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『レアルとバルサ 怨念と確執のルーツ:スペイン・サッカー興亡史』

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Academic year: 2021

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卒業生からの寄稿

 近年、日本で非常に人気の高いスペインのプ ロサッカーリーグ、リーガ・エスパニョーラの 二大勢力といえば、首都マドリードを拠点とす るレアル・マドリード(以下レアル)とカタルー ニャ州の州都、バルセロナをホームタウンとす るFCバルセロナ(以下バルサ)である。著者は、

今まで永遠のライバルとされ、「怨念」や「確執」

を生みだしてきたレアルとバルサの関係が、日 本ではプロ野球でいう巨人と阪神のような関係 だと少なからず例えられてきた事実を挙げ、そ れが間違いであると指摘する。それは、レアル とバルサが「異民族」のチームであるからだと いう(19ページ)。確かにスペインは、16世紀 前半にそれまで別々の国家が統一されるかたち で成立した。実際、両チームが拠点を置くマド リードとバルセロナは、元々「カスティーリャ」

と「カタルーニャ」という異なる王国の都市で あり、言語も現在に至るまでそれぞれ「カス ティーリャ語」と「カタルーニャ語」という王 国由来の言語が話されている。

 ただ、カスティーリャ語はスペイン国家統一 後の歴史の中で「スペイン語」として「共通 語」となった一方で、カタルーニャ語は今日主 にカタルーニャ地方でしか話されていない、「地 方言語」となるに至った。またカタルーニャ語 は、スペイン史の中で弾圧の対象となったこと があり、フランコ独裁政権期(1939年〜 1975 年)には、カタルーニャ語を使用することは禁 止され、「カスティーリャ語=スペイン語」を 話すことが強制された。近年カタルーニャ州で は、独立に向けた動きが表面化しているが、そ れにはマドリードの中央集権体制に対して、カ タルーニャ人が「異言語」を話す「異民族」で あるため独立国家となるべきという主張が頻繁 に繰り返されている。

 一方で本書の特徴のひとつとなっているの が、ジュアン・アントニ・サマランク(1920年

〜 2010年)の存在に着目しているところであ る。サマランクは、日本では国際オリンピック 委員会(IOC)委員長を20年以上も務めたフア

ン・アントニオ・サマランチ(委員長在任期間:

1980年〜 2001年)として知られている。バル セロナ生まれのサマランクは、若い頃からファ シスト党のファランヘに所属しており、内戦

(1936年〜 1939年)においてもフランコ将軍が 指揮する反乱軍側を支持した。本書には、ファ シスト式敬礼をするサマランクの写真も掲載さ れている(169ページ)。反乱軍が内戦に勝利し、

フランコ独裁体制が築かれると、政権のスポー ツ行政を主導し、1966年から1970年まで国民ス ポーツ局長の座に就いた。

 しかし、著者はサマランクがカタルーニャを ないがしろにしていたわけではないと論じてい る(172ページ)。それは、フランコの死後、国 際オリンピック委員会委員長の時に、スペイン で初めてのオリンピックであるバルセロナオリ ンピック(1992年開催)を招致したからである。

著者によると、サマランクの力でオリンピック をマドリードで開催することも十分可能であっ たが、故郷カタルーニャに対する愛着が人一倍 強かった彼はそれをバルセロナで実現させたと いう(174ページ)。開会式では、スペイン国旗、

バルセロナ市旗に並んで、「カタルーニャ国旗」

が掲揚され、サマランクは、「カタルーニャ語」

でスピーチを行った。

 そして現在、スペインは未曽有の経済危機の 中にある一方で、マドリードでの2020年オリン ピック開催をイスタンブール、東京と争ってい る。マドリードが悲願のオリンピック開催を模 索している間、バルセロナではオリンピック開 催からすでに20年以上を経て、人々の目下の関 心事は、カタルーニャ州の独立問題となってい る。マドリードとバルセロナが同じ「国家」に 属しながら、足並みが揃わないこの現状に、レ アルとバルサの間に見られるような「怨念」や

「確執」が深く関わっていることは間違いない。

 やすだ けいし 

(龍谷大学経済学部専任講師・スペイン現代史、

 イスパニア語学科2000年度卒業)

スペイン語圏を知る本(その 67)

田澤耕 著

『レアルとバルサ 怨念と確執のルーツ:スペイン・サッカー興亡史』

(中央公論新社、2013 年)

評者 安田 圭史

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