Title
G-CSF 投与に影響を及ぼす要因に関する調査( 本文(Fulltext)
)
Author(s)
谷沢, 克弥; 桐山, 佳子; 新谷, 俊一; 早瀬, 邦夫; 加藤, 落実; 寺
町, ひとみ; 土屋, 照雄; 伊藤, 善規
Citation
[医療薬学] vol.[34] no.[4] p.[361]-[365]
Issue Date
2008-04-10
Rights
Japanese Society of Pharmaceutical Health Care and Sciences (日
本医療薬学会)
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/29102
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
緒
言
厚生労働省の統計調査(1958−2004 年)によると,国内 での肺がんの部位別がん死亡者数は第 1 位(2004 年),罹 患患者数は第 2 位(2000 年)であり,いずれも 20 年前と 比較して大幅に増加している.肺がんの組織型分類で は,非小細胞肺がんが全体の約 80% と大部分を占めて いるが,非小細胞肺がんに対する化学療法として,パク リタキセル(以下,PTX と略す)とカルボプラチン(以下, CBDCA と略す)の併用療法(以下,TJ 療法と略す)が標準 療法の一つ1−3)として,多くの患者に対して実施されて いる.TJ 療法では多彩な副作用の発現が知られている が,中でも好中球減少症は,治療のスケジュールへの影 Received October 3, 2007 Accepted January 4, 2008A retrospective analysis was carried out to determine the neutropenia-associated factors that require the use of granulocytes-colony stimulating factor (G-CSF) in paclitaxel (PTX) plus carboplatin (CBDCA) combination chemotherapy for the treatment of advanced lung cancer.
Forty-five patients (110 courses) with advanced lung cancer who received PTX plus CBDCA combination chemotherapy were the subjects of the present study. They had no previous treatment history. A logistic regression analysis was performed to determine patient backgrounds and therapeutic regimens that affect the incidence of neutropenia requiring G-CSF. The data showed that the risk factors involving the prolongation of G-CSF use were the monthly dosage regimen[odds ratio : 3.343(95% confidence interval : 1.292-8.648)], dose of PTX≧140 mg/m2[7.529 (1.669-33.961)] and multiple(>2)
courses of the chemotherapy[3.178 (1.228-8.222)]. However, the duration of G-CSF use was not influenced by gender, age, performance status, serum albumin or radiation therapy.
These findings suggest that pharmacists should carefully monitor the serological data on myeloid function in patients un-dergoing PTX plus CBDCA combination chemotherapy for advanced lung cancer, particularly in those with risk factors for prolongation of G-CSF use.
Key words ── advanced lung cancer, G-CSF, paclitaxel-carboplatin combination chemotherapy, neutropenia, logistic re-gression analysis
* 岐阜市野一色 4―6―1 ; 4―6―1, Noishiki, Gifu-shi, 500―8717 Japan
Jpn. J. Pharm. Health Care Sci. ノ ー ト 34(4) 361―365 (2008)
進行肺がん患者に対する Paclitaxel-Carboplatin 併用療法時の
G-CSF 投与に影響を及ぼす要因に関する調査
谷沢克弥
*1,桐山佳子
1,新谷俊一
1,早瀬邦夫
1,加藤落実
1寺町ひとみ
2,土屋照雄
2,伊藤善規
3 岐阜県総合医療センター薬剤部1 岐阜薬科大学病院薬学研究室2 岐阜大学医学部附属病院薬剤部3A Retrospective Study on the Use of G-CSF in
Paclitaxel plus Carboplatin Combination Chemotherapy
for the Treatment of Advanced Lung Cancer
Katsumi Tanizawa*1 , Yoshiko Kiriyama1 , Toshikazu Shintani1 , Kunio Hayase1 , Ochimi Kato1 , Hitomi Teramachi2 , Teruo Tsuchiya2
and Yoshinori Itoh3
Department of Pharmacy, Gifu Prefectural General Medical Center1
Laboratory of Clinical Pharmacy, Gifu Pharmaceutical University2
Department of Pharmacy, Gifu University Hospital3
響だけでなく,患者の予後を悪化させる可能性があり, 最 も 注 意 が 必 要 な 副 作 用 と 思 わ れ る.Granulocytes-Colony Stimulating Factor(以下,G-CSF と略す)は好中球 減少症に対する有効な治療薬であり,がん化学療法の実 施時は好中球数のモニター下で適正な投与管理が行われ ている.しかし,好中球数の回復に必要な G-CSF の投 与日数には個人差が大きく予測が難しい.今回,進行肺 がん患者に実施した TJ 療法中の G-CSF 投与日数のレト ロスペクティブな調査を行った.G-CSF の投与日数に 影響を及ぼす患者背景や治療条件等について,ロジス ティック回帰分析により検討したので報告する.
