海外原子力ニュース ― 2008年5月
イタリア イタリア政府、原子力推進へ政策を転換...3 英国 英国の新規建設計画で、独E.ON社と仏アレバ社が提携 ...3 英BE社の株売却をめぐり、複数社と協議続行...4 仏スエズ社は英BE社の株取得交渉を断念...4 欧州諸国 仏アレバ、英のプルでMOX燃料を製造へ...5 オランダ、ボルセラでプルサーマル計画...5 フィンランド・ポシバ社、最終処分場の拡張で環境影響評価計画を再提出...5 ウクライナ、加AECLとCANDU炉FSで覚書...6 欧州復興銀行、チェルノブイリ「石棺」修復に1億3500万ユーロ拠出...6 ロシア エネルギー相にシュマトコ氏...7 ロシアと中国、遠心分離法濃縮で協力協定を締結...7 米国 WHと米サウスカロライナ電力、AP1000建設で正式契約...8 米ロが原子力協力協定を締結...8 仏アレバ、米アイダホ州に遠心分離法濃縮工場のサイトを選定...9 GE日立ニュークリア サイレックス法で濃縮施設の建設を計画...9 WH社、2011年から5年契約でウクライナに燃料供給...10 米国のMOX工場建設でアレバとショーがDOE と修正契約 ...10 NRC、ホープクリークの出力増強を承認...10 DOE、廃棄物輸送システムで契約... 11 カナダ AECL、RI生産炉計画を中止... 11 カナダ原子力安全委員長にビンダー氏...12 オーストラリア 豪州ウラン協会が報告書、ウラン輸出拡大で「140億豪ドルの利益」...12 アジア 台湾原子力委員長に蔡春鴻教授...13 国際 NEA と IAEA が 2007 年版「レッド・ブック」刊行、ウラン資源は「百年間は十分」と指摘 ...13イタリア
イタリア政府、原子力推進へ政策を転換 イタリアのC・スカヨーラ経済開発相は5月22日、第三次ベルルスコーニ政権期間の5 年間に新たな原子力発電所の建設を開始するとの方針を表明した。 これはイタリア産業総連盟の年次大会における講演で明らかにしたもの。同相は、公の場 での議論を通じて、国家エネルギー戦略計画を策定することが必要だと強調した。その上で、 「我々はもうこれ以上、原子力開発利用復活への行動計画を遅らせるわけには行かない」と 言明。「安全かつ競争力のあるコスト、大気を汚さず大規模なスケールでクリーン・エネル ギーを得られる方法は原子力だけ」と述べる一方で、放射性廃棄物の処理処分については、 信頼性のある解決方法を見つけなければならないと指摘した。 同相はまた、原子力という選択はベルルスコーニ首相が新政権において信念を持って進め る重要な公約だと強調。「我々は確固たる決意のもとにこの公約を果たして行きたい」と述べ るとともに、中道右派の現政権期間内に、イタリア国内で次世代原子力発電所を建設する布 石を打つ考えであることを明らかにしている。 同相はこのほか、「イタリアは、適切な価格で十分な量のエネルギーを、保証された条件の 下で確保しなければならない」と述べた。現在、同国がエネルギー輸入のために費やしてい る600億ユーロ(約10兆円)は、国の貿易赤字の大きな要因になっている点に触れ、天 然ガスの輸入・貯蔵システムの更新や再生可能エネルギーの開発なども加速していく方針で あることを明らかにした。 同相によると「電源の多様化のためには、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギー、 クリーン・コールといった新たな技術オプションの開発が重要」であり、とりわけ原子力発 電は欠かせない選択肢だとの認識を改めて強調している。 燃料資源に乏しいイタリアでは比較的早い時期から原子力開発に着手しており、1960 年~81年までの間に4基・1732万kWを運開させてきた。しかし、86年のチェルノ ブイリ事故を契機に、87年の国民投票によって、これら4基はすべて90年までに閉鎖。 建設中だった新規原子力発電所の計画も凍結された。 ベルルスコーニ首相は、中道右派の新党「自由の国民」(旧フォルツァ・イタリアおよび国 民同盟)を率いて、今年4月の総選挙で三度目の政権に返り咲いたばかり。同政権ではスカ ヨーラ経済開発相をはじめ、財務や環境を管轄する省にも「自由の国民」から入閣している ほか、上下両院ともに中道右派連合が多数派を占めている。英国
