1
2019 年 度 証 券 ゼ ミナ ー ル 大会
5第 3 テ ー マ
「 今 後 の 家計 の 資 産形 成 手 段と し て の 投資 信 託 」
10立 教 大 学 亀 川 ゼ ミ ナ ー ル 下 住 班
152
目 次
は じ め に ... 4
第 一 章 資 産 形 成 の 重 要 性 ... 5
第 一 節 「 人 生 100 年 時 代 」 と 言 わ れ る 老 後 生 活 に 向 け て ... 5 第 二 節 家 計 の 金 融 資 産 構 成 と ラ イ フ イ ベ ン ト ... 6 5第 二 章 投 資 信 託 の 概 要 ... 7
第 一 節 投 資 信 託 の 仕 組 み ... 7 第 二 節 投 資 信 託 の 歴 史 ... 8 第 三 節 株 式 市 場 に お け る 投 資 信 託 の あ り 方 ... 11 第 四 節 今 後 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 ... 12 10第 三 章 投 資 信 託 の 現 状 ... 13
第 一 節 近 年 の 投 資 信 託 の 動 向 ... 13 第 一 項 制 度 ... 13 第 二 項 FinTech ... 18 第 三 項 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 ... 19 15 第 二 節 投 資 信 託 の 問 題 点 ... 20 第 一 項 運 用 会 社 ... 20 第 二 項 販 売 会 社 ... 25 第 三 項 金 融 リ テ ラ シ ー ... 29 第 四 項 確 定 拠 出 年 金 ... 33 20第 四 章 提 案 ... 36
第 一 節 目 論 見 書 の 改 定 ... 36 第 二 節 販 売 会 社 ... 38 第 一 項 KPI の 見 直 し ... 38 第 二 項 販 売 会 社 の 説 明 責 任 保 証 サ ー ビ ス ... 40 253 第 三 節 金 融 リ テ ラ シ ー ... 42 第 一 項 資 産 形 成 学 習 ゲ ー ム の 導 入 ... 42 第 二 項 投 資 信 託 学 習 ゲ ー ム の 導 入 ... 43 第 四 節 企 業 型 DC に お け る IFA の 活 用 ... 45 第 五 節 GBSA 制 度 の 確 立 ... 47 5
お わ り に ... 52
10 15 20 254 は じ め に 男 女 と も に 日 本 の 平 均 寿 命 は 80 歳 を 超 え「 人 生 100 年 時 代 」と 言 わ れ る 時 代 に 近 づ い て き た 。 平 均 寿 命 の 長 寿 化 は 老 後 に 必 要 な 資 金 の 増 大 を も た ら し て い る 。同 時 に 少 子 高 齢 化 は 進 み 、公 的 年 金 の 限 界 と も 言 わ れ て い る 。金 融 庁 が「 貯 5 蓄 か ら 資 産 形 成 へ 」 と い う ス ロ ー ガ ン を 掲 げ て い る が 、 現 在 の 日 本 の 家 計 に お け る 金 融 資 産 の 割 合 は 、現 金・預 金 が 53.3% を 占 め て お り1、国 民 が 能 動 的 に 資 産 形 成 を 行 っ て い る と は 言 え な い 状 況 で あ る 。 そ の 中 で 、 今 年 6 月 に 金 融 庁 が 公 的 年 金 以 外 に 2000 万 円 の 老 後 資 産 が 必 要 で あ る と い う 報 告 書 を 提 出 し た 。 資 金 不 足 に 関 す る ニ ュ ー ス を 見 て 、「 資 産 運 用 に 関 し て 考 え て い る 」と 回 答 し た 10 人 は 6 割 以 上 を 占 め る 。 一 方 で 、 約 2 割 の 人 が 「 出 来 る だ け 長 く 働 き 、 資 産 運 用 は 行 わ な い つ も り だ 」 と 回 答 し 、 長 寿 生 活 に 備 え た 資 産 形 成 に 対 し て 慎 重 な 姿 勢 が 見 ら れ る2。 長 期 積 立 分 散 投 資 と 謳 わ れ る 投 資 信 託 に は 、「 少 額 で 始 め る こ と が で き る 」 「 手 軽 に 分 散 投 資 が で き る 」「 専 門 家 が 運 用 を 行 う 」 と い う 三 つ の 特 徴 が あ る 。 15 そ の た め 、初 心 者 が 利 用 し や す い と い う 利 点 が あ り 、確 定 拠 出 年 金 や NISA の よ う な 税 制 優 遇 制 度 に よ っ て 利 用 促 進 さ れ て い る に も 関 わ ら ず 、 国 民 に 広 く 普 及 し て い な い 。 本 論 文 で は 第 一 章 で 資 産 形 成 の 重 要 性 に つ い て 述 べ る 。 第 二 章 で は 投 資 信 託 の 概 要 に つ い て 歴 史 を 遡 っ て 詳 し く 解 説 す る 。 ま た 、 投 資 信 託 の 仕 組 み 、 株 式 20 市 場 に お け る 投 資 信 託 の あ り 方 や 私 た ち の 考 え る 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 に つ い て 述 べ る 。 第 三 章 で は 投 資 信 託 の 現 状 と 問 題 点 に つ い て NISA や 確 定 拠 出 年 金 と い っ た 制 度 、 運 用 会 社 、 販 売 会 社 や 金 融 リ テ ラ シ ー の 面 か ら 論 ず る 。 第 四 章 で は 前 章 の 問 題 点 を 解 決 し 、 私 た ち の 考 え る 今 後 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 を 実 現 す る た め の 提 案 を 行 う 。 25 1 日 本 銀 行 調 査 統 計 局 (2 019)「 資 金 循 環 の 日 米 欧 比 較 」 参 照 2 野 村 ア セ ッ ト マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 (2018) 「 人 生 100 年 時 代 の 資 産 運 用 に 関 す る 調 査 結 果 に つ い て 」 参 照
5 第 一 章 資 産 形 成 の 重 要 性 本 論 文 に お い て 、 資 産 形 成 と は 「 将 来 必 要 な 生 活 資 金 を 認 識 し 、 自 助 努 力 に よ る 長 期 的・安 定 的 な 運 用 に よ っ て 資 産 を 積 み 立 て る こ と 」で あ る と 定 義 す る 。 本 章 で は 、 公 的 年 金 の 限 界 や ラ イ フ イ ベ ン ト の 面 か ら 資 産 形 成 の 重 要 性 に つ い て 述 べ る 。 5 第 一 節 「 人 生 100 年 時 代 」 と 言 わ れ る 老 後 生 活 に 向 け て < 図 表 1-1> 平 均 寿 命 の 年 次 推 移 10 出 典 : 厚 生 労 働 省 (2019)「 平 成 30 年 簡 易 生 命 表 の 概 況 」 よ り 作 成 < 図 表 1-1> に よ る と 、 年 々 寿 命 は 延 伸 し 、 平 成 30 年 に は 男 性 が 81.25 歳 、 女 性 が 87.32 歳 と な っ て お り 、こ れ か ら も 平 均 寿 命 は 伸 び て い く と 見 込 ま れ る 。 同 じ 統 計 で 平 成 30 年 生 ま れ の 男 性 が 95 歳 ま で 生 き る 確 率 は 9.6% 、 女 性 は 15 26.0% と な っ て お り 、「 人 生 100 年 時 代 」が い よ い よ 現 実 味 を 帯 び て き た 。そ の た め 、 老 後 資 金 は 今 ま で 以 上 に 必 要 に な る と 考 え ら れ る 。 こ れ ま で 公 的 年 金 は 老 後 資 金 を 支 え る 大 き な 役 割 を 担 っ て き た 。公 的 年 金 は 、 予 測 不 可 能 な 人 生 の リ ス ク に 備 え て 国 が 運 営 し て い る 年 金 制 度 で あ る 。 現 在 の 公 的 年 金 は 、 受 給 世 代 へ の 年 金 の 財 源 を 現 役 世 代 が 納 め る 保 険 料 で ま か な う 賦 20 課 方 式 で あ る 。 し か し 少 子 高 齢 化 が 進 む 現 在 、 人 口 の 年 齢 構 成 が 崩 れ 、 年 金 を 受 け 取 る 受 給 世 代 の 数 が 増 え て い る 。2018 年 時 点 で は 2.1 人 の 現 役 世 代 に 対 し て 1 人 の 年 金 受 給 者 を 支 え て い た が 、2065 年 で は 1.3 人 に ま で 減 少 す る と 予 想 0 20 40 60 80 100 昭和 22 25~ 27 30 35 40 45 50 55 60 平成 2 7 12 17 22 27 28 29 30 平均寿命 男 平均寿命 女 (歳) (年)
6 さ れ て い る3。こ の こ と か ら 年 金 を 支 え る 現 役 世 代 の 数 が 減 り 、収 支 の バ ラ ン ス を 保 つ こ と が 難 し い 状 況 に あ る と 言 え る 。 今 後 さ ら な る 保 険 料 の 値 上 げ が 見 込 ま れ る 一 方 で 将 来 の 年 金 支 給 額 が 減 る 可 能 性 も 出 て く る 。 ま た 、 金 融 庁 が 今 年 6 月 に 発 表 し た 報 告 書 に よ る と 、 定 年 を 迎 え た 夫 婦 が 年 金 収 入 に 頼 っ た 生 活 設 計 を し た 場 合 、 毎 月 約 5 万 円 の 赤 字 が 出 て 、 そ こ か ら 30 年 生 活 し て い く と 約 5 2000 万 円 の 不 足 が 生 じ て し ま う と い う 内 容 が 記 載 さ れ て い る4。 こ の こ と か ら 現 在 の 公 的 年 金 制 度 だ け に 頼 っ て 生 き て い く こ と は 難 し い と 考 え ら れ る 。 以 上 を 踏 ま え 、「 人 生 100 年 時 代 」と 呼 ば れ る 高 齢 社 会 に お い て 、将 来 必 要 な 生 活 資 金 を 認 識 し 、 自 助 努 力 に よ る 資 産 運 用 を 行 う 必 要 が あ る と 言 え る 。 10 第 二 節 家 計 の 金 融 資 産 構 成 と ラ イ フ イ ベ ン ト < 図 表 1-2> 家 計 の 金 融 資 産 構 成 15 出 典 : 日 本 銀 行 調 査 統 計 局 (2019)「 資 金 循 環 の 日 米 欧 比 較 」 よ り 作 成 < 図 表 1-2> の と お り 、 日 本 は 諸 外 国 と 比 較 し て 現 金 ・ 預 金 の 保 有 率 が 高 い こ と が わ か る 。 高 度 経 済 成 長 期 の 1974 年 、 普 通 預 金 の 金 利 が 3.00% と 高 金 利 3 内 閣 府 (2 018)「 高 齢 社 会 白 書 」 参 照 4 金 融 庁 (2 019)「 金 融 審 議 会 市 場 ワ ー キ ン グ ・ グ ル ー プ 報 告 書 『 高 齢 社 会 に お け る 資 産 形 成 ・ 管 理 』」 参 照
