子ども時代の旅行経験別に見る旅行意欲の差異とそ
の要因 : 家族旅行に関するアンケート調査から
著者
森下 晶美
雑誌名
現代社会研究
号
13
ページ
65-71
発行年
2015
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007884/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja― 65 ―
子ども時代の旅行経験別に見る旅行意欲の差異とその要因
〜家族旅行に関するアンケート調査から〜
森 下 晶 美
子どもの頃の旅行経験と成人後の旅行意欲の相関性は既に指摘されているが、本研究ではこうし た相関関係がなぜ生じるのかについて、家族旅行実施の実態と旅行に対する価値観に関するアン ケート調査をもとに分析した。分析にあたっては、子ども時代の旅行経験の多少別に特徴を整理し、 旅行経験の多少による観光行動や感じる魅力などの違いをあぶりだすと共に、観光行動心理におけ る先行研究を参照し、旅行経験が及ぼす旅行意欲への影響の要因を分析する形式で行った。その結 果、旅行は実施にあたって検討せねばならない事項が多面的、複雑で種々の選択を繰り返す必要が あるため、旅行の経験事例(ケース)が少ない場合、観光行動や目的の設定に制約が生じ、その結 果として、旅行経験の多いグループと比較して旅行で体験できることが少なく、十分には旅行を楽 しめていない可能性が明らかになった。 keywords:旅行経験、旅行意欲、子ども、家族旅行、観光行動心理 2.子ども時代の旅行経験と家族旅行の現状 平成 21(2009)年に国土交通省観光庁が行っ た「日本人の観光旅行の状況に関する調査・分析 等報告書」によれば、平成 19(2007)年度 1 年 間の家族グループにおける国内宿泊観光旅行回数 の平均は 1.56 回で、同年の国内宿泊観光旅行自 体の平均 1.50 回と比較してやや上回る状況となっ ている。また、同調査で実施回数の分布を見ると、 1 年間に実施した国内宿泊観光旅行回数が 0 回と 答えたのが 33%、1 回 32%、2 回 22%、3 回 8%、 4 回以上 5%、となっている。また、子どもの頃 によい旅行経験をするとその後の旅行意欲も高く なるという指摘は既にされており、観光庁も前述 調査において、「子供時代のよい旅行経験は将来 の旅行につながり、社会的効果が拡大再生産され る」とまとめている。 また、本調査でも過去 3 年間の家族旅行実施状 況を子ども時代の旅行経験の多少別にまとめる と、子ども時代に「家族旅行に頻繁に行った」と 答えたグループで、現在の家族旅行実施回数も多 いという結果となり(図 1)、子ども時代の旅行 経験が多いほど現在の旅行実施率も高いことが分 かる。 目 次 1.はじめに 2.子ども時代の旅行経験と家族旅行の現状 3.研究の手法 4.旅行経験の多少による家族旅行の違い 5.子ども時代の旅行経験による旅行意欲へ の影響とその要因分析 6.まとめ 1.はじめに 子どもの頃に旅行経験が多いと成人後も旅行意 欲が高くなるという現象は既に指摘されている が、同様の傾向が家族旅行においても見られる(森 下晶美 2014)。では、こうした過去の旅行経験と 旅行意欲の相関関係はなぜ生じるのだろうか。 本研究では、子ども時代の旅行経験の多少とそ の子どもが親世代になった時の家族旅行の実施状 況をアンケート調査で明らかにすると共に、経験 と意欲の相関性が生じる要因について家族旅行の 視点から分析した。― 66 ― 3.研究の手法 本研究では、こうした子ども時代の旅行経験の 多少はなぜ現在の家族旅行意欲にも影響するのか 考えていきたい。検証と分析に当たっては、家族 旅行実施の実態と旅行に対する価値観をアンケー ト調査し、子ども時代の旅行経験の多少別に特徴 を整理した。これにより旅行経験の多少による観 光行動や感じる魅力などの違いをあぶりだすと共 に、観光行動心理における先行研究を参照し、旅 行経験が及ぼす旅行意欲への影響の要因を分析す ることとした。 また、特徴を明らかにするため、アンケートに おける子ども時代の旅行経験で「頻繁に行った(毎 年 2 回以上)」(208 名)と「まあまあ行った(毎 年 1 回程度)」(339 名)と答えたグループを「旅 行経験の多いグループ」(以下「多いグループ」) とし、「あまり行った記憶がない」(258 名)、「全 く行った記憶がない」(63 名)と答えたグループ を「旅行経験の少ないグループ」(以下、「少ない グループ」)とし、両者を比較することで差異を 明らかにした。 