修 士 論 文
1 次元「 U ターン」 self-repelling walk
首都大学東京 大学院理工学研究科 数理情報科学専攻 学修番号
14878301
淺田 亘
目 次
1 イントロダクション 3
2 準備 4
2.1 グラフの列とその上のpath . . . 4
2.2 到達時刻と粗視化 . . . 5
2.3 粗視化分解 . . . 6
3 1次元「Uターン」self-repelling walk 7 3.1 G1上のUSRW . . . 8
3.2 Gn上のUSRW . . . 10
3.3 1次元USRW . . . 11
3.4 分枝過程 . . . 12
3.5 主結果1 . . . 16
4 USRWの連続極限の性質 19 4.1 p次モーメントの評価 . . . 19
4.2 主結果2 . . . 22
1
イントロダクション本論文では,1次元「Uターン」self-repelling walk(以下USRW)の連続極限の存在とその連続極限の 性質について扱っている.self-repelling walkとは,非マルコフ的なランダムウォークのモデルの一つであ る.「マルコフ性とは,k
+
1歩目の位置の分布がk−
1歩目までの動きとは関係なく,k歩目の位置を出発 点としたときの次の1歩の位置の分布に等しい,という性質である.」(参考文献[2]p.68)つまり非マルコ フ的なモデルのk+
1歩目の位置の分布には,k歩目までの動きが関係しうる.このため非マルコフ的なモ デルはマルコフ的なモデルに比べて,研究が難しい.1次元self-repelling walkの研究として既に研究されているモデルを2つ紹介する.以下ではpathをグ
ラフの点から隣の点へ辺の上を通って移るものとする.
1つ目は「サイト」self-repelling walkである.まずn歩のpath全体の集合を考える.ここでpathとは,
グラフの点から隣の点へ辺の上を通って移るものとする.Si,i
∈ {
0, 1, . . . ,n}
をpathのi歩目での位置と したとき,パラメータ0<
u<
1を用いて各pathに(
12)
n ∏(i,j)∈{0, 1, ...,n}2 i̸=j
(
1−
u1{Si=Sj})
に比例した確率を与 える.このとき同じサイト(点)を多くの回数通るpathほど確率が小さくなることがわかる.このように pathのサイトに注目したこのwalkを「サイト」self-repelling walkと呼ぶことにする.(参考文献[7])2つ目は「ボンド」self-repelling walkである.n歩目にx0にいると仮定する.
このとき辺
(
x0,x0+
1)
,辺(
x0,x0−
1)
をn歩目までに通った回数をそれぞれa,bとしたときパラメータ 0<
u<
1を用いてn+
1歩目にx0+
1, x0−
1にいる確率がそれぞれua,ubに比例するwalkである.この ようにpathのボンド(辺)に注目したこのwalkを「ボンド」self-repelling walkと呼ぶことにする.(参 考文献[10])これらのwalkは隣の点に移るpathを扱っているが,必ずしも隣の点に移るモデルばかりではなく,一歩 の幅が有界でないモデルもある.(参考文献[5], [9])
1次元USRWの特徴について説明する.(詳しくは第3章で定義する.)本論文ではくりこみ群を用いて pathに確率を与える.その際にpathの集合の列を適切にとってくることで帰納的に確率を定義することが できる.最初のpathの集合では「Uターン」をするpathほど確率が低くなるという特徴がある.USRW の研究を通して次の2つの結果が得られた.
主結果1 USRWの連続極限の存在.
主結果2 連続極限がもつ性質.
これらの具体的な結果と証明はそれぞれ3章と4章で扱っている.また主結果2で現れる漸近挙動を支 配するγuに相当する指数が「サイト」self-repelling walkでは任意のu
∈ (
0, 1)
に対してγu=
1,「ボン ド」self-repelling walkでは任意のu∈ (
0, 1)
に対してγu=
23であることがそれぞれ示唆されている.本 論文で扱うUSRWのγuは,単純ランダムウォークの連続極限であるブラウン運動に対応する 12から自己
回避ウォークの連続極限である等速直線運動に対応する1まで,uに関して連続に変化する.
謝辞 学部4年から3年間お世話になり,本論文の作成に最後まで指導をしていただいた服部先生に心 から感謝しています.また学部4年から共にゼミをしてきた同研究室の大胡君,大塚君,副査を担当してい ただいた倉田先生,高津先生,そのほか多くの友人,先輩,後輩に感謝しています。
2
準備この章では第3章で扱う「Uターン」self-repelling walkを定義するために用いる記号や命題をまとめ る.まずグラフ上のpathの集合の列を定義し,第3章で確率を与えることでwalkを定義する.
