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非言語コミュニケーションの教育研究領域について

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(1)

非言語コミュニケーションの教育研究領域について

著者 水沼 和夫

著者別名 MIZUNUMA Kazuo

雑誌名 八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要

巻 1

ページ 33‑37

URL http://id.nii.ac.jp/1078/00002419/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

水   沼   和   夫

*

Referat uber die Funktion und KlassiFikation der nichtsprachhchen Ko■lrnunikation und deren An、 vendung

Kazuo  Ⅳ IIzuNUMA Abstract

Die nichtsprachhsche Kommunikation M/ar in der uralten Zeit,郡 /o die Leute keine richtige Sprache sprachen,die

die einzigeッ

ヘustauschungs■ littel der lnformationen  Des nichtsprachliche Mittel,ふ

/1ilnik und Kё

rpersprache sind im Grund ursprunglicher und manchmal erforgreicher als sprachlichen KOHlmunikation̲ Das folgende Referat teilt als der zveite ErfOrg des unsern Projekts von H I T 2001 von der Funktion und Klassilikation der nichtsprachlchen lnforHlierungsmittein und deren An郡 /endungen in iapanischen HOchschulen und、 、

issenschaftlichen lnstituten Hュ

it

Key wordsI Nichtsprachliche lnformation Ursprunglichkeit Eiblfeld

1.序 にかえて一対象領域 と分類一

「非言語 コ ミュニケー シ ョン」 とは Nonverbal Com―

municationの 和訳 で,日 本 で もその まま <ノ ンヴ ァーバ ル・ コ ミュニ ケー シ ョン >と 呼 ばれ る こ ともあ る。 その 名 の通 り ,言 語 に よ らない コ ミュニ ケー シ ョン行 為 を指 すが ,対 象領 域 は必 ず し も自明 の もの として確定 してい るわ けで はない。最 も簡素 な分類例 として は橋元 良明 に よる

,

1)プ ロ クセ ミクス (近 接 空 間学 )

2)パ ラ ラ ンゲー ジ (パ ラ言語 )

3)キ ネ シクス (身 体 動作 学 )(橋 元 ,P93f)

の 3分 類 が あ る。 1)は エ ドワー ド・ホール による命名 で 対 話者 間で調整 され る互 いの距離や室 内の空 間配分 な ど

を扱 い ,2)は 発話 の際 の声質 や イ ン トネー シ ョン ,速 度 な どを ,3)は ジ ェスチ ャーや 目の動 き ,顔 の表情 な ど身 体 の動 き全体 を対 象 とす る。

レイ・ バ ー ドウ ィステル の始 めた「キネ シクス」 は動 作 の最小 単位 を音 声学 の音 素 にあた る「動作 素 」 と規定 し ,そ の連結体 で ある「動作形態素」が複合 してひ とつ の意味 のあ る動作 を構成 す る ,と す る もので ,60種 類 に お よぶ音素が実験 に よって収集 された。 しか し ,現 在盛 ん に行 われてい る この分野 の研究 において は一般 的方法 とは言 えない。 中心 になってい るの は士ヒ較文化論 的 ,あ

るい は心理学 的視 点か らの研究 で あ る。 そのひ とつ ,D.

モ リスの著作   『マ ンウォ ッチ ング』 (1977)は 最 も網羅 的 な もののひ とつで ,特 に「動作」 につ いて は ,以 下 の

5分 類

,

生 得動作

平成 14年 12月 26日 受理

Ⅲ総合教育センター教授

発見動作 (成 長過程で獲得 され る )

同化動作 (仲 間の中で無意識 に獲得 され る )

訓練 された動作 (ウ ィンクな ど )

混合動作 (歴 史的な変形 ) また「ジェスチャー」 について も

,

偶発 ジェスチャー (意 識 しない気分 )

表出ジェスチャー (微 笑 ,し かめ面 ,う なづ き )

