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資本市場のグローバリゼーションによる市場指向型会計の普遍化と会社規制型会計との調整(野中大輔講師追悼号)

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資本市場のグローノヾリゼー シ ョン

による市場

化 と

会社 規

I は じaめに ドイツでは,会 社 規制 を軸 とした商法会 計 が 中心 で,EU域 内 にお け る会 計 基準調和化 あ るいは情報提供機能拡大 につ いては,商 法会 計の枠 内で,年 度決 算書 の体 系 に附属 説明書 を加 え るこ とに よって対処 して きた。 ア メ リカでは, 市場指 向型会 計 と会社 規制 型会計 とが並 立 してい るが,証券取 引委員会 (SEC) に よ る証券 市場規 制 の ため の会 計 (以下 では 「SEC会 計」 と略称 す る)が 連 邦法 に よる全 米共通 の規制 であ るのに対 して,会 社規制 型会 計 としての会社 法 会 計 は州 ご との規制 とな ってお り, また ドイツの商法会 計 に匹敵 す るよ うな厳 密 な もの では ない。 そ うした こ ともあ って,通 常,ア メ リカ型会 計 として問題 とされ るの は,専 ら市場 指 向型会 計 としての SEC会 計 であ る。本稿 で も,以 下 ではア メ リカ型会 計 =SEC会 計 として論 を進 め るこ とにす る。 この ように,会 計先進国 と目され る独米においてさえ,会 社規制型会計 と市 場指向型会計の何 れか一方の会計にウエイ トが置かれ,両 者 を別個 の厳密な体 系 として有す る 「贅沢な」国は存在 しない。 この点, 日本は,会 社規制型会計 と市場指向型会計の両方 を,そ れぞれ商法会計 と証券取引法会計 として確立 し ている。尚,市 場指 向型会計は,公 開株式会社 を規制 し,ま た,証 券諸法が保 護 の対象 とす る投資家の うち現在投資家は株主で もある以上,同 時に会社規制 型会計 とい う側面 も有す るが,そ の中心は資本市場規制の一環 としての会計報 告制度 とい う点にあるため,両 者は区別 されねばならない。 また,ア メ リカ型

調

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1 1 0 野 中大輔講師追悼号 ( 第3 0 7 号) 会計において,具 体的会計基準は 「一般に認め られた会計原則」(以下では US ‐GAAPと 略す)と して非政府機関の財務会計基準審議会 (FASB)に よって 制定 されてい る点で も, 日独 とは,異 なることに も注 目しなければならない。 メガ ・コンペ ティシ ョンの時代 を迎 えて,「 日本型」会計の課題 としての会 社規制型会計 (商法会計)と 市場指向型会計 (証券取引法会計)と の調整 とい う事情 とは全 く別 に, ドイツにおいて両者の調整が盛んに議論 され始めた。す なわち,資 本市場のグローバ リゼー ションによって,従 来,資 本市場 におけ る 直接金融 よ りも銀行 による間接金融にウエイ トを置いて きた ドイツにおいて も, ア メ リカの資本市場へのア クセスを図 る企業が市場指向型会計 を受容 し,両 者 の異質性 をあ らためて認識 させ られ る事態が生 じている。つ ま り,多 国籍企業 が,本 拠地国外 での市場指向型会計による情報開示 を積極的に受け入れ始めれ ば,当 然,本 拠地国の情報開示 との差異があか らさまとな り,何 れの情報が 「正 しい」のか とい う問題 を喚起 して しま う。 ダイム ラー ・ベ ンツ社 (Daimler Benz)の ニュー ヨー ク市場上場 に伴 うア メ リカ基準決算数値 と ドイツ基準決 算数値 のHTL離の衝撃 は, まさにそ うした事FIJであった。 独米では,そ もそ も市場に対す る考 え方が異なる。従来,ア メ リカ企業が, 資本市場による直接金融中心に資金 を調達 して きたのに対 し, ドイツ企業は, 銀行 を介 した間接金融中心に資金 を調達 して きた背景には,市 場 こそ適正 な資 源配分 を可能にす るとい う市場 中心思想,つ まり,市 場による競争によって結 果的に全体 の効率性および繁栄が もたらされ るとい う思想の有無が関係 してい る。各国企業が,国 民経済の枠 内を申心に活動す る限 り,資 本市場の活用の程 度 に違 いが存在 した として も,そ れは各国の 「事情」の相違に過 ぎない。 しか し,資 本市場が グローバル化 され るとなると話は別 である。 グローバルに活動 しようとす る企業に とって,資 本市場の活用およびそこでの評価 は,企 業の存 続に とって死活問題 ともな りうる。 したがって,資 本市場のグローバ リゼー シ ョンが,市 場指向型会計に,あ る意味の 「普遍性」 を付与 した とい うことがで きるであろ う。 本稿 では, ドイツにおけ る市場指向型会計に関す る議論 を手掛か りに,市 場