2.1
グラフの列とその上のpath
初めにグラフの列とその上のpathを定義する.ここでpathとは,グラフ上の点から隣の点へ辺の上を 通って移るものとする.
定義2.1 (グラフの列)n
≥
0に対して,グラフの列Gn := (
Vn, En)
の頂点集合Vnと辺の集合Enを,Vn :
= {
x∈ [ −
1, 1]
: x=
2−nz,z∈
Z}
, En := { (
x,y)
: x,y∈
Vn,|
x−
y| =
2−n}
と定義する.例2.2 n
=
1のとき,n=
2のときはそれぞれ次のようになる.G1 G2
−
1 0 1−
1 0 1定義2.3 (pathの集合の列)n
≥
0に対して,Gn上のpathで0から出発して−
1より先に1に到達する 有限pathの集合の列Ω˜nを,Ω˜n
= {
w= (
w(
0)
,w(
1)
,w(
2)
, . . . ,w(
k))
:w
(
0) =
0,w(
k) =
1,w(
i) ∈
Vn\ {±
1}
,(
w(
i)
,w(
i+
1)) ∈
En,i=
0, 1, 2, . . . , k−
1,k∈
Z≥2}
と定義する.ここでZ≥2= {
2, 3, . . .}
である.さらにw= (
w(
0)
,w(
1)
,w(
2)
, . . . ,w(
k))
に対して,ℓ(
w) =
kをpathの歩数とする.例2.4 w
∈
Ω˜2のpathの1つとしてw= (
0,−
14,−
12,−
34,−
12,−
34,−
12,−
14, 0, 14, 0, 14, 12, 14, 12, 34, 1)
は 縦軸を歩数とすると次のようになる.−
1 0 1G2
−
12 12w
ℓ(
w) =
162.2
到達時刻と粗視化次に到達時刻の列とpathの粗視化を定義する.
定義2.5 (到達時刻)n
≥
mを満たすmに対して,w∈
Ω˜nがGmの点を通る時刻の列{
Tim}
i=0, 1, ...,m0を,T0m
(
w)
:=
0,Tim
(
w)
:=
inf{
j>
Ti−1m(
w) |
w(
j) ∈
Vm\ {
w(
Ti−1m(
w)) }}
と定義する.これは同じGmの頂点を連続して通る場合は一回とみなしたときにi回目のGmの頂点を訪れ るまでの歩数である.ここでm0はw
(
Tmm0(
w)) =
1を満たす正の整数である.例2.6 例2.4のwのm
=
1のときの到達時刻は,T01
(
w) =
0, T11(
w) =
2,T21(
w) =
8, T31(
w) =
12,T41(
w) =
16となりm0=
4である.定義2.7 (粗視化)n
≥
mを満たすmに対して,w∈
Ω˜nのmでの粗視化を到達時刻の列{
Tim}
i=0, 1, ...,m0を用いて,
Qmw
= (
Qmw(
0)
,Qmw(
1)
, . . . ,Qmw(
m0))
, Qmw(
i) =
w(
Tim(
w))
,i=
0, 1, . . . ,m0と定義する.このとき
ℓ(
Qmw) =
m0である.例2.8 例2.4のwのm
=
1での粗視化したpathはQ1w= (
0,−
12, 0, 12, 1)
となる.−
1 0 1G2
w
−
12 12−
1 0 1G1
Q1w
例2.8からもわかるようにmでの粗視化はw
∈
Ω˜nを粗く見ることでΩ˜mのpathを対応させていることが わかる.またn≥
mのとき,Vm⊂
Vnであるので,{
Qmw(
0)
,Qmw(
1)
