インタビュー聴解授業における 受容的対話能力の育成に関する研究
福 岡 昌 子
CultivatingtheAbilitytoComprehend theSpeakerIsIntentions!ViaListening‑InterviewingLessons
FuxuoKAMasako
〈Abstract〉
Inthis paper)praCticallessons uslnglistenlng aCtivities and theinterviewlng Of students
wereconducted.The study concerneditselfwith middlelevel(1evelⅡ)
universlty‑StudentsattheCenterforInternationalStudentsofMieUniverslty・
TheobjectiveofthisstudYWaStOimprovetwoskillsamongstudents・Oneskillwas thelisteningcomprehensionofthespeakersintentions(i・e・understandingthespeaker's intentionsandftelingsclearly).Theotherskillconcernedspeakingtechniques(for example,howtoopenandendaconversation)・Theseski11swere,henceforth,taught inJapaneselisteningclasses・
ThiscoursewastoimproveunderstandingofinterviewlngteChniquesinconversation viaatextbookandlistenlngtaPeS・Besidesthis,COnVerSational丘IlerssuchasSoo‑desu‑ka,
Soo‑desu‑neWeretaught.Afterthecoursewascompleted,they conductedinterview tasks.
Attheendofthecourse,itwasfoundthatSoo‑desu‑kaandSoo‑desu‑neWeredifficult forstudentstounderstandwhenappliedtoactualconversation,Wherebymanystudents mistookthespeaker'sintentions・
IncultivatlngCOnVerSation,1tisimportanttostudybasicspeakingactivitiestolearn
the speaker,sintentions・When uslnginterviewlng teChniques)thisis of
utmostimportance.
キーワード:聴解、インタビュー、受容的対話能力、コミュニケーション能力、
あいづち
1.はじめに
本研究は、インタビュー聴解授業を通して「受容的対話能力」の育成を目指したもので ある。本大学の留学生センター中級Ⅱレベルの聴解クラスでは、インタビューの聴解活 動を通して聴解能力の向上を目指すと共に、話す力を高めることも第一の目的とした。
‑15‑
インタビューという活動では、「受容的対話能力」が養える。「受容的対話能力」とは、
村松(1998)(1)によれば、相手を理解するための受容的な対話能力のことであり、その指 導方法は、受容→対立(相手の話を自分の経験や考えを照合して聞くことによって自他の
相違を明らかにし、互いに意見を述べ合う)→融合(双方が納得できる解決策を生み出す ために冷静に粘り強く話し合う)の三段階で行うべきだとする。そして、「受容的対話能
力」の育成にはインタビュー活動が適しており、その理由として相手が何を言いたいのか
しっかり受け止める 〈聴いて、訊ねる〉作業に集中でき、相手の話題を受けて話すという 対話の基本が学べるからとする。
