淡 水 産二 枚 貝 の生理 化 学 的研 究 一V
イ ケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 の 呼 吸 に お け る内 在 基 質 に つ い て
東
怜
Physiological Chemistry of the Fresh・Water Bivalves・ ・V
,
Endogenous Substrates of Respiration in the Spermatozoa of Hyriopsis ∬ 〃8981',mother of pearl oyster
Satoru Higashi 曾 精 子 は 適 当 な 条 件 の も と で 活 濃 な 運 動 を 営 む こ と は よ く知 られ て い る が,そ の 活 動 の エ ネ ル ギ ー 源 を 外 部 か ら得 て い る 場 合 と,内 在 基 質 を 利 用 し て い る 場 合 が あ る 。 体 内 受 精 を す る 哺 乳 動 物 の 精 子 は,清 清 に 炭 水 化 物 が 多 量 に 含 ま れ て い て,無 気 的 に も好 気 的 に も 活 溌 な 運 動 を 行 う こ と が 出 来 る が,こ の 清 清 を と り 除 い て し ま う と,酸 素 が あ る 場 合 に の み 生 存 出 来 る よ う に な る 。 ・こ れ は,精 子 自体 の 細 胞 内 構 成 物 質 を 運 動 の エ ネ ル ギ ー 源 と し て 好 気 的 に 酸 化 す る よ う に な る た あ で あ る 。 貝 類 の よ う な 水 棲 動 物 で は, 産 卵 期 に 水 中 に 放 出 さ れ た 精 子 は 浮 遊 し な が ら 一 定 期 間 活 動 す る こ と が 出 来 る の で あ る が,こ の 間 の エ ネ ル ギ ー 源 は 水 中 か ら得 る こ と は 出 来 な い 。 従 っ て,精 子 自体 の 基 質 が そ の 主 な 呼 吸 の エ ネ ル ギ ー 源 と 考 え る べ き で あ る 。 こ れ ま で の 研 究 に よ れ ば,呼 吸 の 内 在 基 質 と し て 糖 質 を 利 用 す る とす る 説 と,燐 脂 質 を 利 用
す る と す る 説 が あ る 。Barron and Goldingerl),
Hayashi2), Spikes')は ウ ニ 精 子 に つ い て,そ の
RQと 糖 量 を 測 定 し て,消 費 さ れ る も の は 炭 水
化 物 の み で あ る と 考 え た 。 こ れ に 反 し,Lardy
and Philips4)は 牛 精 子 に つ き, Rothschild and
Cleland5), Mohri6)は ウ ニ 精 子 に つ き, Bern・
stein?)は カ エ ル 精 子 に つ き,そ の 酸 素 消 費 量 の
変 化 と 燐 脂 質 の 減 少 と か ら,ウ ニ や カ エ ル 精 子
の 主 な エ ネ ル ギ ー 源 は 燐 脂 質 で あ る と し た 。
Hartree and Mann')Lovern et a19)は 洗 滌 し
た 羊 精 子 で は,燐 脂 質 の 一 種 の Plasmalogen が 好 気 的 代 謝 の 主 な 基 質 で あ る と報 告 し て い る 。 一 方,吉 田,川 越10),Bornstein and Steberlu), Norman et all')は,馬 精 子 の 運 動 に よ る 燐 脂 質 の 増 減 を 測 定 した が 有 意 義 な 変 化 は 認 め られ な か っ た と 云 う。 以 上 の よ う に,哺 乳 動 物 や ウ ニ 精 子 に 関 して は,好 気 的 代 謝 に お け る 呼 吸 の 内 在 基 質 に つ い て 多 く の 研 究 が 報 告 さ れ て い る が,貝 類 に つ い て は 海 産 の カ キ 精 子 以 外 は あ ま り発 表 さ れ て い な い 。 筆 者 は,び わ 湖 特 産 種 で あ り,か つ 淡 水 真 珠 母 貝 と して 重 要 な イ ケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 に つ き, 呼 吸 に お け る 内 在 基 質 を 明 らか に す る た あ に 以 下 の 実 験 を 行 っ た 。