, . . . , Qmw(ℓ(
Qmw) } ⊂ {
Qnw(
0)
,Qnw(
1)
, . . . , Qnw(ℓ(
Qnw) }
となる.このことから次の命題が成り立つ命題2.9 n
≥
mのとき,Qm◦
Qn=
Qmが成り立つ.ここでQm◦
QnはQnで粗視化したあとにQmで粗 視化することをあらわす.2.3
粗視化分解ここで粗視化を用いたpathの分解を考える.n
≥
mとしてw∈
Ω˜nに対して粗視化Qmwを考える.こ のときwmi ,i=
1, 2, . . . ,ℓ(
Qnw)
を,wmi
= (
w(
Ti−1m(
w))
,w(
Ti−1m(
w) +
1)
, . . . ,w(
Tim(
w)))
とする.ここでwmi はQmwのi歩目の細かい構造を表している.これを用いて,w
7→ (
Qmw,w1m,wm2, . . . ,wℓ(Qmmw)
)
とすることでwを一意に表現することができる.例2.10 例2.4のwをm
=
1での粗視化を用いて,(
1)
で表現するとw7→ (
Q1w,w11,w12,w13,w14)
となり次 のようになる.−
1 0 1G2
−
1 0 1G1
−
12 0 12−
1−
12 0−
12 0 120 12 1
w Q1w w11 w13
w12 w14
さらに例2.10のw1i,i
=
1, 2, 3, 4と相似なΩ˜1のpathをそれぞれw˜1i,i=
1, 2, 3, 4とおいて,w
7→ (
Q1w, ˜w11, ˜w12, ˜w13, ˜w14)
を粗視化を用いた分解とする.定義2.11 (粗視化分解)n
≥
mを満たすmに対して,w∈
Ω˜nのmでの粗視化分解を,w
7→ (
Qmw, ˜wm1, ˜w2m, . . . , ˜wmℓ(Qmw)
)
と定義する.ここでw˜mi ,i
=
1, 2, . . . ,ℓ(
Qmw)
はΩ˜n−mのpathでwimと相似なpathである.例2.12 例2.4のwをm
=
1での粗視化分解は次のようになる.−
1 0 1G2
−
1 0 1G1
w Q1w w˜11 w˜13
w˜12 w˜14
−
1 0 1−
1 0 1−
1 0 1−
1 0 1−
1 0 1−
1 0 13
1次元「U
ターン」self-repelling walk
この章では1次元「Uターン」self-repelling walk(以下USRW)を定義する.そのためにG1上のUSRW を定義した上でGn上のUSRWを帰納的に定義する.
3.1 G
1上のUSRW
初めにG1上のUSRWを定義する.各w
∈
Ω˜1に対して,Uターンの数N(
w)
を用いてwとなる確率が,uN(w)xℓ(w)−1u で与えられるものとする.ここでUターンの数N
(
w)
は,N
(
w) = ♯ {
1≤
i≤ ℓ(
w) −
1|
w(
i−
1) =
w(
i+
1) }
であり,0
≤
u≤
1, 0<
xuはΩ˜1上での確率の和が1となるように定める.このG1上のUSRWは0<
u<
1 のとき,Uターンをするpathほど確率が低くなるランダムウォークである.例3.1 G1上のUSRWの例として,
ℓ(
w) =
4のpathは次の2種である.G1
−
1 0 11 2 3 4
G1
−
1 0 11 2 3 4
w w′
このとき(wになる確率)
=
ux3u,(w′になる確率)=
u2x3uである.ここでxuを具体的に求める.
初めにΩ˜1のpathを表す記号を定義する.
