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新たな地域イベントの広報映像の制作

楜 沢   順

目 次 1.はじめに

2.映像制作のプロセス

3.映像編集におけるカラーグレーディング 4.映像制作と地域イベントの特性

5.今後の課題について

第 2 章

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1.はじめに

< 2017 年版 PV オープニングタイトル>

 地域活性化のひとつの方法として多くの自治体がイベントとしてアートプロジェクトを 行う例が増えている。成功しているイベントもあれば失敗しているイベントも多く見かけ る。

 この研究も地域イベントとしてのアートプロジェクトの検証の一環であるが、本章では プロジェクトの映像記録と効果的な広報用映像制作に焦点を当てて論ずるのを主とし、プ ロジェクションマッピングと簡単ではあるが参加していただいたアーティストの作品の紹 介も行う。

 本稿であつかうイベント「真間あんどん祭」は 2019 年で 5 回目となる新しい祭である。

 千葉県市川市にある真間山弘法寺を拠点とし、地元大門通商店街の方々、市川をもっと 盛り上げようという市民の方々が集まり、千葉商科大学人間社会学部の有志が加わった「真 間行灯ライトアップ企画実行委員会」により運営されているお祭りであり、人間社会学部 の齊藤ゼミ、和田ゼミが中心になり学生ボランティアが市川市や市民と協力し合い育てて いる地域イベントである。

 筆者が関わるきっかけとなったのは 2017 年の「真間あんどん祭」でプロジェクション マッピングをしたいという弘法寺さんからのオファーがきっかけである。政策情報学部で は学生に政策情報学部の広報を中心にクリエイティブな活動を行うための学生団体 Links を持ち、近年はプロジェクションマッピング制作で大学外でも知られるようになっている。

この Links のメンバーでまずは 2017 年の「真間あんどん祭」プロモーション映像を制作 した。

 これがきっかけということではないが、ほぼ同時期にこの論文の地域アートイベントの

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研究プロジェクトが立ち上がり、2018 年から政策情報学部の研究プロジェクトメンバー の吉羽ゼミ、権ゼミも加わり、本格的にフライヤー、ポスターといった紙媒体の広報と、

地域イベントにおけるアートの役割を探る研究対象としてこの「真間あんどん祭」での活 動を行うこととなった。

 

 アートプロジェクトに限らず地域活性化のイベントを行う場合、予算があれば地元の映 像制作会社に記録からパッケージまでを依頼するのが一般的だが当然ながら制作予算は必 要となる。本稿のイベント映像は大学が関わることにより、予算面においても教育面にお いても有益であることを証明している。最終的には学生と制作したプロモーション映像は 2018 年度の JCOM 市川主催のコンテストでグランプリも受賞する作品に仕上げることが できた。

 プロモーション映像はこのようなイベントを継続させるためには重要なツールとなる。

 多くの人にイベントを広報するだけでなく、市民がどのようにイベントに関わり、それ によって何を目的としているのかを世界中に広めることが可能になる。特にネット時代で ある現代では手軽に世界中にコンテンツを提供する環境が整っている。かつては大手マス コミに依頼し、時間や紙面を買わないとできなかった広報がネットを使えば自分たちだけ で行えるだけでなく、大手マスコミでもせいぜいが地域、広くても日本が限界であるが、

ネットであれば世界中にアピールできるのである。

 

 プロジェクトを継続する場合には映像素材はイベントの検証材料、次年次以降の広報活 動、次の世代に引き継ぐためのドキュメントとして価値を持つはずである。

 技術の話をすると、現代はデジタル映像の時代である。アナログの時代はプロでなけれ ばできない技術や手に入らない機材ばかりだったが、デジタル技術のおかげでアマチュア でもプロと同等、場合によってはプロではできないが逆にアマチュアだからこそできると いう表現手法が増えている。

 

 以上のことを考えると、地域イベントに地域の大学が関わることは予算面、技術面、継 続面、人材面、組織面、教育面においてもメリットがあると考えられる。

   

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2.映像制作のプロセス

 記録映像は広報用のプロモーション映像と、市民と学生が手作りで新しいイベントを作 り上げようとしているドキュメントとしての二つの方向がある。

 今回の「真間あんどん祭」はプロモーション映像を主軸に、手作りイベントであること を印象付ける内容と二面性を持った映像を目指した。さらに映像を学び始めた学生数名に 撮影をしてもらうことで予算面も抑え、専門的に撮影をマスターしていない一般の人でも、

プロモーション映像としてのクオリティと内容を維持できる方法をここで実証している。

 唯一条件としては、ディレクタというか映像制作の訓練を受けたまとめ役が 1 人だけ必 要ということだけである。このようなイベントを企画する場所ならばどの街にも映像制作 をしていて地域活動を希望している人材はいるはずであり、そういった人材を見つけ出す ことも地域イベントを成功させる重要なファクターではないだろうか。

 

 「真間あんどん祭」のプロモーション映像が成功したのは 2017 年度最初に制作されたプ ロモーション映像によるところが大きい。

 2017 年度の「真間あんどん祭」プロモーション映像の制作において実験的に 1 年生の 映像に興味がある学生数名で撮影を行った。当然ながら平凡な映像が多く、多くの人を引 き付けるような映像はほんの数カットしかない。しかし、数カットでもよい映像が撮れて いれば成功である。使える映像が多くあっても、プロモーション映像は長くても 5 分が限 界だ。それ以上ではプロモーション映像として長すぎる。

 重要なのは約 5 分の中に多くの人の記憶に残る 1 カットがあるかどうかである。

 2017 年版のプロモーション映像では最終カットがそれにあたる。

 撮影用ドローンを使用し弘法寺の階段上から空撮でカメラがティルトアップするとあん どんの光が大門通を一直線に市川の駅まで続いているように見えるカットが最終カットで ある。

 このイメージが「真間あんどん祭」を企画したスタッフの思いを象徴的に伝える記憶に 残るカットとなったのである。結果、思いのほか良いプロモーション映像となり、関係者 から多くの好意的な感想をいただいた。

 映像を学んでいる未熟な学生の作品を見ると、決められた物語を伝えるだけの映像に終 始して、映像そのものに魅力がないものがほとんどである。映像そのものの力を引き出す ことに気づかなければ、魅力的な素材も得ることはできない。

