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(1)

WESTERN JAPAN

ISSN 1340-9883

NEWS No.60

March. 2019 西部地区自然災害資料センタ-ニュ-ス

N D I C

九州大学西部地区自然災害資料センター

Natural Disaster Information Center of Western Japan

【特集】:

災害時のライフライン確保対策

巻頭言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・塚原 健一 2 熊本地震における電力供給設備の被害状況と評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・松木隆典 3

九州地方整備局における災害時のライフライン確保に向けた取組について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤巻 浩之 9

JR 九州における災害時の交通ネットワーク確保に向けた取組み・・・・・・・・・・・・・・・深江 良輔・福村 周郎 14

福岡市下水道 BCp の充実強化~災害時のライフライン確保対策~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 原口 20

熊本地震停電の際に益城町役場に派遣した照明車 (写真:九州地方整備局提供)

(2)

災害時のライフライン確保対策

九州大学西部地区自然災害資料センター センター長 塚原 健一 平成 30年は世相を表す漢字の第一位として「災」が選ばれたとおり、6 月の大阪府 北部地震に始まり7 月の豪雨、9月の台風 21号や北海道胆振東部地震まで、多くの災 害に見舞われました。それぞれの災害で特徴的な被害が発生しましたが、共通して言え ることは、交通施設、エネルギー施設、上下水道施設など、生活に欠かせない基幹的イ ンフラに被害が発生し、市民生活に大きな支障を発生させたことです。

基幹的インフラの機能維持は、市民生活だけでなく企業活動にも大きく関わってきま す。現在、多くの企業で企業継続計画(BCP)が策定され災害への備えが進みつつあり ますが、その多くは基幹的インフラの回復は外部条件となっており、被災後の機能の維 持及び早急な復旧が求められています。このことは企業だけでなく地域の継続(DCP) にも同じく求められています。2015 年に策定された仙台防災枠組でも災害リスクを低 減する優先行動として「効果的な災害対応への備えの向上と、復旧・復興過程における

「より良い復興(Build Back Better)」が掲げられました。災害対応への備えは自助、共 助に依るところが大きいのは当然ですが、その大前提として、交通、エネルギー、上下 水道等の確保なしには住民による努力にも限界があります。

我が国の自然災害の外力は世界でも最大レベルに有り、これに対応する災害時のライ フライン確保もまた、世界でも最大レベルの困難を伴いますが、阪神・淡路大震災以降、

交通、エネルギー、上下水道等の各インフラの災害への対応が進んでおり、大きな改善 も見られている分野もあります。このような状況のなか、今回の特集は、行政機関やイ ンフラ企業における災害時のライフライン確保対策について、実務者の立場から最新の 状況をご報告いただきます。

(専門:都市・地域計画)

巻頭言

(3)

熊本地震における電力供給 設備の被害状況と評価

九州電力株式会社 送配電カンパニー 技術計画部 技術企画グループ 松木 隆典

1.停電状況

2016 年 4 月 14 日(木)21 時 26 分頃、益 城町で震度7、熊本市他で震度6弱(マグニ チュード 6.5)の前震が発生し、最大 16.7 千 戸〔4 月 14 日(木)22 時〕のお客さまが停 電したが、4 月 15 日(金)23 時 00 分に高 圧配電線への送電が完了し、復電した。

その直後の 4 月 16 日(土)1 時 25 分頃、

益城町、西原村で震度7、南阿蘇村他で震 度6強(マグニチュード 7.3)の本震が発生し、

最大 476.6 千戸〔4 月 16 日(土)2 時〕の お客さまが停電したが、4 月 20 日(水)19 時 10 分、高圧配電線への送電が完了し、

復電させることができた。(図-1)

2.送電設備の被害状況

(1)被害状況

当社架空送電設備の約 23%(鉄塔 約 6,500 基/約 28,000 基)が震度5弱以上の 地震動を受け、震源地の熊本県を中心に 架空送電設備の被害が発生した (写真 1~3)

地中送電設備の約 13%(人孔 193 個 /1,533 個)が震度5弱以上の地震動を受 けたが、地中送電設備の設備被害は発生 していない。また、液状化による地中送電 設備への被害も発生していない。

(2)震度別設備被害状況

がいしは震度5弱以上、支持物は震度 6弱以上、電線は震度6強で一部の設備 に被害が発生した。(表-1)

0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0

18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18

4月14日(木) 4月15日(金) 4月16日(土) 4月17日(日) 4月18日(月) 4月19日(火) 4月20日(水)

(時)

4/14 22時00分 16.7千戸

高圧配電線送電 4/20 19時10分 高圧配電線送電

4/15 23時00分

最大 4/16 2時00分 476.6千戸

本震発生

前震発生

:停電戸数の推移

160 140 120 100 80 60 40 20 0 HG車による

応急送電開始 4/16 15時11分

HG車設置台数:148台 4/20 19時10分現在

:高圧発電機車(HG車)台数の推移

阿蘇地区を

除き全送 4/18 21時50分 1日で復旧 5日で復旧(阿蘇地方を除くと2日後の夜には復旧)

図-1 地震発生と停電戸数

(4)

約50m

崩壊前の崖のライン

写真-1 土砂崩れによる支持物の傾斜

写真-2 地盤変状による部材損傷

写真-3 長幹支持がいしの折損

※ 前震(4/14)・本震(4/16)両方の影響を受けた設備については、震度の大きい方で計上 被害数:早急復旧を要する被害数

被害率:被害数/設備数(震度5弱以上所在) 被害内容 項 目

震 度

5弱 5強 6弱 6強

支持物

被害数 0 0 1 13 2 16 設備数 2,673 1,633 907 1,137 149 6,499 被害率(%) 0 0 0.11 1.14 1.34 0.25

がいし

被害数 2 0 0 1 0 3 設備数 2,673 1,633 907 1,137 149 6,499 被害率(%) 0.07 0 0 0.09 0 0.05

電 線

被害数 0 0 0 1 0 1 設備数 2,673 1,633 907 1,137 149 6,499 被害率(%) 0 0 0 0.09 0 0.02

表-1 送電設備の被害数と被害率(主な被害)

(5)

3.変電設備の被害状況

(1)被害状況

当社変電所の約 22%(107 変電所/全 488 変電所)が震度5弱以上の地震動を受 けた。

そのうち、震源地である熊本県を中心 に、19 変電所(全変電所の約 4%)に おいて、変圧器、断路器、計器用変成器な ど軽微なものも含め 81 台の設備に被害が 発生した。(図-2)