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資本市場のグローバリゼーションによる市場指向型会計の普遍化と会社規制型会計との調整 111 指 向 型 会 計 の普 遍化 と,そ れ に伴 う会 社 規 制 型会 計 との調 整 に係 る 日独 にお け る問題 点 につ い て考 察 す る こ とを課 題 とす る。 H 市 場指 向型会計 と会社 規制型会計 シュマー レンバ ッハ (Schmalenbach,E。) に よ る企 業 の経 済性 の測 定 の企 て以来, ドイツで も会 計情報 を 「経済的」 に意味 あ る情報,つ ま り経済的 なパ フォーマ ンスを反映す るものに しようとす る試みが,経 営経済学の領域で盛ん に行 われて きた。 シュマー レンパ ッハは次のようにい う。 「私 のい う利益 とは獲得 した利益 であって,配 当すべ き利益 ではない。」 (土 岐政蔵訳。1940,93頁)。 シュマー レンバ ッハ以後 も,会 計情報 を経済的なパ フォーマ ンスを反映す るも のに しようとす る流れは ドイツ会計学において運綿 と受け継がれて きた。 その 典型 として1960年代 に盛んに議論 された 「経済的利益概念」(bkonomisches Ge‐ winnkonzept)に 関す る一連の議論 を挙げ ることがで きる。それ らはあ くまで 情報利用者のエー ズに応 えるこ とを第一の 目的 とし,配 当可能利益算定 とは直 接関連 しない もの として展開 された (武田。1968,35頁)。 ビュステマ ン (WuStemann, J.)は ,「 ドイツ型 とアメ リカ型の計算行為が HfL離す る場合,夕Jえば,ダ イムラーベ ンツのケースにおいて,何 故,ア メ リカ の貸借対照表作成原則に従 って確定 された利益が 『正 しい』かあるいは 『真実』 であることが前提 とされ るのか も明かでない。」 (Wustemann,1996,S.430) としているが,経 済的パ フォーマ ンスの反映 を悲願 とした ドイツ会計学の伝統 か らす ると,市 場指向型会計に対 して経営経済学者が賛意 を示すのは当然 とい えよう。市場指向型会計の典型は,い うまで もな くアメ リカ型会計である。 ドイツの商法会計は,ア メ リカ型の市場指向型会計 とは異質の,会 社規制型 会計 としての特徴 を備 え,plJぇば,経 済的パ フォーマンス表示 よ りも配当可能 利益 の算定 を優先 させ て きた。 そこで,今 日で も ドイツでアメ リカ型会計が問 題 とされ るのは,情 報提供機能の観点か らであ り,ア メ リカ基準による方が, ドイツ基準によるよ りも当機能が うま く達成 され うるとい う評価が,一 部の企

