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ASEANにおける関税撤廃の効果 ―Vietnamの貿易へのGravity Modelの適用―

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論文

ASEANにおける関税撤廃の効果

―Vietnamの貿易へのGravity Modelの適用―

The Effect of Elimination of Customs Duties in ASEAN on

Vietnamese Trade

―Gravity Approaches―

寺崎 克志

(Katsushi TERASAKI)

【要 約】 本稿の目的はASEANの2010年におけるBrunei,…Indonesia,…Malaysia,…Philippines,…Singapore,… Thailandの関税撤廃効果と2015年におけるCambodia,…Laos,…Myanmar,…Vietnamの関税撤廃効 果をgravity…modelを用いて検証することにある。検証モデルでは、被説明変数をVietnamの貿 易とし、説明変数としてTinbergen(1962)のGNPのかわりに輸出入国のGDPをもちい、ま た従来から用いられてきた物理的距離のかわりに、新たにEMS料金を採用することにした。重 回帰分析の結果は、半世紀前のTinbergen(1962)の0.8を超える相関係数が、本稿においても ほぼ同一の水準で算出され、同時にわずかな例外を除き、2010年と2015年のcross-sectionの small…dataでも、2010年から2014年のtime-seriesのbig…dataにおいても偏回帰係数の有意性が 確認された。 キーワード:アセアン、CLMV、重力モデル、関税撤廃、貿易創出効果、貿易転換効果 【Abstract】 The…purpose…of…this…paper…is…to…verify…the…effect…of…the…elimination…of…customs…duties…by… Brunei,…Indonesia,…Malaysia,…Philippines,…Singapore…and…Thailand…in…2010,…and…Cambodia,… Laos,…Myanmar…and…Vietnam…in…2015…on…Vietnamese…trade,…with…gravity…model.……In…the… regression…analysis…of…Vietnamese…trade,…we…utilize…GDP…as…independent…variable…instead…of… GNP…and…EMS…fee…instead…of…geographic…distance.…As…a…result…of…multiple…regression…analysis,… we…obtain…significant…partial…regression…coefficients…for…almost…all…independent…variables…with… cross-section…small…data…and…time-series…big…data…in…2010,…2015,…and…2010-2014. Keyword:ASEAN,…CLMV,…Gravity…Model,…Elimination…of…Customs…Duties,…Trade…Creation… Effect,…Trade…Diversion…Effect てらさきかつし:目白大学経営学部経営学科教授 平成29年10月6日…受付 平成29年11月27日…改訂 平成29年12月1日…採択(紀要編集委員会)

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1.はじめに Dinh,…Nguyen,…and…Hoang(2013)は、AmericaについてのSummary(1989)、BruneiとEU間 の貿易についてのAnaman…and…Al-Kharusi(2003)、BangladeshについてのRahman(2003)、 SingaporeについてのBlomqvist(2004)、BalkansについてのMontanari(2005)、Indiaについての Bhattacharyya…and…Banerjee(2006)、PeruについてのWang…and…Badman(2017)、およびSouth… AfricaについてのStatistical…Analysis…and…Modeling…Unit(2017)などと同様のモデル、すなわち Vietnamと世界60か国の二国間貿易の2000年から2010年のパネルデータを用いて、gravity…model の有効性を検証し、良好な結果を得ている1)。かれらは、 2 国間貿易を説明する変数として、各国 のGDP、各国の人口、 2 国間の物理的距離、為替レート、 2 国間の文化格差、ダミー変数として 2 国間貿易協定を用いている。かれらの興味は偏回帰係数の符号にあり、検証結果は仮説通りでは あったが、あらたな発見は見られなかった。こうした分析はすでに、Dinh,…Nguyen…and…Hoang (2013)、およびNguyen(2010)が1991年から2006年のパネルデータを用いて、またThai(2006) がVietnamと欧州23か国の 2 国間貿易について1993年から2004年を対象に行っている。こうし た、地域や特定の国を対象とした論文では、Egger(2002)が展開した推計されたgravity…equation から、潜在的な貿易額を推計するという分析が行われているが、本稿では紙面の制約から今後の課 題としている。 ところでDoi…moiが提唱されたのは1986年であり2)、その後ハイパーインフレーションに見舞わ れたVietnamが安定成長に移行したのは、21世紀に入ってからであるため、安定的な貿易関係が構 築されたのは、ここ十数年ともいえる3)。それゆえ、Nguyen(2010)とThai(2006)がデータの 対象期間に含めた20世紀末については若干の問題がある。そこで、Vietnamの外部経済環境を以下 の図表 1 で観察する4) 図表 1 は1980年から2016年までのASEAN10か国のGDPの推移を折れ線にしたものである5) 本稿の対象となるVietnamのGDPだけ棒グラフで描かれている。Indonesiaが1998年のアジア通貨 危機を除けば、人口大国ゆえに最大のGDPを示している。Thailand,…Malaysia,…Philippines,… Singaporeの 4 か国はIndonesiaとVietnamの間の地位を占めている。ASEAN10の下層には、人口 の少ないBruneiと最後にASEANに参加してきたCambodia,…Laos,…Myanmarが低迷している。2008 に勃発したリーマンショックで若干の落ち込みはあるものの、各国ともその後、すぐ回復を見せて いる。本稿の分析期間は2010年以降で、GDPで見る限り外部的な攪乱は避けられている6) 図表1 ASEANのGDP 単位:USD:billion

