユッケの特別収去検査の実施10KFDA
は夏期食中毒予防のため、2011年7
月の1ヶ月間に全国の飲食店177
件に対 して調理・販売されるユッケの特別収去検査を実施した。その結果病原性大腸菌が1
件検出(O-18)、衛生的取り扱いの判断指標として用いられる大腸菌が45
件検出さ れた。当該業者に対しては営業停止などの行政処分をすることが明らかにされた。図 表 3-3に関連する違反類型別行政処分基準を示す。図表 3-3 韓国における食品接客業者への違反類型別行政処分
違反類型 行政処分
衛生的取り扱い基準違反 過怠金 従業員健康診断未実施 過怠金
大腸菌陽性 営業停止
15
日及び該当食物廃棄 病原性大腸菌陽性 営業停止1
ヶ月及び該当食物廃棄 発表では177
件すべての飲食店名および住所、検査結果が公開された。同時に、以下 に示すようなユッケ調理時衛生管理要領を報道資料に添付している。〈ユッケ調理時衛生管理要領〉
伝染病や皮膚病または、化膿性疾患がある人は営業に従事しないようにする
原料肉は畜水産衛生管理法により検査を受けた畜産物を用い、入荷後ただちに冷 蔵保管(0~10℃以下)する
8 KFDA HP〈http://www.mfds.go.kr/index.do?mid=56&seq=1796&cmd=v〉(最終検索日:2013.8.21)
9 同上
10 KFDA HP〈http://www.mfds.go.kr/index.do?pageNo=2&seq=15480&mid=56&cmd=v〉(最終検索日:2013.8.21)
魚介類、肉類、野菜類を取り扱う刃物、まな板はそれぞれ区別して使用し、ゴム 手袋も用途により区別して使用する
料理に用いた食器、刃物、まな板などは使用後に洗浄・殺菌して常時清潔に維持 管理する
作業の前後やトイレ利用の後は手洗いなど個人衛生管理を徹底して行う
(2) タルタルステーキ
1)食中毒事例
2010
年生焼けのハンバーグを喫食したことに起因する志賀毒産出性大腸菌感染によ る食中毒が2
件発生。11
1998
年から2000
年にかけて生牛ひき肉または生焼けのハンバーグを喫食したことに 起因するサルモネラ菌による食中毒が69
件発生。論文では新鮮なうちに購入したか、調理済みのものを購入したか、冷凍されたものを購入したかに関わらず、火を通して いないことが食中毒の主な要因になったと指摘している。12
2003
年の3
月から7
月にかけて生の馬肉を喫食したことに起因するサルモネラ菌に よる食中毒がフランス北部で少なくとも6
件発生。13
1993
年12
月に生または軽く火を通した馬肉を喫食したことに起因する旋毛虫症によ る食中毒が538
件発生142)食中毒防止対策
フランス食品環境労働衛生安全庁
ANSES
による調査15フランスでは
2009
年に1255
件の食中毒が確認されており、約14000
人が罹患したと 見積もられている。このうち40%以上が自宅での調理中に生じたものであるため、
アンケートによる自宅での食品への関わり方の調査を開始することを決定した。
(2013/5/28)このアンケートでは食品の購入から保存、調理、食べ方といった食品 の消費にかかわる全段階を網羅していると述べられている。
ANSES
による呼びかけ1611 King LA, et al. "Family outbreak of Shiga toxin-producing Eschericha coli O123:H-, France, 2009", Emerg infect Dis 2010 Sep; 16(9): 1491-3
12 Haeghebeart S, et al. "Minced beef and human salmonellosis: review of the investigation of three outbreaks in France", Euro Surveill 2001 Feb; 6(2): 21-6
13 Espie E, et al. "An outbreak of multidrug-resistant Salmonella enterica serotype Newport infections linked to the consumption of imported horse meat in France", Epidemiol Infect 2005 Apr;133(2):373-6
14 Ancelle T, et al. "A multifocal outbreak of trichinellosis linked to horse meat imported from North America to France in 1993", Am J Trop Med Hyg 1998 Oct; 59(4):615-9