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 現在はデジタル映像の時代である。デジタル編集によってどのような素材でも十分意味 を持つ素材と印象付けることが難しくないぐらい可能性をプロではなくアマチュアにもた らしている。そのことを多くの映像に関わる人々に知ってもらいたい。その機会を例えば

「真間あんどん祭」というイベントが提供してくれる。

 経験上デジタル環境であればそれほど映像を学んでいない人を使っても十分人々の記憶 に残るプロモーション映像制作は可能であり、映像スタッフの人材面、予算面、また教育 面で、有用な方法になると実感し、2017、2018 年のプロモーション映像制作では意図的 に学生を頼み自由に映像を撮らせ、それをメインにしたプロモーション映像を作成した。

 

 以下、2018 年度「真間あんどん祭」プロモーション映像の制作過程を追いながら地域 イベントを盛り上げるために映像やアートがどのような効果をもたらし、教育的にもどの ような意義を持ち得るのかを探っていきたい。

< 2018 年版 PV オープニングタイトル>

 

 「シネマトグラフとビデオグラフ」

 映像には 3 種類のジャンルがある。シネマトグラフ(Cinematograph)、ビデオグラフ

(Videograph)、フォトグラフ(Photograph)である。ビデオとフォトは聞きなじみがあ るだろが、シネマトグラフという言葉はあまりなじみがないかもしれない。またフォトグ ラフは動画ではないのでここでは説明を省く。

 シネマトグラフというのは簡単に言うと映画的な映像のことである。今までシネマトグ ラフは劇場で上映される映画を指していた。ようはシネマ用 35mm カメラ以上を使用し た映像の総称である。フィルム時代はシネマ用カメラを扱えるのは当然映画撮影ぐらいで、

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それ以外の映像はよくて 16㎜、一般的には8㎜フィルムを使った動画撮影用のカメラぐら いしか扱えなかった。ぎりぎり 16㎜フィルムの映像はシネマトグラフの範疇に入ったか と思う。

 デジタル時代になり、一眼デジタルカメラでフルサイズ(35㎜、スーパー 35㎜)のセ ンサーが乗ったデジタルカメラで動画撮影が可能になったことで、シネマトグラフという 言葉も一般化してきた。それまで一般の映像制作者が手を出せなった 35㎜フィルムと同 等の映像が撮影できるようになりビデオとはまったく違う表現が行えるようになったの だ。

 シネマカメラとビデオカメラの決定的な違いとは、イメージセンサーの大きさである。

この違いが映像の表現に決定的な差をもたらす。

<イメージセンサーサイズ>

 

 どのような差になって現れるかというと、被写界深度の差である。被写界深度とはピン トの合っている奥行き方向の幅のことである。例えば被写界深度が深い状態だとピントを 3m に合わせたときに1m から8m までピントが合って見え、それ以外は徐々にボケて ゆく。被写界深度が浅い場合は、同じように3m にピントを合わせると、2.9m から 3.5m までしかピントが合って見えないといった絵が得られる。

 一般的に被写界深度が浅いほど(ピントの合う範囲が短くボケやすい)映画的表現シネ マトグラフと呼ばれ、被写界深度が深いほど(ピントが遠くまであいボケにくい)ビデオ グラフと分けられる傾向がある。

 この要因はいくつか条件があるのだが、イメージセンサーの大きさがまずは影響する。

イメージセンサーが大きければ大きいほど被写界深度は浅くなり、イメージセンサーが小 さいほど深くなる。つまりはボケるかボケないかでジャンルが分かれるのだが、ボケとい

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う表現が映像にとって魅力的な要素となることはよく知られており、英語でも日本語のボ ケを使い Bokeh という言葉が映像用語として世界共通の意味で使われている。

 ボケの効果として有益なのは、必要な要素を奥行き方向で整理して構図や見せたいもの をコントロールしやすくするということだ。TV の映像を見ると奥の背景まで何があるの か見えるが、映画を見てみると被写体はピントが合っているが、背景がぼけて何が映って いるのかよくわからない状態になった絵が多い。それによって奥行き感(スケール感)が まったく違って見えたり、見せたいものだけが浮き上がってくるのが実感できるだろう。

 映像の語り口や表現方法に幅があり、映像としての魅力が多いのがシネマトグラフの特 徴といえる。そのためシネマトグラフという言葉が世界中に広まった要因としてブームと なったウエディング業界での一眼デジカメでの映像サービスがある。まさに映画のヒロイ ンとなる映像がウエディングの思い出の映像となって届くサービスが、ウエディング用ス チールカメラマンの職を奪うほどの人気を博したのである。シネマトグラフというジャン ルは一般的に定着した。

 今回このシネマトグラフを意識した映像制作を学生と目指すことを目的のひとつとして おり、メインカメラとして使用した Panasonic GH5 と GH4 のイメージセンサーはマイク ロフォーサーズである。コスト的な意味もありフルサイズや APS-C(スーパー 35㎜)に 比べると小さいが、フルサイズ対応のレンズを APS-C よりフルサイズにより近い画角に 変更するマウントアダプターを使用することで画角とボケ感のバランスを保っている。

 「行灯制作ワークショップの撮影」

 ■映像の記録と出力フォーマット

 今回の制作方針、まだ映像制作になれていない学生を使い自由に撮影させ、最終編集で グレードを上げるという手法に実用性があると考えた根拠はデジタル映像のクオリティが 安定してきただけでなく、UHD(Ultra High Definition、4K、3840 × 2160Pixel)が一 般的になったことが大きい。プロモーション映像を UHD で仕上げるということではなく、

UHD で撮影を行うということがポイントである。

 最終的な映像フォーマットは FHD(Full High Definition、1920 × 1080Pixel)とする。

 これにより倍の画角の素材から、構図が崩れていたとしても自由なトリミングが可能に なり、最終的にクオリティを維持したまま鑑賞に堪える構図と画角を得ることができるよ うになる。一見失敗だと思える素材でも救える可能性があり、もう一歩踏み込めば、1 台 のカメラで撮影した映像からあたかも 2 台以上のカメラで撮影したような編集が可能にな

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る。これは人材的に不利なイベント映像制作にとって大きなアドバンテージである。