主要設備(変圧器・遮断器・断路器)の被 害 (軽微なもの含む)は、全体の約7割を 占め、運転継続不可となる主要設備の被 害率は、最大 1.6%であった。

なお、液状化による設備被害は発生し ていない。

4.配電設備の被害状況 (1)架空配電設備の被害状況 1)被害状況

各設備の被害率は、支持物 0.13%、電 線 0.04%、変圧器 0.14%と低く、液状化に よる供給支障につながる被害は発生して いない。(表-3)

2)震度別被害状況

供給支障につながる設備被害は、震度5 強以上で発生した。(表-4)

(2)震度別設備被害状況

変圧器及び断路器の被害は、震度6弱以 上で発生したが、遮断器においては、被害 は発生していない。(表-2)

(2)地中配電設備の被害状況

震度が大きく、架空配電設備の被害が集 中した熊本県益城町、西原町及び南阿蘇村 においては、地中設備自体がなく、地中配 電設備の被害はなかった。

図-2 変電設備の被害部位割合

調相設備 9 %

斜線:運転継続不可を示す

変圧器 21 26%

断路器 35 43%

その他 13 16%

81台

計器用変成器 6 %

19

※( )内は被害のあった設備数81台に対する割合

設 備 項 目 震 度

5弱 5強 6弱 6強

変圧器

被害数 0 0 2 2 1 5

設備数 137 47 49 70 14 317

被害率(%) 0.0 0.0 4.1 2.9 7.1 1.6

断路器

被害数 0 0 17 2 0 19

設備数 731 215 289 455 114 1,804

被害率(%) 0.0 0.0 5.9 0.4 0.0 1.1

表-2 変電設備の被害数と被害率(運転継続不可となる被害)

※ 前震(4/14)・本震(4/16)両方の影響を受けた設備については、震度の大きい方で計上

※ 被害率:被害数/設備数(震度5弱以上所在)

(単位:台)

(6)

項目 設備数

被害様相の影響度

被害率

(参考)過去震災における被害率 供給支障に

つながるもの

供給支障に つながらないもの

東日本大震災

(津波被害除く)

阪神淡路 大震災

支持物 2,479,872

(本)

倒壊 35 本

(0.001%) 傾斜・沈下 ひび割れ

3,060 本 (0.12%)

0.13% 東北電力: 0.3%

東京電力: 0.2% 0.5%

土砂崩れ等に 伴う流出

56 本 (0.002%)

電線 2,069,402 (径間)

断線 322 径間

(0.016%)

混線 542 径間

(0.026%)

0.04% 東北電力: 0.07%

東京電力:0.002% 0.3%

変圧器 1,001,284

(台)

ブッシング破損 316 台 (0.032%)

傾斜 1,119 台

(0.11%)

0.14% 東北電力: 0.3%

東京電力:0.02% 0.3%

表-3 架空配電設備の主な被害状況

※ 被害率は、九州電力の全保有設備数に対する比率である。

表-4 架空配電設備の被害数と被害率

※ 被害数:供給支障につながる被害数(支持物倒壊 35 本、電線断線 322 径間、変圧器ブッシング破損 316 台)

被害率:被害数/設備数(熊本県、大分県における震度5弱以上所在) 項 目

熊本県+大分県 震度

5弱

震度 5強

震度 6弱

震度 6強

震度

被害数 0 本 7 本 4 本 10 本 14 本 35 本

設備数 95,331 本 100,498 本 99,116 本 101,071 本 11,605 本 407,621 本

被害率 0% 0.007% 0.004% 0.010% 0.121% 0.009%

被害数 0 径間 22 径間 16 径間 127 径間 157 径間 322 径間

設備数 75,271 径間 76,449 径間 76,096 径間 78,377 径間 8,989 径間 315,182 径間

被害率 0% 0.029% 0.021% 0.162% 1.747% 0.102%

被害数 0 台 4台 29 台 147 台 136 台 316 台

設備数 32,426 台 33,780 台 38,795 台 44,996 台 4,848 台 154,845 台

被害率 0% 0.012% 0.075% 0.327% 2.805% 0.204%

(7)

5.水力設備(土木)の被害状況

(1)水力発電所の被害状況

当社水力発電所の約 48%(68 発電所/

全 143 発電所)が震度 5 弱以上の地震動 を受け、4 月 14 日の前震においては、発 電所の設備被害等は確認されなかったが、

16 日の本震の震度 5 強以上の箇所で 9 発 電所の被害が発生した。(表-5)

(2)震度別設備被害状況

震度 5 強以上で設備被害(12 箇所)が発 生した。(表-6)

黒川第一発電所の被害(震度6強、導水 路埋没・水槽一部破損)を除き、その他設 備の被害は、公衆災害や供給支障に繋が るものはなかった。

・ダムは、土で形成されたアースダムの 堤体天端が一部沈下したものの、直ちに 安全性に大きな影響を及ぼす問題は なかった。

・導水路、水槽、水圧管路は、斜面崩壊 等により、トンネルアーチ部落石、一部 破損、漏水等が発生した。

震度 5 弱 5 強 6 弱 6 強 7

被害発電所数 0 4 3 2 0 9

発電所数 20 24 21 3 0 68

被害率 0% 16.7% 14.3% 66.7% 0% 13.2%

表-5 水力発電所の主な被害状況

※ 被害率:被害発電所数/発電所数(震度5弱以上所在)

表-6 水力発電所の被害数と被害率

設 備 項 目 震 度

備 考

5 弱 5 強 6 弱 6 強 7

ダ ム

被害数 0 1 0 0 0 1

ダム堤体天端一部沈下

設備数 9 6 0 0 0 15

被害率(%) 0 16.7 0 0 0 6.7

導 水 路

被害数 0 4 1 1 0 6

トンネルアーチ部落石、

一部崩壊等

設備数 61 45 23 7 0 136

被害率(%) 0 8.9 4.3 14.3 0 4.4

水 槽

被害数 0 0 0 1 0 1

一部破損

設備数 21 26 19 3 0 69

被害率(%) 0 0 0 33.3 0 1.4

水圧管路

被害数 0 0 3 1 0 4

一部破損(漏水、脱落他)

設備数 24 27 18 4 0 73

被害率(%) 0 0 16.7 25.0 0 5.5

(8)

