教員養成大学における「家庭科教育法」および
「家庭教材研究」の講義について
岩 崎恭 枝
(1984年11月5日受理)
は じ め に
、
u家庭教材研究」「家庭科教育法」とも多くの問題をかかえている。その指摘はこれまでもなされて きた1)カ㍉全体的な実態が明らかにされたことはなかった。そこで,本研究では,「家庭教材研究」およ び「家庭科教育法」の講義について,各大学の実態を明らかにするとともに, 「家庭教材研究」および
「家庭科教育法」の担当者がどのように講義をおこなっているのか,またどのような問題をかかえてい るのかを明らかにし,検討してみた。
1 調査対象者および方法
以上のような目的から,国立の教員養成大学において「家庭教材研究」および「家庭科教育法」を担 当している教官を対象に,郵送によるアンケート調査をおこなった。調査時期は,1983年2月から3月 にかけてである。調査の内容は, 「家庭教材研究」 (以下,教材研究)および「家庭科教育法」(以下,
教育法)ともに,まず大学の実態として,①開講クラス数,②1クラスの学生数,③時間数,単位数,
④担当教官についてたずね,次に各担当者あてに,①使用テキストの有無,②授業の構成,③実際の授 業をみせるかどうか,④実習・指導案・教育機器についてとりあげているかどうか,またどの程度か,
⑤模擬授業を行っているか,⑥小教専とのかかわり,⑦教材研究とのかかわり,⑧現在の問題につい て質問した。
皿 調査結果の概要
1.調査対象者数
表1 調査対象者数および回答者数 および回答者数
調査対象者数 回 答 者 数 表1は.調査対象者数および 専任 非常勤 専任 非常勤 合 計 有効回答数である。調査対象者 教材研究 92 11人 73人 6人 79 人(76.7)
教育法 55 9 39
241 (64.0) 数は,全国の教員養成大学53大 学に対して「教材研究」および
表2 性 別 「教育法」の担当教官数をたず
教材研究 教育法 ねた回答からひきだしたもので 男 6 人 2 人 ある。回答のあった大学は45大
女 72 37
学であった。
無回答
1 0102 茨城大学教育学部教育研究所紀要17号(1985)
表3 年 齢 表6 回答者の専門分野
2.大学の実態
教材研究 教育法 教材研究 教育法
20代 5人(a3) 4人(98) 食 物 10人(127) 2人(49) 1)担当教官の属
30代 21 (2a6) 12 (293) 被 服
13 (16.5) 6 (14.6)性
40代 20 (253)
6 (14.6)「教育法」担当者
50代 19 (241)
14 (34.1)住 居
88 (1α1) 2 (4.9)は,40代が約15%と
60代
13 (16。5) 5 (12.2)児 童
6 (7.6) 3 (7.3)無回答
1 (1.2) 0 (0.0)家 族
3 (3.8) 2 (4.9)少なく,年齢別にみ
0内は% 家庭経営
6 (7.6) 3 (7.3)るとひょうたん型に 表4 大学での各担当の経験年数 教 育
39※1(4.4)31※2(756)
なっている(表3参照)。無回答
5 (6.3) 0 (0.0)また大学での「教育
教材研究 教育法 0内は% 法」「教材研究」担当
3年以下
20人(25.3) 7人(17.1)※111名は他の専門も の経験年数は,10年
3〜10年 30 (380) 20 (489) ※27名は 未満の者が約3分の 10年以上 27 (342) 14 (340)
一
無回答
2 (2.5) 0 (0.0)2を占めている(表4参照)。
0内は% 小・中・高校での教育経験は, 「教材研究」「教育法」担 当者ともに約3分の2の人があると回答している(表5参照)。
表5 小・中・高校での教育経験
しかし,あると答えている人が, 「教材研究」担当者の場合 教材研究 教育法 ないと答えている人の2倍弱なのに対し,「教育法」担当者 有 50人(6a3)
28人(68.3)の場合は,2.5倍強であり,しかも,経験年数の多い人の比 5年未満 23 11
