.水中溶接とそれにともなう溶接割れに関する研究
向 井 喜 彦* 藤 原 敏** 喜 野 洲***
(昭和56年4月22日受理)
Study on Underwater Welding and Cracking at lts Welds
Yoshihiko MuKAi* Satoshi FunwARA** Yutaka KITA***
(Received April 22. 1981)
T[he physical propert ies of underwater weldsments are adversely affected by the quenching or cooling action gf the surrounding water. And many has been published about the properties of the underwater weldments. But study on the weld cold cracking by underwater is very little.
Generally, the type of cracking occures in the heat affected zone.
For the purpose of es ;imating susceptibility of stee!s to weld cold cracking in underwater wet welding implant weld cold craCking test method were used. The test welding was carried out by us ing gravity welding method at the depth of 20 cm in city water.
IEhe results are summarized as follows;
1) Lower critical stress for cold cracking at atmosphere has good correlation with Cee vaiue of steels and dif−
fus ible hydrogen content.
2) Lower critical stress for cold cracking at underwater is lower than its value at atmosphere. And fracture time is very short.
3) Lower critical stress for cold cracking at underwater has good correlation with maxium hardness at heat af−
fected zone.
1.緒 言
近年,海洋開発の必要性が説かれるにつれ,海洋構造物 の建造ならびに補修技術の研究が盛んに進められている。
とくに,海中での建造技術とりわけ材科の切断と溶接加工 が重要な問題となっており.各所で水中溶接・切断の研究 がなされている1〜3)。
一般に,水中溶接は乾式法と湿式法に大別される。前者 は溶接部を特殊な容器で囲みその中で溶接を行なうもので ある。この場合,溶接部は水雰囲気にさらされていないの で水の影響を受けない。しかし,この方法には特殊な容器 が必要なため経済性に問題がある。一方,湿式法は水中で 直接溶接を行なうもので,この場合,熱源および溶接部は *大阪大学工学部
**金属工学科
***大阪大学工学部(現,東洋エンジニアリング株)
水に直接さらされているため,急冷あるいは水素の侵入な ど水による影響は避けられない。しかし,この方法は被溶 接部の形状に関係なく施工が可能であり,今後この方法の 採用が多くなるものと考えられる。
湿式法については,溶接条件さえ適当に選定すれば,低 水素系以外の溶接棒でブローホーール,アンダーカットなど の欠陥のない良好なビードが得られるとされている4)。ま た,継手部の機械的性質は大気中溶接にくらべ溶接部の硬 化および衝撃値の若干の減少はあるものの,突合わせ継手 の引張強さは軟鋼の場合,母材の強さ.に支配されると報告 されている5・6)。ところが,溶接割れについては急冷によ る溶接部の硬化と溶接部に侵入する水素のためピー.ド下割 れが生じ,SM50鋼などの低合金鋼ではその現象が著し い6)と報告されているだけで系統的な既究はされていな
い。
溶接割れに影響する因子として,1)硬化組織,2)水素,
3)溶接部に働く引張応力が考えられている。この溶接割れ 現象を定量的に検討できる試験法としてGranjon7)が開発
したインプラント試験法があり,国際溶接学会をはじめ国 内でも溶接協会IL委員会で溶接割れ評価の検討が行なわ れている。
そてで本研究では,湿式法のうち簡便でかつ使用頻度が 高いと考えなれる水中被覆アーク溶接法を採用し,溶接構 造用軟鋼(SM 41),50kg/mm2級高張力鋼(SM 50)なら びに60kg/mm2級高張力鋼(HT 60)を水中にて溶接し,
その際に生じる溶接割れをインプラント試験法にて評価す ることを目的として,.溶接割れにおよぼす各因子の影響に ついて検討した。
2.実 験 方 法 2−1.供試材料
本実験に用いた鋼材の化学成分ならびに機械的性質を Table 1に示す。さらに,使用した溶接棒の化学成分なら
びに機械的性質をTable 2に示す。
Table 1 Chemical composition and mechanical properties of steels used
Steel
SM41 SM50 HT60
Chemical composition (%)
clsilMnlp s Ni f cr 1 cu 1 v 1 Ai
O. 18
O. 15
O.15
O. 03
O. 33
O. 46 1. 00
1. 33
1.23
o. el O.03 O.016] O.005 O.022 O.014
1
o.es O. 18
O. 23 O.07
O.C5
o. 1o
Ceq
(%)
O.35
O. 39
O. 43
Yield po int
(kg/mm2)
26.1
35. 0
. 52. 6
Tensile stre−
ngth(kg/m皿2)
45.8
53. 2
66. 4
Elongation
(%)
41.6 40.0 25.4
Table 2 Chemical composition and mechanical properties of electrodes used
Electrode Chemical composition (%)
ciSi血 P
s− P Ni 1 cr i Mo f
v Al
y. s.