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図表 2 はVietnamの主な貿易相手国のGDPの推移を描いている7)。棒グラフで描かれている日 本のGDP以外は折れ線で示されており、アメリカと中国は継続的に成長し、韓国と台湾も微増を示 しており、ASEANの成長ぶりにもかかわらず日本の低迷ぶりが際立っている8)。本稿で分析の対象 としている2010年から2015年にかけて、とりわけ攪乱している様相はないことが分かる9) 貿易政策変更の効果については、Ando…and…Urata(2015)がMalaysia,…Thailand,…Indonesiaの 3 か国に関して、日本のFTAsが日本との貿易に対してどのような影響をもたらしたかをgravity… modelで検証しているが、本稿の目的は、2010年のASEAN 6 の域内関税撤廃のVietnamの貿易に 与えた効果の有効性を2010年のcross-section分析と2010年から2014年のtime-series…dataで確認 し、同様に2015年のASEAN 4 (CLMV)の関税撤廃効果をcross-section分析で確認することにあ る10)。分析アプローチとしてTinbergen(1962)のgravity…modelを用いるが、本稿では、経済距離 の代理変数として、Tinbergen(1962)の 2 国の商業的中心地間の距離やThai(2006)の緯度と経 度から計算する 2 国の首都間の地球表面上の距離など、これまでの先行研究が用いていた 2 国間 の物理的距離ではなく、EMSの料金を用いて、modelの有意性を検証する11)。また、Summary (1989)も論じているように 2 国間貿易では、国際政治経済的な要因も無視できないが、本稿では 捨象されている12) 2.Gravitymodel Gravity…modelはTinbergen(1962)をもって嚆矢とする。その後の、big…dataの蓄積と利便性の 高まりやPCの計算能力の向上があいまって、近年、このmodelを用いた文献が急増している13)。既 出の先行研究は、それらのごく一部に過ぎない。 まず、originalのmodelを提示する。Cross-sectionのdataを用いて、以下の方程式を想定する。 (1) Ei j=a0Yia 1Yja 2Di ja 3, ただし、  Ei j=country…iからcountry…jへの輸出(または輸入)  Yi=country…iのGDP  Yj=country…jのGDP  Di j=country…iとcountry…jの間の距離… である。ここで貿易の説明変数として本稿では各国のGDPをあてている。Tinbergen(1962)は当 時の世界的な国民所得統計のベースであったGNPをあてている。Tinbergen(1962)は、貿易の説 明変数としてGNPを用いているのは、輸出国の輸出供給能力と輸入国の輸入需要能力の代理変数に なるためであると説いているが、GNPには海外からの要素所得が含まれ、海外への要素所得が控除 図表2 主要貿易相手国のGDP 単位:USD:billion

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されているので、供給能力と需要能力を代理させるのあれば、現在の世界的な国民所得統計のベー スであるGDPの方がふさわしい。また、距離としては、Tinbergen(1962)では各国の商業的中心 地間の物理的な距離があてられている。本稿では、経済的距離、すなわち輸送コストそのものを取 り入れることにする。

つぎに、(1)の対数をとり、回帰方程式を表示する。 (2) lnEi j=a0’+a1lnYi+a2lnYj+a3lnDi j,

ただし、   a0’=ln…a0, である。Tinbergen(1962)では自然対数ではなく常用対数を用いていたが、本稿では自然対数を 用いる14)。このmodelがgravity…modelと後に呼ばれるようになったのは、かりに、   a1=a2= 1,… a3=-2, であれば、 (3) Ei j=a0YiYj/Di j2, となり、 2 国間の貿易額はa0を定数として各国のGDPに比例し、 2 国間の距離の二乗に反比例す ることを意味し、各国のGDPを 2 つの物体の質量に置き換えれば、表示が重力方程式に等しくなる ためである。すなわち、 (4) 重力=係数×質量 1 ×質量 2 /距離2 ただし、(2)式の説明変数の係数が、各国のGDPに関してそれぞれ 1 となり、経済的距離に関し て 2 になるかどうかについては、経済学的な根拠がないので、本稿の検証対象とはならない。(3) 式はあくまでも物理法則であって、gravity…modelはその枠組みを借用したに過ぎないことに留意す べきである。 ちなみに、Tinbergen(1962)が検証したのは、以下の自然対数modelである。 (5) logEi j=a1logYi+a2logYj+a3logDi j+a4logN+a5logPe+a6logPB+a0’