模倣 ジェスチ ャー

形式 ジェスチ ャー (簡 略化 された模倣 ) 象徴 ジェスチャー (文 化間で異なるサイン ) 専門 ジェスチャー (専 門家 グループのサイン )

コー ドジェスチャー (手 話 )

の 7分 類で論 じ ,さ らに

,

ジェスチ ャー変異 (歴 史的 ,地 理的変遷 )

多義 ジェスチャー (同 一文化内で も複数の意味 を持つ もの )

名残 ジェスチ ャー (歴 史 ,幼 児期の名残 り )

の 3つ を月」 項 目として扱 っている。この うち 「手話」

(コ

ー ド信号 )に ついては「言語体系 を持 っている」 という理 由で「非言語」伝達行為 に含 めない研究者 もあ り ,議 論 の分かれ るところである。

モ リスの分類法 はその成立派生過程 に着 目した り ,機

能 に着 目した りとい うものではあるが ,人 間の行 う非言 語 コ ミュニケー ション行為の多様 さを見 るには適 してい る。この著作では他 に以下の 40近 い項 目が上 げられてい る。

方言信号

バ トン信号

(リ

ズム ,架 空つ まみ ,指 立てな ど )

肯定・否定の信号

凝視行動 (時 間 ,視 線 そ らし )

挨拶ディスプレイ

―‑ 33 ‑―

(3)

八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要   第 1巻

姿勢反響 (親 しい関係 で見 られ る姿勢 の同調

)

結合 サ イ ン

身体 接触 結合 サ イ ン

自己接触活動

(セ

ルフ・アダプター /マ ニ ピュレーシ ョン とも言 う

)

非言語的漏洩 (内 的葛藤の表出

)

矛盾信号 (相 反す る 2種 類 の信号

)

不足信号

(つ

くり笑いな ど

)

過乗」 信号 (誇

)

地位 ディスプレイ なわば り行動

障壁信号 (不 安か ら生 じる身体交差

)

防御行動 (衝 撃か ら身 を守 る姿勢 な ど

)

服従行動

(ひ

ざまず きな ど

)

宗教的ディスプレイ (宗 教的忠誠心の表現

)

利他的行動 (生 得的な ものか ,議 論が分かれ る

)

闘争行動

勝利 のディスプレイ

瞳孔信号 (無 意識 に起 る瞳孔の拡大縮小

)

意図運動 (来 客の前での椅子のひ じ握 りな ど

)

転位活動

(こ

れ もセル フ・アダプター /マ ニ ピュレション のひ とつ

)

異指 向活 動 (感 情 の は け ぐち

)

軽 蔑信号

威 嚇信号

わ いせ つ信号 (性 的蔑視

)

タ ブー・ ゾー ン (文 化 や世代 間で異 な る

)

過剰露 出信号 (通 勤電車 で の化粧 な ど

)

着衣信号 (服 装 の変化 が伝 える情 報

)

身体装飾

性別 信号 (男 女 の 自然 な外 的特徴

)

身体 的 自己擬態 (身 体部 位 が発 す る別情報

)

性信 号 (性 的パ ー トナー の選択情報

)

親信 号 (主 に母親 に よる育児 の過程

)

幼児信 号 (親 を引 き付 ける幼児 の泣 き笑 い

)

メタ信号 (動 作 の意 味 を転 じる別信号

)

超 正常刺激 (誇 張や脚色 の効 果

)

スポー ツ行動 (原 形 としての狩猟

)

(以 上 はデズモン ド・ モ リス 『マ ンウォッチ ング』 ,藤 田 純訳 ,小 学館 による。括弧内は筆者

)

以上の項 目はすべて先 に示 した橋元の 3分 類 の内のひ とつ「キネシクス」 に関するものである。個人間・ 集団 間で ,公 的・ 私的空間で行われ る様々な動作か ら ,流 行 な どの社会現象 として表れ る身体的非言語情報 に至 るま で幅広 く取 り扱 っている。 これに対 し ,対 人関係 におけ る「非言語的関与」 に限定 した場合の非言語行動の研究 対象 を ,M.L.パ ター ソンは以下のように整理 している。

