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無干渉法による疲労き裂先端の変形挙動の観察

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Academic year: 2021

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(1)

無干渉法による疲労き裂先端の変形挙動の観察

藤 原 敏*

Observation of Deformation at Fatigue Crack Tip by Optical lnterference Method

Satoshi FUJIWARA

 The plastic deformation zone size near the propagating fatigue crack for SM41 steel were observed by optical in−

terference method. The effect of plastic zone size on crack propagation rate due to a single tensile over1oad were investigated.

 Main resttlts obtained are as follows;

 (1> The plastic deformation zone size increase with a growth of fatigue crack.

 (2> The relation between the plastic deformation zone size (W.) and the ratio of A K/o, for SM41, appeared as   W.=O,18 (A K/ a .)2.

 (3) Observed plastic deformation zone size (Pi) due to a single tensile overload agreed comparatively well with   the affected zone size ( P 2).

1.ま え が き

 近年,破壊事故防止の観点から鋼構造物により高い信頼 性が要求されるようになってきた。このためには耐破壊強 度設計時に,き裂の挙動を評価することが不可欠となって いる。

 疲労き裂が進展する際,そのき裂先端に塑性変形を生じ ていることは実験的に多くの方法により知られているとこ ろであり,その事実をもとに理論的考察が行われているω。

しかし,これらはたとえばき裂先端の墜性変形挙動を光学 顕微鏡によるすべり線の観察②や,X線により微視的構造 面の解析を目的としたものであった(3)。これに対し,荷重

と部材寸法とに代表される巨視的力学条件とき裂先端の塑 性挙動ならびに疲労き裂進展挙動との関連などを議論した ものとしては,光干渉法を用いた疲労き裂近傍のひずみ分 布の測定4},ならびに塑性域寸法に関するもの{5),さらに はF。一3%Si合金の疲労き裂近傍に形成される塑性域の 腐食法による観察6)などがあるが,これらはいずれも単一

荷重振幅試験によるものである。

 しかし,実働構造物を考えた場合,その荷重履歴は非常 に複雑である。疲労き裂の進展挙動が荷重変動により大き く影響されることはよく知られており,なかでも単一過大 荷重負荷によるき裂の遅延挙動には多くの研究がみられ る(7)。詳細な機構は別として,遅延現象が引張りの過大荷 重により形成された塑性域内をき裂が進展していくことに より起ることから,塑性域寸法が大きくなるほどそれは強 く影響されるといっても過言ではない。

 そこで,本研究では,破壊力学パラメータの一つである 塑性域方法に注目し,進展する疲労き裂近傍の塑性領域の 観察を,従来から表面アラサ計として用いられているオプ チカルフラットによる光干渉法にて行った。まず,単一荷 重振幅試験時のき裂近傍の塑性域方法,形状について検討 し,その後,単一過大荷重時の塑性域方法を測定,その解 析から疲労き裂の進展挙動の検討を行なった。

*機械工学科

2.実 験 方 法 2.1供試材料ならびに試験片形状

供試材料は板厚22mmの溶接構造用軟鋼(SM41)であり,

(2)

Table. 1 Chemical compositions and mechanical properties of material used.

pathmcalC ostion(%)

C Si Mn P S

0.15 0.22 0.53 0,O18 0,013

pmth lP te

  σy ikgf/㎜2)

 σu

ikgf/mm2)

El*

i%)

30.0 45.6 29.0

 2、 2疲労き裂進展試験法

 試験機は容量10tonfの電気・油圧サーボ式疲労試験機 であり,荷重比R=0.1,繰返し周波数10Hz,波形として は正弦波を用いた。荷重範囲としては,き上長さa=14mm

(機械加工による人工切欠き長さ)における応力拡大係数

.数範囲△Kが50kgf・mm 3/2となるように設定した。すな わち,本実験はき裂進展速度da/dnが1×10−5mm/cycle 以上の比較的da/dnの速い領域を対象としたものであり,

疲労による予き裂を約1〜1。5mm導入した後に実験を行っ た。また,き裂長さの測定は倍率20倍の移動式読取り顕微 鏡を用いた。

 き裂進展速度da/dnは数値的に求め,結果は次式(8)で表 わされる応力拡大係数範囲△Kを用いて整理した。

*G. L, ==200mm

・K一△P12+(÷)ll・・886+・・64(&)一13.32(畜)2

+ 14.72(!W)3−s.6(ft)41 S II 一(一iiV)1 3i2

O.W

      2一φ13

^一

黶@ 9

14

Br12.5

2.5 51.0

63.5

mpti」

Fig. 1 Shape and dimensions of test specimen.