 ■指示

 まずは市川の子供たちに「真間あんどん祭」で置かれるあんどんを作ってもらうワーク ショップがある。市民が深くかかわる地域イベントにとって重要なイベントである。

 4 回のワークショップ(2019 年 6 月 29、30 日、7 月6、7 日)の様子を三名の学生と一 緒に撮影を行った。ディレクタとしての指示は「多くの子供たちやご家族の表情をなるべ く多く撮影すること」だけである。素人同然の学生に映像を撮らせるのにその程度の指示 でよいのかと思われるかもしれないが、素人だからこそ多くの指示は意味をなさない。

 ■機材   カメラ

  Panasonic GH5 x 1 マイクロフォーサーズ UHD Log 記録   Panasonic GH4 x 2 マイクロフォーサーズ UHD Log 記録

   Sony PMW-EX3 x 1(スタジオ業務用ビデオカメラ) 1/2 インチセンサー FHD  Log なし

  

  スタビライザー   Zhiyun Crane 2   Zhiyun Crane  

 今回のポイントの一つが機材である。

 先に書いた通り、アナログ時代ではプロの機材はプロでなければ使用できず、クオリティ の差はおのずと明らかであった。確実にプロとアマチュアの垣根は機材という一点でのみ 存在していたのである。

 しかし現在はデジタルが主流である。デジタルの利点はその特性から一定のクオリティ は 100%担保されるということであり、技術が進めば、その一定というレベルが確実に上 がってゆくということだ。しかも技術が安定すれば短期間にコストが低くなる。

 つまりアマチュアでも高度な技術が低価格で特別な訓練なしに入手できるということで ある。

 カメラは映像業界でも定評のある Panasonic GH シリーズをメインで使用し、空撮用に DJI Phantom4(撮影用ドローン)を使用した。GH シリーズ、ドローンともに UHD(Ultra

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High Definition、4K 3840 x 2160 pixel)の映像撮影が可能である。

 撮影用機材としてはカメラを手持ちで安定的に撮影可能にするスタビライザーを 2 台の カメラに使用し、自由に移動撮影を行える状態とし、スタジオの業務用ビデオカメラだけ が FHD なので、三脚を使用したステージ撮影に使用した。

 手持ちでも安定した映像の撮れるスタビライザーはこのようなイベント撮影、プロモー ション撮影には必須の機材である。フィックスした三脚映像は安定感はあるが、動きが乏 しく映像としてすぐに飽きられてしまうが、自由に移動撮影のできるスタビライザーを使 用すると、ダイナミックでシネマティックな映像が比較的簡単に得られる。少々練習して コツをつかめば一気に映像がグレードアップする。

 特に子供たちが主役なのでただ座っているだけでなく、突然の反応があったり親子の独 特なコミュニケーションが垣間見えたり、計算できない名シーンがそこには産まれる可能 性がある現場である。そういう場にまだ未熟な学生を放り込むことで彼ら彼女らが何を見 つけ、何を見つけられなかったか、その結果が映像として記録されることになる。それを 後で編集時に冷静に客観的に見つめることになる。それが学生にとって重要な学びにもつ ながっている。

 

 「事前撮影」

   ■機材

  ドローン(DJI Phantom4Pro) 1 インチセンサー UHD Log 記録  

 「真間あんどん祭」の本番前に、プロモーション映像の核になる撮影を行う。

 これはプロモーション映像の構成上意図して視聴者を引き付けるための映像であり、プ ロモーション映像を成功させるための演出効果を持った撮影となる。このカットがあるか らドキュメンタリ部分の映像が破綻していても問題にならなくなる重要なカットである。

 2017 年度版のプロモーション映像でいうと空撮最後のカットがそれにあたる。撮影は 本番当日であるが、筆者の頭の中には絶対良いカットになるはずというイメージが先にあ り、意図してドローンの位置、カメラの動きをコントロールし同じカットを 2 回とってお り、良いほうを採用している。

 今回はこの最後のカットにつなげる様にオープニングに印象的なカットを入れて 2018 年度版を始めようという事前の計算をしていた。それは祭の中心である弘法寺を見せる シーケンスで、基調イメージとしては JR の「そうだ京都へ行こう」の CM 風でとした。

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 結果オープニングの評判も良く、コンセプト通り見た方々は JR の CM をイメージして いた。イメージの制作に関しては次項の「カラーグレーディング」にて説明を行う。

 このオープニングはすべてドローンによる撮影による。タイトルは三次元 CG でロゴア ニメーションを制作、ドローンの映像と合成している。

 

  「あんどん祭本番」

   ■指示

 基本的に「ワークショップ」の撮影と同じ。

 ディレクタとしての指示は「多くの子供たちやご家族の表情をなるべく多く撮影するこ と」に加え、イベントの進行に沿ってポイントを絞った撮影を必ず指示しておく。「真間 あんどん祭」でいえば、前半のステージを押さえる、後半はあんどんのライトが点灯する 儀式があるのでそれを押さえる。あとは気になったところをとにかく撮影しておくという 指示をしておく。

 ■機材   カメラ

  Panasonic GH5 x 1 マイクロフォーサーズ UHD Log 記録   Panasonic GH4 x 2 マイクロフォーサーズ UHD Log 記録

   Sony PMW-EX3 x 1(スタジオ業務用ビデオカメラ) 1/2 インチセンサー FHD  Log なし

 

  スタビライザー   Zhiyun Crane 2   Zhiyun Crane  

 今回は千葉商科大学のデジタルスタジオで使用されている業務用ビデオカメラも使用し ている。前述した通りビデオカメラと一眼カメラがどう違うかというと、ビデオカメラは TV 用のビデオグラフという分野の映像となる。イメージセンサーのサイズが小さく、被 写界深度が狭いのでボケにくく必要ないものまで映り込んでしまうが、ピント合わせがや りやすく、広角で全体を押さえる映像に向いている。一方一眼カメラはセンサーサイズが 大きいので被写界深度が浅く、ダイナミックレンジも大きくなりビデオというよりフィル

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ムに近い映像が得られる。ビデオグラフに対してフィルムに近い表現をシネマトグラフと いうまったく違う表現が可能になる。

