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使役動詞の小節補部について

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(1)

使役動詞の小節補部について

田 中 智 之

0. 序論

本稿では,、迂言的使役動詞(periphrastic causative verb)であるmake,

get,haveが,それぞれどのような種類の小節補部(small clause complement)

を選択しうるかについて詳しく調査し,小節の範疇と意味という観点から,そ れに関する説明を試みる。まず1節では,使役動詞以外の動詞の小節補部の例 を用いて,小節の範疇と意味の関係がどのようにとらえられるべきかを考察す る。次に2節では,1節で得られた結論を,上記の3つの使役動詞の小節補部 に適用してみる。その中で,それぞれの使役動詞の選択する小節補部の問には,

有意義な意味上の違いが見られることを指摘する。そして3節では,その違い が,Jackendoff(1983,1990)における語彙概念構造(lexical conceptua1 structure,以下LCS)に基づいて表示されたそれぞれの使役動詞の意味から 導かれると主張する。4節は結論である。1

1.小節の範疇と意味

Stowell(1983)は(1),(2)の例に基づいて,小節の述語の範疇が動詞に よって選択されていると主張した。2

(1)a. Iconsider [Ap him honest]

b.*Iconsider [pp that sailor off my ship by midnight]

(2)a.*Iexpect [Ap him honest]

b. Iexpect[pp that sailor off my ship by midnight]

1      (Kitagawa(1985:211))

Stowel1によると, considerはAP, expectはPPをそれぞれ選択しており,それ を説明するためには,小節の範疇が(1),(2)に示されるように,述語の投射 でなければならないとしている。それに対して,Kitagawa(1985)は,その

(2)

選択特性が全く逆になっている(3),(4)の例を挙げ,動詞による小節の述語 のc選択(c−selection)は存在しないと述べている。

(3)a.*the doctor considers [畑that patient dead by tomorrow]

b.  unfortunately, our pilot condiders [PP that island off the route]

(4)a. Iexpect [!田that man dead by tomorrow]

b. *I expect [PP that island off the route]       (ibid. :212)

Kitagawaによると,(1)一(4)の事実を説明するのはc選択ではなく,次に 述べる動詞による小節のs選択(s−selection)である。即ち, considerは状態

(state)を表す小節を,そしてexpectは状態の変化(change of state,以下CoS)

を表す小節を選択するとしている。3

確かに,動詞による小節のs選択があることは事実であり,(1)一(4)に見 られるように,stateとCoSは,両者ともAP, PP小節として具現されるよう である。しかし,NP小節に関しては,両者の間に違いが見られる。

(5)  Iconsider [NP John a fool]

(6) *Iexpect [NP you an attorney by the end of the year]

(Contreras (1987:230))

(5)と(6)の対比は,CoSではなくstateのみがNP小節として具現されるこ とを示しているが,このことはKitagawaのようなs選択のみを仮定する分析 の下では説明されない。また,この事実は決して恣意的なものではなく,NP という範疇の特性を反映していると考えられるので,それを何らかの方法で原 理的に保障する必要があると思われる。

以上の議論から,considerはAP, PP, NP小節として具現されるstateを s選択し,expectはAP, PP小節として具現されるCoSをs選択することが 分かる。この事実を説明するために,Chomsky(1986)に従って, c選択は s選択の規範的構造的具現(canonical structural realization,以下CSR)か

      ・

逑アかれると仮定する。この考えに基づいて,小節に関しては,(7)のCSR

を設定する。

(7)a.CSR(state)=AP, PP, NP

b.CSR(CoS)・=AP, PP      (cf. Endo(1990:34))

(7)が与えられれば,considerはstateを, expectはCoSをそれぞれs選択す ると語彙部門において指定することにより,(1)一(6)の事実は全て説明され

(3)

田中:使役動詞の小節補部について         123

る。

ここでは,Endo(1990)の方針に従った(7)のCSRから一歩進んで,過去 分詞を主要部とするVP小節の事例も包括しうるようなCSRを提案する。ま ず,expectと同様にCoSをs選択するneed, wantは, VP小節を取ることが 出来る♂

(8)Ineed/want [vp this watch repaired immediately]

