集合住宅計画における数理手法の適用
宇治川正人・安藤武彦・生部圭助
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オベレーションズ・リサーチ 集合住宅の計画過程 図 12
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(18) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.写真 1 集合住宅計画例 集合住宅の一般的な計画のプロセスを図 l に示 す.集合住宅の計画は,敷地の存在が前提となっ て始まり,立地条件や周辺環境条件等は,計画サ イドでは修正・変更できない与件変数である.そ れらを理解することが第 l のステップである.次 に,計画戸数や販売時期,販売価格等の基本的な fI標を定め,基本構想を作成する.ここまでが提 案企画の段階である. 某本計画の段階では,敷地の利用計画や住棟の 構成を定めたマスタープランや,住戸の面積やプ ランのノミリエーション等からなる住戸プランを作 成する. 提案企画と基本計画の段階は企画品質を設定す るプロセスであり,本格的な設計行為は,企画品 表 1 集合住宅の計画関連技術
企画・事業化の技術|設計の自動化・省力化の技術
・市場調査 │ ・自動設計 販売動向集計分析 i 初期条件整理 -情報検察 物件検索 -事業収支計算 収支目論見 ボリューム算定 日照日影 図面作成 -積算 粗概算 質を与条件として開始される.ただし,すべての 計画が最初の段階から開始されるわけではない. 集合住宅の計画には,さまざまな技術が開発さ れ,適用されている.新聞や業界紙の情報からそ れらの技術を整理し,表 1 に示す.大別すれば, 企画・事業化の技術と,設計の自動化・省力化の 技術とに分けることができる.企画・事業化の技 術としては,市場調査や事業収支の計算などがあ り,設計の自動化・省力化の技術としては,設計 の条件設定や自動製図,積算などの技術がある.2
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集合住宅の企画計画技術 当社では,住宅本部を主管部署として,住宅に 関する技術開発を進めている.昭和54年頃までは 設計の自動化技術の開発が中心であったが,近年 は, r マンション不況 J という市場環境のもとで, 企画のための技術の開発にも力を入れている. 表 2 に集合住宅計画に関する主要な保有技術を 示す.本報告では,企画のための技術に焦点、をあ てて,その数理的な側面の紹介をする. 集合住宅需給動向分析システム,自動層別プロ グラム,マスタープラン評価システムは,企画・ 事業化の技術であり,市場調査や設計条件の検討2
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や床面積をいかに多く確保するか,入居者の満足 を得,グレームの発生しにくい質の高い住宅を, 迅速に,かつ省力化して設計するかというニーズ に応えるための技術である.
集合住宅開給動向分析システム HIST
HIST (Housing Information System o
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Takenaka の略称)は,計画対象地の集合住宅用 地としての特性を把握するためのシステムであ マンションの物件特性や,販売データを蓄積 し,指定範囲(地域,期間)の統計資料を作表,作 図する機能をもっている. 集合住宅計画に関する当社の保有技術、 基礎統計解析 主な手法 能 機.
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る. マンションの脹売動向は,専門の調査会社が, 首都圏で販売されるほとんどすべての物件につい て,その物件概要や,販売状況を調べ,データを 公表している. HIST は,そのデータをストッグ し,データ処理を行なう.会話形式でディスプレ イ装置を見ながら各種グラフを画面に作成し必要 に応じてハードコピーとしてとり出すことがで を支援する電算プログラムである. 企画設計システムと集合住宅自動設計システム は,設計の自動化・省力化の技術である.限られ た敷地や法令等の制約条件の中で,販売する戸数 析一析ン t 分二解一ヨ 数回一計レシ D関 -WT 統ユ -用 m 一礎ミ A 効 G 一基シ ク給二凶プ価一定一図 需二要一評一一理算二聞の辺一
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ピジュアノレな資料が得られる. き,分譲戸数と売よ戸数及び売上率
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HOUSING INFORNATlON SγSTEM OF TAKE'IAKAI図 2
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14L じく I 5-I百 図 2 は,地域のマクロ 的な需給動向を時系列で 示したものである.図 3 , 図 4 は,計画地周辺のミ クロな動向を表わしてお り,計画地周辺地域の相 場や, 売れ筋を把握する 図 5 は,地域の特性を大雑 把に把握するために,地 域範囲別と時系列で代表 ためのグラフである. No プランタイプ別の販売動向 図 3 「ロケーションの理 ほとんどに適用されており, 解」に大きく貢献している. この集合住宅需給動向分析システムに用いてい る数理的手法は,平均値や,標準偏差などの基礎 的な統計解析である.電算化により,資料作成の 自動層別プログラム2
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首都聞のように販売データが大量にあり,マー ケットリサーチの頻度が高い地域では, HIST の ようなデータベースを保有した汎用の分析システ ムが適しているが,地方都市では,事前にデータ を準備・蓄積しておくことは不経済である.入手 可能なデータと,その都 市の特殊な状況に応じて 分析対象や,要因をフレ 省力化,迅速化をはかると同時に,手作業では不 可能な膨大な量のデータ処理,多角的な分析,分 このシステムは, 析の試行錯誤が可能となった. マーケットリサーチの対象となるプロジェクトの キシブルにとりいれるこ とのできる特殊解用の手 法が有効である. そのような場合に,本 プログラムを適用して, 販売成績の要因を検討す このプログラムは, 多変量解析の一種であるA 1
Dll により,要因を る. 探索的に見つけていくも のである.一一一一一
干均坪単価 ~II 分譲戸数と契約戸数>>-ぴ 1 ヶ月後平均契約率 25 件 一一三二コ AID (Automatic (21)2
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イブ別分譲戸数 t 契約 y 数 a び 1 ヶ月後平均契約率 よZ 81 年 1 2 月一 H~ー十一 ←ー」ーよ-日ナーーーベ一一』ー」 t シイペ {~-1\:~---....l トイ /'/.