3.映像編集におけるカラーグレーディング

 ここ 10 年ぐらいの映像業界でのトピックはカラーグレーディングという概念が一般化 し始めたことだろう。映像に詳しい方ならわかると思うが映画、CM、ミュージックプロ モーションビデオなどの映像の色彩には特別なものを感じると思う。いくらがんばって映 像を撮ってもそのような色彩の映像や雰囲気は撮れない。その秘密がカラーグレーディン グという工程である。

 デジタル時代になり機材に関しての低コスト化、プロと同じレベルの機材がアマチュア でも使える時代になったと記した。しかしカラーグレーディングだけは単に技術でカバー できる範疇ではなく、人間個人の資質が大きくかかわって効果が発揮される領域なので、

今まで一般化されなかった。しかし、映画や映像の世界で多くの実験がなされ、徐々に多 くの人に影響を与える色彩効果のデータが集まってきたこともあり、カラーグレーディン グを一般化する動きが始まった。その大きな動きが 4 〜 5 年前から動画を強化したデジタ ルカメラでの Log 撮影が可能になったことと連動する。

「Log 記録と Lut」

 Log とは、対数(logarithm)のことである。映像業界用語としての Log はそもそも映 画フィルムをデジタルに変換するときの技術で、フィルムの広いダイナミックレンジを効 率的に限られたデジタルのダイナミックレンジ内に圧縮して収めるための一種のガンマ カーブを指している。圧縮されているのでそのままではコントラストのない色味の乏しい いわゆる眠い絵にしか見えない。これを Lut(Look Up Table)という Log カーブと逆の 特性を持った情報をマッピングすることで本来のダイナミックレンジを再現するという手 法である。

 同じようにデジタルカメラのイメージセンサーの情報を画像に変換するプロセスで Log カーブを適用しイメージセンサーのダイナミックレンジを圧縮し動画として記録する。そ のデータを編集時に LUT を適用し色とダイナミックレンジを再現するという手法がデジ タルカメラで可能になった。

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 プロのシネマカメラは Log 記録が当たり前で、それが一部のハイエンドのデジタルカ メラでも可能になっている。これにより普通に録画されたダイナミックレンジと比べ、見 かけ上 1.2 倍から 1.4 倍のダイナミックレンジを得ることができる。さらにそのダイナミッ クレンジを生かして、より意図を伝えるための色彩コントロールを行う技術が加わり、独 自の LUT を作成し、意図通りの発色を得ることが一般化しはじめた。これがカラーグレー ディングが一般化した背景だ。

 しかしその動きによって、一般的な動画のデータ圧縮と色情報の少なさの問題が浮き彫 りになってきた。現在一般的な動画データは H.264 という圧縮コーデックを使用し、8bit YUV4:2:0 という規格の色情報を記録している。多くが 100Mbps 〜 150Mbps の情報量を 持ったデータとして記録される。

 Log から LUT で情報を拡大させる過程で確かに見かけ上ダイナミックレンジは広が り、見栄えのする映像が得られるようになった反面、もともとの情報量の低さから破綻 する領域も現れるようになった。本来、Log と LUT を使用する色情報としては 10BIT YUV4:4:4、少なくとも 10BIT YUV4:2:2 の情報量が理想である。

 そのような状況からデジタルカメラでは 10BIT YUV4:2:2 の記録可能なカメラも出てき ており、実際に編集でカラーグレーディングをしてみると発色の可能性とクオリティが雲 泥の差となって現れてくる。

 ちなみに YUV とはカラーモデルの一種で、TV、ビデオ業界ではアナログ時代から使 われているものである。Y は照度信号であり、CIE の色度図の Y 軸で表される。U は青 B から Y を引いた色差信号(Cb)で、V は赤 R から Y を引いた色差信号(Cr)である。

 そのあとの数字はそれぞれの信号のサンプリングの比率である。4:2:0 は Y を 4 ピクセ ルに対し、U は 2 ピクセル、V はなしという情報のサンプリングをする。一般的な RGB のフルカラー画像を YUV の比率で表すと 4:4:4 となる。

 現在プロかセミプロの現場では 10BIT YUV4:2:2 のデータが基本的にやり取りされてい るが、去年から今年にかけて動画 RAW(RAW Image Format)の記録ができるシネマ カメラがデジタルカメラの領域まで下りてきた。動画RAWとは写真のRAWと同じイメー ジセンサーで得られた情報を未加工で記録するフォーマットである。

 本来イメージセンサーは 12BIT から 14BIT の情報を得ているが、そこから複数の画像 処理を通して 8BIT の Jpeg 画像や、8BIT YUV4:2:0 の H.264 動画を記録している。その 過程でイメージセンサーの膨大な情報は捨てられ、多くの情報が固定化され撮影後の色処 理を難しくしていた。そこで処理前の RAW 情報をそのまま記録し、後で個別に画像、映 像化する現像処理をする方法がプロを中心に一般化している。この方法を動画で行うと、

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完全な 12BIT、14BIT の YUV4:4:4 の情報を自由に引き出し、思うままに色情報をあつか うことが可能になる。しかし当然ながら RAW はファイルとして大きくなるので動画とし て RAW を記録すると膨大な記録スペースが必要になる。ちなみに筆者が 1 時間一般的な CinemaRAW(12BIT、UHD)で録画した場合、約 500Gbyts の記録サイズになった。

 

 「撮影フォーマットと編集フォーマット」

 

 2019 年現在において、10BIT YUV4:2:2 が現実的にクオリティとコストパフォーマンス が良いことになるが、機材が限られるのと、コストの面を重視し、8BIT YUV4:2:0 での Log 記録をメインに行うことにした。うまく扱えばそれでも他では得られない隠れた色を 引き出すことは可能であり、映像の色(光)を理解しているメンバーがいれば可能性は大 きく膨らむ。

 情報の解像度としては 100Mbps 〜 150Mbps は得られる機材を使用した。動画フォー マットは記録に MOV の H.264 を使用する。すべての機材が Log 記録となる。

