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患者の不快状態に対する看護学生の気づきに影響する要因

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Academic year: 2021

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− 17 −

−看護学生の語りからの分析−

松島 正起  角濱 春美

患者の不快状態に対する看護学生の気づきに影響する要因

要旨

 本研究は、看護学生が患者の不快状態に気づく要因と気づかない要因について明らかにし、何ら かの行為場面であっても患者の療養生活上の不快に気づき、ケアできる看護師の育成方法への示唆 を得ることを目的とした。

 看護学生44名を対象に、模擬患者と模擬病室を用いた点滴確認場面で、患者の不快状態に気づく かどうか実験した。その後インタビューを行い、内容分析を用いて気づく要因と気づかない要因に ついて分析した。

 対象者44名のうち17名が患者の体位のずれや寝衣の乱れに気づいた。気づく要因は5カテゴ リー、気づかない要因は6カテゴリーが抽出された。

 気づく要因には、【違和感への気づき】【いつも患者の様子を見る】があり、これらには【類似患 者のケア経験】【実習でのしくじり経験】【リスクから守る意識】が関係すると考えられた。気づか ない要因は、【課題へのプレッシャー】から【点滴確認に集中】し【点滴確認の一部としての患者 観察】であること、【患者との関係を心配】して患者の【表情に引きずられる】ことが考えられた。

頭の上にある枕を見ても【違和感がない】と語る学生もあり、患者が不快な状態と判断できないこ とも考えられた。

 教育方法として、どのような場面であっても入室時と退室時に患者に注意を向けるよう指導する こと、患者と関わる場面に立ち会い患者の表情の原因を共に考えること、患者が不快な状態に気づ けていないことを振り返る機会を設けること、学生が不快と安楽を体験し、安楽が療養生活に与え る影響を考える機会を設けることが考えられた。

キーワード:看護学生、患者の不快、気づき、認知

I. はじめに

 患者の療養生活を支えることは、看護師が果 たすべき責務の1つである。看護師が患者の療 養生活を支えることができれば、患者自身の中 に回復して行こうとする意欲やそのための行 動がおき、患者の生命維持と回復につながる

(秋元 , 2009)。しかし、臨地実習中の看護学生

(以下、「学生」とする)は、しばしば患者の療 養生活上の不快に気づくことができない。視覚 により認知可能な不快には、不適切な体位や着 衣の乱れなどがある。これらの不快はどのよう な場面でも生じている可能性があり、患者の安

(2)

− 18 − 楽を脅かす。そのため何らかの行為場面であっ ても、学生が患者の不快に気づきケアできるよ うに指導方法を検討する必要がある。

 先行研究では、点滴操作中の患者周囲の危 険認知について熟練看護師と新人看護師の違 いが明らかにされていた (南 , 山口 , と谷口 , 2011)。熟練者は点滴操作中と静止画を観察し た時で、危険認知に差はないが、新人は点滴操 作中の危険認知が静止画観察時に比べ有意に少 なかった。新人は静止画を観察した時、7割が 外れたベッド柵を認知したが、点滴操作中に認 知したのは2割にとどまった。不快への認知に ついては、危険箇所と合わせて患者が不快な状 態を観察場面に設定した報告(林 , 丸岡 , と寺 井 , 2015)があった。しかし、不快への認知に ついては明らかにされておらず、これまで患者 の不快への看護師の認知について、明らかにし た研究は見当たらない。

 そこで、学生が点滴確認場面で患者の不快状 態を認知するかどうか実験を行い、学生が患者 の不快に気づく要因と気づかない要因を明らか にすることで、何らかの処置やケア場面でも患 者の療養生活上の不快に気づき、ケアできる看 護師の育成方法への示唆が得られる可能性があ る。

II.研究目的

 点滴確認場面において、学生が患者の不快状 態に気づく要因と気づかない要因について明ら かにし、患者の療養生活上の不快に気づき、ケ アできる看護師の育成方法への示唆を得る。

用語の定義

気づく:予期せぬ物事の存在や状態を認知する こと。

注意:処理する視覚情報を選択すること。

Ⅲ.研究方法

1.データ収集期間 

   2018年10月~ 2018年11月 2.研究場所

   A 大学演習室 3.対象者

   A 大学看護学部看護学科学生44名 (2年 生33名・3年生11名)