kg/mm2
T. S.
kg/mm2
Elongation (%)
D 430i io. io io. 07 io. 4i lo. oisl o. oi21
D 5816 O.07 O.59 O. 99
61−ltiiili7i−61−Et660gl51.一E166
1 4i.o 1 46.o 1 32.o
o. os 1 o. 21
O.Ol O.007 56. 0 65.0 29. 0
水中溶接に低水素系棒を使用するとアークは非常に不安 定となり,良好なビードを得ることは困難になるとされて いる5)。そこで本実験では,アークの安定性を考慮して,
とくに水中溶接には全ての鋼材に対してイルミナイト系棒 D4301を使用した。ただし,溶接割れにおよぼす水素,鋼 材の組成など各因子の影響を検討するために大気中におい ても割れ試験を実施したが,この場合は低水素六戸D5816
を用.いた。
なお,使用した溶接棒はいずれも径4mm,長さ400mm
のものである。
2−2.溶接装置および溶接条件
溶接装置は電流値を制御装置により設定すればアーク長 を一定に保ち自動的に溶接棒を送給し溶接を行なう被覆ア ーク溶接工自動溶接用装置と,水中でのアーク発生および 維持の容易さの点で選んだ整流式直流溶接機とから成立っ ている。溶接機の容量は35KVAであり,極性としては大気 中の場合逆極性(R.P.),水中の場合正極性(S.P.)とした。
Table 3に本実験の標準溶接条件を示す。
Table 3 Welding condition for test welding
Environment current (Amp.) (Arc) Voltage (V) Welding Speed
(cm/min) Polarity OPen air
Under water
180 22
175 23
15 15
R.P.
s.p.
2−3.インプラント試験 2−3−1.試験法
試験法の概略をFig.1に示す。図に示すごとく,試験片 をBqcking plateと呼ばれる母材にそう幽し,母材表面と 試験片端面をそろえて試験片上を溶接ビ憎ドが通過するよ
うに溶接し,ボンド近傍の温度が150〜100℃になった時に 一定負荷をかけ,試験片が破断するまでの時間を求めるも のである。そして,溶接条件一定のもとで任意の負荷応力
(切欠き部の平均応力)に対して破断時間を求め,割れを 起こさない応力(割れ発生限界応力)でもって割れ感受性
→
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ー一一一一 @斗 嫡陶
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Fig.1 Schematic diagram of implant test method
を評価するものである。
この試験は溶接熱影響部の低温割れ,とくにルート部や トウ部などの応力集中部に発生する割れを評価するもの で,試験片にはあらかじめ切欠きが施されている。切欠き 位置は溶接熱影響部に切欠底がくるように予備実験により 決定した。
2−3−2.試験装置
一般にインプラント試験装置は,油圧系により試験中に 負荷を与えているが,本実験では水中溶接の場合試験装置 を水中設置する必要がある。このためFig.2に示すような Double−Ca且tile▽er方式により負荷する試験装置を作製し使 用した。
牌亨 Bαckin !q㎏ i㎜ 戦鞭
ゑ↑
曾
Fig.2 Schematic diagram of apparatus for implant test
2・3−3.試験片および母材の形状・寸法 Fig,3に試験片および母材の形状・寸法を示す。
試験片は板厚の中心部から圧延方向に採取した。また,
切欠き位置(L)は各溶接条件について予備実験を行ない決 定したが,その値は大気中溶接の場合L=2・2mm,水中 の場合1.8mmであったQ
El!!iEiSt=ve一.T=.E.S
● TてL︳︳r6L︳ 一ト⊥