英国の新規建設計画で、独E.ON社と仏アレバ社が提携 ドイツのE・ON社は4月23日、原子力発電技術の開発と英国における新規原子力発電 所建設計画関連の協力でアレバ社、ジーメンス社と関心表明書(LOI)を締結したと発表 した。英国政府が1月に同国のエネルギー・ミックスにおける原子力の役割を是認したことから、 E・ON社としては今後、同国における新規原子力発電所建設を念頭に、アレバ社製の16 0万kW級EPRとジーメンス社製のタービン・発電機設備を選択したもの。 E・ON社はまた、最大級の安全性能を有する125万kW級改良型BWRとなるSWR 1000(仮称)の開発でもアレバ社に協力していくことで合意しており、ジーメンス社製 タービン・発電機設備を装備したSWR1000を同社の中規模・原子炉設計として活用し ていく考え。 同社は、製造業者と運転会社が早期に協力関係を確立することは原子炉機器の製造におい て利点があると強調しており、三社は今後、協力の効率的な推進のために専門家を交換する ほか、メンテナンス等でも長期のパートナーシップを構築していくとしている。 英BE社の株売却をめぐり、複数社と協議続行 英国のブリティッシュ・エナジー(BE)社の取締役会は5月16日、同社の将来と新規 原子力発電所プログラムで同社が中心的役割を果たすための計画について複数の利害関係者 と協議した結果、BE社株の買収額に関する彼らの申し出について、さらに数週間の協議期 間を設けたいと発表した。 声明によると、これらの利害関係者達からは同社の「原子力債務基金」の現金化可能な株 の取得も含めて最高の条件が提示されたとしている。その中には5月15日の同社株の終値 より高値での申し出が含まれていたことから、今しばらく協議を継続することになったと説 明している。現段階で、どの利害関係者が有力であるか、などの具体的な項目については何 も決定していない。 フィナンシャルタイムズ紙等の報道によると、15日のBE社株の終値は一株あたり68 0ペンスだったが、利害関係者と目される仏電力公社(EDF)、ドイツのE・ON社とRW E社、英国のセントリカ社などのうち、EDFとRWEはそれをわずかに上回る金額を提示 しているという。EDFはこのほか、英国における新規原子炉建設計画で有利な立場を確保 するために、BE社所有のウィルファ、ヒンクリーポイント両原子力発電所近郊の土地を買 収したとも伝えられている。 これら企業にとって、BE社株の取得は英国の新規原子力発電所建設計画への参入を確実 にすると受け止められていることから、同社株の35%を保有している英国政府とBE社の 今後の動きが注目されている。 仏スエズ社は英BE社の株取得交渉を断念 フランスとベルギーの多国籍エネルギー企業であるスエズ社は5月23日、英国のブリ ティッシュ・エナジー(BE)社の株取得を断念し、BE社との協議を終了したと発表した。 スエズ社はEU電力自由化指令に伴いフランス国内でのシェア拡大を目指しており、昨年 9月にフランス・ガス公社(GDF)との合併について仏政府から同意を取り付けたのを受 け、今後はGDFとの合併交渉を優先していきたいとコメントしている。 「英国公開買付ルール」に従い、スエズ社はGDFとの合併が完了するまで、BE社との 交渉再開は禁じられている。
欧州諸国
仏アレバ、英のプルでMOX燃料を製造へ 仏アレバ・グループは5月19日、英国のセラフィールド社(旧BNGセラフィールド社) との商取引により、同社からのプルトニウムを使って、南仏ガール県のメロックス工場でM OX燃料を製造する計画だと発表した。 発表によると、英国から搬出されたプルトニウムはまず仏国北部にあるアレバ社のラ・アー グ再処理工場に持ち込まれ、メロックス工場の機器で取り扱えるようキャニスターに再パッ ケージされる。その後、陸路でメロックス工場に運ばれ、セラフィールド社の顧客用MOX 燃料集合体に製造されるとしている。 セラフィールドでは原子力廃止措置機関(NDA)所有でセラフィールド社が管理するM OX工場(SMP)が2001年に完成したが、エンジニアリングと技術上の問題等により、 年間の設計処理量が120トンであるにも拘らず過去5年間に製造したMOX燃料は5.3 トンにとどまっているという。エネルギー問題担当のM・ウィックス閣外相も今年2月、S MP計画の不首尾により顧客からのMOX製造注文をフランスへ下請けに出さざるを得なく なったことを認めたと伝えられている。 オランダ、ボルセラでプルサーマル計画 オランダで唯一の原子力発電所であるボルセラ原子力発電所(PWR、48.2万KW)を 所有するEPZ社は5月7日、同発電所でMOX燃料を使用するための計画書を環境省(V ROM)に提出したと発表した。 プルサーマルを検討する理由としてEPZ社は「価格変動の激しい天然ウラン市場への依 存度を低減するため」と説明しており、2009年前半を目処に環境影響評価書(EIS) を提出する準備も進めていることを明らかにした。 