6.火力・地熱発電設備の被害状況

火力発電所の最大震度は 4、地熱発電所 の最大震度は 5 強であったが、発電支障に 至る設備被害は発生しなかった。

7.設備の復旧対応

(1)前震での対応

前震発生後、ただちに非常災害対策本 部を設置し、停電(高圧配電線 21 回線)が 発生した熊本配電センターへ九州各県か らの応援を派遣した。

また、益城町役場や避難所等の停電復 旧として発電機車によるスポット送電を 実施。同時に配電設備を復旧し、4 月 15 日(金)23 時には高圧配電線の送電を完 了した。

(2)本震での対応

送電鉄塔周辺の土砂崩れや鉄塔傾斜等 により広範囲に高圧配電線の停電(259 回 線)が発生したものの、阿蘇地区以外は送 変電設備を復旧し、2 日後の 4 月 18 日(月)

21 時 50 分に高圧配電線の送電を完了し た。

阿蘇地区については、66kV 黒川一の宮 線の仮復旧まで停電が継続したため、他 電力の応援も受け、発電機車による面的 送電を実施し、4 日後の 4 月 20 日(水)

19 時 10 分に崖崩れや道路の破損等によ り復旧が困難な箇所を除き、高圧配電線 の送電を完了した。(表-7)

8.評 価

全国からの高圧発電機車の応援により、

崖崩れや道路の損壊等により復旧が困難な 箇所を除いて、 本震から 5 日で高圧配電 線の送電を完了できた。

また、県災害対策本部や経済産業省とも 連携し、50 施設におよぶ重要施設に対し、

高圧発電機車によるスポット送電により速や かな対応ができた。電力各社が、連絡体制 の強化や応援可能な車両の確認など、先手 先手で応援要請を見据えた準備を進めてい たことも早期復旧に至った要因であり、関係 各方面に対して改めて感謝申し上げる。

表-7 発電機車ほか応援状況

(単位:台)

(単位:台)

北海道 東 北 東 京 中 部 北 陸 関 西 中 国 四 国 沖 縄 他電力計 当 社 合 計

発電機車 4 5 5 37 8 14 20 15 2 110 59 169

高所作業車 4 5 1 20 3 10 10 12 2 67

サポート車 1 5 6 41 10 12 18 4 2 99

(9)

九州地方整備局における災 害時のライフライン確保に 向けた取組について

国土交通省 九州地方整備局 企画部長 藤巻 浩之

1. はじめに

我が国は、地理的・地形的条件から自然 災害が発生しやすい特性を有している。

中でも九州地方は災害リスクの高い地域 といえ、平成28年4月熊本地震、平成29 年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨 など、立て続けに大規模な災害が発生し ている。

大規模災害が発生した場合、何よりも 急がなければならないのは、被災地住民 の救助・救援活動を可能とし、また、迅速 な復旧を支える、様々なライフラインの 確保である。

本稿では、これまで九州地方整備局が 災害時において実施してきた災害発生直 後の段階におけるライフライン確保の取 組について、具体事例を紹介する。

2.道路啓開

(1)平成 28 年熊本地震

平成28年4月14日(前震)、16日(本 震)に発生した熊本地震により、阿蘇大橋 地区で大規模斜面崩壊が発生し国道57号 及び JR 豊肥本線が寸断されるとともに、

国道325号阿蘇大橋が流出した。(写真-1)

また県道28号熊本高森線、村道栃の木 立野線の大規模な被災により、熊本と大 分を結ぶ東西交通の大動脈が完全に止ま り、阿蘇周辺は地域が分断される状態と なった。(図-1)

16 日の本震発生後、直ちに現地入りし た国土技術政策総合研究所、土木研究所 による技術指導のもと、九州地方整備局

では、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)

による道路啓開に着手した。

その結果、本震から2日後の4月18日 に「ミルクロード」の道路啓開を完了させ、

4 トン未満車両の阿蘇市と熊本市方面と の間の行き来を可能とした。4月22日に は大型車の通行も可能となり、国道57号 及び国道 325 号阿蘇大橋の迂回路を確保 することができた。

さらに同22日には、熊本市街から阿蘇 地域への東西軸の一つである「グリーン ロード南阿蘇」の道路啓開を完了し、熊本 市方面から南阿蘇村方面への大型車によ る物資輸送を可能とした。(写真-2、写真- 3)

このように、被災から 1 週間後には迂 回路となる道路の応急復旧を概ね完了し、

ライフラインとなる広域の物資輸送路を 回復させることができた。

(2)平成 29 年九州北部豪雨

平成29年7月5日に発生した九州北部 豪雨災害では、朝倉市、東峰村、日田市な どにおける、河川氾濫や土砂崩れの被災 情報が刻々と寄せられる中、国道 211 号 についても斜面崩壊による通行不能との 情報が報告された。

国道211号の被災により孤立集落が発 写真-1 大規模斜面崩壊が発生した

阿蘇大橋地区

図-1 道路被災箇所図

(10)

生し、また、東峰村役場も211号沿線に位 置していたことから、早急な道路機能の 復旧が必要な状況であった。

このため、7月5日22時に、国道211 号の管理者である福岡県から九州地方整 備局に対して、嘉麻市桑野~東峰村福井

間(L=21km)について、道路啓開の支援

要請があった。支援要請を受け、九州地方 整備局では、嘉麻市側から北九州国道事 務所が、東峰村側から福岡国道事務所が 道路啓開を実施することを決定した。そ の上で、被災調査および道路啓開が行え るよう、即時に九州地方整備局 道路部内、

両事務所の体制構築を図ることで、翌6日 早朝より国道 211 号の道路啓開を開始す ることができた。

国道 211 号の道路啓開では、特に被災 の大きい箇所が 11 箇所存在していたが、

事前に協定提携している両事務所の「災 害時協力会社」19 社(コンサルタント会 社含む)が24時間体制で作業・工事を進 めたことで、道路啓開作業開始後、8日間 で緊急車両が通行可能になった。(表-1、

写真-4、写真-5)

このように短期間で道路啓開が完了で きた要因としては、熊本地震被災時の道 路啓開の経験や南海トラフ地震を想定し た訓練等を通じ、日頃から一定の備えが できていたことが挙げられる。

また、福岡県からの要請後、翌朝には、

被災調査と道路啓開チームの派遣が出来 たこと、派遣の準備を進めながら、同時に 復旧工法を検討し、資機材の準備を進め たこと等により、翌朝には復旧工事の着 手が可能であったことも大きな要因であ った。