なお、アンケート調査は、子ども時代の旅行経 験と現在の家族旅行における観光行動や目的、旅 行に対する価値観に関する質問を中心に、全国の 20 〜 50 歳代の子どもを持つ男女 1,100 名(男性 579 名、女性 521 名)に楽天リサーチを通じイン ターネット上で実施した。実施期間は 2013 年 2 月 3 〜 4 日。 4.旅行経験の多少による家族旅行の違い アンケート調査の結果から、子ども時代の旅行 経験の多少による現在の家族旅行の実態と捉え方 図1 子ども時代の家族旅行経験別に見た過去 3 年間の家族旅行実施状況 3. 研究の手法 本研究では、こうした子ども時代の旅行経験の多少はなぜ現在の家族旅行意欲にも影響するのか 考えていきたい。検証と分析に当たっては、家族旅行実施の実態と旅行に対する価値観をアンケー ト調査し、子ども時代の旅行経験の多少別に特徴を整理した。これにより旅行経験の多少による観 光行動や感じる魅力などの違いをあぶりだすと共に、観光行動心理における先行研究を参照し、旅 行経験が及ぼす旅行意欲への影響の要因を分析することとした。 また、特徴を明らかにするため、アンケートにおける子ども時代の旅行経験で「頻繁に行った(毎 年2 回以上)」(208 名)と「まあまあ行った(毎年 1 回程度)」(339 名)と答えたグループを「旅 行経験の多いグループ」(以下「多いグループ」)とし、「あまり行った記憶がない」(258 名)、「全 く行った記憶がない」(63 名)と答えたグループを「旅行経験の少ないグループ」(以下、「少ない グループ」)とし、両者を比較することで差異を明らかにした。 なお、アンケート調査は、子ども時代の旅行経験と現在の家族旅行における観光行動や目的、旅 行に対する価値観に関する質問を中心に、全国の20~50 歳代の子どもを持つ男女 1,100 名(男性 579 名、女性 521 名)に楽天リサーチを通じインターネット上で実施した。実施期間は 2013 年 2 月3~4 日。 4.旅行経験の多少による家族旅行の違い アンケート調査の結果から、子ども時代の旅行経験の多少による現在の家族旅行の実態と捉え方 の違いを見てみたい。 (1)家族旅行意欲 まず、子ども同伴の家族旅行意欲について子ども時代の旅行経験の多少別に見ると、頻繁に行っ た層では「とてもしたい」が76.0%なのに対し、全く行ったことがない層では 39.7%となっている。 旅行経験の多少で明らかに意欲の差異が見られ、過去の旅行経験と旅行意欲に相関関係があること が分かる(図2)。 20% 6% 4% 7% 3% 25% 22% 15% 11% 17% 28% 37% 40% 31% 24% 11% 16% 16% 15% 17% 17% 20% 25% 37% 38% 頻 繁 に 行 っ た ( 毎 年 2 回 以 上 ) … ま あ ま あ 行 っ た ( 毎 年 1 回 程 度 ) … 時 々 行 っ た ( 年 1 回 未 満 ) 2 3 2 あ ま り 行 っ た 記 憶 が な い 2 5 8 全 く 行 っ た こ と が な い 6 3 7回以上行った 4~6回行った 2~3回行った 1回行った 行っていない 家族旅行経験の 多いグループ 家族旅行経験の 少ないグループ 図2 今後の子ども同伴の家族旅行意欲 (2)家族旅行の目的 家族旅行の目的について多くあがったのは、両グループとも「家族一緒の時間をつくる」や「子 どもに色々な体験をさせたい」で、旅行目的とされた項目の順序には大きな違いは見られないが、 ほとんどの項目で多いグループの方が値が高く、多いグループでは家族旅行の目的を比較的明確に 持っているのに対し、少ないグループでは家族旅行の目的を明確に捉えていない可能性が指摘でき る。一方、少ないグループでむしろ値の高かったのは、「親に行きたい場所がある」、「なんとなく」 となっている(図3)。 