5〜10年 6 3 率が高くなっている。
10〜15年 8 4 「教材研究」 「教育法」とも,家庭科教育を専門とする者 15〜20年 5
5 が担当するのが望ましいが,「教材研究」においては,約半 の20年以上 8 5 数,「教育法」においても約4分の3にとどまっている(表 無 27 (342)
11 (26.8)6参照)。また,約3割の人は,どちらの比重が高いのかは
わからないが,他の専門とのふたまたをかけている。
無 回 答
2 (22.5) 2 (4.9)2)担当教官数
O内は% 表7は,「教材研究」「教育法」の担当教官についてみた
表7 担 当 者
a) 教材研究の担当教官 b) 家庭科教育法の担当教官
専任教官数
12 3 4
56 7 専 任 55
大 学 数 23 11
52
1 2 1非 常 勤 9
このうち家庭科
ウ育担当者が1 ア大学教官 3
名以上はいって
「る大学数
18
74
20
1 1イ短 大 0 盲
ウ 同 0
非常勤講師数
12 工 中 6 釜委託 1名
大 学 数 9
2オ 小
1 1一 〃 1名
実地指導講師として部分的に マ託している大学数……7校
15
タ地講師 2名
表8 「家庭科教育法」をとる学生たちのクラス編成 ものであるが,実地講師として部分的に委託している 大学が数校あることは,注目に値する。
クラス編成 同一クラスに
自由に別々無回答
3)時間数,単位数
大 学 数 23
19 3「教材研究」では,2単位とする大学がほとんど 自由に別々のクラス編成であっても (42大学)で,これを半期30時間で行う大学が28大学,
教官が1名で担当している大学……14大学 通年60時間で行う大学が13大学あった。
200
P90卜180
170 ・i iii ii
160 P50 P40 P30
P20 P10P00
10
0 i : : l l i2(16) ・3(7)…4(3)…5(2)…6(7)i8(2)i8)舗器クラス数
図1 開講クラス数と1クラスの平均学生数
※( )の中の数は大学の数
104 茨城大学教育学部教育研究所紀要17号(1985)
「教育法」では,3あるいは4単位とする大学が38大学であった。
4) 「家庭科教育法」をとる学生たちの「教材研究」のクラス編成
表8に示したように,まったく自由別々といえる大学は5大学であり,ほとんどの大学では「教育法」
をとる学生達は同じ先生の講義を受けているといえる。
5)開講クラス数と1クラスの平均学生数
「教育法」に関しては,開講クラス数を必修だけどして回答した大学と必修・選択あわせて回答した 大学があり,結果に疑問が生じたので省略した。1クラスの学生数は,50名という大学が1大学あった が,それ以外は33名以下であった。
図1は,「教材研究」に関して,横軸にクラス数を,縦軸に1クラスの平均学生数をとり,相関をみ たものである。平均学生数が100名を超えている大学は17校(約38%),90名以上となると26校(約58%)
で,約半数の大学は80名以上のクラスといえる。また,2クラス開講の大学では,ほとんどの大学で平 均学生数が100名以上であるのに対し,開講クラス数が8クラス以上の大学では,平均学生数が80名以 下となっている。開講クラス数と1クラスの平均学生数の間には弱い相関があるといえよう。
3.講義の内容 表10 とり扱っている内容
教材研究 教育法
1)使用テキストの有無
eキストの使用状況は, 「教材研究」で約 家庭科教育の歴史 42人(532) 34人(829)
半数,「教育法」では7割であった(表9)。 〃 目的・目標 57(72.2) 37(9α2)
一一
2)講義でとり扱っている内容 〃 本質 42(53.2) 30(73.2)
表10は,講義でとり扱っている内容の一覧 〃 教材内容 67(84.8) 33(80,5)
表である。複数回答なので,人数はその項目 〃 教具 26(32.9) 20(488)
をとり扱っている教官の数を,また()内 〃 教育方法 57(72.2) 27(65.9)