加えて、放置車両の撤去に災害対策基 写真-2 ミルクロード啓開作業前の状況

写真-3 ミルクロード啓開作業完了状況

表-1 国道 211 号道路啓開の主な経緯

写真-4 豪雨による被災車両の撤去状況

写真-5 道路啓開完了後に通行する緊急車両

(11)

本法を適用した判断、被災の大きい箇所 については、TEC-DOCTERなどの専門家 の支援を受けるとの判断も適切であった と考えている。

(3)平成 28 年垂水市土砂災害

国道 220 号は、南北に長い鹿児島県垂 水市を縦断する道路であり、隣接する霧 島市、鹿屋市へアクセスする幹線道路と なっていることから、垂水市民の生活を 支える重要な役割を担っている。

平成28年9月20日に鹿児島県に上陸 した台風16号に伴う非常に強い降雨の影 響により、この国道 220 号上に位置する 磯脇橋が流出する被害が発生した。

磯脇橋の橋長は約8m、幅員は約12mだ が、橋梁背面の土工区間を含め広範囲に 河川の洗掘が生じたため、被災範囲は道 路縦断方向に約 41m、横断方向に約 23m の範囲に及んだ。(写真-6)

当該被災箇所の特徴としては、道路の 上り線側(河川上流側)沿線には民家が連 担しており、一方、下り線側(河川下流側)

は、海岸に面していることが挙げられる。

本復旧を考慮すれば、元の位置での応急 復旧は避けるべきである。しかし上り線 側での応急復旧は、用地協議と住民・家屋 移転に時間を要すること、下り線側では、

漁業関係者への補償や占用協議等の手続 き、海上を通すための迂回路の設計にも 時間を要すること等が想定された。その ため流出した橋梁と同位置へ仮橋(応急 組立橋)を設置することが適切であると 判断した。

復旧にあたっては、地域住民の方々の 協力や、災害時協力協定に基づき対応に あたった地元建設会社等の活躍により、

被災から1週間後の27日朝には、仮橋の 設置を完了し、この地域での重要なライ フラインである国道 220 号の道路交通機 能を復旧させることができた。(写真-7)

3.通信回線の確保

平成 29 年の九州北部豪雨においては、

自治体3 箇所、道路啓開現場1 箇所及び 被災箇所3箇所の合計7箇所に衛星通信

車等の防災情報通信機器を派遣した。こ れにより通信回線を確保し、被災自治体 へ被災箇所映像や気象情報の提供を行う ことで、迅速な災害復旧や二次災害防止 対応の後方支援を行った。各地における 具体的な支援状況について、以下に紹介 する。

(1)東峰村役場

東峰村役場は、電気・通信の途絶により、

テレビもインターネットも使えず、現在 の降雨状況も分からない事態となってい た。そこで、東峰村役場において、衛星通 信車の設置及び衛星携帯電話による通信 の確保を行った。(写真-8)

衛星通信車は、人工衛星を利用して通 信を構成できる衛星通信装置を搭載した 車両である。これにより、衛星通信回線で レーダ雨量計の画像を役場玄関のテレビ モニタへ接続・配信し、気象情報の確認を 可能とした。(写真-9)

また、ケーブルテレビも見られない状 況であったため、テレビが映るようテレ ビ用アンテナを屋上に設置した。

写真-6 磯脇橋の被災状況

写真-7 応急組み立て橋による復旧後

(12)

(2)朝倉市役所

朝倉市役所には、防災ヘリ「はるかぜ」

による上空からの被害状況調査映像をリ アルタイムで確認できるよう、Ku-SATを 派遣した。

Ku-SATは、衛星通信車に搭載されてい

る衛星通信装置を小型化し、可搬型にし たものである。Ku-SATを利用することで、

九州地方整備局からの映像を受信したり、

カメラと接続することで災害現場の映像 を送信したりすることが可能となる。ま た、朝倉市役所に派遣されたリエゾンが 収集した情報の整理及び報告書の作成が 円滑にできるようにするため、Ku-SATに 接続したパソコンを設置した。その後、道 路啓開が進み、TEC-FORCE隊員の活動範 囲が広がると、現場の写真やドローン映 像の送受信を行う必要が生じ、より高速 な通信回線へのニーズが高まった。また、

使用していた衛星回線は全国で共有され ているため、次の災害に備える観点から は、早期に別回線へ移行することが望ま しい状況であった。そこで、衛星通信に代 えて、より高速の通信を可能とするためi- RAS(アイラス)による通信回線の構築を

行った。(写真-10)

i-RASとは、国土交通省の光・無線統合

通信網を表す「integrated network」と無線 通信システムを表す「Radio Access System」 から作られた造語であり「災害対策用無 線アクセスシステム」の略称である。国土 交通省の事務所・出張所等から見通しが 可能な場所であれば、国土交通省の統合 通信ネットワークを延伸することができ、

離れた場所でも、衛星回線よりも高速な 通信環境を実現することが可能な通信シ ステムである。

朝倉市役所では、筑後川河川事務所の 片ノ瀬出張所との間を i-RAS で接続する ことで、通信回線の増強を行い、防災ヘリ 調査映像等を配信することができた。

(3)日田市役所

日田市役所では、朝倉市役所と同様に、

日田市役所と大分河川国道事務所の日田 国道維持出張所とをi-RASで接続した。

これにより、派遣されたリエゾンは九 州地方整備局の通信ネットワークと接続 されたパソコンにより、各種作業や情報 の送受信を円滑に行うことが出来た。

(4)現場状況の伝送

道路啓開現場では、昼夜を問わず道路 啓開作業が進められたため、その啓開状 況を災害対策本部で確認できるよう Ku- SAT を設置し映像の伝送を実施した。

この他、大分県の要請により、筑後川の 支川である小野川法面の崩落箇所、花月 川被災箇所のそれぞれに Ku-SAT と衛星 通信車を設置し、大分県庁へ映像伝送を 行った。

写真-10 朝倉市役所での i-RAS 設置作業 写真-8 衛星通信車の設置状況

写真-9 レーダ雨量画面の提供

(13)

4.夜間照明(電気)の確保

(1)平成 28 年熊本地震

平成28年の熊本地震においては、停電 が発生する中、照明車及びバルーンライ ト20基等を、震源地に近くの現地対策本 部が設置されていた「グランメッセ熊本」

をはじめ、被災自治体、被災箇所、避難場 所等に派遣し、24 時間体制で進められた 各種活動の支援を行った。(写真-11)