実験材 料および方法
昭 和37年3月 び わ 湖 南 部 で 採 集 し た 殻 長10∼ 12cmの 成 熟 し た イ ケ チ ョ ウ ガ イ の 雄 を 用 い た 。 材 料 は 現 場 よ り 持 ち 帰 っ た 後,閉 殻 筋 を メ ス で 切 り 放 っ て,精 巣 を 切 開 し,流 出 し て く る 精 液 を 集 あ,ま ず モ ス リ ン布 で 酒 過 す る 。 次 に10℃ に 冷 し な が ら1,500r.p.m.で10分 間 遠 沈 して 上 液 を 捨 て,沈 澱 部 に 淡 水 二 枚 貝 用 生 理 塩 液 を 加 え て 液 量 が 元 の もの と 等 し く な る よ う に 調 節 し,こ れ を 再 び1,500r.p.m。 で2分 間 遠 沈 し て 沈 澱 部 に 上 層 と 等 量 の 生 理 塩 液 を 加 え て 浮 遊 さ し た もの を 精 子 浮 遊 液 原 液 と した 。 呼 吸 の 測 定 に は,生 理 塩 液 で さ ら に5倍 に 希 釈 し て,こ れ に50単 位/1ml.の ペ ニ シ リ ン を 添 加 し た も70
滋 大 紀 要
第 13 号 1963 の を 用 い た 。 精 子 数 はThomaの 血 球 計 を 用 い て 算 定 した 。 酸 素 の 吸 収 の 測 定 に はWarburgの 検 圧 計 を 用 い20℃ で7時 間 保 温 振 と う し た 。 反 応 容 器 に は 小 型 の 全 量 約15m1の も の を 使 用 した 。 燐 酸 化 合 物 はSchneider")の 方 法 に従 っ て 分 画 し,各 面 分 の 燐 はKing's)法 で 測 定 した 。 無 機 燐 酸 とATPはSchneider法 の 酸 溶 性 燐 画 分 か ら一 部 と りBarth and Jaegerl6)法 に よ り 分 析 し た 。 遊 離 燐 脂 質 の 測 定 に は 冷 エ ー テ ル で 4度 抽 出 して 燐 を 測 定,全 燐 脂 質 は エ タ ノ ー ル で3度,沸 騰 エ タ ノ ー ル ー エ ー テ ル(3:1) で3度 抽 出 して 燐 を 測 定 し た 。 糠 星 の 定 量 に は ア ン ス ロ ン法17)お よ び フ ェ ノ ー ル 硫 酸 法18)を 用 い た 。実験結果お よび考察
イ ケ チ ョウ ガイ 精 子 の呼 吸 は Ω。2で1.0前 後
で,同
じ水 棲 無 脊 椎 動 物で もウ ニ や カキ の精 子
に く らべ 呼 吸 は は るか に低 い が,極 め て 低 濃 度
の青 酸 に よ って も呼 吸 と運 動 が 同 時 に阻 害 され
る こと よ り,そ の 活澱 な運 動 の エ ネル ギ ー は 好
気 的代 謝 に 大 部 分 が 依 存 して い る と 考 え られ
る19)。イ ケ チ ョウ ガ イ精 子 の 呼 吸 の 内在 基 質 を
知 る 目的 で,運 動 と燐 脂質 お よ び 糖 の 変 化 と の
関 係 を しらべ た。
1)精
子 の運 動 に よ る 燐酸 化 合物 画 分 の 変 化
精 子 原 液 を 約5倍
に 希 釈 した もの2ml.を
Warburgの
反 応 容 器 に入 れ,7時
間20℃ で 保
温振 邊 させ た 後,と
り出 して 燐 酸 化 合 物 画 分 の
変 化 を しらべ た(第1表)。
この 表 か ら明 らか な よ う に,核 酸 お よ び燐 蛋
白 は大 体 一 定 で あ る。 これ に反 して,燐 脂 質 は
減少 し,酸 溶 性 燐 が 増 加 して い る。 ま た,無 機