EPZとしては、MOX燃料を使用することによる発電所への影響を調査するほかに、代 替案も合わせて検討し、同発電所にとって最良の方法を探るとしている。 フィンランド・ポシバ社、最終処分場の拡張で環境影響評価計画を再提出 フィンランドで使用済み燃料の最終処分場建設計画を進めているポシバ社は5月13日、 処分場の処理量を9000トン(ウラン換算)から1万2000トンに拡張するための環境 影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出した。 これは同社の親会社の一つであるフォータム社が、ロビーサ原子力発電所に3号機の増設 を検討していることから必要となった措置。同社はすでに4月25日、同社のもう一つの親 会社であるテオリスーデン・ボイマ社(TVO)がオルキルオト原子力発電所に4号機を増 設する原則決定(DIP)を雇用経済省に申請したのを受け、同炉からの使用済み燃料も処 分できるよう処分場の規模を当初予定の6500トンから9000トンに変更するDIPを 申請したばかりだった。 ポシバ社は同処分場建設に関わる最初の環境影響評価報告書(EIAレポート)を199 9年に提出。4月のDIP申請に際してはその改訂版を添付していたが、今回の更なる3000トン分の拡張計画により、新たなEIA手続きが必要になったとしている。 使用済み燃料の最終処分場はサイトであるオルキルオト島の地上と地下の両方に設備が建 設される予定だが、処分量の拡大は岩盤内の地下施設建設に直接影響が及ぶ。仮にロビーサ 3号機の建設が実現すれば、同炉からの使用済み燃料処分は早ければ2070年代に開始す ることになると同社では予想している。 新たなEIA手続きとしては、まず雇用経済省がポシバ社のEIA計画書を公開し、同省 からのコメントを含めて一般からもコメントや意見を募集。ポシバ社はそれらに基づいてE IA報告書を作成するという段取りとなるため、手続きのすべてが完了するのは来年初頭に なる見込みだ。 処分場建設サイトでは現在、ポシバ社が地下岩盤特性調査施設(ONKALO)の建設を 進めており、この施設から得られる情報を活用して同社は2012年頃に最終処分場の建設 許可を政府に申請する計画。地下トンネルの掘削作業はすでに地下300mほどの深さに約 3kmの長さまで達しているが、来年には深さ400mまで掘り進む予定であり、最終処分 場としての操業開始は2020年頃になるとの見通しを示している。 ウクライナ、加AECLとCANDU炉FSで覚書 ウクライナ燃料エネルギー省とカナダ原子力公社(AECL)は5月28日、CANDU 炉技術によって、ウクライナのエネルギーおよび環境保障を支援していくことで、覚書(M OU)を交わすことになったと発表した。 このMOUはウクライナにおけるCANDU炉原子力発電計画の技術的、経済的な実行可 能性調査(FS)について協力する枠組となるもので、同炉を商業利用していく手順につい ても策定する予定。AECLとウクライナ政府が共同で実施し、四ヶ月以内に終了すること になるとしている。 AECLのK・ペトルニクCANDU炉担当社長よると、ウクライナは天然ウランを燃料 として使用できるCANDU炉の特長に強い関心を示している。CANDU炉の設計であれ ば、ウクライナで稼動するVVERの使用済み燃料を再処理して減損ウラン装荷することも 可能であるなど、相乗効果が期待できる点を強調した。 ウクライナのCANDU炉技術に対する関心を受けて、AECLは今後、リトアニアやルー マニアなど東欧諸国でさらなるCANDU炉普及の可能性を検討していきたいと述べた。 欧州復興銀行、チェルノブイリ「石棺」修復に1億3500万ユーロ拠出 欧州復興開発銀行(EBRD)は5月19日、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所 サイトを浄化するための国際協力に、2007年の収益の中から1億3500万ユーロ(約 225億円)を拠出すると発表した。 チェルノブイリ・サイトの安全性向上に関してEBRDはすでに昨年9月、同行が管理す る基金を使って二つの重要な契約を締結している。一つは事故を起こした4号機の石棺上部 を鋼製の構造物で覆う「新規安全封じ込め施設(NSC)」を建設するためのもので、第二は、 1号機~3号機の使用済み燃料を保管する「中間貯蔵施設2」の完成に関わるもの。 昨年6月にドイツで開催されたハイリゲンダム・サミットではG8各国がチェルノブイ リ・サイトの更なる安全性向上のために努力していくことを再確認する一方、資金面での協