(2)平成 30 年中津市耶馬溪土砂災害 平成 30年4月11日未明に土砂崩れが 発生した中津市耶馬溪町では、24 時間体 制で実施された現地の捜索活動を支援す

るため、TEC-FORCE、照明車、遠隔操縦

式重機、衛星通信車等を派遣した。(写真- 12)

5.生活用水の確保

九州地方整備局が保有する海洋環境整 備船の「海煌(かいこう)」・「海輝(かい き)」は、有明海・八代海等の海洋汚染を 防除し、航行船舶の安全性を向上すると ともに、海域環境改善に寄与するため、海 上の漂流ごみの回収及び水質・底質調査、

潮流観測等の環境調査を実施している。

(写真-13)

両船舶には、乗組員用の生活水として 使用できる貯水タンクがあり、その容量 は「海煌」9,000 リットル、「海輝」3,000 リットルである。

平成28年の熊本地震発生時には、熊本 市の要請を受けて、この貯水タンク内の 生活水を被災者への支援として活用する 緊急対応を実施した。

本震発生直後の16日に、熊本港におい て「海輝」による給水活動を開始し、翌日 からは「海煌」・「海輝」の2隻体制で給水 活動を行った。(写真-14)

八代港で船舶へ水を供給し、熊本港で 給水活動を行う取組を 2 隻が連携して行 うことで、4月16日から5月2日の17日 間で、約11万2 千リットル、延べ3,583 名に飲料水を提供した。(図-2、図-3)供給

した水は 500ml ペットボトルに換算する

と、224,000本相当となる。

給水活動は、朝7時から夜9時まで実

施するとともに、熊本大橋を渡って、港の 給水場所まで水を求める方がスムーズに 移動できるように各地点に誘導員を配置 した。

「海煌」・「海輝」は、八代港で水を補給 写真-11 益城町役場に派遣した照明車

写真-12 照明車による夜間捜索活動

写真-13 海洋環境整備船「海煌(かいこう)

(写真上)と「海輝(かいき)」(写真下)

(14)

し、熊本港で給水活動を行っていたが、移 動にかかる時間を短縮し、より多くの給 水活動を実施するためには、水の補給場 所を、給水活動を行う熊本港により近い 場所で確保する必要があった。

このため、三角港(熊本県宇城市)に入 港し、被災者への入浴提供を行っていた 大型浚渫兼油回収船「清龍丸」(中部地方 整備局所属)から初の試みとして「海煌」

へ水の補給を行った。また、フェリーが運 休していた際には島原港においても水の 補給を行った。これらの対応は、平時に九 州地方整備局の船舶へ水を供給できる場 所の調査(港の水深確認や管理者との調 整)を実施していたため、迅速に行うこと ができたものである。

6. おわりに

九州地方整備局では、平時から防災力 向上のための研修、関係機関との共同訓 練、情報通信設備の強化、災害対策機器の 充実等に取り組んでいるところである。

今後も引き続き、これまでの災害時に 得られた知見を踏まえつつ、訓練や装備・

人材の強化を通して九州地域の多様な災 害リスク(豪雨災害、土砂災害、火山活動、

南海トラフ地震による津波災害、離島災 害等)への備えを強化して参りたい。また、

災害発生時には、迅速にライフラインを 復旧することで、救助・救援活動を支援す るとともに一日でも早く被災地における 日常生活の回復に向けた復旧活動に貢献 できるよう、さらなる防災力の向上に努 めて参りたい。

写真-14 「海煌」からの飲料水の提供状況

図-2 「海煌」・「海輝」による飲料水提供量

図-3 「海煌」・「海輝」による飲料水提供人数

(15)

JR九州における災害時の 交通ネットワーク確保に向 けた取組み

九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部施設部工事課

副課長 深江 良輔 主席 福村 周郎

1.はじめに

九州旅客鉄道㈱(以下、JR九州)は、

現在線路延長 2.242km(新幹線 250km、在

来線 1,992km)、567 駅を管理する鉄道事

業者である。1987年(昭和62年)4月の 会社設立以降の約30数年を振り返るとな

なつ星inKyushuをはじめとする観光列車

の導入、博多駅をはじめとする駅ビル開 発や連続立体交差化事業などの大規模プ ロジェクト、そして株式上場と完全民営 化をはじめとする経営の変革を進めてき た。

しかしながら、会社設立から今にいた るまで絶えず対応してきたものが自然災 害との対峙である。この要因が台風の通 り道ともいわれる九州の地域性や温暖化 等の気候変動が影響かは不明であるが、

1990年(平成2年)の豊肥線の災害から はじまり、今なお災害を起因として全22 線区のうち 3 線区に運休区間を有してい るのが実情である(うち筑豊線桂川~原田 間については2019年3月9日(土)に運 転再開予定)。これまでの長期運休を生じ た主な災害を表-1 に示す。平成初期のこ ろは数年おきの発生であったが、昨今は 毎年または 1 年間に複数回発生するなど 発生頻度が増加する傾向にある。当報告 では、最近の災害事例を紹介するととも に、それらの災害へのJR九州の事前対応 としての備えについて紹介する。

2.災害の事例

ここでは、JR九州における災害につい て、小規模なものから地震や豪雨等の大 規模な災害の事例について紹介する。

(1)小規模災害

台風等により複数日の運休を必要とす る災害が目立つが、年間を通じてもっと も多い災害は数時間の運転見合わせを必 要とする小規模なものである。2017 年度 の災害発生一覧を表-2 に示す。倒木、落 石、土砂流入など環境変化や斜面の風化 劣化を起因として年間を通じて発生し、

列車を利用するお客さまに多大なご迷惑 をおかけしている。樹木医を活用した計 画的な枯れ木の除去、のり面工事等によ る計画的な斜面災害対策等のハード対策 を講じているが、撲滅には程遠い状況で ある。しかしながら、計画的な点検や安全 投資により自然環境の変化を読み取り、

継続的にこれらの災害に対しても対策を 進めていく計画である。

(2)豪雨災害

昨今高い時雨量の降雨が特定のエリア に数時間留まることによる災害が発生し ている。特に平成29年7月九州北部豪雨 では、線状降水帯の影響により福岡県お よび大分県の日田彦山線と久大線が大き な被害を受けた。図-1 に被災時点の被害 箇所一覧を示す。特定のエリアに被害が 集中していることがわかる。久大線光岡・