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九百1 叩 即 70 Ell 50u 一宮<"'-':0 ~-!.: 'i巳 ;!:GH1FORMA:-IOtI SγSTE汁C:FTAK[I:,'IK,.: t 勧的な物件特性(販売成績, 服売価格,単価,面積) の分布状態を山型の記号 (中央が平均値,幅が標 準偏差)で表現している. 1) 単価別の販売動向 図 4
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一一率 一一的 札 I攻イ[] フィ )l, 色一一一_';'[1←一_4,1;旦一一三日一一~旦一一_1,口σ. 経平安化 日 2日 4日 日目 白日 1日0" 「一一一一L=== r一一←一一一| 一一一一一一「 仁一一一←← 1 一一一一一一一「 「一一一一一一一一T一一一一一一一一「「豆言再二三「
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(22) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず. オベレーションズ・リサーチ要因が浮かびあがってくる. s 市では市中心 部の一等地を除くと,中級クラスの物件の販売成 績は悪く,成功した物件は単価や,平均価格の低 いものに限られており,平均価格 1800万円以下と いうことが良い成績をあげる必須条件となってい る」という結論を得,それを計画の与条件とした.
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マスタープラン評価システム これまで紹介してきた技術は,統計解析手法を 用いて判断材料を提供するものである.マスター プラン評価システムは,意思決定をモデル化した という点で,より OR 的なレベルにある手法とい えよう.この評価システムは,集合住宅の購入者 の価値感を効用関数として作成し,マスタープラ ンの評価,変更・改善の必要性を定量的に検討す るものである. この評価システムの効用関数は, Conjoint 分 析2) を適用して作成した 集合住宅の商品特性を構成する因子は無数と思 えるほどあるが,既往調査報告書を参考に, 1l;J f- 水準 40分 ⑧通勤時間 55分 70至上 徒歩 10分 ⑥闘駅からの交通仁三豆 パス 20分 80% ⑤駐車場設置率 60% ③{叶車内アプローチ @l:l照 (fi:戸の I"J き) ①住戸プラン ⑧台所の独立刊 72m'3 LDK 85m'3LDK 85m'4 LDK 100m'4 LDK 100m'5 LDK LD+K L 十 DK LDK 図 7 マスタ |⑥冷暖房設備 暖本房喜重 暖房のみ ープラン 評価シス テムの効 |①価格 用関数 なし 2 , 400 万円 2 , 800万円 3 , 300 万円 a. 通勤時間(玄関から都心まで) b. 最寄駅からの交通(徒歩,パス利用時間) C. 駐車場(駐車場設置率) d. 住棟内アプローチ(エレベータ停止方式) e. 日照(住棟の向き)f
.住戸プラン(広さと間取り) g. 台所の独立性 h. 冷暖房設備 価格 の 9 因子を選び,ラテン方格をもちいて因子を割 付け, 27枚の「物件サンフ。ル」を作成した.次に 想定購入者である(公団賃貸住宅世帯主,社宅世 2) Conjoint 分析は,マーケッティングの分野で使 われている多変量解析手法であり, 2 つ以上の独立変数 が,順序尺度の従属変数におよぽす効果を測定するもの である.ユーザーから選んだパネル(回答者)に,各種の 特性を組合せた商品見本(カタログ)を見せ,購入したい 順に順位をつけてもらい,解析的に,どの要因がどのよ うにユーザーの選好に寄与しているかということを求 める. 効用値 寄与率(%) 34.2 0.6 11.8 4.6 0.9 1.0 18.2 (23)2
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帯主,マンション既購入者世帯主,公団住宅主婦) などのグループごとに順位づけを行なった. 水準聞の効用億の差が大きな因子ほど,選好に 対して影響力が大きい.この影響力を数値で表現 したのが「寄与率 J (効用値の分散比)である. 効用関数を図 7 に示す.この効用関数は,価格 を含む 9 因子について,それぞれ約 3 水準の効用 値を示したものである.効用値の和が大きいほど 選好順位が高い(より好まれる)プランである.寄 評 f薗 凸ー 100 ⑧台所の独立性による 改善効果 80ト ( H ~(\による改善効果 60.7 60 40 与率の上位 2 因子は,立地条件 (a. 通勤時間 20 b. 最寄駅からの交通)であり,計画者側には, 操作不可能な悶子である.ついで大きいのは, 価格であり,上位 3 因子の寄与率の合計は, 約75% に達する.残りの 6 因子はすべて計画変数 であり,その中では e. 日照の寄与率が高い. 住棟の向きが大きな意味をもっていることがわか る.f.住戸プランの効用値は,同じ面積なら ば,部屋を小さく区切らないプランのほうが好ま れることを示している.また, g. 台所の独立 性, h. 冷暖房設備は,選好にほとんど影響を与 えない.実際のマスタープランの評価では c か ら i の 7 因子を対象とし,とりうる最小値,最大 値を O 点, 100点に換算し評価点とした. M計画の評価例を図 8 に示す.当初の案(原案) の評価点は, 60.7点で,改善する余地が多くある ことがわかった.そこで,住棟の向き,駐車場設 置率,台所の独立性等について改善をした変更案 を作成した.変更案の評価点の値は95.8点で,と りうる最善の案に近い. この評価システムは,価格という項目を含んで いるため,ある項目の改善効果と,それにともな う価格の上昇の逆効果のトレードオフ関係を分析 できる点に特徴がある.