の%は対象者のうち何%の人がこの項目をと 〃 教育評価 38(48.1) 25(61.0)
りあげているかということを示している。 〃 問題点・課題 50(63.3) 31(75.6)
「教材研究」では,教材内容,教育方法, 〃 施設・設備 23(2a1) 16(39.0)
目的・目標,問題点・課題,歴史,本質,教 教師像 11(13.9) 16(3ao)
科書・指導要領・指導書の順で,約半数以上 〃 資質 13(16.5) 15(36.6)
の人がとりあげている項目である。 〃 指導案 35(44.3) 34(829)
「教育法」では,まず9割の人が目的・目
教科書・指導要領・指導書 46(58.2) 22(53.7)
標についてとりあげ,以下,歴史,指導案,
消費者教育 19(24.1)
10(24.4)教材内容,問題点・課題,本質,教育方法,
諸外国の実態 11(13.9)
7(17.1)表9 使用テキストの有無 教育実習 6(7.6)
7(17.1)教材研究 教育法 就職の問題 1(1.3) 2(4.9)
有 36人(456)
29人(7α7)教育機器 16(2α3)
13(31.7)無 39(49.4)
12(29.3)その他 16(20.3)
12(29.2)無回答 4(5.0) 0(0.0) 無回答 10(12,7) 3(7.3)
O内は%
()内は%表11教育機器についてとりあげているか 教育評価,教科書・指導要領・指導書の順で約半数 以上の人がとりあげている項目である。
教材研究 教育法 とりあげている項目数は,多い人で12項目,少い
は い
38人(4&1) 25ぺ61.0)人で4項目であった。また, 「教材研究」は半期で
VTR
18 15 あるのに対し,「教育法」は通年であるところが多 16.8ミリ 13 13 いので,とりあげる項目の比率が「教育法」におい スライド 22 16 て高くなっているのは当然といえよう。
OHP
30 20 指導要領・教科書のなかではほとんどとりあげら その他※ 10
3れていない消費者教育について,4分の1の先生が いいえ 35(443) 12(2a3) とり扱っている。
無回答
6(7.6) 4(9.7)その他のなかで書かれていたのは,実習,実践記
0内は% 録の比較,男女共修の問題,模擬授業,教材研究,
※ コンセプトフィルム 見学などであった。
ル_プフィルム 3)教育機器について
総合的に 教育機器についてとりあげている人は,「教材研 究」では約半数,「教育法」では約6割であった。
表12 実際の授業を見せるか OHPは,どちらでも,教育機器についてとりあげ ている人の8割がとりあげていた。そのほか,約半 教材研究 教育法 数の人がとりあげているのは,「教材研究」ではス は い 26奨329)
21ぺ51.2)ライドだけであるのに対し,「教育法」では調査に
小・中学校にいって
11 17
あげた4種の機器すべてを半数以上の人がとりあげ
VTRで 11 9 ていた。
160γ8ミリで 3
2また,教育機器そのものとしてはとり扱わないが,
スライドで
】04 教材研究の発表や模擬授業等の中で使用する学生も
いいえ
49(62.0) 17(41.5)いるというコメントが2・3あった。
無回答
4(5.1) 3(7.3)4)実際の授業をみせるか
0内は% 実際の授業をみせるかどうかについては,「教材 研究」では3割, 「教育法」では約半数の人が は 表13 指導案をとりあけているか い と答えている(表12参照)。 はい の中の項目 教材研究 教育法 に対する回答は,複数回答である。 「教材研究」で
は い
48曳6α8) 37復9α2)は,曜璽はい と答えている人の約4割が小・中学校
書き方の説明 28 23 へ参観にと答えているのに対し,「教育法」では約 比較・コメント 25 23 8割となっており,高い比率を占めている。
5)指導案についてとりあげているか
たてさせる 27 31
指導案については, 「教材研究」で6割, 「教育
その他 6
2法」で9割がとりあげており,かなりよくとりあげ
いいえ