7 だ っ た た め 、預 金 で 簡 単 に 資 産 が 増 え て い た 。し か し 2019 年 に お い て 、普 通 預 金 の 平 均 年 利 率 は 0.001% と 超 低 金 利 に な っ て お り 、 預 金 を 資 産 形 成 の 手 段 と し て 選 択 す る こ と は 望 ま し い と 言 い 難 い5。 ま た 、 私 た ち の 人 生 に は 結 婚 、 子 供 の 誕 生 、 教 育 費 や 住 宅 の 購 入 な ど 様 々 な お 金 の か か る ラ イ フ イ ベ ン ト が 待 ち 受 け て い る 。 少 子 高 齢 化 や 物 価 の 上 昇 な ど 5 お 金 を 取 り 巻 く 環 境 が 日 々 変 化 し て い る 中 で 、 様 々 な ラ イ フ イ ベ ン ト に 現 金 ・ 預 金 の み で 対 応 し て い く の は 難 し い 。 こ れ ら を 踏 ま え た 上 で 、 自 助 努 力 に よ っ て 長 期 的 ・ 安 定 的 に 資 産 を 積 み 立 て て い く こ と が 求 め ら れ る 。 第 二 章 投 資 信 託 の 概 要 10 本 章 で は 、 投 資 信 託 の 仕 組 み や 歴 史 を 振 り 返 り 、 私 た ち の 考 え る 株 式 市 場 に お け る 投 資 信 託 の あ り 方 と 今 後 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 に つ い て 述 べ る 。 第 一 節 投 資 信 託 の 仕 組 み < 図 表 2-1> 投 資 信 託 の 仕 組 み 15 出 典 : 投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 の 仕 組 み 」 よ り 作 成 投 資 信 託 と は 、「 投 資 家 か ら 集 め た お 金 を ひ と つ の 大 き な 資 金( フ ァ ン ド )と 20 5 日 本 銀 行 金 融 機 構 局 (2 019)「 預 金 種 類 別 店 頭 表 示 金 利 の 平 均 年 利 率 等 に つ い て 」 参 照
8 し て ま と め 、 運 用 の 専 門 家 が 株 式 や 債 券 な ど に 投 資 ・ 運 用 し 、 そ の 運 用 成 果 が 投 資 家 そ れ ぞ れ の 投 資 額 に 応 じ て 分 配 さ れ る 仕 組 み の 金 融 商 品 」 で あ る6。 投 資 信 託 は 、「 運 用 会 社 」「 信 託 銀 行 」「 販 売 会 社 」の 三 者 に よ っ て 成 り 立 っ て い る 。投 資 信 託 は「 運 用 会 社 」で 作 成 さ れ 、「 販 売 会 社 」と 呼 ば れ る 銀 行 や 証 券 会 社 を 介 し 、 投 資 家 の も と に 届 け ら れ る 。 投 資 家 が 「 販 売 会 社 」 か ら 購 入 し た 5 商 品 の 購 入 資 金 は 全 額「 信 託 銀 行 」に 預 け ら れ る 。「 信 託 銀 行 」は 、「 運 用 会 社 」 か ら の 運 用 指 図 に 従 っ て 、 株 式 や 債 券 な ど の 売 買 や 管 理 を 行 う 。 投 資 信 託 に は 三 つ の 特 徴 が あ る 。 一 つ 目 は 、「 少 額 で 始 め る こ と が で き る 」点 で あ る 。前 述 し た よ う に 、投 資 信 託 は 多 く の 投 資 家 か ら 集 め た 資 金 を ま と め て 運 用 し て い る た め 、 ま と ま っ た 元 10 手 が 無 く て も 始 め る こ と が で き る 。 二 つ 目 は 、「 手 軽 に 分 散 投 資 が で き る 」点 で あ る 。投 資 信 託 は 株 式 や 債 券 な ど 様 々 な 商 品 を 組 み 入 れ て い る た め 、 リ ス ク を 分 散 す る こ と が で き る 。 三 つ 目 は 、「 専 門 家 が 運 用 を 行 う 」点 で あ る 。株 式 投 資 や 債 券 投 資 と 異 な り 投 資 信 託 は 、 フ ァ ン ド マ ネ ー ジ ャ ー と 呼 ば れ る 金 融 資 産 の 専 門 家 が 運 用 を 行 う 。 15 専 門 家 が 情 報 収 集 や 分 析 を す る た め 、 投 資 家 は 手 間 を か け ず に 投 資 で き る 。 第 二 節 投 資 信 託 の 歴 史 [ 戦 後 に お け る 投 資 信 託 の 始 ま り ] 日 本 の 投 資 信 託 は 1941 年 11 月 に 野 村 證 券 を 委 託 者 、 野 村 信 託 を 受 託 者 に し 20 た も の が 最 初 で あ る と 言 わ れ て い る 。 太 平 洋 戦 争 前 夜 で あ る 時 期 に 設 定 さ れ た 理 由 と し て は 、 戦 争 の 発 生 に 備 え て 、 戦 費 調 達 の た め の 公 社 債 を 消 化 し や す い 環 境 の 整 備 や 株 価 の 暴 落 防 止 な ど が 挙 げ ら れ る 。 投 資 信 託 は 開 始 当 初 、 日 本 経 済 の 国 策 と し て 利 用 さ れ て い た7。 戦 後 、 財 閥 解 体 や 財 産 税 の 物 納 な ど に よ っ て 株 式 は 供 給 過 多 の 状 態 で あ り 、 25 株 式 市 場 は 停 滞 し て い た 。そ こ で 1951 年 6 月 、供 給 過 多 の 株 式 を 吸 収 す る た め に 、 一 般 国 民 の 資 金 を 導 入 す る 投 資 信 託 を 設 定 す る と い う 内 容 の 証 券 投 資 信 託 6 中 野 晴 啓 (2015) 『 [入 門 ]投 資 信 託 の し く み 』 日 本 実 業 出 版 社 p.1 0 よ り 引 用 7 中 野 晴 啓 (2015) 『 [入 門 ]投 資 信 託 の し く み 』 日 本 実 業 出 版 社 p.13 ,14 参 照
9 法 が 公 布 さ れ た8。国 民 が 保 有 す る 預 貯 金 の 一 部 を 証 券 投 資 に 振 り 向 け る と い う 狙 い に 沿 っ て 、個 人 が 購 入 し や す く 、業 者 も 販 売 し や す い 単 位 型 フ ァ ン ド が 次 々 と 設 定 さ れ て い っ た 。 単 位 型 フ ァ ン ド の 購 入 価 格 は 一 定 で あ る た め 、 預 貯 金 に 慣 れ て い た 日 本 人 に と っ て 安 心 感 を 得 ら れ る も の で あ っ た と 考 え ら れ る 。 そ の 後 、1952 年 に 募 集 期 間 以 降 も 購 入 が 可 能 な 追 加 型 フ ァ ン ド も 始 ま っ た が 、販 売 5 の 主 力 は 単 位 型 フ ァ ン ド に 変 わ り な か っ た 。 当 時 は 証 券 会 社 だ け が 販 売 す る 方 式 が と ら れ て い た 。 1960 年 代 前 半 、 高 度 経 済 成 長 期 を 背 景 に 急 速 に 発 展 し た 証 券 市 場 に お い て 、 投 資 信 託 の 純 資 産 残 高 は 1 兆 円 を 超 え た 。 「 銀 行 よ さ よ う な ら 、 証 券 よ こ ん に ち は 」 と い う 流 行 語 が 生 ま れ る ほ ど 投 資 信 託 の 人 気 は 広 ま っ て い っ た9。 10 し か し 、 1964 年 に 東 京 オ リ ン ピ ッ ク が 終 了 す る と 日 本 経 済 は 停 滞 し 始 め 、 株 式 市 場 は 「 証 券 不 況 」 と 言 わ れ る 低 迷 状 態 に 陥 っ た 。 株 価 が 大 幅 に 下 落 し た こ と で 償 還 を 延 期 す る 投 資 信 託 が 増 え 、 投 資 信 託 は 成 績 不 振 と な っ た 。 こ の よ う な 不 況 期 の 教 訓 を 踏 ま え て 、 1967 年 に 大 幅 な 証 券 投 資 信 託 法 の 改 正 が 行 わ れ た1 0。 運 用 会 社 の 「 受 益 者 へ の 忠 実 義 務 」 「 フ ァ ン ド 内 容 の デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ 15 ー 義 務 」 「 組 み 入 れ 証 券 に か か る 株 主 権 行 使 」 の 規 定 が 盛 り 込 ま れ た 。 1970 年 代 に は 、 投 資 信 託 の 運 用 面 で 海 外 投 資 制 度 の 整 備 が 行 わ れ 、 投 資 信 託 に 外 国 証 券 の 組 み 入 れ が 認 め ら れ た 。 国 際 分 散 投 資 が 可 能 に な っ た こ と は 、 日 本 が 不 況 だ っ た 時 代 に お い て 大 き な 一 歩 で あ る と 言 え る 。 20 [ バ ブ ル 経 済 期 ] 1985 年 に 行 わ れ た 「 プ ラ ザ 合 意 」 が 引 き 金 と な り 、 バ ブ ル 景 気 は 始 ま っ た 。 日 本 経 済 が 好 景 気 の 中 、 投 資 信 託 も 隆 盛 を 極 め て い た 。 バ ブ ル 期 に 人 気 だ っ た の は 、 日 本 株 を 組 み 入 れ て 運 用 す る タ イ プ で あ る 。 当 時 は 日 本 経 済 が 大 き く 成 長 し て い て 日 本 株 も 急 上 昇 し て い た た め 、 ア メ リ カ 株 や 欧 州 株 を 組 み 入 れ 25 て 運 用 す る タ イ プ よ り も 大 き な リ タ ー ン が 期 待 で き た 。 こ の 時 期 も 信 託 期 間 が 8 杉 田 浩 司 (2011) 「 発 足 か ら 満 60 年 を 迎 え る 日 本 の 投 資 信 託 — そ の 軌 跡 ・ 現 状 と 今 後 の 課 題 —」 参 照 9 日 本 経 済 新 聞 (2 014)「『 証 券 よ こ ん に ち は 』 再 び カ ギ は 高 品 質 株 」 参 照 1 0 杉 田 浩 司 (2011) 「 発 足 か ら 満 60 年 を 迎 え る 日 本 の 投 資 信 託 — そ の 軌 跡 ・ 現 状 と 今 後 の 課 題 —」 参 照
