著者 中野 雅博
雑誌名 金沢大学教育学部紀要.人文科学・社会科学・教育
科学編
巻 23
ページ 143‑157
発行年 1974‑12‑20
URL http://hdl.handle.net/2297/47686
鳥取県における工業開発と問題点*
中 野 雅 博
1 は じ め に
戦後における地域開発は,昭和25年の「国土 総合開発法」の資源開発的なものから,30年代 になって工業開発,経済開発を目的とする「地 域開発促進法」により重化学工業化を軸として 推進された。しかし資本財部門の発展には多く の関連下請産業の集積が必要であり,既成の工 業集積地域とその周辺地域に発展をみたのであ る。さらにエネルギー源の転換と貿易構造の変 化によって,基礎素材工業部門も市場立地性向 を強め,若干の地方への分散立地もみられたが,
基本的には既集積地周辺への集中化により重化 学工業化が進められ,大都市周辺地域への産 業・人口の集中化を一層促進することになっ
た。
昭和36年以降,地域間格差の解消と既成集積 地域への工業集中の抑止をねらいとする「全国 総合開発計画」にもとつく拠点開発構想により 工業の分散をはかろうとして,新産業都市の建 設,工業整備特別地域,低開発地域工業開発促 進法にもとつく低開発地域の開発が進められ た。しかし国民経済の高度成長過程において,
地域開発政策自体に内包する諸矛盾の地域への 反映として,過密都市化・地域間格差の拡大,
過疎地域問題を生みだすことになった。
昭和40年代にはいると,国際化時代への産業 体制づくりを目的とした規模面における大型 化,技術面における機械化,自動化,生産面に おける合理化への要請が高まる中に,従来の経 済開発優先,生産所得の増大を志向した地域開 発政策の歪みが顕在化し,都市の過密・過大化 と深刻な過疎問題をもたらした。さらに工場公 害,都市公害の環境問題が重大な社会問題とな
り,開発政策は社会開発優先,地域住民生活優 先の方向へと転換を余儀なくされてきた。この 中にあって工業開発中心の従来の地域開発か ら,都市化要因として情報ネットワークを媒介 とする中枢管理機能やサービス機能を中心とす る第三次産業部門の比重の高い都市圏や生活圏 の設定,開発による国土総都市化を目指す「新 全国総合開発計画」がたてられたU。
地域開発を問題にする場合,それが経済開発 であるにしろ,また住民の生活優先の社会開発 にしろ,地域経済そのものが国民経済の開放体 系の中にあって自己完結的でない以上,必然的 に国家による地域開発政策の展開と係ってくる ことになる。従って地域経済の発展過程は,そ の地域のフィジィカルな条件を前程として,地 域に内包する歴史的,社会的,経済的なファク ターが,生産活動を通じて顕在化すると同時に,
地域開発政策の理念やその中にある矛盾が地域 において具体化したものといえる。特に工業開 発を中心とする経済開発においては,個別企業 の利潤追求,利潤の極大化の指導原理と均衡あ る発展,住民福祉の増進をめざす国民経済全体 の理念との相違から生じる矛盾が,地域の発展 過程にどのような影響をもたらしたかは,経済 地理学において重要な課題である。
ところで経済地理学において,工業開発を中 心とした地域開発に関する研究・考察が地域的
なものから全国的なものにいたるまで,また個 別的なものから総合的なものにいたるまで数多
くなされているが 本稿が対象とするような工 業低開発地域での事例研究は,統計資料等の関 係上,従来あまり多く行われていなかった。
そこで筆者は本稿において,従来工業諸活動
*昭和49年9月17日受理
があまり活発でなかった工業後進地域におい て,工業の発展過程及び工業構造の特質を分 折・考察することにより,地域間格差是正を志 向した開発政策のもつ矛盾と工業を受入れる基 盤における地域的(地方的)要因を究明し,こ のような後進地域における工業開発のあり方を 志向しようとするものである。
本稿で鳥取県を対象地域として設定した理由 として,以下の諸点があげられる。第一に,本 地域は全国で代表的な人口希薄地域2)であり,
高度成長過程において,人口減少が激しく,過 疎問題をかかえた地域である。第二に,従来か ら工業に殆んど見るべきものがなく,工業出荷 額において全国最低グループにランクされてい
