はじめに
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は じ め に
一昔前までは,「コンピュータ」という言葉を聞いて多くの人がまず思い浮かべたのは,計算機,つ まり計算する「機械」のことだと思います。計算とか機械とかが苦手な人は,言葉を聞いただけで頭痛 がするという人もいるかもしれません。しかし,一部の専門家などを除けば,実際にコンピュータを純 粋に本来の計算のためだけに使っている人が現在どれだけいるでしょうか。ここ 10 年のインターネッ トに代表されるコンピュータネットワークの日常生活への浸透や,ユーザインターフェイスの改良と コンピュータグラフィックス技術の発展,そして携帯電話やブログの爆発的普及など,いわゆる IT 革 命によって,今やコンピュータは第4のメディアあるいはコミュニケーションツールとしての位置づけ をより強くもつようになりました。最早,コンピュータは単なる計算機械ではないのです。その一方で, 最近,表計算ソフトを初めて使ったある学生が「コンピュータって計算もできるんだ!」と驚いたとい う,笑うに笑えない話もまことしやかに広まっています。 事程左様に,コンピュータを取り巻く状況は,コンピュータそのものの性能の急速な向上と社会イン フラの整備やその他の関連した機能やサービスの新たな展開に伴って,劇的に変化し続けています。前 著『初心者のためのコンピュータリテラシー』を上梓してから早 9 年,当時の OS は Windows NT で, 個人の通信インフラはせいぜい ISDN で ADSL はサービスが開始されたばかりの時代でした。今とは 隔世の感があります。IT 技術の進歩について,イヌが人間の 7 倍の速さで成長するところからドッグ イヤーと喩えられたのも今は昔,人間の 18 倍に相当するとされるマウスイヤーの時代にあって,これ から 10 年先を見通すことは非常に困難ですが,少なくともこれまでコンピュータを利用することがで きるというだけで社会的に優位であった時代はすでに終わり,誰もがテレビや冷蔵庫を扱うのと同じ感 覚で当たり前のようにコンピュータを利用することを前提に,その上でコンピュータをいかに活用して いくのか,新たな方向性の提示とそのための方策がより一層求められていくことは確実です。 すでに文部科学省による学習指導要領の改正により,2003 年に高等学校で情報科の授業が必修化 され,今後小中学校を含めた初等・中等教育における教育のスタイルや内容の変化は必至であり,大 学においてもそれを見据えた授業の展開やカリキュラムの編成が必要となります。もちろん社会人と しての基本的資質として IT 技術の活用能力が問われることは,言うまでもありません。上記学習指導 要領改定と同年には,e-Japan 戦略 II が発表され,2000 年に制定された IT 基本法に基づき翌年政府 によって構想された e-Japan 戦略の第二段階目の改革が始まりました。e-Japan 戦略 II においては e-Japan 戦略により整備されつつある IT 基盤を前提に「IT の利活用」が基本理念に掲げられました。はじめに
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当初より e-Japan 戦略では教育及び学習の振興並びに人材の育成が重点計画として強調されていまし たが,今後は社会インフラとしての IT 技術を利活用していかに具体的な成果を生み出すのかが問われ ているのです。
e-Japan の後継戦略として 2004 年に総務省が打ち出した u-Japan 政策では,e-Japan を補完す るように,IT に Communication を加えた ICT の構築とユビキタスネット社会の早期実現に向けた提 言がされています。特に u-Japan 政策においては,e-Japan 戦略 II をさらに推し進める形で,モノ としてのインフラ整備への投資から,ヒトへの投資の重要性が指摘されています。結局モノやカタチ がいくら整ってもそれを使いこなして新たな価値・コンテンツを創造するヒトが育たなければ宝の持 ち腐れになってしまうからです。 したがって本書の目的は,第一には学生が大学における講義を受講する際にコンピュータを利用し て円滑に学習を深化させるための基本的な知識と技能を習得してもらうことです。そして第二として は学生が習得した知識と技能を活用して主体的に創造・発信していくための手助けと後押しをするこ とです。もちろんそれは社会に出てからも優位かつ有為な人材として活躍するための素地になるはず です。本書がそのための一助となることを著者一同祈念してやみません。 本書の対象とする読者 本書は,高等学校で情報科の授業を履修した大学新入生,あるいはそれと同等の知識と技術をもつ 方を対象とします。“はじめに”で述べた通り,2007 年度以降に大学に入学した学生の多くは,高等 学校で情報科の授業を履修した経験をもっています。確かにここ数年,実際に大学新入生に対するコン ピュータリテラシーの授業を担当してみると,少なくともキーボードやマウスの扱いに拒否反応を起こ すことなく,基本的な事柄については多くの学生が習得済みであることを実感します。