日田間の筑後川水系花月川に架橋されて いた花月川橋りょうは橋脚と橋桁が流失 し、架橋から80数年もの間、列車の運行 を支えてきた橋がもろくも崩れ去り、自 然の脅威をあらためて気づかされる災害 であった。写真-1 に被災時と復旧後の状 況を示す。

(3)台風災害

台風については、これまで多くの被害 を受け、その度に応急・復旧を繰り返して きたが、最近ではその被害が大規模化し

表-1 長期運休を生じた主な災害

年 度 月 日 災 害 名 被害線区数 被害箇所数

H2年度 7月2日 豊肥線豪雨災害 12 186

H5年度 6月13日~9月5日 九州中南部豪雨災害 15 950

H16年度 9月14日 豊肥線落石災害 1 1

H24年度 7月11~14日 九州北部豪雨災害 9 201

H25年度 2月13日 雪害 1 31

H27年度 1月23~25日 雪害 6 44

H28年度 4月14~16日 熊本地震災害 10 990

7月5~7日 九州北部豪雨災害 12 109

9月16~17日 台風18号災害 8 194

H30年度 7月6~7日 平成30年7月豪雨災害 19 248 H29年度

(16)

てきており、線路だけでなく周辺の山間 部や隣接する道路などと一体的に被災す る事例が増えている。

写真-2に2017年9月の台風18号による 日豊線津久見・日代間の被災時と復旧後 の状況を示す。

(4)地震災害

平成28年4月の熊本地震では大小の被 害を加えると 1,000 箇所以上の被害が発 生した。豊肥線肥後大津~阿蘇間につい ては今なお運休しており現在復旧工事を 邁進しているところである。熊本地震で は写真-3に示す RC高架橋の被害や写真- 4 に示す斜面からの落石など被害が多方 面わたり、災害箇所へのアクセスや点検 者の安全確保などを含め復旧に時間を要 すことが特徴である。

災害種別 梅雨期 台風 その他

道床流出 10 12 0 22

線路浸水 6 2 1 9

土砂流入 20 73 12 105

築堤崩壊・変状 14 12 26 52

切取崩壊・変状 17 14 10 41

落石 9 0 14 23

倒木 48 93 84 225

その他 25 13 52 90

合計 567

表-2 2017 年度災害発生件数1)

写真-1 花月川橋りょう

(上)被災時 (下)復旧後

写真-2 日豊線津久見・日代間

(上)被災時 (下)復旧後

図-1 九州北部豪雨における被災箇所一覧

写真-3 高架橋ひび割れ 表-2 2017 年度災害発生件数1)

(17)

2.災害への備え

JR九州では、災害への備えとして斜面 対策などのハード対策を計画的に進めて いるが、列車をご利用されるお客さまの 安全を第一に各種ソフト対策も実施する ことによる運行の規制等を組み合わせて 確実な安全の確保に努めている。

(1)雨への備え

雨への備えとして、沿線の斜面を評価 し、必要な個所にはのり面工や待受工の 整備を進めている。一部箇所では補助金 を活用したものもあり、沿線一体となっ た災害対策を進めている箇所もある。

一方で、災害の誘因となる降雨の状況 から運行を規制する対策も実施している。

JR九州ではおおむね 10~15km間隔で全 143箇所の雨量計を設置しており、図-2に 示す雨量特性図を細分化されたエリアご とにその特性図を設定し、沿線の環境に 合わせた運行の規制を実施している。

局所的な短時間雨量については、一定 の降雨以下になることで、点検による安 全を確認後に運転再開が可能である。一 方で梅雨時期のような長雨では蓄積され た連続雨量により少雨でも運転を規制し なければならない状況もあり、お客さま への影響が長時間に及ぶこともある。

また、昨今の気象に関する予測技術レ ベル向上による数時間先の雨量を参考に 運転を規制することも実施している。

特に台風等の影響が予測される場合は、

計画的な運休を行うことによる対応を実 施している。お客さまに対しては多大な ご迷惑をお掛けすることになるが、計画 的な運休により設備の点検を行う立場と しては効率的な点検を計画できるため、

ダウンタイムを少しでも短縮し、早期に 運転再開できるように対応している。

(2)地震への備え

地震に対する備えとしては、構造物の 建設年代や南海トラフ等の大規模地震影 響エリアに属する構造物の耐震補強を進 めている。特に駅部の高架橋は多くのご 利用者や沿線の住民の方への影響もあり、

国や自治体からの支援をいただきながら 進めている箇所もある。早期の耐震補強 完了が理想ではあるが、高架下のご利用 状況や狭隘箇所の工事となるため、完了 に時間を要しているのが実情である。

また、発生する地震に対しては、JR九 州ではおおむね20km間隔で全48箇所に 地震計を設置しており、震度階級ではな く、構造物への影響が大きい揺れをあら わす計測震度を参考に運転規制を実施し ている。大規模な地震が発生した場合に は、列車は走行中に停車し、点検により安 全が確認された後の運転再開となる。

点検に時間を要す場合などでは列車に 乗車中のお客さまに大変なご不便をおか けする現状にある。一方で、津波に対する 対策としては南海トラフで津波が予測さ れているエリアについて津波発生時の避 難箇所の整備を行うとともに、定期的な 避難訓練を自治体等の関係機関とも連携 して実施している。

図-2 雨量特性図イメージ 写真-4 落石災害

(18)

(3)風への備え

風への備えとしては、過去に突風等に より列車に影響があったことを鑑みて、

線路状況や周辺環境から必要な個所に風 速計を設置し、一定の風速を検知した場 合に運転の規制を行うことにより安全を 確認する対策を実施している。風による 規制が不要となるようなハード対策が望 まれるところではあるが、抜本的な対策 まで至っていないのが現状である。

4.災害発生時の具体的な取り組み

台風の上陸が想定される状況における 一般的なJR九州の運転再開までの一連の 流れについて図-3 に紹介する。このよう に台風が最接近する前には台風通過後の 必要な点検の体制を確保し、台風通過後 の気象状況から早期に点検を開始できる ように準備を行っている。

また、大規模な災害が発生し、長期間の 運休が必要となる場合には代行バスの準 備・対応を行うことで、交通ネットワーク の確保に努めている。

5.災害時の鉄道事業者の役割

大規模災害時には、正確な情報をお客 さまに提供することが鉄道事業者にもっ とも求められている。また、災害が大規模 化している現状を鑑みると鉄道施設だけ でなく、周辺の道路、河川、民家等が一体 で被災しており、状況に応じて二次災害 防止を最優先に関係機関が連携して応急 復旧に取り組みことが望まれる。

