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[報文]環境省花粉観測システム情報に基づく中国・四国地方の花粉飛散状況の解析

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<報

文>

環境省花粉観測システム情報に基づく

中国・四国地方の花粉飛散状況の解析

荒 木 卓 久

**

・森 山

***

・多田納

** キーワード ①スギ花粉 ②花粉観測システム ③飛散開始日 ④飛散量の予測 ⑤大量飛散日数 要 旨 環境省花粉観測システムは,自動測定器 KH―3000による花粉濃度の1時間値をリアル タイムで情報提供しており,花粉観測として広く使用されているダーラム法と比べ時間分 解能と即時性の点で優れたシステムである。この花粉情報がダーラム法との相互補完によ り人々の花粉症対策に活用されることを目的として,中国・四国地方の3カ年(2007年∼ 2009年)の花粉飛散状況を解析した。 地点別の花粉飛散開始日を決定する際の目安を,花粉濃度の日平均値,昼間の平均値 および日最高値により作成した。花粉飛散開始日は,1月1日からの日最高気温の累積値 を目安とした。しかし,前年12月の気温も重要であることが示された。また,花粉の種類 と飛散量を地域別に比較すると,島根県では2月∼3月の飛散量が顕著に多く,スギ花粉 が主体であるのに対し,岡山県等では4月にもヒノキ花粉を主体とする花粉飛散量が多 かった。 花粉飛散量の予測に関わる花粉飛散量と気温との関係については,2月∼3月の花粉 飛散量は前年・前々年の7月の平均気温年次差との間に相関の良いことが示された。ス ギ花粉の大量飛散年であった2009年の2月∼3月の濃度分布により,中国・四国地方は東 部・西部地域の2地域に区分された。 中国・四国地方の昼間の花粉飛散量は,2009年は2007年∼2008年に比べ各地点で約2倍 に増加しており,大量飛散日数についても,2007年∼2008年の約20日から2009年は約40日 に増加した。 1. は じ め に スギ花粉症患者は年々増加傾向にあり,現在国 民の10数%と推定されている。また,花粉症有病 率はスギ花粉飛散数との間に正の相関があること が示されている1)。一方,スギ花粉による感作か ら発症に至る段階において,ディーゼル排気粒子 や建築資材に含まれる化学物質などの環境因子の 関与も指摘されている2)。また,スギ・ヒノキ花 粉飛散時期に発生回数の多い黄砂現象により,鼻 症状の増悪が報告されている3)。よって,大気汚Analysis of Pollen Dispersion in Chugoku-Shikoku Region due to the Information from the Monitoring Network