る。第三に低開発地域工業開発促進法,新産業 都市建設促進法,農村地域工業導入促進法等の 諸法の指定により工業開発を推進し,地域開発 政策の地域への反映がみられる。第四に,新産 業都市区域として指定された中海地区が,開発 計画そのものに対しては予定された進捗状況に ありながら,相対的には地位の低下をきたして
いる。
2 対象地域の概観
本地域は,山陰地方のほぼ中央部,中国山地
≡西麿域市町村圏
難 蒋ズ_迄羅
トロー町二
の北斜面にあり,北は日本海に面している。東 西は約120km,南北20〜40 kmで日本海に 沿って細長く伸びており,面積は3,492km2で ある。しかし可住地面積は861km2(全県の約 25%)であり,特に南部地域は中国山地が縦走 しており,過疎地域となっている。河川として は東部に千代川,中部に天神川,西部に日野川 があり,その下流にそれぞれ河川の堆積による 鳥取平野,倉吉平野,米子平野が発達している。
しかし海岸線は,中国山地が迫っていることと 冬季の強い波浪のため,平野の発達が乏しく,
代って海岸砂丘が形成されている3)。
人口は,昭和30年以来年率0.5〜0.6%の減 少を示し,昭和45年56.8万人であったが,昭 和47年10月には従来の減少傾向に終止符をう ち,若干の増加をみた。
産業構i造は第1次産業31.8%(昭和45年),
第2次産業24.5%,第3次産業43.7%であり,
第1次産業に関しては昭和35年の48.9%より 大幅な減少を示しているが,全国平均に比べて 12.5%高くなっており農業立県といわれてい
る。
本地域は広域市町村圏によって東部(鳥取 市・気高郡・岩美郡・八頭郡),中部(倉吉市・
東伯郡),西部(米子市・境港市・西伯郡・日野
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第1図往政区画図
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目新産業都市区域
肛皿皿低開発工業開発地区
一・一・一一 広域市町村圏
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灘1勤 ー輻|!郡)の3地区に分けられる。そして県下全域が
「工業再配置促進法による誘導地域」に含まれ る。また第1図からわかるように佐治村・三朝 町・関金町を除く東・中部全域が「低開発工業 開発地区」に,江府,日野・日南各町を除く西 部地区カミ「新産業都市区域」に指定されている。
3 工業の発展過程
戦後における日本経済の発展は,昭和30年代 の前半から「高度成長」にはいり,昭和36年に
「転換期」をむかえ,若干の調整をくりかえし ながら,高い投資水準を保ち,昭和39〜40年に かけての不況を克服して後,国際競争力も強化 された反面,高度成長過程における歪みとして 過密・過疎問題及び地域間格差の拡大という問 題を生みだした。
本地域の場合,昭和41年以後までは工業生産 そのものの発展はみられたが,相対的にはもと より低かったその地位を更に低いものにして
いった。
事業所数は昭和35年の2139から,同40年 2106,同43年2177と若干減少ないし横ばい傾 向であったが,同44年2326と増加,同45,46 年は不況による若干の減少をみたが,同47年 2514と35年に比べて375の増加を示している
(表1)。
従業者数は昭和35年の25,147人から順調に 増加し,同47年には53,676人と2.1倍に,ま
表一1 鳥取県の工業推移
た製造出荷額は7.2倍,付加価値額は8.4倍と 驚異的な伸びを示している。そしていずれの場 合も昭和40年から同45年にかけて激増してい
ることが看取される。因みに40年から47年の 推移を全国の推移と比べてみると,第2図にみ られるように,製造品出荷額等,従業者数は全 国平均を大幅に上まわる伸びを示している。し かし鳥取県のような従来殆んど工業の集積をも たない地域においては,新規の工場立地によつ て出荷額が急伸するので,指数のみで工業の発 展を評価することは,本質を見誤る恐れがある。
そこで生産性について若干考察を加えてみる と,労働生産性は昭和35年112.7万円で全国平 均の59%,同46年369.8万円で全国平均の 58%となっている。また付加価値生産額も同35 年の33.1万円から同46年115.9万円で約3.5 倍に伸びているが,全国平均と比較するといず れも半分位で,極めて低く,出荷額の増加にも 拘らず,工業構造の高度化はあまり進展せず,
付加価値の高い業種の立地が望まれるところで