燐 酸 は 相 当増 加 す る が,ATPは
減 少 して い る 。
この 事 実 は,精 子 の 運 動 に よ って 燐 脂 質 が分 解
され,グ
リ七 回ホ ス ホ リー ル コ リンや ホ ス ホ リ
ー ル コ リン の よ うな無 機 燐 酸 に な り酸 溶 性 燐 画
分 に あ らは れ て い る こ とを 示 して い る。
2)精
子 の 酸 素 消 費 量 と 燐 脂 質 量 の 変 化 との 関
係
精 子 希釈 液 を20℃ で7時 間 保温 振 盪 した間 に,
精 子 が 実 際 に消 費 した 酸 素 量 と燐 脂 質 の減 少 か
ら計 算 した理 論 的 酸 素 消 費 量 を し らべ た。 そ の
1例 を 次 の 第2表
に示 す 。
第2表 精 子 の燐 脂 質 の代 謝 と呼 吸
1)精
子5倍 希 釈 液(ペ
ニ シ リ ン50単 位/ml.
を 含 む)
… … …2m1
2)精
子 数 … … …4.2×109
3)乾
燥 重 量 … … …24.5mg.
4)運
動 前 精 子 の燐 脂 質 量 … … …1.313mg.
5)運
動 後精 子 の 燐 脂 質 量
… … …1.063mg.
6) 7時 間 に お け る燐 脂質 代 謝 量 …0.250mg.
7) 燐 脂 質 代 謝 量 か ら計 算 した 理 論 的酸 素 消
費 量
・
… … ・
一4001.
8)、 精 子 の消 費 した 酸 素 量 … … …480μ1
,第1表 精子の運動による燐酸化合物面分の変化
精 子 濃 度 時 間 実 験 番 号 n/m.1. (分)酸
溶
性 燐
全焼
無機燐
△7燐
燐脂質燐 燐 蛋 白燐 核酸 燐
1 2 3 4 3.8×109 4.1×109 4.1×109 4.3×109 0 420 0 420 0 420 0 420 98.2 138.6 110.0 152.3 109.0 155.2 113。6 153.2 25.0 56.2 30.1 70.2 28.1 69.5 20.6 58.3 16.7 11。4 16。8 13.1 18.2 12.3 、19.1 12.6 92。1 71.3 104。2 80.6 1062 79.8 109.2. 81.4 44.2 50.1 44.6 432 48.3 46.5 47。2 47.0 651.1 652.0 662.3 658.9 661.5 659.3 665.2 664。1 精 子5倍 希 釈 液2m1。 をWarburg反 応 容 器 に 入れ20℃ で7時 間 保 温 振 盪,後 精 子 を と り出 しSchneider 法に 従 い 燐 酸 化合 物 画 分 に分 画 し,各 成 分 の 燐 を 測 定。 測定 値 はす べ て μg./1010精 子 で示 す 。'第3表 精子 の燐脂質代 謝と呼吸量
実験番号
時 燐 脂 質(分) (μg./101。間 燐 脂 質 燐精 子) (mg./101。精 子) 酸 素 消 費 量 理 論 的 酸 素 量 (ml./1010精 子) (MI./101。 精 子)R(02)
5 6 7 8 0 420』 0 420 0 420 0 420 98.0 73。0 106.4 82.3 107.3 82.2 102.5 78.0 2。450 1。840 2.663 2.058 2.682 2.062 2.562 1.950 1.025 1.102 1.116 1.102 0.976 0.968 0.992 0.979 0。95 0.87 0.90 0.89 ● イケ チ ョ ウ ガイ精 子 希 釈 液2ml.をWarburgの 反応 容 器 に 入れ20℃ で7時 間保 温 振盪 した後,精 子 を と り出 して 燐 脂 質 を 抽 出 し燐 を測 定。 同 時に そ の 間 に お け る精 子 の 酸素 消 費 量 を 測定 した 。R(02)は 減 少 した燐 脂 質 量 に 対 応 す る理 論 的酸 素 量 を 実 際 の精 子 酸 素 消 費 量 で 除 した値 。9)新