図3 家族旅行の目的 (3)家族旅行での観光行動 最近の家族旅行において現地で行った観光行動を尋ねると、両グループとも多い順に「おいしい ものを食べる」、「温泉」、「テーマパーク」、「名所」となっており、観光行動においても上がる順序 39.7% 49.2% 47.8% 54.9% 76.0% 31.7% 34.5% 39.2% 37.8% 18.3% 9.5% 6.2% 5.6% 3.5% 1.4% 19.0% 10.1% 7.3% 3.8% 4.3% 全く行ったことがない… あまり行った記憶がない… 時々行った(年1回未満)… まあまあ行った(毎年1回程度)… 頻繁に行った(毎年2回以上)… とてもしたい どちらかといえばしたい あまりしたくない したいができない 40.8% 49.0% 9.3% 5.9% 4.6% 11.9% 3.3% 17.9% 0.0% 1.1% 1.1% 25.2% 38.9% 7.2% 6.9% 5.0% 9.0% 2.2% 9.3% 0.3% 3.4% 0.3% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 子供に色々な体験 家族一緒の時間 子供の行きたい場所 親の行きたい場所 子供の休息 親の休息 恒例 旅行が好き 皆行くから なんとなく その他 旅行経験の多い層 n=547 旅行経験の少ない層 n=321
子ども時代の旅行経験別に見る旅行意欲の差異とその要因 ― 67 ― の違いを見てみたい。 (1)家族旅行意欲 まず、子ども同伴の家族旅行意欲について子ど も時代の旅行経験の多少別に見ると、頻繁に行っ た層では「とてもしたい」が 76.0%なのに対し、 全く行ったことがない層では 39.7%となってい る。旅行経験の多少で明らかに意欲の差異が見ら れ、過去の旅行経験と旅行意欲に相関関係がある ことが分かる(図 2)。 (2)家族旅行の目的 家族旅行の目的について多くあがったのは、両 グループとも「家族一緒の時間をつくる」や「子 どもに色々な体験をさせたい」で、旅行目的とさ れた項目の順序には大きな違いは見られないが、 ほとんどの項目で多いグループの方が値が高く、 多いグループでは家族旅行の目的を比較的明確に 持っているのに対し、少ないグループでは家族旅 行の目的を明確に捉えていない可能性が指摘でき る。一方、少ないグループでむしろ値の高かった のは、「親に行きたい場所がある」、「なんとなく」 となっている(図 3)。 (3)家族旅行での観光行動 最近の家族旅行において現地で行った観光行動 を尋ねると、両グループとも多い順に「おいしい ものを食べる」、「温泉」、「テーマパーク」、「名所」 となっており、観光行動においても上がる順序に 大きな差異はないが、多いグループで 30%を超 える観光行動が 3 項目あるのに対し、少ないグ ループでは全体に観光行動を行った項目の割合が 低くなっており、全体として不活発な旅行となっ ていることが分かる(表 1)。また、多いグルー プと少ないグループで最も差異の値が大きかった ものは、「おいしいもの」12.5 ポイント、「テーマ パーク」8.9 ポイント、温泉 8.3 ポイントなどとなっ ている。 一方、少ないグループでむしろ回答の多かった ものに「宿泊施設を楽しむ」、「街や都市を楽しむ」、 「何もしていない」などがあり、典型的な観光行 動は多いグループに多く、宿泊施設、都市といっ た施設を楽しむ行動は少ないグループに多く見ら れた。 (4)家族旅行の魅力 家族旅行の魅力をどう捉えているかを旅行経験 グループ別に見てみると、いずれのグループも「美 味しいもの・珍しいものが食べられる」、「精神的 な休養・リフレッシュ」、「景色や建物などを見る、 体験するなど物理的な感動がある」、「今までに 図2 今後の子ども同伴の家族旅行意欲 (2)家族旅行の目的 家族旅行の目的について多くあがったのは、両グループとも「家族一緒の時間をつくる」や「子 どもに色々な体験をさせたい」で、旅行目的とされた項目の順序には大きな違いは見られないが、 ほとんどの項目で多いグループの方が値が高く、多いグループでは家族旅行の目的を比較的明確に 持っているのに対し、少ないグループでは家族旅行の目的を明確に捉えていない可能性が指摘でき る。一方、少ないグループでむしろ値の高かったのは、「親に行きたい場所がある」、「なんとなく」 となっている(図3)。 