4.点滴確認場面の設定  1)模擬病室

   A 大学演習室にパーテーションを用い て、模擬病室を設定した。(写真1)

 2)模擬患者

  (1)模擬患者は対象者と面識のない70歳代 の男性とした。

  (2)不快状態

    患者の不快状態として、ベッドを45度 ヘッドアップし、体を足方向へ15㎝ずら し、寝衣の胸元をはだけさせ、シーツし わを作った (写真2) 。

写真1 模擬病室と模擬患者の設定

写真2 設定した患者の不快状態

(3)

− 19 −   (3)動作・視線

    模擬患者は、対象者が入室し退室する まで可能な限り動かず、静かに呼吸をし た。視線を自然に斜め上に向け、普通の 表情とした。対象者から声を掛けられた 時のみ、視線を対象者へ向けて返答し、

その後は視線をもとの位置へ戻した。

 3)点滴

   点滴台を患者の左側頭部付近に置き、点 滴ルートは左前腕へつなげた。刺入部は サーフロー針の針基のみを透明フィルムで 皮膚に貼った。左前腕は掛布団から出して 体側におき、刺入部が見えるようにした。

点滴の残量は50ml とし、指示内容通りの ペースで滴下させた。薬液は三方活栓を使 用して袋に流した。

5.データ収集方法

 1)患者の不快状態への気づきの有無と内容    点滴確認場面で、患者の不快状態として 設定した体位のズレや寝衣の乱れについて 気づいた内容を対象者にインタビューし た。はじめに「観察したことは何ですか」

と質問した。患者の不快状態について語ら なければ、「その他に気になったことはあ りませんか」と質問した。それでも患者の 不快状態について語らなければ、「些細な ことでもよいので患者さんのことで気に なったことはありませんか」と質問した。

 2)患者の不快状態に気づく要因と気づかな い要因

   患者の不快状態について語った者には

「なぜ気づくことができたのか」、語らな かった者には「なぜ気づくことができな かったのか」、理由について面接ガイドを もとにインタビューを行った。

6.データ収集手順  1)前日まで

   データ収集日の前の週に、対象者に点滴 確認の観察点について資料を用いて説明

し、学習を依頼した。

 2)実験当日・実験前

   データ収集と同じ模擬病室と模擬患者を 用いて、下見を兼ねて点滴確認の技術練習 を実施した。

 3)実験

  (1)課題の説明

    課題は以下の内容を印刷して、対象者 に見せながら読み上げて説明した。

    「受け持ち患者の田中さんは、500ml

×3本で24時間持続点滴をしています。

現在の時刻は9:30で、次の点滴交換は 10:00の予定です。注射指示箋と点滴ボ トルはナースステーションに準備してあ ります。田中さんの病室に立ち寄り、可 能な限り短い時間で点滴の確認を行って ください。入室から退室までの時間を測 定しています。観察した内容について、

後で質問しますので答えてください。実 習と同じように、患者さんに話しかけた り触れたりして大丈夫です。」

  (2)課題の実施

    対象者は、模擬病室に入室し点滴確認 を行い退室した。

 4)実験後

   退室後すぐに、観察した内容や気になっ たことについて質問した。その後、患者の 不快状態に気づいた時点、気づいた理由ま たは気づかなかった理由について質問し た。

7.データ分析方法

 1)患者の不快状態への気づきの有無と内容    実験後のインタビューで、観察した内容 や気になったこととして、患者の不快状態 について語った者を認知群、それらについ て語らなかった者を非認知群に分類した。

 2)患者の不快状態に気づく要因と気づかな い要因

   インタビューの逐語録を作成し、患者の

(4)

