新 潟 県 下 に 於 け る 初 誕 生 儀 礼
近 藤 直 也 一︑
はじ め に 新潟 県下 では
︑管 見の 及ぶ 範囲 では 四一 例の 初誕 生儀 礼の 報告 を確 認す るこ とが でき た︒ 北陸 地方 の中 では
︑別 稿で 詳述 する 予定 であ るが
︑筆 者が 確認 し得 た富 山一 三例
・石 川九 例・ 福井 九例 の三 県と 比べ ても 抜群 に多 い︒ 三 県を 合計 して も三 一例 であ り︑ 新潟 は一 県だ けで 三県 の合 計よ りも 一〇 例も 多い 計算 にな る︒ 民俗 世間 の中 で︑ そ れだ け初 誕生 儀礼 の存 在が 大き く受 けと めら れて いる 証拠 であ ろう
︒単 なる 民俗 調査 者達 の気 まぐ れだ けで これ だ けの 報告 が集 積さ れる とは 考え られ ない
︒ 東北
・関 東地 方 の事 例と 比較 対照 し なが ら︑ 新潟 県 下に おけ る初 誕生 儀礼 の詳 細を じ っく りと 検討 し てお きた い︒
二︑
新潟 県下 に於 ける 初誕 生儀 礼の 事例 1.
新潟 市山 の下 町・ 誕生 前に 歩く 子に は︑ 一升 餅を かつ がせ てつ ぶし た①
︒ 2.
三条 市・ 子供 が満 一歳 にな ると 誕生 祝い が行 われ るが
︑こ れを タイ ジョ ウと 称し た︒ お祝 いは オコ ワ・ ボタ モ チ・ オハ ギ等 を作 り︑ 近親 者を 招い て振 舞を する
︒紅 白の
﹁モ チマ ンヂ ュウ
﹂︵ 大福 餅の よう で皮 の中 に豆 を 入 れた 慶祝 用で ある
︒饅 頭屋 で作 る︶ を作 って 配っ たり する
﹇町 部﹈
︒子 供の 健康 を祈 願す るた め︑ 当人 を立 てた 箕に つか まら せて 立た せる
︒そ のお 尻に オハ ギや ボタ モチ を打 ち付 ける 風習 もあ った
﹇上 須頃
﹈②
︒ 3.
柏崎 市笠 島・ 生後 一年 目を タイ ジョ ウと いっ て︑ 餅を つい て親 戚に くば る︒ その お返 しは だい たい 浜モ ンが 多 一
い︒ 重箱 に二 つぐ らい しか 入ら ない 大き い餅 を︑ 子供 やツ チと いっ しょ に箕 の中 に入 れて 供え
︑子 供の ケツ
︵尻
︶ にぶ つけ る︒ なお
︑こ の餅 は子 守り が食 べる こと にな って いる
︒③
4.
柏崎 市箕 島・ 重箱 に入 れた 大き な餅 を槌 と一 緒に ミ︵ 箕︶ の中 に入 れ︑ 子を そこ に立 たせ てこ の餅 を尻 に投 げ つけ て転 がし た④
︒ 5.
加茂 市旧 七谷 村・ 誕生 祝に は︑ とり あげ 婆さ んや 濃い 親戚 をよ び︑ 餅を つい て御 馳走 する
︒箕 に子 供を 立た せ︑ とり あげ 婆さ んが 一五 セン チく らい の餅 をぶ つけ てこ ろば せる
︒年 とっ た人 がぶ つけ ると よい
︵丈 夫に 育つ
︑長 生き する
︶︒ いい こと を聞 くよ うに
︑悪 いこ とを 聞か ぬよ うに
︑八 十八 まで 生き るよ うに
︑と いっ て祝 う︒ 帰り には 餅を 土産 に持 たせ る﹇ 岩野
・小 乙﹈
︒
・初 子の 誕生 日に
︑赤 子を 箕に つか まら せて
︑そ の子 のト リア ゲバ アサ ンが 子供 の背 中を 丸い 大き な餅 で三 度叩 く︒ これ は八 十八 歳ま で生 きる よう にと の呪 いで ある
︒そ の餅 は赤 子の 帽子 にく るむ
︒そ のほ かに 餅を たく さ ん作 って
︑親 類︑ 産婆 を家 に呼 んで 食べ ても らう
﹇西 山﹈
︒⑤
6.
加茂 市上 大谷
・生 後一 年目 の誕 生祝 いに は︑ 産婆 が子 供を 箕の 中に 入れ
︑餅 で子 供を たた いて 祝う
︒⑥
7.
