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本田一文 小川 隆 松川 聡 千葉博茂

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(1)

一 111 一

東医大誌 53(1):111〜114,1995

下顎角部骨折線上智歯の臨床的検討

Clinical Study of Third Molars lnvolved in the Fracture Line        of Mandibular Angle Fractures

山田容三 高森基史

  東京医科大学口腔外科学講座

本田一文 小川 隆 松川 聡 千葉博茂

井上  雄

内田安信

緒 言

 下顎骨骨折は顔面骨骨折のなかで発生頻度が高 く,なかでも下顎角部はその形態学的特徴や智歯の 存在あるいは直接外力が加わりやすいなどの理由か

ら関節突起部,オトガイ部などとならび骨折の好発 部位とされている.同寸の骨折の治療は智歯の処置 が問題となる症例が多い.今回,著者らは最近4年 間に経験した下顎角部骨折線上の智歯(以下,線上 智歯と略す)の処置について臨床的検討を加えたの

で報告する.

対 象

 1990年5月より1994年4月までの4年間に東京

医科大学霞ケ浦病院歯科口腔外科を受診した下顎骨 骨折(上顎骨,頬骨との合併骨折を含み,歯槽突起

骨折を除く)121症例のうち下顎角部骨折48症例

(39.7%)を観察対象とした.

結 果

 1.線上智歯の様態と処置について

 下顎角部骨折48症例のうち線上智歯を有する症

例は45例(93.8%)と多数を占めており,両側性骨 折2例を含み線上智歯は47歯であった.これら線上

智歯の様態をみると,萌出方向は垂直位17歯

(36.2%),近心傾斜14歯(29.8%),遠心傾斜3歯

(6.4%),舌側傾斜2歯(4.2%),および水平位11歯

(23.4%)であり垂直位,近心傾斜歯が多かった.萌 出位置は完全埋伏歯20歯(42.6%),不完全埋伏歯 15歯(31.9%),萌出歯12歯(25.5%)であり,完

全埋伏歯および不完全埋伏歯の占める割合が

74.5%と高かった.また萌出状態(方向や位置)と 処置は,垂直位での保存例(21.3%)と水平位での

抜歯(17.0%)が多く,不完全埋伏歯の抜歯例

(21.3%)が多かった(表1).

 2.骨折処置と線上智歯の処置について

 非観血的処置14例では16口中,15歯(31。9%)が 保存され,1歯(2,1%)が抜歯されており,線上智 歯保存例が多く認められた.観血的処置31例では 31歯中,6歯(12.8%)が保存,25歯(53.2%)が 抜歯されており,非観血的処置に比べ抜歯される頻 度が高くなっていた(表2).

 3.骨折片の偏位の程度と線上智歯の処置につい   て

 骨折片の偏位,離開の程度を友寄ら1),比嘉ら2)の

分類に準じ,2方向以上のX線写真をもとに次の3

画面分類した.すなわち,1度:大小骨片の偏位なら びに離開が軽度または亀裂程度のもの.II度:大小 骨片の偏位あるいは離開が明らかなもの.III度:大 小骨片の偏位ならびに離開とも著明なもの,とした.

以上の分類から線上智歯の処置をみると1度は,28 歯ともっとも多く,保存16歯(34,0%),抜歯12歯

(25.5%),II度は保存4歯(8.5%),抜歯13歯

(27.7%),III度は保存,抜歯各1歯(2.1%)であ

(1994年10月24日受付,1994年10月28日受理)

Key words:下顎角部骨折(Mandibular angle fracture),智歯(Third molar),骨折線(Fracture line)

(1)

(2)

一 112 一

東京医科大学雑誌 第53巻第1号

表1骨折線上智歯の様態と処置内容

処置 保存

抜歯

計(%)

様態 萌出方向

垂直位 10(21.3%)

7(14.9%)

17(36.2%)

近心傾斜 7(14.9%)

7(14.9%)

14(29.8%)

遠心傾斜 0 3(6.4%) 3(6.4%)

舌側傾斜 1(2.1%) 1(2.1%) 2(4.2%)

水平位 3(6.4%) 8(17.0%) 11(23.4%)

計(%) 21(44.7%) 26(55.3%)

47(100%).

萌出位置

完全埋伏歯 10(21.3%) 10(21.3%) 20(42.6%)

不完全埋伏歯 5(10.6%) 10(21.3%) 15(31.9%)

萌出歯 6(12.8%)

6(12.8%)

12(25.5%)

計(%) 21(44.7%) 26(55.3%) 47(100%)

表2骨折の処置と線上智歯の処置内容

    智歯の処置

恊ワの処置

保存 抜歯 計(%)

非観血的処置 マ血的処置

15(31.9%)

U(12.8%)

1(2.1%)

Q5(53.2%)

16(34.0%)

R1(66.0%)

計(%) 21(44.7%) 26(55.3%) 47(100%)

表3骨折の程度と線上智歯の処置内容

    智歯の処置

恊ワの程度

保存

抜歯

計(%)

1度

hI度

hII度

16(34.0%)

S(8.5%)

P(2.1%)

12(25.5%)

P3(27,7%)

P(2.1%)

28(59.6%)

P7(36.2%)

Q(4.3%)

計(%) 21(44.7%) 26(55.3%)

47(100%)

つた.したがって,1度では保存例が多く認められた のにII度では抜歯例が多くなっていた(表3,写真

1, 2, 3).

 4.線上智歯の抜歯理由について

 抜歯された線上智歯26歯の抜歯理由は,骨接合時

あるいは骨折整復時の障害となったもの22歯

(84.6%),根尖病巣を有するもの2歯(7.7%),智 歯周囲炎を併発していたもの1歯(3.8%),破折歯 1歯(3.8%)であり,骨接合時あるいは骨折整復時 の障害となったため抜歯されたものがもっとも多か った.また,う蝕などによる歯冠崩壊のために抜去 された歯はなかった.