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1 1 2 野 中大輔講師追悼号 ( 第3 0 7 号) 業 に とって,そ の会計報告 をア メ リカ基準 に適合 させ る理 由であった とい う (wustemann.1996,S.421)。 しか し,ア メ リカにおいて 「一般に認め られた 会計原則」 (US‐GAAP)が ,稼 得利益 に関連 した情報提供機能 のみ を果 た し, 分配可能利益の算定 には何 の役割 も果 たさない とみ るのは誤 りである。例 えば, カ リフォルニア会社法等,一 部 の州会社法が US‐GAAPに 裏 書 きを与 え,そ れへ の準拠 を打 ち出 したこ とによって,逆 に US‐GAAPの 見直 しが迫 られ る 事態 も生 じている (伊藤.1996,170頁 )。 に もかかわ らず,ア メ リカでは,直 接的分配請求が稼得利益 に向け られてい ないのに対 して, ドイツでは,貸 借対照表お よび損益計算書で示U益確定原則 を 通 じて稼得 された利益が同時に分配可能利益 であるとい うように両国では事情 が異なるの も事実 である (Wustemann.1996,S.422)。 したがって, ドイツ ・ サ イ ドか らす ると,ア メ リカ型会計は,客 観化原則 (信頼性)が 抑制 され,経 済的考察法 (目的適合性)を よ り強調 した もの として評イ面され ることになる。 これに対 して, ドイツ型会計では,債 権者保護原則が貸借対照表作成の最上位 の指導原理 であ り,そ れは貸借対照表法上 の客観化 原則 に よって形成 され る (wustemann.1996,S,429)。つ ま り, ドイツ型会計は,客 観化原則 (信頼性) が経済的考察法 (目的適合性)よ りも重視 され るシステム として位置付け られ る。 株主の会計関与権 としては,計算の確定権 と利益 の処分権が挙 げ られ るが (安 藤。1996a,21頁 ), 日本 では,利 益 の処分権 も計算確 定権 も,原 則 として, 株主総会 にあ る (商法第283条第 1項 )。 ド イツで も,計 算確定権 は原則 として 取締役会お よび監査役会 にある (株式法172条)。これに対 して,ア メ リカでは, 計算確定権 も利益処分権 も,従 来か ら取締役会 にあ り,株 主に計算確定権がな い どころか,会 社法は最近 まで決算書の株主への提 出 ・送付 についてさえ規定 して いなか った とい う (安藤.1996a,21頁 )。株主 に計算書類の確定権 も利 益処分権 も与 えられていない以上,企 業は株主の もの といって も,そ の意味合 いは,両 者が株主に与えられている日本や ドイツとは異なって くることは明 ら か である。アルベール (M.Albert)は ,英 米型の企業 と日独型の企業 を対比

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資本市場のグローバ リゼーションによる市場指向型会計の普遍化 と会社規制型会計 との調整 して次の ようにい う。 「株主が所有 し, 自由に処理す る,単 なる商品が企業 なのか (アングロサ ク ソン型)。それ とも,株 主の権力 と経営者の権力 とのバ ランスが とれ,そ の経 営者 を銀行 と従業員 とが (後者は表立 っているとは限 らないが)選 考す るとい う,複 雑 な一種 の共 同体 が企業 なのだろ うか (日本・ドイツ型)。」 (小池訳. 1992,27頁) ア メ リカでは,企 業は株主の ものであるといって も,そ れはあ くまで「商品」 としてであ り,そ の 「商品」の 「顧客」 としての投資家に とって最 も重要 な損 益 に関す る情報が開示 され るのである。つ ま り,市 場指向型のアメ リカ型会計 は,「商 品」 としての企業 に関す る積極的情報開示 を意味す る。 したが って, 市場指 向型会 計が,「商 品」 としての企業 に関す る情報開示 を目的 とし,配 当 可能利益の計算か ら一応切 り離 されているということであれば,そ の内容 も会 社規制型会計 とは 自ず と異なってこよう。

但 し, 日独 とアメリカの処理法をそれぞれの会計システムの相違に還元し,

どちらにも一理ありとして片付けてしまうわけにはいかない。つまり,会 社規

制型会計をメインとする日独にとっても,市 場指向型のアメリカ型会計の動向

を無視するわけにはいかないのである。何敵なら,一 国内での事業活動が主だ

として も,グ ローバ ル化 した金融 ・資本市場 を利用す る企業 に とっては グロー バ リゼー シ ョンの影響 を受 け ざるをえない。 ましてや, グ ローバ ル ・プ レーヤ ー (global players)と して, ま さにその活動 自体 が グローバル化 した多国籍 企業 に とっては,国 際的資本市場 での評イ面,特 に最 も発達 したア メ リカの市場 での評価 は,企 業 としての あ る種 の世 界標準 での評価 を意味す るこ とにな るか らであ る。例 えば,前 SEC委 員長 のブ リー デ ンは次の よ うにい う。 「また,同 社 (ダイムラーベンツ社一筆者注)の 意思決定の背景には,真 に グローバル化 した企業は,世 界中に製品を販売するだけではな く,株 主のグロ ーバル化 も図らなければならないという考え方,言 い換えると,同 社の財務状 況に関する理解に自信 を持つ国際的な株主層の存在が,同 社にとってかけがえ のない企業資産だという考え方があるのである。」(ブリーデン.1994,94頁)