15 ANSES HP〈http://www.anses.fr/en/content/anses-launches-survey-french-hygiene-habits-kitchen〉(最終検索 日:2013.8.21)
生肉、生卵を調理した際には必ず手や食器を洗うこと。高齢者、疾病罹患者、免疫機 能が低下している人、小児及び妊婦は生肉や生卵を消費しないこと等の呼びかけを行 っている。
欧州食品安全機関
EFSA
による指導17調理中の肉に温度計を差し、中心温度を測定、一定の温度が一定時間継続することを 確認するように指導している。
消費する直前に調理する18
高級レストランではテーブルのそばで調理を行う。また、挽き肉器を所持している家 が多く、自宅で挽いてタルタルステーキを作る家もある。
(3) メット
1)食中毒事例
2004
年ドイツ全土にわたり生豚ひき肉の消費に伴う食中毒が115
件発生した。19 ドイツのニーダーザクセン州で症例対照研究が行われ、散発的なサルモネラ感染と生 豚挽き肉の喫食には関連があることが示された。一方で卵や鶏肉を含む食品の喫食の 影響は予想よりも低い結果となった。論文中ではこの原因は卵や鶏肉がサルモネラ症 の要因になるという消費者の認知度が向上しているためであるとしており、生豚挽き 肉によるサルモネラ感染を減少させる施策が必要だとしている。20
1998
年11
月から1999
年1
月にかけてドイツで生ソーセージの消費に伴う旋毛虫症 が少なくとも38
件発生した。生ソーセージは食品メーカーによって大量生産された ものであった。論文では感染した個体から製造された製品が地元で消費されることに よる従来の食中毒とは性質が異なると指摘した。また、ドイツでは1937
年から旋毛 虫の全頭検査が義務付けられているが、4千万頭に3頭以下という非常に低い感染率 のために検査員の疲労や経験低下を招いたのではないかと述べられている。視覚検査 を含む現在の検査工程ではすべての旋毛虫を取り除くことは困難であると指摘して いる。21 ドイツでは
2001
年から2008
年までの間、47627
件のエルシニア症が確認されている。16 ANSES HP〈http://www.anses.fr/en/content/salmonellosis〉(最終検索日:2013.8.21)
17 EFSA HP〈http://www.efsa.europa.eu/〉(最終検索日:2013.8.21)
18 wikitravel〈http://wikitravel.org/en/France〉(最終検索日:2013.8.21)
19 Jansen A, et al. [Nation-wide outbreak of Salmonella Give in Germany, 2004], Z Gastroenterol 2005 Aug;43(8):707-13
20 Ziehm D, et al. "Risk factors associated with sporadic salmonellosis in adults: a case-control study", Epidemiol Infect. 2012 apr 23:1-9
21 Centers for Disease Control and Prevention,"Trichinellosis Outbreaks -Northrhine- Westferia, Germany, 1998-1999", MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1999 Jun 18; 48(23): 488-492
各年代で感染する割合が最も高いのは
5
歳以下の小児であり、論文ではエルシニア症 の主要な要因は生豚挽き肉であると結論付けている。そのため、小児には生豚挽き肉 を喫食しないように保護者が指導すべきであると指摘している。22
BfR
によって明らかに生肉の喫食に由来すると評価された食中毒事例は以下の通り である。23年次 食中毒事例
2007 ・塩漬け及び燻製豚肉製品によるCl. Botulinum
・塩漬け及び燻製鶏肉製品によるS. Bovismorbificans
・塩漬け及び燻製豚肉製品及び生ソーセージによるTrichinella spp.
・味付けされた豚ひき肉によるSarcocystis spp.(?)
2008 ・生卵を添えた味付け豚ひき肉(生食)によるSalmonella Enteritidis
・一部に生卵が混ぜられたソーセージ肉(生食)によるSalmonella Enteritidis(2例)
・生豚ひき肉で作られた味付け生ソーセージによるS.
