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栃木県内における産学官連携

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Academic year: 2021

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― 91 ―

Ⅰ.はじめに

栃木県内における産学官連携

近年,連携事業の一環として産学官連携や医工連携 による現場の課題解決を起点としたものづくりが行わ れている.文部科学省は,各大学の個性や特色に基づ いて作成・公表する必要性を述べており,一元的に知 的財産を管理・活用を行なっている

1 )

.そのため,産

学官連携活動が盛んな大学は,知的財産および産学官 連携理念をホームページで公表し,社会に向けて個性 や特色を提示している

2 )

栃木県内で定期開催される技術情報交流会には県,

企業,大学関連病院,大学が集まり,医療現場での問 題が提示されている.その問題に対する改善策とし て,企業は専門的な技術を生かしたアイディアを提供 する.医療ニーズと企業のシーズが合致すればものづ

Corresponding author:

新潟リハビリテーション大学 リハビリテーション学科

〒958-0053 新潟県村上市上の山 2 -16 Tel:0254-56-8292

Fax:0254-56-8291 E-mail:[email protected]

実践報告

産学官連携によるポータブル式荷重量フィードバック装置の開発

-妥当性および信頼性の検証-

Development of a portable load feedback device by the industry-academia- government collaboration: Verification of validity and reliability

木 村 和 樹

1 )*

・櫻 井 仙 長

2 )

・小 山 武 司

2 )

1 )新潟リハビリテーション大学 リハビリテーション学科 2 )株式会社 アール・ティー・シー

〔受付:平成29(2017)年 7 月10日〕

〔受理:平成29(2017)年10月 6 日〕

キーワード:ものづくり,現場のニーズ,企業のシーズ

要旨 近年,連携事業の一環として産学官連携や医工連携による現場の課題解決を起点としたものづくりが

行われている.産学官連携を通して,開発までの経過と開発した機器の信頼性について検討したので報告す

る.開発した荷重量フィードバック装置は荷重量と測定値の間に高い信頼性が得られた.産学官連携に

よって医療現場の問題点を企業の専門的な開発技術によって解決できる可能性を見出せた.ものづくりに

おいて,医療ニーズと企業シーズを結び付けることが重要である.

(2)

― 92 ―

木村和樹

くりが開始される.そのものづくりのきっかけとなる 技術情報交流会は官公庁が中心となって機会が提供さ れ,官公庁がものづくりに関する助成金を給付するこ ともある(図 1 ) .今回,技術情報交流会で報告した 荷重量フィードバック装置の必要性とその背景につい て医療現場の立場から述べる.

ポータブル式荷重量フィードバック装置の必要性と開 発の背景

我が国の糖尿病患者とその予備群の合計は2000万人 を超えて

3 )

おり,世界における糖尿病有病者数が 2014年までに 4 億人を超えている

4 )

.その糖尿病の合 併症である末梢神経障害によって足底感覚が障害され る.足底感覚の障害は立位バランス能力を低下させる ため,転倒に伴う骨折の危険性が高くなる.ゆえに,

足底感覚は立位・歩行において重要な役割を担ってい る.また,末梢神経障害に循環障害や創傷が加わると 潰瘍に移行しやすく,最悪の場合は下肢の切断に陥る 場合もある.創傷治癒のためには病変部位への荷重を 制限しなければならない

5 )

.しかしながら,末梢神経 障害によって足底に加わる荷重量や荷重部位の変化を 正確にフィードバックすることができないため,荷重 量をコントロールすることが困難になる.そのような 状態で荷重量を制限しながら立位・歩行練習を行う必 要がある者もいる.

立位・歩行練習時には感覚障害を補うべく,視覚に よるフォードバックが必要である.医療現場では荷重 量のフィードバックは体重計を用いるのが一般的な手 法である.その際には対象者の転倒に留意しながら体 重計の目盛りの変化を観察しなければならない.ま た,体重計そのものが段差になるため,荷重量を制限 された患者にとっては難易度の高い課題となってい る.一方,研究備品が充実している施設では高額な床

反力計を用いることができるが,操作の習得が難しい ため医療現場ではあまり導入されていないのが現状で ある. これら体重計や床反力計を用いた荷重量の フィードバックにおける共通した問題点として,測定 機器が設置されていない歩行路では,あくまでも接地 状況や荷重量は対象者の主観的,セラピストによる憶 測のため正確性に欠ける.

Ⅱ.方法

技術情報交流会の報告内容と開発の経過

2013年 2 月に県,大学,企業,病院職員によって技 術情報交流会が開催された.そこで,医療現場での問 題点を報告して,産学官連携によってポータブル式荷 重量フィードバック装置の開発を行なった.