ある。
これを規模別にみるため,昭和40年と同47年を 対比させたのが〔表2〕である。7年間の事業所数 の増加は408であり,従業者規模30人以下の零細 層が89.5%がら85.3%に減少をみている。特に
その中でも1〜3人層は10%近くの低下であ
35年 40年 45年 47 年
事 業 所 数 指 数(35年二100)
2,139 100.0
2,106 98.5
2,279 106.6
2,514 117.5
従業者 数(人)
指 数(35年=100)
25,147 100.0
32,600 129.6
50,081 199.2
53,676 213.5
出荷額 (百万円)
指 数(35年=100)
28,343 100.0
53,027 187.1
167,055 589.4
204,765 722.5.5 付加価値額 (百万円)
指 数(35年=100)
8,316 100.0
15,322 184.3
54,744 658.3
69,673 837.8
付 加 価 値 率 29.3% 28.9% 32.8% 34.0%
(資料)鳥取県工業統計調査結果報告書(昭和47)
工業統計表(昭和35年、40年、45年)
第2図 鳥取県及び全国の工業推移 (全国・鳥取県)
400 350 300 250 200 150 100
慧㌶:1/
出荷額数::§取貿/
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表一2 規模別構構成(昭和40年、同47年)
事業所数 従業者数 出荷額額 規模別 40年 47年 40年 47年 40年 47年 1〜3人 40.2 31.9 5.8 3.3 2.2 1.4 4〜9人 27.9 26.2 11.7 7.8 7.0 4.8
10〜29人 21.4 27.2 22.9 21.1 20.9 16.4 30〜99人 8.1 11.1 26.0 27.7 24.6 25.6 100〜299人 2.1 2.9 20.8 20.6 21.6 19.9
鋤人以上 0.3 0.7 12.9 19.5 23.8 31.9
合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
(資料)鳥取県工業統計調査結果報告書(昭和47年)
り,10〜29人層の大幅な増加と対照的である。
これは零細層自体の減少とともに企業誘致によ る中小規模の工場の増加のためであるといえ る。従って,従業者数,出荷額においても零細 層特に9人以下の層は,その全体に占める割合 を減じており,労働生産性及び付加価値生産性 なども合せて考察すると,企業間の格差が増大 して階層分化が高度成長を通じて一段と激しく 進展していることが理解される。これは経済成 長や景気変動の過程で零細規模工場の経営が困 難になるとともに,賃金格差による労働者の上層 工場への移動が工場の規模拡大を促進したため 表一3 鳥取県工業の業種構成(昭和47年)
唖額 値臆 璽⑭認国︑︒鯛斑囲︑︒⑬η㎜妬②−岡2囮3⑭2圃怒鯛︒㎝︑元㎜別馴6鯛−岡担㈱繕 8︶0︶4︶9 7︶1︶2︶5>3︶6︶5︶7︶0︶0︶ 4︶0︶1︶4︶2︶8︶鵠4ぽm御uぽB己7領2㎞2㍑㍑㎏7己5伽.お﹄5認−伽㎏3ω 業 数 従者ー
76旬09旬別勾47田83旬43め83D28の64D48D47の09θ84①77旬工 32の39カ48勾22旬05勾24のぴo︒ぽジぽぽぴ蟹ぽo似3低3似ぱぽぱぱ淫5ぽ−似ぽ
上上以
人謝㎜
74
数所業事別模規
人99距
79
臥卜
83
臥ト
捌
数総4︶7︶3︶9︶1︶8︶6︶4︶2︶6︶3︶8︶7︶7︶1︶7︶3︶5︶3︶4︶0>鑑麟9ぽB怖36﹄η四H㎏9偲−艇己−僻㎏Bぽー㎏⑩妬㎏9ぽH㎏3幅口u畑
計 業 造 料
& 飢
L
2
翫
▲ 駈 乱 免
a
凱
⑰
L
乞 鋭
▲
5
翫
備
1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3
( )内は業種別構成比、県統計課「昭和47年工業統計調査結果報告書」より
と推測される。工業生産の合理化,機械化,自 動化がおし進められた結果とはげしい労働力不 足が労働力に流動性をもたらしたといえる。し かし資本力の大きい企業は高度の設備投資によ り生産力の拡大をはかっていったが,小規模工 場では,それを従業者の増大により補おうとし たが,小零細規模層の工場では不可能な場合が 多く,かなりの後退になったと考えられる。