本研究では、上級レベルへと橋渡しをする現段階においては、相手の話に耳を傾け、相 手が何を言いたいのかをしっかり受け止め、理解し合うという、まさに「受容的対話能力」
の育成が必要であると考え、この能力の育成を第二の目的とした。指導においては、2‑2 で示すように、まず話し言葉の育成という点から音声表現練習から始め、指導のポイント
として「受容的対話能力」の育成や会話の技術の向上を目指した練習を聴解活動と平行し て行い、実際にインタビュータスクも行った。
このインタビュータスクの結果から、日本語学習者の会話で不自然さが目立ち、「受容的 対話能力」に関して指導ポイントの習得が未定着だった発話資料を分析し、今後どのよう
に中級後半レベルの学習者に聴解指導を行うべきかについて考察する。
2.指導の枠組み 2‑1.日本語学習者
本研究で分析の対象とした学習者を表1に記載する(2)。
表1.日本語学習者
年齢 性別 国籍 学習歴(国で/日本で) インタビューテーマ A 学部1年生 20 女 中国 3年 1年 先生の留学生教育について
B 研 究 生 33 男 中国 2年 半年 戦後女性の社会的地位の変化
C 大学院生 29 男 イラン なし 2年半 留学生センターの今後
D 学部2年生 24 男 中国 1年 3年 先生の留学生教育について
E 外部研究者 45 女 中国 1年 半年 女性の仕事と家庭の両立
‑16‑
2‑2.聴解捜業の流れおよび指導ポイント
2‑2‑1.聴解活動と「受容的対話能力」育成のための指導ポイント
テキストは、「インタビューで学ぶ日本語」(凡人社)を使用した。授業における聴解活 動としては、新出語句の説明と練習、テープの内容理解と要約、その課のテーマに関する
意見交換を行った。次に、表2に示したように、指導ポイントとして合計15回のうち前 半の授業では話し言葉による音声表現練習を、後半では「受容的対話能力」の育成を意識
した指導やインタビューに関わる会話の表現技術の指導及びその練習を採り上げた。
インタビューする際の留意点として、村松(1998)は「しっかり聴く」「的確に問う」
「共感する」を挙げる。本研究では、この留意点に基づき、次の①〜④のように「受容的 対話能力」の育成に関する指導及びその練習を行った。これらの提示方法としては、テキ ストのテープの内容を聞いてはぼ内容が理解できた段階で行った。
① 聞き手が話し手の話を引き出そうとしているところ、話の中心点を述べているところ、
論点を整理して話し手に質問しているところ、不明な点や疑問点を確認しているところ、
共感を表明しているところはどこか、テキストのテープを聞いて学生に指摘させた。
② 共感を表明する際には、「そうですか」「そうですね」のあいづち表現にも受容的態度 が大きく測られると考える。そこで、発話者から新情報を聞いた時に使う「そうですか」
や発話者への同意を示す「そうですね」も指導ポイントに入れた。例えば、テキストの テープの中で話し手と聞き手が使った同じ「そうですね」の発話でも表現意図の違いは 何かを考えさせたり、福岡(2001)(3)で使用した視聴覚刺激のビデオテープを見せ、「そ
うですね」(簡単な同意/言い淀み/確認/心、からの納得)、「そうですか」(驚き/訝り・
疑い/失望/心からの納得)を発話した際の話し手の視線や表情等から、どのような表 現意図の発話であるのかを考えさせたりした。②の応用練習として、幾っかの会話例を 提示し、「そうですね」「そうですか」のどちらが適切かを考えさせた。
③ ①②以外に、インタビューの開始、転換、終了の表現方法、聞き返す時の表現、説明 を求める表現、報告するときの表現を学習した。また、会話を進展させる際にどの接続 詞が適当か、終助詞を入れるとしたら「ね」と「よ」のどちらが適当か等の練習も行っ
た。
④ 幾っかのグループを作り、①〜③の指導ポイントを応用した短い会話文を作らせ、グ ループ同士で評価させたり、他の学習者が作った会話文のどこが不自然かを考えさせた
りした。
‑17‑
表2.聴解授業の流れおよび指導ポイント
授業内容 指導ポイントとその練習
第1回目 講義の聴解と聞き方 話し言葉の音変化(縮約形等、その他)
第2回目
′′ 〝第3回目
′′助詞の省略
第4回目 インタビュー会話の聴解 繰り返し表現