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野 中大輔講師追悼号 (第307号 ) I H デ リバテ ィブ会計 に関する差異 ドイツ商法 は 「資産及び負債 は決算 日につ き個別 に評価 しなければな らな い。」 (第252条題 1項 第 3号 )と して,い わゆ る 「個別評価の原則」 を定めて い る。 そこで,ヘ ッジ対象取引 とヘ ッジ手段取引 とを一つの評価単位 とみな し て,一 括 して不均 等原則 (Imparitatsprinzip)の対 象 とし,評 価益 と評価 損 との 相 殺 を 図 ろ う とす るの が,不 均 等 原 則 を考 慮 し た 「相 殺 的 評 価」 ( K o m p e n s a t o r i s c h e B e w e r t u n g ) であ る。 シュタイナー (M.Steiner)は, この評価法につ いて,「 ミクロヘ ッジ」,「マ クロヘ ッジ」そ して 「ポー トフォ リオ ・レベ ル」の 3つ の レベ ルに区分 し (Steiner et al.1995,S.535),さらに 「ポー トフォ リオ ・レベル」のアプローチを狭義,中 位,広 義に細区分 してい るが,現 行 の商法計算規定に一致 しえるのは,狭 義の もののみ とい う (Steiner. 1 9 9 5 , S . 2 3 6 ) 。 デ リバ ティブに係 る取引を貸借対照表上 で反映す る方法には不均等原則等の ため,い ずれにせ よ限界がある。そこで,商 法会計によるディスクロー ジャー 制度 しか存在 しない ドイツでは,そ の枠 内におけ る解決策 として,年 度決算書 の一部 を構成す る附属説明書上 で,有 価証券 をは じめデ リバティブ等の金融資 産 の時価情報 を開示す る とい う方法 を一部 の企業が採用 している (久保 田. 1996b,134-138頁 )。これは,「特別 な事情のため年度決算書が第 1号 にい う 真実且つ公正 な写像 を伝達 しない場合 には,附 属説明書に追加的記載 を行 わな ければな らない。」 (第264条第 2項 第 2号 )と い う商法の規定 を根拠 としてい る。すなわち,経 済的に稼得 された利益 についての年度決算書の情報提供機能 が,貸 借対照表,損 益計算書お よび附属説明書 とい う単位 に割 り当て られ る。 そこでは,附 属説明書は,い わゆる 「切 り離 しテーゼ」による,多 元的価値 の記載によって資本市場参加者の合法的情報ニー ズに応 じるための実行可能 な 方法 として,客 観化 による情報歪曲を補 うことになる (Wustemann.1996,S. 429)。因みに,以 上は個別年度決算書についていえることであ り,連 結年度決 算書 につ いては,直 接的に法律上の配当要請が確定利益 に結び付け られていな

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資本市場のグローバリゼーションによる市場指向型合計の普通化と会社規制型会計との調整 115 いの で,運 結年度決算 は純粋 の情報提供機能 のみ を満 たす こ とに な る。 ドイツが 附属 説明書 を年度決算書 の体 系 に加 え るこ とに よって情報提供機能 と配 当規制機能 の調整 を図 って きたの に対 して, 日本 では以下 の よ うな独 自の 方式 が 開発 され た。す なわ ち,「金 融機 関等 の経営 の健 全性保全 の ため の関係 法律 の整備 に関す る法律 」 (平成 8年 6月 21日法律 第94号)に よ る銀行 法 第17 条 の 2お よび証 券取 引法 第56条の 2の 新 設 に よって,日 本 で も,金 融機 関の「特 定取引勘定」 とい う名称の トレーディング勘定に時価評価が導入で きることに なった (山田。1996.参 照)。金融商品の時価評価 に関 しては,プ ラスの評価 益がマイナスの評価損 を上 回る際の差額,つ ま リネ ッ トの評価益 は,純 資産額 か ら控除 され る。 したがって,ネ ッ トの当評価益 は,表 示はされ るものの,配 当可能利益の計算か らは外 され る結果 となる。表示 した項 目の一部 を配当可能 利益 の計算か ら外す とい う方式は,繰 延 資産の超過額 (商法第290条第 1項 第 4号 )や 自己株式 (商法第290条第 1項 第 5号 )に つ いて商法上既 に採用 され ている。 これは,商 法 に伝 統 的 ないわゆ る財産 法 と企業会 計原則 の損益法 との調整 の ため に商法 の側 か ら考 え出 され た調 整 法 といわ れ る (安藤。 1996b, 7頁 )。 また,こ の 日本 の方式 は,証 券会社 につ いては,開 示規制 と配 当規制 を切 り離 す こ とが で きるこ とを明 らか に した もの で,今 後 の国際会 計基準 の導入 に関 し

て会計規制のあり方に一つの大きな解決策を示 したという見解 もある (岸田.