− 20 − 不快状態に気づく要因は「どうして気づ くことができたのか」、気づかない要因は

「どうして気づくことができなかったのか」

を研究のための問いとし、内容分析を用い て分析した。

Ⅳ.倫理的配慮

 青森県立保健大学の研究倫理委員会の承認

(承認番号1832)と、A 大学看護学部の組織管 理者の承諾を得たうえで実施した。対象者募集 の説明会をポスターにて告知し、興味のある学 生に参加してもらった。説明会では研究の趣旨 や方法について協力依頼チラシと協力依頼文を 配布して説明し、参加を希望する学生は研究者 に連絡するよう依頼した。希望者には、研究協 力は自由意志であり協力の可否や同意撤回が成 績評価等に一切関係しないことを再度依頼文を 用いて説明した。また、協力依頼の時点で研究 目的を詳細に説明すると研究が成立しないた め、実験後に改めて研究目的について説明し、

研究参加への同意を確認した。

V.結果

 対象者44名の平均年齢は19.88歳(SD 0.65)

で、入室から退室までの所要時間は平均74.16 秒(SD20. 31)であった。

1.患者の不快状態への気づき

  認知群は17名で、インタビューにて「患 者さんがずり落ちている」「寝衣が乱れてい る」などと語った。気づいた内容は、体位の みが11名、寝衣のみが5名、体位と寝衣の双 方が1名、シーツのしわに気づいた者はいな かった。学年別では、3年生は11名のうち5 名(45.5%)が気づき、2年生の33名中12名

(36.4%)より多い傾向があった。また、認 知群のうち、「体を上げますか」などと声を 掛けた者が5名、実際に寝衣の胸元を整えた ものが1名あった。

 患者の不快状態について語らなかった非認知

群は27名であった。非認知群は、点滴確認後 に患者の状態を見ると、全員が体位のずれに 気づいた。

2.気づく要因と気づかない要因

 (本文中の【 】はカテゴリー、[ ]はサブ カテゴリーを現す)

1)気づく要因

 認知群17名の語りは886記録単位に分割でき た。このうち「どうして気づくことができたの か」の答えとなる語り141記録単位を分析した。

気づく要因として、【違和感への気づき】【いつ も患者の様子を見る】【類似患者のケア経験】

【実習でのしくじり経験】【リスクから守る意 識】の5カテゴリーが抽出された (表1) 。  【違和感への気づき】は、[普通の位置と違う 違和感][表情への引っかかり]のサブカテゴ リーで構成された。【いつも患者の様子を見る】

は、[患者全体を見る][患者とベッドの周囲を 見る][最初に表情を見る][患者の状態にも気 づかないといけない][患者の気持ちを読み取 る]のサブカテゴリーで構成された。【類似患 者のケア経験】は、[動いたり訴えたりできな い患者の受け持ち][患者が安楽な姿勢に整え る][患者の身だしなみを整える][気持ちよく 過ごせるような環境整備]のサブカテゴリーで 構成された。【実習でのしくじり経験】は、[患 者を観察できなかった][患者の訴えを聞けな かった]のサブカテゴリーで構成された。【リ スクから守る意識】は、[点滴抜去や褥瘡のリ スクがある]のサブカテゴリーで構成された。

2)気づかない要因

 非認知群27名の語りは、1017記録単位に分割 できた。このうち「どうして気づくことができ なかったのか」の答えとなる語り322記録単位 を分析した。気づかない要因として、【点滴確 認に集中】【点滴確認の一部としての患者観察】

【課題へのプレッシャー】【違和感がない】【表 情に引きずられる】【患者との関係を心配】の 6カテゴリーが形成された (表2) 。

(5)

− 21 − 11 表1 気づく要因

カテゴリー サブカテゴリー 同一記録単位群

違和感への気づき 普通の位置と違う違和感 見た時に違和感があった 練習した時は普通の位置にいた

ヘッドアップして枕に頭をつけて寝ているだろう 普通だったらこの位置にいる

普通だったら目がまっすぐ合う 首が胸の方に近かった

表情への引っかかり 元気なさそう

表情が苦しそう 表情がにこやかではない あいさつした時も声が低い 目を合せてくれない 私を見にくそう

若い方ではないという印象 いつも患者の様子を見る 患者全体を見る 患者の全体を見よう

寝ている姿を確認しよう 患者全体を見回す 患者とベッドの周囲を見る ベッド周囲を見る

患者の周囲を見る 患者の状態や周りを見よう

最初に表情を見る 最初に表情を見る

相手の表情を見て話し方を変える 気分が良いかどうか気にする

患者の状態にも気づかないといけない 患者の状態も見て気づかないといけない 業務だけじゃなく患者の状態も見なきゃだめ 患者の気持ちを読み取る 顔色や身体から患者の気持ちを読み取る

