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衛星SAR解析による2005年パキスタン北部地震の地殻変動量と地震断層の推定

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調査報告

衛星SAR解析による 2005 年パキスタン北部地震の

地殻変動量と地震断層の推定

Crustal deformation and earthquake fault of the 2005 northern Pakistan earthquake detected by

spaceborne synthetic aperture radar

藤原 智・飛田 幹男・佐藤 浩・小沢 慎三郎・宇根 寛

FUJIWARA Satoshi, TOBITA Mikio, SATO Hiroshi P., OZAWA Shinzaburo and UNE Hiroshi

地震に伴う地殻変動の面的分布を求めることで地震時の地下の断層の位置とその動きを推定することが

できる.2005 年パキスタン北部地震について,人工衛星 ENVISAT の干渉 SAR および SAR 画像のマッチ

ング技術を用いて,地殻変動を面的かつ詳細に求めるとともに,断層モデルを作成した.1 m 以上の地殻 変動は全長約90 km の帯状に北西-南東方向に広がり,最大の地殻変動量は 6 m を超えている.地震断層 推定位置は,既存の活断層に沿ってつながっており,活断層地形で示される変動の向きなどとも一致して いる.これらのことから,今回の地震は過去に繰り返して発生した地震と同じ場所で発生していることが わかった.地殻変動のパターンから,大まかに見て2 つの断層グループが存在する.大きな地震被害が発 生したムザファラバード付近は,この2 つの断層グループの境に位置するとともに,最大の地殻変動量が 観測された.

We mapped the crustal deformation of the Northern Pakistan earthquake of 8 October 2005 occurred

in the Kashmir region spatially with Synthetic Aperture Radar (SAR) data from a satellite, and found that

the area with more than 1-m of observed deformation occupies a ~90-km long northwest-southwest

trending strip-shaped area. The area north of Muzaffarabad, a heavily-damaged area, has the maximum

deformation more than 6-m. There are known active faults stretching to the northwest and southeast near

the epicenter, which reveal some uplift (on the northeast side) and dextral strike-slip activities. We found

that the detected crustal deformation was along these active faults and all observations were consistent in

the sense of fault offsets. There are two important findings. First, the earthquake occurred on pre-existing

active faults. This means surveying existing active faults is important for estimating future earthquake

hazards and risk. Second, the satellite data show the ruptured earthquake faults in detail, allowing relief

planners to quickly simulate and estimate the seismically damaged areas and the extent of the damage for

prompt rescue and relief operations.

 

キーワード:合成開口レーダー,地殻変動,活断層,パキスタン北部地震   

Key words: synthetic aperture radar (SAR), crustal deformation, active fault, northern Pakistan

earth-quake

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I はじめに 2005 年 10 月 8 日パキスタン北部で M7.6(USGS) の地震が発生した.この地震はヒマラヤ山脈の最 西端に近い場所で発生し,インド亜大陸がユーラ シア大陸にぶつかるという造山地帯での活動の一 環であると推測され,長期にわたって地殻変動の 大きな地帯で地震発生の危険度も高い地域である. しかしながら,当該地域では GPS をはじめとする 現代的な地殻変動観測が行われておらず,地震波 以外の地上の観測では地震の全体像を把握するこ とができていない.また,山岳地域で地すべり等 が多数発生したことから,被害の全体像すらなか なか把握できない状況が続き,救助・救援活動も 困難を極めることとなった.この地震でどの断層 がどのように動いて発生したのかを知ることは, 理学的な観点はもとより,防災の観点からも,地 震の被害地域を把握するためにきわめて重要であ る. 国土地理院では人工衛星搭載の SAR(合成開口 レーダー)を用いてこの地震の地殻変動を面的か つ詳細に求めた(Fujiwara et al. 2006;飛田ほか 2006).本稿ではこの SAR 解析によって求めた, パキスタン北部地震の地殻変動と地震断層につい て報告する.   II 合成開口レーダーによる地殻変動検出 1.SAR による地殻変動検出 人工衛星搭載の SAR は地殻変動を離れた場所か ら面的に測定(リモートセンシング)できること から,1990 年代以降,強力な地殻変動検出ツール として使われるようになった.SAR は高分解能レ ーダーの一種で,人工衛星から電波を発射し地表 で反射した電波を解析することで,地表の対象物 の性質や形状を面的に捉えるものである.SAR を 使うことで人工衛星と地表との間の距離に関する 情報を得ることができる.異なる2時期に撮影さ れた SAR 画像の差を求めることで2時期の間に生 じた地殻変動に関する情報を抽出することができ る.特に「干渉 SAR」と呼ばれる手法を使うこと で,SAR に用いられるマイクロ波の位相情報から 数 cm の精度で地殻変動を求めることができる(藤 原・飛田  1999). 我々は,ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の ENVISAT 衛星の SAR データを用いて 2005 年パキスタン北 部地震の地殻変動を面的に求めた.まずは,干渉 SAR によって求めた地殻変動量分布を図 1(a)に 示す.使用した SAR データは地震前が 2005 年 9 月 17 日,地震後が 2005 年 10 月 22 日である.こ のとき,SAR 衛星(ENVISAT)は飛翔方向(南南 西向き)の右下方向を観測しており,地上から見 て東南東方向の上空からの観測となる.SAR が測 定しているのは各画素ごとの,衛星と地表を結ん だ線に沿った方向(衛星視線方向)の地表の変動 量である.図 1(a)から読み取れる最大の変動量 は約 30 cm である.しかしながら,震源に近く地 殻変動も大きいと予想される地域(図の右上半分 の灰色の領域)においては干渉 SAR では変動量を 得ることができなかった.干渉 SAR では地表の変 動量の絶対量ではなく,SAR 画像上の隣り合う画 素(ピクセル.数 m 四方程度)間の変動量の差に あたる量を計測しており,地表の変動量の水平勾 配が大きくなって,隣同士の画素の変動量の差が 使用しているマイクロ波の半波長より大きい場合 に地殻変動量を計測できないという弱点がある. 特に ENVISAT は C-バンド(波長約 5.6 cm)とい う比較的短い波長のマイクロ波を用いているため にこの効果が大きくきいてしまう.また,震源付 近では強い地震動によって地表面が崩れたりする ことにより地震前後で状態が変わり,干渉 SAR で 必要な干渉が得られなくなっていることも影響し ていると思われる. 本研究においては,このように干渉 SAR だけで は当該地域全体の地殻変動量を求めることができ なかった.そこで,SAR 画像のマッチング技術 (Tobita  et  al.  2001)を用いることで地殻変動の全 体像を明らかにすることができた.SAR 画像のマ ッチング技術とは,2 枚の SAR 画像中の同一のあ る区域(数 100 m 四方程度)が画像全体に対して