(Quirk, et al.(1985:1207))

(8)から明らかなように,過去分詞を主要部とするVP小節は,典型的にCoS の意味を持つので,stateを表しえないと考えられる。ところが,次の文は文

法的である。5

(9)a.John considered [the incident unclosed]  (Endo (1990:35))

b.we found [the village deserted]   (Declerck(1991:459))

(9a)の過去分詞はいわゆる形容詞的受動分詞であり,範疇はAPであると考

えられる。さらに,Quirk, et al.(1985)によれば, find,1eave等の動詞の小

節補部に含まれる過去分詞は,かなりの程度形容詞的であり,状態的な意味を 表していると思われる。以上の議論が正しければ,(7)のCSRは次のように

改訂される。

(10)a.CSR(state)=AP,PP, NP,(VP)

b.CSR(CoS);AP,PP,VP

2.使役動詞の小節補部

本節では,前節で独立の動機付けを与えられた(10)のCSRを用いて,使役 動詞の小節補部に関する選択特性を詳しく調べてみる。そのためにはまず,そ れそれの使役動詞の選択する小節補部の意味が,stateかCoSのどちらである のかを明らかにする必要がある。Baron(1974)によれば,使役動詞構文とい うのは全体として,ある時T1における事態Xが,ある力(または,動作主か 別の事態)Zが介在することによって,T2にかけて事態X に変化するという 意味を表す。このように,使役動詞を含む文はそれ自体状態の変化を含意する ので,その小節補部の意味がstateかCoSのどちらなのかを判断するのはかな

り困難である。しかし,詳しく見てみると,それぞれの使役動詞が選択する小 節補部の間には,はっきりとした意味上の違いが観察出来る。

2.1.Make

(4)

まず,makeの小節補部の意味を明らかにする際に手掛かりとなるのは,次 の事実である。

(11)the army will make [冊you a soldier]  (Baron(1974:308))

(11)のようにmakeがNPを主要部とする小節を取りうることは,(10)のCSR に従えば,makeがstateを表す小節を選択することを示している。そして,

このことは次に述べる4つの証拠から支持されると思われる。

1つ目の証拠は次の文の非文法性である。

(12)a.*the provost made [pp the students out of his office]

(Baron(1974:308))

b.*the therapist made [pp his patient into the chair]

(Baron (1977:11))

(1),(2)から明らかなように,PP小節の中でも,特に方向を表すPPを 主要部とする小節は,典型的にCoSを表す。そうすると,(12)のようにmake がそのような小節を選択出来ないことは,makeの小節補部がCoSではなく,

stateを表すことを示唆している。実際, PPを主要部とする小節で, stateを 表すものであれば,makeに後続することが出来る。

(13)a.what makes[pp you in such a hurry]

b.they have destroyed almost all that made [pp Germany of value to the world]       (Jespersen(1940:18))

第2に,makeが取りうるVP小節は,すべて形容詞的な過去分詞,もしく はそうでない場合でも,stateの意味を持つ状態受動態(statal passive)で あることが挙げられる。

(14)a.you should make [your views known]

b.you must make [yourself respected]  (Hornby(1975:75))

c.King John made [his name feared by everybody in England]6

(Declerck(1991:459))

このことは前節で見たように,stateを選択するconsider, findにも当てはま る特質である。そして予測される通り,makeは明らかにCoSを表すVP小節 を取ることが出来ない。(即ち,動作受動態(actional passive)とは両立し

ない。)

(15)a.*Imade[冊Mary examined by John] (Giv6n(1975:67))

b.*the Greek Sinon made [vp the horse brought into Troy]

(5)

田中:使役動詞の小節補部について         125

(Baron (1977:75))

同様の結論を支持する3つ目の証拠は次の(16)の例である。

(16)*the Mafia will make [Ap Alonzo dead by the end of this

month]         (adapted from Baron(1974:319))

(3),(4)から分かるように,deadという形容詞は, by句を伴って典型的 にCoSを表す小節の主要部となりうる。従って,(16)の非文法性はmakeが CoSではなく, stateを表す小節をs選択するということを示唆している。最 後の証拠として,次の例について考察する。