対象および方法
2002 年 6 月から 2007 年 5 月までの期間に,岐阜県総 合医療センター(旧県立岐阜病院)の呼吸器科および呼吸 器外科で TJ 療法が実施された,過去に治療歴を有さな い進行肺がん患者 45 名,110 コースを調査の対象とし た.カルテおよび診療支援システムより,患者の性別, 年齢,併用放射線治療の有無,Performance Status(以下, PS と略す),投与スケジュール,PTX 総投与量,血清ア ルブミン値,累積治療コース数を調査した.また,化学 療法 1 コース中に G-CSF を投与された日数を調査し, それぞれの要因との関連について検討した.PS は ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)の Criteria に 従 う 分 類 を 採 用 し た.投 与 ス ケ ジ ュ ー ル は Monthly(day 1 に PTX および CBDCA の両剤を一括投与) 群,Weekly(day 1・day 8・day 15 に両剤を分割投与)群, Weekly/Monthly(PTX を day 1・day 8・day 15 に 分 割 投 与, day 1 に CBDCA を 一 括 投 与)群 に 分 類 し た.PTX の 各 コースの投与量は weekly レジメンでは 105∼210 mg/m2, Monthly レジメンでは 135∼200 mg/m2であり,CBDCA の投与量は AUC(mg/mL・min)が 5 または 6 であった. 血清アルブミン値は治療開始時の数値を調査した. G-CSF の投与は,添付文書に記載される条件に従っ て い る こ と を 確 認 し た.す な わ ち,好 中 球 数 が 500/ mm3以下,もしくは 1,000/mm3以下で発熱を伴う場合 に投与を開始した.ただし,以前に G-CSF が投与され た患者では次回の治療からは発熱がなくても 1,000/mm3 以下となった時点で投与を開始した.投与中止は好中球 数が 5,000/mm3以上に到達した時点とした.G-CSF の 投与量は,レノグラスチム 100μg,フィルグラスチム 75 μg,ナルトグラスチム 50μg で,すべての症例で 1 日 1 回皮下投与されていた. 統計手法は,2 群間の比較には Mann-Whitney’s U test を,3 群以上の比較には分散分析および Games-Howell test を用い,2 変量の相関関係は単変量ロジスティック 回帰分析を用いて解析した.2 群間の事象発現率の比較
は Fisher exact probability test により行った.いずれも p <0.05 を有意差ありと判定した.
結
果
当院での手術不能の進行肺がん患者への化学療法は, 4 コースを標準治療として行っているが,強い副作用の 出現や治療無効等の理由で治療を中止したり変更される 場合は多い.1 コースだけ治療を実施した患者は 45 名 のうち 13 名で,2 コース目または 3 コース目まで実施 したのは 13 名と 5 名,4 コースまで完遂した患者は 14 名であった.計 45 名の患者と治療の背景を表 1 に示し た.延べ 110 コース中 63 コースで G-CSF の投与が行わ れており,投与日数の中央値は 5 日であった. G-CSF の投与日数は性別による違いはみられず(p= 0.173 および p=0.193),放射線治療併用の有無(p=0.915 お よ び p=0.742)や PS(p=0.319 お よ び p=0.335)に よ っ ても影響されなかった(表 2).また,累積治療コース別 の比較でも有意差はみられなかった(p=0.058 および p =0.210).投 与 ス ケ ジ ュ ー ル 別 で は,Monthly 群 は Weekly 群と比較して G-CSF の投与日数が有意に延長(p =0.018)していた.図 1 に年齢,血清アルブミン値およ び PTX 総投与量と G-CSF の投与日数との散布図を示し 表 1.調査対象患者の背景 45 名の患者の年齢,性別,診断病名,臨床病期のうちわ けと実施した述べ 110 コースの治療の PTX 投与量および 血清アルブミン値の平均,CBDCA 投与量,投与した G-CSF のうちわけを示した.たが,いずれにも有意な相関は認められなかった. 次いで,G-CSF の投与日数に影響を及ぼす因子につ いてロジスティック回帰分析により解析を行い,その結 果をフォレストプロットとして図 2 に示した.女性,60 歳以上,PS 2 未満,放射線治療実施,PTX 総投与量 140 mg/m2未満,累積治療 2 コース以上,血清アルブミン 値 4.0 g/L 未満および Monthly 投与レジメンの 8 因子の うち,G-CSF の投与日数の延長(6 日間以上)に関わる有 意なリスク因子として,1)Monthly レジメン(オッズ比 3.343;95% 信 頼 区 間 1.292−8.648),2)PTX 総 投 与 量 140 mg/m2以上(オッズ比 7.529;95% 信頼 区 間 1.669− 33.961)および累積治療 2 コース以上(オッズ比 3.178;95 %信頼区間 1.228−8.222)が見出された.
