65 函医誌 第28巻 第1号(2004)
編 集 後 記
本誌は、昭和52年5月に第1巻第1号が出版されて、
その編集代表者である阿部政次氏は「編集後記」に次の ように記載している。すなわち「これだけの病院で独自 の研究誌のないのは恥」との自負心から出発し、「今後ま すます各科の連絡を密にし協力し合い、補い合って総合 病院としての機能を十分発揮し、名実共に道南の基幹病 院として、学問的にも精進を重ねて欲しい」と抱負が述 べられている。以来28年、本誌は綿々として多くの職員 に支えられ、その主旨に沿って継続され、相当の役割を 果たしてきた。しかし、ここ数年頓に投稿論文数の減少 が目立ち始めた。この背景に近年の医療・医学環境の急 激な変遷があり、ここに本誌発行の意義は再評価される べき時が来たことを痛感させられる。
医学界は、新しい時代のニーズを専門医制度の定着と 捉えて、それに向けて整備を急ピッチで進めている。国 もまた、これまで単に各種学会認定であり個人的・学術 的価値に過ぎなかった認定医・専門医資格を、診療報酬 算定要件として浮上させて医療の効率化を図る方略とし て利用するに至った。こと「函館医学誌」など地方病院 単位で発刊する学術誌において、この流れから受ける影 響は大きい。専門医・認定医には業績としての論文が審 査される。この論文は、掲載雑誌が指定され、それ以外 には評価されない規則になっている。したがって、同じ 発表するなら、中央のこうした雑誌を選択したいとのモ チベーションが働き、その分だけ病院誌は投稿が躊躇さ れることになるという悲哀の構図が生まれている。
一方、医療界は今、改革の嵐が吹きまくっている。医 療費抑制政策は、病院の合理化とともに医療者一人ひと りの労働過重を余儀なくさせている。これに患者意識の 高揚は、「説明責任と医療の透明性」への要求をエスカ レートさせて、医療者の精神的および肉体的余裕を奪っ てしまっている。この結果、多くの職員の寸暇は、学術 活動の好機とはならず、逆に無為の時間と化してしまい がちになる。こうして病院のシステムとして備えるべき 学術振興策は形骸化して、業績は偏に個人的な価値観と 意欲にのみに依存し、また転嫁されることによって衰退 の一途を辿ることになる。
かつて小生は、本誌第20巻において、「生涯にわたって 医療に従事しようとするものは、自発的努力により、自 己発展を目標とした継続的学習が求められている。しか し、病院の維持発展を単に個人的努力にのみ帰してよい はずはない。責任ある立場の者にあっては、その業績を 正当に評価することにより、しからざる者との間に生ま れる差異を妥当なものとする必要がある」と述べた。今 再び職員に評価の意義が問われようとしている。この手 法によって職員が質の高い論文を競って排出し、その内 容が世間からふり向かれるようにならなければ、「函館 医学誌」が将来ともに生き残る道は閉ざされるのではな いかとの危惧を禁じえない。これは偏に小生だけの杞憂 であろうか。
(小澤正則記)
函 館 医 学 誌
第28巻 第1号
平成16年8月20日 印 刷 平成16年8月31日 発 行
発 行 者
長 谷 川
正編 集 者
編 集 委 員 会
(代表 小澤正則)
発 行 所
市 立 函 館 病 院
0 函館市港町1−10−1 電 話 (0138)43−2000 FAX (0138)43−4434(事務局)
印 刷 所
有限会社共立印刷
(デジタルシステム部)
0 函 館 市 吉 川 町 6− 6 電 話 (0138)43−7650
041‐ 8680
040‐ 0077