目を見て話そうと意識している

カルテを読み患者が何を考えているか考えた 類似患者のケア経験 動いたり訴えたりできない患者の受け持ち 寝たきりの患者

ベッドからずり落ちている患者 ADLに介助が必要な患者 体位のズレを気にする患者 あまり喋れない患者 あまり笑顔がない患者 患者が安楽な姿勢に整える 楽な姿勢か気にして直す

姿勢が悪いのは患者にとってよくない 患者の身だしなみを整える 患者の身なりを整えなければならない

身だしなみを直す

気持ちよく過ごせるような環境整備 患者が気持ちよく過ごせるように環境整備が大切 実習でのしくじり経験 患者を観察できなかった 患者を観察できていなかった

焦ってバイタルや尿量ばかり見ていた 患者が嫌な時、表情に出ていたかも知れない 患者の訴えを聞けなかった 患者さんの訴えをしっかり聞けなかった

声のトーンに全然気付かなかった リスクから守る意識 点滴抜去や褥瘡のリスクがある 安楽じゃないと動いて点滴が抜ける

褥瘡につながる危険がある

11 表1 気づく要因

カテゴリー サブカテゴリー 同一記録単位群

違和感への気づき 普通の位置と違う違和感 見た時に違和感があった 練習した時は普通の位置にいた

ヘッドアップして枕に頭をつけて寝ているだろう 普通だったらこの位置にいる

普通だったら目がまっすぐ合う 首が胸の方に近かった

表情への引っかかり 元気なさそう

表情が苦しそう 表情がにこやかではない あいさつした時も声が低い 目を合せてくれない 私を見にくそう

若い方ではないという印象 いつも患者の様子を見る 患者全体を見る 患者の全体を見よう

寝ている姿を確認しよう 患者全体を見回す 患者とベッドの周囲を見る ベッド周囲を見る

患者の周囲を見る 患者の状態や周りを見よう

最初に表情を見る 最初に表情を見る

相手の表情を見て話し方を変える 気分が良いかどうか気にする

患者の状態にも気づかないといけない 患者の状態も見て気づかないといけない 業務だけじゃなく患者の状態も見なきゃだめ 患者の気持ちを読み取る 顔色や身体から患者の気持ちを読み取る

目を見て話そうと意識している

カルテを読み患者が何を考えているか考えた 類似患者のケア経験 動いたり訴えたりできない患者の受け持ち 寝たきりの患者

ベッドからずり落ちている患者 ADLに介助が必要な患者 体位のズレを気にする患者 あまり喋れない患者 あまり笑顔がない患者 患者が安楽な姿勢に整える 楽な姿勢か気にして直す

姿勢が悪いのは患者にとってよくない 患者の身だしなみを整える 患者の身なりを整えなければならない

身だしなみを直す

気持ちよく過ごせるような環境整備 患者が気持ちよく過ごせるように環境整備が大切 実習でのしくじり経験 患者を観察できなかった 患者を観察できていなかった

焦ってバイタルや尿量ばかり見ていた 患者が嫌な時、表情に出ていたかも知れない 患者の訴えを聞けなかった 患者さんの訴えをしっかり聞けなかった

声のトーンに全然気付かなかった リスクから守る意識 点滴抜去や褥瘡のリスクがある 安楽じゃないと動いて点滴が抜ける

褥瘡につながる危険がある

(6)

− 22 −

点滴確認に集中   点滴のことばかり考えていた  点滴のことばかり考えていた        観察項目のことばかり考えていた        確認の順番を考えていた        残量と滴下数ばかり見た        刺入部の発赤しか考えてない        何も異常なかった

      患者や周囲は気にしていない  患者のことを気にしていない        患者を意識して見ていない        周りまで気にしていない        ズレていることは想定していない       課題の点滴確認だけやればよい 課題は点滴確認