(17)John made[Ap Marsha miserable for two hours]at noon today

by telling her that she looked like Phyllis Diller(Geis(1973:212))

Geis(1973)によれば,(17)に含まれる継続を表す句for two hoursは,小節 を修飾している。一般に,継続を表す句は状態的な命題のみを修飾しうるので,

(17)に含まれるmakeの小節補部は状態的な命題を構成する,即ちstateを表 しているということになる。

以上の4つの証拠から,makeが選択する小節補部はstateの意味を持つと 結論付けられる。また,rnakeの小節補部がAP, PP, NP, VPという4つの すべての範疇として具現されるという本節で観察された事実は,この結論及 び(10a>のCSRの帰結として説明される。

2.2.Get

Baron(1977:92)は,(18)の小節補部が状態の変化という概念を表層に 具現したものであると述べている。

(18) get [PP your dirty shoes off the table]       (ibid.)

即ち,ある時T1においてon the tableであったものが,別の時T2にかけて off the tableという状態に変化したことを表しているのである。本節では,

方向を表すPPを主要部とする小節に関するこのBaronの観察に従って, gef はmakeとは異なり, CoSを表す小節補部を選択すると主張する。

まず,次の(19),(20)について考察する。

(19) a.   the provost got [PP the students into his office]

b. ?*the provost got [PP the students in his office]

(20) ?*what gets [pp you in such a hurry]

(19)の対比から分かるように,getは方向を表すPPを主要部とする小節

(典型的にCoSを表す小節)を選択しうるが,位置を表すPPを主要部とする

(6)

小節(典型的にstateを表す小節)を選択することが出来ない。また,(20)は

(13a)のmakeをgetに置き換えたもので,非文法的である。これらの事実は,

getがstateを表す小節とは両立しないことを示している。

さらに,(18),(19a)に見られる,明らかにCoSを表すPP小節に加えて,

getはCoSを表すAP小節も選択することが出来る。7

(21)please get[畑our room ready immediately](Baron(1977:147))

この事実は,stateを表す小節を選択するmakeの例(16),(17)と対比をなす。

また,getが選択するVP小節には, makeの場合に見られたような意味上の 制約はなく((14)一(15)参照),次の例に含まれるVP小節は明らかに動作受 動態の意味を持つ。

(22) a.let s get [vP our photograph taken]

b.can we get[vp the programme changed] (Hornby(1975:76))

従って,この事実も,getの選択する小節補部はmakeとは違って, CoSの意 味を持つという結論を支持するものである。

以上の証拠から,getはCoSを表す小節を選択すると結論付けられる。これ が正しいとすると,getの小節補部のc選択特性,特にNP小節を取りえない

という(23)の事実は,(10b)のCSRから自動的に導かれるのである。

(23)*the army will get [Np you a soldier]   (Baron(1974:308))

2.3.Have

まず,次の2つの例について考察する。

(24)the arrny will have[Np you a soldier in two months]

(25)the provost had[pp the students out of his office in ten minutes]

(Baron(1974:308))

(24),(25)に見られるように,haveは, NPを主要部とする小節と方向を表 すPPを主要部とする小節の両方を取りうるという点で,一見矛盾した選択特 性を示している。なぜならば,make, getの議論から明らかなように,前者

の小節は典型的にstateを表し,後者の小節は典型的にCoSを表すからである。

ところが,以下に挙げる3つの証拠から,haveはstateとCoSの両方を選択 しうることが分かる。

まず第1に,(25)のような明らかにCoSを表すPP小節と並んで, haveは

(26)に見られるように,stateを表すPP小節も選択しうる。

(26)a.1 dlike to have [pp you with me]  (Radford(1988:359))

(7)

田中:使役動言叫小節補部について         127

b.he has [pp his brother in the army]  (Palmer(1988:167))

第2に,同様のことがAP小節についても観察出来る。

(27)the Mafia will have[Ap you dead by the end of this month]

(28)a.Iwon t have [Ap you moody all the time]

(Radford(1988:359))

b.we have[A。 two employees sick](Quirk, et al.(1985:1197))

(27)においては,形容詞deadがby句を伴って, CoSを表す小節の主要部と なっている。それに対して,(28)に含まれる小節は明らかにstateを表す。

第3に,Quirk, et al.(1985)は次の(29)の文が曖昧であることを指摘

している。

(29)the guard patrol had [vp two men shot]

a.The guard patrol caused two men to be shot.

b,The guard patrol suffered the loss of two men by shooting.

