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理科教育における観察の機能に関する 実験的研究(第四報)

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86

理科教育における観察の機能に関する 実験的研究(第四報)

一水素の観察における観察方法の吟味一

自然科学教育研究室 高 野

§1.緒   言

§2,調査方法  (1)調査対象

 (2)観察方法の指示の与え方

§3.調査結果と考察  (1)観察記録の実例

 (2)得点分布に見出される差異  (3)各現象g)観察率に見出される差異

 (4)学業成績,知能指数,視力との相関に見出される差異 結   び

1.緒   言

 筆者はさきに,理科実験観察における申心的な機能の一つである観察の機能について,

児童,生徒,掌生を直接対象とした実験的調査と,その分析を行ってきた。すなわち,第 一報ではヨウ素の問題実験,第二報では水素の問題実験を設定し,これらの実験における 観察機能の分析を行い,第三報においては,水素の実験とヨウ素の実験における,観察機 能の性質の比較を行い,いくつかの結論をえた。

 第三報までの研究は,主として問題実験と観察機能それ自体についてなされてきたので あるが,本第四報からは,角度を少し変えて,同一の実験,すなわちこの揚合水素の実験 を被検者にさせるとき,異なる観察方法をとると,襯察結果にいかに影響するかという問 題を,小単生を研究対象として迫回してみたい。

 いうまでもなく,観察方法の問題は,観察力の養成のための指導法と,密接に関係す

る。この揚合,どのような観察方法が,最も現象の核心をついた,効果的な観察を可能に

するかという問題,およびすぐれた観察方法を,児童,生徒,学生の身につけさせるのに

適切な指導法は1どのようなものであるかという問題などが,重要な研究問題であろう。

(2)

      高 野;理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第四報)       87

そして究極の目標としては,観察において把握しておくべき,棚察方法の体系をうちたて ることを,あげなければならないであろう。本第四報は,その一つの試みとして,槻察方 法の変化による観察結果に対する影響の問題を,研究してみたものである。

 §2.調査方法

 (1)調 査 対 象

 茨城県西茨城郡岩闇町立岩間第一小学校,6年生103名(2クラス)および3年生52名

(1クラス),計155名。

 (2) 観察方溝の指承の与え労

 緒云にのべたように,本報においては,水素の実験を被検者にさせるとき,被検者を二 つのグループにわけ,各々異なる御察方法をとらせ,その織察結果を検討したのである が,異なる観察方法というのは,つぎのようなものである。

 一つは,第二報におけると同じ問題実験の与え方をする,自由な観察方法である。すな わちその要点は,「容量約20ccの試験管に,0. 1規定観酸約10ccを入れ,これに約19 の華状亜鉛を投入したときに現れる一連の現象を,できるだけくわしく観察して記録す る」という方法である。

 もう一つは,実験要領は上と同じであるが,この際,疑問形の文章を用いた観察方法の 指示を8項目与えておいて,観察させる方法である。6年生に指示した観察方法は,第1 表のようなものである。

       第  1 表

指示した水素の観察方法

(1)水素ガスの出ぐあいは,どのように変っていきますか・

(2)いろいろな泡の動き方は,どのようになっていますか。

(3)亜鉛から,泡がはなれるときは,どんなですか。

(4)試験管を傾けると,泡はどのようになりますか。

(5)亜鉛はだんだん,どのように変っていきますか。

(6)液面から上の方は,どんなですか。

(7)試験管の壁は,どのようになりましたか。

(8)試験管をふったり,軽くたたいたりすると,どのようになりますか。

 また3年生に観察方法を指示する揚合には,文章による抵抗を軽くするため,第2表の

ようなものにした。

(3)