1996, 11頁)。 日本 では,上 場企業 につ いては,証 券取 引法会 計 に よるデ ィス クロー ジャー 制 度 が併 存す るため,そ こにおいてデ リバ テ ィブ等 に係 る時価 情報 が開示 され る。 商法会計単一 か,商 法会 計 と証券取 引法 の併 存か とい う点 での相違 の ため, 日独 では一見,デ リバ ティブ等の時価情報開示の態様が異なるようにみえるが, 貸借対照表お よび損益計算書では配当可能利益の算定の際 「相殺的評価」 を適 用す ることによって従来の計算原則,特 に実現原貝Jを保持 し,実 態開示につい ては,附 属説明書上 で行 うとい う ドイツの方式は, 日本の方式 と比べて基本的 相違はない。 なお, ドイツの附属説明書は, 日本の商法上の注記 と附属明細書

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116 野 中大輔講師追悼号 (第307号) とを合 わせ た もの として位置付け られ る。 日独の処理法におけるネ ッ トの評価 益 の扱いは,現 行 の計算原則の保持 を第一 とした ものであるといえよう。つ ま り,こ れは商法の計算が債権者保護 を第一 目的 とす る会社規制型の ものであ り, その結果 としての配当可能利益算定 を重視せ ざるをえないことの必然的結果 と もいえる。 そ もそ も有価証券お よびデ リバ ティブ等の金融資産の時価評価問題が問題 と して立 ち現れたのは,金 融市場および資本市場のグローバ リゼー ションと深い 関係がある。すなわち,デ リバティブの本来の用途は リス クヘ ッジにあ り,ヘ ッジの対象 となる リスクの 1つ が価格変動 による市場 リスクであった。市場 リ ス クを対象 としたデ リバ ティブの利用が拡大す る一方で,そ のメ リッ トの 1つ にオフバ ランス性が挙げ られたことは,市 場指向型会計に とってある種の危機 を意味す る。 したがって,デ リバ ティブ会計問題 に対す る積極的対応 も,市 場 指向型会計に とっては急務 となるはずである。 市場指向型会計 としてのアメ リカ型会計や国際会計基準 (IAS)に おいて, 早い段階か ら積極的に金融商品に関す る開示が進め られて きた背景にはこうし た事情がある。 また,個 々の企業の側 で も,一 定水準の リスク管理 システムの 構築は, メガ ・コンペ ティションを勝 ち抜 くための必須の条件 となってい くだ ろ う。 その際,会 計規制が リスク回避行動に歪み を与えることになれば,会 計 規制 自体が企業の制約条件 となって しまう恐れ さえある(久保 田.1996,140頁)。 IV 日 本 における会社規制型会計 と市場指向型会計 との調整, 及び税務計算 との関係 会社規制型会計 としての商法会計 中心の ドイツ とは異な り, 日本では,会 社 規制型会計 としての商法会計 と市場指向型会計 としての証券取引法会計 とが併 存 している。第 2次 大戦後の会計学に とって両者の調整は重要 な課題 であった。 しか し,あ らためてその経緯 を振 り返 ってみ ると,商 法 とは別個の証券取引法 会計 とい うフィール ドで連結財務諸表や 中間財務諸表の導入,あ るいは有価証 券の時価情報開示 といった実験 を行 うことがで きた。 また,商 法会計サ イ ドで