ただし、  N=隣接国に関するdummy変数  Pe= 英連邦特恵に関するdummy変数  PB=Benelux特恵に関するdummy変数 である。1959年のdataのcross-section分析で、当時の主要18か国(Brazil,…Venezuela,…South…Africa,… Japan,…Canada,…USA,…Australia,…Belgium・Luxenberg,…Denmark,…West…Germany,…Italy,…Netherland,… Norway,…Sweden,…Switzerland,…UK,…Austria)の国別輸出額(輸出国データ)と国別輸入額(輸入国 データ)を用いて回帰分析を行った結果、dummy変数を用いないで貿易額を輸出国データとした場 合の相関係数は0.8248であり、貿易額を輸入国データとした場合の相関係数は0.8084であり、輸出 国データにdummy変数を加えた場合の相関係数は0.8437となった。重力方程式はどのような物質 の質量であろうと相関係数1.0で成立する物理法則であるが、どのような 2 国間であれ相関係数が 0.8を超える水準で成立する回帰方程式は、gravity…modelという名称に値する地位を占めたといえ る。 さらに、Tinbergen(1962)は国の数を42か国に拡大して同様の検証を行っているが、相関係数 はほとんど変わらない15)。1959年のcross-sectionではあるが、国の数にかかわりなく相関係数に大 きな変化がない点で、国際貿易の規模を説明する仮説として、貴重であるといえる。そこで、以下 の仮説を提示する。 〔gravity…model相関係数0.8の法則〕gravity…modelの相関係数は、time-seriesでも、cross-section でも、big…dataでも、small…dataでも、0.8をこえる。 この仮説は、Tinbergen(1962)の検証結果を敷衍したものである。Tinbergen(1962)は、time-seriesの検証は行っていない。そこで、本稿の目的は、ASEANにおける関税撤廃の効果が有意であ

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るかどうかを確認すると同時に、この仮説がtime-seriesにおいても検証されることを明らかにする ことにある。同時に距離の代理変数として、EMS料金が有意であることを検証する。 3.輸入に関する検証結果 3-1 Vietnamの輸入に対する2010年のASEAN6の関税撤廃効果16) ASEAN 6 (Brunei,…Indonesia,…Malaysia,…Philippines,…Singapore,…Thailand)は、ASEAN(2009) のRoadmapにしたがって、2010年に域内関税を撤廃した。このとき、残りのASEAN 4 (CLMV: Cambodia,…Laos,…Myanmar,…Vietnam)は関税撤廃を猶予された。従来からASEAN域内で関税撤廃 されていた54,457品目に加え、このとき7,881品目の関税が撤廃され、全品目の内、99.11%の品目 が関税撤廃の対象となった。この結果、ASEAN域内の平均関税率は、0.79%から0.05%へ低下した。 本節では、この関税撤廃効果がVietnamの貿易において有意であったかどうかをgravity…modelを 用いて検証する。検証する目的は、ASEANはEUとは異なり、各国の税制についての域内規制はな く、また域外関税についてもASEAN各国において共通ではないことから、とくにVietnamの場合、 社会主義国特有の行政指導や通達が存在し、非関税障壁として機能するため、関税撤廃の効果が存 在するかどうか、確認することにある17) Modelは以下のように示される。 (6) E=a0Ya 1Yia 2Dia 3Aa 4A6a 5, ただし、  E=country…iからVietnamへの2010年の輸出(Vietnamの輸入18)  Y=Vietnamの2010年のGDP19)  Yi=country…iの2010年のGDP  Di=country…iとVietnamの間の経済距離…  A=ASEAN10のdummy変数  A6=ASEAN6のdummy変数 これより、回帰方程式は、

(7) lnE=a2lnYi+a3lnDi+a4lnA+a5lnA6+a0’