10 短 い 単 位 型 フ ァ ン ド が 多 く 設 定 さ れ て い た 。 以 前 は 信 託 期 間 が 2 年 間 で あ っ た が 、 バ ブ ル 期 は 5 年 間 で 、 当 初 2 年 間 の ク ロ ー ズ ド 期 間 が 設 け ら れ て い る タ イ プ が 中 心 で あ っ た1 1。 1989 年 12 月 29 日 以 降 、 日 本 株 市 場 は 下 落 へ と 転 じ た 。 そ れ に 伴 い 、 バ ブ ル 期 に 設 定 さ れ た 単 位 型 フ ァ ン ド の 大 半 が 元 本 割 れ し 、 株 式 と と も に 投 資 信 託 5 も 試 練 に 直 面 し た 。 そ こ で 苦 肉 の 策 と し て と ら れ た の が 償 還 延 長 措 置 で あ る 。 そ れ に も 関 わ ら ず 、 元 本 割 れ か ら 回 復 で き な い フ ァ ン ド は 多 く 存 在 し 、 投 資 信 託 に 対 す る 信 用 が 失 墜 し た 。 そ の 状 況 の 中 で 、 単 位 型 フ ァ ン ド の 代 わ り に い つ で も 自 由 に 解 約 可 能 な 追 加 型 フ ァ ン ド へ の 関 心 が 高 ま り 、 バ ブ ル 崩 壊 以 降 新 規 設 定 さ れ る 投 資 信 託 の 大 半 は 追 加 型 フ ァ ン ド と な っ た 。 10 [ 金 融 ビ ッ グ バ ン ] 1990 年 代 後 半 に 政 府 主 導 で 進 め ら れ た「 間 接 金 融 か ら 直 接 金 融 へ 、個 人 の 資 産 運 用 の 効 率 向 上 へ 」 と い う 狙 い の 元 、 金 融 ビ ッ グ バ ン は 進 め ら れ た 。 以 前 ま で は 証 券 会 社 の み が 投 資 信 託 の 販 売 を 行 っ て い た が 、1992 年 4 月 に 直 接 販 売 が 15 解 禁 さ れ た 。 こ れ に よ っ て 、 運 用 会 社 自 体 が 自 社 運 用 の 商 品 を 販 売 で き る よ う に な っ た 。 1997 年 12 月 に は 間 借 り 方 式 を 利 用 し た 銀 行 で の 投 資 信 託 販 売 が 解 禁 さ れ た 。1998 年 に 、金 融 シ ス テ ム 改 革 の た め の 関 係 法 律 の 整 備 等 に 関 す る 証 券 投 資 信 託 法 が 改 正 さ れ た 。 こ れ に よ り 「 投 信 業 の 認 可 制 」 「 私 募 投 資 信 託 及 び 会 社 型 投 資 信 託 」「 運 用 の 外 部 委 託 」な ど が 導 入 さ れ た1 2。ま た 、銀 行 以 外 の 20 保 険 会 社 な ど 証 券 会 社 以 外 の 金 融 機 関 で も 投 資 信 託 の 販 売 業 務 が 解 禁 さ れ る よ う に な っ た 。 さ ら に 、 運 用 の 外 部 委 託 で は 海 外 運 用 会 社 の 活 用 が 増 加 し 、 運 用 の グ ロ ー バ ル 化 を 進 展 さ せ る 一 因 に も な っ た 。 販 売 チ ャ ネ ル の 多 様 化 は 、 家 計 の 金 融 資 産 に お け る 投 資 信 託 の 割 合 の 増 加 を も た ら し た 。 し か し 、 新 規 参 入 し た 銀 行 も 大 手 証 券 会 社 同 様 に 先 立 て の フ ァ ン ド を 設 立 し た こ と に よ り 、 投 資 信 25 託 の 本 数 は 増 加 し 、 商 品 の 多 様 化 や 複 雑 化 を 招 い た 。 1 1 中 野 晴 啓 (2015) 『 [入 門 ]投 資 信 託 の し く み 』 日 本 実 業 出 版 社 p.1 8 参 照 1 2 投 資 信 託 協 会 「 用 語 集 投 資 信 託 お よ び 投 資 法 人 に 関 す る 法 律 」 参 照
11 [ 2000 年 以 降 ] 2000 年 代 に な る と「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」と い う ス ロ ー ガ ン が 打 ち 出 さ れ 、確 定 拠 出 年 金 や 指 数 連 動 型 上 場 投 資 信 託( ETF)、不 動 産 投 資 信 託( J–REIT)の 制 度 が 誕 生 し た 。ETF や J–REIT は 、個 人 の 資 産 運 用 手 段 を 多 様 化 す る こ と で 収 益 機 会 を 増 や す 目 的 が あ っ た が 、 現 状 個 人 投 資 家 に あ ま り 受 け 入 れ ら れ て い な い ま 5 ま で あ る 。2008 年 の リ ー マ ン・ シ ョ ッ ク と そ れ に 伴 う 株 価 の 急 落 に よ り 、一 時 的 に 投 資 信 託 の 純 資 産 残 高 は 減 少 し た 。 し か し 、 2010 年 代 に NISA 制 度 が 確 立 さ れ 、 投 資 信 託 の 利 用 者 は 順 調 に 増 加 し て い っ た 。 一 方 で 、 投 資 信 託 の 商 品 の 多 様 化 や 複 雑 化 が 進 み 、 商 品 の 透 明 性 や 運 用 状 況 な ど に 関 す る 情 報 の 非 対 称 性 が 問 題 に な っ た 。 こ れ ら を 解 消 す る た め 2014 年 10 に 投 資 信 託 法 及 び 金 融 商 品 取 引 法 の 改 正 が 行 わ れ た 。 こ の 改 正 で は 、 「 運 用 報 告 書 の 二 段 階 化 」 「 ト ー タ ル リ タ ー ン 把 握 の た め の 説 明 」 「 リ ス ク 等 に つ い て の 説 明 の 充 実 」な ど が 定 め ら れ た1 3。 ま た 、今 年 6 月 に 金 融 庁 が 公 表 し た 報 告 書 に よ る と 、人 生 100 年 時 代 で あ る 超 長 寿 社 会 を 踏 ま え て 、公 的 年 金 以 外 に「 老 後 資 金 2000 万 円 」が 必 要 に な っ て く る と い う 内 容 が 記 載 さ れ て い る1 4。こ れ を 15 金 融 庁 が 一 般 市 民 に 向 け て 公 表 し た こ と で 、 生 涯 に わ た る 計 画 的 な 長 期 の 資 産 運 用 ・ 管 理 の 重 要 性 が 一 気 に 認 識 さ れ る よ う に な っ た 。 第 三 節 株 式 市 場 に お け る 投 資 信 託 の あ り 方 投 資 信 託 は 値 動 き の あ る 株 式 や 債 券 な ど に 投 資 す る 商 品 で あ り 、 運 用 成 果 は 20 組 み 入 れ る 資 産 の 値 動 き や 市 場 環 境 に よ っ て 変 動 す る 。 つ ま り 、 持 続 的 な 株 価 の 上 昇 は 投 資 信 託 の 運 用 に 好 影 響 を 及 ぼ す 。 持 続 的 に 株 価 を 上 昇 さ せ る た め に は 、 株 式 市 場 の 活 性 化 が 必 要 不 可 欠 で あ る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 私 た ち は 、 株 式 市 場 の 活 性 化 を 「 投 資 家 層 の 拡 大 」 と 「 売 買 高 の 増 加 」 に よ る 取 引 量 の 増 加 と 定 義 す る 。 現 状 家 計 の 金 融 資 産 構 成 に 占 め る 割 合 が 低 い 投 資 信 託 に お い て は 25 普 及 率 を 挙 げ る こ と が 最 優 先 で あ る た め 、 本 節 で は 「 投 資 家 層 の 拡 大 」 に 絞 っ て 議 論 を 進 め る 。 1 3 田 村 威 (2 017)『 十 四 訂 投 資 信 託 -基 礎 と 実 務 -』 経 済 法 令 研 究 会 p. 98-101 参 照 1 4 金 融 庁 (2 019)「 金 融 審 議 会 市 場 ワ ー キ ン グ ・ グ ル ー プ 報 告 書 -高 齢 社 会 に お け る 資 産 形 成 ・ 管 理 -」 参 照
12 第 二 章 第 一 節 で 述 べ た と お り 、投 資 信 託 は 、「 少 額 で 始 め る こ と が で き る 」「 手 軽 に 分 散 投 資 が で き る 」「 専 門 家 が 運 用 を 行 う 」と い う 特 徴 が あ る た め 、初 心 者 が 利 用 し や す く 、 家 計 の 資 産 形 成 手 段 に 適 し た 投 資 方 法 で あ る と 言 え る 。 投 資 信 託 は 投 資 家 一 人 ひ と り の 小 口 の 投 資 額 を 集 め て 一 つ の フ ァ ン ド と し て 市 場 で 取 引 さ れ る た め 、 市 場 に お い て 影 響 力 を 持 つ 。 そ の た め 、 資 産 形 成 の 重 要 性 が 5 国 民 に 広 く 認 知 さ れ 、 投 資 信 託 を 活 用 す る 投 資 家 が 増 加 す る と 、 株 式 市 場 に お け る 取 引 量 も 増 加 す る 。 取 引 量 の 増 加 に よ っ て 持 続 的 な 経 済 成 長 に 向 け て 活 動 す る 企 業 が 円 滑 に 資 金 調 達 を 行 い 、 企 業 活 動 が よ り 活 発 に な る 。 家 計 は 企 業 の 質 の 高 い 財 ・ サ ー ビ ス を 享 受 す る こ と が で き る 。 企 業 も 好 業 績 を 収 め 、 企 業 価 値 が 上 が る と 、 株 式 需 要 が 増 加 す る 。 こ の サ イ ク ル が 繰 り 返 さ れ る こ と で 持 続 10 的 な 株 価 の 上 昇 を 果 た す こ と が 可 能 に な る 。 結 果 と し て 、 投 資 信 託 は 好 影 響 を 受 け 、 需 要 が 高 ま り 、 新 た な 投 資 家 層 の 拡 大 に 繋 が る 。 こ の よ う に 、 株 式 市 場 は 循 環 し て お り 、 投 資 信 託 は 株 式 市 場 の 動 向 に 影 響 を 受 け て い る だ け で は な く 、 株 式 市 場 の 活 性 化 に 寄 与 す る 一 因 と な っ て い る 。 投 資 信 託 が よ り 株 式 市 場 の 活 性 化 に 繋 が る 役 割 を 果 た し 、 そ の 恩 恵 を 受 け ら れ る 15 た め の 理 想 の 状 態 は 、「 国 民 に 広 く 普 及 し て い る 状 態 で あ る 」 と 考 え ら れ る 。 第 四 節 今 後 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 < 図 表 2-2> 投 資 信 託 の 保 有 経 験 と 現 在 保 有 層 の 年 代 構 成 20 出 典 : 投 資 信 託 協 会 (2019)「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 」 よ り 作 成 < 図 表 2-2> を 見 る と 投 資 未 経 験 層 の 割 合 は 全 体 の 77% を 占 め て い る 。ま た 、 16 15.6 14.7 8.6 8 8.3 11.9 12.1 12.9 63.6 64.3 64.1 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2016年 2017年 2018年 現在保有層 保有経験層(現在⾮保有) 保有未経験層(⾦融資産保有経験有) 保有未経験層(⾦融資産保有経験無) 20代 7% 30代 12% 40代 17% 50代 60代 27% 70代 22% 20代 30代 40代 50代 60代 70代