1.対 人距離

2  凝視

3.身 体接触

4  身体 の向 き

5  身体 の傾 き

6.顔 の表出性

7.話 の持続時間

8  話の中断

9  姿勢の開放′

l生

10,関 係性 を表すジェスチャー

(こ

こには ,相 手 に対 して ,実 際に ,あ るいは気持 ちの上で望 ましい関与 を意味す る手 や腕 の動 きが含 まれ る。 この ような ジェスチャーの一例 として ,「 私たち二人 は」と話 し 手 は言いなが ら聞 き手のほうへ突 き出 した り引っ込

めた りする手 の動 きが挙 げられ よう。

)

11.頭 によるうなず き

12̲声 の抑揚 ,話 す割合 ,声 量な どのパ ラ言語の手掛 か り

(以 上 は ,M.L.パ ターソン F非 言語 コ ミュニケーショ ンの基礎理論』工藤力監訳 ,誠 心書房 による

)

握手 な どの「身体接触」は ,別 の分類例では「接触学」

とい う分類項 を成 し ,ま たモ リスが 1項 目とした「身体 装飾」 は「対物学」の領域 とされ ることが多い。他 に異 文化間での認識 にずれがある時間を「時間学」 として一 分類項 に ,さ らには文明化 の過程で人間か ら失われつつ ある嗅覚 に焦点 を当てた「臭い」 を独立の分野 としてい る例 もある。 この意味では ,味 覚 に関係す る項 目も当然 設 けられ るべ きだろう。いずれにして も「パ ラ言語」の 扱い以外 は研究者間で共通 しない例が多 く ,確 立 した術 語 とは言 えないようである。 これ は「 キネシクス」 にし て も同様 である。

2.非 言語 コミュニケーシ ョンの位置付 け 人間のコ ミュニケーションにおける非言語情報の重要 性が注 目され る契機 となった研究 は ,エ ドワー ド・ ホー ルの F沈 黙の言葉』 (1959)『 か くれた次元』 (1966)だ と 言われている。ホールは人間の個人的 。社会的空間利用 の法則性 を指摘 し ,対 人距離 により 4種 類 に規定 し ,そ

の各々 をさらに近接相 と遠方相 に区分 した。

1.密 接距離 (0〜 約 0.45m)

約 0.15mま では近接相で愛撫 ,格 闘の距離

固体距離 (約 0.45m〜 12m)

友人 との会話 な どの距離。約 0.76m迄 が近接相

3.社 会距離 (約 1.2m〜 3.6m)

約 1.23m迄 が近接相 ,社 交の場 ,公 式の場の距離

4.公 衆距離 (約 3.6m〜

)

約 7.6m迄 の近接相 は室内講演な どの距離。攻撃 を 受 けて も逃 げられる。 (太 田 ,p48)

これ らの距離 は物理的距離であると同時 に相互関係 に 規定 された ものであ り ,例 えば ,親 密空間の「数インチ

―‑ 34 ‑―

(4)

(約 015m)」 は ① 簡単に触れ合える ,② 本 目手の体熱 を ある程度感 じ取れる ,③ 体臭 ,香 水やシェービングロー ションなどに気がつ く ,④ 本 目手の視覚的な姿が歪められ る ,と いう ,親 密な 2者 に最 も相応 しい距離なのである。

この研究 は彼の多彩 な異文化体験 に結びついている が ,上 記 4種 類の距離空間が民族 ,地 域 ,文 化 によって 微妙に異なることも実証 された。 ここか ら「プラクシミ クス (近 接学 )」 が生 まれ ,社 会学者 ,精 神医学者 ,心