 編集過程で生じる中間ファイルのフォーマットは 10BIT YUV4:2:2 か、TIFF シーケン スを使用し、情報劣化が編集過程で落ちないように運用している。

 「LUT とカラーグレーディング」

 LUT は素材に対して RGB の情報をどのように変化させるかの対応を記述した情報であ り、その対応を記述する過程がカラーグレーディングである。

 カラーグレーディングの前段として、例えば Log で記録された映像を HDTV 映像の基 準として設定されている Rec.709 というカラープロファイルに合わせる作業を行う。これ によってカメラの機種が違っていてもほぼ同じ基準の色に合わせることが可能になる。こ の過程をカラーコレクションと言う。一旦色情報をある領域にまとめておいて(カラーコ レクション)、その後目的に合わせて色をコントロールしグレードを上げる(カラーグレー ディング)と考えると分かりやすい。基準に合わせるにはカラーチェッカーという基準に 合わせるためのカラーチャートが印刷された道具を撮影する光の下ですべてのカメラで事 前撮影することで精度の高いカラーコレクションを行うことが可能になる。

 

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< Log 記録されたカラーチェッカー映像>

<カラーチェッカーを利用し Rec.709 の基準に補正された映像>

 カラーコレクションを行った後に、演出に沿ったグレーディングを行うのだが最近はカ ラーグレーディングが当たり前になったこともあり、インターネット上に多くの LUT が フリーでも商品としても存在している。気に入った LUT が見つかったらダウンロードす れば良いだけだ。もちろんオリジナリティを求めて自由に色空間をコントロールするため

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の環境は揃っているので独自の LUT を組むこともできる。ただ、先に記したように個人 的な感覚だけでコントロールしても多くの人に受け入れられるグレーディングは難しい。

実際ネット上で公開されている多くの映像を見てみると、制作会社が関わっているにもか かわらずコントロールができていない映像も多く、個人的で映像制作をしている作品の中 には不快感を与えるだけの信じられないコントロールも見かけることが多い。映像は一目 で評価が決まってしまうので明確なイメージをもってグレーディングを行わなければ逆効 果になってしまう。

 次の画像は現在ハリウッドなど映画でトレンドになっている Teal and Orenge という グレーディングテクニックを使用した。Orenge は肌の色を基本トーンとして、それ以外 の背景に Orenge の補色である Teal(鴨の羽色・青緑系)に仕上げるテクニックである。

 Log、Rec.709 と比べてもらうと参考になると思うが、Rec.709 は TV やビデオでよく見 る映像だと分かるが、グレーディングされた映像は TV やビデオというよりフィルム的な 雰囲気を感じられるのではないだろうか。映像の色味だけでなくスコープで見れる信号の 違いに注目してもらうと映像が徐々に魅力的に変化しているのが分かると思う。色のコン トロールによりメディアの種類まで感じられるぐらいカラーグレーディングは実は浸透し ているのである。

 

< Rec.709 の映像にカラーグレーディングを施した映像>

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 以下具体的に 2018 年度「真間あんどん祭」プロモーション映像のカットでカラーグレー ディングによりどのような視覚効果が得られるかを見てゆく。

 

<図1 オープニング Log 記録>

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<図2 オープニング カラーグレーディング>

 オープニングの印象的な弘法寺の山門をドローンによりクレーン撮影したカットであ るが、図1が Log で撮影されたオリジナル映像。図2がカラーグレーディングによって 得られた映像である。印刷がカラーではないので映像では分かりづらいかと思うが、ス コープの信号分析を見ていただけると Log 撮影の各三原色、ベクトル、CIE のダイナミッ クレンジと RGB 各色のずれ、面積の広がりを確認していただけると分かりやすい。特に Log 撮影で白領域、黒領域の余裕がカラーグレーディング時のダイナミックレンジの余裕 を担保しているのが分かるかと思う。

 ここでは山門の木材に染み込んだ赤の色材と木の緑を印象的に引き出す作業を行ってい る。ビデオ的な色彩でもなく肉眼で見た色彩とも違う印象的なトーンを見つけ出してゆく 作業である。

 先に Log 画像をグレーディングする基本例をあげたが、今回はすでにイメージとして 色彩が決まっているので Rec.709 を経由せず直接グレーディングレベルまで持ってゆく方

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法をとった。まずは希望するコントラスト(明暗比)を復活させる必要がある。コントラ ストを先に決めるのは、色を先に決めると後でコントラストを変える影響で色も変化して しまう。まずは明暗のコントラストを決めるのがコツである。

 次に全体の色を復活してゆく。基本的に Log 映像は彩度が低くなっているので RGB そ れぞれの彩度を上げてやり希望する色の強さになるように設定し、全体としてコントラス ト、色味が映像として十分な情報を得られるようにコントロールしてゆく。

 全体が希望の情報量になったら、次に暗部、中間部、明部それぞれの色情報を変更し、

映像の意図に沿った色味を加えたり引いたりしてゆくのだが、多くの人が理解していない のは目立つ色を基準にコントロールしているので、気づくとコントラストが高く彩度の高 い映像になりがちだということである。

 印象深く深い色彩を見せたかったら抑制されたコントロールが必要であり、注意しなけ ればいけないのはわかりやすい色に注目するのではなく、映像のトーン(諧調)を常に意 識しコントロールすることである。

 トーンとは明暗と色の諧調の変化であるが、最初に決めたコントラスト(明暗比)の中 でどのくらい豊かな諧調(中間色)を得られるかが問われることになる。言い換えるとコ ントラストが強いと明暗の諧調は少なくなり、彩度が高いと色の諧調は少なくなる。つま り豊かな色調とは適度なコントラストと彩度によって得られる効果で、トーンが豊かな ら何度でも見飽きない映像が産まれる可能性が高くなるのである。そのためにも Log 記 録を高 BIT、高解像度の色空間で行っておくことが確実な効果を得るために必要となる。

今回に限らず魅力的なトーンにするためのポイントは明部のトーンを中間部、暗部のトー ンに比べていかに複雑に見えるようにコントロールするかにかかっている。明部のトーン に粘りを持たせ新鮮な光(白)を見せることができれば大概成功する。

 しかし十分な知識と経験を持ったカラリストであれば最低限 8Bit YUV4:2:0 100Mbps の情報から最適なトーンを作り出すことは可能であり、今までは映像業界でもその条件の 中で豊かなトーンを実現してきた。経験と訓練さえ積めば同じ条件で TV 放送を超えるク オリティの映像を個人で制作することが可能になった。それを可能にするために大学でな ければ経験と訓練を積む時間を提供することは難しい。専門学校は 2 年が普通であり 4 年 制の大学でじっくりと理論と経験を積むことが映像教育として必要な時代になっている。