Bovismorbificans
・塩漬け及び燻製豚肉製品によるCl. Botulinum
2009 ・一部に生卵が混ぜられた味付け豚ひき肉(生食)によるSalmonella spp.(少なくとも3例)
・生ソーセージ(乾燥、イタリアからの輸入品?)によるSalmonella spp.
2010 ・事例なし
2011 ・一部に生卵が混ぜられた味付け豚ひき肉(生食)によるSalmonella Enteritidis(原因菌は卵から検出)
・味付け豚ひき肉によるSalmonella Typhimurium(2例)
・生豚ひき肉で作られた味付け生ソーセージによるCampylobacter coli
2012 ・味付け豚肉及び生豚ひき肉で作られた生ソーセージによる
Salmonella Panama(複数の地域にまたがるアウトブレイク。と畜場
の汚染豚が原因。)
・生卵を混ぜた豚ひき肉によるSalmonella Enteritidis(原因菌は卵か ら検出)
・味付け豚ひき肉によるSalmonella Typhimurium(3例)
・味付け豚ひき肉によるCampylobacter jejuni
・味付け豚ひき肉によるNorovirus
・鴨の生胸肉(生食)によるCampylobacter spp.(不確定)
22 Rosner Bm, et al. "Risk factors for sporadic Yersinia enterocolitica infections, Germany 2009-2010", Epidemiol Infect 2012 oct; 140(10): 1738-47
23 在日ドイツ大使館へのヒアリング結果による。
2)食中毒防止対策
豚肉の旋毛虫検査
1937
年から、ドイツでは自宅で屠殺する豚に関しても、旋毛虫の検査が義務付けら れた。屠畜場において推奨される検査法では、豚については1頭から筋肉1~2gを
採取し、多数個体からの筋肉を集め100g程度のサンプルとする。その上で人工消化
液を用いて「筋肉トリヒナ(旋毛虫のこと)」の検出を図る「プールサンプル消化法」で検査を行う。トリヒノスコープ等の筋肉の直接的な観察による検査では筋肉内で披 嚢を形成しない種類の旋毛虫の検出を期待することが出来ないので、この方法は消化 法等と組み合わせて使用するべきとされている。2425ただし、消化法に関しても最終 的には目視での検査を行うため、この検査方法では検査漏れが生じうるとの指摘も存 在する。26
Hackfleischverordnung; HFlV(挽き肉法令)
ドイツ全国が適用範囲の連邦規則。
2007
年に失効、現在は動物食品衛生法令(TierischeLebensmittel-Hygieneverordnung)内に組み込まれている。挽き肉は品質が悪化しやす
く、雑菌が繁殖しやすい性質であるため、厳しい基準が設けられた。概要は以下の通 り。27① 生の肉を挽くこと(解凍した肉は挽かない)
② 鶏肉、野生動物の肉を牛、豚と同じ部屋で挽いてはいけない(サルモネラ菌含有 のため)
③ 完全に隔離された冷蔵管理された部屋で挽く
④ 食肉マイスター資格者、またはそれに準じる有資格者しか挽くことができない
⑤ くず肉、すね肉、足、頭肉、横隔膜、内臓、骨からこそいだ肉などは挽き肉にし てはならない
⑥ パックされていないものは生産されたその日のみ販売が可能
したがって、挽いた豚肉にスパイスや塩を混ぜて腸に充填し、生で食べる生メットヴ ルストなどもこの条例に規定されており、必ず冷蔵庫の中で挽かなければならない また、小さな肉屋では設備の不足のため、鶏肉や七面鳥の挽き肉を販売出来ない店も 多い。
大手スーパーなどの精肉売り場では、挽き肉用冷蔵室を複数持ち、牛豚用と鶏肉用に 分別している。このように、ドイツでは非加熱肉に関する安全基準が大変厳しい。
この条例は以下のものには適用されない
① 加熱されるもの(煮る、焼く、炒める、オーブンで焼くなど)
24 K. Nöckler "Detection of Trichinella infection in food animals"
