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偶発記憶に及ぼすイメージ喚起性と統合援助の効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

偶発記憶に及ぼすイメージ喚起性と統合援助の効果

著者 豊田 弘司

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 42

号 1

ページ 143‑151

発行年 1993‑11‑25

その他のタイトル Effects of Image‑arousal and Aid for

Integration on Incidental Memory

URL http://hdl.handle.net/10105/1718

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奈良教育大学紀要 第42巻第1号(人文・社会)平成5年 lull. Nara Univ, Educ, Vol.42, No, 1 (Cult.&Soc.). 1993

偶発記憶に及ぼすイメージ喚起性と統合援助の効果

"I‑1. = 弘 LLJ (奈良教育大学心理学教室)

(平成5年4月5日受理)

Craik & Tulving (1975)は、方向づけ課題として記銘語を枠組み文に入れた際にうまくあて はまるか否かの判断を求める文適合性判断課題を用い、うまくあてはまる方があてはまらない場 合よりも偶発記憶成績が良いという適合性(congruity)の効果を兄いだしている。処理水準 (Craik & Lockhart 1972)では同じ水準内での成績の差であるこの効果を説明できないので、

本研究で扱う精微化(elaboration)という概念が出現することになった。精微化とは、記銘語 に情報を付加することであるが(豊田、 1987a)、適合性の効果については次のように説明する ことができる。すなわち、意味的にうまくあてはまる文(適合文)を与えられた場合には、記銘 語が被験者のもつ認知(知識)構造に統合され、記銘語に多くの情報が付加されることになる。

つまり精微化されることによって記銘語の差異性が高まり、検索されやすくなるのである。した がって、記銘語を認知構造‑統合しやすくするための援助を与えると、それによって記銘語の記 憶成績が促進される。

Collins & Loftus (1975)によれば、認知構造は多くの概念が連想的に結合していると考えら れているが、このような構造においては記銘語に対応する概念に隣接する概念、すなわち記銘語 と連想関係にある概念を含む情報を与えることで記銘語に対応する概念の位置づけが明確になり、

認知構造への統合が促進されると考えられる。そこで、豊田(1992)は、枠組み文に記銘語から の連想語を含める場合と含めない場合を設け、上記のような認知構造への統合援助の効果を検討 した。その結果、自由再生において、連想語の有無と適合性の交互作用がみられ、連想語を含む 枠組み文では適合性の効果はみられるが(適合>不適合)、含まない文では適合性の効果はみら れなかったのである。

豊田(1987b)は、上記のような認知構造への統合という視点ではなく、記銘語を枠組み文に あてはめる際に生じるイメージによって記銘語の差異性が高まるという可能性を検討している。

その結果、枠組み文のもつイメージ喚起性が高い場合には適合文よりも不適合文の方が再生成績 が良く、イメージ喚起性が低い場合は不適合文より適合文の方が再生成績が良いという、イメー

ジ喚起性と適合性の交互作用を兄いだしている。

このように、連想語の有無及びイメージ喚起性は適合文と不適合文のどちらにおいても一様に 偶発記憶を促進したのではなかったが、適合性との交互作用が認められたことから上記の2つの 要因は偶発記憶に影響する要因であるといえる。ただし、上述したように、枠組み文に連想語を 含めることによって、記銘語を認知構造へ統合しやすくなることにより多くの情報が付加される。

そして、それによって記銘語の差異性が高まることにより偶発記憶を促進する。一方、イメージ 喚起性が高い場合には、記銘語と枠組み文の統合イメージによって、記銘語の差異性を高めるこ とによって偶発記憶を促進する。それ故、この両者の偶発記憶に対する効果は独立であると考え

143

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144 培「fl di、 lTl

られよう。もし、そうならば、この両者の要因を組み合わせた場合に偶発記憶に加算的な効果の 生じることが期待できる。

そこで、本研究では上記の2つの要因の組合せが偶発記憶に及ぼす効果を検討する。なお、豊 田(1987b)と同様に、実験Iでは方向づけ課題として記銘語が枠組み文に当てはめまる程度を 評定させる文適合性評定課題を用い、実験Ⅱでは、記銘語と枠組み文から形成されるイメージの 鮮明度を評定させるイメージ評定課題を用いて検討する。