26(32.9)2(49) られているといえる。特に,「教育法」では,とり
無回答
5(6.3) 2(4.9)あげている人の83%は,学生に指導案をたてさせて
0内は% いると答えている(表13参照)。
106 茨城大学教育学部教育研究所紀要17号(1985)
表14 実習をさせるか
更璽
ヘい のサブ項目は,複数回答としたので,この3つにすべ て○をつけた人も多くいた。
教材研究 教育法
は い
38人(481)8欠1a5) 6)実習をさせるか
実習をさせるかどうかについてみると,「教材研究」では喝璽は いいえ
36(45.6)29(7α7)
い いいえ 半々なのに対し,「教育法」では はい は「教材 無回答
5(6.3)4(9.8)
研究」の半分以下の2割となっている(表14参照)。
0内は% 「教材研究」の中で行われている実習は,食物と被服に関する
表15 模擬授業をさせるか ものがほとんどで,それ以外には,体温の測定,住空間・空間環 境調査という2項目があった。食物,被服に関する内容は,ねら 教材研究 教育法 いから,およそ3つに分かれ,1つは,小学校の教材をとりあげ,
は い
19 24.1)26 6a4)
具体的につかませ,理論と技術を一致させるもの,2つは,小学 いいえ
55(69.6) 13(31.7)校の教材にはとりいれられていないが,教材研究としてとりあげ 無回答
5(6.3)2(49)
ているもの,3つめは,被服の内容に多い,特に男子学生を対象 0内は% とした基礎技術の向上をねらいとしているものである。また模擬 授業の中で,あるいはグループ研究の発表の中で実習が含まれることもあるという回答が5名あった。
「教育法」の中でも,人数は少いが,ほぼ同じ傾向がみられた。
7)模擬授業をさせるか
模擬授業については,表15からわかるように,実習とは反対に, 「教材研究」では約4分の1の人が,
「教育法」では6割の人が模擬授業をさせている。 ・
「教材研究」の中での模擬授業は,およそ時間が足りないからだろうが,1〜2・3回,指導案作成 の発表の一形式としてなされているというのが多かった。これに対し,「教育法」の中では,教材研究 と指導案,その発表としての模擬授業というのが多かった。
実習および模擬授業は,あとに述べるように,設備の問題学生数の問題等から,やりたいけれども やれないと回答した人もかなり多くみられた。
8) 「教材研究」の「小教専」とのかかわりについて
「教材研究」と「小教専とのかかわりをどのように考えていらっしゃいますか」という自由記述の質 問に対し,44名(56%)の人が回答してくれた。
「教材研究」と「小教専」とのかかわりをほとんどの人が必要と考えているようである。たとえば,
以下のような意見である。
小教専は,家庭生活に関する専門教育
教材研究は,小学校家庭科に直結した内容とし,指導法等を含める。
小教専は,教科指導に必要な専門的能力を育てる。
教材研究では,その専門的認識を根底におきながら,教育として子どもの関係において,いかに教科指導を展 開すべきかを本質論・具体論の両面より検討する。
教材研究は,教育法の基礎として,小教専は教科の背景になる科学の体系を教えるものとしてとらえていま
す。
香川大では,小教専を履修したものが,教材研究を履修するようにグレイドをもたせ,小教専での知識を素材 として,教育内容をどう誇さえるか,教材としてどう編成するかに,教材研究としては重点をおこうとしてい
ます。
小教専では家庭科教育が基礎とする学問分野を概論的に診さえ,教材研究では,教育内容の教材化のレベルに 「
焦点をあてる。
更に,家庭科教育の全体がつかめるような澄さえ方をする。
「小教専」と「教材研究」のかかわりを,以上のように「教材研究」担当者は考えている人が多くみ られたが,担当者個人のこの考えが学科全体の意見なのかどうか,また,具体的な方策があるのかどう かはわからない。しかし,なかには「教材研究」と「小教専」を一本化して行っているという大学もあ
った。
本学では,教材研究と小教専を一体として有機的に扱っている。
圏