考
察
好中球減少症は,がん化学療法の副作用の中で,生命 に危険を及ぼす最も危険な事象の一つと考えられる.G-CSF は本症に対する有効な治療薬であるが,予防的投 与は一部の限られたがん種以外では保険適応がなく,多 くのがん種では好中球数の条件を満たした場合に限り投 与が可能となる.そのため医師は治療の開始後には,好 中球減少症 の 早 期 発 見 と G-CSF 投 与 可 否 の 判 定 の た め,血液検査を行うタイミングと頻度に注意する必要が ある.投与する抗がん剤やレジメンの種類により nadir (好中球数の最低値)に到達する時期は判明しており4,5), 医師および治療に関わる薬剤師は,このような情報に加 え,患者のこれまでの治療経過,現在の状況などを考慮 して好中球減少症の発現時期を予測している.がん化学 療法時の好中球減少症の発現に影響する患者の要因や治 療条件については,いくつかの研究報告がみられる. Chrischilles6)ら,Shayne7)ら は,そ れ ぞ れ 65 歳 以 上,70 歳以上の高齢患者で発現率が高いと報告している. 一方,Blay8)らの報告ではそれらとは異なり,年齢, PS,累積治療コースには影響されず,治療開始時のリ ンパ球数が低い患者で発現率が高いと述べられている. そこで,われわれは非小細胞肺がんの標準化学療法であ 表 2.好中球減少症および G-CSF の投与日数の要因 による比較 Grade 3 以上の好中球減少症の発症数と,G-CSF の投与日 数を各要因別に示した. 図 1.年齢,血清アルブミン値もしくは PTX 投与 量と G-CSF の投与日数の関係る TJ 療法中の好中球減少症の発現と G-CSF 投与に関す る調査を行った.
多くの論文では,がん化学療法時の好中球減少症につ いては,好中球減少の重症度が評価され,有害毒性共通 用 語 規 準 ver 3 , JCOG / JSCO 版 (CTCAE ver 3 ) で の グ レード 3 および 4 の好中球減少の発現頻度について調べ られている9,10).本報告においても,G-CSF 適応基準が 好中球数<1,000/mm3で発熱あり(グレード 3),もしく は<500/mm3(グレード 4)であることか ら,グ レ ー ド 3 および 4 の好中球減少について評価したことになる.た だし,発現頻度のみならず,回復までに要した G-CSF の投与日数も指標とした. 今回の調査では G-CSF の投与頻度は 57.3% で,Naka-mura11)らの子宮体がん患者 18 例の TJ 療法での調査(52.4 %)と近い数値であったが,Balbi12)らの卵巣がんの術後 補助化学療法患者 43 例での調査(35%)より 50% 以上高 い数値であった.対象患者の背景や症例数の違いにより 差が生じたものと考えられる. 調査の結果,前述したように各治療コースの G-CSF の 投 与 日 数 は Monthly 投 与 群(オ ッ ズ 比 3.343;95% 信 頼区間 1.292−8.648) PTX 総投与量が 140 mg/m2以上の 群(オッズ比 7.529;95% 信頼区間 1.669−33.961),累積 治 療 が 2 回 以 上 の 群(オ ッ ズ 比 3.178;95% 信 頼 区 間 1.228−8.222)で有意に増加しており,このような条件で 重篤な好中球減少症が起きやすくなることが示唆された. 最近のがん化学療法は外来治療への移行が進んでお り13),当院においても TJ 療法は外来で実施する患者が 増加している.外来化学療法では,好中球減少症の発現 時期の予測と早期の対処が重要な課題である14)が,今回 の調査結果が一つの有用な情報となりうる.すなわち, 前述した条件に該当する患者では,好中球減少症が遷延 して G-CSF の投与日数が延長する可能性が高く,患者 には感染予防の指導を十分に行うべきである.
また,ASCO(American Society of Clinical Oncology)の Recommendation15)では,G-CSF の投与量が多くなる治療 は患者の予後を悪化する可能性があるため,骨髄抑制の 起こりにくい投与量やスケジュールへの変更を推奨して いる.この方針に従うと,TJ 療法でも G-CSF の投与回 数は少ない方が,骨髄抑制のリスク軽減とコスト削減の 両面から患者にとってメリットになるであろう.今回の 調査で G-CSF の投与日数を延長する危険因子と認めら れた要因のうち,PTX 投与量と累積治療コースの増加 は治療上,回避が不可能であるが,投与スケジュールは 選択が可能である.Belani16)ら,熊谷17)らの調査におい ても,TJ 療法は Monthly 投与より Weekly/Monthly また は Weekly 投与の方が好中球減少症の発現が少ないこと が報告されており,安全面から考えると Monthly 以外の スケジュールの選択が望ましいことが示唆された.
引 用 文 献
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Naka-gawa, S. Negoro, Y. Nishiwaki, N. Saijo, Y. Ariyoshi,
図 2.ロジスティック回帰分析による G-CSF 投与日数の延長(6 日以上)に 影響を及ぼす因子についてのフォレストプロット
各要因により投与日数が 6 日以上に延長するオッズ比(Odds Ratio) ならびに 95% 信頼区間を示した.
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