で与えられる。ここで、a1lnYは定数であるから、

 a0’=lna0+a1lnY,

で定義される。また、a2はVietnamの輸入のcountry…iのGDPに関する偏弾力性である。すなわち、

 a2= ∂lnE/ ∂lnYi,

である。Country…iの輸出供給能力が国別に高まれば、異なる国であったとしてもVietnamに対する 輸出額も増加すると想定されるので、検証すべき符号条件は、a2> 0 ,…である。推計するのは関数で あるが、偏回帰線上にさまざまな国がGDPの大きさの順に数珠つながりのように存在していると考 える。Diの経済距離は、Tinbergen(1962)にしたがって、地理的な距離を代理変数とするのが従 来のアプローチである。本稿では、従来からよく用いられている地理的距離ではなく、国際輸送コ ストを代理変数として採用する。たとえば、 2 国間の地理的距離が近いとしても、国境に峻険な山 岳や急流の大河があれば、貿易を阻害する要因となるので、貿易を拡大させる要因にはならない。 同様に政情不安とか、国際輸送に関する非関税障壁も貿易を阻害する要因となる。また、輸出する 際、相手国の港が川下にある場合や、海流の先にある場合や、偏西風や貿易風の風下にあるとすれ ば、船便や航空便の利便性は距離を過小評価させることになる。国際輸送コストはさまざまな輸送 要因を勘案して設定され、貿易の阻害因子としての距離を金額的に実態評価するものと想定する。 本稿では、EMS(Express…Mail…Service)の公表料金を代理変数として採用した。総じて、遠隔地 はEMSの料金が高く設定され、隣接地は安く設定されている20)。したがって、想定される符号条件 は、a3< 0 ,…である。

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(7)のlnAにはVietnamを除くASEAN 9 であれば 1 ,…それ以外の国については 0 ,…を代入した。 同様に、lnA6には、ASEAN 6 であれば 1 ,…それ以外の国については 0 ,…を代入した。ASEANとの

貿易は関税面での優遇があるので、それ以外の国よりも貿易促進効果があり、さらに2010年に域内 関税を撤廃したASEAN 6 については、関税撤廃の間接効果がVietnamの貿易に及んでいると想定 される。a4の仮説的符号条件は正であるが、a5の符号条件は貿易創出効果(trade…creation…effect)

と貿易転換効果(trade…diversion…effect)に依存するので、事前に符号条件を想定することはできな い。 ここでいう貿易創出効果と貿易転換効果は、欧州関税同盟を対象としたViner(1950)の概念で、 これを2010年のASEAN 6 による域内関税撤廃に援用すると、ASEAN 6 内の関税が撤廃されたこ とによりASEAN 6 内での貿易が新たに創出される場合が貿易創出である21)。したがって、貿易創 出効果は直接的にはVietnamの輸入に影響を与えない。ただし、ここでいう貿易創出効果と貿易転 換効果は関税同盟に参加した域内の国々に適用される効果であることに留意しなければならない。 ここでの文脈では、Vietnamは2010年の域内関税撤廃に参加しなかったため、貿易創出効果と貿易 転換効果の当事国とはならない。これらの効果概念が適用されるのは、Viner(1950)に従うので あ れ ば2010年 に 関 税 撤 廃 を 行 っ たASEAN 6 に 対 し て で あ り、Vietnamに 対 す る 効 果 は、 ASEAN 6 の国々の貿易の変化が、貿易相手国としてのVietnamに対してどうなるかという金額で 測定される。VietnamはASEAN域内の国であるが、2010年の域内関税撤廃には参加しなかったの で、Viner(1950)のいう貿易創出効果と貿易転換効果という概念の対象国とはならない。 そこで、関税撤廃以前にはVietnamから輸入していた財をASEAN 6 内から輸入する場合は貿易 転換となる。関税撤廃の結果、Vietnamから輸入されていた財が、ASEAN 6 内から輸入されること になれば、VietnamのASEAN 6 に対する輸出は減少する。同じことではあるが、ASEAN 6 の Vietnamからの輸入は減少する。したがって、直接的には、この場合もVietnamのASEAN 6 から の輸入に影響を与えない。しかし、この概念は部分均衡分析的であるため、間接効果を考慮すると、 必ずしも影響がないとは言えない。たとえば、ASEAN 6 内部の貿易が増加し、Vietnamへの供給余 力が削がれるとすれば、Vietnamへの輸出(Vietnamの輸入)は減少することになるので、a5の想 定される符号条件は負である。 Cross-sectionの重回帰分析の結果は以下のように示される。

( 8 ) lnE= 0.9619lnYi-2.4785lnDi+ 1.9067lnA-0.7894lnA6+ 15.9544

   R=0.8408、サンプル数=79 偏回帰係数の符号は、想定通りとなった。また、相関係数は、0.8408で、Tinbergen(1962)が 提示した〔gravity…model相関係数0.8の法則〕が半世紀後のVietnamの輸入についてもほぼ支持さ れた。またそれぞれの偏回帰係数の検証結果は以下の図表 3 に示されている。A6を除く説明変数 の偏回帰係数の有意性については、いずれもP値が0.05以下で有意といえるが、A6の偏回帰係数の P値は0.05を上回っており、有意とは言えない。その原因については、さらなる分析が必要である が、Vietnamという社会主義国特有の行政指導や通達がASEAN 6 の相互関税撤廃の効果を相殺さ せた可能性が検討に値する。 図表3 2010年のASEAN6の関税撤廃効果(輸入)

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3ー2 Vietnamの輸入に対するASEAN6の2010年から2014年の関税撤廃効果22)