図3 家族旅行の目的 (3)家族旅行での観光行動 最近の家族旅行において現地で行った観光行動を尋ねると、両グループとも多い順に「おいしい ものを食べる」、「温泉」、「テーマパーク」、「名所」となっており、観光行動においても上がる順序 39.7% 49.2% 47.8% 54.9% 76.0% 31.7% 34.5% 39.2% 37.8% 18.3% 9.5% 6.2% 5.6% 3.5% 1.4% 19.0% 10.1% 7.3% 3.8% 4.3% 全く行ったことがない… あまり行った記憶がない… 時々行った(年1回未満)… まあまあ行った(毎年1回程度)… 頻繁に行った(毎年2回以上)… とてもしたい どちらかといえばしたい あまりしたくない したいができない 40.8% 49.0% 9.3% 5.9% 4.6% 11.9% 3.3% 17.9% 0.0% 1.1% 1.1% 25.2% 38.9% 7.2% 6.9% 5.0% 9.0% 2.2% 9.3% 0.3% 3.4% 0.3% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 子供に色々な体験 家族一緒の時間 子供の行きたい場所 親の行きたい場所 子供の休息 親の休息 恒例 旅行が好き 皆行くから なんとなく その他 旅行経験の多い層 n=547 旅行経験の少ない層 n=321 旅行経験の多い グループn=547 旅行経験の少ないグループn=321
『現代社会研究』13号 ― 68 ― 行ったことのない場所に行く楽しみ」の回答が 5 割を超えた。しかし、魅力と考えるほとんどの項 目で少ないグループの割合が低く、多いグループ に比べ旅行に魅力を感じていることが少ないこと が分かる(表 2)。 また、回答者の割合で見ると、「現地の方・出会っ た方との交流がある」、「いいサービスなどを受け る人的な感動がある」、「同行者との仲を深められ る」、「旅行自体、または何かにチャレンジしたこ との達成感がある」について、多いグループの回 答が少ないグループの 1.4 〜 1.6 倍となっており、 多いグループでは人的交流を魅力と考えている割 合が高い。一方で、「普段乗らない乗り物に乗れ る」、「景色や建物などを見る、体験するなど物理 的な感動がある」といった物理的体験については、 むしろ少ないグループで魅力とする回答が多く ープでは全体に観光行動を行った項目の割合が低くなっており、全体として不活発な旅行となって いることが分かる(表1)。また、多いグループと少ないグループで最も差異の値が大きかったもの は、「おいしいもの」12.5 ポイント、「テーマパーク」8.9 ポイント、温泉 8.3 ポイントなどとなっ ている。 一方、少ないグループでむしろ回答の多かったものに「宿泊施設を楽しむ」、「街や都市を楽しむ」、 「何もしていない」などがあり、典型的な観光行動は多いグループに多く、宿泊施設、都市といっ た施設を楽しむ行動は少ないグループに多く見られた。 表1 家族旅行での観光行動(複数回答 3 つまで) 旅行経験の多いグループ n=547 旅行経験の少 ないグループ n=321 多いグル ープを1と し た 少 な いグルー プの割合 おいしいものを食べる 37.1% 24.6% 12.5 温泉を楽しむ 31.6% 23.4% 8.3 テーマパーク、乗り物などの施設を楽しむ 31.6% 22.7% 8.9 名所などの観光 27.6% 19.9% 7.7 自然を楽しむ 15.9% 11.2% 4.7 海水浴などリゾートを楽しむ 11.3% 6.9% 4.5 現地でのんびりする 9.3% 6.2% 3.1 ホテルや旅館など宿泊施設を楽しむ 8.2% 9.3% -1.1 街や都市を楽しむ 7.9% 8.4% -0.6 現地ならではの体験を楽しむ(つり、キャンプ、農作業など) 6.0% 4.0% 2.0 祭りやイベントを楽しむ 4.4% 3.7% 0.6 スポーツを楽しむ 3.1% 2.8% 0.3 特に何もしていない 1.1% 1.2% -0.1 その他 1.5% 0.9% 0.5 (4)家族旅行の魅力 家族旅行の魅力をどう捉えているかを旅行経験グループ別に見てみると、いずれのグループも「美 味しいもの・珍しいものが食べられる」、「精神的な休養・リフレッシュ」、「景色や建物などを見る、 体験するなど物理的な感動がある」、「今までに行ったことのない場所に行く楽しみ」の回答が5 割 を超えた。しかし、魅力と考えるほとんどの項目で少ないグループの割合が低く、多いグループに 比べ旅行に魅力を感じていることが少ないことが分かる(表2)。 