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現代アジアにおける家族意識の計量社会学的研究 東アジアならびに東南アジア 7 地域を対象として 伊達平和 2016 年

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(1)

Title

現代アジアにおける家族意識の計量社会学的研究−東ア

ジアならびに東南アジア7地域を対象として−( Digest_要

約 )

Author(s)

伊達, 平和

Citation

Kyoto University (京都大学)

Issue Date

2016-03-23

URL

https://doi.org/10.14989/doctor.k19446

Right

学位規則第9条第2項により要約公開

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

none

(2)

現 代 ア ジ ア に お け る 家 族 意 識 の 計 量 社 会 学 的 研 究

― 東 ア ジ ア な ら び に 東 南 ア ジ ア 7 地 域 を 対 象 と し て ―

伊 達 平和

2 0 1 6 年

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1

論 文 要 約

ア ジ ア 諸 国 は 現 在 、 出 生 率 の 著 し い 低 下 、 高 齢 化 の 進 行 や 離 婚 率 の 上 昇 と い っ た 人 口 学 的 側 面 の 変 化 に 直 面 し て お り 、 女 性 の 高 学 歴 化 と 就 業 機 会 の 拡 大 も 進 み 、 日 常 的 な 人 間 関 係 を 支 え る 人 々 の 親 密 圏 も 変 化 を 余 儀 な く さ れ て い る 。 ま た ア ジ ア 諸 国 は 、 こ の 親 密 圏 の 変 容 の な か で 、 老 親 に 対 す る ケ ア 責 任 や 女 性 差 別 的 な 家 父 長 的 価 値 観 の 転 換 な ど 、 家 族 に よ っ て 対 処 さ れ る べ き 共 通 の 課 題 を 抱 え て い る 。 ア ジ ア は 西 洋 と 比 し て 家 族 主 義 を 一 様 に 強 く 維 持 し て い る と さ れ て き た が 、 近 年 そ の 内 部 の 多 様 性 に も 注 目 が 集 ま っ て い る 。 西 洋 諸 国 の 家 族 研 究 が 差 異 や 共 通 性 に 関 す る 知 見 を 蓄 積 し て い る の に 対 し 、 社 会 文 化 的 に 多 様 性 が あ る ア ジ ア 諸 国 に つ い て は 、 い ま だ に 不 明 瞭 な 部 分 が 多 く 、 大 規 模 な 調 査 デ ー タ に よ る 実 証 的 な 研 究 が 必 要 と さ れ て い る 。 