つぎにデータを増やして、パネルデータを用いて、ASEAN 6 の関税撤廃効果を検証する。検証 結果は、以下の式と図表 4 に示される。

(9)…lnE= 0.9654lnYi+ 0.1193lnY-3.0577lnDi+ 1.7662lnA-0.5530lnA6+19.2037

  R= 0.8158、サンプル数 = 401 ただし、YはVietnamのGDPである。 偏回帰係数の符号は時系列においても想定通りとなった。また相関係数は0.8158で、Tinbergen (1962)がsmall…dataを用いてcross-sectionで提示した〔gravity…model相関係数0.8の法則〕が半世 紀後のbig…dataを用いたtime-seriesのVietnamの輸入についてもほぼ支持された。図表 4 で、 VietnamのGDPに関する偏弾力性(∂lnE/∂lnY)の値、すなわち偏回帰係数0.1193が諸外国の GDPに関する偏弾力性(∂lnE/∂lnYi)の値、すなわち偏回帰係数0.9654よりもかなり小さいこと が、Vietnamへの諸外国の旺盛な輸出供給をうかがわせる23)。偏回帰係数の符号条件は仮説通りで あるが、ASEAN 6 のダミー変数の偏回帰係数の値については、P値が0.05を上回っており、有意性 は満たされていない。同様に、輸入需要の吸収力としてのVietnamのGDPの偏回帰係数のP値は0.7 を超えており、社会主義国特有の非関税障壁の存在がうかがわれる24) 3-3 Vietnamの輸入に対するASEAN4の2015年の関税撤廃効果25) 同様に、2015年に実施したASEAN 4 (CLMV:Cambodia,…Laos,…Myanmar,…Vietnam)の関税撤 廃が、Vietnamの輸入に対してどのような影響を与えたかを分析する。手法は、前出と同様で、異 なるのは各国のGDPとVietnamの輸入額が2015年のデータに入れ替わるだけである。…重回帰分析 の結果は以下の回帰方程式(10)と図表 5 で示される。

(10)…lnE= 0.9183lnYi-2.6490lnDi+ 0.6501lnA+ 0.4531lnA3+ 17.9046

  ……R= 0.8640、サンプル数 = 59 ただしA3はCambodia,…Laos,…Myanmarの 3 か国に関するダミー変数である。ここにおいて2015年 のVietnamのGDPは定数となるため、その効果は定数項に含まれる。 相関係数は、0.8640で、2010年のASEAN 6 の関税撤廃効果を計測した(8)式と大きく変わら ない。GDPと経済的距離DiとASEANに関するダミー変数の偏回帰係数の符号は予測通りであっ た。A3のダミー変数の符号がプラスとなったのは、関税撤廃により、Cambodia,…Laos,…Myanmarの 3 か国からの輸入が他のASEAN諸国よりも増加したことを意味し、関税撤廃の効果(貿易創出効 果)が検証されたことを意味している。ここでも、Tinbergen(1962)が提示した〔gravity…model 相関係数0.8の法則〕が53年後のVietnamの輸入についてもほぼ支持された。 図表4 2010年~2014年のASEAN6の関税撤廃効果(輸入)

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4.輸出に関する検証結果26) 4-1 Vietnamの輸出に対する2010年のASEAN6の関税撤廃効果 重力方程式には、輸出と輸入の差別はない。しかし、実体経済では、Vietnamの輸出と輸入は金 額の単位は同一であろうと品目や内容は全く異なる27)。EをVietnamから諸外国への輸出データ (諸外国のVietnamからの輸入)に差し替えた場合の検証結果は以下の重回帰方程式(11)と図表 6 に示されている。

(11) lnE= 0.9983lnYi-1.8970lnDi+ 2.2460lnA-1.3655lnA6+ 12.1579

   R=0.8980、サンプル数=83 ただし、Eは2010年のVietnamの輸出額である。また、Vietnamの輸出供給能力を表す2010年の GDPは定数となるので、その効果は定数項に含められる。ここで、(6)式と(7)式の輸入額と同 様に同じEという記号を用いるのは、gravity…modelを念頭においているためである。すなわち、 gravity…modelにおいては、輸出か輸入かでmodelが変更されるものではなく、輸出であろうと輸入 であろうと、輸出国の説明変数の係数と輸入国の説明変数の係数に区別はなく、いずれの場合でも、 係数の有意性に影響はないことによって、このmodelの一般性が検証される。逆に、重力方程式は 被説明変数は重力だけであるが、gravity…modelでは、輸出入が被説明変数となる点が相違点である。 (11)において、Tinbergen(1962)が提示した〔gravity…model相関係数0.8の法則〕が、0.8980 と0.9に肉薄してはいるものの約半世紀後のVietnamの輸出についてもほぼ支持された。また符号 条件もいずれも予想通りであり、とくにA6のダミー変数については、貿易転換効果を反映して負の 値となっている。すなわち、ASEAN 6 の関税撤廃は、2015年の関税撤廃まで取り残されたVietnam からのASEAN 6 に対する輸出に関してマイナスの効果をもたらしていることが確認できる。すな わち、2009年まで、Vietnamから輸入していた(Vietnamが輸出していた)ASEAN 6 が、輸入元 を関税が残存するVietnamから関税が撤廃されたASEANの中の新たな域内関税撤廃グループであ るASEAN 6 に転換したことが推測される。 輸出に関するデータを時系列で増加させ、パネルデータで重回帰分析を行った結果が、以下の重 回帰方程式(12)と図表 7 に示されている。