力が進んでおらず、EBRDは今回の寄付金でチェルノブイリ関連の資金協力に新たな推進 力を与える狙いがあったとしている。 NSCは敷地内で組み立てた後、レールを使って原子炉上部に滑らせることになるが、縦 257㍍×横150㍍、高さは105㍍と、この種の構造物としては最も大型の部類に入る という。100年程度の耐久性を持たせるほか、最終的に解体した時のことを考慮してクレー ンを装備する。建設資金については、EBRDが原子力安全とデコミ関係で管理運営してい る六つの基金の中の一つである「チェルノブイリ・シェルター基金(CSF)」から賄う予定。 使用済み燃料中間貯蔵施設の方は「原子力安全口座」から支出しているとEBRDでは説明 している。 NSCの建設は現在、準備作業が進行中で、施設の基礎工事に欠かせない掘削等の作業に ついての契約を取り交わしているところ。 設計と技術的な詳細に関しては、NSCおよび使用済み燃料貯蔵施設の両方について作業 が進んでいるとしており、最終設計は2009年の春にウクライナの規制当局に提出する計 画。CSFには、原子力発電施設を持たない欧州諸国を含めて、日本や米国など23か国・ 一機関が出資している。
ロシア
エネルギー相にシュマトコ氏 ロシアのプーチン首相は5月13日、原子炉輸出・建設企業であるアトムストロイエクス ポルト(ASE)のS・シュマトコ総裁をエネルギー相に任命した。ASEの総裁職は、当 面、A・ネチャーエフ副総裁が代行する。 シュマトコ氏は1966年生まれ。1990年にウラル州立大学政治経済学部を卒業後、 会計士ネットワークであるBDOバインダーの会計監査官やドイツのコンサルティング会社 であるRFI社の取締役などを勤めた。97年にロスエネルゴアトム分析センター所長、9 9年に原子力発電運転研究所(VNIIAES)事務局長の経済戦略アドバイザーなどを経 て、05年2月にASEの副総裁就任。同年6月からは総裁に就任していた。 ロシアと中国、遠心分離法濃縮で協力協定を締結 ロシアの国営原子力総合企業であるロスアトム社は5月25日、ロシアと中国が遠心分離 法ウラン濃縮に関する協力協定を結んだと発表した。 これは両国の原子力平和利用分野における経済協力の一環として、ロスアトム社の傘下で 燃料サービス事業を扱っているTENEX社と中国原子能工業公司(CNEIC)との間で 結ばれたもの。主要なポイントは、(1)中国における遠心分離法ウラン濃縮工場の新規ユ ニット建設に対する技術協力(2)ロシアから中国への濃縮ウラン供給――などに関する契 約の基本項目であるとしている。 この協定の枠組みとなる協力協定についてはすでに昨年11月、両国の首脳がモスクワで 調印しており、TENEX社は中国で四基目となる遠心分離濃縮工場(500トンSWU/ 年)の建設に協力するとともに、2010年から11年間にわたってCNEICに低濃縮ウランを供給する、などが明記されていた。 今回の協定締結に先立つ5月23日にはロシアのD・メドベージェフ大統領が就任後初め て中国を訪問し、胡錦濤国家主席と両国間の経済協力分野について会談。同大統領にはロス アトム社のS・キリエンコ総裁やS・シュマトコ・エネルギー大臣らが随行している。
米国
WHと米サウスカロライナ電力、AP1000建設で正式契約 東芝グループのウェスチングハウス(WH)社は5月27日、米国のショー・グループと ともに、米国スキャナ電力の子会社であるサウスカロライナ・エレクトリック&ガス(SC E&G)社およびサウスカロライナ州所有の電力会社であるサンティ・クーパー社と、新規 原子炉の建設に関する契約を正式に締結したと発表した。 これはSCE&Gがサウスカロライナ州ジェンキンスビルで運営するV・C・サマー原子 力発電所に、2、3号機として110万kW級AP1000・2基に関するエンジニアリン グと原子炉周辺設備の調達および建設工事等の契約(EPC)で、建設プロジェクト全体に 関する一括契約。今後WH社らはこの契約に従い、2号機の運転開始を2016年、3号機 は2019年を目指して作業を進めていく。 SCE&Gとサンティ・クーパー社は今年3月、V・C・サマー発電所サイトを対象とし た建設・運転一体認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請しており、2011 年に認可が下りれば、州公益事業委員会等の承認を得て着工との見通しを示している。 今回の契約についてWH社のS・トリッチ社長兼CEOは、「今年4月にジョージア・パ ワー社とA・W・ボーグル発電所の増設で締結したEPCに続いて、当社がこの6週間に締 結した2度目のEPC契約になった」と指摘。