13 保 有 層 の 年 代 構 成 の 割 合 は 高 齢 者 が 高 い 。 第 一 章 で 述 べ た よ う に 資 産 形 成 の 重 要 性 が 求 め ら れ て い る に も 関 わ ら ず 、投 資 信 託 が 普 及 し て い な い こ と が わ か る 。 今 後 よ り 投 資 信 託 を 普 及 さ せ て い く た め に 、 私 た ち は 今 後 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 を 「 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 が な さ れ 、 投 資 信 託 の 特 性 を 国 民 が 理 解 し 、 家 計 の 資 産 形 成 の 手 段 と し て 普 及 し て い る 状 態 」 と 定 義 す る 。 こ の 状 態 が 達 成 5 さ れ る こ と に よ っ て 株 式 市 場 の 活 性 化 に 繋 が る と 考 え ら れ る 。 以 下 、 第 三 章 ・ 第 四 章 に お い て 、 投 資 信 託 の 現 状 と 問 題 点 に つ い て 言 及 し 、 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 を 達 成 す る た め の 提 案 を 行 う 。 第 三 章 投 資 信 託 の 現 状 10 本 章 で は 、 投 資 信 託 の 近 年 の 動 向 と 問 題 点 に つ い て 「 運 用 会 社 」「 販 売 会 社 」 「 金 融 リ テ ラ シ ー 」「 制 度 」 の 四 つ の 視 点 か ら 論 ず る 。 第 一 節 近 年 の 投 資 信 託 の 動 向 第 一 項 制 度 15 (1)NISA 一 般 NISA と は 、 2014 年 か ら 始 ま っ た 個 人 投 資 家 の た め の 税 制 優 遇 制 度 で あ る 。 通 常 、 金 融 商 品 を 購 入 し 、 そ れ ら を 売 却 し て 得 た 利 益 や 配 当 金 ・ 分 配 金 に 対 し て 約 20% の 税 金 が か か る 。し か し 、NISA 口 座 を 利 用 す る と 毎 年 一 定 金 額 の 範 囲 内 で 購 入 し た 株 式 ・ 投 資 信 託 な ど の 金 融 商 品 か ら 得 ら れ る 利 益 は 非 課 税 に 20 な る1 5。
NISA 制 度 は 一 般 NISA 以 外 に も 、つ み た て NISA、ジ ュ ニ ア NISA が あ る 。そ れ ぞ れ の 制 度 の 特 徴 は 以 下 の と お り で あ る 。
25
1 5 金 融 庁 「 NISA と は ? 」 参 照
14
< 図 表 3-1> 一 般 NISA、 つ み た て NISA、 ジ ュ ニ ア NISA の 特 徴 比 較
一 般 NISA つ み た て NISA ジ ュ ニ ア NISA 対 象 商 品 株 式 投 資 信 託 等 法 令 な ど の 要 件 を 満 た し た 公 募 株 式 型 投 資 信 託 等 株 式 投 資 信 託 等 対 象 年 齢 20 歳 以 上 20 歳 以 上 0 ~ 19 歳 非 課 税 枠 (年 間 ) 120 万 円 40 万 円 80 万 円 非 課 税 期 間 5 年 間 20 年 間 5 年 間 ロ ー ル オ ー バ ー 可 能 ( 5 年 間 ) 不 可 能 可 能 ( 5 年 間 ) 口 座 開 設 期 間 2023 年 ま で 2037 年 ま で 2023 年 ま で 出 典 : 野 村 証 券 HP「 NISA」 よ り 作 成
< 図 表 3-2> 一 般 NISA、 つ み た て NISA、 ジ ュ ニ ア NISA の 口 座 数 の 推 移 5 出 典 : 金 融 庁 「 NISA・ ジ ュ ニ ア NISA 利 用 状 況 調 査 」 よ り 作 成 < 図 表 3-2> に よ る と 全 体 的 に NISA の 利 用 数 は 上 が っ て お り 、資 産 形 成 手 段 10 の 一 つ と し て NISA 口 座 を 利 用 す る 人 が 増 え て い る こ と が わ か る 。 1029 1090 1128 1161 13 22 28 68 32 147 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 2016年6月末 2017年6月末 2018年6月末 2019年6月末 ( 万 口 座)
15 < 図 表 3-3> 一 般 NISA 及 び つ み た て NISA 口 座 数 の 年 齢 別 内 訳 出 典 : 日 本 証 券 業 協 会 (2019)「 NISA 口 座 開 設 ・ 利 用 状 況 調 査 結 果 」 よ り 作 成 5 ま た 、 < 図 表 3-3> を 参 考 に す る と 、 一 般 NISA は 60 代 以 上 の 利 用 者 が 半 数 を 占 め て い る 。つ み た て NISA は 30 代 と 40 代 の 利 用 者 の 割 合 が 最 も 高 く 、NISA 制 度 は 幅 広 い 年 代 の 人 に 活 用 さ れ て い る 。 し か し 、NISA 制 度 は 非 課 税 期 間 が 決 ま っ て お り 、そ の 期 間 が 終 了 す る と 保 有 し て い る 商 品 を 特 定 ま た は 一 般 口 座 に 移 す こ と が 可 能 に な る が 、 期 間 終 了 後 に 10 得 ら れ た 利 益 に は 課 税 さ れ て し ま う 。ま た 、他 の 口 座 と の 損 益 通 算 が で き な い 。 損 益 通 算 と は 、 一 定 期 間 内 に あ る 口 座 で 得 た 利 益 と 、 他 の 口 座 で 同 じ 期 間 に 発 生 し た 損 失 を 相 殺 し 、 課 税 対 象 額 を 減 ら す こ と の で き る 制 度 で あ る1 6。 金 融 庁 は 今 年 8 月 に 税 制 改 正 要 望 項 目 を 公 表 し 、NISA 制 度 の 恒 久 化 や 、NISA 口 座 の 手 続 き 書 類 の 電 子 化 な ど 利 便 性 の 向 上 を 検 討 し て い る 動 き が み ら れ る 。 15 (2)確 定 拠 出 年 金 ( DC) 確 定 拠 出 年 金 制 度 と は 、 人 生 100 年 時 代 と 呼 ば れ る 老 後 生 活 に 向 け て 、 加 入 者 自 身 が 運 用 を 行 い 、 掛 け 金 と 運 用 成 績 に よ っ て 年 金 給 付 額 が 確 定 す る 私 的 年 1 6 中 野 晴 啓 (2016 )『 図 解 お 金 持 ち 入 門 (お 金 の き ほ ん )』 学 研 プ ラ ス p.180 ,181 参 照
16 金 制 度 で あ る 。 2001 年 、 確 定 拠 出 年 金 法 の 施 行 と 共 に 始 ま っ た1 7。 確 定 拠 出 年 金 の 導 入 背 景 は 大 き く 三 つ に 分 け ら れ る 。 一 つ 目 は 、 公 的 年 金 の 限 界 で あ る 。 現 役 世 代 の 負 担 増 加 が 問 題 視 さ れ る 中 で 、 給 付 水 準 の 引 き 下 げ や 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げ が 行 わ れ 、 能 動 的 な 資 産 形 成 が 必 要 に な っ た 。 二 つ 目 は 、 確 定 給 付 企 業 年 金 に よ る 企 業 の 負 担 で あ る 。 確 定 給 付 企 業 年 金 は 将 来 に 受 5 け 取 れ る 年 金 の 額 が 約 束 さ れ て い る た め 、 運 用 に 損 失 が 出 た 場 合 は 企 業 が 負 担 す る 必 要 が あ っ た 。三 つ 目 は 、ポ ー タ ビ リ テ ィ が 確 保 さ れ て い な い こ と で あ る 。 勤 め 先 が 変 わ っ た 時 に 、 積 み 立 て た 年 金 の 原 資 を 持 ち 運 ぶ こ と が で き ず 、 雇 用 の 流 動 化 ・ 多 様 化 へ の 対 応 が 不 十 分 で あ っ た 。 以 上 の 三 つ が 問 題 視 さ れ 、 確 定 拠 出 年 金 制 度 が 導 入 さ れ た1 8。 10 確 定 拠 出 年 金 に は 、 企 業 型 と 個 人 型 ( 以 下 iDeCo) が 存 在 す る 。 企 業 型 は 企 業 が 用 意 す る 運 用 商 品 の 中 か ら 加 入 者 が 選 択 す る も の で 、 掛 け 金 は 企 業 側 が 負 担 す る 。 一 方 、 iDeCo は 掛 け 金 が 自 己 負 担 で あ り 、 加 入 者 自 身 が 契 約 す る 金 融 機 関 に あ る 運 用 商 品 の 中 か ら 選 択 す る 。 ど ち ら も 60 歳 に 到 達 し た 際 に 拠 出 金 を 受 け 取 る こ と が 可 能 に な る 。 15 確 定 拠 出 年 金 の 最 大 の メ リ ッ ト は 、 拠 出 時 ・ 運 用 中 ・ 受 取 時 の 三 段 階 で 税 制 優 遇 を 受 け ら れ る 点 に あ る 。 ま ず 、 拠 出 時 に は 掛 け 金 が 非 課 税 に な る 。 企 業 型 は 企 業 か ら 拠 出 さ れ る 掛 け 金 が 非 課 税 に な る た め 、 税 金 や 社 会 保 険 料 が か か ら な い 。 iDeCo で は 、 全 額 所 得 控 除 が 適 用 さ れ る 。 次 に 、 運 用 中 は 源 泉 分 離 課 税 等 が な く 、 運 用 収 益 は 非 課 税 に な る 。 そ し て 、 受 取 時 に は 受 取 方 法 に 応 じ て 所 20 得 控 除 が 適 用 さ れ る 。 一 時 金 と し て 受 け 取 る 場 合 は 退 職 所 得 控 除 、 年 金 と し て 受 け 取 る 場 合 は 公 的 年 金 控 除 が 対 象 と な る 。 転 職 時 等 に 制 度 間 の 資 産 移 管 が 可 能 で あ る 点 も メ リ ッ ト と し て 挙 げ ら れ る 。 ま た 、企 業 型 DC に お い て は 、企 業 が 拠 出 す る 掛 け 金 に 加 え て 、加 入 者 本 人 が 掛 け 金 を 上 乗 せ し て 拠 出 す る と い う マ ッ チ ン グ 拠 出 が 可 能 と な っ て い る1 9。 さ 25 ら に 、 2017 年 の 確 定 拠 出 年 金 法 の 改 正 で は 、 条 件 付 き で 企 業 型 DC の 加 入 者 の 1 7 厚 生 労 働 省 「 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 概 要 」 参 照 1 8 り そ な 銀 行 「 確 定 拠 出 年 金 制 度 導 入 の 背 景 」 参 照 1 9 DC の ト ビ ラ 「 マ ッ チ ン グ 拠 出 と は ? 」 参 照
