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Al Cu Mg 3 1, 1 2, J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 83, No , pp The Japan Institute of Metals and

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Al-Cu-Mg 3 元系状態図の熱力学的解析

林   直 宏

1,*1

中 島 一 喜

2,*2

榎 木 勝 徳

3

大 谷 博 司

3

1東北大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻 2九州工業大学大学院工学府

3東北大学多元物質科学研究所

J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 83, No. 10 (2019), pp. 378-387 Ⓒ 2019 The Japan Institute of Metals and Materials

Thermodynamic Analysis of the Al-Cu-Mg Ternary System

Naohiro Hayashi 1,*1, Kazuki Nakashima 2,*2, Masanori Enoki 3 and Hiroshi Ohtani 3 1 Department of Material Science, Graduate School of Engineering, Tohoku University, Sendai 980-8579 2 Graduate School of Engineering, Kyushu Institute of Technology, Kitakyushu 804-8550

3 Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials, Tohoku University, Sendai 980-8577

A thermodynamic assessment of the Al-Cu-Mg ternary system was attempted using the first-principles calculation and CALPHAD ap-proach. For Laves phase to which polymorphic structures are known, the Gibbs free energies of formation were evaluated by applying the cluster expansion and cluster variation method to each structure of C14, C15 and C36. Furthermore, concerning the free energies of formation of Al2Mg and Cu2Mg as the end-members of these structures, entropy of the lattice vibration was considered. This procedure results in more accurate evaluation of the free energy of formation for the Laves phase. As for the ε (Al30Mg23) phase and CuMg2 phase that the thermody-namic properties were not well clarified, formation energies were also evaluated. Thermodythermody-namic analysis was accomplished by an introduc-tion of the result based on these first-principles approach as well as some experimental data in the framework of the CALPHAD method. Ac-cording to the calculated result, it is suggested that the structural transformation in the Laves phase occurs in the Cu rich side than the previously reported composition region. Solidification process of a commercial Al alloy was discussed using the Scheil-Gulliver simulation.  [doi:10.2320/jinstmet.JAW201903]

(Received May 24, 2019; Accepted June 26, 2019; Published August 30, 2019)

Keywords: phase diagram, calculation of phase diagrams CALPHAD method, thermodynamic analysis, Al-Cu-Mg ternary system, Laves phase 1.  緒   言 Al合金は軽量で高い強度を持つことから航空機,輸送機, 機械部品など多方面で広く利用されている.高い強度を持つ Al合金としてはジュラルミンや超ジュラルミンが知られて おり,これらの Al 合金は 2000 系 Al 合金に分類される. 2000系 Al 合金は主要添加元素として Cu や Mg を含み,時 効硬化現象によってその高い強度を得ている.時効硬化は準 安定相の析出過程に対応して合金の機械的強度が変化するた め,準安定析出物の生成を理解し,適切な合金設計を行う必 要がある.この時,合金の組成や熱処理の温度を選定するた めの基礎的な情報源としての状態図が必要である. そこで本研究では,第一原理的手法と CALPHAD 法を用 いて Al-Cu-Mg 3 元系状態図を熱力学的に解析することを目 的にした.特に多形の存在が知られている Laves 相に対して は,C14,C15 および C36 相の各構造についてクラスター展 開・変分法(Cluster Expansion-Cluster Variation Method:以下

CE-CVM とする)により生成自由エネルギーを評価した.ま たこの相を 3 元化合物として熱力学的に表現した場合の終端 化合物である Al2Mgおよび Cu2Mgについて,格子振動のエ ントロピーを取り入れてその生成自由エネルギーを評価し た.また熱力学的性質が不明であった AlMg-ε(Al30Mg23)相 や CuMg2相に対しても,同様の手法によって生成に伴う熱 力学量を評価した.これらの第一原理に基づく計算結果を, 実験的データとともに CALPHAD 法に導入して熱力学的解 析を行った. 2.  解 析 方 法 Al-Cu-Mg 3 元系を構成する相について,本研究で用いた 相名,化学量論組成,空間群,熱力学モデルを Table 1 にま とめた.本章でははじめに生成自由エネルギーの計算手法を 述べ,次に熱力学的解析に必要な各相の自由エネルギーモデ ルについて説明する. 2.1  第一原理計算による全エネルギーおよび力定数の計算 第一原理計算は,projector augmented wave(PAW)法による

第一原理計算コード VASP を使用した 1,2).交換相関項には

*1 東北大学大学院生(Graduate Student, Tohoku University) *2 現在:(株)UACJ(Present address: UACJ Corp.)