(ibid.:1207)

Quirk, et al., Hornby(1975), Baron(1977)等多くの言語学者の用語に従

えば,(29a)の解釈はhaveの使役用法(causative use)で,(29b)の解釈は haveの結果用法(resultative use)を表している。使役用法では,主節の主 語が動作主(agent)であり,それが補文の表す命題内容を引き起こすという 意味になるのに対して,結果用法では,主語が経験者(experiencer)であり,

補文の表す命題内容によって主語自体が影響を受ける(affected)という意味 になる。Quirk, et al.によると,結果用法の場合の動詞haveは状態的な意 味を持つが,その小節補部自体は典型的に動的(dynamic)な意味を持つ(即 ち,CoSを表す)。従って,(29)の小節は,いずれの読みにおいてもCoSを表 すことになる。      

しかしながら,haveの選択するVP小節の中には, stateを表すものも存在

する。

(30)the car has [vp its roof damaged]

a.The car suffered damage to its roof.

b.The roof of the car was in a damaged state.

(Palmer(1988:167))

Palmer(1988)によれば,(30)は(30a)に示される典型的な結果用法の解 釈に加えて,その小節補部が状態受動態である(30b)の解釈も持つ。後者の

(8)

解釈は,広義の結果用法の1部で,Quirk, et al.がhave存在文(んαひθ一 existentia1)と呼んでいるものに相当し,その場合には, VP小節補部がstate を表すのである。故に,haveが選択するVP小節もstateとCoSの両方を表 すことが出来ると言える。

本節の議論を要約すると,今述べた3つの証拠から,haveはstateとCoS の両方をs選択出来るのであり,そのうちの前者は,have存在文と呼ばれて いるものに相当することを主張した。このhaveの二面性と(10a, b)のCSR が与えられれば,全ての範疇の小節を取りうるという本節で見たhaveのc選 択特性は,直ちに説明されるのである。

3.使役動詞の意味と小節

前節では,様々な証拠に基づいて,makeはstate, getはCoS, haveはstate とCoSの両方をs選択することを主張した。そして,独立の動機付けを持つ

(10)のCSRとこのs選択特性によって,使役動詞の小節補部のc選択特性

(どのような範疇として具現されるのか)を説明出来ることを見た。本節では,

なぜそれぞれの使役動詞がそのようなs選択特性を示すのかを,使役という概 念,及びLCS表示に基づくそれぞれの使役動詞の意味に着目して解明する。

3.1.使役という概念について

まず,使役(causation)という概念は, Baron(1974)では次のように定 義されている。

(31)Causation ls a relationship between two states of affairs (X at

time Tl,X at time T2)and a cause Z which provides the

necessary conditions for effecting the change from X to X . More precisely,

a.Zis the cα召s20f the change from X to X . b.The transition from X to X is a cαμsα伽θαc診ごoπ.

(加cんoα材oθηθ88;Baron (1977))

c.State of affairs X is anのθcごor rθ8αZ古.    (ibid.:299)

つまり,原因(cause),起動性(inchoativeness),結果(result)の3つが使 役という概念を特徴付ける重要な意味的側面である。まず,(31c)の結果とい う意味的側面は,使役動詞の種類に関わりなく,補文に(として)具現される と考えられる。一方,(31a)の原因という側面は,(32a, b)のように,文主

L

(9)

山中;使役動詞の小節補部について         129

語や動作主主語+by句で表されることもあるが,(32c)のように,動作主主 語のみが表層に現れ,残りの部分は省略されるのが普通である。

(32)a.George s shooting the gun at the elephant caused the elephant to die

b.George caused the elephant to die by shooting the gun at it c.George caused the elephant to die     (Giv6n(1975:60))