(12) lnE= 0.9681lnYi+ 1.2535lnY-2.0417lnDi+ 2.1940lnA-1.5567lnA6+ 10.4318

   R=0.8684、サンプル数=406

図表6 2010年のASEAN6の関税撤廃効果(輸出) 図表5 2015年のASEAN4の関税撤廃効果(輸入)

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偏回帰係数の符号は、時系列においても想定通りとなった。また、相関係数は、0.8684で、 Tinbergen(1962)がsmall…dataを用いてcross-sectionで提示した〔gravity…model相関係数0.8の法 則〕が半世紀後のbig…dataを用いた時系列のVietnamの輸出についてもほぼ支持された。 4ー2 Vietnamの輸出に対する2015年のASEAN4の関税撤廃効果 同様に、2015年のASEAN 4 の関税撤廃効果につて重回帰分析を行った結果は、以下の方程式 (13)と図表 8 に示されている。

(13) lnE= 0.9507lnYi-1.4775lnDi+ 0.5329lnA+ 1.6692lnA3+ 10.4318

   R= 0.8565、サンプル数 = 67 ただし、A3はCambodia,…Laos,…Myanmarの 3 か国に対するダミー変数である。 (13)において相関係数は、0.8565で、GDPと経済的距離DiとASEANに関するダミー変数の偏 回帰係数の符号は予測通りであった。A3のダミー変数の符号がプラスとなったのは、関税撤廃によ り、Cambodia,…Laos,…Myanmarの 3 か国への輸出が他のASEAN諸国よりも増加したことを意味 し、関税撤廃の効果(貿易創出効果)が検証されたことを意味している。ここでもTinbergen (1962)が提示した〔gravity…model相関係数0.8の法則〕が53年後のVietnamの輸出についてもほ ぼ支持された。 4-3 Vietnamの輸出入に対するASEAN6の2010年から2014年の関税撤廃効果 最後の重回帰分析は、(14)のEにVietnamの輸入と諸外国の輸入(Vietnamからの輸出)を当て はめたbig…dataによるものである。EがVietnamの輸入のデータである場合は、それに対応するYi は諸外国のGDPで、YはVietnamのGDPであるが、EにVietnamからの輸出(諸外国の輸入)を当 てはめる場合は、YiはVietnamのGDPで、Yは諸外国のGDPとなる。同一の回帰方程式で、諸外 国の輸出供給能力とVietnamの輸出供給能力をYiで表し、輸入需要吸収力を同様に諸外国と VietnamともにYで表し、分析を行った結果は以下の重回帰方程式(14)と図表 9 に示されている。 (14) lnE= 0.9287lnYi+ 0.9907lnY-2.5562lnDi+ 1.9558lnA-1.0382lnA6+ 11.9938

図表7 2010年~2014年のASEAN6の関税撤廃効果(輸出)

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………R=0.8259、サンプル数=807 ただしEがVietnamの輸入であればYiは諸外国のGDPで、YはVietnamのGDPである。また、Eが Vietnamの輸出(諸外国のVietnamからの輸入)であればYiはVietnamのGDP、Yは諸外国のGDP である。すなわち(14)においてYiは輸出供給能力の代理変数としてのGDPであり、Yは輸入需 要吸収の代理変数としてのGDPがデータとして用いられる。 同一方程式にVietnamの輸出入金額を同時に代入した結果、相関係数は0.8259となり、前出の値 と大差がない28)。データのサイズにかかわりなく、相関係数は0.8から0.9の間におさまるという意 味で普遍性が見られる。サンプル数の増加が功を奏し、P値はいずれの偏回帰係数についても0.05 をはるかに下回り、有意性が得られた。 5.おわりに