Sys-tem of the Ministry of the Environment

**Takahisa ARAKI, Tsutomu TATANO(島根県保健環境科学研究所)Shimane Prefectural Institute of Public Health and Environmental Science

***Tsuyoshi MORIYAMA(日本気象協会 中国支店)Japan Weather Association

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染物質による人への健康影響の評価に際しては, 花粉飛散状況についても把握することが必要と考 えられる。 花粉飛散状況については,環境省花粉情報サイ トから環境省花粉観測システム(愛称:はなこさ ん),スギ花粉飛散開始マップおよびスギ・ヒノ キ科花粉の飛散終息予測について,また,都道府 県の花粉情報により地域の飛散量について知るこ とができる。島根県では,島根大学医学部による 県内7地点における飛散状況が示されている。中 国・四国地方では,中国・四国空中花粉研究会に より地域特性を考慮した飛散予報等の情報提供が 行われている4) これらの花粉情報の多くはダーラム型測定法に よっているが,2006年2月に中国・四国地方に導 入された環境省花粉観測システムは,自動測定器 KH―3000によりスギ・ヒノキ花粉の1時間平均濃 度を測定している。多田納ら5)は,島根県におけ る2006年∼2007年の自動測定データの解析結果か ら,ダーラム型測定法に準拠して花粉飛散状況を 評価できることを示した。2006年以降3シーズン は,スギ・ヒノキ花粉飛散量が平年並みであった が,2009年は大量飛散となった。そこで,花粉観 測システム情報の活用と,地域特性の把握を目的 として,中国・四国地方における2007年∼2009年 の自動測定データの解析を行ったので,その結果 を報告する。なお,花粉観測データは環境省ホー ムページよりダウンロードした。 2. 調 査 方 法 2.1 環境省花粉観測システム 花粉観測システムは,!日本気象協会により運 用されている。 ・自動計測器:株式会社大和製作所製,リアルタ イム花粉モニター KH―3000 ・測定方法:半導体レーザーによる前方および側 方散乱方式,28μm∼35μm の球形粒子数を計 数し空気中の濃度(個!m3について1時間平均 値で表す。 ・測定期間:2007年∼2009年,スギ・ヒノキ花粉 飛散シーズン2月∼5月 ・調査地点:中国・四国地方の各県において都市 部1地点,ただし山口県と愛媛県は2地点の計 11地点について解析した。島根県の調査地点は 松江市(保健環境科学研究所,松江市西浜佐陀 町)である。 ・気象データ:調査地点に近いアメダス観測デー タ 2.2 ダーラム型測定法 松江市の花粉観測システム地点から南南西,約 17km 地点で実施した。 ・測定方法:ダーラム型捕集器により1日間(原 則午前9時∼翌日午前9時)捕集し,顕微鏡観 察によってスギ花粉及びヒノキ花粉を計数す る。 ・測定期間:1月∼5月 ・調査地点:雲南市大東町 2.3 花粉飛散状況の地域区分の解析法 中国・四国地方11観測地点について,日平均濃 度が45個!m3以上になった大量飛散日を抽出し, 地点別の大量飛散日平均濃度(Cm 個!m3を求め た。次に4観測地点以上で大量飛散日となった日 を「中国・四国地方の大量飛散日」として,その 日平均濃度(C 個!m3と大量飛散日平均濃度との 比(R=C!Cm)を算出した。年別の R の個数は, 2007年(前 期18,後 期20),2008年(前 期13,後 期 17),2009年(前期32,後期24)であった。地点別 の R 値を用い,クラスター解析によって花粉飛 散時における地域的類似性を調べた。クラスター 化の方法は Ward 法,クラスター間の距離はユー クリッドの平方距離を採用した。 3. 結果および考察 3.1 花粉飛散開始日および本格飛散開始日 ダーラム法では,飛散開始日を連続2日以上・ 1個!cm2以上観測した最初の日,本格飛散開始 日を20個!cm2以上観測した最初の日としている。 自動計測法についても同様の判断目安を検討し, 松江市の飛散開始日について日平均値(1時∼24 時),昼間の平均値(8時∼17時)および日最高値 の3条件に対し総合的に判定した。そこで,中国 ・四国地方について,花粉濃度レベルを勘案した 測定地点別の判断目安を作成した(表 1)。この判 断目安に基づき花粉濃度により判定した,飛散開 始日と本格飛散開始日を表 2 に示した。2008年 の飛散開始日は,松江市ではダーラム法(大東町) 報 文 26 26─ 全国環境研会誌