以 上 の 問 題 関 心 の も と 、 本 論 文 は 、 西 洋 と 比 し て 家 族 主 義 の 強 さ が 強 調 さ れ る 現 代 ア ジ ア に お い て 、 東 ア ジ ア 4 地 域 ( 日 本 ・ 韓 国 ・ 中 国 ・ 台 湾 ) な ら び に 東 南 ア ジ ア 3 地 域 ( ベ ト ナ ム 北 部 ・ タ イ ・ マ レ ー シ ア ) の 計 7 地 域 の 数 量 的 な 家 族 意 識 の 調 査 デ ー タ を 用 い 、 計 量 社 会 学 的 方 法 に よ っ て ア ジ ア 内 部 の 差 異 と 共 通 性 を 実 証 的 に 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て い る 。 こ こ で い う 家 族 意 識 と は 、家 族 生 活 の 諸 相 に 関 す る 様 々 な 意 識 の 集 合 体 を 指 し て い る が 、本 論 文 で は 、 そ の 中 で も 子 世 代 か ら 親 世 代 へ の 経 済 的 援 助 規 範 意 識 と 家 父 長 制 意 識 に 焦 点 を 当 て る 。 世 代 間 援 助 規 範 意 識 に 注 目 す る 理 由 と し て は 、 ア ジ ア 諸 地 域 が 急 速 な 少 子 化 と 高 齢 化 を 経 験 し て お り 、 高 齢 期 の 親 の ケ ア が 喫 緊 の 課 題 と な っ て い る た め で あ る 。 ま た 家 父 長 制 意 識 に つ い て は 、 女 性 の 地 位 向 上 や 権 利 拡 大 と い っ た グ ロ ー バ ル な 文 脈 の 中 で 、 旧 来 の 男 性 優 位 を 象 徴 す る も の と し て 根 絶 が 目 指 さ れ て い る こ と が 理 由 と し て あ げ ら れ る 。 こ の よ う な 家 族 意 識 の 2 つ の 側 面 に 関 す る 先 行 研 究 は 多 い が 、 東 ア ジ ア な ら び に 東 南 ア ジ ア と い う 文 脈 で 大 規 模 調 査 デ ー タ を 用 い た 比 較 研 究 は 管 見 の 限 り 存 在 し て い な い 。 家 族 意 識 に は 他 に も 様 々 な も の が 考 え ら れ る が 、現 代 ア ジ ア の 変 容 す る 親 密 圏 と い う 文 脈 の な か で 、 こ れ ら を 数 量 的 に 比 較 分 析 す る こ と が 、 ア ジ ア の 将 来 を 見 据 え る 上 で の 基 本 的 な 資 料 を 提 供 す る と 期 待 で き る 。

