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『スペイン語の歴史』 評者 坂東省次

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Academic year: 2021

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古典的あるいは歴史的名著の翻訳は貴重である。

今年になって相次いで出版されたアメリコ・カス トロ著『セルバンテスの思想』(法政大学出版局,

2004)とラファエル・ラペサ著『スペイン語の歴 史』を前にすると、そんな思いを新たにする。

日本語で出版されたスペイン語の歴史といえば、

これまでサムエル・ヒリ・ガヤの『スペイン語の 歴史』(南雲堂、1983)があったが、これは真の意 味でのスペイン語の歴史ではない。また、『スペイ ンの言語』(同朋舎出版、1996)はその趣を備えて はいるが、やはりスペイン語の歴史書ではない。

その意味で今回刊行の運びとなった『スペイン語 の歴史』は、日本の読者にとってまさに待望の書 である。

著者ラペサについては、今年、出版予定のスペ イン語学に関する本のなかで、筆者は次のように 説明している。「Lapesa(  ラペサ)  、Rafael(1908−

2001):  メネンデス・ピダルとアメリコ・カストロ を師と仰ぎ、歴史研究所でスペイン文献学を学ぶ。

20世紀最後で最大のスペイン文献学者と言われ、

スペイン語圏の言語学の世界にもっとも通暁して いた人であった。スペイン文献学発展への多大な 貢献のなかでも最大のものは、1935年出版後版を 重ね、今やスペイン語研究者必読の書となった『ス ペイン語の歴史』(Historia  de  la  lengua  española) の刊行である。それは単なるスペイン語史ではな く、メネンデス・ピダルから受け継いだ方法論に 基いて書かれた画期的な言語社会史である。」

1935年の初版の「序文」で著者ラペサはこう言 っている。「本書は、我々の文化の発展を反映する スペイン語の、その構成と進展に関する歴史的展 望を簡略な形で提示することを願って執筆された。

私はこの思いを、スペインの国語に関する問題に 興味をもっているすべての人々にも、そしてまた 専門家でない人たちにも届けたいと思っている。」 仮にスペイン語の歴史が言語学のフィールドだ けで書かれれば、専門家でない人たちには理解し がたいであろう。本書は言語史であるより言語社 会史であり、スペイン語がその誕生から社会の発 展といかに関わってきたかを分かりやすく説明し てくれる。その意味で、一般読者にも近づき易い 専門書ということになろう。

本書は全17章からなる。1)先ローマ期の諸言語、

2)イスパニアのラテン語、3)俗ラテン語とイスパ ニアのラテン語の特殊性、4)ラテン語からロマン ス語への移行 西ゴート時代、5)アラビア人と、

スペイン語のなかのアラビア語要素、6)イスパニ ア語の原初ロマンス語、7)イベリア半島の原初方 言 カスティリア語の伸長、8)古スペイン語 遍 歴芸人と聖職者 散文の誕生、9)賢王アルフォン ソの時代と14世紀、10)中世スペイン語から古典期 スペイン語への移行、11)黄金世紀のスペイン語 スペイン帝国の拡張 古典主義、12)黄金世紀のス ペイン語 バロック文学、13)黄金世紀のスペイン 語 全般的な言語変化、14)近代スペイン語、15)

現代スペイン語の広がりと多様性、16)ユダヤ人の スペイン語、17)アメリカ・スペイン語。

本書はスペイン語の通史であるがその広がりは 単にイベリア半島にとどまらず、新大陸アメリカ やフィリピンにまで及んでいる。しかし、同時に 本書はスペイン語圏の言語史といってもよく、ス ペインに誕生した言語あるいは方言としてバスク 語、カタルーニャ語、ガリシア語、アストゥリア ス・レオン方言、アラゴン語、アンダルシア語、

エストレマドゥラ語、ムルシア語、カナリア語を とり挙げており、さらにはアメリカ・スペイン語 とともに先住民諸語への言及もある。

本書は、世界に広がるスペイン語の世界の全体 像を見事なまでに明らかにしてくれよう。

ばんどう しょうじ(教授・スペイン語学)

ラファエル・ラペサ著 

『スペイン語の歴史』 

評者 坂東省次 

スペイン語圏を知る本 

(その33) 

昭和堂、2004年 

参照

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