88 茨城大学教育学部紀要 第六号

第  2 表

小学校3年生に指示した観察方法

︶︶︶︶︶︶︶︶ 12345678 ︵︵︵︵︵︵︵︵ あわのでるぐあいは,どのようにかわっていきますか。

いろいろのあわは,どんなふうにうこいていますか。

あえんから,あわがはなれるとき,どのようになりますか。

しけんかんを,ななめにすると, ?わはどうなりますか。

あえんは,だんだん,どのようにかわりますか。

りゅうさんの上の方は,どんなになっていますか。

しけんかんのかべは,どのようになりましたか。

しけんかんをふったり,かるくたたくと,どうなりますか。

 いずれも,現象そのものを指示したのではなく,実験操作と着眼点だけを,のべたわけ である。実際に観察させる揚合には,この観察方法を一度よんでやってから,とりかから

せた。

 以上の二つの観察方法によって,観察結果がどのように異なるかをみるのであるが,こ の揚合,二つの被検者グループをつかって,第三報におけるような,いわゆる Rotation metbodをつかうことは不可能である。なぜなら,観察方法は異っても,水素の観察と いう点では全く同じであるから。それでこの揚合は,同一教師によって理科を指導されて いて,構成も似ている二つのクラスを被検者にして,一方のクラスは自由な観察方法で,

他方のクラスは観察方法を指示して,勧察してもらったのであるJこのような調査方法を とったために,調査結果を比較検討して結論をみちびくときには,結論の信頼度を高める ために,特に明瞭な差異がみとめられる揚合だけを,結論としてとりあげるようにした。

また3年生一クラスについては,低単年ではどのような観察をするかを,しらべるために 被検者にしたのであり,低学年であることを考えて,上記のような観察方法を指示し説明

した上で,観察させたのであり,観察方法の指示をしない自由な観察はさせなかったの

である。

 なお観察時聞は,いずれの観察方法の場合も60分(しかし小学生なので,実質的には40 分以後は観察およびその記録が,ほとんど停滞する)であり,採点基準は第二報(茨城大 学教育学部紀要,第5号,100頁)にのべてある通りである。

§3.調査結果と考察

(1) 観察記録の実例

(4)

高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第四報) 89一

 観察方法を指示した工合,小学生の被検者はどのような観察をしているかを,個別的に みるために,実際の観察記録をあげてみる。6年前2名,3年生1名のものである。

 まず6年生の男子児童のものをあげる。視力は左O・8・右○,9である。指示した観察方 法の各:頃の番号の順に記録されている。   ・

 f(b 小さいあわが,ながれぼしのようにかたまって,どんどん上へのぼっていく・だんだんと ながれぼしのようにならないで,一つ一つ上っている。小さいあわが出おわるξ,もうすこし大きい のが,ぼこんぼこんと上へのぼっていくのがよく見える。かべにつきながら,すう一と上っていく。

 (2)大きいあわは,はやくどんどんのぼっていっているが,小さいあわは,ひとかたまりになっ て上っている。とちゆうでかべにとまって,上へあがらないで,すこしたってから上っていくのがあ る。小さいあわがまつしろになって上っていくのがある・大きいあわは,かたほうのかべのほうへよ って上っている。小さいあわは,ゆっくり上っていくが,大きいあわは,はやく上っていくのが多く 見られる。さっきよりは,あわが多くなって,だんだん,まつ白くなってきた。

 (3) あえんから,きゅうにはなれて,上へのぼっていく。

 (4) おわは全ぶ,かた方によって上っていく。小さいあわは,ぐるぐるまわって,またいっしよに かべのところにあつまって,とおっていく。

 (5)石にあおぬるがはったように,上がわが,みどり色になっている。あわがぎっしりついている ので,光っているみたいだ。上がわのねずみ色みたいのが,だんだん,はげてくる。そして中の白つ ぼい色が見えはじめた。下からの所がすなみたいのが,だんだん上へ上っていく。

 (6)のみみたいのが,上へぼんぼんと上っている。

 (7)転たまが,かべの所へ,べつたりとついている。かべのところにゆげで,きりが,はったみた いになっている。

 (8)一どにどっと,あわが上へ上がっている。上のあわはぐじゃぐじゃとまわっている。あえんが,

がたがたとうごいて,大きなあわや,小さなあわが,どっと,あわはまつしろくなって,上へ上がっ ていく。」

 同一現象の記録を,くりかえしたところもあるが,全体的になかなか整理された記録で あり,よいところを観察している。「ながれぼしのようにjや「のみみたいのが」などは いかにも小学生らしい表現であり,この被検者以外にも,かなりみられる例である。この 記録を,第二報にのべた採点基準によって採点すると,現象1,2,5,9,10,12,14,