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2 以 下 で は ま ず 、 こ れ ら の 家 族 意 識 の 分 析 を 行 う 上 で 、 本 論 文 が 背 景 と す る 視 点 に つ い て 整 理 す る 。 性 別 役 割 分 業 に 基 づ く 夫 婦 と 、 そ の 子 ど も か ら 構 成 さ れ る 核 家 族 ( い わ ゆ る 「 近 代 家 族 」)は 、近 代 産 業 社 会 に 適 合 的 な 家 族 形 態 で あ り 、ど の よ う な 社 会 で も 、 産 業 化 が 進 め ば 、 こ の よ う な 家 族 形 態 が 優 勢 と な る 。 こ の 収 斂 論 は 、 現 在 で は 、1960 年 代 の ア メ リ カ で 提 出 さ れ た 素 朴 な 予 言 と さ れ 、一 般 に は 否 定 さ れ て い る 。 現 代 を表 すキーワードは、むしろ家 族 の「多 様 性 」であり、家 族 研 究 の多 くが、 「近 代 家 族 」の揺 らぎを認 めている。例 えば、離 婚 ・再 婚 の増 加 、未 婚 化 ・晩 婚 化 、共 稼 ぎ世 帯 ・シングル世 帯 ・ 単 親 世 帯 ・ステップファミリー・同 性 愛 カップル・同 棲 の増 加 など、 家 族 の諸 相 は、地 域 的 な差 異 を伴 って急 速 に変 容 している。こ の よ う な 西 洋 の 家 族 変 動 に 対 し 、 ア ジ ア 地 域 に お い て も 同 じ 変 化 が 認 め ら れ る 一 方 、 そ れ で も な お 差 異 は 依 然 と し て 残 っ て い る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 そ の よ う な 立 場 で は 、 近 年 で は 、 特 に 家 族 構 造 ( 父 系 制 や 双 系 制 ) の 違 い や 近 代 化 の 速 度 の 違 い と い っ た 側 面 に 注 目 が 集 ま っ て い る 。 例 え ば 、 東 南 ア ジ ア は 基 本 的 な 家 族 構 造 が 双 系 制 で あ り 、 規 範 意 識 が ル ー ス で あ る と 指 摘 さ れ て い る 。 一 方 、 東 ア ジ ア の 家 族 構 造 は 父 系 制 で あ り 、 父 方 の 家 系 を 維 持 す る た め に 、 相 続 や 結 婚 と い っ た 家 族 形 成 に 特 徴 的 な 規 範 や 、 家 父 長 に 対 す る 服 従 と い っ た 権 威 主 義 的 な 規 範 が あ る 地 域 と さ れ る 。 ま た 、 ア ジ ア 地 域 は 共 通 し て 近 代 化 を 進 め て い る が 、 韓 国 や 台 湾 は そ の 速 度 が 非 常 に 短 期 間 で あ り 、「 圧 縮 さ れ た 近 代 」と 呼 ば れ る 近 代 化 を 進 ん で き た 。 こ の よ う な 「 圧 縮 さ れ た 近 代 」 に お い て は 、 人 々 の 意 識 は 世 代 や 学 歴 と い っ た そ の 人 の 属 性 に よ っ て 差 異 が 生 ま れ や す く な る と 論 じ ら れ て い る 。 こ の よ う な 2 つ の 視 点 に 着 目 し た う え で 、 本 論 文 で は 東 南 ア ジ ア な ら び に 東 ア ジ ア の 家 族 意 識 を 分 析 し て い る 。 本 論 文 は 、序 章 、第 1 章 か ら 第 4 章 、そ し て 終 章 の 全 6 章 で 構 成 さ れ て い る 。 序 章 で は 、 本 論 文 で 分 析 す る 家 族 意 識 の 背 景 と な る 家 族 変 動 と 社 会 変 動 に つ い て 、 マ ク ロ 統 計 か ら 整 理 し 、 家 族 の 差 異 と 共 通 性 に つ い て の 基 礎 的 な 情 報 を 提 示 し て い る 。ま ず 合 計 特 殊 出 生 率 、65 歳 以 上 人 口 割 合 か ら は 、ア ジ ア 諸 地 域 で は 、西 洋 と 共 通 し て 、急 速 な 少 子 高 齢 化 が 進 行 し て い る こ と が 示 さ れ る 。ま た 、 平 均 初 婚 年 齢 の 上 昇 と 離 婚 率 の 上 昇 か ら は 、 家 族 の 安 定 性 が 揺 ら い で い る 地 域 と 比 較 的 安 定 し て い る 地 域 に 分 か れ る こ と が 明 ら か と な る 。 さ ら に 、 年 齢 段 階