そして,この原因という意味的側面の具現のされ方も使役動詞の種類に関わり なく同じである♂ それに対して,起動性という意味的側面は使役動詞の種類 によって,補文か動詞のどちらに具現されるのかが異なっているようであり,

それがそれぞれの使役動詞のs選択特性を解明する鍵であると主張する。

3.2.使役動詞のs選択特性

3.2.1.Make

最初に,(33)の例を用いて,使役動詞以外の用法におけるrnakeの意味に ついて考察する。

(33)John made the house out of bricks

Jackendoff(1990)のmaterial compositionを表す動詞に関する分析に従え ば,(33)のLCS表示は次のようになる。

(34) [CAUSE([JOHN],[INCH[BEcomp十([HOUSE],[AT

[BRICKS]])]])]      (cf. Jackendoff(1990:121))

(34)で注目すべきことは,その中に「ある状態に変化する」という意味を表 すINCH BE関数が含まれていることである。これが正しいとすると, make

という動詞は,既にその意味の中に,起動性を含意していることになる。

従って,makeが使役動詞として用いられる場合にも,基本的には,「ある 状態を作り出す」とか「ある状態に至らせる」という起動的な意味を持つと考

えられる。そして,この考えは前に見た(17)の例から支持される。

(35) [John made [Ap Marsha miserable for two hours]at noon

today by telling … ] (=(17))

継続を表す句と時点を表す句は…一般に同一節内に生じえないので,at noonは 小節の外,即ち主節に存在し,主節動詞makeを修飾していると考えられる。

さらに重要なことは,(35)のat noonが,次の(36a, b)のいずれの命題も修 飾しうるという点で曖昧であるということである。(Geis(1973)の観察によ

る。)

(10)

(36)a.John made Marsha miserable.

b.Marsha became miserable.

この事実は,使役動詞としてのmakeもINCH BE関数を含む(37)のような LCS表示を持つとすれば,直ちに説明される。

(37)[CAUSE([JOHN],[INCH[BE([MARSHA],[AT

[MISERABLE]])]])]      (cf. Jackendoff(1990:228))

即ち,(35)のat noonが(36a, b)の命題を修飾する解釈は,それぞれ(37)

のLCS表示におけるCAUSE関数とINCH BE関数を修飾する解釈に相当す         冒

るのである。

これまでの議論が正しければ,makeを用いた使役構i文においては,使役と いう概念を構i成する起動性という意味的側面が,makeという使役動詞に具現 されていると言える。そうすると,makeの小節補部は起動性,即ち状態の変 化を具現する必要がなくなる。実際,(37)のLCS表示によれば, makeの小 節補部の表す意味は,状態的命題を構成するINCH BE以下の部分に相当する ので,makeは常にstateを表す小節をs選択するという事実が,(37)のLCS 表示から自動的に導かれる。9

3.2。2.Get

次に,(38)の例に基づいて,他動詞としてのgetの意味について考えてみ

る。

(38)Bill got Susan a book on economics

,Jackendoff(1990)の授与動詞に関する分析に従えば,(38)のLCS表示は次

のようになる。

(39) [CAUSE([BILL],[GOposs([BOOK],[TO [SUSAN]])])]

(cf. Jackendoff (1990:99))

(39)のLCS表示には, INCH BE関数ではなく,GO関数が含まれている。

Jackendoff(1990:94)は, GO関数が表す移動(motion)という概念が,

INCH BE関数とは異なり,必ずしも終点(end point)を含意しないという 理由から,両者を別のものとして扱っている。この見解が正しく,かつ終点と いう概念が起動性(状態の変化)を特徴付ける上で不可欠な要因であるとすれ ば,GO関数を含むgetはINCH BE関数を含むmakeよりも,弱い起動性し か表しえないと言える。

ここでは,Jackendoff(1990)に従って,使役動詞としてのgetもGO関数

(11)

田中:使役動詞の小節補部について         131

を含む以下のようなLCS表示を持つと仮定する。

(40) a.John got the students into his office

b.[CAU S E([JOHN],[GO([STUDENT],[TO [IN

[OFFICE]]])])]      (cf. Jackendoff (1990:228))