16,18を見出していることになり,得点は9となる。後にものべるが,観察方法の指示に よ1) ,小単校6年生にも,このような高得点者が少なくなく出てくるのである。

 つぎは,同じく6年生の女子児童のものであり,視力は左右とも1.2である。

 「(1) 目にみえないほどの水素ガスが,一一・一・つ一つ上へのぼっていく。だんだん,たくさんでてき

たしきりゅう酸の中のあえんにも,小さなあわが,たくさんついている。だんだんあわがこまかくな

(5)

90 茨城大学教育学部紀要 第六号

ってきて,しまいにはきりのようになり,きりゅうさんが,だんだんあわのために白くなってきた。

けむりのようにあわがでたり,大きいあわになってでたりする・きりゅう酸の中のあえんには,大き いつぶつぶしたあわがついている・

 (2)あわの動さは,あえんから出たあわは,上に向ってでていき,大きいあわでも小さなつぶのよ うになる。みんな小さくなったあわは7上から下へ,下から上へとぐるぐるまわっている。上へ出る 時は,早くあがっていっても,下へくる時はゆっくりだ。IO秒おきぐらいに,大きいあわがぶくつと でて,上へいって小さくなる。あわがいつばいでて,牛にゆう色になってしまった。

 (3)あえんについていたあわは,あわができるとすぐはなれるのではなくて,しばらくついていて から,すっとはなれる。きりのようなあわは,すう一とはなれる。

 (4) しけん管をかたむけると,しけん管に平均してでていたあわが,下からは少しもでず,上から ばかりでる。かたむけてある下がわの方は,もうあわがなくなってしまう。あわがでても,きりゅう

酸は白くにごらず,あえんの所だけに大きいあわがたくさんついていて,今までのようなきりのよう なあわは,あえんの所だけにもやもやしている。

 (5)はじめは,あえんのまわりに,あまりあわがついていなかったけれど,少したつと,ぎっしり とあわがついている。あえんを少しうごかすと,すぐにあわがきえる。今まで大きいあわが多かった がラあえんについているあわは,だんだん小さくなってきた。

 (6)液面から上は,はじめは何の変りもなかったが,液面から1cmぐらい上った所に,あせをか いたように水てさがついている。その水てきのでき方は,一面にできているのではなく,丸くなって いる。水面のまん中あたりから見えるか7見えないかぐらいに,ふん水のように液がはね上る。

 (7) しけんかんのかべは,あせをかいたように,いくつもの水てきができている。

 (8ノ しけんかんをふったり,たたいたりすると,そのたびにきりゅうさんが白くにごる。あえん が動くと,あえんのまわりのあわが,きりのようになってしまう・ふるとそのあとから・きりのよう なあわが,けむりのように出る。たたく時は,一度だけたたくと,大きいあわがいくつもでてくる。

しけんかんをたたくと,今まできそく正しく上から下へ,下から上へとうごいていたあわは,形がく ずれて,もやもやになる。しけんかんの口を耳につけると,ごうごうと小さいけれど変な音がする。」

  この記録は,男子児童のものに比べて,一つの現象についての記述が長い。全体的に,

やはりかなりすぐれた観察記録といえよう。この記録を採点基準によって採点すると,現 象1,5、7,8,14,16,18を見出していることになり,得点は7となる。

  もう一つ,3年生の女子児童のものをあげる。視力は左右とも1.2である。

  「(i)一つばかり,すう一とあがっていくあわもある。ゆっくり,.れつになって,あがっていくの もあります。あえんのまわりに,大きいのや,小さいのがあがっていきます。けむりのように,ゆつ  くりあがっていくのもあります。しけんかんに,あわがくつついているのもある。