第5回目
′′語順の変化
第6回目
′′会話の開始
第7回目
′′会話の転換、終了
第8回目 聴解テスト、指導ポイントの筆記テスト、担当教師とのインタビュー会話
第9回目
′′あいづち1「そうですね」「そうですか」
第10回目
′′あいづち2 あいづちの非言語的情報の提示
第11回目
′′確認(話し手の発話内容を自分でまとめて確認す
る仕方)、「ね」と「よ」文末助詞の使い方
第12回目
〝論点を整理し、不明な点、疑問点を聞き返す言い方
インタビューシートの書き方
第13回目
′′インタビューの開始、終了のしかた
インタビュー内容のチェック
第14回目
′′インタビュー内容の報告の仕方
インタビュー内容のチェック
第15回目 聴解テスト、指導ポイントの筆記テスト、留学生センター教師とのインタビュー 会話とその報告
2‑2‑2.インタビュータスクの活動
また、インタビュータスクとしての具体的な活動としては、次の「インタビュータスク の活動」のように行った。インタビューシートと評価票については、表3と表4を参照さ れたい。評価に関しては、学習者同士および学習者からインタビューを受けた教師にも同
じ評価票を使って評価をお願いした。評価内容は、表4に示したように授業の中で指導ポ
イントとして採り上げたもの、発音や文法や語嚢、全体の印象に関するものを対象とした。
その結果は表5に示した。
‑18‑
インタビュータスクの活動
① 日本語学習者にインタビューシートを配布し、どんな内容を留学生センターのどの教 師にインタビューするかを考えさせる。
② 5(〜10)分間という時間の中で、インタビュー全体の流れを予め考えさせる。
③ インタビューの質問内容が、的確に伝わるか、質問内容について吟味する。
(学習者にインタビューシートを提出させ、教師が簡単にアドバイスを行う。)
④ 電話(訪問も可)で先生にアポイントをとる。
⑤ インタビュー時に録音をする。
⑥ 講義最終日に、発表者はインタビューした内容を他の学習者に報告し、全員でその録 音したインタビューテープを聞く。
⑦ 評価票を配布し、お互いに評価し合う。
⑧ インタビューを受けた教師に、インタビューをした学習者の評価をしてもらう。
⑨ 授業終了後、個別に録音したインタビューについてフィードバックし、指導を行う(4)。
*聴解Ⅱインタビューシート
表3.インタビューシート
先生へのインタビュー
名前 (年 月 日)
ー19‑
表4.インタビュー評価票
発表者(
(だれにインタビューしましたか:
評価者:
年 月
日
)評価点:5.4.3.2.1.
)
イ ンタ ビューについて 評 価
1.インタビューしたテーマは適切だったか。 5.4.3.2.1
2.インタビューをした時の質問内容や質問の仕方はよかったか。 5.4.3.2.1
3.発表者は聞き出したい内容を、相手からうまく聞き出していたか。 5.4.3.2.1 4.インタビューした時の「話全体の流れ」はよかったか。 5.4.3.2.1
5.あいづちは適度に打っていたか。 5.4.3.2.1
6.始め方と終わり方は、よかったか。 5.4.3.2.1
7.相手の話が聞き取れなかったり、自分がうまく話せなかったりし
5.4.3.2.1 た時、会話をうまく続けていたか。
8.文法や語彙は、正しかったか。 5.4.3.2.1
9.発音、アクセント、速さ、声の大きさはよかったか。 5.4. 3. 2.1
10.全体の会話の印象は、よかったか。 5.4‑ 3.2.1
合 計
ちょっと一言(気がついたところ)
よかった点
表5.学習者同士およぴインタビューをした教師による評価(5)
日本語学習者 学習者同士による評価(平均) 教師による評価
A 44.5 44.0
B 33.0 40.0
C 40.5 49.0
D 42.5 35.0
E 38.5 47.0
‑20‑
3.受容的対話能力の習得状況
インタビュータスクを録音したテープの中から、主に授業で扱った指導ポイントの「受 容的対話能力」に関わる表現について、対話を進める上で不自然さが目立った発話部分を 拾い出し下線を付した。その結果、「そうですね」「そうですか」に関する発話の不自然さ
が多く目立っ結果となった。
