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体育の社会学的研究課題 §文化社会学的側面の研究課題

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体育の社会学的研究課題

§文化社会学的側面の研究課題

体育研究室 大  西  国  男

Topics of Soeiological Research in physical Education

by Kunio Onishi

continue−Some items for studying Culture−Sociological prof童les〜a, b c) relations bctwcen personality system and physical education

16αグ盈∫ひ%勿〃3吻,M露o,1σ勿π.

0 30.1960

§文化社会学的側面の研究条件

(紀要9に続く)

皿 体育とパーソナリチィ体系

ω 体育と社会的性格

〈社会的態度の概念〉 文化と呼ばれるものは,社会的な要因が大きく作用するもので あり,かつまた社会の成立に重要な条件として働いているものである。そして文化はある 程度固定化したものと考えて差支えないものであると言う立場をとれば,文化もまたある 程度固定的な性格を持つと云うことができる。それに人間と言うものの性質は,生活の隅

々まで文化と呼ばれるすべてのものに重要な条件となり構造となって働いているものであ ると云うことが出来るのである。

このような面からパーソナリチィをとり上げて考えてみるとして,結局はその行動とし て現われるものく人々の具体的行動を観察することによって〉からまとめていく他ないの である。しかもその行動は,さまざまなものく観察のデータ〉が取り上げられるのであっ て,社会的行動を研究する場合には,客観的な立場において行われることが必須条件であ

@      ※

驍アとは勿論であるが,心理学の云う行動よりも,他人の行動に影響を与える行動と云う

点に重点を置いて論ずぺきものである。

(2)

個人(person)と個人の行動を規制する環境(environmcnt)の存在することを認める と,行動は個人と環境の相互作用のうちに実現するものであると考えることができるが,

環境は同一であっても,主観的な内的条件によって行動の変容を生ずる場合が起るのであ る。すなわち,客観的環境(物理的環境)は同一であっても,主観的環境(心理的環境)

の作用く知覚〉によって反応は異なったものとなる。行動の直接的意味は,主観的環境に よって認定することになるであろうが,この点では行動は反応によりく反応を観察するこ とによって〉判断するという立場をとっている。すなわち,客観的環境く刺戟〉に対して 反応く行動〉として観察するという視点に立つことかできるのである。

社会的行動を問題とするとき,重要なのは相互作用である。文化の系列として普遍的文 化(第一次的制度)〈絶対的,強制的なもの〉と選択的文化(第二次的制度)<相互的,

任意的なもの〉の二つの要素が認められているが,このような社会的意味の文化の圧力が 内在化されて・個々人の行動を規制する基礎的な力となっていることは,パーソナリチィ 形成における文化的期待として認めることができるであろう。(心理学的には,動機づけ

と云う観点から大きな強制的力として,この二つの形態が認められている)

ここに文化とパーソナリチィ形成の基本条件が存在していて,文化と人間形成の根本的 関連が生ずるのである。勿論文化とパーソナリチィで問題とするところは,観察の対象

となる一群の人々が,現実にどんなpersonalityであるかと云うことであり,理想像く理 想・価値・希望など〉として口にされたもの自体をさしてはいないのである。

commUllityや社会集団は,その成員にとっては自分の行動を支配したり統制したりし ているものとして考えられ,これは社会体系の構造を説明することでもある。一定の社会 集団の中では,成員は多少なりとも同質性を示すものであり,このことは多くの社会学者 によって一般的前提とされている。この同質性は,行動様式(Behavior Pattcrn)となっ

@      1)

トあらわれ,やがては人々の問題意識やイデオ・ギーやメンタリチィにも及ぶのである。

現代の心理学においても,人格と社会的行動は一・つの理論体系として取り扱うことを妥 当であるとしている。ことに態度の概念は,心理学の理論からも・教育学,社会学の理論 の各分野からも追求されている。

態度の概念に関する諸家の説によって要約してみると

{1)態度は常に特定の対象に応じて形成される。

② 態度は比較的に一貫した内部的条件であり,行為に方向を与える。

〈3)態度は経験によって作られたレディネスreadinessの状態である。

樹 態度は学習によって形成される。

態度の形成は外界との接触ということが前提である。従って,知覚や判断などの働きが

(3)

大西:体育の社会学的研究課題      217 礫的条件となる・上の鵬の如く・態度力・われわれの艦によって形成されるものであ

るとすることは,社会学的にまた文化的に条件づけることであることを意味するものであ る・勿論絶対的に固定された状態のものでなくて時により変容したり轍したりするもの

である。

今日において特に問題としている態度をま,社会的態度であるくすべての態度が社会的態 度であるとは言い得な・ 〉噺しい社会1・おけ噺い・燗」を目標とする翻ま,むし ろ日常生活において形成され学習される社会的態度を問題とする。

現代心理学は,轍一生活偽反応と・・うメカニズムから出発するものであり,この理 論樽によって考えると・態度は,行動そのものでなくて行動一の輔性であり,そテ動_

の先行条件であるといえよう・すなわち・態度は行動規定の條件であり,対象と関係し 方向を与える感龍向であり,レディネスの状態であって,学習により形成され出発する ものであると定義してよいと考える・特に社会的文化的要因&・よって条件づけられるとき は「社会的態度」とよぶのである。