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資本市場のグローバリゼーションによる市場指向型会計の普遍化と会社規制型会計との調整 117 も,い わば,証 券取 引法会 計 の フィー ル ドで実験済みの制度,例 えば公認会 計 士 に よる監査 とい った制度 を準用す る形 で, 自 らの フ ィー ル ドに会 計監査 人 に よる監杢 を導入す るこ とが可能 であ った。 第 2次 大戦後 の こ うした両体 系 間の 相 互作用 と棲 み分 けは, 日本 の財務会 計 の 「近代化 」 に対 して重要 な役割 を果 た して きた こ とは明 らか で あ る。す なわ ち,「証券 取 引法 が これ まで商法会 計 に絶 えず問題提起 を して きた歴 史」(大西。 1996, 9頁 )を 認識す る必要 が あ る。 そ うした中で,両 体系の擦 り合 わせ による一国内における会社規制型会計 と 市場指向型会計 との 「調和化」 も成功 を収め,あ る程度,そ の初期 の 目的 を果 た した とみなす ことがで きよう。 また, こ うした調整が可能であったのは, ド イツでは商法会計の 目的が物的有限責任会社制度の一環 として明確 に位置付け られているのに対 して, 日本の商法が物的責任 を ドイツほ ど厳 しく制度化 して いないために商法会計の主 旨が希薄 とな り,こ の結果,証 券取引法による企業 会計制度 と肌解 をきたす ことな く,なん とな く融和す ることが可能であった(企 業財務制度研究会。1994,83頁 )か らとも考 えられ る。 日本 では,商 法上の確定 した計算書類に基づ いて課税所得の計算 を行 わなけ ればならない とす る,い わゆ る確定決算主義によって,商 法会計 と税務計算 と が リンクされている。すなわち,内 国法人は,各 事業年度修 了の 日の翌 日か ら 2カ 月以内に,税 務署長に対 して,確 定 した決算に基づ き,当 該事業年度の課 税標準である所得 の金額お よび法人税額 を記載 した申告書 を提 出 しなければな らない (法人税法第74条第 1項 )。 この確定決算主義 を通 じての税務計算 との リンクが,開 示制度 としての証券 取引法会計お よび商法会計の 「足税口」 となっているとい う近年の議論 は,商 法 会計 と証券取引法会計 との 「調和化」が成功 した敵に浮かび上が って きた問題 とい うこともで きるだろう。すなわち, 日本では,元 来,市 場指向型会計 とし ての証券取引法会計 と税務計算 とい う異質の会計が,商 法会計 と証券取引法会 計 との調和化 を介 して結果 として リンクされたため, どちらを優先 させ るか と い うことが逆に問題 となって しまった とい うことがで きよう。 確かに,市 場指向型会計は,本 来,直 接,税 務計算 とは結び付かない。現に

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118 野 中大輔講師追悼号 (第307号) ア メ リカで両者 が別個 の体 系 とな って い るのは,市 場指 向型会 計が,直 接 的利 害 と結 びつ き且 つ公 平性 を旨 とす る税務 計算 とは異質 の会 計 だか らであ る。つ ま り, も し 「受容 可能 な」代替案 間の経営者 に よる選別 が租税 目的 に とって随 意 であったな らば,企 業は,実 際,支 払お うとす る税金 を (会計士によっての み指示 され る限度内で)一 方的に決定す ることがで きるということになって し まう (Wtttemann.1996,S。428)。このように各計算の本質か らも異質である こ とに加 えて,ア メ リカの場合,商 法は各州 ごとに定め られているのに対 し, 税法は 「内国歳入法」 として全米全体 で一本化 されているとい う法制度 も,別 個 の体 系 となってい る理 由の 1つ であ ろ う (武田,1996a,30頁 )。 しか し, そのア メ リカにおいて も,内 国歳入法典 第446条(b)項で 「課税所得計算は会計 基準に従 う」 旨を規定す るなど,企 業会計 と税務計算には密接 な関係がある。 つ ま り,会 社規制型会計又は市場規制型会計,及 び税務計算の根底には,共 通 して, 自己生成的企業会計が存在 し,何 れにせ よ,前 二者は,企 業会計 を介 し て税務計算 とリンクす ることになる。 企業会計 と税務計算 との関係 について, 日本 では, ドイツ法におけ る,商 事 貸借対照表の税務貸借対照表に対す る基準性の原則 を継受す る確定決算主義に よって い る (武田。1996a,30頁)。 しか し, 日本 の税務 計算 が,本 来 の ドイ ツ型の確定決算主義 によって企業会計に リンクされ るようになったのは,比 較 的最近の ことに属す る。 その″点につ いて見てみ よう。 まず,税 務 申告に関す る 企業会計 と税務計算 との関係 については,次 の 2つ の流れがある (武田.1996 b,41-43頁 )。 (1)課税 所得 計算が,確 定決算主義 に基づ き,商 法 を介 して 「公正 な る会 計慣 行」に運係す るとい う規定体系。 修)課税所得計算が,直 接 「公正 なる会計慣行」 を基礎 として成 り立つ とす る 規定体系。 (1)はドイツ型の規定 であ り,(2)はアメ リカ型の規定であるが, 日本の法人税 法は,確 定決算主義によ リ ドイツ型 を採 る一方で, また 「一般に公正妥当 と認 め られ る会計処理の基準」 を所得計算の総則規定 (法人税法22条 4項 )に 設け

