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『スペイン歴史の旅』

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Academic year: 2021

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GAIDAI BIBLIOTHECA

『スペイン歴史の旅』は、スペイン内戦の研究 で知られ著書も多数ある著者自身が初めてスペイ ンの大地を踏んだという1969年7月に開始したス ペイン現代史の旅であり、もっと具体的にいえば スペイン内戦の旅である。

本書は1章「懐かしさと嬉しさの交差点−独断 的スペイン案内」、2章「歴史と文化のうねりの中 で−スペイン内戦」、3章「政治と人間の壮大なド ラマ−スペイン内戦その後」、4章「日本とスペイ ンの関係を探って−その多様な人間模様」の全4 章からなる。第1章「独断的スペイン案内」は、

スペイン現代史を知るためのウォーミングアップ として読まれるとよい。闘牛とフラメンコで知ら れる独特なスペイン文化に触れた後、スペインの 有名な観光都市−マドリード、バルセロナ、バレ ンシア、セビリアなど−を散策しながら歴史も学 べる仕組みになっているからだ。しかし、「のど かで明るい南国情緒豊かなセビリアも、スペイン 国民を二分して熾烈な戦いを繰り広げたスペイン 内戦(1936-39)を避けることはできなかった。」と いった各所に仕組まれた内戦に関する文章を読み ながら、読者はいやおうなしに「スペイン内戦物 語」という壮大な人間ドラマの世界に足を踏み入 れることになる。

「第2次世界大戦のリハーサル」あるいは「新兵 器の実験場」といわれたスペイン内戦とは一体何 であったのであろうか。これはわれわれ人類にと って永遠の問いであるように思われるが、その問 いに答えるべく著者は、内戦に立ち会った人々の 足跡を追ってスペイン、イギリス、フランス、ア メリカそして日本と、世界を駆けめぐる。2章

「スペイン内戦」、3章「スペイン内戦その後」そ して4章「日本とスペイン」では、すでに日本で もおなじみのロルカ、キャパ、ヘミングウェイ、

ジャック白井らの足跡を追いながら、読者もまた

臨場感いっぱいの「スペイ ン内戦物語」をたっぷりと 味わうことができよう。

スペイン内戦といえば、

併せて、フランコの存在が 気になるのは筆者だけでは

ないだろう。では、内戦研究の専門家である著者 のフランコ評価はいかがなものであろうか。本書 の第2章に「フランシスコ・フランコ伝」がある。

著者はその最後のところで、次のように述べてい る。

「フランシスコ・フランコの評価はさまざまであ る。政治家というものに毀誉褒貶はつきまとう。

フランコも例外ではない。だが、彼は長期の軍事 独裁政権にありがちな、私利私欲の権化と化して はいなかった。ストイックというべきか、清廉潔 白な軍人であり、繰り返しになるが、ヒトラーや ムッソリーニとの会談の折に発揮したように、ま ことに希有な「ナショナリスト」であった。フラ ンコの生涯にわたって一貫して流れていたもの は、「ラテン気質」とは全く無縁の、彼の生誕の 地であるエル・フェールで育まれた、慎重さを旨 とする「ガリシア気質」なのである。」

また、戦後のスペイン国民の自由を奪ったのが フランコなら、今日の自由と繁栄のスペインを作 ったのもまたフランコであり、それだけに、フラ ンコの善悪の判断は極めて難しいのである。あと の判断は世界史に委ねるしかないのではないだろ うか。

ところで、本書が、スペインの生んだ世界的名 作『ドン・キホーテ』で終わっているのはなぜだ ろうか。スペイン内戦ものが続くなかで、『ド ン・キホーテ』に出くわす読者はそれを奇異に感 じるかもしれない。しかし、スペイン内戦に身を 投じた多数の戦士たちの雄姿のなかに著者は、理 想と正義のために闘ったドン・キホーテのヒュー マニズムを見ていると考えれば、決して場違いで もないと思われる。逆に、『ドン・キホーテ』を 読んで、そこからスペイン内戦を考察してみるの も、新しい見方になるかもしれない。

ばんどう しょうじ(教授・スペイン語学)

スペイン語圏を知る本(その

26

評者 坂東 省次

『スペイン歴史の旅』

(川成洋著 人間社、2002)

参照

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