しがだい 20 生後すぐに別々に育ち、成人後に初めて出会った一卵性双生児の事例 があります。それによると、彼らには趣味や嗜好品、結婚の回数、子ど もの名前など多くの共通点がみられたと報告されています。この 組の 双生児の事例は、人間の発達に「生まれ」が大きな影響を及ぼしている ことを傍証しています。一方、彼らが全く等しいかと言えばそうではあ りません。彼らの違いは「育ち」の影響の証なのです。 このように、人間の発達への「生まれ」と「育ち」の影響を巡って、 教育学や心理学では長年激しい議論が交わされてきました。しかし、こ の議論が決着したわけではなく、現在でもその答えを見いだせずにいま す。この「生まれか育ちか」という不毛の議論になりかねないテーマが私のリサーチ・クエスチョンです。 つまり、「なぜ、人は違うのか」という問いかけに答えを導こうとしているわけです。こんなテーマに取り組 んだこと自体が無謀だったのかもしれません。今となってみれば後悔することもありますが、人間の発達の 妙とも言うべき興味深い事実に出会えることが楽しみです。このテーマに、私は双生児研究からアプローチ しています。双生児研究というのは、遺伝的に %等しい一卵性双生児と平均して遺伝的に %等しい二 卵性双生児を対象とした方法であり、自然が準備してくれた研究デザインです。 「なぜ、人は違うのか」とは個人差に着目したも のですが、学習の立場では「学習か成熟か」とい うテーマに置き換えられます。例えば、人は這う、 立つ、歩く、走るといった基本的な運動ができる ようになりますが、これは平均して期待される環 境下ならば自然と身につくのでしょうか(成熟)、 それとも何か特別な練習(学習)をしなければ身 につかないのでしょうか。こうした問いも私のリ サーチ・クエスチョンに含まれます。ここでの最 大の関心は早期教育です。一般に、意味を理解し ないまま反復を繰り返すような早期教育のあり方 には賛同できる部分は多くありません。それでも、 なぜ早期教育に焦点をあてるかと言うと、そこに 教育の原理・原則が潜んでいるのではないかと考えているからです。仮定の話ですが、幼少期のある時期ま でにある方法であることを学ぶことができたら、大人になったときに優秀な、立派な、社会貢献できる人間 になる可能性が高いということがわかったとします。もしそうであるならば、その知見に基づいて子育てや 教育をすることが期待されるはずです。こんな劇的なことは見出せないまでも、何かわかることがあるはず です。 先日、次のような双生児を対象とした研究を見つけました。オリンピック選手である一卵性双生児の事例 を扱ったものです。ひとりは多くの世界レベルの大会で優勝する選手ですが、もうひとりは体力的にやや勝 りながらもメダルを獲得できない選手です。この 人を心理テストで比較してみると、怒りの制御の能力に 大きな違いが認められました。この結果を少し飛躍的に解釈すれば、自己をコントロールする力が成功の鍵 であることを物語っていると言えるでしょう。私は、こうした双生児研究から子どもの発達を探っています。
今の研究を語る 「子どもの発達を探る : 双生児研究から」
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