25 社団法人畜産技術協会 平成21年度食品安全確保総合調査「食品委より媒介される感染症に関する文献 調査報告書」
26 前掲21
27 ヘラ・スパイス・ジャパンHP〈http://www.helajapan.com/helanews/jan2010.htm〉(最終検索日:2013.8.21)
② 塩漬されるもの(その後、乾燥、燻製、熟成されるもの)
③ 乾燥、または燻製され、水分活性が0.9(aw/S.80)未満のもの
④ Ph値5.2未満に塩とスパイスや油でマリネされ、賞味期限を永く加工される もの
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所
BfR
による見解表明285
歳未満の小児、妊婦、高齢者および免疫機能が低下している人など特に被害を受け やすい人は、重症化することが多いカンピロバクターやサルモネラ症などの食品由来 感染症から身を守るため、原則として生の食品の喫食を避けるべきであるとの見解を 表明している。また、ロベルト・コッホ研究所が実施した調査により生の豚挽き肉がエルニシア症罹 患の最も重要なリスク因子であることが示されたことも併せて公表している。
28 BfR HP
〈http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2012/11/seasoned_minced_meat_and_raw_minced_pork_are_not_for _little_children_-129197.html〉(最終検索日:2013.8.21)
3.2 規制・監視等方法の把握
3.2.1 米フロリダ州・コロラド州の事例
肉の生食による食中毒対策の事例として、アメリカのフロリダ州及びコロラド州から発行 された、消費者の注意喚起を目的とした表記(Consumer Adivisory)に関する資料を次頁以 降に示す。
アメリカでは米国厚生省(DHHS)傘下の連邦食品医薬品局(FDA)が食品基準(Food Code)
を定めており、近年は
4
年に1
度最新版が発行されている。州政府や地方政府はこの基準を もとに独自に食の安全に関する規則を作成することが求められており、2011年7
月時点で50
州のうち49
州が採択済みである。消費者への注意書きに関する記述は
FOOD CODE 1999
以前にも存在したが、2000
年3
月 に発効した注意喚起に関する暫定指示により、次の2
点を表記に含めることが義務付けられ、FOOD CODE 2001
以降に反映されている。 「disclosure」:生の食材が含まれていることを示す
「reminder」:生の食材を摂取することにより健康を損なう危険性が増すことを示す 以下に示す資料はこの内容に従い、各地方政府で実用化される際の見本または導入指導文 書となったものである。29
図表 3-4 フロリダ州 生食に対する消費者への注意喚起30
29 FDA HP〈http://www.fda.gov/default.htm〉(最終検索日:2013.8.21)
30 フロリダ州事業・職業規制機関HP〈http://www.myfloridalicense.com/dbpr/〉(最終検索日:2013.8.21)
図表 3-5 コロラド州
Larimer
郡 生食に関する消費者への注意喚起方法の指示3131 コロラド州Larimer郡環境衛生業務部門HP〈http://www.larimer.org/health/〉(最終検索日:2013.8.21)
3.2.2 韓国の事例
韓国において、食中毒防止関連の規制は韓国食品医薬品局(KFDA)が所管している。
KFDA
は平成25
年3
月、食品薬品安全省(MFDS)へと名称変更され組織が再編成された。MFDS
は主に食品の安全性への懸念に応じられるよう、省庁レベルの機関へと再編成され、権限が 強化されたものと言われる。韓国では行政による立入検査を行使する法的権限があり、行政処分を行うことができる。
