『就実大学大学院教育学研究科紀要 2019(第4号)』 抜刷 就実大学大学院教育学研究科 2019年3月10日 発行
野 口 智 史
大学生における課題先延ばし行動のプロセス
―取り組みに伴う否定感情に着目して―
The process of undergraduate studentsʼ academic procrastination : Focusing on negative emotions associated with doing tasks
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大学生における課題先延ばし行動のプロセス
―取り組みに伴う否定感情に着目して―
教育学研究科教育学専攻 教育臨床心理学コース 3617004 野口智史
Ⅰ.問題と目的
先延ばし行動はこれまで、様々な個人的特性との関連(完全主義、自己効力感など)を 示す量的研究が行われてきた。しかし、先延ばし行動をプロセスとして捉えた研究はあま りみられない。先延ばし行動を時系列に沿って様々な変化が起こるプロセスとして捉える ことで、先延ばし行動のメカニズムへの新しい知見が得られると考える。本研究では課題 場面において否定感情が伴うことは、本人が望む精神状態や課題遂行を達成しにくくし、
不適応行動になると考え、学業課題取り組みのプロセスにおける否定感情に着目し、行動 改善の知見を得ることを目的とする。
Ⅱ.予備調査
予備調査として、個人の学業課題取り組み場面に伴う否定感情を測定し、インタビュー 対象者の選定を目的とするため、小浜(2010)の「先延ばし意識特性尺度」から28項目を 採用し、質問紙を作成した。そして、大学生152名(男性41名、女性111名;平均年齢20.5 歳)に質問紙調査を行った。因子分析の結果、3因子が抽出され、第1因子を「課題場面 で否定感情が生起する」、第2因子を「状況の楽観視」、第3因子を「遊んだ後の気分の切 り替えと計画性」と命名した。
Ⅲ.本調査
本調査として、第1因子に着目し、課題場面での否定感情の高い群における課題取り組 みプロセスを明らかにするために、インタビュー調査を行い、比較対象として、否定感情 の低い群にも同様のインタビューを行った。協力者は予備調査で協力を承諾してくれた3 名に加え、スノーボールサンプリングによって協力を承諾してくれた9名を加えた12名で あり(男性1名、女性11名;平均年齢20.41歳)、否定感情高群8名、低群4名に分類され た。研究法として修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2007)を採択し、
インタビューガイドを作成、分析まで行った。
分析結果として得られたストーリーラインを述べる。否定感情高群では、課題に取り組 む計画立てや必要な資料集めが大まかに行われていた。同時に課題への見積もりを立て、
見積もりによって取り組みが促進、阻害されていた。課題に取り組んでいない間自分を責 める行為が行われており、課題に取り組むきっかけは「焦り」であった。完成後は達成感 と後悔が同時に存在し、後悔を減らすために提出できたことを正当化することで否定感情 が薄らいでいた。これにより、後悔によってパターンが変容することなく、維持されてい た。
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低群では、まず高群同様に課題に取り組む計画が立てられていた。課題に取り組んでい ない間、常に課題について考えてしまい、他のことに集中できなくなることからできるだ け早くレポートにとりかかっていた。そして、課題を完成させることで課題から解放され、
自らがやりたいことのために時間を作ることができていた。
Ⅳ.考察
高群の先延ばし行動の改善に向けて、2点考えられる。①高群では、課題の見積もりが 正確ではない可能性があり、また、後悔などの強い否定感情は忘れさられてしまう。そこ で、不正確な見積もりを正したり、否定感情を忘れないために、日誌などに記録をつける こと②語りの中で友人と一緒に課題を行ったときは早く課題を完成させることができたと いう語りが多くみられた。そのため、先延ばししない友人と課題を行う時間を用意するこ との2点が改善へとつながることが示唆された。