技術情報交流会での発表内容として,「下肢への荷 重量が制限された場合,糖尿病の合併症などにより足 底感覚が障害された者は荷重量をコントロールするこ とが困難になる.荷重量のフィードバックには市販さ れている体重計を用いることが多く,足元に設置した 体重計の目盛りを目視させなければならない.また,

歩行練習の際には歩行器などの歩行補助具用いるた め,体重計の厚みが段差障害にもなる.医療現場で用 いられている荷重量の測定方法ではデメリットがある ため,ポータブル式荷重量フィードバック装置が必要 である. 」ことをプレゼンテーションした(図 2 ) .

技術情報交流会を通して,エレクトロニクスの企業 から小型の歪みゲージを用いた感圧センサにより足底 の荷重量を測定し一定の荷重量を超えると音・光・機 械的振動でフィードバックすることが可能であると返 答があった.

本機器の開発にあたり,2013年10月に栃木県から公 的な開発助成金を獲得し事業を進行した.試作品に改 良を加えながら,2014年に完成した機器はインソール

図 2  体重計を用いた荷重量のフィードバックにおけ る問題点

図 1  機器開発における産学官連携のイメージ

(3)

産学官連携によるポータブル式荷重量フィードバック装置の開発 -妥当性および信頼性の検証-

― 93 ― タイプの荷重量フィードバック装置であった.感圧セ ンサは足底全体に設置せずに前足部と踵部に感圧セン サを設置して,インソールへの荷重が感圧センサに加 わる構造であった.そこで,臨床応用へ展開するため に開発機器における妥当性および信頼性について検証 した.

産学官連携で開発した機器の紹介

ポータブル式荷重量フィードバック装置は,イン ソールに15個の感圧センサを設置した.感圧センサの 設置位置は前足部に 9 個,踵部に 6 個とした.イン ソールの中央などには感圧センサが無いため,感圧セ ンサの表面に円柱の突起をつけてインソールに加わる 荷重を感圧センサに加わるように工夫した.また,硬 めのインソールを用いることで,すべての荷重が15個 の感圧センサに加わるように考慮した.なお,装置の 本体はプラスティック製のボックスの中にマイクロコ ンピュータを内蔵させて,インソールに有線で接続さ せた構造であった(図 3 ) .ボックスとバッテリーの 総重量は142g と軽量であった.

インソールへの荷重量を段階的に音,光,振動に よってセラピストや患者様に同時にフィードバックす ることが可能である.体重の 1 / 3 , 1 / 2 , 2 / 3 が 荷重されると段階的にフィードバックする音のピッチ が速くなるため,各荷重量に合わせたフィードバック が可能である.また,インソールへの荷重量は無線に て記録用 PC にデータを転送することができるため,

臨床研究においても有用性がある.

妥当性・信頼性の検証

本機器のインソールに 5 kg ずつ荷重(下限10kg -

上限80kg)を加えて測定値を求めた.実際に加えた 値を荷重量,装置によって得られた値を測定値とし た.荷重測定の被検者は47歳の男性,身長は171cm,

体重は78kg,BMI は26.7kg/㎡であった.なお,同一 の被検者が 5 施行ずつ荷重を加え,荷重量が不足する 場合は重りを持ち荷重量の調整を行なった.妥当性と して 5 施行の測定平均値と荷重量の相関について Pearson の積率相関係数を求めた.検者内信頼性とし て,級内相関係数 ICC(1,5)を求めた.統計ソフト は SPSS21.0J(IBM Japan Inc)を使用した.

倫理的配慮,説明と同意

技術情報交流会の際に患者の歩行動画を使用した.

患者様には使用用途の説明を十分に行い,発表に関し ての同意を得て実施した.

Ⅲ.結果

荷重量と測定値の間には高い正の相関が認められた

(r =0.999, p 値 <0.05) .級内相関係数 ICC(1,5)は 0.998であった.0.800以上の高い検者内信頼性が得ら れた.

Ⅳ.考察

開発した機器の妥当性と信頼性

産学官連携を通して,ポータブル式荷重量フィード バック装置を開発した.その開発した機器において,

荷重量と測定値には高い妥当性および信頼性が得られ た.前足部と踵部に設置した感圧センサを用いて荷重 量を測定できることが示唆された.