ト・ 剛
TllOヨーー⊥⊥爲
3.実験結果および考察
3−1.水中溶接部の基本的性質
水中で直接アークを発生し溶接する湿式法では,通常の 大気中での溶接あるいは乾式法に比して,溶接部の熱サイ クル,硬さ分布さらには溶接部に侵入する水素量などが異 なることが考えられる。そこで本節では,水中溶接部の基 本的性質を大気申でのそれと比較する。
1)溶接熱サイクル
板厚25mmの250×150mmの矩形板にビード溶接を行な い,その際の溶接熱サ・fクルを測定した。その結果をFig.
4に示す。図より水中での冷却速度が非常に速いことが認
Fig.3 Shape and dimension of implant specimen and backing plate
められる。また,800℃から500℃までの冷却時間を比較す ると,大気中の場合6.7秒であるのに対して水中の場合3.6 秒で.大気中の約Y2になる。さらに,最高到達温度から 1000Cまでの冷却時間を比較すると大気中で約150秒,水中 で約30秒と非常に大きな差異が認められた。
1300
:.
Y 800
・,=一・
g g
ト\︑
、
3.6 、
、
6.7 、、
Heat lnput 17kj/cm
一 in air 一一一 underwater
1000ts
10 20
Time (sec.)
Fig.4 1[hermal cycles
30
2)溶接部の組織ならびに硬さ分布
前述した冷却速度の違いが溶接部の組織ならびに硬さ分 布に影響することは十分考えられる。
各供試材科について,大気中ならびに水中溶接部粗粒域
の顕微鏡観察を行なった。その一例をPhoto 1に示す。写 真は焼入硬化性の比較的低いSM41鋼であるが,水中で溶 接することにより明らかなマルチンサイトが生じており,
溶接熟影響部の硬さが大気中のものに比較して高くなって いることが予想される。このことは他のSM50鋼, HT60 鋼においても同様である。
HAZ 〈i一)Sy−i, Weld meta1
4se
6§︸︾=
9D 2
︐
1so
SM 41
つ・17k」 cm Open air つ nde
O.1 mm I.:.一;:; Ll Photo 1 An example of microstructure at welded part
Fig.5に各供試材の溶接部の硬さ分布を示す。これらの 図から水中溶接部の硬さは大気中のそれよりいずれも非常 に高い。S MsoasおよびHT60鋼では硬さ分布におよぼす 冷却速度の影響を検討するために溶接紅熱を9.6KJ/cmに した場合の値をも比較のために示した。なお,S Msoasお よびHT60鋼の水中溶接による溶接金属部の硬さが大気中 の値より低いのは,水中溶接の際に低水素系溶接棒を使用 すると安定なアークが得られないことから,イルミナイト 系溶接棒を使用したためである。
3)拡散性水素量
湿式溶接法では,被溶接部が直接水にさらされるため,
溶接棒の乾燥条件に関係なく多量の水素が溶接部に侵入す ることが考えられる。
WM.淵←H《z
4co
210123456
0islα贈lm㎞己㎞而
. 350
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SM co
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H了60
017klremOpen dir
as ij 一
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W.M.一 HAZ
ISO 210123456
Dis匙α胤 奮㎜ 剛 伽而 Fig.5 Hardness distribution of welds a) SM41 b) SM50 c) HT60
Table 4 Diffusible hydrogen contents Welding condition
(17KJ/cm)
Open air RP.