法的根拠はそれぞれ食品衛生法第
17
条、第58
条に明記されている32。○立入検査の法的根拠(食品衛生法第
17
条)「第
17
条(出入、検査、収去等)①食品医薬品安全庁長、特別市長、広域市長、道知 事(以下”市、道知事”という。)、市長、郡守又は区庁長(自治区の区庁長に限る。以 下同じである。)は、必要であると認めるときは、営業をする者又はその他関係人に対し て必要な報告をさせ、又は関係公務員をして営業場所、事務所、倉庫、製造所、貯蔵所、販売所又はその他これと類似の場所に出入して販売を目的とし、又は営業上使用する食 品等又は営業施設等を検査させ、又は検査に必要な最少量の食品等を無償で収去させる ことができ、必要により営業関係の帳簿又は書類を閲覧させることができる。」
○行政処分の法的根拠(食品衛生法第
58
条)第
58
条(許可の取消等)①食品医薬品安全庁長、市、道知事、市長、郡守又は区庁長 は、営業者が次の各号の1
に該当するときは、大統領令が定めるところにより営業許可 を取り消し、又は6
月以内の期間を定めてその営業の全部又は一部を停止し、又は営業 所の閉鎖(第22
条第5
項の規定により申告した営業に限る。以下この条において同じで ある。)を命ずることができる。法的根拠に基づき、
2010
年に大規模な抜き打ち検査が実施されたことが報道されている。以下に、記事の抜粋を示す33。
「韓国では牛焼き肉やユッケはかつて高級品だったが、経済発展と流通価格の低下に 伴い、庶民の食べ物としてすっかり浸透している。ここ数年でユッケを専門とするフラ ンチャイズ店も増え、若年の女性層も新たな顧客として取り込んだ。
市場が広がるがゆえに、食中毒事件には政府も神経をとがらせる。昨年
2、3
月には食 品医薬品安全庁が全国でユッケを出す1426
店舗に対し大規模な安全点検を実施し、45
店 舗に営業停止や罰金などの行政処分を科した。大腸菌などが検出されたり原産地を虚偽 に表示したりしていたためだ。同庁によると調査はユッケ専門店のほか、ユッケを主力メニューとする焼肉店や食堂 を対象に抜き打ちで実施した。16 カ所の店舗で大腸菌検査が陽性となったほか、黄色ブ ドウ球菌やリステリア菌が検出された店もある。大腸菌の種類は明らかにしていない。
日本の法令でも大腸菌が付着していれば規制の対象になるが、検査をする仕組みが不 足している。韓国政府は検査結果に基づき行政処分に踏み切ったほか、店の実名と場所
32 韓国の食品衛生法各条文の日本語訳(http://www.geocities.jp/koreanlaws/syokuhin.html)より抜粋
33 2011年5月7日付日本経済新聞「ユッケ、本場韓国には専門店も 政府「厳格に検査」」
(http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0606K_W1A500C1000000/)より抜粋
を公表しており、検査の実効性の面で厳しく運用していると言えそうだ。
こうした厳しい措置を取るのは夏場を中心にユッケによる食中毒が多発しているとい う理由もある。
08
年春にはサッカーKリーグの「尚武」の選手が全羅南道の専門店で「ユ ッケビビンパッ」を食べて全選手が下痢と腹痛に襲われた。検査の結果は食中毒。4
日後 の試合は延期となった。」国による検査への取組状況は、随時報告されている。以下に、2010年から
2011
年に掲載 された関連記事の抜粋(訳)を示す。식중독 예방을 위한 육회 특별 수거.검사 실시
2011-06-28 10:35:00
http://cms.korea.kr/goadmin/newsViewOld.do?newsId=155763107 食中毒予防のためのユッケ特別収去·検査実施
食品医薬品安全庁は夏期食中毒予防のために、7 月中に全国のレストランで調理·販売され ている"ユッケ"のための特別な回収·検査を実施すると明らかにした。
今回の回収·検査は、食中毒を引き起こす可能性がある腸管出血性大腸菌(大腸菌