実   験 I 方  法

実験計画  2 × 2 × 2の要因計画が用いられた。第1の要因は枠組み文における連想語の育 無(有、無)、第2の要因はイメージ喚起性(高、低)、第3の要因は意味的適合性(適合、不適 合)であり、いずれも被験者内要因であった。

被験者  被験者は、大学生37名(男18、女19)であり、これらの学生の平均年齢は、 18 歳11か月(範囲18歳3か月〜21歳1か月)であった。

材  料  記銘語はひらがな2‑5文字からなる名詞32語であり、清水(1980)及び荒木 (1977)の連想表から選択された。方向づけ課題では、上述の記銘語が枠組み文に適合する程度 を評定させるのであるが、そのための枠組み文が作成された。すなわち、 2(連想語;有、無)×2 (イメージ喚起性;高、低)×2(適合性;適合、、不適合)の要因計画に対応させて、各記銘語に対 して以下に示す8つの枠組み文が作成された。 1)イメージ喚起性が高く、記銘語からの連想語 が含まれ、記銘語が意味的に適合している文(高・有・適)。 2)イメージ喚起性が高く、記銘 語からの連想語が含まれるが、意味的には適合しない文(高・有・不)。 3)イメージ喚起性が 高く、記銘語からの連想語が含まれず、意味的には適合している文(高・無・適)。 4)イメー ジ喚起性が高く、記銘語からの連想語は含まれず、意味的に適合しない文(高・無・不)。 5) イメージ喚起性が低く、記銘語からの連想語が含まれ、意味的に適合している文(低・有・適)。

6)イメージ喚起性が低く、記銘語からの連想語が含まれるが、意味的には適合しない文(低・

有・不)。 7)イメージ喚起性が低く、記銘語からの連想語は含まれず、意味的には適合してい る文(低・無・適)。 8)イメージ喚起性が低く、記銘語からの連想語が含まれず、意味的には 適合しない文(低・無・不)。これらの文例は、表1に示されている。連想語を含む文には、記 銘語からの連想語が1語含まれており、これらの連想語の平均連想頻度は20.30% (10.00%

表1 本研究で用いられた記緒語と枠組み文の例 組み文型    記銘語  ねえさん  連想語  にいさん

適不適不通不適不 有有無無有有無無 高高高高低低低低

は にいさん を たたいて いる。

は にいさん を たべて いる。

は わたし を たたいて いる。

は わたし を たべて いる。

は にいさん と なかよし です。

は にいさん の こども です。

は わたし  と なかよし です。

は わたし の  こども です。

37.00%)であった。また、各 記銘語に対する上記8種類の文 の長さは、はば等しくされた。

方向づけ課題で用いられた評 定用紙はB6判の大きさで、 1 枚に1語ずつ記銘語が上部中央 に印刷されており、その下に枠 組み文と評定尺度が印刷されて いた。評定尺度は、記銘語を枠 組み文中の空欄に入れた際に適

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偶発記憶に及ぼすイメージ喚起性と統合援助の効果 145

合する程度を評定するためのもので、 "あてはまらない" 〜 "とてもうまくあてはまる''までの 5段階評定尺度が用いられた。なお、記銘語と枠組み文と組合せを完全にカウンターバランスす るには8リスト必要であるが、その内の4リストをランダムに選択し、評定リストとして用いた。

これらの各リストは、上述した8種類の枠組み文を4文ずつ含み、リストの最初と最後にバッ ファー(buffer)語とそれの枠組み文がつけ加えられ、表紙をっけた小冊子にされた。

自由再生テスト用紙はB5判の大きさで、上部に氏名と生年月日を記入する欄が設けられてあ り、その下に再生した語を筆答する欄が設けられた。手がかり再生テスト用紙はB5判の大きさ で、評定リストで示された枠組み文がランダムな順で印刷されており、その記銘語をあてはめる 部分がアンダーラインされて空欄になっていた。再認テスト用紙もB5判の大きさであり、記銘 語と共に呈示された枠組み文に含まれている語が1文から1語ずつ計30語が選ばれ、それが バッファ一語2語及び無関連語6語とともにランダムに配列されていた。そして、これらの語の 右横には、 "確かにあっfz" "確かになかった''の6段階の確信度評定尺度が印刷されていた.