「原子力発電がコスト競争力のある、クリーン かつ安全なベースロード電源として完全に受け入れられている証拠」との認識を示した。 同社長はまた、「WH社を選んだSCE&G社およびサンティ・クーパー社らとともに、世 界の原子力ルネッサンスを牽引していきたい」との考えを表明した。 米ロが原子力協力協定を締結 米国とロシアの両国政府は5月6日、原子力エネルギーの平和利用に関する協力協定に調 印した。両国の原子力分野における民間協力に必要な法的基盤を整備するためのもので、ロ シアの関連法規と米国の原子力法第123条の制限項目に配慮した内容。原子力平和利用の 枠組みとなる主原則を盛り込んだアンブレラ協定の役割を担うことになり、同協定が発効す れば両国の企業間のジョイントベンチャーが可能になるほか、核燃料物質や原子炉、大型原 子力機器の輸出入にも道が開かれることになる。 この日、モスクワで協定文書に調印したのは、ロシアの国営原子力総合企業であるロスア トムのS・キリエンコ総裁と米国のバーンズ駐ロシア大使。協定締結のための協議は200 6年7月のG8サミットでプーチン・ロシア大統領とG・ブッシュ米大統領が発表した共同 声明に基づいて開始され、2007年7月には協定の締結案を盛り込んだ原子力関係の共同 声明を両大統領が発表していた。その後、先月6日に両国間の協力分野の概要が「戦略的枠組み宣言」として示され、原子力平和利用協力協定の締結は「大量破壊兵器の拡散防止」の 中の一項目として、核不拡散体制の強化、ロシアの国際ウラン濃縮センター構想、米国の国 際原子力パートナーシップ(GNEP)構想、IAEA主導の革新的原子炉・核燃料サイク ルに関する国際プロジェクト(INPRO)などと共に明示されていた。 同協定案は今後、両国議会に提出されるが、キリエンコ総裁は「この協定によって核不拡 散体制強化や世界の大規模な原子力開発のための諸条件作り、平和利用分野の原子力ビジネ スを促進する機会の創出が促進される」と強調。「これからは原子燃料や原子力設備が両国間 の国境を越えるだけでなく、協力範囲は第三国にまで及ぶことになるだろう」と指摘した。 米国のバーンズ大使も、冷戦時代にライバル関係にあった両国が、責任を共有するパート ナーになったと指摘。原子力の平和利用こそ両国の最も重要な協力分野の一つだとの認識を 示した。 仏アレバ、米アイダホ州に遠心分離法濃縮工場のサイトを選定 仏アレバ社は5月6日、米国の原子力発電所向けにウラン濃縮サービスを提供する遠心分 離法濃縮施設の建設サイトとして、米アイダホ州ボンネビル郡のアイダホ・フォールズを選 定したと発表した。 高度な技術解析および環境、社会経済的な分析の結果に基づいて同社が選定したというサ イトは、アイダホ国立研究所に近いアイダホ・フォールズの西18マイルに位置している。 同社は今後、濃縮施設の建設・操業について米原子力規制委員会(NRC)からライセンス を取得するほか、連邦政府や州政府および地元当局に対しても認可手続きを取る計画だ。 同濃縮施設は、アレバ社が子会社であるエンリッチメント・テクノロジー社から移転され た最先端の遠心分離技術を使って建設するもので、総投資額は数十億ドル。欧州における3 0年以上もの研究開発により確立された技術であり、使用電力はガス拡散法の50分の一程 度だとアレバ社は説明している。 同社はまた、施設の建設および操業段階を通じて創出される高度技術者の雇用数は数百人 分に達すると予想。原子力事業との関りが深いアイダホ・フォールズに同施設が地元コミュ ニティの新たなメンバーとして受け入れられたことから、同社としても地元経済に多様性と 活力をもたらせるような長期的なパートナーシップを構築していきたいとの決意を表明して いる。 アレバ社は現在、仏国内で30年以上に渡ってジョルジュ・ベス・ガス拡散法濃縮工場を 操業しているほか、遠心分離法による濃縮施設となるジョルジュ・ベス2を2009年の操 業開始を目指して建設中である。 GE日立ニュークリア サイレックス法で濃縮施設の建設を計画 GE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社の子会社であるグローバル・レーザー・エ ンリッチメント(GLE)社は5月1日、GEHの本社があるノース・カロライナ州ウィル ミントンにサイレックス法による商用ウラン濃縮施設の建設を計画していると発表した。 サイレックス法はレーザー励起技術を用いてウランの同位体を分離する方法で、豪州のサ イレックス・システムズ社が開発。米国濃縮会社(USEC)も90年代後半~2000年 代初頭に実用化を検討していた。