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一般化勾配近似(GGA)を用い,Al 原子は 3s2 3p1,Cu 原子は 3d10 4s1,Mg 原子は 3s2を価電子とした PAW-PBE 擬ポテン シャルを使用した.また平面波のエネルギーカットオフは 400 eVとした.スピン分極は与えず,非磁性状態における 電子状態から規則構造の全エネルギーと力定数を計算した. このようにして得られた全エネルギーおよび力定数を用い て,Laves 相の終端化合物である Al2Mgおよび Cu2Mgにつ いて,化学量論組成の構造を用いた準調和近似計算による自 由エネルギーの評価を行った.一方,Al-Mg 2 元系における AlMg-ε 相については,単位胞の原子数が 53 個で複雑な構 造であるため,絶対零度におけるエンタルピーだけを熱力学 解析に導入した.絶対零度における AlMg-ε 相の生成エンタ ルピーは,その全エネルギーから純 Al と純 Mg の全エネル ギーを差し引くことで評価し,熱力学解析に導入した. 2.2  CE-CVM による Laves 相の生成自由エネルギーの計算 Al-Cu-Mg 3 元系における Laves 相の多形である C14,C15 および C36 それぞれの結晶構造について,Mg を固定した (Al,Cu)2Mg相の生成自由エネルギーを CE-CVM により計算 した 3).CE-CVM の方法論については,文献 4)に詳細を記 しているため本論文では割愛する. Laves相の多形である C14,C15 および C36 はそれぞれ六 方晶,立方晶,二重六方晶の結晶構造をもつことが知られて いる.Cu-Mg 2 元系で安定な Cu2Mgには,それぞれの結晶 構造に Cu サイトと Mg サイトがあるが,Al-Cu-Mg 3 元系 ではこれら 3 種類の Laves 相は,Cu2Mgから Al2Mg方向に 向かって固溶限を広げており,この構造の原子サイトにおい て Cu サイトに Al が置換固溶していることが確認できる 5) したがって本研究では(Al,Cu)2Mg1の構造モデルを用いて, 各結晶構造における規則構造を作成した.このモデルから C14では計 44 個,C15 では計 108 個,C36 では計 54 個の配 置の異なる規則構造のエネルギーを第一原理計算から求め, CE-CVM 計算を行った.また CE-CVM で考慮するクラス ターは,C14 では第 6 隣接までの 5 体を最大クラスターとし た計 40 個のサブクラスターを,C15 では第 3 隣接までの 3 体を最大クラスターとした計 78 個のサブクラスターを選択

Table 1 List of phases observed in the Al-Cu-Mg ternary system. Crystal structures and thermodynamic models applied in the present study were summarized.