鮮 精 子 の燐 脂 質 重 量%
… … …5,4%
ロ 110)運 動 精 子 の 燐 脂 質 重 量% … … …4 .3% 燐 脂 質1mg.の 酸 化 燃 焼 に は1.6m1の 酸 素 が 必 要 と さ れ て い る か ら20),精 子 燐 脂 質 の 代 謝 量0.25mgに 対 して40011.の 酸 素 が 必 要 で あ る 。 実 測 値 は480μZで あ る か ら,吸 収 さ れ た 酸 素 の 大 部 分 は 燐 脂 質 の 酸 化 燃 焼 に 依 っ て 使 は れ た と す れ ば 一 致 す る 。 第3表 は 同 様 に して 行 っ た 実 験 を ま と あ た も の で あ る 。3)遊
離 燐 脂 質 の 変 化
以上 の 実 験 よ り,精 子 は運 動 の エ ネ ルギ ー源
に燐 脂 質 を 利 用 して い る こ とが 推 定 出来 る が,
燐 脂 質 には 蛋 白 と結 合 してlipoproteinと
して
存 在 す る もの と,遊 離 状 態 で 存 在 す る もの が あ
る。 こ の い つ れ の 形 の もの が 利 用 され るか を 明
らか にす る た あ に,遊 離 燐 脂 質 を 抽 出 して 運 動
の 前 後 に お け る変 化 を しらべ た(第4表)。
第4表 全燐脂質 と遊離燐脂質 の変化
実験番 号
全燐脂質
遊離燐脂質
運動前
運動後
運動前
運動後
9 10 98.8 73.0 13.2 106.1 82.2 17.1 6.5 9.3 イ ケ チ ョ ウ ガイ精 子 希 釈 液2m1.をWarburgの 反応 容 器 に入 れ,20℃ で7時 間 保 温振 盪,後 精子 を と り出 して 全燐 脂 質 と遊 離燐 脂 質 を 抽 出 して燐 を定 量 。燐 の値 は μg/1010精 子 で示 す 。 新 鮮 精 子 で は 遊 離 糖 脂 質 は 全 燐 脂 質 の%程 度 し か 存 在 して い な い が,運 動 精 子 で は 減 少 して い る 。 し か し,そ の 量 だ け で は 精 子 の 酸 素 消 費 量 の す べ て を 説 明 す る こ と は 出 来 な い 。 精 子 細 胞 のlipoproteinも 何 等 か の 刺 戟 で 結 合 が 弱 め ら れ て 燐 脂 質 を 遊 離 し,そ れ が 酸 化 さ れ る も の と 考 え ら れ る 。 ウ ニ 精 子 は,受 精 に 際 し,卵 表 層 のlipoproteinよ り 燐 脂 質 を 遊 離 さ 尽 る 作 用 を も っ て い る こ と が 知 ら れ て い る21)か ら,イ ケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 も 同 様 の 機 能 を 有 す る も の と 思 わ れ る 。 運 動 に よ る 燐 脂 質 成 分 の 質 的 な 変 化 に つ い て は,毛 利22)は ウ ニ 精 子 で 各 種 の 燐 脂 質 が 一 様 に 変 化 を 受 け る こ と を 見 て い る が,イ ケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 で は か な り選 択 性 を 有 して い る 。 即 ち, ケ イ 酸 ク ロ マ トグ ラ フ 法 で し ら べ る と,燐 脂 質 成 分 の 中 で 一 番 変 動 の 著 し い 画 分 は,ク ロ ロ ホ ル ム ー メ タ ノ ー ル(1:1)で 溶 出 さ れ る も の で あ る 。 こ の 西 分 に は セ リ ン,エ タ ノ ー ル ア ミ ン の 外 に リ ジ ン が つ ね に 含 ま れ て い て,ク ロ マ ト法 に よ る 分 離 は 不 可 能 で あ る 。.イケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 で は 単 純 な 燐 脂 質 の 状 態 で 個 々 に は 存 在 して い な い の か も しれ な い23)。 い つ れ に せ よ こ の よ う な 特 異 的 な 燐 脂 質 が イ ケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 に 存 在 して い る こ と は 興 味 の あ る こ と で あ る 。4)糖