17 iDeCo 同 時 加 入 が 可 能 に な っ た2 0。今 年 7 月 に 、厚 生 労 働 省 は 全 会 社 員 を 対 象 に 希 望 す れ ば iDeCo に 入 れ る よ う に 基 準 を 緩 め る 検 討 に 入 っ た 。2020 年 度 の 税 制 改 正 要 望 に 盛 り 込 み 、2020 年 の 通 常 国 会 に お い て 関 連 法 の 改 正 案 提 出 を 目 指 し て い る2 1。 < 図 表 3-4> 企 業 型 DC・ iDeCo に お け る 加 入 者 の 推 移 5 出 典 : 厚 生 労 働 省 (2019)「 規 約 数 等 の 推 移 」 よ り 作 成 < 図 表 3-4> を 参 考 に す る と 、企 業 型 DC と iDeCo に お い て も 年 々 加 入 者 は 増 10 加 し 続 け て い る 。ま た 、前 述 し た 改 正 が 行 わ れ る と 、企 業 型 DC の 加 入 者 は 企 業 型 DC の 掛 け 金 は 減 少 せ ず に 、 iDeCo と 併 用 す る こ と が 可 能 に な る た め 、 iDeCo の 加 入 者 数 が さ ら に 増 加 す る こ と が 見 込 ま れ る 。 以 上 を 踏 ま え て 、 確 定 拠 出 年 金 は 老 後 の た め の 資 産 形 成 手 段 と し て 有 効 で あ り 、 加 入 者 も 増 加 傾 向 に あ る 。 今 後 さ ら に 確 定 拠 出 年 金 を 充 実 し た 制 度 に す る 15 た め に は 、 運 用 方 法 や 加 入 者 の 金 融 リ テ ラ シ ー の 向 上 に 向 け た サ ポ ー ト を 充 実 さ せ て い く 必 要 性 が あ る と 考 え ら れ る 。 2 0 三 井 住 友 信 託 銀 行 (201 8)「 確 定 拠 出 年 金 法 の 改 正 に つ い て 」 参 照 2 1 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 (2 019)「 イ デ コ 加 入 、 全 会 社 員 に 企 業 型 年 金 と 併 用 可 能 」 参 照 8.8 32.5 70.8 125.5 173.3 218.7 271.1 311 340.4371.3 421.8439.4 464.2 505.2 548.4 591.4 648.1687.8 720 0 1.4 2.8 4.6 6.3 8 9.3 10.1 11.2 12.5 13.9 15.8 18.4 21.3 25.8 43.1 85.4 121 131
0
100
200
300
400
500
600
700
800
2002 年3月 末 2003 年3月 末 2004 年3月 末 2005 年3月 末 2006 年3月 末 2007 年3月 末 2008 年3月 末 2009 年3月 末 2010 年3月 末 2011 年3月 末 2012 年3月 末 2013 年3月 末 2014 年3月 末 2015 年3月 末 2016 年3月 末 2017 年3月 末 2018 年3月 末 2019 年3月 末 2019 年7月 末 企業型DC iDeCo (万人)18 第 二 項 FinTech
続 い て 、 FinTech に つ い て 紹 介 す る 。 FinTech と は 、 金 融 ( Finance) と 技 術 ( Technology)を 掛 け 合 わ せ た 造 語 で あ り 、ス マ ー ト フ ォ ン や PC な ど の テ ク ノ ロ ジ ー を 活 用 し 、金 融 サ ー ビ ス と 情 報 技 術 を 結 び つ け た も の を 指 す 。FinTech の 領 域 に 位 置 す る サ ー ビ ス は 、 法 人 の 会 計 や 経 理 、 個 人 の 決 済 、 貯 蓄 、 仮 想 通 貨 5 な ど 幅 広 い 範 囲 に わ た っ て 展 開 さ れ て い る の が 特 徴 で あ る2 2。 < 図 表 3-5> FinTech の 利 用 状 況 10 出 典 : 日 本 証 券 業 協 会 (2018)「 平 成 30 年 度 個 人 投 資 家 の 証 券 投 資 に 関 す る 意 識 調 査 報 告 書 」 よ り 作 成 < 図 表 3-5> を 参 考 に す る と 、FinTech の 利 用 率 は い ま だ 低 い 状 況 に あ る 。し か し 、 キ ャ ッ シ ュ レ ス 社 会 が 進 む 現 代 に お い て 、 FinTech の 利 用 率 は 上 昇 し て い く と 考 え ら れ る 。 15 FinTech の 具 体 的 な サ ー ビ ス と し て 、 法 人 向 け の 会 計 や 経 理 の 自 動 化 、 銀 行 口 座 情 報 や ク レ ジ ッ ト カ ー ド の 登 録 に よ る 収 支 の 管 理 、 AI が 自 動 で 行 う 投 資 ・ 資 産 運 用 、昨 年 大 流 行 し た「 ビ ッ ト コ イ ン 」な ど の 仮 想 通 貨 な ど が 挙 げ ら れ る 。 本 項 で は 、三 つ 目 の 投 資・資 産 運 用 サ ー ビ ス に つ い て「 ロ ボ ッ ト ア ド バ イ ザ ー 」 の 面 か ら 詳 し く 述 べ て い く 。 20 ま ず 、 ロ ボ ッ ト ア ド バ イ ザ ー は イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 各 投 資 家 の ニ ー ズ に 対 応 し た 商 品 の ア ド バ イ ス や 、 運 用 を 行 う サ ー ビ ス の こ と で あ る 。 ア メ リ カ の ス タ ー ト ア ッ プ 企 業 か ら 始 ま っ た こ の サ ー ビ ス は 日 本 で も 広 く 普 及 し て お り 、 「 Wealth Navi」や「 THEO」な ど 様 々 な ロ ボ ッ ト ア ド バ イ ザ ー が 生 み 出 さ れ て い
2 2 日 本 銀 行 「 FinT ech(フ ィ ン テ ッ ク ) と は 何 で す か ? 」 参 照 4.2% 2.7% 2.0% 8.6% 22.6% 18.1% 69.3% 40.0% 36.9% 仮想通貨 ロボットアドバイザー 個人資産管理(PFM) 既に利用している 利用してみたい 利用したくない
19 る 。 ロ ボ ッ ト ア ド バ イ ザ ー は 、 投 資 家 に 対 し て 最 適 な 資 産 配 分 や 投 資 対 象 の ア ド バ イ ス の み を 行 う ア ド バ イ ス 型 と 、 ア ド バ イ ス と 運 用 す べ て の 業 務 を 行 う 一 任 型 に 分 か れ る 。 ロ ボ ッ ト ア ド バ イ ザ ー を 利 用 す る メ リ ッ ト は 二 つ あ る 。一 つ 目 は 、投 資 コ ス ト を 削 減 で き る こ と で あ る 。投 資 信 託 で は 購 入 手 数 料 や 信 託 報 酬 が か か る が 、ロ ボ 5 ッ ト ア ド バ イ ザ ー に は 購 入 手 数 料 が か か ら な い 無 料 の サ ー ビ ス も 多 く 、ま た 信 託 報 酬 は 1 % と 低 コ ス ト の も の が 多 い 。近 年 で は 、毎 月 1 万 円 か ら の 少 額 積 立 投 資 が 可 能 な 商 品 も 登 場 し た 。 さ ら に 「 THEO」 と 「 NTT ド コ モ 」 が 協 業 し て 実 現 し た 「 THEO+ docomo」と い う d ポ イ ン ト を 利 用 し て 投 資 す る こ と が 可 能 な ポ イ ン ト 投 資 型 の サ ー ビ ス も 出 て き て お り 、投 資 額 の ハ ー ド ル は 大 き く 下 が っ て い る 。ま た 、 10 人 間 で は な く ロ ボ ッ ト が ア セ ッ ト・ア ロ ケ ー シ ョ ン を 行 う こ と に よ り 人 件 費 も 削 減 で き 、金 銭 面 や 手 間 と い っ た 面 で 投 資 家 だ け で な く 販 売 金 融 機 関 双 方 に と っ て 負 担 の 軽 減 に 繋 が っ て い る 。二 つ 目 は 、買 い 付 け か ら 運 用 ま で 全 て 自 動 で 行 う こ と で あ る 。一 任 型 は 、投 資 方 針 を 決 定 す る こ と で 投 資 家 に 最 適 な ポ ー ト フ ォ リ オ を 提 案 し 、投 資 信 託 購 入 へ と 導 い て く れ る 。ま た 、運 用 開 始 後 も リ バ ラ ン ス や 節 15 税 効 果 を 最 大 化 に す る た め の 損 出 し も 自 動 で 行 う 。こ れ に よ り 、投 資 に 関 す る 知 識 の 少 な い 初 心 者 で も 安 心 し て 運 用 す る こ と が 可 能 に な る 。 し か し 、ロ ボ ッ ト ア ド バ イ ザ ー に は デ メ リ ッ ト も 存 在 す る 。一 つ 目 に 、性 能 面 に お い て い ま だ 成 長 段 階 に あ る と い う こ と で あ る 。商 品 の 運 用 は AI が 行 う た め 、 性 能 が 一 定 の レ ベ ル に 達 さ な け れ ば 一 任 し た と し て も 十 分 な 利 益 が 出 な い 。実 際 、 20 参 照 す る 市 場 の デ ー タ に よ っ て 成 績 が 左 右 さ れ 、中 長 期 の 見 通 し が 不 十 分 に な る と い っ た 問 題 も 指 摘 さ れ て い る 。二 つ 目 に 、制 度 面 に お い て NISA へ の 利 用 が で き な い 場 合 が あ る と い う こ と で あ る 。ア ド バ イ ス 型 は NISA と の 併 用 が で き る が 、 一 任 型 の 場 合 は 口 座 が NISA 非 対 応 で あ る た め 、同 時 に 利 用 す る こ と は で き な い 。 以 上 の こ と か ら 、 今 後 の 性 能 面 、 制 度 面 で の 改 善 が 期 待 さ れ る 。 25 第 三 項 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 と は 、 上 場 株 式 や 債 券 と い っ た 伝 統 的 資 産 と 呼 ば れ る も の 以 外 の 新 し い 投 資 対 象 や 投 資 手 法 の こ と を 指 す 。具 体 的 な 投 資 対 象 と し て は 、 農 産 物 ・ 鉱 物 、 不 動 産 な ど の 商 品 、 未 公 開 株 や 金 融 技 術 が 駆 使 さ れ た 先 物 、 オ 30