       点滴確認だけやればいい        手順通りに見ればよい

      自分の仕事だけを意識     自分の仕事だけに意識がいっていた       注射が命に係わるので重視した 注射が命に係わるので重視した 点滴確認の一部   副作用で具合が悪くないか   体調は大丈夫か

としての患者観察       具合悪くないか

       副作用が出ているかどうか        患者の顔色はどうか       患者の状態はどうか      患者の意識の状態        全体的な患者の状態        ベッドの上で今いる状態 課題へのプレッシャー  タイムプレッシャー      早く終わらせないといけない        この後検温がある

       時間を図られている

       確認して出るまでの時間はどのくらいだっただろう       不安       観察し忘れはないか

       点滴確認が不安        これでよかったのか

       やってることに間違いなかったか        布団を直した方が良かったかな       緊張       緊張していた

       終わって気が楽になった       余裕がない      余裕がなかった

違和感がない    枕が上にあっても不自然じゃない 枕が上にあっても不自然じゃない 表情に引きずられる 患者の表情はどうか      患者の表情はどうか

       どういう顔をしているか       表情への引っかかり      なんか暗くて何かあるのかな        元気がない

       笑顔じゃない        気難しそう

患者との関係を心配 どのように声を掛けようか   ちゃんと挨拶をしよう        どのように声をかけようか

       手を握ったときに一声かけたほうが良かったか       患者にどう思われているのか  きちんと返答してくれた

       患者が自分のこと気にしているか

       時間がかかって患者が不安になっていないか        初対面の人でどういう性格なんだろう        出るまで見られてる

表2 気づかない要因

11 表1 気づく要因

カテゴリー サブカテゴリー 同一記録単位群

違和感への気づき 普通の位置と違う違和感 見た時に違和感があった 練習した時は普通の位置にいた

ヘッドアップして枕に頭をつけて寝ているだろう 普通だったらこの位置にいる

普通だったら目がまっすぐ合う 首が胸の方に近かった

表情への引っかかり 元気なさそう

表情が苦しそう 表情がにこやかではない あいさつした時も声が低い 目を合せてくれない 私を見にくそう

若い方ではないという印象 いつも患者の様子を見る 患者全体を見る 患者の全体を見よう

寝ている姿を確認しよう 患者全体を見回す 患者とベッドの周囲を見る ベッド周囲を見る

患者の周囲を見る 患者の状態や周りを見よう

最初に表情を見る 最初に表情を見る

相手の表情を見て話し方を変える 気分が良いかどうか気にする

患者の状態にも気づかないといけない 患者の状態も見て気づかないといけない 業務だけじゃなく患者の状態も見なきゃだめ 患者の気持ちを読み取る 顔色や身体から患者の気持ちを読み取る

目を見て話そうと意識している

カルテを読み患者が何を考えているか考えた 類似患者のケア経験 動いたり訴えたりできない患者の受け持ち 寝たきりの患者

ベッドからずり落ちている患者 ADLに介助が必要な患者 体位のズレを気にする患者 あまり喋れない患者 あまり笑顔がない患者 患者が安楽な姿勢に整える 楽な姿勢か気にして直す

姿勢が悪いのは患者にとってよくない 患者の身だしなみを整える 患者の身なりを整えなければならない

身だしなみを直す

気持ちよく過ごせるような環境整備 患者が気持ちよく過ごせるように環境整備が大切 実習でのしくじり経験 患者を観察できなかった 患者を観察できていなかった

焦ってバイタルや尿量ばかり見ていた 患者が嫌な時、表情に出ていたかも知れない 患者の訴えを聞けなかった 患者さんの訴えをしっかり聞けなかった

声のトーンに全然気付かなかった リスクから守る意識 点滴抜去や褥瘡のリスクがある 安楽じゃないと動いて点滴が抜ける

褥瘡につながる危険がある

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− 23 −  【点滴確認に集中】は、[点滴のことばかり 考えていた][患者や周囲は気にしていない]

[課題の点滴確認だけやればよい][自分の仕 事だけを意識][注射が命に係わるので重視し た]のサブカテゴリーで構成された。【点滴確 認の一部としての患者観察】は、[副作用で具 合が悪くないか][患者の状態はどうか]のサ ブカテゴリーで構成された。【課題へのプレッ シャー】は、[タイムプレッシャー][不安]