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の判定結果やスギ花粉前線6)と一致したが,中国 ・四国地方においては地点間で飛散開始日に大き な違いがみられたことから,中国・四国空中花粉 研究会報告書4)を参考に一部修正を行った。飛散 開始日は,2007年が早く,次に2009年,2008年の 順であった。 飛散開始日に関する1月1日からの日最高気温 の累積値との関係について7),8),松江市の26年 ∼2009年の日最高気温累積値は,図 1 のとおり 300℃∼400℃の範囲にあった。2006年と2009年は 1月の日最高気温累積値の推移が類似していた が,前年12月の気温が高く,また飛散開始日前に 高温日の続いた2009年は飛散開始日が早かった。 逆に,飛散開始日以前が低温続きとなった2008年 は,飛散開始日がかなり遅くなった。飛散開始日 3日前まで12日間の日最高気温平均値は,2006年 7.3℃,2007年8.9℃,2008年6.0℃,2009年8.4℃ であった。 中国・四国地方における飛散開始日までの日最 高気温累積値は,図 2 に示すように,2007年と 2009年は高知市を除けば概ね300℃∼400℃の範囲 にあった。2008年は,松江市の場合と同様の理由 により日最高気温累積値が大きかった。日中の気 温が連続して10℃を超えるようになって飛散開始 になるとされており9),飛散時期の平均気温を約 10℃とすると,日最高気温累積値による飛散開始 日の予想方法においては10日程度のずれを見込む 必要がある。 表 1 花粉モニターによる花粉飛散開始日および本格飛散 開始日の判断目安 (個!m3 調査地点 飛散開始日 本格飛散開始日 日 平均値 昼間の 平均値 日 最高値 日 平均値 昼間の 平均値 日 最高値 鳥取市 4 6 20 20 30 150 松江市 10 15 50 100 150 800 笠岡市 4 6 20 30 50 200 広島市 4 6 20 30 50 200 宇部市 8 12 30 70 100 300 光市 10 15 50 100 150 800 徳島市 8 12 30 70 100 300 高松市 4 6 20 30 50 200 新居浜市 8 12 30 70 100 300 松山市 8 12 30 70 100 300 高知市 8 12 30 70 100 300 表 2 飛散開始日および本格飛散開始日 年 鳥取市 松江市 笠岡市 広島市 宇部市 光市 徳島市 高松市 新居浜市 松山市 高知市 飛散開始 2007 2!4 2!5 2!1 2!1 2!6 2!6 2!1 2!1 2!1 2!7 2!1 2008 2!12 2!21 2!15 2!12 2!16 2!20 2!12 2!12 2!12 2!12 2!15 2008修正 2!21 2!22 2!21 2!21 2!19 2!19 2009 2!7 2!7 2!6 2!7 2!6 2!7 2!4 2!4 2!5 2!6 2!5 本格飛散 2007 3!2 2!12 2!22 2!21 2!21 2!19 2!14 2!22 2!5 2!13 2!14 2008 3!10 2!29 3!10 2!29 2!29 2!29 3!16 3!10 3!10 3!10 3!10 2009 2!28 2!14 2!15 2!13 2!13 2!14 2!15 2!15 2!15 2!12 2!14 (備考)飛散開始日(2008修正):中国・四国空中花粉研究会誌 第19号(2008年12月)を参考とした 図 1 日最高気温の累積値(12 月および 1 月 1 日以降,松江市) 環境省花粉観測システム情報に基づく中国・四国地方の花粉飛散状況の解析 27 Vol. 35 No. 1(2010) ─27