 (2) よろよろ,うごいています。しけんかんにくつついていて,うこかないのもある。こまかいあ

(6)

高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第四報)

わは,ゆっくりななめにうごいている。

 (3)小さいあわは,まわたのいとみたいにあがる。大きいあわは,ごむがきれるように,ばつんと あがります。ふつうのは,やっぱりふつうにあえんからはなれる。

 (4) あえんがななめになって,あわもななめになって,あがってから,よこにすこしあがって,し けんかんにくつついてとまっています。まんなかのへこんでいるところがらも,あわがでています。

みんな,しけんかんにくつついています。大きいのも小さいのも,みんなくっついてしまいます。

 (5) あえんのまわりのあわが,あがればあがるほど,あわがくつついています。

 (6) くもっています。くもみたいに,ねずみいろをしています。ちいさいあわが,いつばい上にあ がっています。

 (7)あわが,しけんかんにいつぽい,大きいのや小さいのが,くっついています。

 (8) あわが,ぐにゃぐにゃうごいて,大きいのも,小さいのも,うごいていました。」

 3年生には表現の適確さは,求められないであろう。しかし,観察していることは,な かなか鋭いものがある。この記録を採点基準によって採点すると,現象2,5,9,14,

36,18を見出していることになり,得点は6となる。

 以上の三つの例からも感じられるが,全体的に,勧察方法を指示した揚合には,指示し ない縞合に比べて,記録が整理され,よく現象を見出していることがわかる。

 (2)得点分布に見綴さ耽る差異

 6年生の二つのクラスをとり,一つのクラスは観察方法を指示して観察させ,他のクラ スは指示しないで第二報におけると同じ自由な観察をさせて,その各々の観察得点に,ど のような差異がみられるかをしらべてみると,つぎのようになった。

 まず観察得点の分布状態を第1図に示す。

      6年生についてみると,観察方法        第1図 観察得点分布

 %/2 34t、・6799/。 1,2の低得点都轍減している・

        観察碍粟

      3年生も,観察方法を指示してや れば,かなりの得点を示していることがわかる。

 つぎに,クラス全体の観察得点の平均値を比較してみると,第3表のようになる。

9i

(7)

・92 茨城大学教育学部紀要 第六号

第3表  平均観察得点(6年生)

\\け旨示しないi指示した断』台盤いi

陰体

!女/男

2. 15

3. 12

2. 62

}. 45

4. gon 2. S1

4. 23

4. 58

O. 85

1. 36

1. 75

方が得点が大きい(第一報から第三報にいたるまでの調査においても,

ていた)が,指示したクラスでは男子の方が大きく,逆転している。その逆転の程度も,

かなりいちじるしい。以上の事実から,つぎのようなことが考えられる。

 まず,観察方法の指示は,児童の観察を大いに促進し,非常に効果的であることであ る。しかも,指示した観察方法は,少し注意深い者なら指示されなくても十分気のつくよ

うな,ごく平凡な実験操作と着眼点についてだけのものであるにもかかわらず,大きな差 異をみせている。そして興味深いのは,指示したクラスの,指示しないクラスに比べての 特ちょうとして,最高点が大きく上るということはなく,低得点者が激減しているという ことである。これから推察すると,高得点をとるくらいの者は,この程度の簡単な指示で は,あまり大きな観察に対する促進にはならないが,低得点者の野合は,観察方法の指示 が,観察を行う上に貴重な役割を果していると考えられ都,だから,三二点者は,試験管 のいろいろなもち方や目のつけどころが不明であり,これに簡単ではあるが,実験操作と 着眼点を指示してやると,観察の仕方がかなりはっきりしてきて,観察が促進されるよう

に干せられる。

 このことから,観察力の養成にあたっては,観察方法を指示してやって,観察を促進さ せることは,非常に有益なことであって,特に観察力の低い者には効巣が大きいといえ る。そして遂には,このような観察方法の指示がなくても,自分でそれをもちうるように なることが理想であろう。