考 察

 諸家の報告1}3)によると,下顎骨骨折中に占める角 部骨折の割合は23.0〜37.4%とかなり高い値を示

している.骨折処置の際に,骨折線上の歯を保存す るか抜去するかは以前よりさまざまに論じられてき たが,咬合に関与する歯であれば,通常は保存治療 が試みられる.しかし,智歯に対しては,以前はそ れがクサビとなって骨折部の癒合が遅延する,ある いは感染を生じやすいなどの理由から抜去すべきで あるという考え方4)5)が支配的であった.しかし現在 は,より強固な固定法(rigid fixation)や化学療法 の進歩などから保存は可能であり6),かえって抜歯 操作によって骨片の偏位や離開が増大し,下歯槽神

(2)

(3)

1995年1月

山田他7名:下顎角部骨折線上智歯の臨床的検討

一 113 一

㍉く、

写真1骨折1度(線上智歯保存症例) 写真2 骨折II度(線上智歯保存症例)

経や血管の損傷が生ずる危険性があるから,あえて 骨片整復前に智歯を抜去する必要はないとする考え

方1・2)に変わりつつある.

 今回対象とした下顎角部骨折の発現頻度は下顎骨 骨折中39.7%であり,従来の報告と同様に高い値を 示していた.一般的に下顎角部は構造的に脆弱であ り,しかも外力が集中しやすい部位であるため,智 歯はいわゆるクサビとなり下顎角部骨折を発症させ

やすくしていると考えられる4)7).

 下顎角部骨折に線上智歯が存在する頻度に関し

て,小浜ら4)は83.5%,志方ら8)は85.5%,友寄ら1)

は88.3%,勝山ら9)は88.5%,額田ら3)は89.5%な らびに比嘉ら2)は91.8%であったと報告しており,

われわれの対象症例では50年中47歯(94.0%)で あり,ほほ伺程度に高い値を示していた.

 線上智歯の萌出方向は垂直位が36.2%であるが 傾斜,水平位が63.8%を占めており,萌出位置は萌 出歯が25.5%であるのに対して不完全および完全 埋伏歯が74.5%であった.すなわち,智歯の多くは 傾斜,埋伏して咬合に関与しておらず,また,智歯 を被う骨質が菲薄でその部で骨折を生じやすいな ど,智歯の様態と下顎角部骨折の発症とは関係があ

ることが示唆された4).

 保存された線上智歯は44.7%,抜歯されたものは 55.3%とほぼ同数であるが,いずれの処置群におい ても異常経過を認めていない.したがって感染の可 能性によって線上智歯を抜去することは必ずしも必

要ではないと考えられた1).

 骨折処置内容でみると非観血的処置例では

・謹   ・ 凝麺

 sl t or,

写真3 骨折III度(線上智歯保存症例)

93.8%の智歯が保存されているのに対して,観血的 処置例では80.6%の線上智歯が抜去されていた.こ れは線上智歯が脱臼したため,整復時に骨片の確実 な接合にとって障害となったためと考えられる.

 骨折の程度と線上智歯の処置をみると,1度では 57.1%が保存され,II度では76.5%が抜歯されてい ることから諸家の報告1)2)と同様に,線上智歯の抜歯 理由としては単に智歯であるというだけでなく,ミ ニプレートなどを応用した骨折治療法の際に骨接合 の障害になるなどの理由で抜歯される傾向が強いこ

とが示された.

(3)

(4)

一 114 一

東 京 医 科

         結   語

 最近4年間に東京医科大学霞ケ浦病院歯科口腔外 科を受診した下顎角部骨折症例48例50線を対象に 骨折線上の智歯47歯について臨床統計的に検討を

行なった.

 線上智歯を保存した症例と抜去した症例はほぼ同 数で,骨片の偏位や離開が著明なものほど抜歯され る傾向にあった.

 全症例の骨折部は正常治癒を示し,癒合不全や感 染などの合併症を生じた症例は認められなかった.

         文   献

1)友寄英基,他:下顎角部骨折126症例に関する臨床   的観察一とくに智歯との関係について一.日口外誌

  31:2290t一一2296, 1985.

2)比嘉優,他:下顎角部骨折に関する検討一特に骨   折線上の智歯の処置について一.日口外誌39:762

  r−764, 1993・

3)額田純一郎,他:下顎骨骨折線上の智歯に関する臨

大学雑誌     第53巻第1号

  床的検討.日口外誌38:709〜710,1992.

 4)小浜源郁,他:下顎骨骨折3!7症例に関する臨床的   検討,特に骨折線上の歯牙について.日口外誌23:

  237rv247, 1977.

 5) Thoma, K.H.:Oral surgery. Mosby Co, St Louis,

  1969, p437 一・618.

 6) De Amaratunga, N.A.:The effect of teeth in the   line of Mandibular fractures on healing. J Oral   Maxillofac Surg. 45:312 一314, 1987.

 7) Archer, W.H.:Oral and maxillofacial Surgery. ed   5, W.B. Saunders. Philadelphia London Toront,

  !975, plO45・一一1087.

 8)志方昌信,他:顎骨骨折治療の問題点,その3下顎   角部骨折と智歯について(抄).日口外誌22:991,

  1976.

 9)勝山英明,他:下顎角部骨折の治療経験.日口外誌   34:1387n−1393, 1988.

(別刷請求先:〒300−03稲敷郡阿見町中央3−20−1

東京医科大学霞ケ浦病院歯科口腔外科山田容三)

(4)

参照

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