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3.2 花粉飛散量の変化 自動計測器は花粉濃度(個!m3の1時間値を連 続して収集でき,ダーラム法の1日の降下個数 (単位は個!cm2の測定に対し,花粉の飛散状況 を時間単位で把握できる点で優れている。この特 徴を生かし,人の活動時間帯における昼間の花粉 飛散量を求めた。中国・四国地方で昼間(8時∼ 17時)と夜間(18時∼7時)についてその平均濃度 を比較すると,図 3 に示すように,飛散量の多 い2月∼3月に夜間では昼間の約60∼80%に減少 した。松江市の昼間の平均値について,飛散開始 日以降の累積濃度の推移を図 4 に示した。1シー ズンの累積値について,2006年∼2008年は約6000 個!m3でほぼ等し く,29年 に は2倍 の 約1 個!m3に増えた。また,飛散量は,27年と2 年では飛散開始後30日以内の飛散初期に1シーズ ン合計値の約70%を占めたのに対し,2006年と 2009年では飛散開始30日以降にも飛散が継続し, その飛散量は全体の半数以上であることが示され た。中国・四国地方の昼間の花粉飛散量につい て,累積濃度として図 5 に示した。松江市と同 様に多くの地点で,2009年は前年あるいは前々年 より約2倍に増加していた。 花粉飛散量については,前年夏期の気象条件が スギなどの花芽の成長に影響し,大飛散年の前年 は猛暑で日射量が多く,逆に小飛散の前年は冷夏 であるとされる10),11)。そこで,松江の26年∼ 2009年の花粉飛散量に及ぼす前年の気象条件につ いて,7月上旬・中旬・下旬別に平均気温(図 6 a),日照時間(図 6 b)を示した。2009年に大飛散 のあった前年(2008年)は他の年に比べ,平均気温 について上旬∼下旬を通して高温で,日照時間は 上旬と中旬に顕著な増加がみられ,これらの気象 因子が大量飛散に影響したものと考えられる。ま た,降水量は上旬∼下旬を通して少雨であった。 図 2 飛散開始日までの日最高気温の累積値 図 4 松江市における飛散開始日以降の累積濃度推移 (昼間) 図 5 昼間の花粉濃度累積値の年変化 (飛散開始日より 5 月末まで,8 時∼17 時) 図 3 夜間と昼間の平均濃度の比較 (昼間:8:00∼17:00、夜間:18:00∼7:00) 報 文 28 28─ 全国環境研会誌

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難波ら4)はヒノキ花粉数と梅雨時期の降水量との 間に負の相関があることを報告しており,ヒノキ 花粉については降水量も重要な要因である。 3.3 スギ花粉とヒノキ花粉の飛散状況に関する 地域的特徴 中国地方におけるスギ・ヒノキの植林の地域特 性について,好湿性のスギは中国山地と日本海側 で多く造林され,瀬戸内側の乾燥地では乾燥に強 いヒノキの植林が多くなっている12)。そのためヒ ノキ:スギの植栽面積は,山陰側では1:3,岡 山県では3:1であって,スギの開花期2月∼3 月中旬,ヒノキの開花期は4月上旬が中心であ る4)。そこで,花粉飛散量を日平均濃度の累積値 で表し,1シーズンのうち2月∼3月を前期,4 月∼5月を後期とすると,前期の飛散量が全花粉 飛散量に占める割合は,中国地方について図 7 の分布となった。松江市と光市では前期の花粉飛 散量の割合が約70%と大きく,スギ花粉の影響が 大きいと推定された。これに対し,鳥取,笠岡, 徳島,高松,新居浜では前期の飛散割合は50%以 下で,また,後期のうちの4月の飛散量の多かっ た笠岡,徳島,高松,新居浜についてはヒノキ花 粉の影響と考えられる。 島根県におけるスギ及びヒノキの花粉別の飛散 状況について,2008年∼2009年の雲南市における ダーラム法の測定結果より,降下個数の累積値の 推移を図 8 に示す。ヒノキ花粉については,2008 年,2009年ともに4月上旬より飛散開始となり, 2008年は5月上旬まで継続したが,2009年は4月 上旬の短期間で終了した。スギ花粉の飛散量につ いては,2009年は2008年に比べ約3倍の大量飛散 となったが,ヒノキ花粉の場合は大きな違いはみ られなかった。スギ:ヒノキの飛散量の比は, 2008年;3.5:1,2009年;9:1で,ス ギ の 植 栽面積の大きい島根県ではスギ花粉の影響が大き く,自動測定器におけるシーズン前期の値が後期 より高い値となる原因を裏付ける結果となった。 3.4 スギ花粉のシーズン飛散量の予測 花粉飛散量の予測について,日射量の測定地点 が少ないことから気温による予測が簡易であり, 高橋ら13)は前年と前々年の夏期気温の差が飛散量 図 6 b 7 月の日照時間 図 6 a 7 月の平均気温 図 8 山間地のスギとヒノキの花粉飛散量の推移 (大東町:ダーラム法) 図 7 全花粉飛散量に対するシーズン前期の占める割合 (2 月∼3 月の累積濃度の割合) 環境省花粉観測システム情報に基づく中国・四国地方の花粉飛散状況の解析 29 Vol. 35 No. 1(2010) ─29