荷重量と測定値の間には高い正の相関が認められた

(r =0.999, p 値 <0.05) .そのため,インソールに計 15個の感圧センサでの荷重量の測定は妥当性があると 考えられた.インソールの硬さや感圧センサとの接地 面を改良することで,感圧センサの設置位置が前足部 と踵部に限局されても,インソールに加わる荷重の測 定誤差を少なくすることができたと考えられた.歩行 評価の機器の信頼性は0.800以上あれば十分な有用性 である

6 )

と報告されている.本機器の級内相関係数 ICC(1,5)は0.998であったことからも感圧センサを 用いた荷重量のフィードバックにも高い有用性がある と考える.しかし,本機器の問題点としては,感圧セ ンサに荷重が加わるように硬めのインソールを用いて いる.そのため,歩行時の蹴り動作にも影響すること が考えられた.

図 3  ポータブル式荷重量フィードバック装置

(4)

― 94 ―

木村和樹

聴覚フィードバックの有効性

聴覚フィードバックは視覚フィードバックよりも長 期効果が得られる

7 )

と報告されている.そのため,

長期効果が望める聴覚フィードバックであれば免荷歩 行練習だけでなく,フィードバック装置を外してから の持ち越し効果も考えられる.また,体重計を用いた 荷重量の視覚フィードバックと異なり,視線を足元に 移さなくても免荷歩行が可能である.患者だけでなく セラピストも同時に荷重量を音によってフィードバッ クすることが可能であり,脳血管障害患者に対する ポータブル式の足底圧フィードバック装置が歩容を改 善することも報告されている

8 )

.しかし,リハビリ テーション室での活用には有用性が欠ける点がある.

音を共有するために静かな室内でなければ十分に フィードバックすることができない.そのため,本体 に内蔵されたスピーカではなく,イヤホンを用いるこ とも検討している.

技術情報交流会の役割

技術情報交流会により,医療職における問題は企業 のアイディアや専門的な開発技術によって解決できる 可能性が見出せた.また,実際の医療現場での使いや すさなどは企業単独での開発では気づきにくく,偏っ た考えを抱きやすい.ものづくりにおいては双方の情 報共有が必要不可欠である.そのため,医療ニーズと 企業シーズを統合するための技術情報交流会で意見を 交わすことが医療現場の問題点を解決するためのもの づくりにおいて重要な機会であった.その技術情報交 流会を潤滑に開催するためには官公庁が重要な役割を 担っていた.そして,ものづくりを行なうことは企業 シーズが医療ニーズに答えるだけでなく,地域産業を 活性化させる効果もある.

今後の課題と展望

本研究は対象者が 1 名であった.異なる大きさのイ ンソールでも正確な荷重量の測定ができるか検討する ことが今後の課題である.また,本研究では静的な荷 重量を測定した.動的な荷重量の測定を可能にするこ とも今度の課題である.さらに,単軸方向での荷重量

の計測であるため,多軸の圧センサの導入も検討して いる.捻じれや旋断力よる影響も考慮し旋断力と荷重 量を計測し,新たなフィードバック装置の開発段階中 である.

Ⅴ.利益相反

本試作品の開発にあたっては公的な開発助成金とし て栃木県の「平成24年度ものづくり中小企業・小規模 事業者試作開発等支援補助金」を得て実施した.

Ⅵ.引用文献

1 )文部科学省(2003):新時代の産学官連携の構築に向けて

(産学官連携推進委員会 審議のまとめ)の概要, (Accessed 2016-09-12) .http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

gijyutu/gijyutu8/toushin/attach/1332056.htm

2 )金井哲夫,榎戸奈津紀,広田幸子,他:知的財産および産 学連携理念における医学部を持つ総合大学の戦略的思考,生 物試料分析,36,259-265,2013.

3 ) 厚 生 労 働 省(2013): 平 成24年 国 民 健 康・ 栄 養 調 査,

(Accessed 2016-09-12) .http://www.mhlw.go.jp/stf/

houdou/0000032074.html

4 )World Health Organization(2016):GLOBAL REPORT ON DIABETES,(Accessed 2016-09-12) .http://apps.who.

int/iris/bitstream/10665/204874/1/WHO_NMH_NVI_16.3_

eng.pdf

5 ) 高 嶋 孝 倫, 丸 山 貴 之: 糖 尿 病 足 と 装 具,Medical Rehabilitation,133,47-52,2011.

6 )桑原洋一,斉藤俊弘,稲垣義明:検者内および検者間の Reliability(再現性,信頼性)の検討 なぜ統計学的有意が得 られないのか,呼吸と循環,41,945-952,1993.

7 )長谷川直哉,萬井太規,武田賢太,他:視覚フィードバッ クと聴覚フィードバックによる動的バランスの学習効果の違 い,理学療法学,42,474-479,2015.

8 )木村和樹:圧力センサのフットスイッチを用いた聴覚 フィードバック装置の開発と信頼性,日本義肢装具学会誌,

32,45-49,2016.

参照

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