行動は・外か獺察し記録するものであるが・態度は,そのもの自体としては観察耀 録もできない・すなわち態度は行動の予測のためにたてられる構成概念である.しかし,

実際にこの報の概念を用いて行動を説明し予測するときには,われわれはこの推論の過 程を逆にして「かかる態度をもって、・るからこのような行動をおこすのだろう」という論 法になる。しかも,心理学的な行動理論と社会学的な行動理論とがむすびつけられている いわば出合いの地点において推論〈行動の予測をする〉することが望まれるのである。

体育集団の構造と機能が独特の社会過程をもち,役割行動の特殊性を持つことについて は,すでに考察して来たところである・また鮪文化の側面におい拷える社会的意味の 文化の助は,パーソナリチ・形成の文化的鵬として粉に認める事のできるものを持

っている・体育の集団を規定する条件やく環境給めて〉役割〈船関係や行動特性〉の 加工によって頗の行動を支配したり統制したりするものが生まれ,多少なりとも同難 をもった行動様式のあらわれるのは当然の事となろう。

嬰文化としての翻醐にしても,その種脱自喋神体系によって生ずる規第Uが特 別の集団行動篠団内行動を勧Bずることはしばしばである.これにカ。えるに,社会的 影響力,マスコミの羅後援会や謙酬F用は,生活体の諸性質に変容牲じ,社会的 行動に対する動機と態度の潜在的な可能性をふくんでいると見ることができる。

鮪集団は選択的文化の麟を持つもの拷えられるが,この集団の顛性あるいは

特殊性は藻団頗相互がそれぞれ個人1・与える効果が大き聴で,頗相互の鰍的結

(4)

合と特殊的役割行動く社会的行動〉の関係1・立つものであると云う謙から記述すること ができる.この点からすると,個妖の集団を構成するための必要条件は「役割の体系」

におい鱒在するものであり藻団内1・おいて欄を分有する人々であること,集団内の 社会的役割が密接に結合していることが腰であるから詩続的な糀的性向を考えるこ

とができる.ここに一般化されたスポーツマンシ・プとしての態殿齪することカミでき るようになる。体鹸団の特殊的でありかつ選択的である文化醐待のうちにお・ て,体 散化として認知することの可能な音β分として鮪集団が示す唄性のある「燗の社会 的行動の雛」を瀾することができる・これは体育集団の社会体系・パー 凬潟̀ィ体

系,文化体系がそれぞれ「相互依存的,亦目墜透的」な関係にお・・て購することのでき る禰ないし価簾準にもとかて社会学的備要因磁えあげ,これに加えて生活体の 韻と社会的羅力とを併立させながら,鯖集団に鮪されたある・ 牒風こ共通の準 拠枠を導入して論ずぺきである。

個人の働雛を一人の特異な個人として説明するのでなくて,役割の鵬や,そ了蜘 分析及び行鯉論動機の目標指向性,轍の形成など心理学的・社会学的な関連におい.

て論証すぺき課題として研究すぺきことである。

@      *

ヲ心理学では,研究の必要に応じて醒縣不可能給め,躰の構変化すぺてを行動と呼ん

 でいる。

P)社会鞭とパーソナリチ,とのホ目互関連としてとらえはた社会体系の構造とノく幡ソナリチィ フ髄評行論的に轍して調しようとするのが,髄の社会学の傾向とな・ている・社会的 K範が鰍に人々の行動纈制するか,三つの可能な縮が考えられている・ ・賞罰力…報賞

ニ制裁2.心理的憾染一内部的な力にもと蠣示膜倣諌行3藻団効果,集団動…

 斉一性への圧力である。前掲,講座社会学第一巻P・88

ヲ喋団内働(。.対人働礁団効果)けループ(懇檬団)の働篠団働

(a.統制行動 b.非統制行動)と集団の行動を分けて述ぺている。

パー。ナリチ穏欲求とその処理,そのうけとり方についての個人的な特徴の総体)

性格(欲求とその処理に関する個人的な特徴)

能力(技能および知能)

気質(感情や情動のあらわれ方の特徴)

パーソナリチ,に含まれる行動傾向 習慣(欲求を満足させる一定の行動傾向)

  習性(いくつかの習慣の組合せ)体系社会 心理学浦博著,光文社1957

Q)全行為体系の統合とい。ても、それは実際には部分的で不完全なものにとどまり,パーソナリ

̀,,社会,文化の額素それぞれの「斉合性一の緊張」のあいだで,殖の「妥剛力宝おこな 墲黷驍フである.したが。て浸れらのいずれも院全なる」統合に近づくということはない゜

前麟座第一巻P.97(P・…n・T・1・・tt・Th・S・・i・I Sy・t・m・PP・16〜17)

参考 。児童心理学・田中熊次郎

。教育社会学・豊沢  登

(5)

大西:体育の社会学的研究課題       219

。行動の理論P.82.92.107(Parson, Gurvitch, Wiese, Lewin)同パーソナリチィの理論

(社会学講座第一巻)

。定義・西と東(W)−G,Heinze 体育の諸問題Objectives for Physical Education・

Movement Motivation and Meaning.体育とスポーツno.14 April I960

。文化人類学「第四章・パーソナリチィ」Ralph Linton・清水幾太郎他訳・創元社 1958

。社会学・福武 直著「個人と社会一社会体系,文化体系,パーソナリチィ体系」角川書店 1959

〈社会的性格〉 パーソナリチィの概念は,個人のもつユニークなものく各個人の個 性〉をさしてパーソナリチィと云う。社会的性格は,文化とパーソナリチィの関連におい て論ずるものであって,個性そのものをさすのではない。すなわち,共通の文化を享受し てそこから生れる共通の個性く共通の文化の中で人間となり,これによって共通に認めら 一れる行動としてあらわれるもの〉を問題とする。さきに社会と文化,文化と個人の立場か