また、回答者の割合で見ると、「現地の方・出会った方との交流がある」、「いいサービスなどを受 ける人的な感動がある」、「同行者との仲を深められる」、「旅行自体、または何かにチャレンジした ことの達成感がある」について、多いグループの回答が少ないグループの1.4~1.6 倍となっており、 多いグループでは人的交流を魅力と考えている割合が高い。一方で、「普段乗らない乗り物に乗れ る」、「景色や建物などを見る、体験するなど物理的な感動がある」といった物理的体験については、 むしろ少ないグループで魅力とする回答が多くなった。また、「旅行には魅力があると思わない」と したのは、圧倒的に少ないグループで12.5%がこう答え、その差は多いグループの 17 倍にも上る。 表2 「旅行の魅力」と考えること 旅行経験の多い グループ n=547 旅行経験の少 ないグループ n=321 多いグループを 1 とし た少ないグループの 割合 美味しいもの・珍しいものを食べられる 66.4% 59.8% 0.90 精神的な休養・リフレッシュ③ 58.0% 55.8% 0.96 景色や建物などを見る、体験するなど物理的な感動がある 57.4% 58.3% 1.01 今までに行ったことのない場所に行く楽しみ 50.1% 50.2% 1.00 現地ならではのお土産を買える 35.6% 30.8% 0.87 知らないことを見たり聞いたりできる(知識が深まる) 27.2% 25.2% 0.93 同行者との仲を深められる 27.2% 19.0% 0.70 有名な(話題の)場所(宿泊施設を含む)に行くことの楽しみ 25.6% 22.4% 0.88 身体的な休養 19.4% 16.5% 0.85 人が知らない場所に行く、体験することの楽しみ 18.5% 14.0% 0.76 旅行自体、または何かにチャレンジしたことの達成感がある 14.6% 10.3% 0.70 普段乗らない乗り物に乗れる 14.6% 15.6% 1.07 現地の方・出会った方との交流がある 13.2% 8.1% 0.62 いいサービスなどを受ける人的な感動がある 12.1% 8.1% 0.67 人に自慢できる(Facebook に公開するなど) 2.4% 0.9% 0.39 旅行には魅力があると思わない 0.7% 12.5% 17.04 (5)家族旅行の阻害要因 いずれのグループとも、家族旅行の妨げとして最も多くあがったのが「費用」で60%を超えた。 次いで、「親の時間」、「子どもの時間」と時間的要因が多くあがり、阻害要因とした順序に大きな差 異はなかったが、少ないグループで特徴的となったのは「プランや手配が面倒」をあげた層が9.0% あり、多いグループと比較し1.6 倍にも上った(図 4)。また、「特に妨げはない」としたのもむし ろ少ないグループで多くなった。 図4 家族旅行の妨げ 5. 子ども時代の旅行経験による旅行意欲への影響とその要因分析 ではなぜ、子どもの頃の旅行経験によって観光行動や捉え方にこうした差異が生じ、現在の旅行 意欲にも影響を及ぼすのだろうか。アンケートから明らかになった少ないグループの特徴と傾向に ついて、先行研究による観光行動心理を参照し、その要因を分析したい。 60.5% 32.5% 37.8% 6.0% 0.9% 5.5% 3.3% 0.5% 3.8% 62.0% 31.2% 32.4% 4.0% 1.6% 9.0% 4.0% 1.9% 5.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 費用 子どもの時間 親の時間 子どもが行きたがらない 旅行よりやらせたいことがある プランや手配が面倒 家を留守にできない 旅行が好きではない 特に妨げはない 旅行経験の多い層… 旅行経験の少ない層…