 つぎに男,女別の特ちょうについてであるが,これだけの調査から断定することはむず かしいが,女子に比べて男子の方が,観察方法を指示したために現れる観察得点の増加が 大きい。いいかえれば観察方法の指示効果が大である。…つ一つの男子児童の観察記録を みても,指示しない揚合と指示した帯下とでは,後考の方がずっとくわしく,またまとま りを示している。この男,女の特性の差異については,今後もつと多くの調査結果から,

吟味してみたいと考えている。

 ⑥ 各現象の観察率に見出餐れる差異

 水素の観察において観察し得る18の各現象について,その現象を観察し得た被検者は,

 全体の平均点は,指示しないク

ラスが2.62であるのに比べ,指示

したクラスは4.58で,大きな得点

差を示した。得点が一躍 L75倍に

なったのである。男,女別にみる

と,指示しないクラスでは女子の

       このことは一致し

(8)

高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第四報) 93

全体の被検者の何%にあたるかを,第二報同様,観察率とよぶことにするが・これを観察 方法を指示したクラスと指示しないクラスについて比較したのが,第2図である。

       第2図 各現象の観察率

IOO

観30 寡

牢60

Sto 40

20

循 孝 雅 斥

し し z

鎚︾ た

7       髭

   Ok−Lige一一wwt k s 67 s wo /1 ,? 一一W, 7X−Z) f4 /s一/6 f 7  Ztr

       蔑象番ξ

 第2図から,大体において観察方法を指示したクラスの方が・三三率は高いことがわか る(このことは,もちろん観察得点から推察される)が,その程度にはかなりの差があり また例外的には逆に低いものもある。

 この各現象の糊察率の,勧察方法の指示の有無による差異の程度をみるために・指示し たクラスと指示しないクラスの襯察率の比(R,)を求めてみた。それを第4表に示すe  第4表から,観察方法の指示効果の大きい,す

なわち瓦の大きい現象はラ現象1,6,8,10

11,裕,17などであることが理解される。

 この瓦の特に大きい現:象については,まず観 察方法の指示における各項の文章のいかんによる

ことが大きいのではないかと,考えられるCJ 8項 目の指示は,18の全現象の纏察にそれぞれある程 度の助けをするように,仕組んだわけであるが,

各項の文章の表現により,ある現象はよりょく見 出しやすくなり,また他の現 象はあまり助けにな

らないということがあり得るといえる。このこと について例をあげると,まず特に瓦の大きな現

第・表嬉殺誘蠣藻峨

i現象瀦lR,

至    44

現象番号i Rユ

       山.一..1

 正0    00 2    呈.4

3 e

  ll i 5.3

1.ttmamtrmttttmwwttttt umttttrmtnv l hrmtrmtfinvurt−tum i

  l2 1 O.5

4 e 13 e

5 12

6 21

互4    1.5

  へ じドコのド   り ア  ド  ミ

至5    一

7 O.9

8 i 5.3 9 1 1.1

16 6. 1

17 oo

18 i. 3

(9)

94 茨城大学教育学部紀要 第六号

象16(液面上部の壁面に水滴が散乱附着。)については,「(7)試験管の壁は,どのよう になりましたか。」という項目によって,もし指示がなければ水素の発生は液面下なので,

そちらの方にばかり注意をひかれていた者も,はっきりと着眼点を意識するようになり,

容易に観察しうるようになることが理解される。

 またやはりR、の大きな現象11(試験管を傾けると気泡が合体ナる。)については,

「(4)試験管を傾けると,泡はどのようになりますか。」という項目によって,実験操作 がはっきり示され,その操作をやってみれば難なく観察しうるようになることが推察され

る。

 それから瓦の小さい例であるが,現象12(長時聞経つと亜鉛の一部は黒化。)および 現象13(亜鉛の甲所が黒化,凸所は金属光沢。)の観察は,「(5)亜鉛はだんだん,どの ように変っていきますか。」という項目によって,より促進されてよいと考えられるが,

事実はそうでない。これは(5)の項目では,現象12,13のような亜鉛そのものの変化に気 ずかせるより,亜鉛に泡の附着する現象の方に,主な注意をよび起す結果になってしまっ ているものと考えられる。