 ここで,△Pは荷重範囲,aとWは荷重軸の中心からの き半長さと試験片町であり,Bは板厚である.。

2.3光干渉法によるき裂先端の塑性変形領域の観察  進展する疲労き裂近傍の塑性領域の直接観察法として,.

オプチカルフラットガラスによる光干渉法を用いた。

 いま,Fig.2(a)に示すようなき門先端部に一辺の長さe の小立方体を想定し,x方向に引張られている状熊を考え る。ここで,x方向のひずみをεx,ポアソン比をvとす ると(b)図のように変化する。すなわち,この部分の板厚(Z 方向)はε、の大きさに比例して収縮する。き裂先端部の 板厚分布を測定すれば,その部分のx方向のひずみ分布が 求まる。この板厚変化は各部の応力に依存した板表面の凹 凸分布として現われるので,光干渉法にてこれらの凹凸分 布を測定すればよいことになる。なお,このような応力集 中部でFig,2の関係が成り.立つのは,板厚方向の拘束が 無視できるような板の表層部(平面応力状態部)だけであ るから,一般には,このような板厚変化は定性的な応力分 布を表わしていることになる。

その化学組成ならびに機械的性質はTable.1に示す通り

である。

 試験片はコンパクトテンション形でL−T方向から採取 し,ASTM規格E−647−81に従って製作した。その形 状寸法をFig,1に示す。なお,試験片表面は後述するが,

光干渉法により疲労き裂先端での塑性変形挙動を調べるた めにパフ研磨を行ってある。

P

  y

@    [       X

(a)

y♂ゆ P:

 .÷一 ICI+ft

︵むム

z

己一

b

P  x

Fig. 2 Principle of observation.

(3)

 以上のことから,光干渉法はバス研磨仕上げをした試験 片表面における塑性領域の大きさ,形状を.定量的にかつ簡 単に測定できるものである。

 光干渉法の光学系をFig,3に示す。すなわち,試験片 のき裂先端付近の表面にオプチカルフラットガラスを置 き,ナトリウム光をあてて写真を撮るものである。本実験 では単色光ナトリウムランプを光源として用いたので,各 干渉縞の間隔は0.295μmの高さ変化を表わす。

Crack

Cyctic

ptastic.

zone

Monotoni}

  plastic    zone oo

Camera

Ha{f mirror

Na tamp

Fig. 5 Schematic diagram of plastic zone     ahead of a crack.

9Lttical flat g{ass Test piece

    Fig. 3 Optical interference method.

       3.実験結果および検討

 3.1単一荷重振幅試験結果

 まず,SM41鋼の基本的な疲労き裂進展特性を知る目的 から,単一荷重振幅による疲労き裂進展試験を実施した。

 破壊力学パラメータである応力拡大係数範囲△Kとき 裂進展速度da/dnとの関係をFig.4に示す。一般にda/

Const. amp. test

 SM41

 R=O.1

dnと△Kとの問には,

則〔9}があり,

   0   1      1

︵Φ一り﹀り\⊆﹂⊆﹂︶ZミσU

1d5

/./

 どノ

50 .K (289imm3i2)

Fig. 4 Relation between da/dn and A K.

da/dn=C ・ (AK)m

いわゆる次式で.表わされるParis

 Parisの提案したm=4,4四則が実用上疲労寿命推定 によく用いられている。本材料におけるm値は3.8であっ

た。

 3.2光干渉法による塑性域の測定

 疲労き裂先端部にはFig.5に示すような繰返し負荷に よる塑性域が形成される。き裂先端部は除荷時では通常圧 縮塑性域にあるため

tu =C  (A K/ 2 a.)2

にしたがうような繰返し塑性域が形成される。ここで,△K は応力拡大係数範囲,σyは降伏応力,Cは平面応力状態 でDugdale Model⑩を用いるとπ/8,また, Irwin(11)によ ると1/2πとなる。また,き裂先端部に残留応力場のない 場合,すなわち,繰返し塑性変形を受けていない場合は

P := C (AKI P.)2

にしたがうような静的塑性域を形成する。

 疲労においてはωならびにρで表わされる両塑性域がお 互いに干渉しあってき裂進展の度合を支配することにな

る。したがって、これらの塑性域の挙動を直:接観察するこ とは重要な問題である。疲労被害を著しく受ける繰返し塑 性域ωは光干渉法では測定が不可能なため,ここでは静的 塑性域ρの観察を行った。

(4)

㍊臨f,m議

Photo. 1 Plastic zone behaviour near the      propagating crack.