(40b)のLCS表示においては,小節補部の意味に対応するGO以下の部分が CoSを表し,GO関数の意味を補っている。従って, getが使役動詞として用い られる場合には,そこに含意される起動性だけでは,使役の意味を表すのに不 十分であるので,それを補うために,CoSを表す小節をs選択する必要がある

のである。1°

3.2.3.have

最後に,haveに関しても,(41)に見られるpossessと (42)に見られる experienceという2つの基本的な用法から考察する。ll

(41) a.John has a do9

b. [BEposs([DOG],[AT [JOHN]])]

(cf. Jackendoff (1983:192))

(42) a.John had a great difficulty

b. [GO([GREAT DIFFICULTY],[TO[JOHN]])]

いずれの用法においても,haveはmakeやgetとは異なり,明らかに起動的 な意味を持たない。以下では,2.3節で見た使役動詞としてのhaveの3つ の用法(使役用法,結果用法,have存在文)が,(41),(42)の用法から導か れることを主張する。

まずhave存在文では,小節補部がstateを表し,主節主語が経験者ではな く,そのstateが帰属する場所(location)を表す。従って, have存在文の LCS表示は, possessの意味に相当する(41b)のLCS表示に基づいた(43)

であると仮定する。

(43)a.the car has its roof damaged

b.[BE([ITS ROOF DAMAGED],[AT[CAR]])] (=(30b))

(43b)におけるBEの第1項は, BE AT関数と意味的に矛盾しないstateで なければならないので,have存在文がCoSを表す小節とは両立しないことが 自動的に説明される。

次にhaveの結果用法では,小節補部が出来事(CoS)を表し,それによっ て主節主語が影響を受けるいう意味になる。故に,結果用法のhaveのLCS表

(12)

示は,experienceの意味に相当する(42b)のLCS表示と同一であると考えら

れる。

(44)a.the guard patrol had two men shot

b.[GO([TWO MEN SHOT],[TO[GUARD PATROL]])]

(=(29b))

そして,ある出来事(CoS)によって人が影響を受けるというのが普通なので,k2 結果用法のhaveが典型的にCoSを表す小節を選択するという事実が導かれる。

最後にhaveの使役用法では,主節主語が経験者であると同時に動作主であ り,それが小節補部の表す出来事(CoS)を引き起こすという意味になる。こ こではBowers(1981)に従って,使役化(causativization)という語彙規則 によって,使役用法のhaveが結果用法のhaveから派生されると仮定する。13

(45)a.the guard patrol had two men shot

b.[CAUSE([GUARD PATROL],[GO([TWO MEN SHOT],

[TO [GUARD PATROL]])])] (=(29a))

(cf. Inoue (1992:148))

(45b)には,動作主主語と小節補部に具現される起動性の両方が含まれるの で,(31)に従って,使役の意味を表すことが出来る。

3.3.まとめ

本節の議論を要約すると,使役の意味を構成する重要な側面である起動性と いう概念は,それぞれの使役動詞によって具現される場所が異なっており,そ れに着目することによって,使役動詞の小節補部のs選択特性が説明されるこ とを提案した。具体的には,起動性が動詞に具現されるmakeはstateを表す 小節を選択することが出来,それが動詞に具現されないgetとhaveはCoSを 表す小節(起動的な意味を持つ小節)を選択しなければならないのである。ま た,本節で提案されたLCS表示に基づく分析に従えば,それぞれの使役動詞 の意味は(46)のようになり,makθ, get, haveという順に使役の性質がより 間接的になるという一般的な見解にも適っていると思われる。(Baron

(1974,1977),Giv6n(1975),Goldsmith(1984)等参照。)

(46)a.make=bring about a situation such that…

b.get=cause to become a situation such that…

c,have=have a change into a situation such that…

(13)

山中:使役動詞の小節補部について         133

4.結論

本稿では,3種類の使役動詞make, get, haveが,それぞれなぜ異なった 範疇,及び意味を持つ小節補部を選択するのかを考察した。まず2節における 詳細な議論から,それぞれmakeはstate, getはCoS, haveはstateとCoS の両方をs選択するという結論が導かれた。そして,このs選択特性が与えら れれば,それぞれの使役動詞のc選択特性が,1節で独立の動機付けを与えら れた(10)のCSRから導かれることを示した。最後の3節では,今述べたそ れそれの使役動詞のs選択特性が決して恣意的なものではなく,それぞれの動 詞の語彙的意味を反映した使役動詞としての意味に起因するものであることを