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3 別 女 子 労 働 力 率 の 推 移 に 着 目 す る と 、 も と も と 女 子 労 働 力 率 が 高 く 現 在 に お い て も 変 化 に 乏 し い 中 国 ・ ベ ト ナ ム ・ タ イ 、 M 字 曲 線 を 描 き 男 性 稼 ぎ 手 モ デ ル が 維 持 さ れ て い る 日 本 ・ 韓 国 、 初 期 ピ ー ク 型 を 描 く 台 湾 や 女 子 労 働 力 率 が 低 い マ レ ー シ ア な ど 、 各 地 域 に お け る 特 徴 的 な パ タ ー ン も 存 在 し て お り 、 現 在 で も 多 様 な あ り 方 を 維 持 し て い る 。 次 に 社 会 変 動 に つ い て 、 一 人 あ た り GDP、 高 等 教 育 就 学 率 や 都 市 人 口 比 率 な ど の 社 会 的 な マ ク ロ 統 計 か ら は 、 ア ジ ア 諸 地 域 は 、 差 異 を 伴 い な が ら 急 速 に 近 代 化 が 進 ん で い る こ と を 明 ら か に し て い る 。 以 上 の よ う に 、 序 章 で は ア ジ ア 諸 地 域 は 、 人 口 学 的 な 変 化 や 経 済 的 発 展 に つ い て は 西 洋 と 同 様 の 傾 向 を 共 有 し て い る が 、 そ の 一 方 で 家 族 変 容 が 異 な っ て い る 側 面 も あ る こ と を 示 し て い る 。 第 1 章 で は 、 家 族 の 多 様 性 を 分 析 す る 先 行 研 究 の レ ビ ュ ー を 通 し て 、 本 論 文 に お け る 分 析 視 角 を 精 緻 化 し て い る 。 第 1 節 で は 、 産 業 化 に 着 目 す る 分 析 視 角 を Goode に よ る 機 能 主 義 的 収 斂 論 を 中 心 に レ ビ ュ ー し て い る 。Goode に よ る と 、 産 業 化 に よ っ て 家 族 は 夫 婦 家 族 (Conjugal family) へ と 収 斂 す る も の と 考 え ら れ て い た 。 そ の 一 方 で 、 第 二 波 フ ェ ミ ニ ズ ム や 社 会 史 研 究 の 「 近 代 家 族 論 」 は こ の よ う な 見 方 を 批 判 し 、 夫 婦 家 族 が 、 第 二 次 世 界 大 戦 後 の ア メ リ カ に お け る 「 特 殊 」 な 家 族 に す ぎ な い こ と を 示 し た 。 こ の 流 れ を ふ ま え て 、 後 期 近 代 社 会 論 は 、む し ろ 家 族 の 多 様 化 を 強 調 し て い る こ と を 指 摘 す る 。続 い て 第 2 節 で は 、 福 祉 制 度 や 脱 物 質 主 義 的 価 値 観 に よ っ て 家 族 の 差 異 を 分 析 し て き た 、 福 祉 レ ジ ー ム 論 や 第 二 の 人 口 転 換 論 に つ い て 、さ ら に Therborn の 比 較 家 族 論 に つ い て 整 理 す る 。 こ の よ う な 分 析 視 角 は 西 洋 の よ う に 個 人 主 義 が 進 み 、 ま た 福 祉 制 度 の 多 様 性 が み ら れ る 地 域 で は 有 効 で あ る が 、 社 会 保 障 な ど の 福 祉 制 度 が 西 洋 よ り 後 発 的 で 差 異 に 乏 し く 、 意 識 に お い て は 強 固 な 家 族 主 義 を 維 持 し て い る ア ジ ア 諸 地 域 を 分 析 す る に は 不 十 分 で あ る こ と を 論 じ る 。一 方 Therborn は 父 系 制 や 双 系 制 な ど の 家 族 構 造 の 差 異 や 宗 教 的 規 範 に 基 づ く 「 家 族 シ ス テ ム 」 に 着 目 し て お り 、 ア ジ ア の 比 較 分 析 は こ の 視 点 が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 す る 。 第 3 節 で は Therborn の 家 族 論 を 批 判 的 に 検 討 し「 家 族 シ ス テ ム 」の 中 で も 家 族 構 造 に 着 目 す る こ と が 重 要 で あ る と 述 べ る 。 さ ら に 第 4 節 で は 東 ア ジ ア に 着 目 す る 分 析 視 角 で あ る Chang の 「 圧 縮 さ れ た 近 代 」 論 に つ い て レ ビ ュ ー を 行 い 、 続 く 第 5 節 で は 、Therborn と Chang の 視 角 が 現 代 ア ジ ア に お け る 家 族 意 識 の 差 異 と 共 通 性