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した.また C36 では第 7 隣接までの 3 体を最大クラスター とした計 17 個のサブクラスターを用いた.選択したクラス ターによる交差相関誤差は,C14 では 6.06 meV/site,C15 で は 6.78 meV/site,C36 では 13.49 meV/site であった.このよ うにして得られた有効クラスター相互作用を用いて,673 K における各 Laves 相の生成自由エネルギーを計算した. 2.3  自由エネルギーへの格子振動の寄与 Laves相の有限温度における生成自由エネルギーを計算す るためには,2.2 節で求めた CE-CVM による自由エネル ギーに加えて,温度上昇に伴う格子振動の効果を考慮する必 要がある.しかし,クラスター展開に用いた全ての規則構造 に対して格子振動の効果を取り入れた計算を行うことは困難 であるため,本研究では C14,C15 および C36 構造の終端化 合物である Al2Mg及び Cu2Mgについて格子振動のエントロ ピーを計算し,固溶領域ではその組成平均で近似してこの効 果を導入した.また,Cu-Mg 2 元系における CuMg2相につ いても同様に格子振動のエントロピーを考慮して生成自由エ ネルギーを計算した. 本研究では,この格子振動の計算に際して準調和近似法 (quasi-harmonic approximation)を適用した.具体的には,温 度 T におけるヘルムホルツ自由エネルギーへのフォノンか らの寄与 Fph(T)は,式( 1 )で記述される. Fph(T ) = 12 q j ωq j+ kBT q j ln 1 − exp(− ωq j/kBT) ( 1 ) ここで ωqjは波数ベクトル q,j 番目のフォノンの振動数で あり, は換算プランク定数,kBはボルツマン定数である. 温度 T,圧力 P におけるギブス自由エネルギー G(P, T) は, 体積 V におけるヘルムホルツ自由エネルギー Fph(T; V)を用 いて式( 2 )のように表される. G(P, T ) = min V U(V) + Fph(T ; V) + PV ( 2 ) ここで U(V)は体積 V における内部エネルギーであり,鉤括 弧内の値が最小となる V が平衡体積であるため,その平衡 体積における自由エネルギーが得られることになる. 準調和近似法によるこれらの一連の計算は Phonopy コー ド 6)を用いて,0 K から融点近傍までの温度範囲において平 衡体積における生成自由エネルギーを計算し熱力学解析に用 いた. 2.4  各相のギブス自由エネルギーの記述 本研究で用いた熱力学モデルを Table 1 にまとめた.本節 では,適用したこれらの熱力学モデルの詳細をまとめる. 2.4.1  液相,一次固溶体の自由エネルギー 液相と一次固溶体である fcc 相((Al),(Cu))および hcp 相 ((Mg))の自由エネルギーについて,本研究では正則溶体モ デルによって記述した.この記述による 3 元系 ϕ 相(ϕ =  L, fcc,hcp)の 1 モルあたりのギブス自由エネルギーは式( 3 ) のように表すことができる. Gφ = xAl◦GφAl+ xCu◦GφCu+ xMg◦GφMg + RT (xAlln xAl+ xCuln xCu+ xMgln xMg)

+ xAlxCuLφAl,Cu+ xAlxMgLφAl,Mg+ xCuxMgLφCu,Mg

+ xAlxCuxMgLφAl,Cu,Mg ( 3 ) ここで xiは元素 i のモル分率,R は気体定数,T は絶対温度 である.◦Gφ i は ϕ 相における元素 i の自由エネルギーであり, 一般に Lattice stability パラメータと呼ばれ,絶対温度 T の関 数として式( 4 )のように与えられる. ◦Gφ i −◦Hiref= A + BT + CT ln T + DT2 + ET3+ FT7+ IT−1+ JT−9 ( 4 ) ここで各係数 A,B などは定数で,Href i は T =  298K におけ る基準状態での元素 i の 1 モルあたりのエンタルピーであ る.また,式( 3 )中の Lφ i, j は ϕ 相における元素 i と j の間の 相互作用パラメータであり,Redlich-Kister 7)の多項式にした がって式( 5 )に示した組成依存性を与えた. Lφ i, j=0L φ i, j+1L φ i, j(xi− xj) +2L φ i, j(xi− xj)2+3L φ i, j(xi− xj)3 ( 5 ) さらに nLφ i, jには定数 a ,b および c を用いて式( 6 )に示す 温度依存性を与えた. nLφ i, j= a + b T + c T ln T ( 6 ) また式( 3 )中の Lφ Al,Cu,Mg は Al,Cu,Mg 原子間の 3 元系相互 作用パラメータであり,Hillert 8)が提唱した式( 7 )を適用し て記述した. Lφ