ら個人の性格構造をめぐる問題を基礎とし,態度,行動,役割の概念に手がかりを置きな がら体育集団の性格構造に関する様相について考察を試みてきたつもりであるが,ここで はさらに「社会的性格」の問題を検討してみる。社会的性格の概念が意識的に取り上げら れたのは,アメリカ文化人類学の研究に始まるというから,社会的性格の概念は人類学的 であると共に精神分析学的な角度から構成されてきていると云うことができる。すなわち 個人の行動を文化的全体という基礎のもとに把え「人間領域」にこの問題の立場を置いた ものである。

近代社会では,同一人が矛盾しまた対立する多数の役割や置位において生活している。

然し,この異なった役割期待に対する選択に悩んだり,自己欲求との調節に苦しんだりす ることがあっても,多くの人々は与えられた役割期待を遂行し自己のおかれた社会的立場 に順応しまた適応して生活を送るのであって,反社会化もなくノイローゼにもならず,別 にパーソナリチィの分裂を生ずることもなくて複雑な適応能力をもっている。これが近代 のパーソナリチィと云うぺきものであろう。

社会的性格は,同一の社会的状況においてためらわず用意することのできる心的反応の システム〈集約的思考,感情,行動など〉であって,これが個人の社会生活を円滑にし社 会適応において個人の心的エネルギーの浪費をさけることになっているであろう。すなわ ち,これは外的拘束を内面化するく内面化の作業一拘束を拘束と感じない〉態度なり文化 活動であって教育,訓練,習熟の結果によって育成されるものであると見るのである。

社会的性格のなかみは特定社会の文化であり,集団の成員がもつ共通な性格であると述

ぺたが,これは個人の独自な自我や性格と区別すべきものであって,集合的価値く集約的

思考・感情・行動の標準的様式〉の文化であると云うことができる。従って,社会的性格

(6)

は一つではない〈なかみとなる文化が一つでない〉のであるから,具体的集団に対応しで 多数の相互矛盾や相剋が生じ,社会的性格のうちに内的な葛藤の生ずることを考慮に入れ るべきである。

このような意味からすると,社会的性格の役割は文化をメディアとして個人と社会の緊 張と敵対を緩和するものである。それ故に,社会もまたこの社会的性格によつて佃人の社 会的価値指向をなめらかに能率的に誘導し,その動的な均衡を保つことができるのであ る。この意味から社会的性格は安全弁となつているのであり,社会的性格なしには個人も 社会も,生活々動における緊張と敵対に費す莫大なエネルギーを他の生産活動にむけるこ

とは不可能であると考えることができるであろう。

      1)

ミ会性の発達に個人差の生ずることは勿論であり,社会性そのものが概念的,抽象的言 葉であるから,教育心理学や発達心理学の立場で論ずる場合には,児童観や人生観などと 関連して総合的〈全人的,社会的人間〉な存在価値において考えようとするものである。

すなわち人間は社会的存在であつて,その行動様式は社会環境との交渉や接触を通してそ れに対する適応の過程において学習されるものであると云うことになる。

社会性と社会的行動とは同義的に用いられる場合が多いが,これは単なる社会的行動と 云うのではなくて {1)社会的行動の原因となつているものく行動条件の中に内面化され ている社会的習慣とか態度の総体〉であり (2)社会的適応過程において習得された社会 生活によく適応する性質であると見るのである。

このような事柄を社会的発達の面でとり上げる場合は,イ)対人関係ならびに集団生活 に現われる行動特性の発達的変化 ・)社会関係に規制され習得されて行く行動の型 ハ)

文化的,社会的生活による精神生活の内面化過程などであつて,この点が研究の対象とな り課題となるのである。

教育の意義は,社会の持続と統一であり〈文化の伝達と内面化であると述ぺたが〉対象 は個人の独自なパーソナリチィの形成く個性は作られるものではなくて生かされるべきも のである〉よりも,個人の社会的性格の形成を当面の作業とするものである。体育の役割

もまた文化を伝達することであり〈社会生活に必要な知識・技能・態度〉社会的性格を形 成することである。文化的価値として内面化する作業であり,魂を作る技術である。しか も他の機能・組織・制度・社会的事象などよりも合理的に遂行することができるく明確な 原理や内容・方法・技術・組織などによつて知ることができる〉ものである。

体育も理論と技術と組織からなる体系であり,常に具体的な歴史的な存在であるからそ

の本質・目的・内容・方法・組織などは社会の一定の歴史的発達段階のもとで社会的諸関・

(7)

大西:体育の社会学的研究課題       221 係によつて合法的に規定されながら,これらの諸関係を独自な方法で反影するのであると 云う考えはさきに述ぺたとおりである。

個人の運動,仕事,作業能力の可能度が行動範囲を規定し,その範囲内において他の子 供と遊んだり興味のあるものに近づいたりして,自他の認識,対人関係の経験,自由的行 動の確立などがなされ,これが他人との交際,交信となり言語機能もこれに参与すること