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と相関が高く,大飛散年を確実に予測できると報 告している。そこで,中国・四国地方において, 「7月の日最高気温平均値に係る前年と前々年の 年次差」と「自動測定器による花粉濃度の累積値」 との関係を調べた。 中国・四国地方にはスギ花粉よりヒノキ花粉の 飛散量が多い地域がみられたため,累積期間はス ギの開花期の2月∼3月とした。気温年次差と花 粉濃度累積値との関係について,松江市(2006年 ∼2009年)における散布図を図 9 に,中国・四国 地方における回帰式を表 3 に示す。これらの関 係式については大飛散となった2009年の影響が大 きく,さらに大飛散年のデータを蓄積し予測精度 を高める必要がある。 3.5 大量飛散日の出現日数 ダーラム法に基づく日飛散数の花粉情報につい て,「少 な い(0∼9個!cm2「や や 多 い(10∼ 30個!cm2「多い(30∼50個!cm「非常に多 い(50個!cm2以上)」の4ランクで表すことが 標 準化され,花粉症状の悪化に係る疫学情報とし て,1シーズンにおける日飛散数30個!cm2以上 の出現日数が集計されている。この自動観測シス テムを併用するためには,自動測定法についても ダーラム法と同様な評価基準を設けることが必要 である。 スギ花粉の1時間当たりの沈着量 Q は,気中 の濃度 C と沈着速度 V から算出できる。沈着速 度は次のストークス式14)により1.3×1(cm!h) が得られた。これより,日飛散数30個!cm2は日 平均濃度96個!m3に対応すると推定された。 V=g・ρ・d2!(18・μ) ①式 ρ:花粉の比重1000kg!m3 d:花粉の粒径35μm μ:空気の粘性係数1.8×10−5kg!(m・s) 一方,鈴木15)はダーラム法と自動測定器 KH― 3000との比較試験によって,回帰式(y=0.7961x +21.438,R2=0.6,y:KH30型,x:ダ ー ラ ム 法,2005年,東 邦 大 学)を 得 て い る。こ の フィールド調査結果によ る と ダ ー ラ ム 法30個! cm2は自動測定法の45個!mに対応しており,ス トークス式の沈着速度は,フィールド調査結果に 比べ小さいことが分かった。2008年の中国・四国 地方の大量飛散日数について,ダーラム法で30個 !cm2以上の日数4)と自動測定法で日平均濃度45個 !m3以上の日数とを比較すると次のとおりほぼ同 様の結果となった。ダーラム法:岡山南備中22 日,広島たかの橋中央病院21日,香川大学医学部 18日,今治市日吉町29日。自動測定法:笠岡市25 日,広島市19日,高松市17日,松山市35日。よっ て,自動測定法における大量飛散日の評価基準を 日平均濃度45個!m3以上とすると,28年∼2 年の中国・四国地方における大量飛散日数につい て表 4 が得られた。中国・四国地方の1シーズ ンの平均的大量飛散日数は,2007年と2008年は約 20日であったが,2009年は約40日に増加した。 3.6 花粉飛散における中国・四国地方区分 花粉濃度の地点間の違いを補正するために,日 平均濃度(C 個!m3と大量飛散日平均濃度(Cm 個 図 9 気温年次差による花粉飛散量の予測 (松江市,2006 年―2009 年) 表 3 花粉飛散量の予測(2007 年―2009 年) ―累積濃度と気温年次差との関係― 1 松江市 y = 487 x + 3402 R2=0.995 2 鳥取市 y = 74 x + 643 R2=0.676 3 笠岡市 y = 394 x + 1537 R2=0.988 4 広島市 y = 525 x + 2044 R?=0.955 5 宇部市 y = 821 x + 1858 R2=0.999 6 光市 y = 1116 x + 4329 R2=0.972 7 徳島市 y = 308 x + 2149 R2=0.509 8 高松市 y = 327 x + 1439 R2=0.995 9 新居浜市 y = 315 x + 2890 R2=0.654 10 松山市 y = 826 x + 2806 R2=0.982 11 高知市 y = 1396 x + 2720 R2=0.999 y:2月∼3月分花粉累積濃度(個!m3 x:前年(t1)と前々年(t2)の気温年次差(X=t1−t2) (7月の日最高気温平均値) 報 文 30 30─ 全国環境研会誌