子ども時代の旅行経験別に見る旅行意欲の差異とその要因 ― 69 ― なった。また、「旅行には魅力があると思わない」 としたのは、圧倒的に少ないグループで 12.5%が こう答え、その差は多いグループの 17 倍にも上 る。 (5)家族旅行の阻害要因 いずれのグループとも、家族旅行の妨げとして 最も多くあがったのが「費用」で 60%を超えた。 次いで、「親の時間」、「子どもの時間」と時間的 要因が多くあがり、阻害要因とした順序に大きな 差異はなかったが、少ないグループで特徴的と なったのは「プランや手配が面倒」をあげた層が 9.0%あり、多いグループと比較し 1.6 倍にも上っ た(図 4)。また、「特に妨げはない」としたのも むしろ少ないグループで多くなった。 5.子ども時代の旅行経験による旅行意欲へ の影響とその要因分析 ではなぜ、子どもの頃の旅行経験によって観光 行動や捉え方にこうした差異が生じ、現在の旅行 意欲にも影響を及ぼすのだろうか。アンケートか ら明らかになった少ないグループの特徴と傾向に ついて、先行研究による観光行動心理を参照し、 その要因を分析したい。 (1)「少ないグループ」の特徴 本調査において、多いグループと比較した場合、 少ないグループの特徴として以下の点を指摘する ことができる。 ① 明確な旅行目的を持つ割合が低く、観光行動 が不活発 旅行目的、家族旅行での観光行動においては、 いずれも多いグループと比較して選択された割合 が低い。つまり、少ないグループでは、明確な旅 行目的を持って家族旅行を捉えている割合が低 く、現地での観光行動も活発に行われていないと いえる。また、観光行動では、「宿泊施設を楽しむ」、 「街や都市を楽しむ」、「何もしていない」で少な いグループの割合が高く、施設や都市を楽しむ傾 向にある。 ② 旅行に対して魅力と感じることが少ない 旅行の魅力とされるほとんどの項目で、少ない グループが選択した割合が低く、多いグループに 比べ旅行に魅力を感じていない。また、多いグルー プの回答が人的交流を魅力と考えている割合が高 い一方で、乗り物や物理的感動など物理的体験を 魅力と評価する傾向がみられた。 ③ 阻害要因として「面倒」があがる 家族旅行の妨げとなることとして費用や時間が 多くあがったが、多いグループと比較して「プラ ンや手配が面倒」をあげた割合が高い。 (2)先行研究(観光行動心理) 佐々木土師二(2007)によれば、旅行の際に考 えねばならないことは多く、「どこへ」、「どんな 行き方で」、「いつ」、「どのくらいの期間」、「どの 程度の費用で」、「誰と」、など実に多面的で、複 雑であり、種々の側面で選択を繰り返すことが必 表2 「旅行の魅力」と考えること 旅行経験の多い グループ n=547 旅行経験の少 ないグループ n=321 多いグループを 1 とし た少ないグループの 割合 美味しいもの・珍しいものを食べられる 66.4% 59.8% 0.90 精神的な休養・リフレッシュ③ 58.0% 55.8% 0.96 景色や建物などを見る、体験するなど物理的な感動がある 57.4% 58.3% 1.01 今までに行ったことのない場所に行く楽しみ 50.1% 50.2% 1.00 現地ならではのお土産を買える 35.6% 30.8% 0.87 知らないことを見たり聞いたりできる(知識が深まる) 27.2% 25.2% 0.93 同行者との仲を深められる 27.2% 19.0% 0.70 有名な(話題の)場所(宿泊施設を含む)に行くことの楽しみ 25.6% 22.4% 0.88 身体的な休養 19.4% 16.5% 0.85 人が知らない場所に行く、体験することの楽しみ 18.5% 14.0% 0.76 旅行自体、または何かにチャレンジしたことの達成感がある 14.6% 10.3% 0.70 普段乗らない乗り物に乗れる 14.6% 15.6% 1.07 現地の方・出会った方との交流がある 13.2% 8.1% 0.62 いいサービスなどを受ける人的な感動がある 12.1% 8.1% 0.67 人に自慢できる(Facebook に公開するなど) 2.4% 0.9% 0.39 旅行には魅力があると思わない 0.7% 12.5% 17.04 (5)家族旅行の阻害要因 いずれのグループとも、家族旅行の妨げとして最も多くあがったのが「費用」で60%を超えた。 次いで、「親の時間」、「子どもの時間」と時間的要因が多くあがり、阻害要因とした順序に大きな差 異はなかったが、少ないグループで特徴的となったのは「プランや手配が面倒」をあげた層が9.0% あり、多いグループと比較し1.6 倍にも上った(図 4)。また、「特に妨げはない」としたのもむし ろ少ないグループで多くなった。 図4 家族旅行の妨げ 5. 子ども時代の旅行経験による旅行意欲への影響とその要因分析 ではなぜ、子どもの頃の旅行経験によって観光行動や捉え方にこうした差異が生じ、現在の旅行 意欲にも影響を及ぼすのだろうか。