栃尾 市・ 初子 の初 誕生 は嫁 の実 家で 祝う
︒仲 人︑ 産婆
︑親 類総 代︑ 兄弟 姉妹 など を呼 んで 祝う
︒神 棚に 桝に 団 子く らい の大 きさ の餅 三つ を入 れて あげ る︒ 産婆 が赤 子を 箕に つか まら せて 立た せ︑ 餅を 赤 子の 頭 上に あげ て︑ まめ にご うぎ
︵丈 夫︶ にと いっ て︑ 男は 左か ら︑ 女は 右か らま わし
︑そ の後 にそ の餅 を産 婆が 赤子 の尻 にぶ っつ ける
︒そ して
︑そ の餅 をみ んな で食 べる
︒こ のこ とは 子供 が丈 夫に 育つ よう にと いう 願い が籠 めら れて いる とい う︒ 誕生 祝い とし て︑ はき もの
︑四 ツ身 の一 重ね 一枚 が嫁 の実 家か ら贈 られ る︒ イッ ケ︵ 部落 内の 親類
︶に は餅 を配 る﹇ 下樫 出﹈
︒
・初 誕生 のこ とを タイ ジョ ンチ とも いう
︒こ の日 は餅 を搗 いて
︑取 上げ 婆さ んや 親類 の人 を呼 んだ りし て御 馳走 する
︒近 所の 人に は餅 を配 る︒ 嫁の 実家 では
︑子 供の 着物 と米 を持 って くる
︒初 子の 時は
︑小 豆餅 を二 つ入 れ た茶 碗を 桝の 中に 入れ
︑そ れを また 箕の 中に 入れ
︑大 神宮 様に 供え る︒ 子供 を大 神宮 様に お詣 りさ せた 後︑ 子
二
供を 箕に つか まら せて おい て︑ 取り 上げ 婆さ んが
︑そ の小 豆餅 を﹁ 百ま で生 きれ
﹂と いっ て︑ 子供 の尻 にぶ っ つけ た︒ 丈夫 にな って 腰を 落と さな いよ うに と祈 って する
︒子 供が 倒れ なけ れば 丈夫 にな ると いっ た﹇ 熊袋
﹈︒
・初 誕生 には 親類 を招 いて
︑酒 盛り をす る︒ この 時招 かれ た人 は子 供に 履物 を持 って 来た
︒そ の他 に米 一升
︑酒 一本
︑現 金二
〇〜 三〇 円を 持っ てき た︒ 実家 の親 も呼 ぶが
︑誕 生着 物を 持っ てき た︒ 二人 目の 子供 以降 は嫁 の 実家 の親 を招 く程 度︒ 赤子 を箕 につ かま らせ て立 たせ
︑男 子に は﹁ 木伐 れ﹂
︑女 子に は﹁ 機織 れ﹂ とい って 尻 に餅 をぶ っつ ける まね をす る︒ この 餅は 親類 みん なで 後で 食べ る﹇ 文納
﹈︒
・初 誕生 はタ イジ ョン チと いい
︑嫁 の実 家の 親︑ 親類
︑産 婆を 招い て祝 う︒ 箕を 立て て︑ 赤子 を︑ それ にと って つか まら せる
︒ま たは 箕の 中に 立た せる とも いう
︒桝 の中 に紙 を敷 き︑ まる めた 餅を 三つ 入れ
︑床 の間 に供 え る︒ その 桝を 下げ て︑ 赤子 の頭 に手 拭い をの せた 上に 置く
︒そ の桝 でま めで 丈夫 にな るよ うに とい って 赤子 の 頭を なで
︑桝 の中 から 餅を 出し て紙 に包 んで 赤子 の尻 をな でる
︒手 拭に 餅を 包ん で赤 子の 尻に ぶっ つけ ると も いう
︒こ れに 使う 桝は 一升 桝と も五 合桝 とも いう
︒そ のあ とで この 餅は 細か く切 って
︑み んな で食 べる
︒ま た 男子 はそ ろば んで
︑女 子は 物差 しで 赤子 の親 が丈 夫で 利口 な人 にな るよ うに と尻 を叩 くと もい う︒ この 日は 神 棚に あか しを あげ る﹇ 人面
﹈︒
・餅 を搗 いて 親類 に配 った り︑ 親類 を呼 んで 御馳 走を 食べ ても らう
︒煮 物料 理な どを 作る
︒二 年目 から は簡 単に 済ま す﹇ 梅野 俣﹈
︒
・こ の日 には 近い 親類 を招 き︑ 箕に 赤子 を立 たせ てお いて
︑赤 子の 尻に 餅を ぶつ ける
﹇葎 谷﹈
︒
・こ の日 はフ クデ とい って