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!m3との比(R=C!Cm)を用い,中国・四国地方 の大量飛散発現時期を対象としてクラスター解析 を行った。2007年∼2009年のシーズン前期(2月 ∼3月)と シ ー ズ ン 後 期(4月∼5月)に つ い て, 地域区分結果を表 5 に示した。スギ花粉飛散時 期の前期においては,2007年と2009年は東部地域 と西部地域に,2008年は北部地域と南部地域にそ れぞれ地域区分された。また,ヒノキ花粉飛散時 期の後期においては,概ね,日本海側地域と瀬戸 内・四国地域の2地域に区分された。 4. ま と め (1)中国・四国地方の飛散開始日を決定するため に,日平均値,昼間の平均値および日最高値の 3条件について,花粉濃度レベルを勘案した測 定地点別の判断目安を作成した。 (2)中国・四国地方の飛散開始日は1月1日から の最高気温の累積値が300℃∼400℃に達する暦 日の範囲内にあり,10日程度のずれのあること を見込む必要があった。前年12月の高い気温の 影響により飛散開始日の早まったシーズン,あ るいは2月に低温日が続いて遅くなったシーズ ンがみられた。 (3)人の活動時間帯における花粉飛散量につい て,中国・四国地方の多くの地点において2009 年の累積濃度は前年および前々年より約2倍に 増加した。前年(2008年)7月に,平均気温が上 旬∼下旬を通して高温であったこと,日照時間 が上旬と中旬に顕著に増加したことがスギの花 芽の生育に影響したものと考えられる。 (4)花粉飛散シーズンの前期(2月∼3月)はスギ 花粉,後期(4月∼5月)はヒノキ花粉が主体で ある。前期の花粉累積濃度割合が松江市と光市 は約70%,鳥取,笠岡,徳島,高松,新居浜は 50%以下であり,スギ・ヒノキの植生分布の地 域的な特徴を示していると考えられた。島根県 東部の雲南市におけるダーラム法の測定結果に おいても,2009年は前年と比べスギ花粉では約 3倍,ヒノキ花粉は変化なく,島根県ではスギ 花粉の影響が大きいことを示した。 (5)スギ花粉のシーズン飛散量を予測するため, 「7月の日最高気温平均値に係る前年と前々年 の年次差」と「シーズン前期の花粉濃度累積値」 との関係を調べた。鳥取市,徳島市,新居浜市 を除く8地点で,両者に高い相関がみられた。 (6)大量飛散日として,自動測定器による日平均 濃度45個!m3をダーラム法30個!cm以上に対応 させると,中国・四国地方における平均的な大 量 飛 散 日 数 は,2007年 と2008年 の 約20日 に 対 し,2009年は約40日に増加した。 (7)中国・四国地方のスギ花粉飛散時期の飛散状 況について,東部・西部の2地域に区分される 場合(2007年,2009年)と,北部・南部の2地域 区分(2008年)されることをクラスター解析によ り示した。また,ヒノキ花粉飛散時期は,概ね, 日本海側地域と瀬戸内・四国地域の2地域に区 分された。 表 4 中国・四国地方における花粉の大量飛散日数 鳥取 松江 笠岡 広島 宇部 光 徳島 高松 新居浜 松山 高知 2007年 2月 1 13 3 9 6 12 12 4 14 10 11 3月 3 2 4 7 0 9 7 4 14 4 5 4月 5 5 12 14 1 5 21 7 22 2 13 5月 7 3 4 6 1 3 9 2 22 0 7 計 16 23 23 36 8 29 49 17 72 16 36 2008年 2月 0 2 0 1 2 1 0 0 1 1 1 3月 1 11 7 10 9 18 8 6 13 13 8 4月 0 2 16 7 1 13 15 10 16 16 7 5月 0 3 2 1 0 0 5 1 5 5 0 計 1 18 25 19 12 32 28 17 35 35 16 2009年 2月 1 12 3 9 10 13 4 3 8 12 12 3月 7 14 12 15 10 19 17 15 22 22 16 4月 11 11 22 18 4 9 23 21 22 16 16 5月 7 5 1 1 0 0 4 2 6 3 1 計 26 42 38 43 24 41 48 41 58 53 45 表 5 花粉飛散状況の地域区分 地点 前 期 後 期 2007年 2008年 2009年 2007年 2008年 2009年 鳥取市 A A A 松江市 A B A A A 笠岡市 B A A B B B 広島市 B A B B B 光市 B B B B B 宇部市 B B A A 徳島市 A B A B 高松市 A A A B B B 新居浜市 A B A B B 松山市 B B B B B B 高知市 B B B B 環境省花粉観測システム情報に基づく中国・四国地方の花粉飛散状況の解析 31 Vol. 35 No. 1(2010) ─31