Al,Cu,Mg= xAl0LφAl,Cu,Mg+ xCu1LφAl,Cu,Mg+ xMg2LAl,Cu,Mgφ ( 7 )

nLφ

Al,Cu,Mg に対しては式( 6 )で示した 2 元系相互作用パラ

メータと同様の温度依存性を与えた. 2.4.2  化学量論化合物相

AlMg-β 相,AlMg-ε 相,CuMg2相,ζ 相,δ 相,α2相の 2

元系化合物相および S 相,Q 相,V 相の 3 元系化合物相につ いては,組成幅を持たない化学量論化合物として,副格子モ デルによって自由エネルギーを記述した.このとき,例えば 化学量論化合物 AllCumMgn相 1 モルあたりの生成自由エネ ルギーは式( 8 )のように記述できる. GAllCumMgn

Al:Cu:Mg − lGrefAl − mGrefCu− nGrefMg

= A + BT + CT ln T + DT2+ ET3· · · ( 8 ) ここで Gφ Al:Cu:Mg は第 1 副格子を Al 原子が,第 2 副格子を Cu 原子が,第 3 副格子を Mg 原子が占有している規則構造 ϕ 相 のギブス自由エネルギーである.また,“:”は副格子の区切 りを表しており,◦Gref Al と ◦GrefCuおよび ◦GrefMg はそれぞれ基準 状態で安定な構造の元素 Al,Cu,Mg 1 モルあたりのギブス 自由エネルギーである. 2.4.3  非化学量論化合物相 AlMg-γ 相,θ 相,η 相,ε1相,ε2相,γ0相,γ1相,β 相,

T相,Laves_C14 相,Laves_C15 相,Laves_C36 相 で は, 副

格子上で異種原子が置換固溶する副格子モデルを用いた.各 相に適用した熱力学モデルを Table 1 にまとめた.例えば

Laves_C14相((Al,Cu,Mg)(Al,Cu,Mg)2 1)ではギブス自由エネ

(4)

GLaves C14= i=Al,Cu,Mg j=Al,Cu,Mg y(1)i y(2)j GLaves C14i: j +2RT i=Al,Cu,Mg y(1)i ln y(1)i + RT i=Al,Cu,Mg y(2)i ln y(2)i + i=Al,Cu,Mg j=Al,Cu,Mg k> j y(1)i y(2)j y(2)k LLaves C14 i: j,k + y(1)j y(1)k y(2)i LLaves C14j,k:i + i=Al,Cu,Mg y(1)i y(2)Aly(2)Cuy(2)MgLLaves C14

i:Al,Cu,Mg+ y(1)Aly(1)Cuy(1)Mgy(2)i LLaves C14Al,Cu,Mg:i

( 9 ) ここで y(n) i は第 n 副格子における i 原子の格子占有率であり, Lは各副格子中での異種原子間の相互作用パラメータであ る.また L 中の添字“,”は同じ副格子中での元素の区切りを 表している. 3.  計算結果と考察 3.1  熱力学的解析 本節では,はじめに Al-Cu-Mg 3 元系を構成する各 2 元系 と 3 元系の実験情報を整理し,相平衡の概要,熱力学的解析 の結果を説明する. 3.1.1  Al-Mg 2 元系 この 2 元系に関する文献集録 9)によれば,Al-Mg 2 元系は 液相(L),(Al)と(Mg)の各一次固溶体,AlMg-β 相,AlMg-ε相,AlMg-γ 相の化合物により構成されている.相境界に ついては,AlMg-ε 相 10,11),AlMg-γ 相 12,13)の生成領域と相 境界の実測値 14-23)が報告されている.またこの 2 元系にお け る 熱 力 学 的 性 質 に つ い て は,Hultgren 24),Brown ら 25) Bhattら 26)によって報告がなされている.また Saunders 27) Liangら 28)によって熱力学的解析が行われている. 本研究では,計算した AlMg-ε 相の絶対零度でのエンタル ピー(−1810 J/mol)と,Laves_C14 相((Al,Cu)2Mg)の終端化 合物である Al2Mgの 298 K における生成自由エネルギー (−4463 J/mol)を考慮してこの 2 元系を再解析した.特に後 者の Al2Mgの生成自由エネルギーの計算値を従来の熱力学 的解析 27-29)にそのまま導入すると,これらの構造が安定相 として出現するため,この点を考慮しながら,相境界の実測 値とともに解析を行なった.評価された熱力学パラメータを Table 2に示した.また,これを用いて計算した Al-Mg 2 元 系状態図を相境界の実験値とともに Fig. 1 に示した. 3.1.2  Cu-Mg 2 元系 Nayeb-Hashemi ら 30)の文献集録によれば,Cu-Mg 2 元系 は 液 相(L),(Cu),(Mg)の 各 一 次 固 溶 体,Laves_C15 相 (Cu2Mg),CuMg2相の化合物により構成されている.この 2 元系に関して,熱分析による相境界 30,31),Laves_C15 相の存 在領域 32),(Cu)への Mg の溶解度 33,34)が報告されている. また固相の熱力学的性質については,Laves_C15 +  CuMg2の 生成エンタルピー 35),これらの化合物の標準生成エンタル ピーと標準生成エントロピー 36-39),Laves_C15 や CuMg 2の 熱容量 39-41),第一原理計算による Laves_C15 と CuMg 2の生 成エンタルピーの計算値 42)などの報告がある.液相につい ては,活量測定 43-45),自由体積理論による熱力学量の評 価 46),Hultgren 24)による推奨値が報告されており,熱力学的 解析 42,47,48)も行われている.