本稿では、2010年のASEAN 6 と2015年のASEAN 4 の関税撤廃効果の有効性をVietnamの輸出 入についてgravity…modelを援用して検証した。検証結果はsmall…dataにおいても、big…dataにおい ても良好で、説明変数の偏回帰係数の有意性はほぼ確認することができた。唯一、図表 8 の2015年 のASEAN 4 の関税撤廃効果について、Vietnamの輸出に関するASEAN 9 (Vietnamを除く ASEAN諸国)のダミー変数の偏回帰係数のP値が0.3018で、0.05を大きく上回っている。その理由 が、どのような要因に基づくものかについては今後の課題としたい29)。また、従来、 2 国間の距離 は物理的な距離を用いて回帰分析されてきたが、本稿では、EMS料金を経済的距離の代理変数とし て用いた。検証結果は良好で、とくにTinbergen(1962)の相関係数にほぼ等しい検証結果が得ら れ、big…dataにおいても、small…dataにおいても、〔gravity…model相関係数0.8の法則〕が半世紀後 のASEANの貿易においても適用されることが確認できた。ただし、EMS料金は500グラムまでの merchandisesを対象としているので、付表 4 にも示されているようにデータそれ自体がdiscreteで あり、数値もゾーン別に12種類しかない。経済的距離は貿易商品を対象とした船会社の海上輸送料 金や航空会社の航空輸送料金などで代理させる方法もあるが、こうした代理変数の使用については 今後の課題としたい。さらには、グェン(2016)が論ずるような、輸出入額の変動の背後にある国 際分業構造の変化も考慮に入れる必要があるが、これも今後の課題としたい。同時に、Kimura…and… Lee(2006)がサービス貿易にgravity…equationを適用し、アジア資本市場研究会(2015)も論じ ているように、経済に対するインパクトとしてはフットルースな国際金融の役割は無視できない が、このテーマは本稿の埒外なので、後の論文に場を譲りたい。 図表9 2010年~2014年のASEAN6の関税撤廃効果(輸出入)

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【註】 * 本稿の執筆にあたり2017年9月19日から22日にかけてHanoiにおいて現地調査を行った。このヒアリン グにご協力いただいた以下の方々に紙面を借りて深謝する次第である。(敬称略:50音順)IDEMITSU… Hanoi…Office…Business…Development(Vietnam,…Laos,…Cambodia)…Senior…Coordinator・天達隆太、 IDEMITSU…Hanoi…Office…Business…Development(Vietnam,…Laos,…Cambodia)…Coordinator・角野弘樹、… Japan…External…Trade…Organization…Hanoi…Representative…Office海外投資/経済連携促進アドバイザー・ 北嶋誠士、Hanoi…University…Head…of…Division…of…Specialist…Japanese・Nguyen…Thi…Minh…Huong、NPO法 人ベトナム簿記普及推進協議会(ABPV)・古久保英朗、三菱東京UFJハノイ支店取引先第二課取引先第 二課長・佐野順、Link…Viet…Nhat…Co.,…Ltd.…CEO・Duong…Mai…Ngoc…Thuong、みずほ銀行ハノイ支店日系 営業課・中尾憲一郎、Nghi…Son…Refinery…Petrochemical…Limited…Liability…Company・堀口威、学校法人大 原学園理事長・中川和久、有限会社リンク日越社長・ズゥンマイゴックトゥン。 【注】 1)… Gravity…modelの詳細については、Shepherd(2013)を参照されたい。 2)… Doi…moiの詳細については、石塚(2017)および竹内(2017)を参照されたい。 3)… こうした経済背景については、守部(2012)および寺崎(2012)を参照されたい。 4)… データについては付表5を参照されたい。 5)… …21世紀初頭におけるASEANの状況と課題については、石川(2006,2015)、牛山・可部(2014)、みず ほ総合研究所(2014,2015)および浦田・牛山・可部(2015)などを参照されたい。また、2007年に採 択されたブループリントの意義については、石川(2008)を参照されたい。 6)… とりわけ、Vietnam経済が順調であった背景については、稲垣(2014)を参照されたい。 7)… データについては付表 6 を参照されたい。 8)… …ASEANの成長が日本にとってどの程度の影響力があるのかというテーマについては、西濱(2014)、 若松・小島(2014)、および石川・清水・助川(2015)などを参照されたい。 9)… 2015年のVietnam経済の動向については、JETROハノイ事務所(2017)を参照されたい。 10)……2015年のCLMV 4 か国の関税撤廃で積み残された課題の詳細については、酒向(2014)およびILO… and…ADB(2014)などを参照されたい。また、この4か国の詳細については、西口・西澤(2014)を 参照されたい。 付表6 主要貿易相手国のGDP(単位:USD:billions)