にょつて次第に社会人としての意識や常識が構成され,また規範が内面的に構成されて来  ● るようになる。このように一方では集団における自己の位置を自覚し,社会化されて来る とともに他方においては個人の特性が明瞭になり,自我意識が確立し独立した個性が形成 されて来る〈個性化〉と考える。

@      2)

@この社会化と個性化の両面が,ともに調和的に発達することが社会人としての適応能力 を獲得することに他ならないのである。したがって社会的性格は単なる社会化とか人間関 係的な技術のみを意味するものでなくて,同時に個性化を含んだものと考えねばならない のである。

しかし社会的性格は,具体的には行動となつて現われるものであるから,社会性の発達 における具体的な行動の特性をとらえて行くことが必要である。この場合に,どんな角度 でどのような行動群をとらえるべきであるかが問題として残るのであつて,体育指導や身 体活動に対する研究の機会を投げかけ問題を提供してくれるものであると云うことができ

る。

      *

P)行動様式は,主体と環境の相互作用によって形成される。各人の社会性の発達には個人差のあ ることは当然であるが,個人差の問題を社会性の発達を規定する条件との関連において考えると 次の如くである。主体的条件(体形と気質,遺伝的条件,身体的特徴,運動能力,学業)環境的 条件(経済,家庭く社会的階級〉社会経験,リーダー)

2)社会的適応能力についてドルDol1, E・Aは ①自立(食事,着衣などの基本的習慣の自立)

②運動能力(行動範囲に関係する) ③コミュニケーション ④作業または仕事の能力(道具使 用能力) ⑤自己指導⑥社会化の領域でのべ,吉田専吉氏はこれを修正して①自立②対人関 係 ③言語,常識 ④仕事,作業,運動の四つの角度からとらえ,社会性はこの四つの領域が基 礎となって発達すると述ぺている。松田岩男・新体育,1958,6号

参考 。教育社会学,清水義弘,東京大学出版会

。前掲,社会学講座「パーソナリチィ論」

。前掲,文化人類学「第五章,パーソナリチィ形成における文化の役割」

。体育とスポーッ,April.1960

<体育と社会性> Pcrsonality(入格)の倫理的価値概念が「性格」characterの価 値的意味をもつようになって来ているから「人格」という言葉に一義的な価値的意味をも

たせないで「パーソナリチィ」の原語をそのまま用いているのが普通のようである。

(8)

このように用語の上の混乱を来たしていることを考慮に入れるべきであるが,用語に関 する統一と理解は欠くことのできない要件であるから,ここでは用語の整理を個性と人格,

社会性と社会的性格の関係において考え,そして個性と社会性,人格と社会的性格の関係 で認めて行くことにする。

学校が文化を伝達する機関として成立したものであり,学校に固有な文化形式と社会的

.  規範を構成することについては,さきに論じたところである。而して休育も文化であり特 殊な教育文化,体育文化として認識され社会的規範を作り上げているということを認める ことができる。然しこの集団における人間関係や社会的性格は自然のうちに価値ある形成 を期待できるとは言えないのであつて,素朴な自然主義く自然が人間を形成し,自然こそ 優れた教師である〉が,教育の実践にあたってどれだけの価値を持つものか甚だ疑わしい

ものであるといわねばならない。

ここで吾々は自然的力と社会的力の合流するところく社会的性格の形成に働くさまざま な力〉において体育を見きわめる必要がある。この点で個人的自発的側面と社会的組織的 側面において観察すべきであって,体育はこのような立場に最も適合した教育的意味を持 つことができるものである。すなわち前者は自然的要因であり後者は社会的要因である。

社会の要求する一定の価値,態度,信念,知識さらに技能などを個人が自主的に自発的 に獲得して行く過程〈能動的〉と,性格として植えつけて発達させる過程く受動的〉が相 互に対立しあってパーソナリチィ形成の相補う手続の二様相を認めることができる。前者 は学習過程であり心理学的概念に立つものであり,後者は教育過程であって社会学的概念 の立場で考察されるものであろう。

体育活動とその集団内の具体的個人,集団内成員の人間関係の力学を分析することによ って,個性と社会性は具体的な行動において統一されることがわかって来る。体育はこの 点で社会性の指導を民主的態度や人間関係におき社会的性格の形成に導かんとするのであ

る。

民主的態度や人間関係の学習指導は,グループ学習や集団指導の形態において行われる のがより効果的である。民主的態度のく意識・心構え・行動〉必要は,民主的改善く集団 の構造化の過程を明らかにすること〉や,相互協力く相互依存関係や成員間の関係をより

よくする社会的技術を身につけること〉や,個性を伸ばすく個人の能力を養うこと,伸展

を妨げないように所属社会の構造をかえて行くこと〉などにある。また人間関係の指導に

おける必要は,個人や集団の相互関係や成員間の結合関係や集団の構造化において考える

事柄である。精神体系の文化としてスポーツマンシップをとり上げてきたが,そこに含ま

(9)

大 西:体育の社会学的研究課題       223 れる倫理的価値概念にたつさまざまの態度や行動は,体育のもつ社会的性格として現われ たものと云うことができるであろう。

社会性指導の目標を具体的に把握するためには,自然発生的な集団(子供の遊びの集団)