記号3.2 w
∈
Ω˜1を表す記号として,pathの2歩の動きを次の3つに分ける.A:
= (
0, 12, 0)
B:= (
0,−
12, 0)
C:= (
0, 12, 1)
この記号を用いて,例3.1のw
=
AC,w′=
BCと表すことにする.さらにw∈
Ω˜1,ℓ(
w) =
2kを満たす pathをこの記号を用いて書き表すと,A
B
A
B
A
B
C
k
−
1個となりw
∈
Ω˜1,ℓ(
w) =
2kを満たすpathの個数は2k−1個であることがわかる.u
=
1のとき,Ω˜1上で確率が1であるので,1
= ∑
w∈Ω˜1
xℓ(w)−11
=
∑
∞k=1
∑
w∈Ω˜1
ℓ(w)=2k
x2k−11
=
∑
∞ k=12k−1x2k−11
=
x1 1−
2x21この方程式を解くと,x1
=
12となりu=
1のとき0から出発して−
1より先に1に到達するsimple random walkになることがわかる.u
=
0のとき,確率が正となるpathは(
0, 12, 1)
だけであるので,x0=
1でself-avoiding walkになる ことがわかる.0
<
u<
1のとき,u=
1のときと同様にΩ˜1上で確率が1であることから,w∈
∑
Ω˜1uN(w)xℓ(w)−1u
=
1を解けばいいことがわかる.ここでΩ˜1のpathのUターンについて考える.記号3.2のA, B,Cとその間の移 動に注目すると,A,B, AA間,BB間,AC間 でUターンしていることがわかる.これをw
∈
Ω˜1,ℓ(
w) =
2k を満たすpathで見てみると,A
B
A
B
A
B
C
k
−
1個 uu u
u u
u u
u
u
u
u u
u
となる.この図からw
∈
Ω˜1,ℓ(
w) =
2kのpathは必ずk−
1回Uターンをする事,k−
1回Uターンをす るかしないかの選択をする事がわかるので,∑
w∈Ω˜1
ℓ(w)=2k
uN(w)
=
uk−1(
u+
1)
k−1となる.よって,
1
= ∑
w∈Ω˜1
uN(w)xℓ(w)−1u
=
∑
∞k=1
∑
w∈Ω˜1
ℓ(w)=2k
uN(w)x2k−1u
=
∑
∞ k=1uk−1
(
u+
1)
k−1x2k−1u=
xu1
−
u(
u+
1)
x2u この方程式を解くと,xu=
1u
+
1>
0となる.よってG1上のUSRWを次で定義する.定義3.3 (G1上のUSRW)Ω˜1上の確率P˜1uをw
∈
Ω˜1に対して,P˜1u
[ {
w} ] =
uN(
w)
xℓ(w)−1uと定義する.
3.2 G
n上のUSRW
次にGn上のUSRWを帰納的に定義する.Gn−1上のUSRWの一歩一歩が独立に細かいpathに分かれ てGn上のUSRWになると考える.
定義3.4 (Gn上のUSRW)各w
∈
Ω˜nに対して,定義2.11のn−
1での粗視化分解を w7→ (
Qn−1w, ˜w1n−1,· · ·
, ˜wn−1ℓ(Qn−1w)
)
とする.Ω˜n上の確率P˜nuを,P˜nu
[ {
w} ] =
P˜n−1[ {
Qn−1w} ]
ℓ(Qn−1w)
∏
j=1P˜1u
[
w˜n−1j]
と定義する.
この定義からv
∈
Ω˜n−1に対してP˜nu[ {
w∈
Ω˜n : Qn−1w=
v} ] =
P˜n−1u[ {
v} ]
となる.また任意のn∈
Z≥2 に対して,P˜n[
Ω˜n] =
1であることは帰納法を用いて示せる.例えば,n
=
2のとき,P˜2u
[
Ω˜2] = ∑
w∈Ω˜2
P˜2u
[ {
w} ]
= ∑
Q1w∈Ω˜1
P˜1u
[ {
Q1w} ] ∑
˜ w11∈Ω˜1
· · · ∑
˜ w1ℓ(Q
1w)∈Ω˜1
ℓ(Q1w)
∏
j=1P˜1u
[ {
w˜1j} ]
= ∑
Q1w∈Ω˜1
P˜1u
[ {
Q1w} ](
P˜1u[
Ω1])
ℓ(Q1w)= ∑
Q1w∈Ω˜1
P˜1u
[ {
Q1w} ]
=
P˜1u[
Ω˜1]
=
1 となる.確率P˜nに対して次の命題が成り立つ.
命題3.5 (自己相似性)n
≥
mを満たすmとv∈
Ω˜mに対して,P˜nu
[ {
w∈
Ω˜n : Qmw=
v} ] =
Pmu[ {
v} ]
が成り立つ.証明 P˜nuの定義より
P˜nu
[ {
w∈
Ω˜n : Qmw=
v} ] = ∑
w′∈Ω˜n−1
P˜nu
[ {
w∈
Ω˜n : Qmw=
v,Qn−1w=
w′} ]
= ∑
w′∈Ω˜n−1
Qmw′=v
P˜nu
[ {
w:Qn−1w=
w′} ]
= ∑
w′∈Ω˜n−1
Qmw′=v
P˜n−1u
[ {
w′} ]
=
P˜n−1u[ {
w′∈
Ω˜n−1: Qmw′=
v} ]
この計算を繰り返し行うとP˜nu
[ {
w∈
Ω˜n : Qmw=
v} ] =
Pmu[ {
v} ]
が得られる. 23.3 1
次元USRW
集合Ω
= {
ω= (
w0,w1,w2,· · · )
: wn∈
Ω˜n,Qmwn=
wm,m≤
n,n,m∈
Z>0}
上の確率を考える.そこでΩk
= {
ωk= (
w0,w1,w2,· · ·
,wk)
: wn∈
Ω˜n,Qmwn=
wm, 0≤
m≤
n≤
k}
上の確率として,条件Qmwn
=
wm, 0≤
m≤
n≤
kより,wk∈
Ω˜kのpathに対してw0,w1,w2,· · ·
,wk−1が一意に定ま ることから,Ωk上の確率Pkuを各ωk= (
v0,v1,v2,· · ·
,vk) ∈
Ωkに対して,Pku
[ {
ωk} ] =
P˜ku[ {
vk} ]
とする.コルモゴルフの拡張定理を用いて,Ω上の確率に拡張する.そのためにコルモゴルフの拡張定理 の整合条件を満たすことを示す.