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4 を 分 析 す る 上 で 有 効 で あ る こ と を 導 い て い る 。 第 2 章 は 、 東 ア ジ ア な ら び に 東 南 ア ジ ア の 経 済 的 援 助 規 範 意 識 に つ い て 分 析 し て い る 。経 済 的 援 助 規 範 意 識 は 子 の 性 別( 男 性 ・ 女 性 )、配 偶 状 況( 既 婚 ・ 未 婚 ) や 親 と 子 と の 血 縁 関 係 ( 実 親 ・ 義 親 ) か ら 整 理 さ れ 、 こ れ ら の 組 み 合 わ せ よ り 6 つ の 経 済 的 援 助 規 範 意 識 を 設 定 す る 。 こ れ ら の 経 済 的 援 助 規 範 意 識 を 地 域 別 と 年 齢 段 階 別 に プ ロ ッ ト し た 場 合 、 ① 男 性 に 対 す る 規 範 に つ い て は 、 既 婚 男 性 が 実 親 に 援 助 す る 場 合 の 規 範 が 最 も 強 く な り 、 女 性 に 対 す る 規 範 に つ い て は 、 既 婚 女 性 が 実 親 に 援 助 す る 場 合 の 規 範 が 最 も 弱 く な る と い う 父 系 制 の 回 答 パ タ ー ン ( 山 型 ― 谷 型 ) と 、 ② 6 つ の 経 済 的 援 助 規 範 の 強 さ に 差 が み ら れ な い 双 系 制 の 回 答 パ タ ー ン( 平 坦 型 )、そ し て ③「 圧 縮 さ れ た 近 代 」を 経 験 し て い る 韓 国 と 台 湾 で は そ れ ら の 回 答 パ タ ー ン が 世 代 に よ っ て 異 な る と い う 仮 説 を 示 す 。 分 析 の 結 果 、 ① と ③ は 支 持 さ れ た が ② に つ い て は 修 正 が 必 要 と な っ た 。 双 系 制 の タ イ と マ レ ー シ ア は 平 坦 型 で は な く 右 下 が り 型 、 そ し て 父 系 制 の 東 ア ジ ア 4 地 域 と ベ ト ナ ム 北 部 は 山 型 ― 谷 型 と い う よ う に 、 家 族 構 造 に よ っ て 、 経 済 的 援 助 規 範 の パ タ ー ン が 異 な る こ と が 実 証 さ れ て い る 。 そ し て 「 圧 縮 さ れ た 近 代 」 を 経 験 し て い る 韓 国 と 台 湾 で は こ れ ら の パ タ ー ン が 混 在 し て い る 。 し か し 、 特 に 父 系 制 の 4 地 域 で は 家 族 構 造 の 影 響 以 外 の 特 徴 も 示 さ れ る 。 す な わ ち 、 戦 後 共 産 主 義 化 が 進 み 一 人 っ 子 政 策 を 押 し 進 め た 中 国 、近 代 化 を 早 く か ら 推 し 進 め 、 年 金 や 介 護 保 険 制 度 な ど の 社 会 保 障 制 度 を 整 備 し て き た 日 本 と い う よ う に 、 そ れ ぞ れ の 地 域 で は 、 家 族 構 造 や 近 代 化 の ス ピ ー ド の 差 異 だ け で な く 、 社 会 制 度 的 な 影 響 も 認 め ら れ る 。 以 上 の 結 果 か ら は 、 家 族 構 造 や 近 代 化 の 速 度 が 、 そ れ ぞ れ の 地 域 の 家 族 意 識 を 特 徴 づ け て い る と い う 点 が 明 ら か と な っ た 。 し か し 、 そ の 原 理 に 基 礎 づ け ら れ な が ら も 、 社 会 制 度 が 異 な る 影 響 を 与 え て い る こ と も 示 さ れ た 。 第 3 章 は 、 東 ア ジ ア な ら び に 東 南 ア ジ ア の 家 父 長 制 意 識 に つ い て 分 析 し て い る 。 家 父 長 的 な 価 値 観 は 既 に 多 く の 研 究 が な さ れ て い る が 、 以 下 の よ う な 課 題 が 残 さ れ て い る 。 第 1 に 、 東 南 ア ジ ア と 東 ア ジ ア の 比 較 と い う 文 脈 で 行 わ れ た も の は 管 見 の 限 り 存 在 し な い 。 第 2 に 、 家 父 長 制 の 要 素 で あ る 家 父 長 の 権 力 と 性 別 役 割 分 業 は そ れ ぞ れ 異 な っ た も の と す る 立 場 も あ り 、 そ の 知 見 も ふ ま え た 上 で 分 析 が な さ れ て い な い 。 第 3 に 、 高 学 歴 は 家 父 長 制 に 対 す る リ ベ ラ ル な 態