しかしながら持 てる知識や技術に偏りがあったり,あるいは特殊で例外的な使い方をしている場合もあります。本書は, コンピュータの基本的な知識や技能の習得に忠実に,しかもより実践的に活用していくための手引きと して利用することができます。日常社会の様々な事象に常に興味・関心をもち,問題意識をもって何事 にも進んで取り組み,コンピュータを利活用して自ら解決しようと努力する人の道標になれば本望です。 本書の内容概括 本書は,第 1 章「情報の収集」から始まり,第 2 章「情報の共有」,第 3 章「情報セキュリティと コンプライアンス」,第 4 章「情報の編集」,第 5 章「情報の分析」,第 6 章「情報の提示と発信」,そ して付録・補遺から構成されています。通常,コンピュータリテラシーの教科書というと,コンピュー
はじめに
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タとは何ぞや,あるいはキーボードによる入力練習,といったことが巻頭に置かれることがいまだに多 いのですが,上述のように本書の対象とする読者は,知識・技術としては高等学校の情報科を履修済み であることを念頭に置いていますので,それらコンピュータ利用のための基本的知識や技術については, 付録・補遺にまとめました。 今回,特に留意したのは,実際に我々が情報を取り扱う際の具体的なプロセスに即して,章立てを行っ たということです。つまり個々のソフトウェアやサービスの機能の紹介ではなく,全体として情報のイン プットからアウトプットまでを一貫して有機的に取り扱うことを目指しました。その上で,第 3 章に ついては,コンピュータやインターネットを利用するための技術の向上と乖離するようにして,単なる マナー違反ではなく,明らかに違法な行為に容易に手を染めてしまう者あるいはその被害に遭う者が後 を絶たないという現状に鑑み,ここで改めて大きく紙幅を割きました。これはまた同時に,不正アクセ ス禁止法が施行されてから 8 年が経ち,その間,個人情報保護法などの関連法規が拡充してくる中で, 最早知らないでは済まされないコンピュータやインターネットを取り巻く状況や問題点を把握し,自ら を積極的に守るための心構えと方策を提供するためでもあります。また,大学におけるゼミや研究会で の発表や資料提示のみならず,社会に出てからも企画・立案そして提示のプロセスは必須であることか ら第 6 章を掲げました。 本書の利用法 本書は,第 1 章から第 6 章までを基本的に順番通り学習することをお奨めします。もちろん章ごと に内容として完結していますので,個別の章から学習を始めることもできます。コンピュータに関する 基本的な知識については,付録・補遺にまとめましたので,必要に応じて参照していただくことができ ます。基本的な構成として,各章は,分量は若干異なりますが,それぞれ 2,3 節から構成されており, 1 つの章を大学の 1 コマ 90 分の授業に換算して 2 回分程度で履修することができるように心がけま した。各節あるいは各章に演習問題を配置している場合がありますが,参考程度と考え,適宜補ってい ただければと思います。 注意事項 本書作成時の環境と表記については以下の通りとなっています。O S...Microsoft Windows Vista Enterprise Edition
アプリケーションソフト ...Microsoft Office Professional 2007,Internet Explorer 7, Windows メール
はじめに
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なお,文中特に記載がない場合は,下記の通り省略しました。
Microsoft Windows Vista Enterprise Edition Windows Vista,Windows
Microsoft Office Professional 2007 Office 2007,Office
Microsoft Office Word 2007 Word
Microsoft Office Excel 2007 Excel
Microsoft Office PowerPoint 2007 PowerPoint
Internet Explorer 7 Internet Explorer,IE
Microsoft,Word,Excel,PowerPoint,Internet Explorer,Windows NT,Windows Vista, Windows は,米国 Microsoft Corporation の米国及びその他の国における登録商標です。
その他,本書に記載されている会社名および製品名は,各社の登録商標または商標です。 なお,本文中ではTMおよび は省略してあります。 謝辞 共立出版株式会社編集部の吉村修司氏には企画の段階および編集校正でお世話になりました。また, 執筆者前著『初心者のためのコンピュータリテラシー』と同様,紙面の基本的構成を手掛けてくれた 岡田明子女史,および今回,本書の内容をより一層引き立ててくれる表紙やグラフィックデザインの 提供と困難な DTP 作業を請け負ってくれた祝竜平氏に感謝いたします。 2009 年 1 月 著者一同