Open air R.P.
Under water SP.
Electrode Baking condition Diffus ible hydrogen (cc/100g)
D 4301 D 5816
1oooc l hr 3sooc l hr D 4301 as received
18 5.2
39
そこで,補収液としてグリセリンの代わりに水銀を用 い,JIS急冷法により溶接部の拡散性水素量を測定した。
その結果をTable 4に示す。さらに水素放出曲線を縦軸に 適適器にて補収した量そのものの値をとり比較のために示
した図がF ig.6である。
Fig・6より水中溶接と大気中溶接との違いが水素放出曲 線に大きく影響することが認められる。すなわち,放置時 間が比較的短かいところでは,両曲線の間にはそれ程の差 異はないが,24時間放置で水中のものは大気中のそれに比 して約2倍となる。さらには,通常採用されている放置時
間である48時間で大気中のものはある一定値になるのに対 して水中溶接のものは若干ながらまだ放出する傾向が認め られた。
ゲ
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Weld metalP.8曇
SE 7 C き︐ 14 3 2
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1
日●Ctrode O4301 0 1n脚ut●r
190A,28V,150r蘭M剛鳳
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!ef e 一 eノ
fit 10 103
了lm●価n.}
Fig.6 Hydrogen evolution curves
1
HAZ
阻
Photo 2 Typical exaロ1pie of 1皿derbead cracking
4)溶接部の割れ
前述した硬さ分布あるいは水素量の関係より,水中溶接 部は割れに対して危険な状態にあることが推察できる。
HT60鋼を水カーテン式水中炭酸ガスアーク溶接した場 合,アンダービードクラックは認められないという報告が ある3)。本実験でも,同一HT60鋼を水中にてビード溶接 を行ない溶接熱影響部の硬さとアンダービードクラックの 有無を調べた。
励 姻
︵σΩ褐︸工︸N︽工一〇9二◎﹂O﹂︐属OΣ
50 3
HT eo Underwater
、、
黶D〜
●
10 讐5 20 25 Arc ertergy C kJlcm)
Fig.7 Relationship between max. hardness in HAZ and arc energy
Fig.7は溶接入熱を変えた場合の溶接熱影響部の最高硬 さを10点の平均値をとり示したものである。図より三熱が 低いほど硬さが高くなる傾向がうかがえるが大きな差はな
い。φ4mmの被覆アーク溶接棒による通常の溶接条件を 考えた場合,溶接入曽で熱影響部の硬さを低下させること は困難である。
Photo 2は入門が28KJ/cmの場合のアンダービードクラ ックの状況を示したものであるが,いずれの入熱の場合で も同様な割れが広範囲にわたって観察された。
これらのことより,湿式溶接法を採用する場合には,鋼 材の耐溶接割れに関する十分な知見を得る必要性がある。
3−2.インプラント試験法導入に対する検討
インプラント試験により,実際の溶接継手に発生するル ート割れやトウ割れなどの低温割れを評価するためには.