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5 度 と 関 連 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る が 、 こ の 2 つ の 軸 に よ っ て 今 一 度 整 理 す る 必 要 が あ る 。 以 上 の 課 題 を ふ ま え 、 本 章 で は 、 性 別 役 割 分 業 意 識 と 父 権 尊 重 意 識 の 2 つ の 軸 の 強 弱 か ら 家 父 長 制 意 識 の 4 類 型 を 作 成 し た 上 で 、 ① 各 地 域 の 家 父 長 制 意 識 が ど の 類 型 に 位 置 づ く の か 、 さ ら に ② 高 学 歴 者 と 低 学 歴 者 の 差 が こ の 4 類 型 の 図 式 の 中 で ど の よ う に あ ら わ れ る の か と い う 点 に つ い て 明 ら か に し て い る 。 ま ず 課 題 ① に つ い て 、 各 地 域 の 平 均 値 を 家 父 長 制 意 識 の 4 類 型 に プ ロ ッ ト し 、 各 地 域 の 相 対 的 な 付 置 関 係 を 分 析 し て い る 。 具 体 的 に は 、 中 国 と マ レ ー シ ア は 父 権 も 分 業 も 強 い「 家 父 長 主 義 」、台 湾 と 韓 国 は 、父 権 は 強 い が 分 業 は 弱 い「 父 権 型 平 等 」、タ イ と ベ ト ナ ム 北 部 は 、父 権 は 弱 い が 分 業 は 強 い「 分 業 型 自 由 」、日 本 は 父 権 も 分 業 も 弱 い「 自 由・平 等 主 義 」に 分 類 さ れ 、家 父 長 制 意 識 の 多 様 な あ り 方 が 整 理 さ れ る 。 次 に 課 題 ② に つ い て 、 各 地 域 別 に 高 学 歴 者 と 低 学 歴 者 の 平 均 値 の 差 か ら 、 高 学 歴 の 効 果 を 分 析 し て い る 。 具 体 的 に は 、 学 歴 の 効 果 は 、 強 さ や 方 向 性 は 一 様 で は な い こ と が 明 ら か と な る 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 主 要 な 点 と し て は 以 下 の 5 点 に 整 理 で き る 。 ① 日 本 以 外 の 東 ア ジ ア の 父 系 制 の 地 域 で は 概 し て 性 別 役 割 分 業 意 識 は 学 歴 に よ っ て 強 く 影 響 を 受 け る が 父 権 尊 重 意 識 に 対 す る 影 響 は み ら れ ず 、 強 い 父 権 を 維 持 し て い る 。 ② 東 南 ア ジ ア の 父 系 制 で あ る ベ ト ナ ム 北 部 は 父 権 が 弱 い タ イ プ の 父 系 制 で あ る こ と を 反 映 し て 、 特 に 女 性 の 高 学 歴 者 は 「 自 由 ・ 平 等 主 義 」 に な り や す い 。 ③ 双 系 制 の 地 域 で あ る タ イ は 父 権 が 弱 く 、 か つ 高 学 歴 者 は 分 業 意 識 が 低 い た め に 「 自 由 ・ 平 等 主 義 」 へ と 変 化 し や す い 。 ④ 双 系 制 で あ る が イ ス ラ ム 教 の 影 響 が 強 い マ レ ー シ ア は 、強 い 家 父 長 制 意 識 が あ り 、さ ら に 学 歴 の 効 果 も 限 定 的 で あ る こ と か ら「 家 父 長 主 義 」 を 維 持 す る 地 域 で あ る 。 ⑤ 「 圧 縮 さ れ た 近 代 」 を 経 験 し て い る 韓 国 と 台 湾 で は 学 歴 差 が 強 く 生 じ る 。 以 上 の 5 点 で あ る 。 こ の よ う に 、 家 父 長 制 意 識 は ア ジ ア の 中 で 多 様 性 を 持 っ て い る が 、 一 部 は 父 系 制 や 双 系 制 と い っ た よ う な 家 族 構 造 の 差 に よ っ て 説 明 す る こ と が 可 能 で あ っ た 。 一 方 、 差 異 を 生 み 出 し て い る 要 因 は 、 家 族 構 造 の 他 に も 、 政 治 体 制 や 、 宗 教 的 規 範 の 影 響 が あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第 4 章 で は 、 東 ア ジ ア に お け る 排 外 主 義 運 動 の 高 ま り を 背 景 と し 、 東 ア ジ ア 4 地 域 の 内 部 に お い て 、 家 父 長 制 意 識 が 排 外 的 態 度 に 与 え る 影 響 に つ い て 分 析 し て い る 。 ま ず 、 フ ラ ン ク フ ル ト 学 派 の 理 論 的 な 検 討 か ら 、 Fromm に よ る 権 威