学者 ,言 語学者 らの幅広い関心を呼ぶ こととな り ,同 時 に「異文化コミュニケーション」 という研究分野 をも切 り開 くことともなった。

人間の身体表現様式 と文化領域の結びつきを指摘 した という点では ,そ れに先立つ業績 として ,デ イヴィッド ・ エフロンの『仕種 ,人 種 ,そ して文化』 (1941)が 通常あ げられる。いずれにしても ,非 言語情報への学問的関心 は ,も ともと異文化間交流の問題 と密接 に結びついてい た と言 える。対人 コ ミュニケーションにおける欧米人の 多彩な身体動作 と我々 日本人の抑制 された仕種 を比較す るだけで も ,異 なる文化間における相互理解 のための障 害 は非言語情報 の分野 において も少なか らず存在す るこ

とは明 らかだ。従 って ,外 国語教育 のなかで「非言語 コ ミュニケーシ ョン」の教育がなされ る最近 の傾向は当然 と言 うべ きであろう。

しか し ,異 なる母語でのコ ミュニケーションに伴 う障 害の大 きさに比較す るな ら ,過 大評価すべ きではないの も事実である。相手の母語 を用いて こち らの意思 を伝 え ることは ,そ れに伴 う仕種が相手 にとって未知 の もので あった として も ,相 手 に とって理解可能 なはずの仕種 を 用いなが ら相手 に とって理解不能 な言語 を使用す るより は遥かに確実なコ ミュニケーション方法であるはずだか らだ。

に もかかわ らず ,米 国 にお いてホール の後継者達 が 続々 と登場 した背景 には ,米 国のような多民族多文化社 会 においては非言語情報の重要度が非常 に高い こと ,ま た ,ア メ リカの世界進出に とって も異文化下の非言語情 報への理解が有用であった こと ,な どが指摘 され る。

しか し ,今 日の「非言語 コ ミュニケーション」への広 範 な関心の高 まりは ,異 文化 コミュニケー ションとい う 枠組 み自体 をはるかに超 えた もの となってお り ,到 底戦 略的側面か ら説明のつ くものな どではない。 この潮流 を 生み出す上で ,最 も大 きな影響力 を持 ったのはレイ・バー ドウィステルの『キネシクス とコンテクス ト』 (1970)と アルバー ト ・ メーラビア ンの『サイレン ト・メッセージ』

(1971)だ ったであろう。人間の身体動作 には言語 に似た 分節構造があるとして「キネシクス 身体運動学」を唱 え たバー ドウィステル は ,対 面 コミュニケーシ ョンにおい て言語 メ ッセージの占める割 り合 い は

l望

か 35%の みで あ り ,残 りの 65%は 話 し方 (パ ラ言語 )や 身体動作 ,ジ スチャー等 によって占め られ る とした。 これ に続 いて

,

メーラビアンが ,や は り実験結果 に基づいて ,話 し手 に ついての印象 を受 け手側が評価する際 ,そ の要因の 93%

までが非言語 メッセージ (表 情 :55%,音 :38%)で

あ り ,「 語 られた言葉 その もの」の占める割 り合いは 7%

に過 ぎない ことを報告 した。 その結果 として「言語学者 は ,あ たか もことばがメ ッセージを伝達 した り受 けとっ た りす る唯―の手段であるかの ように考 える傾向があっ た」

(ノ

ンバーバル ,195)と いう反省 とともに後続の研 究が「非言語」の領域 に集中的な関心 を寄せ るところと なったのである。

3.言 語以前の言語

人類が言語 をどのように獲得 したのかはいまだ明 らか ではないが ,そ の前段階 として ,直 立歩行が咽頭位置の 降下 をもた らし ,よ り複雑 な音声 コン トロールを可能 と