 学生たちには自由に映像を撮らせ、とにかく多くの素材を用意させ、素材を自由に編集 させ、それを集めて全体の構成が出来たら、ここから経験者が細かい編集を行う。どうやっ て全体を明確な意図を感じさせるようにまとめ上げるのか、映像を見ることによって拘束 される時間を感じさせないリズムをどう構築してゆくのか、そして映像そのものの魅力を

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どう引き出すのかを見せることによって学生は多くのことを学ぶことができる。言葉で伝 えること以上に体験を通して魔法を見せることが教育には重要だ。映像は光であり光がモ ノを照らし出し色を発色させる。

 色の知覚は個人的なファクターが大きい。日本人は目が黒なので RGB の光を余計な色 フィルターを通さずセンサーに送ることが可能で、実際日本ぐらい多くの色に名前を付け ている人種は珍しい。それだけ豊かな色を認識し生活や文化の中に色を取り入れてきた人 種なのである。しかし色盲とまではいかない色弱(色覚異常)の確率は多い。例えば赤が グレーにしか見えないといった色覚異常は日本人男女半々の 40 人クラスだと、色覚異常 の男子が 1 人、保因者の女子が 2 人いるといわれている。さらに育ってきた環境によって も色に対する認識度は個人差が生じる。

 そういった中でモニターを通して色をコントロールできる技術を養うのは短時間では不 可能である。そもそも大学までモノを観る、観察するという教育をほとんどの人は受けて いない。見たいものしか見えないのが人間の視覚であり、見ているつもりで記憶で補って いるだけなのが実情だ。実際色覚異常であることに気づかないで成人する人も多くいるし、

ほとんどの人が肉眼で見えている情報に対して整理をつけられない。映像はレンズを通し た光の情報であることも問題を複雑化する。レンズで見える世界は肉眼で見る世界とは違 うということも理解しなければいけない。問題は色覚異常も含めて個人差が大きいことよ りも色という概念があいまいなまま色を扱う映像の職業についている人がとても多いとい う現実であり、それはとても残念なことである。表現の世界では個人差というのは武器に することができる。過去著名な画家が色覚異常である例も多い。色という物理的概念を時 間をかけて知ることが重要で、それによりたかが数千万色程度のコントロールはそれほど 難しいことではないと理解できる。その意味でもデジタルは現状まだ限界が明確に存在す るので問題をある範囲の中で限定することができる。それは複雑な要因を整理し理解する のに有効である。

 2020 年現在、ほとんどの映像編集ソフトにベクトルスコープ、YC 波形モニター、YC b Cr パレードなどがリアルタイムに表示できるようになっている。それによって映像だ けでなく色の情報も論理的に把握しやすくなっており、色に惑わされることなくトーンを 整えることが可能になっている。

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<編集ソフトのスコープ例>

 これらスコープの見方を知るだけで色のコントロールが理解できる優れたツールであ る。

4.映像制作と地域イベントの特性

 地域イベントによる映像の活用は多岐にわたる。今まで述べてきた記録を含む広報用映 像から、イベントに直接かかわるコンテンツとしての映像まで可能性は広い。

 はじめにで書いたようにプロジェクトを継続する場合には映像素材はイベントの検証材 料、次年次以降の広報活動、次の世代に引き継ぐためのドキュメントとして価値を持つは ずである。

 「真間あんどん祭」では映像イベントとしてプロジェクションマッピングが毎年恒例と なっている。どちらかというと広報映像は副産物で、プロジェクションマッピングが先に オファーされて「真間あんどん祭」に関わることになったというのが経緯である。

 プロジェクションマッピングは弘法寺の境内にある「祖師堂」で行うイベントであり、「真 間あんどん祭」があんどんを使って街に灯をともすというライティングイベントでもある のでフィナーレを飾るのにふさわしいイベントである。

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 コンテンツの制作は政策情報学部の学生団体 LINKS と楜沢ゼミ生有志で制作される。

 本来プロジェクションマッピングをまともに行おうとすると少なくとも見積もっても数 百万の予算が必要になるが、機材含めて大学にある機材で賄っていた。当然プロジェクショ ンマッピングに必要な条件を満たすことは不可能なのだが、これもだからと言ってやらな いということならば何も産み出さないし学ぶこともできない。大学が関わる意味がここに あり、不備は覚悟の上でチャレンジすることが重要になる。ただ、少しでも条件を良くし たいので余計な光は消させてもらうとか事前の打ち合わせで環境を整える周りとの協力は 必須となる。

 しかしプロジェクタの光量不足はいかんともしがたくプロジェクションマッピングの効 果がうまく伝わらないのは歯がゆさを禁じ得ないところであった。

 それでも学生が頑張ってコンテンツを制作し失敗しながら上映する体験自体が学生に とって貴重な経験の場になるとの考えで実行してきた。

 もちろん歓声を上げてくださる観客の方もいらっしゃるが、予算をかけた本格的なプロ ジェクションマッピングとは当然スケールや光量の効果が違うので本当に楽しんでいただ ける条件には到底届かないもどかしさは感じている。

 それでも毎回 200 人ぐらいの観客がいらっしゃるのはやはりプロジェクションマッピン グが持つイベントの魅力であり、「祭」のフィナーレにふさわしい期待感があるからなの だと考えられるし、すでに「真間あんどん祭」のフィナーレは商大生のプロジェクション マッピングという流れが定着し始めているのを感じるのは地域イベントにとって重要なこ とだと考える。

 予算をかけずにプロジェクションマッピングを行うためにはどのような準備を行う必要 があるのかがひとつの課題となっている。

 一番重要な機材はプロジェクタだが、重要なのはプロジェクタの明るさである。どの程 度のスケールでプロジェクションマッピングを行うかによっても変わるが「真間あんどん 祭」では弘法寺の祖師堂にマッピングを行う。

 経験上 7000 ルーメンは必要となるが、2019 年まで大学のプロジェクタを使用しており、

これが 3500 ルーメンの明るさで、周辺の光(街灯、出店のライトなど)をすべて消して なんとか可能という明るさである。

 2019 年の秋に 13000 ルーメンのプロジェクタを使える環境ができたので、以下にそのマッ ピング画像を載せておく。本稿の最後に動画の URL も載せておくので確認してほしい。