また、方向づけ課題と自由再生テストの間に挿入課題を行うが、そのための用紙も用意された。

この用紙はB4判の大きさで、上半分に有意味な文字列、下半分に無意味な文字列が印刷されて いるものであった。

手続き  実験は偶発学習実験の手続きを採用し、集団的に実施された。まず、上述した小 冊子を配布し、評定用紙の上部に印刷された語(記銘語)を下の文(枠組み文)に入れた際に適 合する程度を5段階で評定するように教示を与えた。そして、黒板に評定の例を示しながら、評 定の仕方を説明した。被験者全員が評定の仕方について理解したことを確認した後、実験者の合 図に従って1ページにつき10秒のペ‑スで評定させた。評定終了後、上述の用紙を配布して3 分間の挿入課題を行った。この課題は、用紙に印刷された文字列の中から3文字以上の名詞を見 つけだして丸印をつけるものであった。挿入課題終了後、用紙を配布し、書記自由再生を10分 間行った。その後、上述の再認テスト用紙を配布し、そこに印刷されている各語に対する記憶の 確信度に基づき、 6段階のいずれかに丸印をっけるように求めた。実施時間は5分間であった。

さらに、その後、手がかり再生テストを5分間実施した。そこでは、上述の手がかり再生テスト 用紙に印刷されている枠組み文中の空欄に当てはまる記銘語を筆答するように求めた。

結果と考察

方向づけ課題で用いられた評定用紙をチェックしたところ、どの被験者にも記入もれはなかっ た。また、実験後、記銘の意図を持った者に挙手を求めたが挙手はなく、全員が記憶の意図を持 たなかったことが明らかになった。ただし、豊田(1992)と同様に、対応する枠組み文中に含ま れている語に対して再認テストでのヒット反応が生じている記銘語(確かに精微化が生じている と確認された記銘語)を調べたところ、 8つの条件中のいずれかにおいて枠組み文中の語に対す るヒット反応が生じていない被験者が13名認められた。これらの被験者は、枠組み文中の情報 が記銘語に付加されていない(精微化が生じていない)ということになるので後の分析から除い た。その結果、分析対象は24名となった。

本実験で用いた枠組み文の適合性の操作が適切であることを確かめるために、各文型ごとに適 合性評定の平均値を算出した。表2の上欄にその値が示されている。これらの評定値について、

2(連想語;有、無)×2(イメ‑ジ喚起性;高、低)×2(適合性;適合、不適合)の分散分析を行っ たところ、適合性の主効果(F(1,203)‑358.63, p<.01)が有意であり、本実験で用いた枠組み文

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116 豊 田 弘 司

表2 枠組み文型ごとの平均評定値

イメージ喚起性 厄詠

連想語の有無      有       無

有       無 適合性       適   不   適   不    適   不   適   不 実験I

適合性評定 実験Ⅱ

イメ‑ジ評定

4.34 1.58  3.15  1.33   3.61 1.72  3.21 1.54 (0.37) (0.76) (0.65)  (0.37)

4. 63  2. 43  4. 04

(0.44) (0.89) (0.62)  (0.90)

の適合性の操作が有効であることが 確かめられた。

自由再生  図1には、枠組み文 型ごとの平均正再生率が示されてい る。これらの正再生率を角変換(Ⅹ'

‑sirr!T)し、 2(イメージ喚起性高、

低)×2(連想語有、無)×2(適合、不 適合)の分散分析を行ったところ、

イメージ喚起性、連想語の有無、適 合性の主効果及び交互作用のいずれ

も有意ではなかった。すなわち、連

s

? s 1   8 8

% 平地轟丁葱T

(0.73)  (0.61) (0.f (0.47) 3.57       3.11 2.01 (0.83)  (0.59) (0.87) (0.70)