量 の 変 化
イ ケ チ ョ ウガ イ精 子 の 希 釈 液2mZをWarburg
の 反 応 容 器 に入 れ,20℃ で7時 間 好 気 的 に 保 温
72
滋 大 紀 要
第 13 号 1963振 盈 した 後,精
子 を と り 出 し 糖 量 を 測 定 した
(第5表)。
第5表
精子 の糖量 の変化 と酸素 消費量
灘
・
静
騨(・1/・
曙
子)。
ω
実測値 理論値
って い るが,運 動 に よ って 減 少 す る量 は 精 子 の
酸 素 消 費 量を 説 明 す る の に不 充 分 で あ る。
6. イ ケ チ ョウ ガ イ精 子 の呼 吸 に お け る 内在
基 質 は,燐 脂 質 が主 なも の で あ る と考 え ら れ る 。
Summary 11 0 4.250 420 3.850 12 0 4.180 420 3.831 1,027 0.300 0.29 0.998 0.263 0.26 イ ケ チ ョ ウ ガイ精 子5倍 希 釈 液2皿1.を20℃ で7 時 間 保 温振 撮 した後,精 子 を と り出 し,脂 質 を 除 い た後 加水 分 解 す る こ とな しに フ ェ ノー ル硫 酸 法 で 糖 量 を 測定 した。 イ ケ チ ョ ウ ガ イ の 新 鮮 精 子 に は,糖 が 乾 燥 重 量 の10%近 く含 ま れ て い る 。 ウ ニ5)や カ キ9)の 精 子 で は,糖 量 は1%以 下 で あ る か ら,こ の 含 有 量 は 非 常 に 高 い も の で あ る 。 しか し,第5表 か ら分 か る よ う に,運 動 に よ る 減 少 は わ ず か で あ り,そ の 量 よ り,炭 化 化 物1mgの 酸 化 燃 焼 に は0.75m1の 酸 素 が 消 費 さ れ る と して 計 算 したR (02)は0.3内 外 と な る5)。 こ の 値 で は 精 子 の 酸 素 消 費 量 の す べ て を 説 明 す る こ と は 難 か しい 。 結 局,イ ケ チ ョ ウ ガ イ 精 子 の 呼 吸 に お け る 内 在 基 質 と して は,糖 も 幾 分 は 関 係 して い る だ ろ うが,主 た る も の は 燐 脂 質 で あ ろ う。要
約
1. イケ チ ョ ウガ イ精 子 の 呼 吸 にお け る 内在
基 質 につ い て し らべ た。
2.精
子 の 希 釈 液 を 保 温振 僻 して燐 酸 化 合 物
面 分 に分 画 し,運 動 の前 後 に お け る燐 を定 量 し
た結 果,燐 脂 質 面 分 は 減 少 し,酸 溶 性 燐 と無機
燐 酸 面 分 が 増 加 して い た。
3. 燐 脂質 の 誠 少 量 か ら理 論 的 に計 算 した 酸
素 の 吸収 量 は,実 際 に精 子 が 吸収 した 酸素 消 費
量 と大 体 一 致 して い た。
4.精
子 の遊 離 燐 脂 質 は全 燐 脂 質 の20%し
か
な く,そ の 誠少 量 だ けで は精 子 の 酸素 消 質 量 を
説 明 す る こ とは 出 来 ない 。 遊 離 燐 脂 質 の み な ら
ず,lipoproteinの
燐 脂 質 も 酸 化 され る もの と
思 わ れ る。
5.糖
は新 鮮 精 子 で は 乾 燥 重 量 の10%も
存 在
し,他 の生 物 に くらべ て 非 常 に高 い 含 有 量 を 持
1.The endogenous substrates of the respiration in the spermatozoa of Hyrio∬ ム56乃legeli, mother of pearl oyster, was examined.