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資本市場のグローバリゼーションによる市場指向型会計の普遍化と会社規制型会計との調整 119 る こ とに よ リア メ リカ型 を踏 襲 して い る (武田.1996b,42頁 )。つ ま り,税 務 計算 が 「公正 な る会 計慣行 」 と二重 に リン クされてい るの であ る。 その生成 の経緯 は以下 の よ うな ものであ った。確 定決算主義 を採用 してい る以上, 日本 の税 法 は,商 法 を介 して 「公正 な る会計慣行 」 に追係 す る体 系 に よるこ とにな るはず であ った。例 えば, ド イツでは,従 来か ら,商 法 の計算規定 は 「公正 な る会 計慣行 」 としての GoB(正 規 の簿記 の原則)に リン クされてい る。 しか し,昭 和42年 当時, 日本 の商法上 「公正 な る会 計慣行 の掛酌」 に関す る 明文 の規定 が存在 しなか ったため,税 務 計算 は ドイツ型 に よる 「公正 な る会 計 慣行」 との リンクを欠いていた。 そこで,そ の点 を補 うべ く法人税法22条 4項 において 「一般に公正妥当と認め られる会計処理の基準」によるべ き旨の規定 が設け られた。その後,昭 和49年の商法改正 によ り第32条第 2項 に 「公正 なる 会計慣行 の掛酌」規定が新設 され,本 来の ドイツ型によるリンクが確保 された ため,法 人税法22条 4項 の歴史的使命が終 わったはずであるが,そ の後 も依然 として同規定が存続 してい るのであ る (武田.1996b,43頁 )。この点 で,わ が 国税制度 は,ま さに 「混合文化 型」 (武田。1996a,30頁)と して特徴づ け られ る。 日本の商法の規定は概括的な規定 であるため,逆 に証券取引法による企業会 計制度 を受容す るこ ともで きるが,他 方,商 法会計が主体性 を発揮 していない ため,税 法がその固有の 目的 を持 って強制的に商法会計 を通 じて企業会計に影 響 を及ぼ してい る とい う見方 もあ る (企業財務制度研 究会.1994,84頁 )。要 す るに,確 定決算主義による税務計算 との リンクが,開 示制度 としての証券取 引法会計および商法会計の 「足枷」 となっているとい うよ り,市 場規制型会計 としての証券取引法会計 との調整 を可能 とした商法会計のフレキシビ リティが, す方で税務計算の影響 を許容 して しまっているのである。上記の「二重 リンク」 問題 をは じめ, 日本の企業会計制度全体 の整合性 ある見直 しが求め られている といえよう。

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野 中大輔講師追悼号 (第307号 ) V 結 び に代 えて 近 年, 日本 で も国際会 計基準 (IAS)導 入の必要性 が声 高 に叫ばれ るよ うに な った。IASが 市場 指 向型会 計 に属 す るこ とは,IASが 注 目され たの が証 券 監督 者 国際機 構 (IOSCO)に よ る 「認知 」以後 で あ った こ とに よって も明か で あ る。IASは ,当 初,資 本 市場 の 国際化 の ため の イ ンフ ラ として,会 計 基 準 の調和化 を 目指 した。 しか し, コ ン ピュー タ 。テ クノロジーの発達 と各 国の 規 制緩和 に よって,IASが 目標 と した資本 市場 の 国際化 も し くは グ ロー バ リ ゼー シ ョンが先行 す る形 とな り,そ の規制 に乗 り出 した IOSCOに よ る認知 に よって IASが 遅 れ ばせ なが ら,本 来 の 目標 の ため に 「活 用」 され るこ とに な った とみ るべ きであろ う。 金融 ・資本市場 の グローバ リゼー シ ョンに伴 い多国籍 に展開す る企業 に とっ て資本 市場指 向型会 計 の採 用 が不 可 欠 とな った。 その文脈 にお いて非 US‐ GAAPと しての IASが , ドイツをは じめ とす るヨー ロッパの企業 に注 目され るに至 る。 しか し,IASが 市場指 向型の会計 であ る以上,そ の国内化 を論 ず る場合 もそのことを念頭に置 く必要がある。 そ もそ も市場 を直接指向 しない商 法会計に IASを 導入す るのは,こ の意味でナ ンセンス といわ ざるをえないが, ドイツでは, ドイツ企業が外国の証券市場 で上場す ることを目的に外国の会計 基準による違結決算の作成が必要 な場合, ドイツ基準による連結決算 を免除 し ようとしている (Odelheide.1996.参照)。これは, ドイツには商法会計中心 であるために,そ の枠 内での苦 肉の策 ともいえる。但 し,先 述のように ドイツ で も連結決算書は配当規制 に直接関係せず,情 報提供機能のみ を担 うために可 能 な措置 とい うこ とがで きる。 会社規制型会計の枠 内で,市 場指向型会計 との調整 を図ろうとす る ドイツの 状況 を見 るとき,市 場指向型会計のフィール ドとして証券取引法会計が独立 し ている 日本は,市 場指向型会計の整備 の上壊 については極めて有利な位置にあ る といえるだろ う。す なわち, 日本 の場合,市 場指 向型会計 としての IAS導 入の場が証券取引法会計 として既 に用意 されてお り, したがって,今 後は,証

