Inventory 形式検査の妥当性に 関する一考察〔Ⅰ〕
川 崎 宏
1 目 的
周知の如く,心理学に於けるTestの信頼性(Reriability)と妥当性(Validity)(!)の問題 は重要且つ困難な問題である。知能検査に於ける知能の定義に就いての幾多の学説,(2)(3)(4)
論争は這般の事情を如実に物語るものであろう。特にPerSDnality testに於ける妥当性の問 題は・尺度(Scale)構成の処理に於ける基本的矛盾並びに欠陥(5)や因子的妥当性(Facto−
rial validity)と実際駒妥当性(Practical validity)間の矛盾の面に於いて一層その困難さを 増すものである。勿論この様な矛眉,欠陥を排除する技術的操作が皆無ではない。即ち重相関 法による処理により,信頼性の増加は各尺度の下位検査(Sub−test)に就いて,叉妥当性は Test Butteryそのものに就いて処理することにより解決を図ることが出来るのであるが,実 際的妥当性に就いて,果してこれらの処理が如何なる効果を有するかと云う疑問が尚残る。
この疑問に一つの考察を試みんとするのが本研究の目的の一つである。
∬ 方 法 (1)材料:矢田部・Guilford性格検査(6)
(2)対 象:長崎市仁田小学・校 5年 男女102名 (3)実施期日:昭和33年11月
(4)検査項目
S.(Social introversion)
1.知らぬ人と話すときは固くなる。
13.薪しい友達は伸々できにくい。
25.こちらから進んで友達を作ることが少い。
37.人目に立つようなことは好まない。
49・異性の友達はほとんどできない。
61.無口である。
73.誰とでもよく話す。
85.人と広くつき合うのが好きである。
97.色々な人と知り含いになるのが楽しみである。
109.人中に出てもまごつかない。
T.(thinking introversion)
2.深く物事を考える傾向がある。
4.何でもよく考えて見ないと気がすまない。
26.用心深いたちである。
38・むずかしい問題を考えるのが好きである。
50.実行する前に考えなおしてみることが多い。
62・度々考えこむくせがある。
74.一人きりでいたいと思うことが時々ある。
86.会話の二二にふと考えこむくせがある。
98.人のすることの裏を考えることが多い。
110. のんきなたちである。
D・(Depression)
3.度々ゆううつになる。
1S・理由もなく不安になることが時々ある。
27.度々物思いに沈むことがある。
39・ぼんやり考えこむくせがある。
51・時々自分をつまらぬ人間だと思うことがある。
63.いつも疲れた気持である。
75・度々元気がなくなる。
87.時々何に対しても興味がなくなる。
99.人中にいてもふと淋しくなることがある。
111.度々過去の失敗をくよくよと考える。
C・(Cyclic tendency)
4.すぐ不二二になる。
16. こうふんしやすい。
28.気が変り易い。
40.感情的である。
52.気持ちを顔にあらわしやすい。
64.一寸したことでひどく驚くことがある。
76.早く決心すればよかったと悔むことが多い。
88.時に気が散って考えがまとまらない。
100.気分がしばしば動揺する。
112.興奮するとじき涙が出る。
R.(rhathymia)
5.
17.
29.
41.
53.
65.
77.
89.
101.
113.
よく老えずに行動してしまうことが多い。
早合点の傾向がある。
いつも何か刺激を求める。
計画を立てるよりも早く実行がしたい。
色々違う仕事がしてみたい。
人といっしょにはしゃぐことが多い。
口数が多い方である。
お祭さわぎがすきである。
じっとおとなしくしているのが苦手である。
気がるなたちである。
G.(general activity)
6.短い時間に沢山の仕事をする自信がある。
18.仕事は人よりずっと速い方である。
30.新しいことにもすぐなれる。
42.てきぱきと物事を片づける。
54.動作はきびきびしている。
66.大体いつも機嫌がよい。
78. いきいきしている。
90.困ることがあってもほがらかでいられる。
102.人に対しては,いつも気楽に返事ができる。
114.周囲と人とうまく調子をあわせていく。
A.(Ascendance)
7.人前で話すのは気がひける。
19.引込みじあんである。
31.はにかみやである。
43.人中ではいつも後の方に引込んでいる。
55.
67.
79.
91.
103.
115.
目上の人の前に出るとかたくなる。
世話役はいつも人に頼むことにしている。
自分で話すより人の話をきく方である。
会やグループの為に働くのがたのしみである。
会などの時は人の先に立って働く。
人のあつかいがうまい。
1(Inferiority feeling)
8. じきうろたえるたちである。
20.失敗しやしないかといつも心配である。
32.
44.
56.
68.
80.
92.
1G4.
116.
劣等感(人に劣る感じ)になやまされる。
何かにつけて自信がない。
人から邪魔にされはしまいかと心配である。
困難にぶつかると気がくじける。
人とちがうことは恥ずかしくてできない。
仲々決心がつかず機会を失うことが多い。
人前で赤面するので困ることが多い。
余り迷わずに決心がつく。
N.(NervousneSS)
9.