O157
:H7
を含む) 、黄色ブドウ球菌、リステリアモットーサイトジェネスなどの食中毒菌を集中点 検する計画だ。ユッケの場合、加熱·調理なしでそのまま摂取する食品に衛生·安全管理に細心の注意をす る必要があり、最近の梅雨など高温多湿による食中毒発生の恐れが高まっており、手を洗 うなど、徹底した衛生管理が必要であり、また、ヨーロッパで、腸管出血性大腸菌感染に よる食中毒の発生などの食品事故に関連して生の食品摂取時に注意が必要である。
食品医薬品安全庁は"食品調理時に食中毒予防のために下痢や化膿性疾患の患者は、調理業 務に参加させないこと、 ▲カウンター、キッチンなどの消毒実施▲肉類と野菜類などに応 じてナイフ、まな板、容器区分の使用、洗浄·消毒実施▲食材と調理された食べ物は、
5
℃ 以下または60
℃以上の保管など徹底した衛生管理"を呼びかけた。피서지 식품업소 합동 위생점검, 540 곳 적발
2011-08-03 10:22:00
http://cms.korea.kr/goadmin/newsViewOld.do?newsId=155774494 避暑地フード店合同衛生検査、540所摘発
食品医薬品安全庁は、夏の休暇シーズンに備えて、6 。 29 〜 7。 20 まで( 3 週間)地 方自治体と合同で食品取扱店
9,871
場所を確認して、食品衛生法違反が確認された540
場所 を管轄官庁に行政処分要請などの改善措置を実施したと明らかにした。今回の検査は、夏の多消費食品製造業者や海水浴場、遊園地、娯楽施設、沿道休憩所など の避暑地周辺や避暑客が利用する施設で食品を調理·販売するレストランなどを対象に実 施し、また、レストランで別々に加熱せずに生の食品の形でお客様に提供されているユッ ケ(肉刺身を含む)の食中毒菌回収検査も別途実施した。
今回の検査結果、摘発された主な内容は、 ▲衛生的取り扱い基準違反
125
所▲健康診断未 実施123
所▲賞味期限経過製品の使用70
場所▲経営者遵守事項に従わない(水質検査未実 施など) 71所▲施設基準違反47
場所▲表示基準違反、32 所▲その他食品衛生法違反44
場所▲無届け営業28
所などである。また、レストランで販売されているユッケなど
177
件を回収し検査した結果、病原性大腸 菌が1
件検出され、汚染状況などの衛生的処理するかどうかを判断する指標である大腸菌 を45
件検出されており、今回検出された病原性大腸菌は、腸管出血性大腸菌に含まれるが、人に食中毒を起こすと報告されていない病原性が低い
O - 18
型に確認された。食品医薬品安全庁は"ユッケなどの生の食品は、調理過程で手やナイフ、まな板などを介し て微生物が汚染されている場合が多いので、ユッケ調理時に常に新鮮な原材料を使用して、
操作の前後に、手とナイフ、まな板などをすっきり除菌·洗浄してユッケを安全に摂取でき るように調理され、取扱いに十分注意してくれること"を頼んだ。
一方、食品医薬品安全庁は、違反業者に対して改善措置と食中毒予防のための衛生教育を 実施し、食中毒などの食品安全事故予防のために継続的に回収·検査を強化していく計画で あり、また、韓国飲食業中央会など関連団体を介して会社の自律的に安全な食品を調理·販 売することができるように積極的に誘導していく計画である。
<添付> 1。腸管出血性大腸菌( Q
& A )2。衛生検査違反状況(施設別、業種別、違反タイプ別)
3
。衛生検査違反業者の内訳4。ユッケなどの回収検査結果 5。違反類型別行政処分等基準 6。ユッケ調理の際の衛生管理要領
육회 및 치킨 전문점 등 위생점검 결과2010-04-21 14:04:00
http://cms.korea.kr/goadmin/newsViewOld.do?newsId=155459703 ユッケや鶏専門店などの衛生点検の結果
食品医薬品安全庁は国民多消費食品の年間メンテナンスの一環として、 16 の市·道など地 方自治体での生活周辺のレストラン
10,773