2. Phosphorus analyses before and after 三ncu-bation of sperm suspensions revealed the decrease in phospholipid phosphorus and the increase in total acid-soluble phosphorus and inorganic phosphorus. 3.The free phospholipid amounted to about 20
%of total phospholipid. The combustion of the free phospholipid, however, was found to be insu. f丘cient to account for the actual oxygen uptake, suggesting the utilization of the bound phospholipid.' 4.Assuming that the combution of l mg. phos・
pholipid requires 1.6ml. oxygen, the ratio of the theoretical oxygen uptake (associated with the observed disappearance of pbospbol量pid) to・the of)served oxygen uptake was O.90.
5.The carbohydrate content of the spermatozoa amounted to 10%of dry we玉ght of spermatozoa. A decrease of the carbohydrate was also observed after incubation, but it was too small as compared to the high rate of oxygen uptake。 This fact su・ ggest that carbohydrate is not the principal endo・ genous substrate of the spermatozoa.in 耳yriopsis
∫訪1解 猷
6.It is concluded that the oxidative breakdown of phospholipid is the principal source of the energy required for movement.
文
献
1)Barron, E. S.G. and Goldinger, J. M.:Proc. Soc. Fxp. Biol. Med.,48,570(1941)
2) Hayashi, T.:Biol. Bull.,90,177(ユ946) 3) Spikes, J.D.:Amer. Nat.,83,285(1949)
4) Lardy, H. A. and Philips, P. H.:Amer. J. Physiol.,134,542(1941)
5)Rothschild, Jord and Cleland, K.W.:J。 Exp.` Biol.,29,66(1952)
6)Mohri, H。:Jour. Fac. Sci. Univ. Tokyo, IV, 8ジ51 (1957)
噂
,
7) Bernstein, G.S.:Biol. Bull.,107,305 (1954) 8)Hartree, F. F. and Mamm, T.:Biochem. J., 71,423 (1959)
9) Lovern, J. A., Olley, J., Hatree, E. F., and Mann, T.:Biochem. J.,67,630(1957)
10)吉 田,川 越:医 学 と 生 物 学,29,128(1953)
11) Bomstein, R.A., and Steberl, F.A.,:Fxp. Cell Res.,12,254(1957)
12) Norman, C., Goldberg, F., and Porter丘eld,1. D.:Anat. Rec.,137,383(1960)
13)Humphrey, G.F.=Austral. J. Fxp. Biol. Med. Sci.,28,1(1950)
14)Schneider, W. C.:J. Biol. Chem.,164,747 (1946)
15) King, F. J。:Biochem. J.,26,292(1932)
16) Barth, L. G. and Jaeger, L.:Physiol. Zool., 20,133 (1947)
17) Radin, N.S., Lavin, F.B., and Brown, J.R.:J. Biol. Chem.,217,789(1955)
18)'Dubois, M., Gills, K. A., Gills, K. A., Hamil・ ton, J.K., Rebers, P.A., and Smith, F. Anal. Chem.,28,350(1956)
19)河 合 清 三,東 怜:生 化 学,31,97(1959)
20)Maclean, H. and Maclean,1. S.:Lecithin and Allied Substances. London (1927) 21)Maggio, M and Monroy, A.:Exp. Cell Res., 8,240 (1955)
22)Mohri, H.:Sci. Papers Coll. Gen Educ. Univ. Tokyo,11,109(1961)
23)板 坂 修,東 怜,堀 太 郎:生 化 学,35,391(1962)