主張した。

*本稿執筆にあたって貴前な助言,コメントを頂いた中野弘三先生,天野政千代先生,

金子義明先生に感謝の意を表する。

1.使役動詞の原形不定詞補部に関しては,Arimotoα989)に従って,その範疇がIP

であるとし,本稿では取り扱わないことにする。

2.本稿では,(1),(2)に示されるように,小節の範疇はその述語の最大投射であると する,Stowell(1983),Contreras(1987)の立場に従う。

3.実際,Kitagawa(1985)はconsiderが事態(state of affairs)をs選択すると

している。しかし,事態という用語は命題の表す意味全般を指すのに使われるのが普 通なので,ここでは誤解を生じないために,Dik(1989)の分類に従って, consider が選択する小節補部に関しては,状態(state)という用語を使うことにする。詳しく は,Dik(1989)参照。

4.CoSをs選択する動詞のll1でも, expectのみが過去分詞を主要部とするVP小節

を取ることが出来ず,その理由は明らかではない。

(i)*Iexpect[w that sailor killed by the enemy](Radford(1988:516))

5.findがstateを表す小節をs選択することに関しては, Kitagawa(1985)参照。

6.fearが状態的な意味を表すことに関しては, Grimshaw(1990)参照。

7.(21)の小節は,immediatelyという副詞を伴なって, CoSを表しているようであ

る。

8.haveはその使役の力が弱いために, makeやgetとは異なり,使役の手段(原因)

を表すby句を取ることが出来ない。

(14)

(i)a.*the trainer had the lion enter the cage by beating it with a whip

(Baron (1974:333))

b・ *the trainer had the lion enter the cage by dripPing fresh

blood around the door      (ibi(i. :334)

9.makeが出来事(event)を表す原形不定詞補部を選択しうるという事実は,この接 近法の反例になるかもしれない。しかし,Inoue(1992)は,原形不定詞補部と小節 補部との問のいくつかの振る舞いの違いに基づき,両者に対して,異なったLCS表 示を仮定している。この考えに従って,本稿で提案されたLCS表示に基づく分析は,

makeの小節補部に対してのみ有効であると考える。

10.この接近法によれば,getがstateを表す小節をs選択する可能性は,完全には排 除されない。実際,次の文におけるAP小節は, stateの意味を表しているようであ

る。

(i)a.we will soon get[Ap her well here]   (Jespersen(1940:21))

b.Mary got[Ap John angry]

恐らくこのような場合には,getが持つ僅かな起動性のみを利用して,例外的にhave に類似した弱い使役の意味を表していると考えられる。getとhaveの用法の類似性

に関しては,Visser(1973),Declerck(1991)等参照。

11.(42b)に含まれるGO TO関数は起動的な意味ではなく,ある事物,または出来事

(CoS)が主節主語に対して働きかける,即ち影響を与えるという意味を表す。

12.文脈によっては,stateが人に影響を与えるということも可能であり,(26b)がそ

れに該当する。(Palmer(1988)参照。)恐らくそのような例は,結果用法とhave

存在文の中間的位置付けを持つと考えられる。

13.Bowers(1981)によれば,使役化はhaveに特異的な規則ではなく,次の例に代表

されるcausative−ergative pairにおいて,(i)から(ii)を派生する際にも適用 される一般性の高い語彙規則である。

(i) a,the ship sank

b.[GO([SHIP],[DOWN FROM THE SURFACE OF WATER])]

(i i) a,the enerny sank the ship

b.[CAUSE([ENEMY],[GO([SHIP],[DOWN FROM THE

SURFACE OF WATER])])]  (cf. Jackendoff(1990:179))

逆に,(ii)から(i)を派生する可能性については, Keyser and Roeper(1984)

等参照。

(15)

田中:使役動詞の小節補部について         135

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参照

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