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11)……2 国間の距離の測定の方法については、Head…and…Mayer(2002)、およびMayer…and…Zignago(2011) などを参照されたい。また、ASEAN固有のロジスティックスについては、森(2015)を参照されたい。 12)…国際政治経済のさまざまな議論については、寺崎(2004)を参照されたい。 13)……にもかかわらず、Anderson(1979)、Bergstrand(1985)、およびFeenstra,…Markusen…and…Rose (2001)などの理論づけの努力が不十分で、例えばMarkusen,…Melvin,…Kaempfer…and…Maskus(1995)、 およびWong(1995)などの国際経済学の教科書では取り上げられていない。しかし、Chaney(2013) に見られるように理論づけの努力は連綿として続けられている。 14)……すなわちTinbergen(1962)では、a0= 10a0’、として、常用対数を用いて回帰分析を行っているが、本 稿では常用対数の結果は省略し、自然対数を用いた結果のみを示している。試算では以下のいずれの場 合でも自然対数の方がモデルの説明力が高くなった。 15)……18か国に追加された24か国はArgentina,…Chili,…Cuba,…Mexico,…Peru,…Uruguay,…Congo,…Ethiopia,…Ghana,… Morocco,…Nigeria,…Sudan,…West…Africa,…Afghanistan,…Ceylon,…India,…Indonesia,…Malaya,…Pakistan,… Philippines,…Thailand,…Egypt,…Iraq,…Turkeyである。 16)…ASEAN 6 が関税を撤廃した直後のASEANの情勢については梅崎(2011)を参照されたい。 17)……たとえば、中村(2015)も指摘しているように、2018年には完全撤廃される予定の自動車について、 国内税制として一般消費税、45%から60%の特別消費税、自動車登録料などがある。こうした国内税制 を駆使すれば、EUとは異なり関税撤廃の効果を反故にすることができる。また、自動車部品産業の現 状については、小林(2017)を参照されたい。 18)…Vietnamの輸入額データについては付表 2 を参照されたい。 19)…GDPのデータについては付録 1 を参照されたい。 20)……Tinbergen(1962)では、隣接国dummyを採用しているが、本稿では採用していない。その理由は、 EMSの料金の安さの中に隣接国dummyが含まれていると考えるためである。なおEMSの料金データ については付表 4 を参照されたい。また国際輸送の諸問題の理論モデルにつては、Behar,…Manners… and…Nelson(2011)を参照されたい。 21)…この議論を東アジアに当てはめた文献については、石戸・伊藤(2014)を参照されたい。 22)…2011年から2015年にかけてのASEANがかかえる諸問題にいては新谷(2011)を参照されたい。 23)……本稿では議論しないが、VietnamのGDPの増加をはるかに上回る諸外国のGDPの増加に伴うVietnam の輸入の増加は、Vietnamの外国からの直接投資導入に伴う輸入増加をうかがわせる。詳細について は、寺崎(2014)および春日(2014)などを参照されたい。 24)…こうした指摘については、高田(2015)および稲垣(2015)などを参照されたい。 25)……関税撤廃によるVietnamの貿易に対する概略的な解説については、中村(2015)を参照されたい。ま た、ASEAN全体についての諸問題に関しては金(2015)および西村・小林・浦田(2016)などを参 照されたい。 26)……本稿では、ベトナム輸出に対する外国直接投資の影響を考慮していないが、松浦(2017)が指摘する 課題については考慮を要する。またVietnamの輸出のデータについては付表 3 を参照されたい。 27)……全く同一の財を同時に輸出入することを水平貿易、あるいは産業内貿易と表現するが、詳細については Terasaki(1984)、寺崎(1996)などを参照されたい。差別化された財についてはよく見られる現象で あるが、全く同一の財についてはまれである。かつてVietnamでは、良質で高価な原油を日本に輸出 し、安価な原油を輸入するという現象が見られた。詳細については寺崎(2012)を参照されたい。 28)……Mayer…and…Zignago(2005)のように地域単位で世界中のすべての国を分析対象とすると、Anderson (2016)が指摘するように全世界の輸出額は全世界の輸入額に等しいという制約を考慮しなければなら ないが、ここでの分析はVietnamの輸出入額のみを分析対象とする部分均衡分析なので、こうした制約 は考慮されていない。 29)……また、山川(2015)が指摘するように、Vietnamの内政、すなわち、貿易政策をめぐる商工省と財務 省の対立なども今後検討する必要がある。こうした問題についてはVo(2015)、金(2016)などを参 照されたい。また、さまざまな取引慣行については、窪田(2015)を参照されたい。さらには国内経 済に貿易政策がどのように波及していく可能性があるかというダイナミズムについては坂田(2017) を参照されたい。

図表 2 はVietnamの主な貿易相手国のGDPの推移を描いている 7) 。棒グラフで描かれている日 本のGDP以外は折れ線で示されており、アメリカと中国は継続的に成長し、韓国と台湾も微増を示 しており、ASEANの成長ぶりにもかかわらず日本の低迷ぶりが際立っている 8) 。本稿で分析の対象 としている2010年から2015年にかけて、とりわけ攪乱している様相はないことが分かる 9) 。 貿易政策変更の効果については、Ando…and…Urata(2015)がMalaysia,…Thailand,…Ind

参照

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