3.0

  1.0

君 O.7

E

q o,4

O.2

0コ

      v        o        /

 SM41 O

         ,6

       ,0  /       /o /

      /

総藻

       /

 Photo.1は一定荷重振幅試験により得られた干渉縞模 様の一例である。き裂近傍の干渉縞密度が高くなっている 領域は塑性変形領域で,その外側は塑性変形が起っていな い弾性領域である。写真から,き裂が長くなるにしたがい 塑性変形領域が大きくなることがわかる。

 同一試験条件で異なるき国隣さでの干渉縞写真から,き 裂先端での荷重方向(Wy)ならびにき裂進展方向(W。)

の塑性域寸法を測定し,W、とWyとの関係を示したもの がFig.6である。ここで, w.は前出のρに相当するもの である。図より両者の間には良好な対応関係があり

1 2 345

  AK/Cry ( mmE)

Fig. 7 Relation between Wx and A K/ay.

W,=1・09Wx

が成りたつ。これは日置の結果(5)とよく一致している。

 Fig.7はき裂先端の塑性域長さをPとし△K/σyとの関 係を示したものである。SM41鋼の結果は

3,0

   to

︵∈∈︶﹀≧

O.5

     Ptastic zone size Crack tip

>T .o!

      /o

O

o/  ○/︒

  

@/

SM41

O.5 1.O   Wx (mm)

3,0

P=O,18(AK/a,)2

となり,Hahnら(6)のF。一3%Si合金に対するρ ・=O.03

(△K/σy)2よりも塑性域の大きさはかなり大きいが,そ の増加傾向は一致していることがわかる。

 3.3単一過大荷重後の疲労き裂進展特性と塑性域寸法  過大荷重はき裂進展速度da/dnを遅らせる,いわゆる 遅延現象(12)を起すことはよく知られている。実験的には 多くの場合,き裂長さの測定は試験片表面で行われており,

遅延現象は過大荷重負荷直後ではなく,ある程度き裂が進 展した後にda/dnが最小となる遅れ遅延現象(13)を呈す

る。

 遅延現象に影響する因子としては多くのものが考えら れ,これまで個々の影響について研究が行われている。本 実験では,次式で表わされる過大荷重比r=2について実

験した。

Fig. 6 Relation between Wx and Wy. r= PoL 一 Pmtn/ Pmax一 Pmtn

(5)

03

1

        鴫         10

︵Φ石﹀り\EE︶ZU電U

ld5

SM41

 0 Const. amp, test  e Over loading test

環瞳ノ

    ②鍵、

繰言睦魂・・遭臣

14 20 30

  Crack [ength (mm)

Fig. 8 Relation between crack propagation rate     and crack length by a single overload.

 ここで,PQLは過大荷重値, Pmax, Pmi、はそれぞれ一 定荷重振幅試験の最大,最小荷重値である。

 一定荷重振幅試験の途中に,き裂長さa=18.4,21.2mm の時に単一過大荷重を負荷し,その際に形成される塑性域 寸法ρとda/dnとの関係について調べた。過大荷重負荷 時の応力拡大係数の最大値Km。、はそれぞれ130,158 kgf/

mm3/2で, Irwinの式により計算から求めた塑性域寸法Pは それぞれ3.0,4.4mmである。

 Fig.8にda/dnとき裂長さとの関係を示す。図中①,

②で示した位置は過大荷重を負荷した時点である。過大荷 重負荷後da/dnは徐々に減少してゆき,ある距離き裂が 進展した後にda/dnが最:小となり遅れ遅延現象が現われ た。その後は徐々にda/dnは増加し,過大荷重の影響を 受けていない領域では一定荷重振幅試験によるda/dnと ほぼ同じ値をとるようになることがわかる。①と②との違 いは,当然のことながら②の方がKm。。が大であり,それ にともないρも大きくなることから過大荷重による影響領 域が大きくなっていることがわかる。