2006年以降はGEHがサイレックス社から同法による技術の開発、および商業化のラ イセンスを独占的に供与されており、現在GLEが実証試験ループをウィルミントンの関連 施設内に建設中。このループによる試験結果を評価した上で、処理能力3500~6000 トンSWUの濃縮施設建設に踏み切るか否かの判断を、2009年までに下すとしている。 必要となる米原子力規制委員会(NRC)の許認可手続きも、すでに開始可能な段階にあり、 計画が成功裏に進めば2012年から同施設の操業を開始することになる。 WH社、2011年から5年契約でウクライナに燃料供給 東芝傘下のウェスチングハウス(WH)社はこのほど、ウクライナの原子炉三基に201 1年から5年間にわたって燃料集合体を供給する契約を獲得したと発表した。 この契約について WH 社のA・キャンドリス副社長兼原子力燃料事業部長は、「ロシアか らの燃料輸入依存を軽減するという点でウクライナのエネルギー供給保障上大きな意義を持 つものだ」と指摘。その上で、「当社がウクライナにおける核燃料年間所要量の約4分の一を 任されたという事実は、ウクライナの原子力発電会社であるエネルゴアトム社が当社の能力 と市場競争力に高い信頼を寄せていることを証明している」と強調したほか、この契約はウ クライナおよび、中・東欧の原子燃料市場における重要なマイル・ストーンになるとの認識 を表明した。 WH社によるウクライナの核燃料市場参入は、2000年に米国政府が当時のウクライナ 政府による燃料供給源多様化政策を受けて、米国製の燃料集合体をウクライナのVVERで 使用するプロジェクト(UNFQP)を開始したのに端を発している。このプロジェクトに より、WH 社はすでに2005年にサウス・ウクライナ原子力発電所3号機(100万kW、 VVER)に試験集合体六体を供給したほか、09年には第二段階として42体の集合体を 出荷する予定になっている。 米国のMOX工場建設でアレバとショーがDOE と修正契約 仏アレバ社と米国のショー・グループは5月23日、両社のJVであるショー・アレバM OXサービスLLCが、米サウスカロライナ州サバンナリバーで建設中のMOX燃料製造工 場について、で米エネルギー省(DOE)から20億ドルの修正契約を獲得したと発表した。 この契約は、元の契約内容にオプションとして含まれていたもので、(1)MOX工場およ びすべての関連補助施設を実質的に完成させる(2)MOX工場のコールド・スタート(3) 米原子力規制委員会からの許認可取得作業のサポート継続--などとなっている。 昨年8月に着工された同工場は、米国の兵器級余剰プルトニウムから不純物を取り除き、 ウラン酸化物と混合して、原子力発電所用のMOX燃料ペレット製造に使われる。 NRC、ホープクリークの出力増強を承認 米原子力規制委員会(NRC)は5月14日、パブリック・サービス・エンタープライズ・ グループ(PSEG)社がニュージャージー州ハンコックブリッジで所有するホープクリー ク原子力発電所(106.1万kW、BWR)の出力を15%増強することを承認した。 同発電所の原子炉設計は出力の上昇分を十分制御し得るとしたPSEGの評価結果を審査 した上で、NRCは「特定のシステムおよび機器のアップグレードにより同炉の安全な出力
増強は可能」との判断を下したもの。PSEGはこの夏にも同発電所の出力を差し当たり1 1%増強して118.5万kWとする計画だが、承認を受けた15%増の122.5万kWま で上げる時期については未定だとしている。 NRCがこれまでに承認した119件の増強分は合計で約540万kWにのぼっている。 DOE、廃棄物輸送システムで契約 米エネルギー省(DOE)は5月21日、国内の原子力発電所サイトからネバダ州ユッカ マウンテンに建設予定の高レベル放射性廃棄物処分場まで使用済み燃料を輸送する専用キャ ニスター・システムの開発について、NACインターナショナルおよび仏アレバのDOE契 約担当子会社であるアレバ・フェデラル・サービス(AFS)の二社との間で合計1380 万ドル相当の契約を結んだと発表した。 DOEが「輸送・貯蔵・処分(TAD)システム」と呼称する専用キャニスターでは、発 電所サイトで永久密封した使用済み燃料を処分場まで輸送するとともに、同処分場にそのま ま定置することが可能になるという。DOEとしては、同処分場に持ち込まれる使用済み燃 料の9割までがTADで運ばれると見積もっており、TADが使われなかった分についても 処分場に到着した時点でTADに封入されることになるとしている。 NACとAFSは今回、このTADの設計、許認可取得、実証までの部分を最大5年間の 契約で請け負ったもの。DOEとしては2013年の初頭を目処に商業ベースで利用可能と する予定だとしている。
