A. 研究目的
2017 年 今 年 度 の ス モ ン 患 者 の 介 護 ・ 福 祉 サ ー ビ ス の受給状況の現状について、 その利用実態を明らかに すると共に、 家族を含めた患者の生活の QOL の向上 につながるとくに社会サービス利用促進に至る知見を 得て、 その方策を模索することを目的とした。
B. 研究方法
今年度および 1997 年度以降の 18 年間に蓄積された
「スモン患者票」 の縦断的量的データをもとに分析を 実施した。 なお 2017 年度の分析対象患者数は 560 名 (男性 160 名 女性 400 名) であった。
(倫理面での配慮)
例年面接時に統計的情報の公表に同意した患者・家族 を対象にする。 今年度は 560 名全員同意であった。
C. 研究結果
概況全体数は 2000 年の 1,149 名をピークに漸減し、 ここ 数年間は 600 名台で本年は初の 500 台となった (図 1)。
男 女 比 は 数 年 前 よ り 男 性 が や や 減 少 し 3 割 を 切 っ た (図 2)。 高齢化が進む中で、 今年度は平均年齢が 80.43 才 と な っ た 。 本 年 は 75 才 以 下 の 各 年 齢 層 が 1 年 に 1 ポ イ ン ト 程 度 の 減 少 で あ る が 、 85 才 以 下 が 2 ポ イ ン ト強上昇した代わりに、 85 才以上がはじめて 0.3 ポイ ントの減少を見せている (図 3)。
介護程度と生活の場介護程度は例年 「介護の必要がないもの」 が 4 割強 あったものが、 今年度は 36.0%に減少した。 「介護が 必要」 の方はほぼ 3 割に増加し、 また 「介護者が必要
スモン患者さんの社会生活における本年度の動向
田中千枝子 (日本福祉大学)
二本柳 覚 (日本福祉大学スーパービジョン研究センター)
研究要旨
今年度の患者調査介護票より、 公表の許可を得られたスモン患者 560 名の生活と福祉・介 護状況について把握した。 例年と同様、 高齢化の進行とともに ADL や介護している程度等、
日常生活場面の緩やかな低下はあるものの、 生活の満足度に著しい変化は見られていない。
一方家族形態は単身および 2 人世帯が 7 割に迫るようになり、 ここ 8 年間で主な介護者のう ちヘルパーなどのフォーマルな支援者の割合が 2 割から 3 割に増加した。 また今年度では在 宅 7 割は変わらなかったが、 あと 3 割のうち時々入院が 0.4 ポイントの減となり、 その分が 長期入院に移行した。 この傾向は生活の場を長期入院で充足する傾向をあらわしている可能 性がある。
また介護保険の申請率は当初の 2〜3 割からここ 15 年間は 5 割前半をキープしていたが、
今年は 56.6%と漸増している。 要介護度については 4〜5 の重度が 17.7%であり、 介護保険全 体では 21.7%である。 またスモン患者の要支援 1〜2 は 34.5%に対して、 全体では 28.2%と、
スモン患者の障害程度が軽く認定される傾向が続いている。 このことは今後介護保険制度で の要支援での施設入所が制限される中で、 改善に向けて注目していく必要がある。
実態として福祉・介護サービス利用が必要とされる状況は増加しているが、 実際のサービ スのうち居宅や特養などの公的施設利用に結びつきがたい状況が推察された。
だがいない」 という事例が散見され、 増加する要介護 者の生活の場の確保が重要になってきている (図 4)。
また最近 5 年間の療養状況では、 在宅が 7 割、 時々入 院が 2 割、 長期入院入所が 1 割程度となっていた。 し かし今年度では在宅 7 割は変わらなかったが、 あと 3 割のうち時々入院が 0.4 ポイントの減となり、 その分 長期入院に移行した (図 5)。 この傾向は生活の場を 長期入院で充足する傾向をあらわしている可能性があ
る。
社会的活動
社会活動や参加について、 時々または毎日でも外出 をする群は 20 年前では 7 割あったものが 58.4%まで 減 少 し て い る 。 1 日 を 寝 具 上 で す ご す 群 は 逆 に 7.6%
か ら 12.3% に 増 加 し て い る (図 6)。 そ れ に 対 し て く らしの満足度は、 15 年間 4 割〜5 割の幅で安定してい 図 1 受診者数の推移
図 2 2017 年度性別
図 3 年齢の推移
図 4 要介護の状況推移
図 5 最近 5 年間の療養状況
図 6 日常の活動性の推移
る。 ただし 45%の上下で満足度を見てみると、 ここ 数年は 45%の下方になりつつある (図 7)。