インプラント試験片上の現象,とくに溶接熱サイクルは実 際の継手に生ずるものを再現する必要がある。また,ノッ チ位置については,ノッチ全体が常に溶接熱影響部に入る 十分な再現性が得られなければならない。
大気中の溶接熱サイクルについては,飛板(Backi㎎
Plate)とインプラント試験片はほぼ同じ熱サイクルを受け ることがGranjon7)によって報告されている。
本実験においては,Fig.8に示すように母板(Backing plate)とインプラント試験片にφ2mmの穴をあけ,その 中にC−A熱電対をそう塾し,大気中および水中溶接の際の 溶接熱サイクルを測定した。
CrA Thermo」τδ百言崔le
ハ、
Fig.8 Schernatic diagram for measuring of weld thermal cycles
その結果をFig.9に示す。(a)は大気中の結果であるが,
Granjonの測定結果と同様に両者の熱サイクルはほぼ同じ である。一方(b)は聡慧の溶接熱サイクルの測定結果を示
したものである。割れに対する熱サイクルの影響として,
組織要因である800℃から500℃までの冷却時間,ならびに 拡散性水素の溶接金属からの放出と関係するといわれてい る8)100℃までの冷却時間が考えられる。三板とインプラ ント試験片の溶接熱サイクルを比較すると,500℃から300
1300
:︐
登8。。最
鉾。
一000 O
曾0 20 30 τime ⊂鋒⇔
(a)
これらのことより,水中溶接の低温割れ評価にインプラ ント試験法を適用することが可能であると確認できた。
3−3.割れ試験結果
Fig,10,11,12に得られた遅れ破壊曲線を示す。なお,
比較のため大気中の試験結果をも付記した。
θ0
T0
ヨ302010
︵凡ヒE︑口渥︾の●﹂脇η2す馳︽
1300 Underwqter Q3171dたm⊃
一B回cking plo量●
一一一 lmptant
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00 O
鮪脳 x x
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馴41Q冨川」 ㎝
■▲一Und㎝鳳にr
O 10 20 co
Time {sec)
(b)
Fig.9 Thermal cycles in backing plate and irnplant a) Open air b) Underwater
01 n mo nco
Fracture tlmt {min.}
Fig.10 Implant test result for SM41 60
T0
S0
R0
ィ10
璽E︑σ6㈲卵︒﹂冨ロ聖す︽
x
AN.AsOjoX
st−tse a=vkltcm
−o−Opan air 一ムーUnderwo電●f
。Cまでの間に若干の差があるが,上記の冷却時間に差異は 認められない。
Photo 3は前述した溶接条件により水中にて溶接を行な った場合のインプラント試験の横断面マクロ写真である。
この写真からも認められるように,ノッチ位置は常に熱影 響部であり,ノッチ位置の設定が妥当であることが認めら れる。
o
量 ⑩ 100 ね00 Fr鵬ヒ r●亀im● min.}
Fig.11 lmplant test result for SM50 60
璽50言
言・・豊
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10 z更
Hτ600冨17剛Gm
Photo 3 Section of implant specimen
0
1 10 辱00 旧00 Fracture tme Cmtn,)
Fig.12 lmplant test result for HT60
各図よりわかるように,各供試材とも水中溶接でも大気 中溶接の結果と同様に遅れ破壊現象を示し,割れ発生の限 界応力が存在することが明らかである。
大気中と水中の試験結果を比較すると水中溶接の割れ発 生限界応力は,大気中溶接のそれに比較して非常に低下し ている。さらに,割れ発生までの時間に関しては,水中の 場合非常に短時間で割れが発生することが認められる。こ の短時間側で破壊する傾向は,大気中で水素量を増加して インプラント試験を行なった際にみられる傾向と同様なも のである。
SM41鋼は他のSM5σ, HT60鋼より若干ではあるが割 れ発生までの時間が長くなり,限界応力も他の鋼材に比べ て高くなっている。なお,本実験ではSM41鋼は大気中に おいては遅れ破壊を生じなかった。
3−4.インプラント試験結果におよぼす諸因子の影響 3−4−1.水素の影.響
湿式溶接法では,溶接棒の種類,乾燥条件に関係なく多 量の水素が溶接部に侵入することは明らかであり,この溶 接法を採用する限りにおいて,水素量を制約することは現 状では不可能である。
溶接低温割れ発生に直接関与する水素は拡散性水素では
なく,硬化組織部に残留する非拡散性水素が問題となる が,本項では割れ発生に関係する水素として,相対的な量 として拡散性水素量を用い,従来からの手法と同様に割れ 感受性について検討した。
溶接部の水素レベルを変化させるため,溶接棒の吸湿条 件を変化させた。すなわち,1)350。C1時間乾燥したも の,2)50℃1時間乾燥したもの,3)溶接直前に30秒間 水に浸漬したもの,以上三種類を用い,SM50, HT60鋼
について大気中にてインプラント試験を実施した。
拡散性水素量の測定結果をTable 5に示す。なお,測定 法は3−1に述べた方法に従った。
Table 5 D iffusible hydrogen contents Arc ene rgy
(KJ/cm) Electrode Baking condition Diffusible hydrogen
(cc/100g)
17 17 17
D 5816 D 5816 D 5816
3soec l hr
as received (50eC 1 hr)
wet in the water for 30 sec..