[緊張][余裕がない]のサブカテゴリーで構成 された。【違和感がない】は、[枕が上にあって も不自然じゃない]のサブカテゴリーで構成さ れた。【表情に引きずられる】は、[患者の表情 はどうか][表情への引っかかり]のサブカテ ゴリーで構成された。【患者との関係を心配】

は、[どのように声を掛けようか][患者にどう 思われているのか]のサブカテゴリーで構成さ れた。

VI.考察 1.気づく要因

 実験環境ではあるが点滴確認場面において、

患者の体位のずれや寝衣の乱れに気づき、語っ たのは44名のうち17名であった。南ら (2011)

の点滴操作中の危険認知と同様に、気づいた対 象者は半数にも満たなかった。ここでは、気づ いた学生が、なぜ気づくことができたのか検討 する。

 気づく要因について【違和感への気づき】が 抽出され、[普通の位置と違う違和感][表情 への引っかかり]が、気づきにつながってい た。この気づきの過程は、患者を見た際の【違 和感への気づき】から患者に注意を向けたこと で、気づきにつながったと推察される 。杉本 , 堀越 , 高橋 , と齋藤 (2005) は、患者の異常を 察知する時、通常とは違うという感覚があると し、この感覚は今までの経験によって培われた 知識と目の前の患者を比較し、「何か変」とい う感覚から始まると述べている。患者の不快状

態への気づきも同様に、違和感をもとにその原 因を探るための観察につなげることが重要と考 える。

 この他、気づく要因として[安楽な姿勢に整 える][身だしなみを整える]といった【類似 患者のケア経験】が語られ、【いつも患者の様 子を見る】が抽出された。認知群には点滴確認 場面でも、はじめから患者の様子を観察する学 生がいた。「患者の状態や周りを見よう」「患者 の状態も見て気づかないといけない」と考え、

「最初に表情を見る」「患者全体を見回す」こと で、患者の体位や寝衣に気づいたと考えられ る。西川 (1988) は、認知に影響する「知識」

については、あらかじめ用意がないのが普通 で、学び、経験し、訓練して獲得し、形成し、

身につけなければならないものと述べている。

認知群は、3年生が2年生より多い傾向にあっ た。危険認知でも、4年生が他の学年より有意 に多く危険を認知することが明らかにされてい る (江上ら , 2012)。気づいた学生は、臨地実 習での経験から常に患者の様子を観察すること の必要性を学び、今回の実験場面でも不快状態 に気づけたと考える。【実習でのしくじり経験】

も気づきに活かされていたことから、臨地実習 では成功経験だけでなく失敗経験からも、学生 がケア場面を振り返り、その意味を考えること の重要性が改めて示されたと考える。

2.気づかない要因

 非認知群も点滴確認後に患者の状態を見た時 には、全員が患者の体位のずれに気づいた。こ こでは、なぜ点滴確認場面では気づくことがで きなかったのか、気づかない要因について検討 する。

 気づかない要因のカテゴリーとして、【点滴 確認に集中】【点滴確認の一部としての患者観 察】が抽出された。気づかなかった学生は、

[点滴のことばかり考えていた]だけでなく、

[課題の点滴確認だけやればよい]と考え、[患 者や周囲は気にしていない]状態であった。そ

(8)

− 24 − のため、患者を観察していても【点滴確認の一 部としての患者観察】で、[副作用で具合が悪 くないか]と体調を気にしていた。早川と小島

(2015) は、看護師の患者への関心のおきどこ ろが、疾患などの枠の外側に向かない状況にあ ると、看護師が仕事を‘まわす・こなす・すご す’業務が多くを占めると述べている。気づか なかった学生は、点滴確認という枠の中で患者 に関心を向け、点滴確認をこなすことばかり考 えていたと推察される。その他、インタビュー では、【課題へのプレッシャー】が抽出され、