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―引 用 文 献― 1) 朝倉光司:アレルギー性鼻炎の地域特性,アレルギー, 55,1390―1393,2006 2) 中村裕之,人見嘉哲:大気汚染とアレルギー疾患―疫 学から病理・病態学そして新しい予防医学まで,北陸 公衛誌,34,(2),49―57,2008 3) 佐藤達明:黄砂現象時のアレルギー性鼻炎症状の変化, 耳鼻臨床,102,831―839,2009 4) 中国・四国空中花粉研究会:中国・四国空中花粉研究 会誌,第19号,2008 5) 多田納力,黒崎理恵:環境省「はなこさん」の花粉情 報に基づく花粉 飛 散 の 挙 動 解 析,島 根 保 環 研 所 報, 48,55―61,2006 6) 佐橋紀男:2008年のスギ花粉前線,日本花 粉 学 会 誌, 54,(1),29―37,2008 7) 田中博子,木下康子,原良平:滋賀県におけるスギお よびヒノキ花粉飛散数調査 2002―2004,滋賀県立衛生 環境センター所報,39,104―111,2005 8) 薬袋勝:甲府における春期花粉飛散状況,山梨県衛生 公害研究所年報,46,51―58,2003 9) 佐橋紀男:スギとヒノキの花粉形態,アレルギー・免 疫,13,98―104,2005 10) 佐橋紀男:花粉飛散の予測―統計によるスギ花粉の総 飛散数および飛散開始日―,臨床と薬物治療,14,257 ―260,1995 11) 佐橋紀男:スギ花粉と30年,ファルマシア,42,156― 161,2006 12) 三好教夫:中国地方の花粉情報システム,アレルギー の臨床,14,184―187,1994 13) 高橋裕一,川島茂人:夏期気温の年次差を利用したス ギ花粉総飛散数の新予測手法,アレルギー,48,1217― 1221,1999 14) 神田学:地域気象モデルを用いた花粉飛散シミュレー ション,環境技術,32,178―184,2003 15) 鈴木基雄:スギ・ヒノキ科花粉の計測と予測,大気環 境学会誌,42,A34―A49,2007 報 文 32 32─ 全国環境研会誌

参照

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