家族と介護状況世帯の形態は 17 年間で単身と 2 人世帯が 5 割であっ た も の が 、 今 年 度 は 73.5% と は じ め て 7 割 と な っ た (図 8)。 また主な介護者は 14 年間のデータであるが、
配偶者が 45.7%から 25.7%と漸減し、 代わって公的専 門 職 で あ る ヘ ル パ ー や 施 設 職 員 が 12% か ら 35.3% と なっており、 知人友人を含めて血縁のない主な介護者 と の 繋 が り が 36.0% と な っ て い る こ と が 特 筆 さ れ る (図 9) (図 10)。
身体障害者手帳と介護保険申請身体障害者手帳の所持率は例年通り 9 割であり、 も ともと発症後まもなくとった方が多い。 高齢化により 図 7 満足度の推移
図 8 世帯人数推移
図 9 主な介護者推移
図 10 2017 年度の主な介護者
図 11 身体障害者手帳取得者
図 12 介護保険申請認定者推移
新 た に ま た 再 申 請 を し た と 推 察 で き る ケ ー ス も 毎 年 10 人前後見受けられる。 等級は 1〜2 級の重度障害が 今年度は 54.8%である (図 11)。 介護保険の申請率は 当初の 2〜3 割からここ 15 年間は 5 割をキープし今年 は 56.6%と漸増している (図 12)。 要介護度について は 4〜5 の 重 度 が 17.7% で あ り 、 介 護 保 険 全 体 で は 21.7%である (図 13)。 またスモン患者の要支援 1〜2 は 34.5% に 対 し て 、 全 体 で は 28.2% (図 14) と 、 ス
モン患者の障害程度が軽く認定される傾向が続いてい る (図 15)。 このことは今後介護保険での要支援での 施設入所が制限される中で、 改善に向けて注目してい く必要がある。 また当事者の要介護度に関する評価は、
妥当や高いと考える人の割合は 5 割であり、 反対に低 いと考える人が 3 割と、 その割合はここ 17 年ほぼ変 化がない (図 16)。
図 13 高齢者人口と要介護認定率
図 14 要介護度別認定者数の推移
図 15 要介護度の推移
図 16 要介護度の評価推移
図 17 福祉サービス利用の経験
図 18 介護保険サービス利用経験
介護・福祉サービス受給状況
スモン関連制度は管理手当 8 割、 針灸公費負担が以 前利用も含めて 54.5%と比較的高率である (図 17)。
介護保険ではホームヘルプが 54.7%、 福祉用具が 64.3
%、 住宅改修が 49.8.%と高率であり、 通所系サービ スではデイサービスが 44.2%、 通所リハビリが 26.7%
であった。 在宅サービスの利用率は介護保険全体に比 して高くない。 また介護保険の入所施設利用は特養ホー ムで一昨年はじめて 10%を越えたものの、 昨年 9.3%、
今 年 も 9.1% と 漸 減 傾 向 が 気 が か り で あ る (図 18)。
また問題関心領域では医学的問題が 5 割近くまで上昇 しているが、 家族や介護問題 2 割、 福祉サービス問題 7〜8% 、 住 居 ・ 経 済 問 題 6〜7% と 変 化 は な い 。 問 題 ごとにその問題の内容は個別性の高いものであるため、
量的対応よりも個別対応への力量を必要とすると考え る (図 19)。
D. 考察
高齢化が進むことによって、 家族介護から社会介護 へ向かう流れが加速している中で、 社会福祉・介護サー ビスのニーズが増加して行くことが予想される。 しか しスモン患者の要介護度の分布を見ると、 一般の要介 護高齢者の要介護度の分布に比べ、 要介護 4 及び 5 の 重度が少なく、 要介護 1〜2 が多い傾向が見られる。
一方身体障害者手帳は、 スモン患者のほとんどが 1〜
2 級を所持している。 このことから、 高齢化により障 害者支援制度より介護保険の使用を優先される状況を 考えると、 介護保険等の社会サービスの利用に不利益
が出ないように注視していく必要がある。 それも個別 対応に力を入れるべきと考える。
E. 結論
今年度の概況を振り返り、 高齢化により福祉・介護 ニーズが増加して居ることが推察されたが、 しかし在 宅および特養などの公的施設のサービスにつながりに くい状況を把握した。 今後も福祉・介護のフェルトニー ズおよびノーマティブニーズを掘り起こしながら、 ス モン患者の生活に対する不満や不安に答えていく手法 を開発する必要がある。
G. 研究発表 なし
H. 知的財産権の出願・登録状況 なし
I. 文献 なし 図 19 問題領域の推移