カナダ
AECL、RI生産炉計画を中止 カナダ原子力公社(AECL)は5月16日、チョークリバー原子力研究所にある医療用 放射性アイソトープ(RI)製造専用炉・メープル原子炉二基(熱出力・各10MW)を直 ちに中止することになったと発表した。 メープル炉は、大手のアイソトープ供給業者であるMDSノルディオン社が、医学用のモ リブデン99、ヨウ素131、同125、キセノン133などを製造するために建設したプー ル型軽水炉。1号機は2000年に臨界に達したものの、設計上の問題が複数浮上したため フル出力による商用RI生産に至らず、試験運転を低出力で行うにとどまっていた。 バックアップ用に同一設計で作られた2号機も停止しており、運転認可の再取得を含む建 設スケジュールの遅延と建設費用の超過のため、2006年には両基の負債を含む全所有権 がAECLに移されていた。 今回のプロジェクト中止決定に関してAECLは、技術的な問題解決のために要する経費 の超過や、スケジュールの大幅な遅延を指摘、両炉の完成と運転開始は不可能とAECL上 層部が判断したことを明らかにした。 メープル原子炉の開発中止によって影響が懸念される医学用RI供給は、MDSノルディ オン社との間で締結した協定により、チョークリバーにあるAECLの国立研究ユニバーサ ル(NRU)炉が生産するが、同炉の運転認可は2011年10月末で切れる。カナダ原子力安全委員長にビンダー氏 カナダの天然資源省は5月9日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の新委員長として 産業省のM・ビンダー次官補を正式に任命した。ビンター氏は、同省が1月15日付で前委 員長のL・キーン委員長を解任して以降、代行を勤めていた。 天然資源省の1月の発表によると、キーン前委員長はAECLの国立研究ユニバーサル(N RU)炉で停止期間が伸びたさい、国内外の医学用RI供給が不足する事態を招きながら、 積極的な打開策を取らなかったことへの責任により、委員長から一委員へ降格された。天然 資源省は加政府がAECLにNRUを120日間、暫定的に運転再開するよう命じる緊急法 案を議会で可決し、運転を継続した。NRUの停止延長は、運開後50年近く経過した同炉 の安全性改良工事のためだった。
オーストラリア
豪州ウラン協会が報告書、ウラン輸出拡大で「140億豪ドルの利益」 オーストラリアのM・ファーガソン資源エネルギー相は、5月16日に公表した報告書で、 同国のウラン輸出拡大により豪州は2030年に約140億豪州ドル(約1兆4600億円) の利益を得ることが可能であるほか、世界全体で数十億トンの温室効果ガスを抑制できると の分析を明らかにした。 「豪州ウラン産業の見通し--2030年までの経済効果を評価する」と題されたこの報 告書は、同相の主導により豪州ウラン協会(AUA)が昨年行った研究内容をとりまとめた もの。 この研究ではまず、大気中のCO2濃度について、現在の385ppmから、2050年 までに550ppmで安定させる「中位シナリオ」と、CO2濃度排出量を60%削減し4 50ppmにする「意欲的なシナリオ」を設定。これらに豪州国内のウラン政策について二 種類のシナリオ(①採掘を既存の三鉱山に限定、②新たな鉱山からも採掘を開始)を組み合 わせて、ウラン輸出の経済効果を探った。 「中位シナリオ」では、2030年に世界の原子力設備容量が現在の3億7200万kW から9億6000万kWへ拡大すると仮定。一方、「意欲的シナリオ」では2030年の原子 力発電設備を16億3400万kWとし、2050年までのCO2濃度を450ppmで安 定させれば、世界平均の気温上昇は約2℃に抑えることができるとしている。 穏健シナリオの方が実現する可能性は高いが、CO2濃度は現在の385ppmよりはる かに高い。どちらのシナリオにおいても、豪州はそれぞれ世界のウラン需要の20%と30% を供給すると予想され、現在各州政府がしいている制限を解いた場合の輸出量は、2030 年までに3万1400トン~6万4500トンに達する見込みだ。 AUAは、これらの輸出により豪州にもたらされる経済的な効果と温室効果ガスの排出抑 制によって世界が浴する恩恵は数字で表すことができると指摘。「さらに保守的なシナリオ においてさえ、豪州のウラン産業が拡大すれば、豪州のGDPは2030年までに現在の金 額で142億ドル~174億豪州ドル(1兆4600億円~1兆7900億円)に増えることが明らかになった」と強調している。 AUAはまた、「これらのシナリオの下では、豪州のウラン輸出拡大によって、世界規模で 抑制される温室効果ガスの排出量は2030年までに約110億トン~150億トンと見積 もられる」と予測している。