した ,  とする説 には説得力がある。人類 は直立歩行 を身 に付 ける過程で ,そ れ自体 は言語 とは言 えない「声」の 大小や抑揚 ,微 妙 な調子のコン トロールな どによって「敵 意」 「好意」 「不服」 「賛 同」 「不満」 「満足」 「勢力誇示」剛 R 従」その他様々な意思や感情 を伝 え合い ,ま ,急 の「危 険」や「驚 き」 また「大 きな喜び」な どのシグナルを交 換 し合 ったであろう。これ らの音声メ ッセージ とともに

,

顔 の表情 ,手 指 ,腕 を中心 とす る四肢 の動 き ,ま た ,身

体全体 を用 いた様々な動作 も重要 な伝達 。表現機能 を 担 っていたはずである。特 に狩猟 の時な どには物音の伴 わない情報交換が必要だった と思われ る。育児や協同生 活 を進 める上で これ らによるコ ミュニケーションは不可 欠だった。 (橋 元 ,3r.)

音声メ ッセージの多 くはやがて言語へ と形式化 された と想像 され る。言語の獲得 ,そ して文字の獲得が人類 の 歴史 において計 り知れない重要性 を持つ ことは明 らかで ある。 また ,そ れに伴 って ,非 言語 メ ッセージの上ヒ重が 相対 的 に見て徐々 に低下た ことも確かだ ろう。 しか し

,

バー ドウィステルやメーラビア ンの研究 は ,言 語獲得以 前のコ ミュニケーシ ョン手段が現在の人類 に とって も不 可欠で主要なコ ミュニケーションの手段であ り続 けてい ることを証明す ることとなった。彼 らの研究 は ,人 間の コ ミュニケーションにおける「言語」の果たす役割 の大 きさについての疑問符 とい うよりは ,非 言語伝達 の多彩 さと根源性 についての指摘だ と言 うべ きだろう。

4.先 天 的 にプ ログ ラム され た行動

この関連 か ら注 目され るの は ,イ レネ ウス・アイブル =

アイベ ス フェル トの <プ ログラム された人 間 >と い う視 点 で あ る。彼 は人 間の行 う動作 に ,学 習理論 で は説 明 の 付 か ない種類 の もの を発 見 し ,そ れ を生 得的 な もの と考 えた。例 えば ,生 まれ なが らの視覚障害児童が ,顔 の表

― ‑ 35 ‑―

(5)

八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要   第 1巻

情 の基本的なレパー トリーを会得 した り ,目 の前 に映 し 出された黒い点が徐々 に大 き くなるのを見せ られて ,生

後間 もない乳児が顔 を背 けるな どして衝突か ら逃れ よう とす る行動 を示 した りするのは ,経 験的な学習 によるも の とは考 えられない。 このような人間の生得的 と思われ る行動 は ,動 物生態学の成果である先天的にプログラム された「固定的行動パター ン」および一定の刺激 にのみ 反応す る探知装置である「生得的開発機構」 に結びつ く もので ,「 部分的にではあるが」 人間の行動 もまた動物 と 同様 に先天的 にプログラムされている ,  とい う。 これ ら の先天的行動パ ターンは社会的な相互作用のなかに見 ら れるもので ,自 然状態 において必然的に生 じる競争的関 係 における安全弁的機能 を果た していると考 えられてい る①攻撃緩和のためのニタニタ笑いはその一例だ。物 を 与 えた り返 した りするゴリラの行動 は人間の対話 におけ る交替 のルールに類似するもので ,共 に「内在的プログ ラムの一部」であるとされる。

また ,二 人の人間が出会 う場合の内的葛藤のパ ターン について ,ア イベスフェル トは次のように述べ ,南 米ヤ ノマ ミ・ インディアンの例 をあげて ,こ れ もまた系統発 生的適応行動のひ とつであると考 える。

「二人の者が出会 う時 ,両 者 は自分 を誇示 しようとす る 行為 と ,相 手 を慰撫 し ,相 手 とのつなが りを作 ろうとす る行為の両方 を行お うとす る。 これは機能面か ら解釈す ることができる。出合いの場面 は ,攻 撃的手段が喚起 さ れ るうちは危険 をはらんでいる。 このため自分の弱味 を みせ ることは ,他 者 に支配 され る機会 を与 えてしまうこ とになる。 自分 を誇示することは ,そ れに対する予防措