6.今後の取り組み

インバウンドに代表されるように各種 インフラを外国からの来訪者が利用する 機会が増大している。鉄道も例外ではな く、新幹線や特急列車を中心に多くの外 国人旅行者のご利用が増えている。情報 の伝達においては、日本語による情報提 供だけでなく、外国語による情報提供が 求められる場面が増えてきている。また、

SNS などの情報ツールが多様化するなか で、確実な手段で、正確な情報を提供す

ることが一層求められる状況にある。JR 九州では、2019年1月31日より運行状況 について公式ホームページからの情報提 供に加えSNSによる情報提供を開始した

2)

現在は日本語と英語のアカウントのみ であるが、今後は韓国語や中国語への対 応を計画している。このようなJR九州公 式のアカウントを平時より整備、普及す ることで災害時等の異常時に確実な情報 伝達ツールとなることを期待する。

また、気象予測に関する技術開発や各 インフラ機関との連携により面的な気象 災害の予測や被害箇所の絞り込みをおこ なうことで、リアルタイムによる運転規 制やダウンタイムのさらなる短縮の制度 整備にも努めてまいりたい。

7.さいごに

2018年12月14日に防災・減災、国土 強靭化のための 3 か年緊急対策が閣議決 定され発表された3)。それを受けて、国土 交通省では、国民経済・生活を支える交通 インフラ等の機能維持として、鉄道に対 しても鉄道河川橋梁の流失・傾斜対策、斜 面からの土砂流入防止等の緊急対策を推 進すると発表された。

JR九州としても「重要インフラ」と位 置づけられる九州の交通ネットワークを 担う機関として、国や地方公共団体等の

図-3 台風対応フローのイメージ

(19)

各関係機関との連携や新たな技術の導入 などによりさらなる災害対策を進め、沿 線地域とともに将来に向けた持続的な発 展に貢献できればと考えている。

参考文献

1)2018.6(一社)日本鉄道施設会 協会

誌2018.6月号 平成29年度災害概要(JR

九州)福村周郎.

2)2019.1.29 JR九州HP 「列車運行情報

に 関 す る Twitter 配 信 を 開 始 し ま す 」 http://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/af ieldfile/2019/01/29/Newsrelease-twitter.pdf.

3)2018.12.14_首相官邸HP_「防災・減災、

国土強靭化のための3か年緊急対策」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jyuyouinfur a/sankanen/siryou1.pdf.

(20)

福岡市下水道 BCP の充実強 化~災害時のライフライン 確保対策~

福岡市道路下水道局計画部 下水道事業調整課長 原口 明

1.はじめに

兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地 震では、尊い生命が犠牲となるとともに、

多くの都市機能を喪失する甚大な被害を 受けました。また、平成28年4月の熊本 地震、平成30年6月18日の大阪府北部 の地震、9月6日の北海道胆振東部地震な ど、ここ数年、全国的に大きな地震が頻発 しています。

福岡市においては、平成 17 年3 月20 日に発生した玄界灘を震源とする「福岡 県西方沖地震」(マグニチュード7.0、最大 震度 6 弱)により、管きょや水処理セン ターにおける一部の設備が損傷するなど、

下水道施設も被害を受けました。

また、平成 28 年の熊本地震では、下水 道施設に係る災害復旧支援のため、延べ 658 人の福岡市職員を熊本県内の市町に 派遣しましたが、(写真-1、写真-2)改めて 感じたことは、「災害は、いつ、どこで発 生するか分からない。」ということでした。

そして、有事に際しては、状況に応じた 対応を迅速かつ的確に行う必要があり、

特に発災直後は、初動対応が極めて重要 となるため、その円滑な実施に向けて平 時から備えておくことの重要性を再認識 しました。

文部科学省の調査によると、今後30年 以内に福岡市の都心部を縦断する警固断 層帯南東部を震源とする地震が発生する 確率は 0.3~6%と、日本の主な活断層の 中では高いグループに属していることか ら、福岡市における地震・津波対策の強化 が求められています。

2.福岡市の下水道について

下水道は、汚水の排除・処理による公衆 衛生の確保や、雨水の排除による浸水の 防除など、市民生活や経済活動を支える 根幹的な都市基盤施設として重要な役割 を果たしています。

福岡市では、水処理センター6箇所、ポ ンプ場66箇所、管きょ約7,165km(平成 30年3月末)の膨大な下水道資産を抱え 表-1 福岡県西方沖地震による下水道施設の

被害概要

写真-2 災害復旧支援(平成 28 年熊本地震)

【写真-3-21次調査班の出発式の様子(4/19)】

写真-1 災害復旧支援隊の出発式 (平成 28 年熊本地震)

施設種別 被 害 状 況 被害額

(百万円)

管きょ  2.7km (クラック、部分破損) 103

ポンプ場  1箇所  (場内道路沈下)  11 水処理

センター  4箇所  (散気装置破損等) 156

合 計 270

(参考)福岡市内の公共施設全体被害額 約22,400百万円

(21)

ています。また、下水道の人口普及率は

99.6%に達し、市内における汚水処理の大

部分を下水道が担っていることから、こ れらの施設が被災した場合には、市民の 健康や生活環境を損なうおそれがあるほ か、都市機能等に甚大な影響を及ぼすこ とが予想されます。

3.下水道 BCP について

このようなことから、今後の地震・津波 対策では、「防災」に加えて、被害の最小 化を図り、かつ、早期の機能回復を図る適 切な「減災」によって、人命を守ることは もちろんのこと、施設機能を維持するこ とが重要となっています。

このため、地震や津波により下水道機 能や業務レベルが低下した場合でも機能 を継続し、また被災箇所を早期に復旧す るため、担当職員が行うべき非常時対応 の手順や、平常時から取り組むべき内容 を定めた下水道業務継続計画(下水道 BCP)の策定が求められています。(図-1) 福岡市では、平成26年度に「福岡市下 水道業務継続計画(地震・津波編)(案)」

(以下、福岡市下水道 BCP)を策定しま した。想定する地震は、「警固断層南東部 を震源とする地震」であり、地震の規模は マグニチュード 7.2 で断層に近い市内の 中心部などを震度 6 強、市街地の広範囲 を震度6弱と想定しています。

この「警固断層帯南東部」は、福岡市の 都心部を縦断していることから、地震が 発生すれば、管きょの破断等が生じ、市民 生活や経済活動に甚大な影響を及ぼすこ とが想定されています。(図-2)