4 工業構造とその特質
昭和47年の本地域の工業規模は事業所数 2514,従業者数53,676人,出荷額2048億円で あり,全国的にみて,隣接する島根県や高知県
とともに最下位のグループに属している。いま 業種構成および規模別構成〔表3〕から本地域 の工業構造の特質を概観してみよう。
事業所数では食料品が約30%を占め,比重が 極めて高く,それに続いて木材,家具,衣服等の 地場資源型の軽工業のウェイトが高い。これを 従業者規模別にみると,食料品はその90%以上 が零細層であり,その反面300人以上の中規模
表一4 業種別出荷額の推移
工場は皆無で,地方型の農林水産資源指向 工業といえる。これは木材・木製品,家具,窯 業・土石に関しても同様である。電気の場合,
中小規模の工場の比重がかなり高い点が注目さ
れる。
製造出荷額等についてみると(表4),昭和40 年までは重化学工業率は18.4%と低く,この反 面食料品,木材,家具,紙パルプ等のウェイト が高く,軽工業的消費材部門が中心であった。
この時期は国民経済においては,前述のごとく,
所得倍増ムードの中の高度成長,高い投資水準 の持続,拠点開発構想による重化学工業を中心
とする地域開発計画が推進されていた。しかし 鳥取県のような大規模工業基地開発のための産 業基盤整備の先行投資が十分になされていな い,また重化学工業の立地を促進する下請工場
年 度
昭和35年 40年 45年 47年 総 額 283億円 530億円 1662億円 ao48億円 構 成 比 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
化学・石油 1.4 0.9 0.4 0.4 重 鉄 鋼 3.6 3.2 3.5 2.4 出 化 金属・非鉄 6.2 8.3 10.5 12.0 学 機 械 3.5 2.0 4.2 2.4 工 電 気 2.3 3.2 19.8 19.6 荷 業
輸送機械 0.5 0.6 0.4 0.7 精密機械 0.2 0.2 0.1 0.1
額 小 計 17.7 18.4 38.9 37.6 等 食 料 品 31.5 28.2 19.6 21.5 軽 繊維・衣服 10.9 12.0 10.7 10.9
木材・家具 17.5 18.5 12.4 12.7 工 パルプ・紙 17.7 17.5 11.8 10.9
出版・印刷 1.7 1.7 1.1 1.2
業 窯業・土石 2.0 2.3 3.8 3.3
そ の 他 1.0 1.4 1.7 1.9
小 計 82.3 81.6 61.1 62.4
「鳥取県の概要」(昭和48年1月)及び県統計課「工業統計調査」による。
表一5 業種別特化度(昭和41.46年)
昭和41年 昭和46年 合 計 1.0 1.0
食 料 品 2.1 1.8
繊 維 1.0 0.8
衣 服 1.8 3.5
木 材 4.4 2.8
家 具 2.1 2.1
紙・パルプ 4.5 3.3
印 刷 0.5 0.4 化 学 0.3 0.0
石油・石炭 × 0.1
ゴ ム × 0.1
皮 革 × 0.1
窯業・土石 0.7 1.2
鉄 鋼 0.4 0.3
非 鉄 一 ×
金 属 1.8 2.4 一 般機械 0.2 1.0 電気 〃 0.6 1.3
輸送 〃 0.1 0.0 精密 〃 0.9 ×
そ の 他 0.2 0.4
(注)特化度一讐
(出荷額による)
×は秘匿数字
の集積をもたない地域が,高度成長期を通じて 全国的にみて最低水準の工業生産額にとどまっ ていたのも当然なことといえる。
昭和41年の新産業都市指定(中海臨海地区)
や鳥取市域への三洋電機の誘致が,本地域の工 業構造の高度化に及ぼした影響は大きく,同45 年には,重化学工業率が20%以上の上昇を示
し,38.9%にまで高まった。同45,46年の不況 と衣服・繊維工業の立地により,そのウェイト は若干低下してはいるものの,今後,中海新産 業都市区域や鳥取地区での新規工場の立地が進 むにつれて,重化学工業率は上昇するものと推 測される。
因みに,工業集積が形成されていなくて,工 場の絶対数が少ない場合や中小零細工場が多
く,地域開発主導型の大規模工業の立地がみら れない場合,誘致等による大規模工場の進出が,
表一6 工業立地動向調査結果(昭和44〜48年)
件 面
積(m2)
一件当 労働力 一件当 り平均 り平均
数 新 設 増 設 面 積 (人) 労働力