アンケートから明らかになった少ないグループの特徴と傾向に ついて、先行研究による観光行動心理を参照し、その要因を分析したい。 60.5% 32.5% 37.8% 6.0% 0.9% 5.5% 3.3% 0.5% 3.8% 62.0% 31.2% 32.4% 4.0% 1.6% 9.0% 4.0% 1.9% 5.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 費用 子どもの時間 親の時間 子どもが行きたがらない 旅行よりやらせたいことがある プランや手配が面倒 家を留守にできない 旅行が好きではない 特に妨げはない 旅行経験の多い層…旅行経験の多い 旅行経験の少ない層… グループ 旅行経験の少ないグループ
― 70 ― 要になるという。また、こうした種々の属性(目 的地、同行者、期間、費用など)は、旅行経験に よってある程度セット化され、「前回の北海道旅 行」というような「経験事例(ケース)」を成り 立たせ、経験を積み重ねることによって、ひとつ ひとつの属性を選択するのではなく、ケースを基 本パターンとしてそれを部分的に変更・修正して 計画することが多くなると論じている。 (3) 旅行意欲への影響とその要因 少ないグループで見られた特徴を前項の先行研 究と参照し、子どもの頃の旅行経験が現在の旅行 意欲に影響を及ぼす要因を分析した。 ① 不明確な旅行目的と不活発な観光行動の要因 少ないグループにおいて、明確な旅行目的を持 つ割合が低く、観光行動が不活発であるのは、旅 行目的を設定し、観光行動を活発に楽しむには「経 験事例(ケース)」が必要であることがひとつの 要因と考えられる。佐々木(2007)が指摘するよ うに、旅行においはプラン立てや手配、観光行動 など多面的で複雑な様々な側面が存在するため、 自分に合った楽しみ方をするためには、前回の経 験事例(ケース)を参照し旅行に必要な要素を選 択していくことになる。少ないグループのケース では、参照するための経験事例(ケース)が少な いことにより観光行動の選択にも制約が生じ、観 光行動でシュミレーションできることも少ないた め観光行動が不活発となり、ひいては旅行目的も 明確な設定が難しくなっていると考えられる。 また、今回のアンケート調査で、旅行経験の多 いグループに対して「子ども時代の旅行で印象に 残っていること」を尋ねたところ、図 5 のような 然を楽しむ」、「名所を観る」などは、自身の経験事例(ケース)とするために旅行回数が多く必要 であるといえる。これは、少ないグループの観光行動の特徴として「宿泊施設を楽しむ」、「街や都 市を楽しむ」といったいわゆるハードを楽しむものが、多いグループと比較して多かったことから も相関性を指摘することが出来るだろう。 図5 子どもの頃の旅行で印象に残っていること ② 旅行に魅力を感じることが少ない要因 前項で指摘したように、旅行の経験事例(ケース)が少ないことにより、旅行経験の多い層と比 較し観光行動に制約が生じることになるが、その結果さまざまな観光行動を経験する機会が減り、 旅行の魅力といわれるものに接する機会も少なくなっている可能性が指摘できる。 ③ 旅行実施に「面倒」を感じる要因 少ないグループで特に「プランや手配が面倒」という回答が比較的多くなったのは、旅行の経験 事例(ケース)が少ないため、実際の旅行を実施するに当たり、種々の属性(目的地、同行者、期 間、費用など)について各々に対しひとつひとつの検討が必要になってくるため煩雑な作業が求め られることによると考えられる。これにより多いグループに比較して検討せねばならないことが多 35.6% 36.5% 12.5% 22.6% 8.2% 3.4% 2.9% 8.2% 4.8% 21.2% 14.9% 3.8% 4.3% 1.0% 31.3% 28.9% 13.6% 17.7% 8.8% 4.1% 2.9% 6.2% 5.0% 21.2% 15.3% 5.3% 2.7% 2.9% 23.3% 26.3% 17.7% 16.8% 6.5% 2.2% 3.9% 4.7% 4.7% 25.0% 11.2% 2.2% 2.6% 7.8% 自然を楽しんだこと 名所などの観光をしたこと 温泉を楽しんだこと おいしいものを食べたこと 街や都市を観光したこと スポーツをしたこと 祭りやイベントを楽しんだこと 現地ならではの体験(つり、キャンプ、農 作業など)をしたこと 現地でのんびりしたこと テーマパークなどの施設 旅館やホテルなどの施設 一緒に行った同行者のこと 旅行中のアクシデントやトラブルのこと 分からない・覚えていない 頻繁に行った(毎年2回以上) 208 まあまあ行った(毎年1回程度) 339 時々行った(年1回未満) 232