20 プ シ ョ ン 、 ス ワ ッ プ な ど の 取 引 が 挙 げ ら れ る2 3。 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 の メ リ ッ ト と し て 二 つ 挙 げ ら れ る 。 一 つ 目 は 、 株 や 債 券 が 急 落 し た 時 や 、 市 場 が 低 迷 し て い る 時 で あ っ て も 、 そ の 影 響 を 受 け に く い 資 産 を 保 有 す る こ と に よ っ て リ ス ク を 軽 減 で き る こ と で あ る 。 先 物 の オ プ シ ョ ン 取 引 を 行 う こ と に よ っ て リ ス ク を 被 ら ず に 収 益 を 獲 得 で き る 可 能 性 が あ る 。 二 つ 目 は 、 投 資 対 象 や 手 法 の 選 択 5 肢 が 増 え る こ と で あ る 。J-REIT な ど の 不 動 産 や 未 公 開 株 、ヘ ッ ジ フ ァ ン ド 投 資 な ど 今 ま で に な い 投 資 対 象 の 拡 大 が 、 新 た な 個 人 投 資 家 の 増 加 だ け で な く 、 売 買 高 の 増 加 に も 繋 が る と 考 え ら れ る 。 し か し 、 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 に は デ メ リ ッ ト も 存 在 す る 。 前 述 し た 投 資 手 法 が 増 え る と い う メ リ ッ ト は 、 投 資 手 法 や 商 品 の 複 雑 化 に よ り 投 資 家 へ の 混 乱 に 10 繋 が っ て し ま う と い う デ メ リ ッ ト に も 捉 え ら れ る 。 ま た 、 仕 組 み が 複 雑 な オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 は コ ス ト の 増 大 に 繋 が る 恐 れ も あ る 。 以 上 の こ と か ら 、 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 は 投 資 信 託 に お い て 一 つ の リ ス ク 分 散 と し て 有 効 な 手 段 で あ る が 、 メ リ ッ ト ・ デ メ リ ッ ト を 考 慮 し た 上 で 活 用 す る 必 要 が あ る と 言 え る 。 15 第 二 節 投 資 信 託 の 問 題 点 第 一 項 運 用 会 社 運 用 会 社 の 主 な 業 務 内 容 は フ ァ ン ド の 立 案 か ら 運 用 指 図 、 そ の 運 用 指 図 を 行 う の に 必 要 な 各 種 リ サ ー チ 、 基 準 価 額 の 計 算 な ど 、 投 資 信 託 を 運 用 す る の に 必 20 要 な す べ て の オ ペ レ ー シ ョ ン を 担 当 し て い る2 4。 投 資 信 託 に お い て 中 心 的 な 役 割 を 果 た し て い る に も 関 わ ら ず 、 運 用 会 社 に は 不 透 明 な 部 分 が 存 在 す る 。 運 用 会 社 の 問 題 点 と し て 頻 繁 に 挙 げ ら れ る の は 小 規 模 フ ァ ン ド の 乱 立 で あ る 。 し か し な が ら 、 小 規 模 フ ァ ン ド の 乱 立 の 問 題 に 関 し て は 改 善 の 兆 し が 見 え る 。 投 資 信 託 協 会 に よ る と 2018 年 あ た り か ら 繰 り 上 げ 償 還 す る フ ァ ン ド が 増 加 し て い 25 る こ と が わ か る2 5。ま た 、金 融 庁 は 2019 年 度 の 行 政 方 針 に 投 資 信 託 の 併 合 の 推 2 3 SMBC 日 興 証 券 「 オ ル タ ナ テ ィ ブ 投 資 」 参 照 2 4 中 野 晴 啓 (2014) 『 [入 門 ]投 資 信 託 の し く み 』 日 本 実 業 出 版 社 p.5 1 参 照 2 5 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 (2 018)「 投 信 に 繰 り 上 げ 償 還 の 波 乱 造 や め 1 4 年 ぶ り 本 数 減 も 」 参 照
21 進 を 明 記 し て い る 。 こ れ に よ り 、 投 信 併 合 の 実 現 に 向 け た 機 運 が 高 ま っ て い る 2 6。さ ら に 、新 規 設 定 数 を 減 少 さ せ 、投 資 信 託 の 本 数 を 抑 え る 少 数 精 鋭 が 進 ん で い る2 7。「 繰 り 上 げ 償 還 」「 投 信 併 合 」「 新 規 設 定 数 減 少 」に よ り 経 営 資 源 が 集 中 す る こ と で 、 フ ァ ン ド の 運 用 能 力 を 向 上 さ せ 、 長 期 の 運 用 成 績 の 底 上 げ に 繋 げ よ う と す る 動 き が 強 ま っ て い る と 言 え る 。 5 一 方 、 投 資 信 託 協 会 が 公 表 し た 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 に よ る と 、投 資 家 は 運 用 会 社 に 対 し「 わ か ら な い ・ 特 に な い 」と 答 え た 人 が 67.7% に も 及 ぶ2 8。 こ こ か ら 、 投 資 家 と 運 用 会 社 を 直 接 繋 ぐ 唯 一 の 情 報 で あ る 目 論 見 書 が 活 用 さ れ て い な い こ と が 考 え ら れ る 。 < 図 表 3-6> 他 の 金 融 商 品 と 比 べ た 投 資 信 託 の 不 満 点 10 出 典 : 投 資 信 託 協 会 (2018)「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 」 よ り 作 成 15 < 図 表 3-6> を 参 考 に す る と 、「 仕 組 み や 運 用 手 法 が わ か り に く い 」や「 専 門 知 識 が な い と 商 品 を 選 び に く い 」 と い う 不 満 を 投 資 家 が 抱 え て い る こ と が わ か る 。 ま た 、 仕 組 み や 運 用 手 法 な ど の 情 報 は 交 付 目 論 見 書 に 記 載 さ れ て い る に も 2 6 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 (2 019)「 金 融 庁 、 投 信 併 合 を 推 進 」 参 照 2 7 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 (2 019)「 投 信 、『 少 数 精 鋭 』 進 む 」 参 照 2 8 投 資 信 託 協 会 (2 019)「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 」 p.11 参 照 34.1% 30.1% 28.5% 27.4% 22.1% 19.0% 17.3% 15.0% 12.5% 8.0% 7.9% 3.4% 0.6% 13.6% 元本保証 がない 仕組 みや 運用手 法がわかりに くい 手数料 が比較 的高い 専門 知識 がないと 商品 を選 びに くい リターン が低 い 種類 が多 く選択 に迷 う 公社 債に 比べ てリス クが 高い 株式に 比べ て面白さ に欠 ける 購入後 の運用 に関 する 情報 が少 ない 手続 きが 煩わしい クロー ズド 期間 がある 近く に取 り扱 っている 店舗 が少 ない その 他 わからない・ 特にない
22 関 わ ら ず 、 投 資 家 が 理 解 で き て い な い と い う こ と が 考 え ら れ る 。 < 図 表 3-7> ダ イ ワ ・ イ ン デ ッ ク ス セ レ ク ト J-REIT の 交 付 目 論 見 書 5 出 典 : 大 和 証 券 (2019)「 ダ イ ワ ・ イ ン デ ッ ク ス セ レ ク ト J-REIT」 よ り 引 用 < 図 表 3-7> は 現 在 の 交 付 目 論 見 書 の 一 部 分 を 抜 粋 し た も の で あ る 。 専 門 用 語 に 関 し て 、 説 明 は あ る も の の 、 文 字 が 小 さ く 、 重 要 な 部 分 が わ か り づ ら い 。 10 15 20
23 < 図 表 3-8> 投 資 家 に 交 付 を 要 す る 目 論 見 書 の 必 要 記 載 項 目 日 本 (交 付 目 論 見 書 ) ア メ リ カ (要 約 目 論 見 書 ) 欧 州 (重 要 情 報 書 ) ① フ ァ ン ド の 名 称 ② 委 託 会 社 の 情 報 ③ フ ァ ン ド の 目 的・特 色 ④ 投 資 リ ス ク ⑤ 運 用 実 績 ⑥ 手 続 き ・ 手 数 料 な ど ⑦ 追 加 的 情 報 ① フ ァ ン ド の 投 資 目 的 ② 手 数 料 ・ 報 酬 の 一 覧 表 ③ 投 資 戦 略 、リ ス ク 、パ フ ォ ー マ ン ス ④ 投 資 顧 問 会 社 ・ サ ブ ア ド バ イ ザ ー ・ 運 用 担 当 者 ( 担 当 年 数 を 含 む ) ⑤ 購 入 ・ 売 却 方 法 、 税 制 ⑥ フ ァ ン ド ま た は 、 運 用 会 社 か ら 販 売 会 社 へ の 報 酬 支 払 い に 関 す る 記 述 ① 投 資 目 的 ・ 投 資 政 策 ② リ ス ク・リ タ ー ン・プ ロ フ ィ ー ル ③ 手 数 料 ・ 報 酬 ④ 運 用 実 績 ⑤ そ の 他 概 要 情 報 ( 運 用 者 へ の 報 酬 支 払 い 方 針 の 詳 細 が web サ イ ト で 得 ら れ る こ と の 記 述 を 含 む ) 出 典 : 日 本 証 券 経 済 研 究 所 (2018)「 投 資 信 託 の 制 度 ・ 実 態 の 国 際 比 較 」 よ り 作 成 5 ま た < 図 表 3-8> を 参 考 に す る と 、 各 国 と も 目 論 見 書 に フ ァ ン ド の リ ス ク を 表 示 す る こ と を 義 務 付 け て い る こ と や 、 文 章 に よ る 記 述 と 図 表 に よ る 提 示 を 求 め て い る こ と は 共 通 で あ る が 、 図 表 に よ る リ ス ク の 量 的 表 示 方 法 が 異 な る 。 < 図 表 3-9> 各 国 の リ ス ク の 量 的 表 示 方 法 10 「 日 本 」
24 「 ア メ リ カ 」 「 欧 州 」 出 典 : 日 本 証 券 経 済 研 究 所 (2018)「 投 資 信 託 の 制 度 ・ 実 態 の 国 際 比 較 」 よ り 引 5 用 < 図 表 3-9> を 参 考 に す る と 、 日 本 は 5 年 間 の 推 移 を グ ラ フ で 表 し て い る の に 対 し 、ア メ リ カ は 10 年 間 の 推 移 を 表 し て い る 。ま た 、欧 州 は 年 単 位 で 比 較 す る の で は な く 、 リ ス ク を 7 段 階 で 表 し て い る 。 欧 州 の リ ス ク 表 記 は 、 日 本 や ア メ リ カ と 比 較 し て 、 初 心 者 で も わ か り や す い も の で あ る こ と が う か が え る 。 10 < 図 表 3-10> 目 論 見 書 に 関 し て ど の よ う な 工 夫 が 欲 し い か 出 典 : ト ッ パ ン フ ォ ー ム ズ LABOLIS(2017)「 金 融 商 品 の 購 入 ・ 申 し 込 み に お け る 生 活 者 の 意 識 調 査 」 よ り 作 成 9.9% 0.8% 11.1% 17.6% 17.9% 27.8% 32.4% 35.0% 36.3% 38.3% 42.3% 48.2% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 特にない その他 マンガ風にしてほしい 情報を少なくしてほしい webやアプリなどでも確認できるようにしてほしい 重要な事項は別紙で補完できるようにしてほしい 情報の重要度によってメリハリをつけてほしい 重要な事項は口頭で説明してほしい 専門用語は注釈がほしい 専門用語を減らしてほしい 難しい言葉を減らしてほしい 読みやすくしてほしい