アジア
台湾原子力委員長に蔡春鴻教授 台湾で8年ぶりに政権を奪取した国民党の馬英九総統は5月20日、原子力委員会委員長 (大臣)に台湾の清華大学の蔡春鴻教授(58歳)を任命したと発表した。副委員長には台 湾核能研究所(INER)の謝得士副所長が任命された。 蔡委員長は30年以上にわたって原子力工学と原子力材料分野における研究者および教育 者として活躍。米カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得後、1982年に出身校で ある台湾の清華大学の助教授に就任した。その後、同大で教授、原子力工学プログラムや原 子力科学部の部長などを務め、「抜群教授」の称号を付与されていた。 これまでに300編以上の技術論文を公表しているほか、プラズマ技術やナノ物質関係で は十件の特許を取得。台湾原子力委員会でも、原子力施設や放射性廃棄物の安全性に関する 専門部会の委員および議長などを務めている。 謝副委員長は米テネシー大で原子力工学の博士号を取得。1975年から台湾INERで 原子力の民生利用に係わる研究開発を行っており、所内では運転保守センターの部長や原子 力計測部長、諮問委員会議長などを務めていた。国際
NEAとIAEAが 2007 年版「レッド・ブック」刊行、ウラン資源は「百年間は十分」と 指摘 経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)は5 月26日、「ウラニウム2007、資源、生産および需要(レッド・ブック)」を公表し、「世 界の原子力発電所における現在のウラン燃料消費率で見ると、少なくともあと100年間は 十分なウラン資源が確保される」との見解を明らかにした。 レッド・ブックはNEAとIAEAが共同で2年に一度、取りまとめている世界のウラン 資源需給に関する報告書。2007年版では、40か国からの公式情報に基づいて、ウラン の資源量や探査状況、生産量および需要量のほかに、2030年までの予測所要量などを掲 載している。 報告書はまず、世界の既存ウラン鉱山で130米ドル/kg以下で採掘可能な確認資源の 量を2005年版の470万トンより80万トン多い550万トンと評価。既存鉱床の延長 上で推定される未発見資源量についても、05年版から50万トン上方修正して1050万 トンと見積もった。これは、近年のウラン価格高騰を受け、既存鉱床の再評価や新たな鉱床発見によるものだと説明している。 報告書はまた、2006年時点の原子力発電規模や技術レベルに基いて計算すると、今後 100年間は十分な確認資源量が存在するとしている。しかし、世界全体のウラン資源量が 流動的で市場価格に左右される点も指摘。ウラン産業界が近年の価格上昇に反応して、新た なウラン鉱探査に多大な資金を投入していることに触れ、これらの06年の総額は世界全体 で7億7400万米ドルにのぼるとした。これは04年実績の250%以上に相当している が、07年はこの実績をさらに上回ることになるとの予想を示している。 報告書は次に、世界のウラン生産量について2006年末実績で3万9603トンだった ことを明らかにしており、これは世界で稼動している原子炉435基による総所要量(6万 6500トン)の約6割に相当すると指摘。不足分は約1万2000発の核弾頭解体や減損 ウランの再濃縮などの二次供給源で賄われている。しかし、これらの多くは現在、在庫量が 減少しつつあり、不足分を補うには今後、新たな生産が必要との見方を示している。そして、 新たな鉱床で採掘可能になるまでの典型的なリードタイムの長さを考えると、生産設備がタ イムリーに整備されなかった場合、不足量は増加していく可能性があるとも警告している。 世界の原子力発電設備容量について報告書は、2007年現在の372GWから2030 年までに509GW~663GWに増加すると見積もっており、これらに対して必要となる ウラン資源量は、年間9万4000トン~12万2000トンになると計算。この拡大分は 現在の確認資源量で十分賄うことができると強調するとともに、新型炉やサイクル技術の開 発により、原子力を千年単位の長期間で利用していくことも可能だとの見方を示した。