置の役 目をする。 しか し ,親 しい関係 を成立 させ るため には ,両 者 とも友好的な意向があることを表 さなければ な らない。 (中 略 )祝 宴 に招かれ よその村 にやって きたヤ ノマ ミ人の兵士 は ,招 待者の前で弓矢 をもって意味 あ り げにはね まわって踊 る。とろが この攻撃的なふるまいは

,

友好的な意向を示すふるまい とうま く調和 され る。子供 もこの兵士 といっしょに ,緑 のヤシの葉 をもって踊 るか らである」

(ノ

ンバーバル ,126打

.)

国賓 を歓迎する礼砲 と子供達 による花束贈呈 の組み合 わせ も ,誇 示 と慰撫の儀式化であ り ,接 近反応 と拒否反 応の両方が同時に行われ る 「パ ター ン」に ,ア イベスフェ

ル トは生得性 を見 るのである。

こうした研究 において彼が危機感 をもって訴 えている のは ,人 間が生得的な もの として本来持 っていたはずの 危機的状況 を未然 に防 ぐための調整機能が ,文 明化の過 程で徐々 に失われつつあるのではないか ,  とい う点であ る。同様 の観点か ら ,彼 は「急激 な文化間の融合が ,特

に残 り少な くなった文字 をもたない文化 をのみ こみつつ ある」ことを危惧する。「われわれが社会環境 を管理する 方法 について もっている知識 には限界がある」が ,ま す ます少な くな りつつある文字 をもたない文化 には「社会

的相互作用のあ りのままの姿 を示す資料」が残 されてい ると言 うのだ。 それは同時に現代社会 における人類 のコ ミュニケーション能力 にみ られる欠陥の指摘で もある。

5。

名称 の問題

『コ ミュニケーシ ョンとしての身体』の序論で ,菅 原和 孝 は非言語 コ ミュニケーションという名称 その ものにつ いて ,そ れが言語 コミュニケーションに「従属 した補助 的 コミュニケーションとい う合意 を伴 う」がために「あ まり健全でない ことは明 らか」だ としている。 また ,彼

は続 く箇所で著作の題名 に既 に示 されている「言語 もま た身体 とい う単一 の場 の中に包 み こまれた活動で ある」

とす る立場 を主張 しなが ら ,近 年の研究の展開について

,

言語 とい う「中心」か ら追放 された「周辺」であった身 体が ,今 や逆 に「中心」 を呑み込 もうとす る傾向にある のだ ,  と言 っている。 (菅 原 ,8)

この場合 <コ ミュニケーションとしての身体 >は ,明

らかに「言語 コミュニケーション」 に対立す る概念 とし て位置付 けられているが ,「 )F言 語 コ ミュニケーション」

と重な り合 う概念 として想定 されているのか どうかは不 明確である。勿論 ,「 言語」対「 )F言 語」とい う二元論 自 体 に問題があることは事実で ,例 えば ,対 話やスピーチ の際に用い られ る ,定 型的な ,し か し言葉が伴わずには 全 く意味 をなさない仕種 を語 られた言葉 その ものか ら分 離 して非言語 コ ミュニケーションの一部 とす ることには 異論が出されている。 また ,言 葉の「抑揚」「音質」な ど は非言語 コ ミュニケーションの要素 に分類 されるが ,そ

の場合非言語 コ ミュニケーションの対極 で あ る言語 コ ミュニケーションの「言語」 とは言語の どのような形態 を指す ことになるのか ,が 問題 になるであろう。つ まり