 以上の外の現象についても,瓦の値の大小には,それぞれ一応の理由が考えられるの

である。

 つぎに,観察方法の指示をしたという点では同じの6年生と3年生とで,どのようなs 観察率における年令的差異を示すかをみるために,6年生と3年生の諒察率の比(R,)を 求めてみた。それを第5表に示す。

       第5表から,現象1,5,6,10,11,16,、7

第・表舞犠雛舞迅

      において,年令的差異が大きいことが理解され

序 1α・噸「引欝糠藁灘顔∴鰍評

さらに観察方法の指示の有無との関係もしらべてみた。6年生についての結果は第6表の

(10)

高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第四報)

  ようである。

 第6表から,勧察方法の指示の有無にかか わらず,学業成績(理科および全教科)との 相関はかなり高いが,指示したクラスの方 が,指示しないクラスより低いことがわか るuこの主な理由は,観察方法を指示する と,学業成績の悪い者も,実験操作や着限点

第6表 観察得点と学業成績,視力     との相関係数(6年生)

95

1\i指示しない1指示した

理 科

】全教科

十〇, 57 十 O. 41

男0.65,女0,49:男0.40,女0.42[

十 O. 57 十〇. 39

蜆双 十 O. 11 一一一 O. Ol

について手がかりをつかむことができ,その結果得点が相当大巾に上昇し,三三点者との 得点差を多少縮めることにあると考えられる。このことは,得点分布においてのべた,特 に低得点者に襯察方法の指示効果があらわれることと,符合するのである。それから相関 係数についての男,女の差の問題があるが,これについては,にわかに結論を出すことは できないことであろう。

 視力については,網関係数が非常に小さく,相関の存在が疑わしいといってよい。だか ら,極端に視力の悪くない限り,この種の観察を有効に行うには,視力そのものはあまり 関係がないといってよいと考えられる。

 つぎに3年生(観察方法を指示した)についての結果であるが,これを第7表に示す。

第7表 相関係数(3年生,  3年生の揚合も,6年生に大体似た結果であるが,学業成     指示した)

       績との相関が6年生より高い。低学年の方が高学年より,

rr/  ww一一一一一一Ti To一.6bun P

 全教科{  +α66

i知能指数じ+。.、48は卿幸艮の糠の際こおいてのべ簾実と〕致す 願力i一位2訓る覗力との欄カミ異常のようであるが,こ櫨たまた

I    l      lま,このクラスの成績優秀者に視力の弱い者が多かったこ とによるようである。

 以上から,児童の観察得点ば学業成績,知能指数,いずれともかなりの相関はあるが,

あまり高くはなく,勧察においては学業や知能とは何か異なったある能力が,要求される のであると考えられる。この点について,今後次第に明らかにしていきたいと考えてい

る。

 結   び

 以上は,水素の観察における勧察方法の吟味を,実験的調査によってなした結果である

が,今後はヨウ素の観察の揚合についても行い,また本報におけるものと異なった観察方

(11)

96 茨城大学教育学部紀要 第六号

法の指示についても検討し,比較したいと考えている。さらに,現在行っている実験的調 査の結果を集積していき,それをもとにして,次第に勧察力についての綜合的検討を行っ ていき,観察力の概念,実質,およびその指導法について,もっと結論を出していきた

い。

 終りにのぞみ,本研究は昭和30年度,文部省科学研究助成補助金によって行われたこと を記し,また実験的調査に便宜をはかられた茨城県西茨城郡岩聞町立岩間第一小学校長,

伊部庚子郎氏および同校職員の方々に,心から感謝の意を表する。なお実験的調査におけ る被検者の条件統制と結果のまとめに,筆者のi妻,高野みち子(上記岩聞第一小学校教 諭)の手をわずらわした。

 〔後記⊃ 本研究は昭和31年7月1日,日本理科教育学会,第四回関東支部大会(於茨城

大学教育単部,水戸市)において,講演発表してある。

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