[タイムプレッシャー]がかかり、[不安]と

[緊張]から[余裕がない]状態となっていた。

輸液ポンプ操作中にアラームが鳴った場合、輸 液ラインへの注視時間が長く、患者への注視時 間が短くなることが報告されている (Kataoka, Sasaki, & Kanda, 2008)。視線の方向はその人 の注意の方向を示す (彦坂 , 1994) ため、行為 にプレッシャーがかかる場面では、行動を起こ している箇所に注意が集中していると考えられ る。ゆえに、気づかない原因として、不安や緊 張、タイムプレッシャーにより注意が点滴確認 に集中し、患者に注意が向けられなかったこと が考えられる。

 また、【表情にひきずられる】【患者との関係 を心配】が抽出された。気づいた者と同様に

[表情への引っかかり]があっても、気づきに つながらなかった。「元気がない」「笑顔じゃな い」と[表情への引っかかり]があっても、患 者に注意が向けられていない。その原因とし て、【患者との関係を心配】が考えられた。学 生は、点滴確認場面で[どのように声を掛けよ うか]、[患者にどう思われているのか]と考え ていた。対象者は2年生と3年生で、臨地実 習の経験も少ない。藤内 , 宮腰 , と安東 (2008)

は、新人看護師が健康歴聴取場面において、初 対面である患者・家族から否定的な評価を受け ることを回避したり、自分を防衛しようとする

「防衛的構え」があるとしている。そして「防

衛的構え」が、関係形成に力が注がれ、情報収 集に終始してしまい判断に至らない要因として いた。[表情への引っかかり]があっても気づ かない者は、初対面である模擬患者との関係形 成に注力していたと考える。そのため、患者の 様子に注意を向けられず、不快状態に気づかな かったと推察された。今回の結果から【表情に 引きずられる】と【患者との関係を心配】の関 係は明らかにはできないが、学生は患者の表情 が患者の状態を示すサインであることを理解で きていないと考えられた。

 1名ではあったが、インタビューで「枕が上 にあっても不自然じゃない」との語りがあり、

【違和感がない】が抽出された。頭の上にある 枕を見ても違和感がないというのは、その状態 を患者にとって不快な状態と判断していないこ とになる。このような学生は、体位のずれに気 づいても体位を整えるケアにつながらない恐れ がある。今回、患者の不快状態として、体位の ずれや寝衣の乱れを設定した。認知群には「体 を上げますか」などと声を掛けた者が5名、実 際に寝衣の胸元を整えたものが1名あった。し かし、他の11名については、体位のずれや寝衣 の乱れを患者にとって不快な状態と判断したか どうか確認できてない。気づいた者でも実際の ケアにつながるか予測できない点は本研究の限 界である。今後の課題として、患者の不快状態 に気づいた際にケアにつながるか確認し、つな がる者とつながらない者の違いについて明らか にする必要がある。

3.看護教育への示唆

 今回、点滴確認場面で患者の体位のずれや寝 衣の乱れに気づいた学生は4割に満たなかっ た。危険認知の調査 (南ら , 2011) でも、点滴 操作中に外れたベッド柵を認知した新人は2割 にとどまった。つまり学生や新人は不快や危険 に関わらず、行為場面で行為と関連のない周囲 の状況に気づくことは難しい。何らかの行為場

(9)

− 25 − 面でも患者の不快に気づきケアできる看護師を 育成するためにも、看護基礎教育における教育 方法の検討が必要である。

 はじめに、点滴確認に集中してしまう学生に は、気づいた学生が【いつも患者の様子を見 る】ように、どのような場面であっても患者に 注意を向けるよう指導する必要がある。危険認 知の調査では、学年に関わらず観察前の注目点 と注視項目は一致し、事前に注目した箇所は認 知できていた (大黒と齋藤 , 2013) 。課題に集 中できる学生であれば、入室前に患者の様子も 観察点として準備することで、点滴確認場面で も患者に注意を向けられると考える。そして、

患者に注意を向けることが習慣化されれば、ど のような場面でも患者の不快に気づくことが期 待できる。具体的な教育方法としては、シミュ レーション教育が有効であろう。阿部 (2013)