を対象として研究するのが有効であって,この研究の結果において資料が蒐集されそれに 基づいて知的体系が確立すれば,そこに原理や法則が明らかになり,社会性や人問関係の 内容についても明確な定義を下していくことができることになる。

目標が具体的にならないことは,知的体系が十分に確立されないからであり,目標が具 体的でないから当然指導過程や指導法が明らかになってこないのであって,学習効果も上

らないと云うことである。

この研究にあたっては,質問紙法よりも行動観察法がすぐれ,行動観察法も観察技術が 進むにつれて実験観察法を採用する方がより有効であろう。体育集団の場合でも集団指導 の観点を明らかにして行くことが必要であり,集団の構造を要素的にわけてそれを観点に して指導して行くことが大切である。いまここに集団の共通目標,同志感情,領域,位置 役割,秩序,リーダー,ルールをあげて見るならば,すなわちこれを観点にして具体的に 集団を指導することができるのである。

共通目標を持つ成員は集まって集団を作るが,その目標が抽象的であれば集団行動はあ いまいになり,目標が確立されていると集団行動は具体的になるのである。この目標が集 団成員相互の手によって作られたものは,すなわち民主的な集団構造を作るが,他の権力

による場合はこの集団は専制的な集団構造を作るのである。

同志感情は集団の「われわれ感情」と云うぺきものであつて,目標の設定は集団を構成 するようになるが,集団の持久力や維持力は成員の結合度によるもので,これこそ同志感 情の高まる程強くなる。

領域が互に認められている時は,集団は安定している。すなわち個人が身体の周囲に自 己の領域を持つように,集団もまた自らの集団に領域を持っている。そこで互に他人を信

じ他の集団の領域を認めているときは安定しているが,一方が他方を犯すときは抵抗や葛 藤を生ずる。

位置役割や任務の分担は集団内成員の分節をうみ,役割行動の期待が生れ成員の異質化 が生じて来る。

秩序は集団成員が互に優劣を理解することによって確立して来る。集団内に不安定性が 生じて来る原因は,この秩序の不確立によることが多くあげられる。この事実からしてつ ねに全体的統一性をもつためには,不安定から安定への働きに期待することになろう。

リーダーは集団が組織的に構造化していく過程においてまず現われる。而してルールは

(10)

集団としての目標達成の過程に現われ,その集団の見透し性の発達や聡明さを示している ことにもなるのである。

従来経験にのみたよってきた社会性や人間関係の指導も,集団構造や人間関係を分析解 明するほど,これまでよりも一層具体的にしかも科学的性格をもって進めていくことがで

きる明るい見透しを与えると云うことができる。

(2) 遊戯集団の社会的行動

       一 q遊戯集団構成の文化的因子〉 子供達がさまざまの場所で交渉し接触するところには 自然と社会関係く小供の社会〉が生まれる。そして「遊び」の欲求を中心的動機として集 団を作るのである。

このような立場で考えるとき,子供の社会では社会的交渉のメディアとなるものが遊戯 であると云うことに異論を持たないのである。遊戯の本質を「目的のない活動く活動する こと自体が目的である〉と云う点で特色をもつ」とする一般的な考えもあるが,しかし,

この点には多少の矛盾が残るであろう。即ち子供達にとつては「いつしょに遊ぶこと1が 重要な目的となるであろうし,また,遊戯が集団である限りにおいては,そこには集団特 有の欲求や考え方や価値判断など遊戯集団におけるグループモラルが存在するのである。

また,遊戯によつては心身に休息を与えるよりはむしろ疲労をもたらし,あるいは欲求 以上の活動を要求するものも存在すると云う点について考えて来ると,遊戯の性質から

イ)目的の有無 ロ)結果への無関心 ハ)疲労と休息と云うような事柄についてのみ問

@      1)

閧ニしてとり上げただけでは不十分である。

然し,子供達には遊戯の他には生活がないと云つても過言でないのであるから,遊戯活 動二生活々動となるのであって遊ぶことは生きることを意味すると見て差支えないであろ

う。それ故,若し遊ぶことを拒まれるときは生きることを拒まれると云うことにもなる。

遊びの生活は子供社会の生活となり,その組織や秩序か遊戯集団のなかに生じて来る。

しかも遊戯の集団では成人のおしつける目的は受け入れられず,自由な自発的活動の媒 介のもとでなされる交渉関係によってのみ成立すると云う特色をもつものであるから,遊 戯集団または子供の社会の中にパーソナリチィ形成に大きな役割を果す主要な場を特つと 云うことができる。

子供の社会の特質が子供の社会的発達段階によって異なるものを持ち,この研究課題と してそれぞれの段階における社会関係,社会過程,構造機能などに関する部面とそれらの もつ教育的意義の部面にわたって検討することがあげられる。

2)

「子供の発達段階」については児童心理学や社会心理学の論ずるところであるが,それ

それの発達段階のもつ特性がその時代の子供の社会の特性であるから,この時代の遊戯集

(11)

大西:体育の社会学的研究課題      225 団が持つ秩序に服することが子供の生活には必要なことであり,それが絶対的意味を持つ のである。而して,そこで社会的性格が形成され形成して行くところに教育的意味が生ま れるのである。       

家族社会以外に感情や欲求や行動の意欲を満足する場所を求めようとする自然的な行動 から生まれるものが友人との親密な交渉であって,そこに生活の広い範囲に及ぶ社会関係 が生ずる。所謂,青年後期における「友情」などはこの時にここで培われるのである。