,

冒頭で見た ような非言語情報の分類 は ,個 々の領域 につ いての専門的研究 を遂行す る上で有効 であった ものの

,

コ ミュニケー ション行為全体 に対する視点や ,個 々の動 作 の相補関係への視点 を失わせつつあるのだ。

それに対 し ,「 身体 とい う単一の場の中に包 み こまれた 活動」のひ とつ としての「言語」 とい う菅原の とらえ方 は ,「 言語」と「非言語」的要素の単一性 を強調 した もの と受 け止 め られ る。それがメッセージの全体 なのであ り

,

コ ミュニケーション行為 のすべては人間の身体 によって

形式化 され るのである。言語 を獲得す るまでの人類の長

い歴史 において ,非 言語 コミュニケーションはコミュニ

ケーションその ものだった。 この ことは ,言 語獲得か ら

文字獲得 に至 る長大 な期 間 において も同様 で ,人 間 に

とって身体が唯―の多チャンネル送受信装置だった。 こ

れによって人々 は視覚 ,聴 覚 ,触 覚 ,嗅 覚 ,必 要な ら味

覚 を汚 区使 しなが らメッセージを伝 えあったのである。身

体 こそ人間のコ ミュニケーションの中心 をなす ものだ と

する菅原の見解 は ,こ の点で的を射た もの と言 える。先

一‑ 36 ‑―

(6)

に引いたアイベスフェル トの研究 は ,言 語以前の人類 の コ ミュニケーション行為 にコ ミュニケーション機能の原 形 を見 ようとするものだった。

従 って ,「 補助的」の意味 を帯 びる「 )F言 語」という名 称 は本来不適切 だ と言 える。また,こ れ を依然 として「補 完的」手段 ととらえる研究者がいるの も事実で ,菅 原の

「身体行為」 はこうした背景 を意識 した主張なのだ ろう。

ただ し ,非 言語 コミュニケーシ ョンとい う用語 には ,に もかかわ らず ,「 身体行為」以上 の広 さを持つ とい う長所 があるの も事実である。 『 <)F言 語 コミュニケーシ ョン >

の理論的問題点』で ,板 場良久 は「発話者不在の状態で 機能す る」非言語表現の例 としてワシン トン DCの 「ベ ト ナム戦争戦没者慰霊碑」の例 に触れているが ,こ の例 に 限 らず歴史的モニ ュメン トの多 くは明 らかに時間を超 え た コ ミュニケー ション行為 を意図 した ものであ り ,そ れ らすべてを身体行為 に還元す ることには無理があると思 われ る。 これは芸術 は勿論 その他の創造行為すべてにあ てはまることだ。芸術作品はいわば非言語 コミュニケー シ ョン行為の精巧な複合体 と見 ることがで きる。 この場 合 ,冒 頭で見た ような研究対象領域の分類が ,基 本的に

「対面 コ ミュニケーション」を前提 としていることがひ と つの障壁 になるが ,人 間のコ ミュニケーションとい う意 味で は ,こ の障壁 に必然性があるわけではない。

6.結 語 に代 えて一国内の取 り組み一

上述 の ような際限 のない広が りは ,人 間 の コ ミュニ ケーション行為 の本質 に由来す るものであ り ,同 時 に

,

「非言語 コ ミュニケーシ ョン」の学際的な成立過程 による もので もあろう。い まも ,社 会学 ,言 語学 ,コ ミュニケー ション学 ,文 化人類学 ,心 理学 ,動 物生態学 ,認 知科学 な ど各分野か らのアプローチを受 けて目覚 ましい進展 を みせている。

日本 における非言語 コ ミュニケーシ ョンの教育 は ,現

在 は大学院が中心 となっているが ,学 部段階で もコ ミュ ニケーション系の学科では単独の教科 として開講するの が普通 になって きている。その他の学科では情報系 ,教

育系の学科で扱われつつある。 コ ミュニケーション論や 異文化 コミュニケーシ ョン論のなかで行われ る例 は無数 と言 える。 また ,外 国語教育の中で非言語 コ ミュニケー ションを扱 う例 も見 られる。これ は ,語 学教師 による 「言 語能力偏重教育」への反省 とも関係 していると見 られ る。