なお、災害が発生した際の応急対策に ついては、兵庫県南部地震や東北地方太 平洋沖地震における上水道の復旧実績を 踏まえ、発災後30日までに、下水道機能 として最低限必要な沈殿、消毒機能を確 保することを目標としています。

4.福岡市下水道 BCP の充実強化

災害時における対応力を高めるため、

下水道関連部署の課長で構成する「福岡 市下水道BCP検討委員会」を設置し、年 度毎に検討課題を定め、課題解決に向け た取り組みを進めています。これまで実 施してきた取り組みのうち、主なものを 以下で紹介します。

(1)支援協定の締結に向けた検討 災害時支援協定とは、大規模災害時等 に迅速に応急対応を行えるよう、応急復 旧活動に関する人的・物的支援について、

地方公共団体(以下、自治体)と関係団体 や関係機関等との間で締結される協定の ことです。

福岡市では、災害時における公共イン フラの復旧を想定し、既に複数の民間団 体と災害時支援協定を締結していますが、

下水道は24時間365日休むことなく汚水 図-2 警固断層帯分布図

図-1 下水道 BCP のイメージ

地下鉄 天神駅 JR博多駅

警固断層帯の分布

地 下 鉄 天 神駅 JR博多駅

(22)

を排除・処理しなければならないネット ワーク型インフラであり、水の流れを上 下流の高低差によりコントロールしてい る点など、他のインフラと比較しても特 殊性を有することから、より迅速な応急 対応を行うために、下水道に関する高い 専門性を有した民間団体と災害時支援協 定を締結することが必要です。

このため,下水道の災害復旧に特化し た災害時支援協定の締結に向け、複数の 民間団体とともに協議を行いながら検討 を進めています。

(2)受援体制の充実

大規模災害により下水道施設に被害が 生じた場合は、自治体間で相互に支援す るルールが全国的に取り決められており、

被災した自治体に対して全国各地から災 害復旧のための支援隊が派遣されること になります。平成28年の熊本地震におい ても、全国各地から支援隊が派遣されま した。(写真-3)

福岡市の下水道施設が被災した場合、

災害復旧を円滑に進めるためには、被災 後速やかに支援隊を受け入れる受援体制 を整える必要があることから、支援隊集 積基地の検討を行いました。支援隊の作 業に必要となるスペース等の検討を行い、

会議室の広さ等から集積基地を西部水処 理センターに決定しました。また、支援隊 の作業会場、休憩室や駐車場、緊急資機材 置場等のレイアウトを作成し、必要資機 材(机、椅子等)を確保しました。

今後とも、支援隊集積基地で必要とな る電気容量の確保など、さらなる受援体 制の充実に向けた検討を継続して実施し ていきます。

(3)下水道BCP研修

災害時にどのように行動すべきか、職 員一人ひとりの認識を深めるため、定期 的に下水道BCPに関する研修を実施して います。(写真-4)

平成28年熊本地震における災害復旧支 援を契機として研修を強化しており、平 成29年度は下水道事業に携わる係長以下 の全職員を対象とした研修を実施しまし た。この研修は毎年実施しており、下水道

関連部署に新たに配属になった職員に受 講を義務付けています。

研修の実施にあたっては、下水道 BCP の内容に加え、平成28年熊本地震で災害 復旧支援を経験した職員に現場での体験 談を具体的に話してもらうなど、有事に おける行動について、職員一人ひとりが しっかりと認識し,考えを深めるための 工夫も行っています。

(4)下水道BCP訓練

災害発生時における対応力を高めるた めの各種訓練を実施しており、平成30年 度は下水道BCPで定めた各部門の役割に 応じて3つの訓練を実施しました。

①水処理センターにおけるシナリオ非提 示型訓練

水処理センターの被災後、迅速かつ円 滑な対応を行うため、福岡市役所本庁を 本部とし、市内の全水処理センターにお いて被災対応訓練を実施しました。

写真-3 支援隊集積基地(熊本市上下水道局) の様子(平成 28 年熊本地震)

写真-4 下水道 BCP 研修

(23)

この訓練は職員だけでなく、水処理セ ンターの維持管理業者にも参加していた だき、訓練参加者には想定する被災状況 等を事前に知らせず、その場で提示され る条件に応じて、対応策や優先順位など を決定するシナリオ非提示型で行いまし た。操作パソコンや現場設備に故障状況 が記された紙を貼り付けたり、水を消毒 剤に見立てて漏洩を再現する等、被災時 に近い状況をつくる工夫を行いました。

(写真-5、写真-6)

②支援隊集積基地設置訓練

災害時に他都市から派遣される支援隊 の集積基地の設営を迅速かつ円滑に行う ため、支援隊の集積基地と想定している 西部水処理センターにて訓練を実施しま した 。

全国 20都市から約90名の支援隊が来 る想定で、支援隊の作業会場や臨時駐車 場、休憩所等の設営を4班体制で行いま した。(写真-7、写真-8)

③下水管きょの実地調査訓練

災害発生後における下水管きょの被害 調査を迅速かつ円滑に行うため、実地調 査訓練を実施しました。

実施にあたっては、支援隊集積基地設 置訓練で設置した作業会場を本部とし、

実際に西部水処理センター周辺の公道に 出て、5班体制で下水道管きょを調査す る作業を行いました。(写真-9、写真 10)

また調査中に余震が発生した想定で、

安否確認を行うなど、実際に起こり得る 事態を想定した訓練を実施しました。

5.おわりに

下水道BCPは、一旦計画を策定すれば それで良いというものではなく、受援体 制も含め,被災時における対応力の強化 に向けて、より実効的な計画となるよう 内容の充実を図っていくことが肝要であ ります。

平成30年度に実施した3つの訓練にお いても、様々な課題が浮かび上がってお り、現在、改善策を検討しています。

今後も下水道BCPの見直しや継続的な 研修・訓練の実施により、災害時における

下水道機能の確保対策をより充実させる とともに、職員の災害対応スキルの向上 を図っていきたいと考えています。

写真-7 支援隊作業会場の設置(作業中)

写真-8 支援隊作業会場の設置(完了)

写真-5 設備の故障想定(貼紙の設置)

写真-6 被災を想定した仮設排水管の接続訓練

(24)

下水道機能の確保対策をより充実させる とともに、職員の災害対応のスキルの向 上を図っていきたいと考えています。

写真-10 下水管きょ実地調査 写真-9 調査前の打ち合わせ

参照

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