イメ‑ジ喚起性

図1枠組み文型ごとの平均自由再生率(実験I) 想語の有無とイメージ喚起性の組合

せによる加算的な効果どころか、各要因それぞれの効果もみられなかった。この結果は、豊田 (1987b)及び豊田(1992)と一致しない。本実験の場合、連想語の有無、イメージ喚起性及び 適合性を組み合わせたことにより8つの条件が設定され、各条件に含まれた記銘語は4語であっ た。先の研究と比べると各条件に含まれる語数が1語少なく、このために条件差が検出されにく くなった可能性が考えられる。また、先の研究に比べて1リストに含まれる記銘語数が2語増え ており、そのことによってやや再生率が低くなっていた。そのための床効果によって条件差が検 出されにくかった可能性も考えられる。

ただし、 Hall & Geis (1980)は、適合性の効果が認められる研究(Craik & Tulving, 1975;

Goldman & Pellegrino, 1977 ; Moscovitch & Craik, 1976 ; Schulman, 1974)と認められない 研究(Geis & Hall, 1976 ; Roenker, Wenger, Thomson & Watkins, 1978; Weiss, Robinson,

& Hastie, 1977)を比較し、前者の研究は方向づけ課題において速さを要求するのに対して、後 者の研究は被験者ペースもしくは比較的ゆるい時間制限によってなされているという実験手続き 上の違いを指摘している。本実験も評定時間が10秒というゆるい時間制限であったため、適合 性の効果が生じにくい条件設定であったと考えられる。それ放、上記の両要因との交互作用も検 出されにくくなったと考えられる。今後はより速さを要求する事態での検討が必要であろう。

手かかり再生  図2には枠組み文型ごとの平均手がかり再生率が示されている。この図から 明らかなように、手がかり再生においても、連想語の有無とイメージ喚起性の加算的効果は認め られていない。これらの正再生率を角変換して分散分析を行ったところ、連想語の有無の主効果

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偶発記憶に及ぼすイメージ喚起性と統合援助の効果

イメージ喚起性

図2 枠組み文型ごとの平均手がかり再生率(実験I)

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(F(1.!ササ‑ H.37, pく.01)及び連想 語の有無×適合性の交互作用 (F(1.23)‑ 10.77, p<.01)が有意で あった。この交互作用について下位 検定を行ったところ、連想語を含む 場合には、適合文と不適合文の間に 差はないが(t‑ 0.58)、連想語を含 まない場合には、適合文が不適合文 よりも再生率が高かった(t‑4.50, p<.01)。この結果は、自由再生に おいて同じ交互作用を兄いだした豊 田(1992)と一致している。ただし、

豊田(1992)の自由再生は、連想語を含む場合に適合性の効果があり、含まない場合にはその効 果がみられなかった。手がかり再生においては、記銘語の符号化時の文脈が復元されるので、そ のことが適合性との交互作用は得られたものの、自由再生との違いとして現れたと考えられよう。

すなわち、枠組み文が手がかりとして与えられているので、連想語を枠組み文の中に含む場合に はその枠組み文が不適合文であっても記銘語を認知構造へ統合しやすいのに対し、連想語を含ま ない場合には、不適合文であれば統合しにくいのであろう。

一方、イメージ喚起性については、主効果、交互作用ともに有意でなかった。この結果は、同 じ手がかり再生においてイメージ喚起性の主効果及び適合性との交互作用を兄いだした先の研究 (豊田、 1987b)と一致しない。豊田(1987b)と本実験では用いた材料が異なるのでさらなる 検討が必要ではあるが、イメージ喚起性は、連想語の有無という統合援助に関わる要因に比べて 偶発記憶に及ぼす効果は小さいのかもしれない。ただし、手がかり再生においては推測 (guessing)の生じている可能性も考えられる。連想語を含む文では含まない文よりも記銘語を 推測しやすいという点も考慮に入れておかねばならない。さらに、本実験では、方向づけ課題と して記銘語と枠組み文の意味的な適合性を評定させた。このような課題ではイメージ喚起性が高 い場合でもイメージが形成される可能性は小さく、そのことが結果に反映されていることも考え