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資本市場のグローバリゼーションによる市場指向型会計の普通化と会社規制型会計との調整 121 券 取 引法会 計 を市場 指 向型会 計 に一 層特化 させ るこ とも可能 である(新井。1994, 加 藤.1996,参 照 )。企 業 会 計 審議 会 に よ って公 表 され た連 結会 計 基 準 に関す る草案 におけ る,連 結財務 諸表 を主 た る財務 諸表 とし,連 結財務 諸表 に よる半 期 報告書 を導入す る とい う行 き方 は,そ の方 向に沿 った もの であろ う。 現在 の US‐GAAPな い しIASの 受容 に関す る ドイツの議論 の特徴 は,従 来 の経営経済学者による提案 とい う,理 念先行 の形ではな く,実 際の企業行動が 理念 よ り先行す るとい う点にある。 もちろん,そ の背景 ない しは土壊 としては, 年度決算書におけ る経済的パ フォーマ ンスの反映 とい う前述の ドイツ会計学の 経緯があることも確かであるが,しヽわばそれ らを飛び越 えて事態は進展 しつつ ある。 その ドライビング ・フォー ス となってい るのは,資 本市場の グローバ リ ゼー シ ョンであ り, メガ ・コンペ ティションなのである。すなわち,金 融 ・資 本市場の グローバ リゼー シ ョンが進展す る中で,資 本市場の発達が メガ・コン ペ ティションの要件 として浮かび上がって きた。 こうしたメガ ・コンペティシ ョンの要件 としての資本市場 とい う問題か ら,銀 行 を介 した問接金融中心であ った ドイツにおいて も資本市場の整備 。拡大が急務 とな り,そ の結果,市 場指 向型会計に も関心が向け られ るに至 った とい うわけである。 グローバ リゼー シ ョンによって,各 国の会計基準が資本市場への参入障壁 ともな りかねない事態 となってい る。 もちろん,投 資家保護が資本市場規制の第一の 目的であること は明かである。 しか し,そ の第一 目的 もメガ ・コンペ ティションとい う要 因を 呪みなが らの陀取 りとバ ランス とを要求 され るとい う次元で,会 計のグローバ リゼー シ ョンの時代が到来 している。 参 考 文 献

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野 中大輔講師追悼号 (第307号 )

A Genelization of a Market,oriented Accounting

with a Globalization of Capital Markets,and its Rec‐

onciliation to a Campany口 regulating Accounting

Hideki Kubota

With a globalization of capital rnarkets are more important for global players.Therefore,an interest in a Fnarket‐oriented account‐ ing as a sub‐system of securities markets has increased.A typical market,oriented accounting is'AInerican‐′rype'。f accounting.And the lnternational Accounting Standards are also characterized as a market‐oriented accounting.

On the other hand,the obietive Of'German‐ Type'of accounting, which includes accounting systems based on the Japanese cOmer‐ cial Code as well as the German Comercial Code,are to regulate campanies.For German and Japanese global players such as Dailnt lerBenz or Sony,a market‐ oriented accounting has been more inl‐ portant.In this paper a genelization of a market‐oriented account‐ ing and the reconciliation of a rnarket‐oriented accounting to an ac‐ counting system based on the Comercial Code as a campany,

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