トー①学習者A:あの‑、どんな国から来た学生を主に教えていらっしゃいましたか。
教 師:
やはり、
②学習者A:
あー、そうですね。 あー。 はい。
教 師:一番多いのは中国の学生ですね。 でも、最近いろいろな国の
③学習者A:
はい。 はい。
教 師:
④学習者A:
教 師:
⑤学習者A:
教 師:
⑥学習者A:
教
師:大使館から推薦されてくる学生が、あの、くるようになって、本当に普段
あー。
会わないようなアルバニアとか、こう珍しい国の学生とも話すことができ
は‑。
あー、そうですね。先生、アルバニアっ るようになって、とても饗しいです。ていう国の、国もありますか。 はじめて聞きました。
アルバニアはね。前、コソボっていう
*学習者Aは、教師の話に適度にあいづちを打ち、教師の話にも自然な応答表現を交え ながらインタビューを進めていた。話し手の論点をまとめ、感想を述べているところも あった。その中で、「そうですか」とするべきところを「そうですね」と発話するとこ ろが数カ所観察された。聞き手が質問して話し手から新情報を聞き出しているのである から、「そうですか」を使うべきであり、「そうですね」と「そうですか」の使い分けが やや不十分であることがうかがわれた。
2‑①学習者B:(質問内容:戦後、日本の女性の社会的地位はどのように変わっていったか。)
教
師:それ以後憲法に従ってさまざまな制度改革、政治改革をやることによって、②学習者B:
教 師: 日本の女性の地位は少しずっ上がっていったと思います。
③学習者B:
あー、そうです、
教 師:
④学習者B:わかりました。え、その後は、或はあの、バブル期までときは女性の社会 教 師:
‑21‑
⑤学習者B:地位がはっきりと変化したかどうか、先生どう考えていますか。
教 師: バブル期までにですか。
*学習者Bは、準備した質問をし、その質問に対する教師の話が終わるまであいづちは
打たずに聞き入り(6)、教師の話が終わった途端に「そうですか」と言って、次の話に移っ ていくという展開パタンがインタビュー終了まで続いた。その中で、上記に示したよう
に「そうですね」なのか「そうですか」なのか、終助詞をはっきり言わないことによっ て誤用を回避する傾向が見られた。話し手の発話内容を教室で講義を聞いているかのよ うな対話が見られないインタビューだった。
3‑①学習者C:
教 師:
②学習者C:
教 師:
③学習者C:
教 師:
④学習者C:
教 師:
⑤学習者C:
教 師:
3′‑⑥学習者C:
教
師:
⑦学習者C:
教
師:⑧学習者C:
教 師:
⑨学習者C:
教 師:
留学生センターの日本語の授業の目的、或いは、え、どこに向かって行く
ことを、そして何に注目しているかちょっと教えていただきたいんですが。
そうですね。
難しい問題ですね。 ま、留学生センターとしては外国からみえた留
はい。
学生に日本語をまず勉強していただく、と。 勉強してもらうという意味
はどういう意味があるかというと、一つは日常生活、社会生活の中で(中略) (3‑⑤の続き)
3つ目は国に帰ってから、三重大で勉強していただいて、それで、自分の
国へ帰ったときに、日本とはこういう国である、或いは日本の文化はこういう
ものである、或いは三重大学はこういうところ、こんなにいい大学だと言
わなくてもいいけれども、日本と自分の国との橋渡しというものも期待し
⑲学習者C: そうですね。おっしゃったように日本語はいっばい利点がありま 教 師:
ております。
⑪学習者C:すので、日本語に関JL、のある人はすごく多いです。けど、ええ、日本語の
教 師:
ん。 ん。
⑫学習者C:授業では、どうやってこの目的を行うことは、或いはこのゴールに向かって
一22‑
教
師:⑬学習者C:
教 師:
⑭学習者C:
教 師:
⑮学習者C:
教 師:
3"‑⑯学習者C:
教 師:
⑰学習者C:
教 師:
⑱学習者C:
教 師:
⑲学習者C:
教
師:
⑳学習者C:
ん。 ん。
どういう風に行けばよいのかちょっと教えていただけますか。例えば、あの
ん‑。 ん。
学生の意見は効果あるかないか、或いはどの弱点どこかありますか、利点を
ん。 ん。ん。 ん。
どういうふうにそれを注目していますか。