られる。実験IIでは、この点を考慮し、イメ‑ジを喚起させやすい方向づけ課題を用いて検討す る。

さらに、全体的には、適合性の主効果(F(1,203)‑ 13.25, p<.01)が有意であった。意味的に 適合する文を枠組み文とする記銘語の手がかり再生率が、意味的に適合しない文を枠組み文とす る場合のそれよりも高かったのである。上述した適合性に関する過去の諸研究では手がかり再生 において一貫して適合性の効果が兄いだされている。本実験においても同じく適合性の効果が認 められ、手がかり再生において適合性の効果の出現はかなり安定したものであることが示された。

実   験 Ⅱ

方  法

実験計画  実験Iと同じく、 2(イメージ喚起性)×2(連想語の有無)×2(適合性)の要因計画 であり、いずれの要因も被験者内要因である。

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148 豊 田 弘 司

被験者  被験者は、大学生37名(男22、女15)であり、これらの学生の平均年齢は、 19 歳3か月(範囲18歳3か月〜22歳10か月)であった。

材料及び手続き  方向づけ課題において、記銘語を枠組み文に入れた際に生じるイメージの 鮮明度を評定させること以外は、実験Iと同じである。

結果と考察

実験Iと同様に、評定用紙や記銘の意図の有無をチェックし、さらに、再認テストにおける ヒット反応が生じている記銘語(確かに精微化が生じていると確認された記銘語)を調べたとこ ろ、 8つの条件中のいずれかにおいて枠組み文中の語に対するヒット反応が生じていない被験者 が7名認められ、これらの被験者は後の分析から削除した。その結果、分析対象は30名となっ た。

枠組み文のイメージ喚起性の操作が適切であることを確かめるために、各文型ごとにイメ‑ジ 鮮明度評定の平均値を算出した。表2の下欄にその値が示されている。これらの評定値について、

分散分析を行ったところ、イメージ喚起性の主効果(F(1,203)‑60.70, p<.01)が有意であり、

本実験で用いた枠組み文のイメージ喚起性の操作が有効であることが確かめられたo

自由再生  図3には、枠組み文型ごとの平均正再生率が示されている。これらの正再生率を 角変換して分散分析を行ったところ、

イメージ喚起性、連想語の有無、適 合性の主効果及び交互作用のいずれ も有意ではなかったO イメージを喚 起させやすい方向づけ課題を用いた 場合でも、実験Iと同じく、自由再 生事態においてはイメージ喚起性と 連想語の有無の効果は認められず、

両者の加算的効果もみられなかった のである。

手かかり再生  図4には、平均 手がかり再生率が示されている。実 験Iと同じく、連想語の有無とイ

メージ喚起性の加算的効果はみられ ていない。これらの正再生率を角変 換して分散分析を行ったところ、連 想語の有無の主効果(F(1,203)‑

25.84, p<.01)のみが有意であっ た。すなわち、連想語が含まれる文 を枠組み文とする記銘語の手がかり 再生率が連想語が含まれない文を枠 組み文とする場合のそれよりも高 かった。この結果は、豊田(1992) 及び実験Iに一致するものであり、

朗 報 紺 閉 館 閲 伯 s a 相 田

㌔ H‑E一止再董

EZl有 . 道 国 有 . 不 田 無 . 適 田 無 . 不

f i イメ‑ジ喚起性

図3 枠組み文型ごとの平均自由再生率(実験Ⅱ)

抑 珊 瑚 Ⅷ 甜 Sq 瑚 刃 S 2 a

% 1

E Zl有 . 適 Eヨ有 . 不 E 3 無 . 適 ロ ォ ーT ‑

f i イメージ喚起性

図4 枠組み文型ごとの平均手がかり再生率(実験Ⅱ)

(8)

偶発記憶に及ぼすイメージ喚起性と統合援助の効果 149

検索時に符号化時の文脈が復元される手がかり再生事態ではより一層統合援助の効果が増幅され、

明確な記憶成績の差として現れやすいのであろう。一方、実験Iと同じく、イメージ喚起性の主 効果は認められなかった。イメージを喚起しやすい方向づけ課題を用いてもイメージ喚起性の効 果がみられなかったことは、イメージ喚起性は、連想語の有無という統合援助に関わる要因に比 べて偶発記憶に及ぼす効果は小さい可能性が高いといえよう。

本実験において従来の研究及び実験Iと異なるのは、適合性の主効果CFfi203)‑ 1‑28)が有意 でなかったことである。適合性の効果は、手がかり再生においては一貫して認められていたが、