︑五 合ぐ らい の餅 を二 つ作 り︑ 塩小 豆を つけ る︒ 赤子 を箕 につ かま らせ て立 たせ
︑フ クデ をト リア ゲバ アサ ンが
﹁丈 夫に なる よう に﹂ とい って 赤子 にぶ っつ けた
︒泣 くと 良い
︑泣 かな いと だ
@
ろ うか とい う︒ その 後︑ みん なで 餅を 分け て食 べた﹇入 塩川
﹈︒
・初 誕生 をダ イジ ョウ ニチ とも いい
︑仲 人︑ 産婆
︑孫 バァ サン
︵嫁 の実 家の 母親
︶︑ 近い 親類 のマ キを 招い て 祝 う︒ その 席で
︑桝 に半 紙を 敷い て︑ あん 入り の餅 を入 れて それ に孫 バァ サン が︑ 良い 事を 聞く よう に︑ 悪い こ 三
とは 聞か ぬよ うに
︑八 十八 のお 祝い する よう に生 きま すよ うに とい って
︑子 供を 拝ま せる
︒そ して 箕を 立て て︑ 赤子 をそ れに つか まら せて 立た せ︑ 餅を 半紙 で包 んで 孫バ ァー サン が赤 子の 尻を ぶつ
︒ま た︑ 産婆 と嫁 の実 家 の両 親が いる 部屋 に赤 子を 立た せ︑ 赤子 の両 親が 団子 を桝 に入 れる
︒い いこ とを 聞く よう に︑ 悪い こと を聞 か んよ うに と唱 えな がら
︑そ の団 子を 赤子 にぶ っつ ける
︒丈 夫に 育つ 子は じっ とし てい るが
︑弱 く育 つ子 は倒 れ たり
︑よ ろけ たり する とも いう
︒こ の日 には 実家 の両 親が 赤子 のタ イジ ョウ 着物 を持 って 来る が︑ それ を着 せ て神 様に お詣 りす る﹇ 本所
﹈⑦
︒ 8︑ 新発 田市 上赤 谷・ 初誕 生日 に立 つ子 に投 げる 餅を オッ タオ シモ チ︑ 歩く 子に はワ タリ モチ
︑立 てな い子 には オ ッタ テモ チと いっ た⑧
︒ 9︑ 中蒲 原郡 村松 町高 石・ 生ま れて から 一年 目を 誕生 とい う︒ 誕生 には 餅を つき
︑子 供を 箕の 中に 入 れて 立た せ︑ 会津 に逃 げな いよ うに と︑ 尻に 餅を ぶつ けて ころ ばせ る︒ 会津 に逃 げる とは 家出 をす るの 意味 であ る⑨
︒
︑
10
東蒲 原郡 津川 町津 川・ 生後 一か 年目 の誕 生日 に誕 生祝 いを する︒産 婆と 里方 の両 親・ しゅ うと
・し ゅう とめ を 招待 し︑ 尾頭 つき で︑ 餅を つい て祝 う︒ 誕生 前に 歩く 子が ある と餅 をつ き︑ 一升 餅を 負わ せ てこ ろ ばし て祝 う︒ これ を餅 コロ バシ とい う︒ 鬼子 だか らこ うす ると いう
︒⑩
11
︑ 東蒲 原郡 上川 村室 谷・ 初誕 生日 まで に歩 けな い赤 子に はオ ッタ テ餅 とい って︑径 二セ ンチ ほど の小 さな 餅を ぶ っつ け⑪
︵略
︶
︑
12
西蒲 原郡 巻町・初 誕生 には タイ ジョ ウダ ンゴ をつ くり
︑そ の子 にぶ っつ ける
︒団 子を 嫁の 実家
︑ 産婆
︑親 類︑ 近所 へ配 った
︒今 は饅 頭を 買っ て来 て配 る︒ 盆と 正月 には 嫁の 家か ら着 物な どく るが
︑初 節供 には 何も 贈答 はな かっ た︑ 升潟 では
︑タ イジ ョウ に甘 い団 子を 食わ せる と︑ いく ぢな しに なる とい って 塩小 豆の 団子 をつ くる
︒⑫
︑
13
南蒲 原郡 下田 村大おお谷地
や ち
・誕 生日 には 力餅 をつ く︒ 箕を 立て
︑生 児を これ につ かま らせ て立 たせ
︑﹁ 達者 にな れ﹂ とい って お尻 を力 餅で 打つ
︒な お餅 は打 った 人が もら う⑬
︒
14
︑ 北蒲 原郡 福島 潟・ タイ ジョ ウ祝 い・ 生ま れて から 一年 目の 誕生 祝の こと であ る︒ 餅を つい て︑ お産 見舞 をも ら四