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6 主 義 論 の 根 底 に 家 父 長 制 的 家 族 が あ る こ と を 指 摘 し 、 家 父 長 制 意 識 を 、 排 外 的 態 度 の 原 因 と な る 権 威 主 義 の 一 種 と し て 位 置 づ け る 。 次 に 、 東 ア ジ ア に お け る 父 系 制 の 質 的 な 差 異 ( 日 本 と 韓 国 は 相 対 的 に 父 権 も 分 業 も 強 く 、 中 国 と 台 湾 は 相 対 的 に 父 権 や 分 業 は 弱 い ) が 整 理 さ れ 、 こ の 父 系 制 の 構 造 的 な 差 異 を 反 映 し て 、 家 父 長 制 意 識 と 排 外 的 態 度 の 関 連 が 異 な る と い う 仮 説 を 提 示 す る 。 主 な 分 析 結 果 と し て 、 日 本 と 韓 国 で 関 連 が あ る 一 方 で 、 中 国 と 台 湾 で は 関 連 が な い こ と が 明 ら か と な る 。 以 上 の 結 果 か ら 、 権 威 や 分 業 の 構 造 が 強 い 父 系 制 を も つ 日 本 と 韓 国 で は 、 権 威 主 義 的 性 格 が 構 築 さ れ る 結 果 、 家 父 長 制 意 識 は 排 外 的 態 度 を 高 め る と い う こ と が 明 ら か と な る 。 さらに、日 本 と韓 国 では、家 父 長 制 意 識 が保 守 的 な意 識 からリベラルな意 識 への転 換 が進 んでいるということから、家 族 に関 する保 守 的 な意 識 と、異 質 な態 度 を 排 除 しよ うとする 排 外 的 態 度 とい う領 域 の異 なる2つの保 守 性 が結 びつきやすいということも示 される。こ の よ う に 本 章 で は 、 同 じ 父 権 制 の 東 ア ジ ア 内 部 に 着 目 す る こ と に よ っ て 、 本 論 文 が 一 貫 し て 分 析 し て い る 家 族 構 造 の 差 に 着 目 す る こ と の 重 要 性 を 改 め て 補 強 し て い る 。 終 章 で は 家 族 意 識 に つ い て の 総 合 的 な 考 察 が 行 わ れ る 。 ま ず 、 本 論 文 で 扱 っ て き た 経 済 的 援 助 規 範 意 識 と 家 父 長 制 意 識 の 分 析 を ふ ま え て 、 各 地 域 に お け る 家 族 と 家 族 意 識 の 現 状 と 課 題 を 展 望 し て い る 。 次 に 、 ア ジ ア 7 地 域 に お け る マ ク ロ デ ー タ の 特 徴 と 本 論 文 に お け る 分 析 結 果 か ら 、 将 来 、 家 族 意 識 を 研 究 す る 上 で 必 要 と な る 視 点 に つ い て 検 討 し て い る 。 以 上 の よ う に 、 本 論 文 で は ア ジ ア の 7 地 域 を 対 象 と し て 家 族 意 識 を 3 つ の ト ピ ッ ク に 限 定 し て 分 析 し た が 、 少 な く と も 以 下 の 4 つ の 課 題 が 残 さ れ て い る 。 第 1 に 、 家 族 生 活 の 諸 相 に 関 す る 他 の 多 く の 意 識 に つ い て も 分 析 す る 必 要 が あ る こ と 、 第 2 に 南 ア ジ ア や 西 ア ジ ア も 含 め た 上 で 、 本 論 文 の 分 析 視 角 が 有 効 で あ る か 確 か め る 必 要 が あ る こ と 、 第 3 に 、 地 域 レ ベ ル の 数 を 増 や す こ と で よ り 統 計 的 に 頑 健 さ を 確 か め る 分 析 も 必 要 で あ る こ と 、 第 4 に 意 識 と 行 動 の 関 連 に つ い て も 分 析 す る 必 要 が あ る こ と 、 以 上 の 4 点 で あ る 。 デ ー タ の 制 限 な ど か ら す ぐ に 取 り 組 む こ と の 難 し い 課 題 も あ る が 、 こ れ ら を 乗 り 越 え る こ と で 、 本 論 で 述 べ た 分 析 視 角 が よ り 頑 健 な も の と な る と 期 待 で き る だ ろ う 。

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