また,集団構成には物的条件も必要である。これには近隣地域と建物(神社,寺院,空 地など)遊具,石,木などを集団構成の基地とするであろうが,これらの範囲は子供の発 達段階によって異って来る。やがて附近の公園,川河,林,建造物,空地とその範囲を拡 大し広い近隣地域と自然物や人工施設を基礎として集団の構成がなされるようになるので あって,野球をするだけの広さをもつ空地がなければ野球遊戯集団は構成されないのであ る。このように,遊戯集団は物的状態によってきわめて大きな影響をうけると云うことも 云える。これは遊戯に対する環境の影響と云う問題を提供するものである。即ち自然的環 境,人工的物理的環境く環境が文化を生み,文化が環境を作り,それを調正しさまざまな 様態を生む〉は遊戯の種類や性質に影響を及ぼすものである。

〈遊戯集団の社会関係〉 さきに遊戯集団の構成で触れたように,社会過程,社会関係 の何れの特性も子供の発達段階によって検討することができる。

個人的遊びの時期を過ぎると近似性を基礎にして結合行為が現われ,行動形式は全体的 に共通性をもつものであって,子供達の行動様式の相似性が形成される。近似性を基にし た遊び仲間は崩壊してはまた生まれるのが普通であるが,農山村のような地域,環境によ

っては永続することも多い。       9

Rし,決定的な社会性を現わして来るのは中期児童期と云われている時期である。成人 たちよりも友人との社会生活や感情生活が社会関係の中心的位置をしめるようになるので あって,ここに注目すぺき社会関係の特性をつくりあげる。そして,それに対して成人と の社会関係が一方で破綻の傾向を示すようになる。この時代における社会的不適応 ma。

ladjustmentの原因は,この場合における対成人の社会関係と対仲間の社会関係とが相勉 するところに起るものであるといって過言でないとされている。

後期児童期の社会関係は所謂プレイギャングと云われるものによって代表させることが できる。これには指導者,秘密保持,刑罰が集団関係を維持させる基礎となっているもの であって,集団の構成は近似性をもち同質で水平的構造である。そして社会関係は縦の社 会関係をもつ私威主義的構造へと顕著な変容を示すようになって来る。即ち子供の社会で は実力(腕力)の社会法則がより強力に進行するのである。

(12)

226      茨城大学教育学部紀要 第十号

指導者の出現は,同質グループにおいても水平構造をもった社会集団においても見られ

るのである。この指導者の出現がきわめて重要な意味を持つのであって,研究課題の重点        

もここに存在する。指導者の存在が上下の関係く権威主義的な社会〉の成立を生じること は否定できない事実であろうけれども,然し,指導者と云うものは本来は民主的社会集団 に自然発生的に生じた構造機能の負担者であり推進者遂行者であると見るぺきであるとす

る点に注日すぺきである。

遊戯の集団が望ましい社会的な行動様式を発展させるに価値あることは周知の事実であ るが,然し時として望ましからざる社会的行動の温床である事についても考慮すべきであ る。活動そのものが調和のとれた発展を阻害したり,本来ならば調和のとれた身体的発達 を望むぺきものが,成人の強制や圧迫から過激な運動や過度の競争意識をもつことによつ て身体の発達をゆがめあるいは破壊し,心身の解放からほど遠い緊張感のもとにゆがんだ 社会的動機から生まれる反社会的行為と結び付くことだってあり得るのである。

従って遊戯の社会性は,そのこと自体に価値ありとすべきものでなくて,社会的価値を 生むべき努力を必要とするのである。この点に教育的意味の存在するゆえんのものがある のであって,一定の方向を与える〈教育的意図を加える〉ときにはじめて遊戯の価値が生 ずるのである。即ち教師,保護者の指導によって社会的価値が決定されると見るべきもの である。社会的性格を育成せんとする指導の機会は多いのであるが,一般にはその主なも のはチームゲームズにおかれている。

このチームゲームズは,遊戯や競技であるが,これには明らかに絶対的なルール(規定)

があって参加者はだれもこの範囲を出ることを許されない。このことは定められた一つの わくの中における行動をレ留・に指導するかと云うことが対象になる。しかもこの一定のわ く内における各人の行動目的はチームの勝利という共同目的に直接結びついているのであ るから,この意味にかなった合理的な行動でなければならないのである。チームを勝利に 導くための合理的な行動,態度というものは問題意識の発達や生理的,知的な発達から見

て十分可能であり満足される時期〈児童の発達段階〉からみて,何れの段階が適当であ るか,また主要な位置を占めるのは何れの時期であるか検討すべきである。

遊戯の遊びの発生過程から観察すれば,伝達と伝承の連続であって現実の遊戯指導は遊 びの形式的移行の域を脱し得ないのではないかと云う点で問題を持っているようである。

このような与えられた行動の枠内において社会的行動を指導しようとするとき,そこに児 童の発達的特性の問題が起らざるを得ない。

さきの競技指導が,その発達段階からみて児童後期以降にその社会的性格指導の重点を

置くことが妥当であるように,後述の遊戯指導は競技指導に及ぶ過渡期のく低学年から高

(13)