 

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<祖師堂プロジェクションマッピング 13000 ルーメン>

 十分な明るさのプロジェクタが使えることにより来年度の「真間あんどん祭」ではかな りのクオリティでプロジェクションマッピングの上映が可能になるであろうし、続けるこ とで支援の幅も広がり不可能も可能になることを実感した。

 

 「真間あんどん祭」では毎回本番が終了し、約 1 か月後に完成したプロモーション映像 の上映会と振り返り、ワークショップで制作したあんどんを持ち帰るための集まりを、参 加していただいた子供たちと親御さんを集めて千葉商科大学で行っている。毎年映像は好 評で喜んでもらっている。やはり知り合いが映っていたり自分が映っていると愛着が深ま り、また来年参加したいという思いも生まれるようである。

 毎年映像も楽しみにしている方々も増え、イベントの継続のために役立っている。

 

 2018 年には新たな提案として、アーティストを招いてオリジナルあんどんを制作して もらい、制作ワークショップも含め市民参加の作品の展示も行った。

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<アーティスト臼田那智氏>

 始めての試みということで、様々な場所で住民といっしょに作品制作をし発表している 経験が豊富なアーティスト臼田那智氏に参加していただいた。地域アートイベントの経験 をしている臼田氏の参加は非常に良い刺激剤になったと感じる。ワークショップにおいて は子供たちが紙の上を絵の具まみれになって駆け回り今までにないあんどんが誕生した。

アーティストが加わることであんどん自体のデザインも変化が生じ、子供たちの参加の姿 勢にも変化が生じたのではないだろうか。椅子に座り机に向かって手順に沿って絵を描く だけでなく、全身を使って絵の具まみれになりながら飛び回る姿はワークショップの映像 を見ていただければその効果が確認できる。大きな紙に全身で絵の具をたたきつけ、引き 延ばし、走り回ることによって産まれる訳のわからない色の塊は、頭で考えていては絶対 できない色であり、形である。意味は分からなくても体験した子供たちは記憶に残る体験 として人生のどこかでこの経験を反芻し体で感じた実感を頼りになにがしかの意味を見出 す瞬間が訪れるはずである。

<アートあんどんワークショップ>

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 「真間あんどん祭」が終了後も、子供たちと制作したあんどんは市川市文化財団が管理 する木内ギャラリーにおいて 2018 年 11 月に「あんどん屋」という展覧会で作品として公 開された。イベントのコンテンツというだけではなく、作品として展開するアーティスト の姿勢は共感するところが多い。参加した子供やご家族も展覧会に訪れ、アーティストと 市民のコミュニケーションを深めてゆく。それがまた「真間あんどん祭」の継続につなが る重要なファクターと考えられる。

 2019 年にはアーティストとしてリョウフジシロ氏の協力を得て「巨大キラメキあんど ん」を提案、2018 年と同じようにワークショップと祭の展示、阻止堂とは別に学生が「巨 大キラメキあんどん」にプロジェクションマッピングを行った。

 フジシロ氏には学生が企画制作した広報用に京成「市川真間駅」と「国府台駅」に「メ ルカワあんどん」展示に協力してもらいコラボレーション作品を制作展示した。

 こちらもワークショップを行い子供たちとかわいいあんどんを制作し、駅の空間を装飾 し「真間あんどん祭」の期間前途 1 週間の展示を行い、多くの駅利用者の目を楽しませて いた。

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5.今後の課題について

「記録映像とプロモーション映像」

 この章では地域イベントと映像の関係にスポットを当てているのでその点で課題を提示 すると、今後のプロモーション映像のコンセプトの広がりと、祭自体が市川市民にどのよ うに浸透し、継続されるのかより深堀するドキュメンタリ映像を目指すことが課題となる。

実際実行委員会においても生の声が聞けるインタビュー入りの動画を望む声が出ており、

また地域イベントの立ち上げから継続までをリアルに伝える映像は未だ少ないので貴重な 資料となることは間違いない。

 ドキュメンタリ映像の場合、今回検証しているプロモーション映像の手法も一部有効だ が、的確に目的をもって出来事を切り取れる観察力と機動力を持ち、さらにそれぞれの現 場で的確なインタビューを行える学生なりボランティアを育成する必要があり、ハードル はさらに高くなる。

 2019 年から映像スタッフとして参加していただいている政策情報学部の後藤ゼミはド キュメンタリ映像制作を中心に据えたゼミナールなので、質の高いドキュメンタリ映像が 制作できる可能性がある、来年以降の展開に期待したい。

 2017 年から期待されていたドローンによる撮影だが、2019 年にドローン規制が強化さ れ、イベント時のドローン飛行、撮影の許可はとてもハードルが高くなった。夜間という こともあり、今後はドローン撮影は不可能と思われる。

 ドローン自体は重量もあり、人が集まる場所で墜落などしたらもちろん重大な事故につ ながる可能性があり規制自体はいたしかたないが、得られる映像効果はリソースの少ない 新しいイベントにとってはアピール効果は抜群である。有効な武器が使えないのは残念で あるが、望むなら業務として空撮を行っている映像業者にドローン撮影だけを頼むという 方法も検討に値するのではないかと思う。イベント撮影、夜間撮影も業者ならば申請が通 りやすいだけの実績を持っており、こちらの希望の演出も通りやすいだろう。一考の価値 はあるかもしれない。

 その他映像全体の課題としては、今後(2020 年から)多くのカメラメーカーからシネ マカメラというジャンルが登場することになる。今までの H.264 コーデックを使用した圧

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縮動画ファイルではなく、写真と同じように RAW(動画用)ファイルを記録するカメラ が上位機種として主流になる。当然動画も現像処理が必要となるが、12Bit、14Bit といっ た色空間的にも高解像度の編集が必須になり、完全に映画レベルのデータを一般で扱える 時代となる。