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設計支援システム (CAD) 設計を進めていく段階の固有技術としては,企 画設計システム CANDIS と,集合住宅自動設計 システム PLANET の 2 つの電算プログラムが ある.2
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(24) 。 原案 変更案 図 S マスタープラン評価システムによる評価例 両プログラムの機能や能力については,すでに 紹介されているので ([3J-[6J) ,紙面の都合上 くわしくは触れないが, ["会話形式」により設計者 とコンピュータが協同して計画を進めていく点に 大きな特色がある.建築物の評価は,経済性,機 能性,芸術性,社会性の非常に多くの評価側面が ある.数理的に多目的関数の最適化をはかり,意 思決定をモテ*ル化・ルーチン化するよりも,人間 サイドに評価を受けもたせた仕組みのほうが現在 では実用的であるため,単純な自動製図を除いて, ほとんどの CAD システムは「会話形式」を採用 している. CANDIS や PLANET の適用により,該当設 計作業のコストは,およそ 42% , 36% に低減され る.また,それ以上に時間短縮の効果( 1/10以下) が大きし現在では,設計活動の重要なツールと して定着しており,実業務における適用件数も多 し、. 3. まとめ 本報告は,集合住宅計画の当社の計画技術の概 要を,企画段階の技術を中心に紹介したものであ る.企画段階のポイントは,事業性の優れた計画 にするために,設計のスペック(与条件)を決定す オベレーションズ・リサーチ © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.これらのデータをインプ y トする RF ~ ち F 4F ~ 1L• よLー 建蔽率・容積車 敷地形状 etc. 敷地辺属件一 道路幅員 etc. 階数・階高・平面 形状・面積配分 etc. 工オ,r::士ヨ 「寸...,r寸-, . . r寸降、 . . r寸コ
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39,200 図 10 集合住宅自動設計システム PLANET の作図例一f月田tIEjιEEE羽
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特集に当って
最近,建設業では TQC を導入し,推進し ている企業が急増している.企業により導入 の目的は異なると思うが,経営環境の悪化に 対応して企業体質を強化し,競争力を高める 横山和夫 を拡げ, OR の活用は TQC の内容の充実に つながるとも言える. このような時点で,建設業における OR の 活用の状況をふり返り,その活用の場を考え ことが大きなねらいの l っと考えられる. る l つの参考として特集を組むことになった-TQC は,事実にもとづいて管理する,因 果関係をたどりの真の原因を押える,一貫し 解説をしていただき,その次に建設の主なス た論理・ストーリーにしたがって考え行動す テップである設計と施工の段階における事例 る,システム指向し体系的にアプローチする, をベースとした解説をしていただくという構 などを特徴とした経営管理の手段であり,そ 成になっている. の実践により企業活動の各部面で,より科学 この他にも,受注,調達の段階や,さらに 的・合理的な考え方が高められてきており, は住宅,海外建設プロジェクトの運営管理な その中で OR の役割はより重要になってい どさまざまな分野でのアプローチは行なわれ る.すなわち TQC の実践は OR の活用の場 ていると思うが,今回は掲載できなかった. 別な機会に紹介していただきたいと考えてい E ょこやまかずお鹿島建設脚 る.=il1I1111111111111111・ 11111111111111111111111111111'11111111111“'・111111111111111111111111111・目 111111111111111111・11111111111111111111111・ a・111111111111111111111111111111111111・B ・E・11111111111111111111111“ 11111111111111111111111111;:
ることである.その意思決定には,住宅市場の動 向や,ユーザーニーズに関する情報の分析が大き く寄与している. 事業性は,販売成績を代表的な目的関数として 考えることができるために,集合住宅計画の計画 技術の中では OR 的な取組みがしやすい問題とい えよう.その他の分野では,評価のアルゴリズム をモデル化することが容易でなく,解決すべき課 題は多い.なお今後,可能性のある分野として は,販売戸数や販売面積,単価の最適化の問題な どが考えられる. しかし,集合住宅計画の分野に,数理的な考え 方が導入され始めたのはごく最近であり,今後の 発展の余地は大きい. 参芳文献 [ 1