(
v0,v1, . . . ,vk) ∈
Ωkを固定する.このときΩn+1の部分集合AをA
= {
ωk+1= (
w0,w1,w2,· · ·
,wk,wk+1) ∈
Ωk+1: wi=
vi,i=
0, 1, 2, . . . ,k}
とおく.このとき,Pk+1u
[
A] =
Pk[ { (
v0,v1,v2, . . . ,vk) } ]
を満たすことを示せば整合条件を満たすことに なる.Pk+1u
[
A] = ∑
ωk+1∈A
Pk+1u
[ {
ωk+1} ]
= ∑
wk+1∈Ω˜k+1
Qiwk+1=vi,i=0, 1, ...,k
Pk+1u
[ {
ωk+1} ]
= ∑
Qkwk+1=vk
P˜k+1u
[ {
wk+1} ]
=
P˜k+1u[ {
wk+1: Qkwk+1=
vk} ]
=
P˜ku[ {
vk} ]
(命題3.5)=
Pku[ { (
v0,v1,v2, . . . ,vk) } ]
よって,PkuをΩ上の確率P∗uで,P∗u
◦
π−1n=
Pnを満たすもが一意に存在する.ここでπnはΩからΩnへの射影である.さらにP∗uはPkuの定義から,Ω からΩ˜nへの射影Ynを用いて,
P∗u
◦
Yn−1=
P˜nu を満たすことがわかる.ここでUSRWの連続極限を考える上でpathの歩数を時刻とみなしてpathを時刻に関して連続となるよ うに拡張する.
定義3.6 (連続時間上のpathの位置)w
∈
Ω˜n,n∈
Z≥0に対して,w(
t)
,t∈
R≥0を w(
t) = (
i+
1−
t)
w(
i) + (
t−
i)
w(
i+
1)
, i≤
t<
i+
1, i=
0, 1, 2, . . . と定義する.以下ではΩ˜ は時刻を連続に拡張したものとする.
定義3.7 n
≥
mを満たすmとw∈
Ω˜nに対して,Ω˜n上の確率変数Simを,Smi
(
w) = ℓ(
w˜mi)
と定義する.確率変数Smi はwn
∈
Ω˜nに対して,Qmで粗視化したpathのi歩目の細かい構造を表すpathの歩数となっ ている.またSim(
Yn)
はΩ上の確率変数になっている.確率変数Smi
(
Yn)
に対して次の命題が成り立つ.命題3.8 n
≥
mを満たすmに対してwm∈
Ω˜mを固定する.条件付き確率P∗u[
・|
Ym=
wm]
の下で確率 変数Smi(
Yn)
,i=
1, 2, . . . ,ℓ(
wm)
は独立同分布である.またその分布はS10(
Yn−m)
の分布と等しい.証明 B1を1次元ボレル集合体として,B1,B2, . . . , Bℓ(wm)
∈
B1とwm∈
Ω˜mに対して,P∗u
[
Sm1(
Yn) ∈
B1,Sm2(
Yn) ∈
B2, . . . ,Bℓ(wm m)(
Yn) ∈
Bℓ(wm)|
Ym=
wm]
=
P∗u[
Sm1(
Yn) ∈
B1|
Ym=
wm]
P∗u[
S2m(
Yn) ∈
B2|
Ym=
wm] · · ·
P∗u[
Bmℓ(wm)(
Yn) ∈
Bℓ(wm)|
Ym=
wm]
となることを示せばよい.P∗u
[
S1m(
Yn) ∈
B1,S2m(
Yn) ∈
B2, . . . , Bmℓ(wm)(
Yn) ∈
Bℓ(wm)|
Ym=
wm]
=
P˜nu[
Sm1∈
B1,S2m∈
B2, . . . , Smℓ(wm)∈
Bℓ(wm)|
Qm=
wm]
=
P˜mu
[ {
wm} ]
ℓ(wm) j=1∏
P˜n−mu
[ {
w˜mj :ℓ(