25 < 図 表 3-10> の 「 Web や ア プ リ な ど で も 確 認 で き る よ う に し て ほ し い 」 と い う 投 資 家 の ニ ー ズ に 対 し 、 交 付 目 論 見 書 が 電 子 化 さ れ る な ど 改 善 さ れ て き た 。 し か し 、 現 在 の 目 論 見 書 に 対 し 、 投 資 家 は 読 み や す く し て ほ し い 、 専 門 用 語 や 難 し い 言 葉 を 減 ら し て ほ し い と い う ニ ー ズ が あ る に も 関 わ ら ず 、 い ま だ 解 決 さ れ て い な い 状 況 に あ る 。 そ の た め 、 投 資 家 の ニ ー ズ に 沿 っ た わ か り や す い 目 論 5 見 書 の 作 成 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 第 二 項 販 売 会 社 金 融 庁 は 2017 年 3 月 に「 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 に 関 す る 原 則 」を 公 表 し 、国 民 が 安 定 的 な 資 産 形 成 が 行 え る よ う に 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 で あ る フ ィ デ ュ ー シ ャ 10 リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー に 関 す る 原 則 を 定 義 し た 。 < 図 表 3-11> 投 資 信 託 の 平 均 保 有 期 間 の 推 移 15 出 典 : 金 融 庁 (2019)「 投 資 信 託 等 の 販 売 会 社 に お け る 『 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 』 の 取 組 状 況 」 よ り 作 成 < 図 表 3-11> の と お り 、投 資 信 託 の 平 均 保 有 率 は 上 昇 傾 向 に あ る 。そ の た め 、 銀 行 や 証 券 会 社 な ど の 販 売 会 社 が 手 数 料 稼 ぎ の た め に 顧 客 に 必 要 以 上 に 売 買 を 繰 り 返 さ せ る 「 回 転 売 買 」 が こ の 公 表 に よ り 減 少 傾 向 に あ る と 言 え る 。 20 し か し 、 販 売 会 社 の フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー に は 依 然 と し て 問 題 が 存 在 す る 。 本 項 で は 主 に 、 KPI の 問 題 と 販 売 員 の 説 明 不 足 の 問 題 に つ い て 述 べ て い く 。 2.3 3.1 3 2.4 3.5 2 3.3 3.2 2.5 3 2.1 2.4 2.5 2.4 2.8 0 1 2 3 4 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年上期 ( 年) (年度末) 主要行等 地域銀行 証券会社
26 (1 )KPI の 問 題 金 融 庁 は 販 売 会 社 の 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 の 「 見 え る 化 」 を 促 進 す る た め 、 取 り 組 み 定 着 度 を 客 観 視 で き る 評 価 指 標 と し て KPI を 公 表 す る こ と を 販 売 会 社 に 促 し て き た 。 こ れ に よ り 一 定 数 の 販 売 会 社 が 自 主 的 KPI を 公 表 し て き た 。 し か し 自 主 的 KPI の 内 容 は 統 一 性 が な く 、販 売 会 社 に よ っ て 内 容 が 区 々 で あ る た め 、 5 顧 客 が こ れ を 用 い て 自 分 に 合 っ た 販 売 会 社 を 選 ぶ こ と は 難 し い 。 こ の こ と か ら 金 融 庁 は 2018 年 6 月 に 比 較 可 能 な 共 通 KPI と し て 「 運 用 損 益 別 顧 客 比 率 」「 投 資 信 託 預 り 残 高 上 位 20 銘 柄 の コ ス ト ・ リ タ ー ン 」 「 投 資 信 託 預 り 残 高 上 位 20 銘 柄 の リ ス ク ・ リ タ ー ン 」 の 三 つ の 指 標 を 示 し た 。 金 融 庁 の 調 査 に よ る と 、 金 融 機 関 を 比 較 す る と き に 顧 客 が 参 考 に す る 情 報 ・ 10 数 値 と し て 、「 金 融 商 品 を 購 入 ・ 保 有 す る お 客 様 の 損 益 状 況 」「 販 売 額 や 預 り 残 高 の 大 き い 商 品 の リ ス ク や 手 数 料 、リ タ ー ン 」が 上 位 に 占 め る2 9。こ の こ と か ら 共 通 KPI は 顧 客 の 求 め る 情 報 を 提 供 し て い る と 言 え る 。 こ れ に よ り 、 顧 客 は 共 通 KPI と 自 主 的 KPI の 二 つ の 指 標 を も と に 販 売 会 社 を 判 断 す る こ と が 可 能 に な っ た 。 し か し 、 依 然 と し て 様 々 な 問 題 が 残 さ れ て い る 。 15 < 図 表 3-12> 金 融 庁 や 金 融 機 関 の 「 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 」 の 認 知 度 出 典 : 金 融 庁 ( 2019 )「 リ ス ク 性 金 融 商 品 販 売 に か か る 顧 客 意 識 調 査 に つ い て 20 (最 終 報 告 ・ 主 な ポ イ ン ト )」 よ り 作 成 一 つ 目 に 、認 知 度 が 低 い こ と で あ る 。< 図 表 3-12> を 見 て わ か る よ う に 、取 組 方 針 や 自 主 的 KPI を「 全 く 知 ら な い 」と 答 え た 人 は 69% 、共 通 KPI を「 全 く 知 ら な い 」と 答 え た 人 は 76% に 上 る 。こ の こ と か ら 、共 通 KPI が 顧 客 の 求 め る 2 9 金 融 庁 (2 019)「 リ ス ク 性 金 融 商 品 販 売 に か か る 顧 客 意 識 調 査 に つ い て 」 参 照
9
6
5
28
25
19
63
69
76
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 「顧客本位の業務運営」 取組方針や自主的なKPI 共通KPI ある程度知っている 聞いた事はあるが、詳しくは知らない 全く知らない27 情 報 を 記 載 し て い る に も 関 わ ら ず 活 用 さ れ て い な い こ と が わ か る 。 二 つ 目 に 、自 主 的 KPI・共 通 KPI 共 に 公 表 義 務 化 が さ れ て い な い こ と で あ る 。 2019 年 6 月 時 点 で 自 主 的 な KPI を 668 社 、 共 通 KPI を 281 社 が 公 表 し て い る 。 公 表 数 は 増 加 傾 向 に あ る も の の 十 分 と は 言 い 難 い 状 況 で あ り 、 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 の「 見 え る 化 」の 面 で 販 売 会 社 に 差 が 生 じ て い る と 言 え る3 0。全 て の 販 売 会 5 社 を 比 較 で き る も の で は な い こ と か ら 比 較 可 能 な 指 標 と し て の 役 割 を 果 た し て い る と は 言 え な い 。 < 図 表 3-13> 投 資 信 託 の 販 売 会 社 に お け る 比 較 可 能 な 共 通 KPI の 定 義 基 準 日 毎 年 3 月 末 更 新 頻 度 年 次 過 去 の デ ー タ の 掲 載 初 年 度 は 1 年 分 、次 年 度 は 過 去 2 年 分 、3 年 度 以 降 は 、 過 去 3 年 分 を 公 表 10 出 典:金 融 庁 (2018)「 投 資 信 託 の 販 売 会 社 に お け る 比 較 可 能 な 共 通 KPI の 定 義 」 よ り 作 成 三 つ 目 に 、販 売 会 社 に よ っ て 共 通 KPI の 公 表 時 期 が 異 な る こ と で あ る 。現 在 、 金 融 庁 は 共 通 KPI に つ い て < 図 表 3-13> の よ う に 定 義 し て い る 。し か し 、公 表 時 期 は 定 め ら れ て お ら ず 、 顧 客 に と っ て 販 売 会 社 を 比 較 す る 際 に 有 効 な 指 標 と 15 し て 成 り 立 っ て い な い と 言 え る 。 四 つ 目 に 、 KPI の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム が 活 用 し づ ら い こ と で あ る 。 現 在 、 金 融 庁 は 自 主 的 な KPI・ 共 通 KPI の 公 表 を 行 っ た 金 融 事 業 者 の リ ス ト を ま と め 、 HP に 掲 載 し て い る 。 し か し 、 こ の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を 見 つ け る こ と は 難 し く 、 探 す の に 手 間 が か か っ て し ま う 。 20 こ の よ う に 共 通 KPI は 顧 客 の 求 め る 情 報 が 掲 載 さ れ て い る た め 、 販 売 会 社 を 比 較 す る た め の 重 要 な 指 標 で あ る と 言 え る 一 方 で 十 分 に 活 用 さ れ て い な い 状 況 に あ る 。 そ の た め 、 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 の 指 標 と し て の 役 割 を 果 た す た め に 改 善 を 行 う 必 要 が あ る 。 3 0 金 融 庁 (2 019)「 販 売 会 社 に お け る 比 較 可 能 な 共 通 KPI の 公 表 状 況 」 参 照