 Photo.2に過大荷重負荷前(a),負荷直後(b)ならびにda/

dnが一定荷重振幅試験による値とほぼ同じになった時点

(c)の干渉縞模様を示す。過大荷重を負荷するとき裂先端に 大きな塑性域を形成しているのがよくわかる。(b)には(a)で

(a)

鷲塒/m議

下鞍

(b) 長i牒端翻謙

(C)

Photo. 2

簾輸脇議

Plastic zone behaviour near the propagating ciack due to a single overload.

みられる塑性域の干渉縞と異なった縞模様があるが,これ はりューダース帯で試験片表面から内部に向って45。方向 に生じたすべり線の集合である。リューダース帯に囲まれ たき裂前方の領域で板厚方向にくびれを生じて,いわゆる ネッキングゾーンが形成されこの部分が干渉縞の大きな変

(6)

N◎細6灘…ii……

.戚

Photo.3 Macroscopic appearance of fractured      surface.

化として観察される。この部分が観察される塑性域で写真 中にPlとして記してある。この場合のPiは2.6㎜であり Irwinの式により計算で求めたρ=3.Ommと若干小さいも ののよい一致を示しているといえる。(c)はda/dnが一定 荷重振幅試験によるその値とほぼ同じ値になった時の写真 である。過大荷重により形成された塑性域の前方に(a)と同 様の縞模様の塑性域が形成されているのがよくわかる。

 Fig.8中に記してあるρは計算により求められた塑性域 方法であり,ρ1は干渉縞写真から得られた塑性域方法で ある。またρ2は過大荷重の影響を受けてda/dnが変化し ている領域である。図より,ρ,Pl,ρ2はそれぞれ比較 的よい一致を示しており,光干渉法による干渉縞から塑性 域方法の計測が有効であることがわかった。

 Photo.3は試験後のマクロ破面写真である。過大荷重 負荷により破面上に明らかな違いが生じていることがわか る。このことは今後ミクロ破面観察を行い,試験片表面と 内部でのda/dnを調べることにより遅延現象を更に詳細 に解明できるものと思われる。この点については今後の課 題としたい。

4.ま と  め

 溶接構造軟鋼(SM41)を用い,一定荷重振幅試験なら びに過大荷重負荷試験を行い,疲労き裂近傍に生ずる塑性 変形領域を光干渉法により観察した。その結果以下のよう

な結論を得た。

 (1)簡単な装置である光干渉法を用いることにより,塑  性変形領域はよく観察でき,降伏応力以上に負荷された  時に生ずるリューダース帯ともよく一致する。

 (2)過大荷重負荷によりき裂進展速度da/dnに影響が  あらわれる領域は,光干渉法により観察される塑性域方  法とよく一致する。

 (3)過大荷重負荷により,破面上に明らかな違いが生じ  る。今後ミクロ破面観察を行なうことにより,遅延現象  の解明が期待できるものと思われる。

引 用 文 献

(1)たとえば J.Holden;PhiL Mag.,6(1961), p.p,547,

(2)平他2名;材料,19(1970)7p.p.1114.

(3)水倉,幸島;金属学会誌,34(1970),p.p.888.

(4)田村,他2名;溶接学会誌,48−9(1979), p.p.73L

(5)日置;学位請求論文(大阪大学)1973.

(6) G. T. Hahn and others; Metall. Trans., 3−5 (1972),

  p.p. 1189,

(7)たとえば城野 他3名;材料,32−363(1983),p.p.

  1383.

(8) J. E., Srawley; lnt. J. Frac. 12 (1976), p,p, 475.

(9) P. C., Paris and others; J. Basic Engg., 85 (1963),

  p,p. 528.

aO) D. S., Dugdale; J. Mech. Phys. 8 (1960), p,p, 100.

(11) G. R., lrwin; J. Basic Engg. Trans. ASME, 82   (1960), p,p. 417.

(ll E. F. J., von Euw; ASTM, STP. 513 (1972), p. p.

  230.

(13) S. Matsuoka, and others; Engg. Frac. Mech., 8   (1976), p.p. 507.

参照

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