あ、そう、日本語教育の先生方は(中略) (留学生の日本語のレベルは前と比べてどのくらい成功したと思いますか) 半年でだいたいの日本語、勉強、あの話すことができるようになりますから、
あ、はい。
非常に成果あげているんじゃないかというふうに思いますね。
そうですね。ええ、小規模くらい日本語の授業、すごくうまくいっている
ん。
と思います。けれども、日本語のレベルもう少し上がったら、ええ、ちょっ
ん。 ん。
と教えることはちょっと薄くなります。或はそんなに…
教 師:
ん。
*学習者Cの発話や応答の仕方はそれはど大きな問題はない。しかし、話し手の話を聞 き、「そうですね」という簡単な同意をした上で自分の意見を主張、質問しようとする 展開方法は学習者Bと同じであった。即ち、学習者Cの場合、インタビューという形 式をとっていながらも、他の学習者と違って本来自分の主張を話し手の教師に伝えたい
という目的があったためか、「そうですね」と応答をしてはすぐに自分の意見に入って いくという展開になっていた。また、「そうですか」が一度も聞かれなかったことから、
「そうですね」「そうですか」の使い方が十分に理解されていないことも考えられる。
4‑①学習者D: どのくらいあの日本語教育を…。
はい。した。
教 師:
してきましたか。
そうですね。留学生の②学習者D:
ああ。
教 師:人に教え始めたのから数えると23年くらいですが、その前に中国から帰
③学習者D:
あ、そうすか。
教 師: ってきた日本人にいろんな人に教えてて、それも入れると24年くらい。
‑23‑
④学習者D:
教 師:
4′一⑤学習者D:
教 師:
⑥学習者D:
教 師:
⑦学習者D:
教 師:
⑧学習者D:
教 師:
⑨学習者D:
教 師:
⑲学習者D:
教 師:
⑪学習者D:
あ、つまり中国1年間留学ですか。
あ、中国から帰ってきた人というのはね。
やっぱり人によって教えることは違いますか。
そうですね。例えば初級の始
めの時はそんなに大きい違いはありませんが、でも、やはり将来何をした
そうですね。
いかと言うことがありますから、そのときこう、その人が使える言葉の申
そうですね。
に使える可能性の高いことばをなるべく入れたり、そういう工夫をします。
はい、そうですね。今まであの学生のうちは先生まだ覚えている、覚えて
いる人まだおるんですか。
はい。学生。ん?覚えている人? 今まで教えた中で
はい(笑)。
そうですか。
教 師:覚えている人はいますか。
ああ、たくさんいますよ。
*学習者Dは、発音が悪く少々聞きにくい。話し手がまだ話している段階で「そうすか (そうですか)」「そうですね」を何度も使っている。この学習者も次にする質問が頑に あって、その質問を進めたいという気持ちがうかがわれる。また、「あ、つまり中国1 年間留学ですか。」のように、話し手の発話内容と違った内容のことを話し手に確認し ていたが、話し手の発話内容を確かめた上で話を進めようしている点が評価できる。
5‑(丑学習者E:(日本人女性は学歴があっても結婚すると専業主婦になるのですか。) 教 師:友達の中でも大学を卒業して専業主婦になっている人がたくさんいます。
②学習者E:ああ、そうなると、大学で勉強した専門は生かな、生かなくなりましたね。
教 師:
③学習者E:
あ、生かされなくなりましたね。それは、ちょっともったい
教 師:生かされなくなる④学習者E: ないという感じがありますね。
ス.え、
教 師:
もったいないですね。 ただ、パートタイムで
⑤学習者E:
はい。 そう
教 師:たとえば、日本語の先生を1週間に1回だけ教える人もいますね。
‑24‑
⑥学習者E:ですか。 でも、もし子供が大きくなったら、再就職できますか。元の勉強 教 師:
⑦学習者E: した専門を生かする、何か、生かした仕事を…
教 師: やっぱり、それはとても難しいですね。
*学習者Eは、インタビューしたい内容や質問を前もって準備しておいたためか、適切 な質問をし、適切な応答をしていた。「ああ、そうなると」と言って話し手の発話内容 を自分のことばでまとめ、さらに「それは、ちょっともったいないという感じがありま すね」と共感を示す気持ちをうまく表現している。そして、学習者CやDと比べ、「そ