28 (2 )販 売 員 の 説 明 不 足 < 図 表 3-14> 投 資 信 託 の 注 文 方 法 ( 複 数 回 答 ) 5 出 典 : 日 本 証 券 業 協 会 (2018)「 平 成 30 年 度 個 人 投 資 家 の 証 券 投 資 に 関 す る 意 識 調 査 報 告 書 」 よ り 作 成 < 図 表 3-14> を 参 考 に す る と 、投 資 信 託 の 注 文 方 法 で 若 者 の 多 く が イ ン タ ー ネ ッ ト 取 引 を 利 用 し て い る 。 一 方 で 年 齢 が 高 ま る に つ れ て 証 券 会 社 ・ 銀 行 の 店 頭 で 商 品 を 購 入 す る 人 の 割 合 が 高 く な る こ と が わ か る 。 販 売 チ ャ ネ ル が 拡 大 し 10 て い る と は い え 、 販 売 会 社 の 店 頭 で 投 資 信 託 を 購 入 す る 投 資 家 の 数 は 依 然 と し て 多 い た め 、 販 売 員 の 商 品 説 明 は 商 品 を 選 択 す る 上 で 重 要 に な る と 言 え る 。 < 図 表 3-15> 金 融 機 関 の 店 頭 で の 対 応 や 商 品 購 入 後 の 対 応 15 出 典 : 日 本 証 券 業 協 会 (2018)「 平 成 30 年 度 個 人 投 資 家 の 証 券 投 資 に 関 す る 意 識 調 査 報 告 書 」 よ り 作 成 42.8 56.6 55.6 46.4 41.6 39.5 30.6 25.9 3 8.5 21.8 27 34.4 42.4 24.6 10.2 14.6 20.7 26.2 30.3 34.9 10.3 8.7 11.7 11.1 10.8 13.7 8.5 8.4 29.3 15.7 7.8 2.9 1 1.9 3.6 6.6 8.5 7.1 2 0.3 0 2.6 0.9 2.4 3.3 3.2 2.2 2.9 0 20 40 60 80 100 120 140 全体 20代~30代 40代 50代 60~64歳 65~69歳 70歳以上 (%) 証券会社のインターネット取引(pc、タブレット) 証券会社の店頭 銀行の店頭 銀行のインターネット取引(pc、タブレット) 証券会社のインターネット取引(スマートフォン) 確定拠出年金 証券会社のコールセンター 19.0% 17.0% 10.0% 42.0% 47.9% 43.9% 23.6% 23.5% 35.5% 9.4% 6.9% 5.8% 4.5% 3.3% 3.0% 1.4% 1.5% 1.8% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 手数料に関する説明は、分かりやすかった 商品のリスクや特性の説明は、分かりやすかった 商品の提案は、自分のニーズに即したものであった 当てはまる どちらかというと当てはまる どちらとも言えない どちらかと言うと当てはまらない 当てはまらない 覚えていないから分からない
29 し か し 、< 図 表 3-15> を 参 考 に す る と 、購 入 後 に「 商 品 の 提 案 は 、自 分 の ニ ー ズ に 即 し た も の で あ っ た 」 と 回 答 し た 人 は お よ そ 半 数 に と ど ま り 、 投 資 家 を 満 足 さ せ る 商 品 説 明 が 十 分 に な さ れ て い る と は 言 い 難 い 。 ま た 、 商 品 の リ ス ク や 特 性 に 関 す る 説 明 や 手 数 料 に 関 す る 説 明 が 分 か ら な か っ た と 回 答 す る 人 も お り 、 現 状 の 販 売 員 の 商 品 説 明 は 十 分 で あ る と は 言 え な い 。 国 民 生 活 セ ン タ ー に 5 寄 せ ら れ た 投 資 信 託 に 関 す る 相 談 で は 、 販 売 員 の 勧 誘 方 法 に 問 題 が あ る も の や リ ス ク の 説 明 が 不 十 分 で あ っ た と 考 え ら れ る 内 容 の も の が あ る 。 例 え ば 、 契 約 時 に 目 論 見 書 を 提 示 さ れ な い こ と や 、 高 額 な 手 数 料 が か か る こ と を 伏 せ た 上 で 購 入 さ せ る こ と な ど で あ る3 1。 こ の よ う に 販 売 員 の 販 売 方 法 や 説 明 内 容 に 問 題 が あ る こ と で 、 投 資 家 は 満 足 の い く 商 品 選 択 が で き な く な っ て い る 。 こ れ は フ 10 ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー に 反 す る と 言 え る 。 投 資 家 が 安 定 し た 資 産 形 成 を 行 う こ と が で き る よ う な 顧 客 本 位 の 業 務 運 営 を 徹 底 す る た め に も 、 販 売 員 の 説 明 不 足 と い う 問 題 は 大 き な 障 壁 で あ り 、 今 後 改 善 し て い く 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。 15 第 三 項 金 融 リ テ ラ シ ー 金 融 リ テ ラ シ ー と は 「 金 融 に 関 す る 知 識 や 情 報 を 正 し く 理 解 し 、 自 ら が 主 体 的 に 判 断 す る こ と の で き る 能 力 で あ り 、 社 会 人 と し て 経 済 的 に 自 立 し 、 よ り 良 い 暮 ら し を 送 っ て い く 上 で 欠 か せ な い 生 活 ス キ ル 」 で あ る3 2。 国 民 一 人 ひ と り の 金 融 リ テ ラ シ ー が 向 上 す る こ と で 、 投 資 信 託 が 家 計 の 資 産 形 成 手 段 と し て 認 20 知 さ れ る と 考 え ら れ る 。 資 産 形 成 の 重 要 性 が 求 め ら れ 、 金 融 商 品 の 多 様 化 、 複 雑 化 の 進 む 日 本 に お い て 、 金 融 リ テ ラ シ ー 向 上 の 必 要 性 は ま す ま す 高 ま っ て き て い る 。 私 た ち は 、 投 資 信 託 に お け る 金 融 リ テ ラ シ ー を 三 段 階 に 分 け て 考 察 す る 。 ① 資 産 形 成 の 重 要 性 に 気 づ く 段 階 25 ② 資 産 形 成 の ⼿ 段 と し て 投 資 信 託 を 選 択 す る 段 階 ③ 投 資 信 託 を 運 用 す る 段 階 3 1 国 民 生 活 セ ン タ ー (20 19)「 相 談 事 例 ・ 判 例 > 各 種 相 談 の 件 数 や 傾 向 > 投 資 信 託 」 参 照 3 2 日 本 証 券 業 協 会 「『 証 券 投 資 』 に つ い て も っ と 学 ぶ 」 よ り 引 用
30 < 図 表 3-16> 金 融 リ テ ラ シ ー の 国 際 比 較
出 典 : GLOBAL FINANCIAL LITERACY EXCELLENCE CENTER(2015) 「 S&P GLOBAL 5 FINLIT SURVEY」 よ り 作 成 < 図 表 3-16> は 、金 融 リ テ ラ シ ー の 国 際 比 較 を し た グ ラ フ で あ る 。最 も 高 い デ ン マ ー ク 、ノ ル ウ ェ ー 、ス ウ ェ ー デ ン の 71% に 対 し て 日 本 は 43% と な っ て お り 、 他 国 と 比 較 し て 日 本 の 金 融 リ テ ラ シ ー は 低 い こ と が う か が え る 。 < 図 表 3-17> 金 融 リ テ ラ シ ー 問 題 の 正 答 率 10 出 典 : 金 融 広 報 中 央 委 員 会 ( 2019)「『 金 融 リ テ ラ シ ー 調 査 2019 年 』 の 結 果 」 よ り 作 成 15 71 71 71 68 67 64 57 52 43 37 0 10 20 30 40 50 60 70 80 デンマー ク ノル ウェ ー スウェ ーデ ン カナ ダ イギ リス オーストラリ ア アメ リカ フランス 日本 イタリ ア (%) 42.9% 51.1% 54.5% 60.7% 63.3% 61.4% 42.7% 50.9% 55.0% 60.4% 64.4% 64.8% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 18-29歳 30代 40代 50代 60代 70代 2016年度調査 2019年度調査
31 ま た 、< 図 表 3-17> を 見 て わ か る と お り 18 歳 か ら 29 歳 の 若 年 層 の 正 答 率 は 低 く 、 年 齢 層 が 高 く な る に つ れ て 正 答 率 が 高 く な る 傾 向 に あ る 。 資 産 形 成 を 行 う た め に は 、早 期 に 資 産 形 成 の 重 要 性 に 気 づ き 、運 用 を 始 め る こ と が 望 ま し い 。 そ の た め 、 早 い 段 階 で 私 た ち の 定 義 す る 一 つ 目 の 金 融 リ テ ラ シ ー を 向 上 さ せ る 必 要 が あ る と 言 え る 。 5 < 図 表 3-18> 投 資 信 託 の 非 購 入 理 由 出 典 : 投 資 信 託 協 会 (2018)「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 」 よ り 作 成 10 投 資 信 託 に 関 す る 金 融 リ テ ラ シ ー に つ い て は 、< 図 表 3-18> を 見 て わ か る よ う に 、投 資 信 託 を 購 入 し な い 理 由 と し て「 損 を し そ う で 怖 い 」「 ま と ま っ た 資 金 が な い 」 と い う 項 目 が 昨 年 と 比 べ て 上 昇 し た 。 投 資 未 経 験 者 は 、 少 額 か ら 長 期 積 立 分 散 投 資 が 可 能 と い う 投 資 信 託 の 特 性 を 理 解 し て い な い と 言 え る 。つ ま り 、 私 た ち の 定 義 す る 投 資 信 託 に お け る 二 つ 目 の 金 融 リ テ ラ シ ー が 欠 如 し て い る と 15 考 え ら れ る 。 20 1.2% 0.0% 3.5% 5.0% 5.5% 5.7% 10.6% 8.0% 19.4% 24.4% 19.5% 22.5% 38.3% 46.4% 0.9% 2.6% 5.1% 5.3% 7.7% 8.1% 10.2% 11.8% 20.2% 22.8% 24.3% 29.9% 38.0% 48.4% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% その他 投信よりも自分で株などを運用したい 購入するのに手間がかかる 投資信託の存在を知らなかった 自分に合った投信を検討する時間的余裕がない 商品の種類が多く自分では選択できない 手数料など費用が高い なんとなく機会がなかった 元本保証がない 投資信託の仕組みがよくわからない まとまった資金がない 損をしそうで怖い 投資の知識がない そもそも興味がない 2018 2017