本実験ではそれがみられなかったのである。ただし、イメージの鮮明度評定を用いた、豊田 (1987)の実験Ⅱでは、イメージ喚起性の高い場合には適合性の効果はなく、本実験の結果と一 致している。このことは、次のように考えられよう。すなわち、イメージの鮮明度を評定させる ことによって不適合文では奇異なイメージが喚起される。そして、その奇異性によって記銘語の 差異性が高まり、検索されやすくなったのであろう。しかし、豊田(1987b)の実験Ⅱでは、イ

メージ喚起性の低い場合には適合性の効果を兄いだしているのに対し、本実験では、兄いだして いない。この点については今後の検討が必要である。また、実験Iでは、連想語×適合性の交互 作用がみられたのに対し、本実験ではそれが認められなかった。イメージの鮮明度を評定させる ことによって、連想語を含まない不適合文において奇異なイメージが形成される。奇異イメージ はいくつかの研究(Merry, 1980; Merry & Graham, 1978; Wollen & Cox, 1981)において偶 発記憶の促進効果が示されているが、この奇異イメージによって記銘語の差異性が高まり、不適 合文の記銘語の検索が促進されたといえよう。

要   約

本研究の目的は、偶発記憶に及ぼす連想語による統合援助とイメージ喚起性の組合せの効果を 検討することであった。被験者は大学生であり、実験Iは方向づけ課題として文適合性評定を用 い、実験IIは、イメージ鮮明度評定を用いて検討した。その結果、実験I、 IIともに、連想語に よる統合援助とイメージ喚起性の加算的効果はみられなかった。また、自由再生においては再生 率が低く、両要因の効果はみられなかったが、手がかり再生においては連想語による統合援助の 効果はみられた。しかし、イメ‑ジ喚起性の効果がみられず、イメージ喚起性の効果は連想語に

よる統合援助の効果に比べて小さい可能性が考察された。

引 用 文 献

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308.

豊田弘司1989 記憶の精微化に及ぼす枠組み文型の効果 心理学研究 60, 105‑108.

豊田弘司1992 子どもの偶発学習に及ぼす連想による統合援助の効果 教育心理学研究 40,359‑368.

Weiss, S. L., Robinson, G., & Hastie, R. 1977 The relationship of depth of processing to free recall in second and fourth graders. Developmental Psychology, 13, 525 ‑ 526.

Wollen, K. A., & Cox, S. D. 1981 Sentence cuing and the effectiveness of bizarre imagery. Journal of

Experimental Psychology : Human Learning & Memorッ蝣, 7 , 386 ‑ 392.

(付記)本研究の材料作成とデータ整理については、平成4年度卒業の川L 隆君の協力を得た。記し て感謝の意を表します。

(10)

151

Effects of Image‑arousal and Aid for Integration on Incidental Memory

Hiroshi Toyota

{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, 630, Japan) (Recieved April 5 , 1993)

Two experiments were carried out to investigate the combined effects of image‑

arousal and aid for integration on incidental memory. The experiments involved orient‑

ing task in incidental memory paradigms. In Experiment I, 37 subjects were asked to rate the semantic congruity of each target with its sentence frame followed by free recall, recognition and cued recall tests. Each target was referred to have been elaborated when the word in its sentence frame was hit in recognition test. Sentences with an associate of each elaborated target had led to better cued recall performance than those without an associate when these sentences were incongruous, whereas the difference between the two sentences was not observed when they were congruous.

This result was interpreted as showing the effect of aid for integrating targets into cognitive structure on incidental memory. But the effect of image‑arousal was not observed. In Experiment II, 37 subjects were asked to rate the vividness of image aroused by each target and its sentence frame. Sentences with an associate of each elaborated target had led to better cued recall performance than those without an associate at both case of semantic congruity. This result showed the effect of the aid for integrating targets into cognitive structure on incidental memory. As in Experiment I, the effect of image‑arousal was not observed. Both experiments did not show the combined effect of image‑arousal and aid for integration on incidental memory. These results were interpreted as showing that the image‑arousal was less effective than the aid for integration in incidental memory.

参照

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