Table 2 Optimized thermodynamic parameters for the Al-Cu-Mg system.

(5)

本研究ではこれらの先行研究の結果を参考にしながら,

Laves_C15相および CuMg2相の格子振動を考慮した生成自

由エネルギーの計算結果によく一致するように,熱力学パラ

メータを再検討した.Fig. 2 に CuMg2と Laves_C15 の準調和

近似によるギブス生成自由エネルギーの計算結果を示した.

Fig. 2中の実線と点線は熱力学的解析の結果を表している.

解析の結果得られた Cu-Mg 2 元系の熱力学パラメータを

Ta-Fig. 1 Calculated Al-Mg binary phase diagram compared with some experimental data. 14-23)

(6)

ble 2に示した.また,これを用いて計算した 2 元系状態図 を相境界の実験値とともに Fig. 3 に示した. 3.1.3  Al-Cu 2 元系 Al-Cu 2 元系には液相(L),Al と Cu の一次固溶体である fcc相のほか,θ,η,ζ,ε1,ε2,δ,γ0および γ1,β,α2が生 成する.この 2 元系の相平衡や熱力学的性質に関する詳細な 集録が Murray 49)により行われており,熱力学的解析も Saun-ders 50)および Dinsdale 51)により行われている.また最近で は,矢部ら 52)が第一原理計算による fcc 基規則構造の生成エ ネルギーを考慮しながら,CALPHAD 法によって準安定領域 相境界を含む 2 元系状態図を計算している.本研究では矢部 ら 52)の研究による熱力学パラメータを採用した. 3.1.4  Al-Cu-Mg 3 元系 Al-Cu-Mg 3 元系には 3 元化合物として S 相,T 相,Q 相, V相,Laves 相が生成し 5),Laves 相は Cu 2Mg側から Al-rich 領域に向かって C15,C36,C14 が出現する 53) この 3 元系の相境界に関して,不変系反応の温度と組 成 54-57),縦断面状態図として,0-40 mass%Cu 合金の縦断面

状 態 図 56),1 mass%Mg ま で の 1.0 mass%Cu,2.5 mass%Cu

および 4.0 mass%Cu での縦断面状態図 58),等温断面状態図 として,703 K の等温断面状態図 56),673 K の等温断面状態 図 53)が報告されている.またこの 3 元系の熱力学データと して,主として溶解熱量測定によって Laves 相(C15)の生成 エンタルピー測定 59),298 K における S 相(Al 2CuMg)の生成 エンタルピー測定 60),液相の混合エンタルピー測定 61)