 この編集に対して、映像を学ぶ人のほとんどがデジタルで扱う色という概念を十分に学 んでいない、あるいは学べない状況をいかに克服して多くのカラリストを育成するのかと いう問題が存在している。現状プロでさえ映像で扱う色を把握している方は少なく、アナ ログの場合はラボ任せで行っていたカラーグレーディングがデジタルではそれも含めて撮 影、編集の課題となっている。デジタルであるから論理的、感覚的、両方の客観的なアプ ローチが求められる領域なので多くの課題が存在しているが、ここまで含めて低予算で実 験も許される地域イベントの映像記録は広報、ドキュメンタリ、アーカイブ的な価値も含 めて、絶好の教育的な現場になると考えられる。ぜひ地域イベントに関わる映像制作者の 皆さんには、単に記録し配信するだけでなく、今後の映像業務の可能性を含めた教育の場 としても活用することを推奨したい。

 

「プロジェクションマッピング」

 プロジェクションマッピングに関しては学生の教育的効果も含めて毎年制作、上映を行 い祭のイベントとして定着し始めており、年々課題を克服し、機材の協力企業も確保でき、

来年度は上映環境はほぼ業務レベルにまで高めることができるはずである。

 バックアップは十分になってきたので、あとはコンテンツの充実とさらなるクオリティ アップを目指すだけである。

 2019 年のプロジェクションマッピングは特筆すべきプロセスで制作された。

 2018 年から参加している権永嗣(政策情報学部 准教授)率いる権ゼミ生に協力して もらい、プロジェクションマッピングの内容に関して深く協力してもらった。彼らは映像 や芸術文化から社会を読み解く研究も行っている。彼らが舞台である弘法寺の歴史を調査 しながら、祖師堂の歴史を踏まえたストーリー展開を構築してくれた。それを基にプロジェ クションマッピングらしいギミックと表現に置き換えコンテンツを完成させた。このよう な制作プロセスはプロでは当たり前であるが、大学でもジャンルを超えた制作は珍しく、

ゼミや研究内容を超えてそれぞれの得意な知識、技術を組み合わせ新たなコンテンツを生 み出すプロセスは政策情報学的なアプローチであると考える。今後もチャンスがあれば続

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けていきたい。

 プロジェクションマッピングに関してはコンテンツ以外の課題としてイベント演出的な 面として、あんどんライトアップイベントの後、トリとしてプロジェクションマッピング に多くの人に集まってもらうために演出的なアプローチをどうするかが課題としてあげら れている。

 2019 年には本番の祖師堂脇にある伏姫桜の前にリョウフジシロ氏の「巨大キラメキあん どん」が設置されたので、弘法寺が始まる前に「巨大キラメキあんどん」に別の学生が制 作したプロジェクションマッピングを行い人々に注目させ呼び水とする演出を試みた。両 方により関連性をもたせる演出が組み合わされば今後有効な演出方法になるかもしれない。

 今回の研究プロジェクトを通して難しさを感じるのは、地域にどのようにアーティスト を受け入れさせるのかということであろう。このプロジェクトでも当初は空き家などの問 題と関連付けてアーティストに一定期間アートプロジェクトのための作品制作の場と期間 内での生活の場を提供し、地域の良さ、問題点までも感じてもらいながら制作を市民が支 援する環境の可能性を考えていたが、実際のイベントを通してそれを実現する余裕もなく、

もっと時間をかけて取り組む課題であることがよく分かった。

 アーティストはボランティア的な活動としてしか参加できず、不完全燃焼のなかで発表 の場を提供できたぐらいしか対応できなかったのだが、しかしアーティストが参加するこ とで確実に祭の雰囲気は変わってきており、関係者はそれを認識できたのではないかと考 えられるので今後提案の幅を少しでも広げられたらと考えている。

 ここでも予算面など解決しなければならい問題はあるのだが、立ち上げとして大学が関 わることでアーティストの参加、コンテンツの幅など可能性が広がっていることは事実で あり、大学が地域イベントに積極的に関わる重要性と役割を再確認することとなった。

 最後にプロモーション映像、プロジェクションマッピングなど「真間あんどん祭」で確 実に定着したコンテンツであるが、広報的にプロモーション映像をもっと多くの人たちに 見てもらうことが必要であろうと考える。実行委員会の中でも映像がすばらしいので見て もらえれば確実に興味を持ってもらえるという意見もあり、再生回数が伸びない悔しさを 指摘されている方もいる。まだまだ「真間あんどん祭」自体の認知も広報力も足りないと いうのが実感としてあり、今後の大きな課題である。もともとこの研究プロジェクトを始 めるにあたって地域アートのブランド化といったマーケティングも含めた検証を想定して いたが、残念ながらそこに到達することは叶わなかった。市川の文化に対する認識の高さ

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を広くアピールし若いアーティストとアートに対して強いニーズを感じている若者に対し て市川がアートブランド発信の地としての地位を獲得することが出来るかどうか、今後の

「真間あんどん祭」の継続と、地域アートの検証、今後の映像教育の在り方等多くの課題 を提示してこの章の結びとする。

真間あんどん祭公式サイト

https://ichikawamamaandon.wixsite.com/matsuri

以下本プロジェクトにおける成果映像

2019 年版「真間あんどん祭」プロモーション映像

https://www.facebook.com/watch/?t=620&v=2393630194290176

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2019 年版「真間あんどん祭」メルカワあんどんワークショップ

https://youtu.be/iiOwg0lmZSg

2019 年度「真間あんどん祭」プロジェクションマッピング(再演)

https://youtu.be/MYFQqJXg-UQ

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2018 年版「真間あんどん祭」プロモーション映像

https://www.youtube.com/watch?v=yMwR5n4r_E0

2018 年度「真間あんどん祭」関連映像アーティスト臼田那智「あんどん屋」個展用映像

https://youtu.be/VsxF8ueUd4s

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関連映像

2017 年版「真間あんどん祭」プロモーション映像

https://youtu.be/FqTdHzxJjbU

参考文献

田島悠史・小川克彦 2012『アートプロジェクトにおける、地域メディアとして機能する 芸術の考察』「環境芸術 11」, 57-64 環境芸術学会

田島悠史 2017『地域の主体性を回復する、小規模地域アートイベント運用モデルの提案』 

「Journal of eventology 2」, 1-12 イベント学会

公益社大法人日本眼科医会 色覚関連情報  2020 https://www.gankaikai.or.jp/colorvision/

参照 1-13,

TVLogic LUT 基礎講座 2020

http://ismini.tvlogic.tv/jp/technology/lutindex.html 参照 1-15

参照

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