5.2 12 30
Fig.13,14に拡散性水素量が異なる場合のインプラント 試験結果を示す。図より拡散性水素量の増加とともに割れ 発生限界応力が低下することが認められる。Fig.15は割れ 発生限界応力と拡散性水素量との関係を図示したものであ
る。
︵筆ξロξ霊●﹂詔匂・=仕︽ 60@50 40 30 20
0
SMSO
Q呂17k∬cm
N.
︑一一
㈹αゴ1009
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−e一 12 圏●一
or
0 to roo Frqcture time (min.)
rm
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貧Eε︑05頃︒︒﹂ぢ一σり三﹂り
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Xo.〉×XX
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Q=17kltdn HToo SMto
Open air O A Underwater e A
\\6
Fig.13 Effect of diffusible hydrogen content on implant test results for SM50
1 10 1co
Diffusibte hydrogen content Ccctloog)
Fig.15 Effect of diffus ible hydrogen content on critical stress
60 50 40 30雫Eδ5詔婁の ∩U O エ ロ
●心莫ぞ 110
HT60\こ\ ■●騨−Q晒52・一(H) ccnoeg?黶@12
10 100
Frocture time (min.)
1000
Fig.14 Effect of diffus ible hydrogen content on implant test results for HT60
すでに,Evansら9)によりIIW法により測定された拡散 魚水素量が約3ccから30cc/100g Feの間で割れ発生限界 応力と拡散性水素量の対数の間には直線関係が成立し,割 れ発生限界応力は拡散性水素量に比例して減少すると報告 されている。すなわち,割れ発生限界応力をσcr,拡散性 水素量を[H]とすると,
ocr=A−B log[H]
が成立すると述べている。
本実験においても,図より明らかなように同様な傾向が 認められた。しかし,水中溶接の場合,拡散性水素量が39 cc/100g Feと多少多いこともあるが,割れ発生限界応力と 拡散増水素量との関係は,図よりわかるように大気中の結 果の延長上からはずれて限界応力は低下している。この原 因として,溶接部の組織の相違による割れ感受性の違いと
ともに,.冷却過程中に外部に放出する水素量に影響する 100℃までの冷却時間が考えられる。すなわち,水中溶接 の際の100℃までの冷却時間は約30秒であるのに対して大 気中の場合のそれが約150秒であることから,この冷却時 間の違いが割れ発生限界応力に影響しているものと考えら れる。
3−4−2..硬化組織の影響
水素と.と、もに溶接熱影響部の組織も低温割れの要因であ ることはよく知られているが,こ.の組織の要因には800℃
から500。C.までの冷却時間が考えられる。
Fi9.16は800。Cから500℃までの冷却時間と溶接熱影響部 の最高硬さとの関係を示したものである。図よりいずれの 材料においても,冷却時間が短くなるに従って硬さが上昇 することが認められる。とくに,比較的硬化性が低いとさ れているSM41鋼においてその傾向が顕著である。
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3 4 5 6 7
Cooting time trom 800 to 500 C (sec)
Fig.16 Effect of cooling time from 8000C to 500eC on max. hardness in正IAZ
一般に,熱影響部のビッカース硬さが35り以上になると 割れが発生しやすくなるとされているが,図より,大気中 では割れが発生しなかったSM41鋼の硬さは3DO以下であ り,350.以上のSM50ならびにHT60鋼は割れが発生し
た。
「方,硬化性を表わすパラメーターとして,次式で表わ される炭素当量(Ceのが用いられている。
Cee ==C十Si/24十Mn/6十Ni/40−Cr/5十Mo/4十V/14 そこで,硬さと割れ感受性の関係を検討するために,
Fig.17に示すようにC、4と熱影響部最高硬さおよび割れ発 生限界応力の関係を求めた。なお,図中には冷却条件およ び拡散性水素量が本実験とほぼ同じである伊藤ら10)の結果 も付記してある。
図よりCeqの増加とともに硬さは上昇し,割れ発生限界 応力は低下している。この傾向は水中溶接の場合にも表わ れておU,大気中と水中の結果はほぼ平行に推移してい
る。. . . ,
03s . o.co a4s aso
Ceq C t.)