21.
33.
45.
57.
69。
81.
93。
105.
117.
心配性である。
些細なことを気に病む。
すぐ感情を傷つけやすい。
人から見られているようで不安である。
気むずかしい。
人が見ていると仕事が出来ない。
人の品行(行い)が気になるたちである。
一寸したことが仕事の邪魔になる。
人が来てうるさいと思うことが度々ある。
神経質である。
0.(1ack of objectivity)
10.
22.
34.
46。
58.
70.
82.
94.
106.
118.
わけもなく喜んだり悲しんだりする。
時々ポカγとしていることがある。 ・ とてもありそうもないことを空想する。
空想にふけるのが楽しみである。
時々誰かに打ち明け話がしたい。
いやな人と道で会うとさけて通る。
心配で眠れぬことが度々ある。
坐っていても気分が落ちつかない。
頭がよくなったり悪くなったり定まらない。
度々ねつかれないで困ることがある。
Ag.(lack of Agreableness)
11.
23.
35.
47.
失礼なことをされるとだまっていない。
正しいと思うことは人にかまわず実行する。
目上の人とも遠慮なく議論することがある。
軽蔑されたと思うとひどく腹が立つ。
59.
71。
83.
95.
107。
119.
衝動的である。
退屈した時は何か強い刺戟を求める。
気が短い。
色々な世間の活動がしてみたい。
いつも何かしていないと気がすまない。
平凡に暮すより何か変ったことがしたい。
Co.(1ack of cooperativeness)
12.不満が多い。
24.度々人の気持を確かめてみたい。
36。人に私を充分認めてくれない。
48.人がみていないと大低の人は怠けると思う。
60。人は結局利欲のために働くのだと思う。
72。人から触れられたくない秘密がある。
84.世の中の人は人のことなどかまわないと思う。
96.もっとちがう境這に生れたかったと思う。
108。人の親切には下心がありそうで不安である。
120.わざと除け者にされたことが度々ある。
(5)実施の要領
回答票のみを被験者に配付し,実験者が質問項目を読み最初の要領の説明共に略々40〜50分 間で終了する程度の速さで反応せしめた。術小学生に梢々難解と思われる語は反応の様子を確 め乍ら原文の意を損わぬ範囲で易しい言葉で表現した。
皿 結果及処理 検査の結果は別表〔1〕〔皿〕図の通りである。
表1 表∬ 尺度間相関行列
(小学生N=ユ02) (小学生N=工02)
lx σ
S
T D
C
R竃
A
I
N
O Ag
Co
8,852 2,516 11,166 2,545 ユ.0,872 2,735 11,128 2プ779 12,088 2.54]一 12,064 2,902 9,500 2,500 8,814 2,548 10,6ε8 2,740 10,9フ0 2,6ユ2 13,:L66 2,708
]一〇,480 2,279
1STDCRGA・N・A・C・
S
T D
C
R gA
I
N
O Ag
Co
一〇38 044
−038 331 007 044 453 ユ51
一105 041
331 007 082 426
453 305 040 326 −199 −033 254
283
ユ08 一〇88 594
285 151 386 481 150
325 481 370 329
工65
151一ユ05
488 242 186 390 507 614 355
0δ2
04]一 326
082 426 一ユ99 305 040 −033 488 242 ユ86
133 080
ユ33 −190 −029
080−190
349 −029 332 284 079 422 312 083 033 403 320 −066 009 037 157
254 283
285 ユ5ユ 386 325 481 370 390 507 6ユ4 349 284 3ユ2
079 083
332 422 38ユ 209 381 269 209 269004 279 299 334 315 30]一
工08−088 481 329 355 403 320
033−066
004 279 299283 594
ユ50 ユ65
062 009 037 157 334 315
30工
283
表 画
(法、,経大生)N=1532)
表 IV 矢田部Guilford尺度間相関行列 (京大生:N累200)
X σ・
S
T D
C G
R五 I
N
O Ag Co
9.06 5.45 11.51 4.62 ユ0.97 5.SO 工0.37 4.q4
=LO.49 4.92 ユ1.55 5.14 11L.26 5.57 8.81 5.52 9.75 5.28 8.26 4.43 1ユ.32 4.22 8.47 4.06
1STDCRG五・N・A・C・
S
T D
C
RA G
I
N
O Ag Co
23 41 22 47 64 73 41 35
ユ8
19 22
23
39 04 42 29
ユ5
14 35 20 一〇5 23
41 39
58 22 57 37 62 70
6ユ
03 47
22 04 58
一19 27
:L9
56 61 55 一26 44
47 42 22
〜]一9
50 39 03 17