は、シミュレーション教育の利点として、安全 な学習環境のなかで、学習者の行為に現れた失 敗から、知識を補い、未熟な行為を熟達へと転 換していく学習過程を経験させることで、臨床 での実践力への橋渡しが可能となると述べてい る。今回、非認知群の全員が、実験後に患者の 状態を見た際に体位のずれに気づくことができ た。本研究の実験条件をシナリオとし、後から 見れば気づく患者の体位に、なぜ点滴確認場面 では気づかなかったのか、学生が振り返る機会 を設ける必要がある。

 次に、【表情に引きずられる】学生は、患者 の不快状態に気づくヒントはつかめていても、

【患者との関係を心配】したことで、気づかな かったと考えられた。学生にとって、藤内ら

(2008) が指摘する「防衛的構え」を外すこと は必要であろう。受け持ち患者の元気がなく暗 い表情の理由は、学生に対する評価ではないこ とを理解させなければならない。そのために は、臨地実習で学生が患者と関わる場面に教員 が立ち会い、誰が関わっても同じ表情であるこ とを確認し、表情の原因について共に考えるこ

とが有効と考える。

 最後に、看護に対する姿勢として【リスクか ら守る意識】は抽出されたが、安楽について は、[安楽な姿勢に整える][気持ちよく過ごせ るような環境整備]といった【類似患者のケア 経験】として語られた。この結果は、学生が安 楽を看護の目的として捉えていないことを示し ている可能性がある。佐居 (2004) は、「安楽」

の概念分析から帰結として「患者の満足」「自 然治癒力を高める」「前向きな気分になる」を 挙げている。本研究では、学生が体位や寝衣を 整える意味を、どのように捉えているのか確認 できていない。安楽の捉え方と患者の不快状態 への気づきの関連については、今後検証が必要 である。また、安楽は、他人が決めるものでは なく、それを体験しているその人が感じる主観 的な感覚である。他者に環境を整えてもらい生 活している学生にとっては、不快な状態からそ れを取り除き安楽を体験させなければ、不快も 安楽も理解できない可能性がある。学内演習等 で学生が安楽を体験できる機会を設け、安楽が 患者の療養生活にどう影響するのか考えさせる 必要がある。そうすることで安楽を看護の目的 として捉え、患者の不快に気づき、ケアできる 看護師に成長することが期待できると考える。

Ⅶ.結論

 学生が点滴確認場面で患者の不快状態に気づ くかどうか、模擬患者と模擬病室を用いて実験 したところ、対象者44名のうち17名が患者の 体位のずれや寝衣の乱れに気づいた。インタ ビューを内容分析した結果、気づく要因は5カ テゴリー、気づかない要因は6カテゴリーが抽 出された。

 気づく要因には、【違和感への気づき】【い つも患者の様子を見る】があり、これらには

【類似患者のケア経験】【実習でのしくじり経 験】【リスクから守る意識】が関係すると考え られた。気づかない要因は、【課題へのプレッ

(10)

− 26 − シャー】から【点滴確認に集中】し【点滴確 認の一部としての患者観察】であること、【患 者との関係を心配】して患者の【表情に引きず られる】ことが考えられた。頭の上にある枕を 見ても【違和感がない】と語る学生もあり、患 者が不快な状態と判断できないことも考えられ た。

 教育方法として、どのような場面でも患者の 様子に注意を向けるよう指導すること、患者と 関わる場面に立ち会い患者の表情の原因を共に 考えること、患者の不快な状態に気づけていな いことを振り返る機会を設けること、学生が不 快と安楽を体験し、安楽が療養生活に与える影 響を考える機会を設けることが考えられた。

 謝辞:緊張しながら点滴確認に挑んでくだ さった対象者の皆様、不適切な体位を強いられ ながら患者役を演じていただいた方に深く感謝 いたします。

 利益相反:本研究における利益相反は存在し ない。

 著者資格:MM および HK は、豊富な意見 交換に基づいて、研究の着想から論文作成の 全てを行った。データ収集は、MM が行った。

すべての著者は最終原稿を読み、承認した。

 なお、本論文は青森県立保健大学大学院博士 学位論文の一部に加筆・修正を加えたものであ る。

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(青森中央学院大学 看護学部  講師 まつしま まさき)

(青森県立保健大学 健康科学部 教授 かどはま はるみ)

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