大西:体育の社会学的研究課題      227 学年への〉社会的性格指導に重点が置かれるようになる。

このような立場を考慮に入れながら実際指導に臨むとき,道徳的問題意識と自発的活動 への期待が,行動の抑制や放任に陥り,ことに低学年では自己中心的傾向の強いときであ るからの故をもって,集団活動における行動の抑制が主なる指導の位置を占めてしまう。

この点の反省として自発的活動に期待したもっと自由な立場で十分活動し得るような指導 が考えられなければならない。

一定の枠内においても,社会的性格の育成が波状的に輪になって次第にその範囲を拡大 し,やがて社会の秩序となり道徳となり行動,態度,知識の基となるところに指導の根幹 がある。この意味から児童生徒の道徳的発達過程の把握を実験観察し,これを指導の手が かりとするとこ.うに社会的性格指導の主要な点が存在するのである。

      管

P) フリードマン(Bertha B・Friedman)「活動に関連する情緒的テンシ・ン(tention)がないこ とにその特質を見るぺきであり,情緒的テンシ。ンをおこさないひとつの根源として,活動が

「自分の意志で自由に行われる」という点に注目すべきである云々。前掲,教育社会学P.98 2)①初期児童期(3才〜6才)②中期児童期(7才〜ll.12才)③後期児童期(12才〜14才)

参考 。社会学者は子供達が成人になってからの生活準備として遊戯に大いに関心をもっているが これは子供が遊戯で習得した特殊技能が成人に持ち越されることでなくて,遊戯から子供 たちが社会化し同志的感情の意味を理解して集団内での自分の役割を見出し,協力や適応 や対立の意義を学ぶ「Brown, F, J,;Educational Sociology・1947」大学保健体育理論 P.158,東京教学社・1960,大学体育P.22,体育の科学社。1954

。前掲,教育社会学・豊沢 登著

(3) チームゲームズの社会的行動

すでに集団と人間関係についての考察において知るように,チームにおいて取り上げる べき事柄に人間関係とグループモラル(集団内の自発的凝集)についての問題があった。

すなわちチームの成員は「われわれ」意識によってチーム自体の共通目標をめざして統一 ある立場で行動し,チームと自己を同一視するようになるのである。ここに親愛の情や相 互依存の関係が生まれ,チーム内の成員は親和と相互協力的な活動を持つにいたるのであ る。このことは高いモラルのもとにある程強力になるのであってモラルの低い程この田題 は微弱となる。

〈チームゲームズの協力形態〉 チームゲームではこのような人間関係のもとにチーム

の勝利に向って協力活動が行われるのであるから,チームの成員はそれぞれ役割を分担し

相互に協力しながら自己チームの目標に向かって湛進するのである。すなわちチームの目

標である勝利とフェアープレーの気持のみが成員の沌粋な気持であって,そのためにゲー

ムのル・一ルが守られ成員の行動,態度の価値体系か確立されるのである。このような状況

(14)

がチームにおける成員相互の協力と信頼の和合を生むもとになるのであって,この人間関 係がヂームの為に自己を没却し成員相互がおのおのの役割を分担して十分その責を果たす ための努力をするのである。チーム成員が相互に信頼するところにチームゲームの本領が あるのであって,そこに親和と協力の人間関係が生まれる。しかも実際にチームゲームの 場面において勝利のためにはこのような関係が絶対的に必要なものであると云うことを身

をもって学ぶのである。

チームの特殊的,選択的集団としてのモラルは成員の自発的凝集によるものであるか ら,対立や従属の関係は起り得ないとすぺきであろう。すなわちチーム成員間の結合感は 深いものを持つと云うここである。殊にチームの目的が具体的に勝利の目標と連なってい る場合においては,目標の発展に積極的な態度と行動をもって臨むのであり,それ故に集 団の凝集はますます強固になりしかも暗黙のうちに相互協力の必要を認め,互に理解をも ってチームを安住の場所とし,更に自己がこのような状況のもとではどのような態度や行 動をもって臨むぺきかの必要から自発的な自己形成の機会を持つようになる。これは成員 自身がチーム内における自己の必要を自覚し,しかも協力的な関係の必要を自覚すること によって相互に社会的性格の形成に働きかけんとするものである。

人間の社会性発達に就ては次の二面に分類して考察することができる。すなわち①自己 中心的立場であり,ここには自己表現が欲求として現われ自己誇示と競争の場が展開して 来るようになる。これは独立を求め自律自営の性格に発獲するものであろう。また②他者

中心的な立場があり,ここでは集団参加が欲求として現われ,協力と和合の場が展開して 来るようになる。これは信頼を求め相互協力の性格に発展するものとなるのである。この 二面が統合され融和するところに,健全なる社会的発達を期することが出来ると云うもの

である。

チームゲームの場には約束の成立があり,これは社会生活の規範と同様にゲームを行う ためのルールである。楽しい生活を送り楽しく遊ぶための欲求の現われである。集団の構 成人員が多くなるとこのような必要はその欲求と共に増大し,チーム自体の一種の雰囲気 を形成して来る。チームとしての行動の二面で,社会的性格の考察を試みる必要を認める けれども,チームの協力形態として,成員の役割自覚とチーム構成の過程,社会的性格形 成の過程はチーム自体の雰囲気として察知することができるのである。一歩踏み込んでそ の内容を探るときその形態をかもし出す基本的な条件は,リーダーの性格によるものであ る。すなわちリーダーの性格がチームのムードを形成し,チームにおける協力形態を決定 し,チーム内個人の性格及びチームの性格を決定すると云つて過言ではあるまい。