一ユ3
38
〜ユ3
64 29 57 27 50
68 45 38 42 26
ユ9
73 15 37 19 39 68
55 39 24 33 22
4ユ
]一4
62 56 03 45 55
65 49 16 43
35 35 70
6冤
]7
38 39 65
50 18 20 61 55
一]一3
42 24 49 50
一〇4 一工3 19
−05 03
−26 38 26 33 ユ6
−04
−13
5工 44 一ユ9 22 23 47 44
−13 19 22 43 51 44
一ユ9
IV考察並びに結論
今本研究の結果を辻岡美延(・)の結果と照合検討することにする。表皿,IVは辻岡の結果で ある。先づ 〔A〕表1と皿に就いて
1)平均値の最高尺度及最低尺度は類似している。即ち最:高はAg(1ack of agreeableness)
で最低は1(lnferiority feeling)である。
2)中心化傾向は皿沼の方が安定性があるが1表は梢々変動が見られる。
3)標準偏差は皿表に於いては平均4.97であるが1表では2.62で約半分である。即ち尺度内の 項目間の変動は小学生の場含非常に少く±3σ内に入るので,その分布は準々正規分布に近くな
っているものと推定される。然もこの傾向は1表ではどの尺度に就いても一般的に言える。
4)S,T, D, C, R, G,1尺度の平均値は両者間の差が認められない。
5)A,:N,0,Ag, Co尺度の平均値は両者間の差に有意性を認め得る。
次に〔B〕 ∬表とIV表とに就いて 1)∬表の相関がIV表より一般に低い。
2)S尺度は内々相関ありと言えるものがπ表に於いてA,Co尺度のみであるがIV表ではD,
R,G, A,1,:N尺度である。
3)T尺度に於いてIV表でAgと逆相関をなすのに∬表で正の中等程度の相関をなしている。
4)D尺度でIV表でAと正の中程度の相関が∬表では逆相関をなしている。
5)C尺度のIV表ではRと逆相関が∬表で正の中程度の相関を示している。
6)同様にC尺度に於けるAgとの相関々係も∬,IVでは逆になっている。
7)R尺度に於いては0との相関 8)G尺度ではA,1との相関 9)A尺度ではAgとの相関
10)N尺度ではAgとの相関が逆関係になっている。
11)比較的同一傾向を有するのは1尺度である。
以上の考察を〔C〕各尺度の特性から更に検討して見ると,
1)各尺度の下位項目の因子構造の分化が予想される。即ち,中心化傾向の変動はIV表に見 る様に尺度内下位テ入トの因子構造の因子負荷量の変動によるものと考えられる。
2)このことは逆に標準偏差の変動が逆になっていることによっても裏付けられる。即ち小 学校児童に於いては,この変動が小で,各下位検査に対する被検者の反応が略一定の傾向を有 することは,着目に値する。実は,本検査の実施に当って語彙力の不足から来る児童の反応の 不確実さを予想していたのであるが,結果はこの予想を裏切り,それよりむしろ反応の安定化 を齎らしたことは意外であった。
3)A(Ascendance)に於いて大学生が得点が高いと云う結果は祉会性の発達,自我の発達 の両面から充分首肯出来る点であろう。
4)又0(1ack of objectivlty)も小学校児童に於いて高いことも発達の位相から当然の姿で
ある。
5)Ag, Coに就いても全く同様なことが言い得る。
6)問題は尺度間相関行列の構造にあると思われる。この点を更に追求するためには,更に 因子分析法によらねばならぬが,それは稿を更めて第∬報に譲ることにする。只今回の結果か ら言い得ることは,被験者の年令群によりこの尺度間の構造,即ちPersonality構造に相当な 差があることが充分予想され得ること玉,このことが,この種の検査の妥当性の問題に一つの 解決の鍵を与えるものと予想されることであろう。尚本検査は長崎県に於ける離島綜合学術調 査の一環として,長崎大学の各研究室が夫々の分野に於いて実施したもので,心理学研究室全 員が,これに参加し,対象も小学校児童,中学校高校生徒,一般青年,成人と広範囲に亘り,
地域的にも叉広範囲に亘るものであるので,これらの資料を遂次分析することにより一層本研 究の目的に近づくものと予想していることを附記して筆を欄く。最后に,本研究に多大の御指 導と御援助を頂いた教室主任,沢英久教授並びに教室員各位に感謝の辞を捧げるものである。
参 考 分 献
1.印東 太郎:心理学的測定 金子書房 ユ952p.224〜235.2. Gronbach, L.T。:Essentials of Psychological Testing. Chicago Year Book Publishers,
1945 Vol. I P.140
3.Wechsler,D.:The Mesurement of Adult Intelligence. Baltimore, The William&
Wilkins Co.,19443rd Ed. p.3.
4.川崎 宏:知能要因の機能的分析 長崎大学 教育学研究報告 第2号 1956,P.45〜58.
5.高木 貞一:実験心理学提要 第一巻,岩波書店,1951,p.117〜119.
6.辻岡 美延:矢田部Guilford性格検査,心理学評論 1957, P.70〜100.