Fig.17 Relationship between critical stress, max.
hardness in HaZ and carbon equivalent (Ceq)
Fig,18に割れ発生限界応力と熱影響部の最高硬さの関係
ナ.ニニr当臼 tssn レ )n _L左葺H』 rレ「署「 1_差 唾rrl萌WA−n日田trV−F−t T.鴬一
「d[ノJ、y , 剛ホソ, ノ\Xk■tt−L, !J、「r (一t)〒了ロ「トレプtニコニ[Jl)cクtr1,LLノ」⊂月又
高硬さの間には良好な対応関係が成立し,それぞれ一本の 直線で整理できることがわかる。さらに,この両直線はほ ぼ平行であり,大気中の結果を低応力,高硬度側に平行移 動することにより,水中の結果をある程度推定できる.よう である。
璽50︷ xa
Y. 40$三 二30百 s; 20
10 o
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Q= 17 kJlcm eo Open air
A Underwaterゆ:b 星t6 et ol.)
NAN..一 e Xxxox NN
一 N 沁、
一N 一.A
N
300 3so 4co 4co・
Max hardness in HAZ (Hv200g)
Fig.18 Relationship between critical stress and max.
hardness in MZ
水中溶接時の低温割れについて,水素および硬化組織の 観点から検討したが,水素,組織とも大気中溶接の場合に 比してその影響が大となることが認められla。し孝がっ て,湿式水中溶接においては,低温割れに対する十分な注 意が必要であり,今後さらに研究が必要であろう。
4.結 言
本研究は,市販の被覆アーク溶接棒による湿式水中溶接 法を用いた際に生ずる低温割れを中心に検討したものであ る。すなわち,まず低温割れの観点から水中溶接の基本的 性質である溶接部に侵入する水素および硬化組織について 検討した。さらに,水中溶接の際に生ずる低温割れを検 討・評価するためにインプラント試験を実施した。
得られた結果を要約すると以下のようになる。
1)湿式溶接の場合,水の影響はさけられず,低温割れの 原因となる水素,熱影響部組織とも割れに対して非常に 危険な状態となる。
2)水中にてインプラント試験を実施したところ,割れ発 生限界応力は非常に低下し,割れ発生までの時間も非常 に短くなる。
3)大気中のインプラント試験では,割れ発生限界応力と 拡散性水素量の対数の間には直線関係が成立するが,水 中での試験結果をこの直線では評価できない。
4)水中溶接の割れ発生限界応力と熱影響部の最高硬さと の間には良好な対応関係がある。すなわち,一定溶接条 件のもとで,大気[i ,水中ともに割れ発生限界応力と熱 影響部最高硬さの間には直線関係が成立し,この両直線 はほぼ平行となる。したがって,大気中の結果を低応力
側に平行移動することにより,水中の結果をある程度推 定することができる。
参 考 文 献
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