Al0.25Mg0.75-Cu,Al0.75Mg0.25-Cu,Al0.5Mg0.5-Cu,Al0.65Cu0.35

-Mgにおける断面での 986 K での液相の混合エンタルピー測

定 62),1273,1293,1403 K に お け る 液 相 の Mg の 活 量 測

定 63)の 報 告 が あ る. さ ら に Chen ら 61),Buhler ら 29),Cui

ら 64)による熱力学的解析が行われている. 本研究では,CE-CVM により計算した C14,C15 および C36構造の Laves 相の生成自由エネルギーとともに,Urazov ら 54),Gable ら 58)による縦断面の相境界,Kim ら 62)による液 相の混合エンタルピーの実測値に基づいて 3 元系の熱力学的 解析を行った.得られた Al-Cu-Mg 3 元系の熱力学パラメー タを Table 2 に示した.これらの熱力学パラメータを用いて 計算した 80 mass%Al,60 mass%Al における 3 元系縦断面状 態図をそれぞれ Fig. 4(a), (b)に実測値 54)とともに示した.

Fig. 2 Calculated free energy curves for CuMg2 and Laves_C15 in the temperature range of 300 and 1300 K by means of the quasi-har-monic approximation and the thermodynamic analysis.

Fig. 3 Calculated Cu-Mg binary phase diagram compared with the experimental data. 31)

Fig. 4 Calculated isopleth sections at (a) 80 mass%Al and (b) 60 mass%Al of the Al-Cu-Mg ternary phase diagrams compared with the experimental data. 54)

(7)

Urazovらによる相境界は本解析により概ねよく再現されて おり,各相の間の熱力学的整合性が確立されていると考えら れる. 3.2  考察 3.2.1  (Al)の固溶限に及ぼす合金元素の影響 2000系アルミニウム合金(Al-4.0∼4.4 mass%Cu-0.5∼1.5

mass%Mg)を想定した Al-1 Mg,Al-4

mass%Cu-Mg合金における相平衡の計算結果を,Gable ら 58)の実測値

と比較しながら Fig. 5(a), (b)に示した.固溶体である(Al) に対する Cu の固溶度は 5.7 mass%程度で小さいが,Mg の それは 17 mass%と大きい.したがって(Al)単相が得られる 元素の溶解限は Mg よりも Cu の添加量に敏感に影響される と考えられる.実際 Fig. 5 に示した状態図においても,わず か数%の Cu の添加量の変化によって,(Al)単相領域が著し く狭くなっていることが確認できる. 3.2.2  Laves 相の熱力学的安定性について 2.2節で述べたように,本研究では CE-CVM により Laves 相の 3 種類の構造のギブス生成自由エネルギーを評価した. 673 Kでの CE-CVM による計算値と熱力学的解析の結果を

Fig. 6に示した.この Fig. 6 より,Cu2Mg側から C15,C36,

C14の順で Laves 相が出現することが確認されたが,この傾

向は Mel nik ら 53)の実験結果と一致していた.Laves_C14 相

の CE-CVM による計算値と熱力学的解析の結果にやや相違

が見られるが,これは Urazov ら 5),Mel nik ら 53)による 3 元

化合物相との平衡関係を考慮した結果である.この熱力学パ ラメータを用いて計算した 673 K での等温断面状態図の計算 結果を Fig. 7 に示した.本研究による 673 K での等温断面状 態図の計算結果は Urazov ら 5)の実験結果をよく再現したも のになっているが,Urazov らは Laves 相の多形を考慮して いないので,この相の多形の存在領域について Mel nik ら 53) の実験結果と比較した.その結果,Mel nik らの実験結果に

Fig. 6 Calculated free energy curves for Laves phases (C14, C15 and C36) at T = 673 K. The lines show the results of the thermody-namic analysis, while the symbols denote the values obtained by CE-CVM.