うですか」と話し手の話を聞いた上で、次の質問に移ることができている。
4.考 察
本研究は、中級レベルから上級レベルへの橋渡しの段階において、インタビューという
聴解活動を通して、相手の話にじっくり耳を傾け 〈聴く、訊く〉 ことで、話し手が何を言 いたいのかをしっかり理解し、対話能力を高めていくことを目指した。そして、インタビュー タスクの中で、聴解授業および指導の成果を応用させようとした。
聴解活動の中では、①発話者が話の中心点を述べているところ、②聞き手が話し手の話 を引き出そうとしているところ、③論点を整理して話し手に質問しているところ、④不明 な点や疑問点を確認しているところ、⑤共感を表明しているところなどを指摘させた。学 習者はこれらの点をすぐには指摘することができなかったが、概ね教師による誘導を受け て指摘できた。
一方、①から⑤の発話状況について学習者が実際に行ったインタビュータスクの中では、
指導ポイントを実際に応用できた箇所は限られていたが、積極的に使おうとした姿勢が観 察された。①の発話者が話の中心点を述べているところは、どの学習者も自分が聞きたい 質問の答えを話し手から聞き出せると、すぐに次の質問に移っていった点から見ても理解 できていたと思われる。②の聞き手が話し手の話を引き出そうとしていたところは、準備
していった質問を消化するのに精一杯で、さらに聞き出したい内容をうまく引き出すこと はできなかった。また、発音が悪かったり、語彙をよく覚えていなかったりした学習者に 対しては、インタビューの話し手から「このような質問の意味か」という内容の質問を受
けている者もいた。③論点を整理して話し手に質問することも、まだその段階までには至っ てはいない。むしろ、④の不明な点や疑問点を確認する方が多く観察された。学習者D のように、聞き間違えていても話し手の言ったことを自分なりに解釈し、さらに確認する
という積極的な態度が観察された。このような学習ストラテジーを使う態度が対話能力を
‑25‑
高める一歩ではないだろうか。
インタビュータスクの会話で、最も自然さを欠いていた点が⑤の共感を表明する点であっ た。学習者AやEのように話し手の考えや気持ちを分かち合い理解しようとしている一 方で、「そうですね」と答えただけですぐに話し手の話を切り上げ、自分が聞きたい質問 に移っていくという「そうですね」の多用が多く観察された。時間的な制約が働いた可能 性もある。「そうですね」や「そうですか」等のあいづちに関わる表現は、共感を表明で
きる受容的な対話で最も基本的な表現方法であると思われるが、両者の基本的な意味や使 い方の違いを理解していても、実際の会話で応用に結びっけることはむずかしかった。相 手の話に耳を傾け理解しようという気持ちや態度がなければ、さらに話し手からの話を聞
き出すことも対話も弾まない。実際の会話に即した「聴く」と「話す」の指導や練習を多 く取り入れる必要がある。
最後に、聴解の授業は専らテープを聞くことに重点が置かれるが、発話と直結させるこ とで多くの効果を生むと思われる。本研究では、インタビューを扱った聴解授業やその発 話タスクを通して、話し手の話をしっかり受け止め、相手の考えを理解しようとする受容 的対話能力の育成を目指すことは、あらゆる対話活動の基礎となる力を養う際の出発点と
して有効であることが示唆できた。今後も指導内容の改善を図りながら聴解と会話を結び つけた指導をより積極的に取り入れ、さらに日本語学習者のコミュニケーション能力の向 上が図れるよう指導していきたい。
付記:本研究は、第4回日本語音声教育方法研究会(2002年10月26日、於:文化外国語 専門学校)での口頭発表に加筆修正したものである。
注
1.村松(1998)の「モノローグ型話しことば教育観からの脱却が必要」は、国語教育における話 し言葉教育に大きな示唆を与えた論文である。これまで日本社会の話し言葉教育は、伝統的に大 勢の前ではっきり自分の考えを述べる独話能力を目標に指導されてきたモノローグ型話し言葉教
育であったが、その教育観から脱却し、話し合いによって意見を調整したり問題を解決したりす