211 988,649 58,767 4,964 10,394 49.3
食料 品 16 96,824 3,388 6,263 520 32.5
繊 維 4 26,998 4,622 7,905 440 110.0 衣 服 28 64,054 7,127 2,542 2,049 73.2
木 材 13 71,164 5,147 5,870 349 26.8 家 具 10 69,007 6,901 805 80.5 紙・パルプ 5 5,160 3,339 1,700 90 18.0 印 刷 1 1,486 1,486 9 9.0
化 学 3 21,020 1,625 7,548 60 20.0
石油・石炭 2 9,408 4,704 14 7.0
ゴ ム 1 2,980 2,980 40 40.0
皮 革
窯業・土石 20 102,730 2,949 5,284 293 14.7
鉄 鋼 2 3,173 1,587 9 4.5 非 鉄
金 属 29 122,791 10,791 4,606 1;319 45.5 一 般機械 13 23,744 15,361 3,008 432 33.2 電気 〃 25 264,640 4,481 10,765 3,199 128.0
輸送 〃 2 24,288 12,144 160 80.0
精密 〃 そ の 他 81
27,685 3,461 188 23.5
通産省「工業立地動向調査」より集計 注:1件当り取得面積1,000㎡以上のもの
その地域の工業構造を大幅に変化させる要因と なる。鳥取市における三洋電機の立地がこれに あてはまり,その下請関連会社15社を含めて,
従業者数5,000人を上まわる大企業の進出は,本 地域にとつては,多大な波及効果をもたらした。
その結果,従来からの主要産業であるパルプ,
食料品はその出荷額の増加にもかかわらず,相 対的にその比重の低下を余儀なくされた。
このような業種別構成をその特化度から考察 すると,その地域の工業の特質が明瞭になる(表
5)。
昭和41年においては,木材,紙・パルプが 著しく特化度が高く,次いで食料品,家具,衣 服,金属などが高くなっている。ところが同46 年になると新規の工業立地により衣服の特化度 が高まり,相対的に食料品,木材,パルプの低 下がみられる。また金属,電気,機械などの上 昇も注目に価する。すなわち,41年では木材,
食料品などの地場資源依存型工業や紙・パ ルプのような特定立地型工業に特化してい たが,その後,企業誘致により巨大都市外 延地帯の工業である衣服・縫製工業や電機 部品組立て工業などが特化度を高め,本地 域における工業構造の高度化を達成したも のであるといえる。
5 工業立地動向と工業開発
前述のように既成の工業集積や地域開発 主導型工業をもたず,また地場資本が弱少 な場合,地域開発を促進し,工業構造の高 度化及び雇用の増大による地域格差の是正 をはかるには企業誘致が一一般的にとられる 方策である。
昭和44〜48年における鳥取県の工業立 地動向についてみたのが〔表6〕である。立 地件数は昭和44年の49件,45年の69件 と活発であったが,46年は不況による設備 投資の減退で19件と減じている。47年40 件,48年36件とかなり回復はしているも のの近年の総需要抑制政策により,再び低
下することが考えられる。
さて業種別に詳細に考察してみると次の諸点 が指摘される。第一に,件数においては金属,
衣服、電気等の誘致企業が顕著であるが,食料 品,木材,家具等の地場産業もかなりの増加を 示している。第2に,1件当りの平均規模面積 は,全国平均に比べて30%にも及ぽず,装置型 工業を含まない本地域の立地動向では当然のこ
とと考えられる。業種別では衣服,家具,電気 の各工業は全国平均なみの敷地面積であるが,
これら以外は全国平均規模の半分にも満たな い。また1件当りの平均労働力も繊維,衣服,
家具の各工業がほぼ全国平均に達しているが,
他はかなりの規模の格差がみられる。このこと から,新規に工場の立地が進展しても,工場規 模における格差,ひいては地域間格差の解消に なるよりも,逆に相対的に格差は益々拡大して ゆく傾向にあるといってよい。
〔工場誘致とその特質〕
工業立地動向の結果から,本地域の工業にお ける誘致企業の占める比重が極めて大きいとい
うことが理解された。そこで昭和35年から同 48年までの14年間に誘致された企業を若干詳 細に分折し,その特質及び傾向とその基盤を考 察してみよう。 1 〔表7〕は昭和35〜48年まで14年間シこ亘る藩