w˜mj) ∈
Bj} ]
P˜nu
[ {
w:Qm=
wm} ]
(定義3.4)=
ℓ(wm)
∏
j=1P˜n−mu
[ {
w˜mj :ℓ(
w˜mj) ∈
Bj} ]
(命題3.5)となる.ここで任意のi
∈ {
1, 2, . . . ,ℓ(
wm) }
に対して定義3.4より P˜n[ {
w∈
Ω˜n : Qmw=
wm,Smi∈
Bi} ] =
P˜mu[ {
wm} ] ∏
1≤j≤ℓ(w) j̸=i
P˜n−mu
[
Ω˜n−m]
P˜n−mu[ {
w˜mi :ℓ(
w˜mi) ∈
Bi} ]
=
P˜mu[ {
wm} ]
P˜n−mu[ {
w˜mi :ℓ(
w˜mi) ∈
Bi} ]
が成り立つので,ℓ(wm)
∏
j=1P˜n−mu
[ {
w˜mj :ℓ(
w˜mj) ∈
Bj} ] =
ℓ(wm)
∏
j=1P˜n
[ {
w∈
Ω˜n: Qmw=
wm,Smj∈
Bj} ]
P˜mu[ {
wm} ]
=
ℓ(wm)
∏
j=1P˜nu
[
Smj∈
Bj|
Qm=
wm]
=
ℓ(wm)
∏
j=1P˜∗u
[
Smj(
Yn) ∈
Bj|
Ym=
wm]
が成り立つ.よってSmi
(
Yn)
,i=
1, 2, . . . ,ℓ(
wm)
は独立である.また任意のi∈ {
1, 2, . . . ,ℓ(
wm) }
と B∈
B1に対して,P∗u
[
Smi(
Yn) ∈
B] =
P˜n−mu[
Smi∈
B]
P∗u[
S01(
Yn−m) ∈
B] =
P˜nu−m[
S10∈
B]
となるので,Smi
(
Yn)
,i=
1, 2, . . . ,ℓ(
wm)
は同分布でその分布はS01(
Yn−m)
の分布と等しい. 2 確率変数の列{
Smi(
Ym+n) }
n=0, 1, 2, ...が分枝過程であることを確認するために,分枝過程について基本的 なことをまとめておく.(より詳しくは参考文献[2], [3])分枝過程とは,確率変数の列{
Zn}
n=0, 1, 2, ...を第 n世代での粒子の個数とするとき,第n世代でi個の粒子が第n+
1世代でj個になる確率P(
i,j)
がP
(
i,j) =
P[
Zn+1=
j|
Zn=
i] =
j1+j2+···+j∑ i=j
P
(
1, j1)
P(
1, j2) · · ·
P(
1, ji)
j1, j2, . . . , ji≥
0, j≥
0δ0j, i
=
0, j≥
0を満たすものである.
例3.9
{
Zn}
n=0, 1, 2, ...を第n世代の粒子の個数として,P(
1, 1) =
13,P(
1, 2) =
23とする.Z0
=
1 Z1=
2 Z2=
32
3の確率で粒子が2個になる 2個の粒子がそれぞれ確率1
3で1個の粒子に 確率23で2個の粒子になる
{
Smi(
Ym+n) }
n=0, 1, 2, ...は,n=
0のとき,Smi(
Ym) =
1a.s.である.n=
1のときSmi(
Ym+1)
はwm+1の Qmでの粗視化分解をしたときのi歩目の歩数であるのでグラフの構造よりS01(
Y1)
と分布が等しい.すな わち,P
(
1,k) =
P[
Sim(
Ym+1) =
k|
Smi(
Ym) =
1] =
P˜1u[ {
w∈
Ω˜1| ℓ(
w) =
k} ]
である.以下同様に命題3.8よりP
(
i,j) =
P[
Smi(
Ym+n+1) =
j|
Smi(
Ym+n) =
i]
= ∑
j +j+···+j=j
P