すなわち,イ)専制的く自発性,独立性をもち自己決定性をもち分裂し易い〉・)民主

(15)

大西:体育の社会学的研究課題      229 的〈和合信頼性をもち,協力的になる〉ハ)放任的く相互に連繋のない集合となり,全体       も

フ活動不安定で強い協力形態を失う〉のような形態において考察することが可能であつて チームゲームにおける社会的行動の方向を暗示するものである。

〈運動文化(ゲームの形式)と社会的行動〉 チームゲームにおけるゲームの形式の分 類から見て人間関係くチームワークと人間関係〉の分類を考えることが出来るとすれば,

教材として用いる各種のスポーツの指導管理に目的に配慮の必要が起る。この場合に吟味 してみなければならない問題点には,体育活動における人間関係の問題,社会学的・社会 心理学的な側面からの人間関係の問題などがある。これらの問題を検討することにより,

ゲームの形式によつて期待できる社会的性格の面で体育計画のねらいをうち立てて行くと き,教材として用いる各種のスポーツに教育的みのりを達成できるのである。

次に掲げるいくつかのゲームの形式によって,そこに生まれる社会的行動体系がいかな る発達をなすものであるかに関して,研究の課題を提供することができるであろう。すな わちネツトをへだてて一人,二人で一つの球を中心に嫉技するテニス・ピンポン・バドミ ントンの競技形式,同じく六人,九人一組になって競技するバレーボールの競技形式,完 全なチーム形式をなしボールーつを中心として両チームが入り乱れて競技するサッカー,

ラグビー,ハンドボール,バスケットボール,ホッケー,アイスホツケーなどのような競 技形式,一方のチームが攻撃i側に他のチームが守る側にたって競技するべ一スボールやソ

フトボールのような形式の競技をとり上げることが出来る。体育集団が特殊的集団であり,

体育集団独特の一般化された共通の社会的要素を持つものであって,かつまた個々のチー ム独自の社会的要素をもって夫々異なったパーソナリチィの基準を有するものであると云 うことが出来るから,上述のようなゲームの形式においても,体育的集団活動として一般 化されたパーソナリチィを体育文化とすることが出来るが,猶かつ夫々独自の運動文化に

よって培かわれるそれぞれ独自の文化体系としてのパーソナリティの形成を見ることも出

来る。

以上は主として球技の競技型についてとり上げてみたのであって,すでに述べたように 球技における協力形態として,助力形態,合力形態,協力形態を考え,そこに生ずる相互 関係,社会性,人間関係の面について態度,行動,身分役割の分担に対してその特徴を十 分分化し,全体の活動の安定を期す\きである。

〈チームとリーダーシツプ〉 われわれののチームの雰囲気がリーダーの性格に負うと ころが非常に多いことについては前節に述ぺたのであるが,リーダーシツブとその集団内 の人間関係との間には密接な関連の存在するものであり,すなわち①専制的リーダーを持

つ集団では,上下の関係が重視され,成員の要求は無視されがちで常に欲求の不満が起り

(16)

集団のモラルは低下して不安定な集団となる。②民主的リーダーを持つ集団では,リーダ 一に対する信頼と相互扶助があり;成員としての誇りと団結心を持ち集団としての高いモ ラルを維持することが出来る。③放任的リーダーを持つ集団では無秩序に陥り集団として の協力形態を失うばかりでなくやがて集団の機能を失うに至るとも考えられる。集団内に

@        ※

ィけるリーダーの機能をいかに遂行して行くかによって集団内の人間関係の様式が規定さ れ,チームの協力形態とチーム及びチーム成員の社会的行動を規定することができる(※

イ)集団活動の調整 ロ)行動の範 ハ)集団の代表者 二)賞罰の執行など)

運動クラブもまた同じ目的を持ち同じ運動を愛好するものL集団である。従って成員の 多くは共通性をもち技術をのはそうと努力する。しかもクラブ発展と目標遂及のために,

彼等が相互の間に決定した公式的人間関係の組織(部長,副部長,マネ・一ジヤーなどの役 割分担の決定によって生ずる上下関係の人間関係による組織)によって能率的,効果的ク ラブの目標達成が可能であり,満足するものであるとする場合が多い。然しクラブ組織の 中に先輩,後輩の関係を導入し専制的な主従関係が強化されるようになると,成員は技術 の練習にのみ没頭することが当然のように考えて来るのであって,やがて専制的な運営に 甘んじあるいはそれが当然の事であるような錯覚に陥いる。そしてそれが,運動クラブの 伝統のようなものを造り上げる。

運動クラブに多い以上のような専制的クラブであってもなおかつスムーズにクラブの運 営がなされるのは,クラブ成員が運動を愛好し技術の向上を願うがためである。

クラブがその機能を発揮し,運動技術を磨くのに最も効果ある状態は,クラブ成員が内 的均衡を感じ,人間関係を民主的で協力的な雰囲気に置くときであって,その時クラブの モラルは高められ,強力なクラブとして安定した活動が期待されるのである。クラブがチ 一ムゲームズのクラブであるときは,このような人間関係を形成するための努力こそチー ムワークを形成する基礎でもある。このとき成員達は全力を傾注して技術の練習に励むご

ともできるのである。(末完)      

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