新 しい可合 2性 をもった動 きと言 えよう。

しか し ,視 点 は異なるが ,早 くか ら提唱 されていた教 授法への非言語 コ ミュニケー ション研究の知見の応用が 未だ本格化 していない現状が示す ように ,  この学際的領 域 の 日本国内における定着 は今後 の課題 と見 るべ きだろ

う。 その意味では音楽表現 ,行 動表現 ,造 形表現 ,映 像 表現 を非言語 コ ミュニケーションの枠内で論 じる例 な ど は ,積 極性 のある取 り組み と評価 しうる。 このようなあ る種の試行錯誤 によって広範 な基礎が築かれ ると思われ るか らだ。

一方 ,非 言語 コ ミュニケーシ ョンの成果 を応用す る研 究 は極 めて盛 んで ,特 にロボ ッ ト開発では大いに役立て られている。犬型 ロボッ トのアイボは癒 し系「動作学」で 注 目された。 これに対 し ,ホ ングの二足歩行 ロボッ トア シモの最新型 は「近接学」 を応用 している。 また ,2001 年 にスター トした「通信総合研究所」の「次期 インター ネ ッ ト基盤技術 の研究開発」 はインターフェース関連技 術 のための「対話や非言語 コミュニケーション機構解明」

をテーマのひ とつ とし ,そ のモデル化研究の一環 として 通信相手の視線 を追跡で きるな ど状況共有機能 を持つロ ボッ トを開発 してい る。 これ らは非言語 コ ミュニ ケー シ ョン研究の成果 を踏 まえた もの言 える。 日本感性工学 会の「 ヒ トを含 む霊長類 のコミュニケーションの研究」や 京都大学の「非言語 コ ミュニケーシ ョンの脳 内メカニズ ム」研究 な どはアイベスフェル トの <プ ログラムされた 人間 >の 視点 に立 った もの と言 えそうだ。

その他 ,コ ンピュータ 。グラフィックスを用いた手話 翻訳 も試み られ るな ど ,従 来の社会学的なアプローチを 超 えた応用研究が盛 んである。 しか し ,非 言語 コ ミュニ ケーシ ョンはもとよ り ,コ ミュニケーション学 その もの についての ,日 本独 自の貢献 には目立 った ものがな く ,基 礎的研究の広が りが待たれ るところである。

以上 は平成 13年 度 の人戸工業大学特別研究助成 を 受 けた 2年 間 の プ ロジェク ト研 究「情報 コ ミュニ ケー ション学の教育研究手法の開発」 (大 津正道 ,小 鳴高良

,

水沼和夫 )の 調査研究 をもとにした報告である。

主な参考文献

・『ノン″ヾ―バル・コ ミュニケー シ ョン』 Wフ ォン   ラフラー =

エ ンゲル ,本 名 ,井 出 ,谷 林訳 ,大 修館書店 ,1994

・『コ ミュニケー シ ョン としての身体』菅原和孝 ,野 村雅一編 ,大 修館書店 ,1996

F非

言語 コ ミュニケーシ ョン基礎理論』 MLパ ター ソン ,工 藤 力監訳 ,誡 心書房 ,2001

・『マ ンウォッチ ング』デズモ ン ド ・モ リス ,藤 田純訳 ,小 学館

,

1996

・『コ ミュニケー シ ョン学への招待』橋元良明編著 ,大 修館書店

,

1997

。 「コ ミュニケー シ ョン学入門』太 田信男他 ,大 修館書店 ,1994

F非

言語的‖ 青報 の研究』 酒井清 ,古 川成司 ,明 星大学出版部 ,昭 和 59年

その他 ,国 内の教育研究状況 について はイ ンターネ ッ トの 各種 ホームページを参考 にした。

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参照

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