Fig. 5 Calculated isopleth section at (a) 1 mass%Cu and (b) 4 mass%Cu of the Al-Cu-Mg ternary phase diagram compared with

(8)

比べていずれの Laves 相も 10%前後高 Cu 側の組成で生成し ていることがわかった.Mel nik らは顕微鏡観察と X 線回折 により合金中に生成した相の同定を行なっているが,Laves 相の多形構造の類似性からこれらが完全に分離できているか どうかについてさらに調査が必要であるように思われる.一 方,Fig. 6 の説明でも言及したように,本研究の自由エネル ギーの計算では,CE-CVM の結果は熱力学的解析よりも高 Al側の領域で Laves_C14 が生成する可能性を示唆している. このことから,Q,S,T,V の 3 元化合物の生成ギブス自由 エネルギーも第一原理的手法で評価する必要が認められる. このうち,S (Cmcm) 65),T (Im¯3) 66),V (Pm¯3) 67)に関しては 原子位置を含めた結晶構造の報告があるが,Q 相に関しては 空間群 Im¯3m の報告があるだけで,その原子位置の詳細は不 明である 68).そのため,Q 相について第一原理計算による 自由エネルギーの評価を行うには,この構造の原子位置を含 めた構造の同定が必要である. 3.2.3  液相面の計算結果 Fig. 8は Al-Cu-Mg 3 元系における液相面投影図の計算結 果である.また不変系反応についてのこれまでの実験値との 比較を Table 3 に,本研究で計算された不変系反応の種類と 内容を Table 4 にそれぞれ示した.Fig. 8 から,この 3 元系 の(Al)と(Mg)の初晶領域は広く,C14 の初晶面とともに液 相面の主な構成要素となっている.Fig. 9 に代表的な鋳造合 金である AC1B を想定した Al-4.5 mass%Cu-0.25 mass%Mg 合金の凝固過程を計算した結果を示した.Fig. 9 の実線は, 合金元素が液相内では完全に混合するが固相では全く拡散が 起こらないことを仮定した Scheil-Gulliver の近似式 69,70)によ る液相線温度と固相率の関係をプロットしたものである.一 方点線は平衡凝固における凝固曲線である.この凝固曲線の 比較から,凝固の最終段階では 80 K ほどの過冷が生じてい ることがわかる. 4.  結   言 本研究では Al-Cu-Mg 3 元系において 3 種類の構造が互い に平衡する Laves 相および CuMg2相の生成ギブス自由エネ ルギーと,AlMg-ε(Al30Mg23)の生成エンタルピーを,第一 原理的手法によって評価した.これらを実験値とともに CALPHAD法に導入して熱力学的解析を行い,この 3 元系の 平衡状態図を計算した.本研究で得られた知見は次のように まとめられる. (1) 本研究で計算した化合物の自由エネルギーは,従来 の実験値とも矛盾なく整合していることがわかった.これら の情報を用いて CALPHAD 法により解析された熱力学パラ メータは,相境界や熱力学量に関する実験結果を高い精度で 再現することが確認された. (2) 得られた 3 元系状態図から,Laves 相は Cu2Mg側か ら Al2Mg側に向かって C15,C36,C14 の順で平衡相として

Table 3 Comparison of invariant reaction temperatures and compositions between the present calculation and some experimental studies. 54-57) Fig. 8 Calculated liquidus projection of the Al-Cu-Mg ternary

(9)

出現するが,この結果は実験的に確認されている結果と一致 した.しかしそれらの生成領域は,これまでに報告されてい る組成よりも高 Cu 領域に存在する傾向がみられた. (3) (Al)単相が得られる元素の溶解限は Mg よりも Cu の添加量に敏感に影響されることがわかった.また Scheil-Gulliverの近似式によって実用鋳造材料の凝固シミュレー ションを行ったところ,平衡凝固に比較して 80 K ほどの過 冷が生ずることが明らかになった. この成果の一部は JSPS 科研費 16H02378 の助成を受けて 遂行されたものです.ここに謝意を表します. 文   献

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Table 2   Optimized thermodynamic parameters for the Al ‑ Cu ‑ Mg  system.
Fig. 2 中の実線と点線は熱力学的解析の結果を表している.
Fig. 3 Calculated Cu‑Mg binary phase diagram compared with the  experimental data.  31)
Fig. 6 に示した.この Fig. 6 より,Cu 2 Mg 側から C15,C36,
+2

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