件を点検した結果の衛生状態が不良な310
個( 2.9 % )の施設数などの行政措置するようにしたと明らかにした。
2
月22
日から3
月19
日までに実施した今回の検査は、食中毒予防管理のために加熱調理せ ずに摂取するユッケや家庭で簡単に配信摂取するチキン専門店の衛生状態や食中毒菌など の汚染実態を調査した結果、ユッケ専門店の場合: 1,426社のうち45
社( 3.1 % )が違 反されており、主な違反事項は、 ▲リステリア菌や黄色ブドウ球菌検出( 3ヶ所)と大腸 菌陽性( 16ヶ所) ▲流通期限経過製品の使用·保管( 4ヶ所) ▲原産地の偽装表示など( 5カ所) ▲健康診断未実施( 4カ所) ▲他の衛生的取り扱い基準違反( 13カ所)な どであった。
※リステリア菌:人畜共通の病原体に低温( 5 ℃以下)状態でも増殖が可能であり、主に 非衛生的な畜産製品(食肉、牛乳など)に感染し、発熱·筋肉痛·下痢などを引き起こす食 中毒ギュンイム。
また、チキン専門店の場合、合計
9,347
社のうち265
社( 2.8 % )が違反されており、 ▲ 残った食べ物の再利用( 1ヶ所) ▲流通期限経過製品の使用·保管( 13カ所) ▲原産地 の偽装表示など( 12ヶ所)▲健康診断未実施( 40箇所)▲施設撤去滅失( 35ヶ所)▲ その他調理施設の衛生的取り扱い基準違反( 164ヶ所)などであった。今回の点検の結果、食中毒菌が検出された店などには、すぐに改善措置と営業停止処分( 40 ヶ所)と食中毒予防のための施設数·教育などの措置し、その他の健康診断未実施、食育な どの原産地米インジケータ
70
件は、最高300
万ウォンまで過料を賦課し、調理章清掃状態 不十分などの軽微な違反に対しては、現場の行政指導などの行政処分措置を下した。食品医薬品安全庁は、
"地方公共団体と共同で継続的な検査を強化していく予定であり、今
後違反者に対しては、特別管理対象者に指定して、管轄市·道(市·郡·区)を通じた随時チ ェックし、関連団体を通じた自律地図·点検を継続実施し、また、営業者の手洗いなどの衛 生水準の向上のための教育·広報も強化していく計画 "と明らかにした。別添:違反者名簿
1
部4. まとめと今後の課題
本業務では、海外における牛、豚、鶏、野生動物などの食肉や内臓肉の生食の習慣に関す る情報の収集・整理を行った。その結果、各国での生肉料理に関する情報と、ユッケ、タル タルステーキ、メットの食中毒事例及び食中毒防止対策や、米韓における規制・監視等方法 の一部情報を収集することが出来た。今後は、生肉料理に関する情報をさらに収集して、汚 染実態の詳細把握を試みるとともに、規制・監視等方法についても他地域の事例を収集する ことが、我が国における制御方法等の検討を行う上で有効であると考えられる(図表 4-1)。
今後、我が国における動物の食肉や内臓肉の喫食による食中毒防止対策としては、諸外国 の状況を参考にした上で、包括的なコントロール体制を構築することが重要と考えられる。
包括的なコントロール体制とは、行政による監視(検査による摘発やアクティブ/パッシブ サーベイランス等)や行政指導に加えて、流通業者による自主規制、消費者に料理を提供す る小売店や飲食店等による消費者への啓発、消費者自身の自己責任といったものも含めた食 中毒防止対策のことを指す概念である。今後は、我が国におけるこの包括的なコントロール のあり方を検討していくことが必要であろう。
リスク管理の観点では、食中毒リスクの高い料理を提供する機会自体をなくしてしまうこ とが望ましいが、規制や監視だけで徹底することは実態としては困難である。そこで、他国 の例にもあるように、消費者側の意識向上や責任範囲の明確化を含めた制御方法を取り入れ ることには検討の余地がある。そのために、今年度の調査結果を踏まえた、より詳細な調査 が求められる。
図表 4-1 本調査の研究上の位置づけ
海外の食肉や内臓肉の生食実態に関する基礎的情報の収集支 援業務 報告書
2013
年10
月株式会社 三菱総合研究所 人間・生活研究本部