誘致企業を業種別,年度別,地区別に表したも猪 のである。立地件数は昭和41年の新産業都市指蓮 定を境に,既成集積地からの分散政策と合致し謙 て急増したが,前述の如く昭和45年以降は不況品 凶
の影響をうけて若干伸び悩んでいる。 碧 業種別では繊維・衣服(主に縫製関係)が38蔀 件と最多で,電気が22で次ぎ,金属磯硫鵠
もかなり誘致されている。これらの業種はいず巴 れも・巨大都市艇地帯の工業・礪していて,豆 本来ならば既存の工業地帯麟接する地域ある藁 いは都市内に立地すべき業種であるが,大都市{暉 の過大・過密化による外部経済の減少や工業後卜 進地域の誘致によつて,移転・分散立地したもk のと考えられる。そして昭和35・36年頃は、既
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成工業地域における労働力の逼迫状況の打開策 として,投下資本の小さくて,低賃金の女子労 働力を指向する衣服・繊維工業の進出がみられ
る。ところが昭和40年以降になると,地域定着 型で,付加価値の高い電気,機械,金属工業の 立地がみられた。
繊維・衣服工業については,昭和40年までに 進出した企業は紳士服・メリヤス製品・ワイ
シャツ等の縫製品が多く,かなりの規模を有し ているが,同41年以降に進出した企業では製品
も多様化し,規模においても100 人以下の経営が多くなっている。
電気については,昭和41年7月 大阪より三洋電機を誘致し,鳥取 三洋として発足し,現在無線,電 器,機器の3事業部が生産体制に 入っている。これにともない関連 下請工場15社が相次いで立地し,
従来の工業構造において弱体で あった電気,機械の分野が強化さ
れた。
地区別にみると,鳥取市を中心 とする東部地区が他地区より一歩 先んじで企業の立地が多く認めら れるのは,道路をはじめとする産 業基盤の整備において東部が優先 したという点とともに,既存の工 業集積地(主に阪神工業地帯)へ の近接性が,輸送コストを重視す る軽消費財工業の立地に有利に作 用したと考えられる。中海新産業 都市区域を中心とする西部地区 は,基盤整備そのものの遅れと,
地理的位置の不利に加えて,新産 業都市計画のもつ矛盾のため,予 定通りの地域開発の進捗率を達成 しているにもかかわらず,相対的 に地位の低下をきたしている。
次に誘致企業を規模別にみると
(表8),29人以下の零細規模は
少なく,100〜299人の中規模層が40工場と一 番多く,50〜99人の小規模層が続いている。
業種別にみて,平均規模及び規模別分布状況に あまり相違はみられないが,衣服や電気におい て,従業者500人以上の大規模工場とその分工 場として50〜100人の中小規模工場の配置とい うグループ体制での進出が認められる。衣服工 業や電気部品組立工業は労働力集約型工業であ るため,高い生産性によって広域から労働力を 吸収する力が乏しいので,人口希薄な地域にお いては,生産を拡大するためには,小零細規模
表一8 規模別誘致企業
計
4731466244692833m
帖53 1 4
〜
1 1
〜
3512 222 2147 0 4
〜
1 7231 22112 31
〜
272 1 111 6 21
〜
1 1 1115
㌔1 11 31231 25 1
品維服品プ学ム業鋼品械気送他 ル 製料 製 の計 パ 属食繊衣木紙化ゴ窯鉄金機電輸そ
(資料)表一7に同じ
表一9 誘致企業の本社及び新企業所在地
計
573156827211112724卿
東1 3 2 115 1 37 1京
福井1 1
愛知1 1 1 3
鳥取1 2 1 4
山口2 5 7
岡山2 2
広島2 1 1 4
奈良2 2
京都1 3 4
兵庫122 1 11 19
大阪
14241431 69202 75
品維服品プ学ム業鋼品械気送他 ル 製料 製 の計 パ 属食繊衣木紙化ゴ窯鉄金機電輸そ
(資料)表一7に同じ
1:場を分散配置することになる。
さらに誘致企業の本社及び親会社の所在地か ら進出企業の傾向を考察してみると,(表9)か らもわかるように,大阪が75件で60%を占め 圧倒的に多く,業種別にみても衣服,電気をは じめとして全業種にわたっている。また近畿全 体ては70%を上まわり,本地域と近畿地方との 関連の強さを物語っている。また東京が人阪に 相いで17件にのぼり,業種として家具、化学,