子ども時代の旅行経験別に見る旅行意欲の差異とその要因 ― 71 ― 結果となった。「自然を楽しむ」、「名所を観る」 といった観光行動は、子ども時代の旅行経験が多 いほど印象に残っており、一方で「テーマパーク」 は時々行った程度でも覚えているという結果と なった。つまり、旅行の典型的な観光行動である 「自然を楽しむ」、「名所を観る」などは、自身の 経験事例(ケース)とするために旅行回数が多く 必要であるといえる。これは、少ないグループの 観光行動の特徴として「宿泊施設を楽しむ」、「街 や都市を楽しむ」といったいわゆるハードを楽し むものが、多いグループと比較して多かったこと からも相関性を指摘することが出来るだろう。 ② 旅行に魅力を感じることが少ない要因 前項で指摘したように、旅行の経験事例(ケー ス)が少ないことにより、旅行経験の多い層と比 較し観光行動に制約が生じることになるが、その 結果さまざまな観光行動を経験する機会が減り、 旅行の魅力といわれるものに接する機会も少なく なっている可能性が指摘できる。 ③ 旅行実施に「面倒」を感じる要因 少ないグループで特に「プランや手配が面倒」 という回答が比較的多くなったのは、旅行の経験 事例(ケース)が少ないため、実際の旅行を実施 するに当たり、種々の属性(目的地、同行者、期 間、費用など)について各々に対しひとつひとつ の検討が必要になってくるため煩雑な作業が求め られることによると考えられる。これにより多い グループに比較して検討せねばならないことが多 く作業も煩雑で、それが「面倒」という意識につ ながっているのだろう。また、多いグループと比 較し不活発であった観光行動においても、同様に 経験事例(ケース)が少ないことで観光行動が具 体的にイメージしづらく、行動にあたって調べな ければならない場合も多く生じるため面倒と感じ る割合も増えると考えられる。 6.まとめ 以上のように、旅行は、一般の消費行動やレク リエーションと比較して、実施にあたって検討せ ねばならない事項が多面的、複雑である。また、 その検討に際しては種々の側面で選択を繰り返す ことが必要であるため、過去の経験事例(ケース) がきわめて重要であるといえる。従って、旅行経 験が少ない場合に旅行意欲も低くなるのは、旅行 の経験事例(ケース)が少ないことで、観光行動 や目的の設定に制約が生じ、その結果として、旅 行経験の多いグループと比較して旅行で体験でき ることが少なく、十分には旅行を楽しめていない 可能性が指摘できる。また、このように旅行での 様々な場面に接する機会も少ないため、旅行経験 が少ない層では旅行に魅力を感じることも少なく なり、それが今後の旅行意欲にも影響しているも のと考えられる。 つまり、旅行を楽しむためには実際の旅行をあ る程度シュミレーション(イメージ)できること が重要であり、これには過去の経験事例(ケース) が大きく関与するため、経験事例(ケース)の多 少によって観光行動や意欲に差異が生じると結論 付けられる。 参考・引用文献 森下晶美「子ども時代の旅行経験と家族旅行に対する価値 観について」、観光学研究第 13 号、東洋大学国際地域 学部、2014 年 3 月、pp115-128 「日本人の観光旅行の状況に関する調査・分析等報告書」、 国土交通省観光庁、平成 21 年 3 月 「JTB Report 2013 日本人海外旅行のすべて」、JTB 総合 研究所、2013 年 7 月 林 幸史、藤原武弘「観光地での経験評価が旅行満足に与 える影響−観光動機と旅行経験の観点から−」、関西 学院大学社会学部紀要、2012 年 3 月 船津衛ほか「自我・自己の社会心理学」、北樹出版、2002 年 6 月 森下晶美「成長期の家族旅行経験と個人の志向・性格との 関連性について」、観光学研究第 10 号、東洋大学国際 地域学部、2011 年 3 月、pp95-108 佐々木土師二「観光旅行の心理学」、北大路書房、2007 年 3 月、pp104-105,108-109 佐々木土師二「旅行者行動の心理学」、関西大学出版部、 2000 年 5 月