金属,その他等の比重が高くな・)ている点が注 目される。鳥取県は中国地方にありながら,隣 接する岡山や島根,広島県からの進出は極めて 少なく,大阪を中心とする既成大1業地帯との 関連を深めている、進出元が人阪,兵庫,京都 にかたよっているということは, Il業構造の高 度化が関西資本によつて推進されることにな り,立地ll場が投ド資本の川収の早い軽E業型 消費財生産に偏在しがちであり,また1二場の立 地においても,輸送コスト等の問題も勘案して,
人阪を中心とする既成集積地に近接する地域よ り促巡iされたものと考えられる、
また立地要因について若1二の考察を行ってみ ると,進出企業の75%は「労働力が得やすい」
を指摘しており,次いで「用地が入手しやすい」
(24件),「親企業系列企業の進出にともなって 立地した」(17件)と続いている。地場資本の形 成が不充分なため,「自社1:業,関連.1二場が近い」
は4件にすぎない、食料品1:業に一原材料が得 やすい」「製品の需要地が近い」がみられるが,
市場指向を指摘したものは少なく人口減少地域 での都市型ll業の、Z地の困難さが理解される.
また特殊な例として「経営陣の出身地てある」
が7件を数え,地方でのll場立地における恐意 的要因として無視できないものがある。これら の立地要因に付加して,地方公共団体の積極的 な誘致や低開発地域[業開発促進法, 1:業再配 置促進法等による金融・税制両面における優遇 措置があげられる。
[L業用」也と L場)り:」也」
昭和48年度1:場」8地調査によれは,本地域の ll業適地として東部地区16団地381 ha,中部 地区8団地173ha,西部地区11団地323 haを 選定し、企業の誘致を計画している
各地1メニの分布状況は、 第3図 からわかるよ うに,鳥取市・倉、1「市・汁汀市・境港市ぺの{llfi 在とド要国道沿及び1日陰本線,因美線なとの鉄 道駅裏の開発が日)1ノ:・)ている 地目/白にみると
人部分川・畑からの転用てあり,埋)刀也は境港
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1責料一1召和48;|度LJ易適地調査 通商産業省・鳥取県ト
外港の42haだけである。これらの点から,本 地点から,本地域の開発方針として,地方中核 都ll∫を中心とする機械,金属,電気,衣服等の 内陸型,都市型Il業団地の形成を志向している
ものと考えられる、
ところで実際のll場の立地状況を検討してみ ると,1:業団地や主要国道・地万道沿の適地の他 に公共建造物跡地利用の例を多くみる。鳥取大 学の移転跡地への三洋電機の)7二地や,過疎化及 び交通機関の発達による小中学校の統合,廃校 跡地への電気部品Il業(三洋電機のド請1:場)
や衣服ll業の追i出などがあげられる。因みに,
中規模以1:の跡地へのll場の1力也例をみても,
東部地区9,中部地区2,西部地区2にのほる
6 地区別工場分布
〔鳥取地区〕
本地区の拠点都市鳥取ll∫には,地域における 中核都市的機能及び諸需要に指向する多種多様 な1:業の立地がみられるが(第4図),それらは ll∫街地のlll陰本線以南の地区か,湖1日,占成,
久末等の1二業団地に立地している。既存1二業と して,電気,衣服,家具等の都市型Il業の若F の集積はみられるが,昭和35年以降の鳥取エフ ワン(衣服),三洋電機の誘致による影響は大で あり,周辺地域への関連ド請ll場の立地を促し た。因みに本地域の1要1:業である電気機械器具
1:業と繊維・衣服1二業の立地傾向を若1二詳細に 考察するため,4こ国Il場通覧(1974 fl三版)によ
〔規模別〕
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(資料)鳥取県の1二業適地(1973q・、
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である。本図より明らかなように,衣服1業も 電気r業もいずれも主要道路の結節点にその立 地が集中していることが理解される。これは,
原材料,半製品の搬人と製品の市場への搬出に おける輸送費(トラック輸送)の節約は云うま でもなく,むしろ労働力の確保のため,地域の 中心地として機能する主要国道・地方道の結節 点に立地したものと考えられる。また,前述の 如く,高い生産性でもって,周辺から多くの労 働力を集めることができないため,生産力の拡 大には分散立地の形態をとり,1三要道路から分 岐する地方道の一集落や、道路の行止まり地点
にも立地しているのが注目される。この傾向は,
従業者10人以上の規模の工場を抽出した電気 工業に強くみられ,その中には100人以1二の規 模の工場もある。一方衣服工業は主要道路沿い の立地とともに,各地域の工業適地での立地が 多くみられ,従って分散立地の規模も電気より は若干大きくなっている。いずれにしても,こ れらの分工場は,鳥取市内の親工場との関連が 深く,親工場を通じて大阪を中心とする既成工 業集積地域と結合されている。
上記以外の若干の集積として青谷・気高両町 の紙・パルプL業があげられるが,これらは,
伝統的地場産業(因州紙)に起因する紙関係の 第5図 繊維・衣服、電気機械器具1業の分布 〔鳥取地区〕
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(資*こ↓) 1974f{一片反4≧【司工士易」圃覧
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1:場の立地てある.その他1:場団地を造成した
ウラト ピ
浦富地区(岩美川∫),湖山地区への誘致企業び)14ノ:
地がみられる
:倉吉」也1・〈二:
Il場は中心地倉占:市と人山麓の東伯町に集中 して)ゾ地Lている(第6図)倉吉市は|1場数は 268てあるが,従業者30ノ\以ドの零糸田規模層が 約90%を占め,50ノ.以1:の1:場は18にすきな し・リ 特・に地場資1原型ll業の食料品・木材 に本細 規模層の集中がみられる 既存のL要1:場とし ては,明治29午本地域の養蚕業を基盤に設1 ノニさ れたクンセや地場資本の興和紡績,戦時疎開ll 場に山来する神鋼機器L業や地場{資本の日本圧 着端rがあげられる 昭和35午以降,衣服L業 を中心にかなりの企業進出かみられたか,当地 域のL業構造を変化させたのか,昭和44午の倉
∴㍉ ノ:白電気(本客ll京都市)の、1ノニ地てあった ド
請関連1:場3社とともに1〜二地し,既存のIl場を も系列化に加えて,今後ll業出荷額,付加価値 額の高さから,当地域の代表的ll場として発展 が期待されている 般的に地方都市への1二場 の進出は,低賃金の女r若年労働力のみを指向
し,規模は50〜200ノ\までの縫製業関係あるい は・・一ソ組・7コ1業が多いか,これらは定着性に 乏Lく,景気の後退や相対的低賃金労働ノリの川 現とともに資本を川収する危険性がある1,この ため,これらの産業は雇用労働力における搬行 性とともに地域間格差是ll.をめさす地域開発へ の影響が期待された程人きくなく,地場産業の 育成をも困難にならしめる場合がある
東伯川∫には人山麓の酪農に関連Lた乳製品,
地場農産物資源に指向した菓r類の食料品L業 が立地していたが,新たに誘致1コ易として,松 ド電器系列のr会社,婦ノ、靴ドL場が、 ノ:地し,
第6図 1.要L場分布図 倉1{o地1メ.
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〔業番・II別〕
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電機金そ本紙繊食気苧戒属三誤㍑
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〔規模別〕
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49へ誘致「場
⇔烈1 i継㌍
・1− り \
(資奉↓) ,〔5耳」[吟[ク).1.業戊直土也 (1973ξ干)
年間85億円の出荷額をあげている。これらの工 場の立地は他地区と同様,学校統合による廃校 跡地(校舎ごと利用)や国道9号線沿線あるい
は山陰本線駅裏等が大部分を占め,−ll場立地が 1つの生産点としてしか作用せず,−1:場相互の 関連や地域への波及効果が少ない点が指摘され
る。
〔米f地区〕
中海新産業都市区域を匹{1心とする本地区に は,米lr市街地,弓ケ浜中央部,境港地区に1:
場の集積がある(第7図)。境港地区は工場分布 図からもわかるように,輸入材に指向する木材
勺浜ぺ
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(資料)鳥取県の.L業適土也(1973年)