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どれだけ移動したかを測定するものである.干渉 SAR に比べるとその変動の測定精度は約 1 m 程度 と低いが,本地震のように地殻変動が非常に大き かったり,地表面が崩壊などにより変化したりし 図 1 ENVISAT 衛星によって求められたパキスタン北部地震の地殻変動 (a) 干渉 SAR によって求められた地殻変動量.変動量は衛星-地表間の視線方向に沿っており,上向きまた は東南東向きの変動を表す.灰色は変動が求められていない場所を表す.赤い星印は USGS による震源位置.図 の範囲は以下(b),(c),図 3,4 および 5 において同じ.(b) SAR 画像マッチングによる地殻変動量分布.(c) 両手 法の結果を合成した地殻変動図.SRTM による標高 250 m ごと等高線が細黒線で描かれている.太黒線は活断層 位置(Kumahara and Nakata 2006).

Figure 1 (a) Crustal deformation map detected by SAR interferometry. Positive values indicate the movement of deformation in centimeters toward the SAR satellite in the LOS direction (upward and/or E-SE displacement). The red star shows the epi-center determined by the U.S. Geological Survey. The area of this figure is the same as following (b), (c), Figures 3, 4 and 5. (b) Crustal deformation measured by matching of SAR images. (c) Combined crustal deformation map superimposed on topography and the location of known active faults. The contour lines are every 250 meters (generated by the NASA Shuttle Radar Topography Mission). The black curves show the locations of active faults (Kumahara and Nakata 2006)

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図 2 南側上空から見た地殻変動(図 1(c))と活断層(Kumahara and Nakata 2006)の鳥瞰図 Figure 2 A bird's-eye view of crustal deformation (the same as Figure 1(c)) and active faults (Kumahara

and Nakata 2006), from the south て干渉 SAR で変動量を測定できない場合でも測定 できるという特徴を持つ.図 1(b)は SAR 画像の マッチングにより求めた衛星視線方向の変動量分 布であり,ほぼ全面にわたって変動量が測定でき た. 図1(c),図 2 は干渉 SAR と SAR 画像マッチ ングによる衛星視線方向の地殻変動量分布を合成 したもので,干渉 SAR の方が高精度であるので, 干渉 SAR での測定値が得られている場所は干渉 SAR による結果を表示するようにしてある.変動 量が大きい地域が帯状に連なっているのが一目瞭 然である.約 1  m 以上の大きな地殻変動は全長約 90 km の帯状に北西-南東方向につながっており, 既存の活断層(Kumahara and Nakata 2006)に沿っ ていることがわかった. 地殻変動分布は,既存の活断層に沿ってほぼ直 線上につながっており,この断層位置に沿ったバ ラコットやムザファラバードなどで被害の大きか ったことが知られている.さらに,既存の活断層 の南東側延長に地殻変動が続いていることは興味 深い.甚大な被害が発生したムザファラバードの 北側で 5  m に近い最大の変動量が発生しているこ とがわかる.また,ムザファラバード付近より南 側では地殻変動が帯状に南東方向になめらかにつ ながっているが,北側では地殻変動がムザファラ バード付近に集中しているほか,地殻変動分布の 形状が湾曲しているなど、ムザファラバード付近 が地下の断層運動のなんらかの境であることもわ かる.  2. 異なる 2 方向からの SAR 観測による 3 次元 変動の検出 SAR による地殻変動検出において弱点の一つと してあげられるのが,SAR が衛星-地表の視線方 向を基準とした変動量を検出するため,完全な 3 次元の変動が得られないことである.しかし,別 方向からの独立した観測を組み合わせることによ り地表の変動を 3 次元で求めることが可能になる. 本稿では,ENVISAT の南行軌道に加えて北行軌道 のデータを組み合わせることによって,完全に 3 次元の地殻変動を求めた(飛田ほか 2006). 使用したデータは,南行軌道(図 1 に使用した ものと同じ)で 2005 年 9 月 17 日・10 月 22 日,北 行軌道で 2005 年 9 月 19 日・10 月 24 日および 2005 年 9 月 3 日・11 月 12 日の組み合わせである. 図 1(c)や図 3 に描かれた活断層線は Kumahara

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and Nakata (2006)によるもので衛星画像等を用 いて地形学的に求められたものであり,右ずれで 北東側上がりの逆断層である.図 3 からは,逆断 層の上盤側にあたる北東側が隆起し,やや右ずれ 成分をもつことが一目瞭然となった.地殻変動が 既存の活断層に沿って存在し,南東側に延伸して いること,ムザファラバード北部で最大の変動量 (上下方向だけでも約 6 m)をもち,その近辺で地 殻変動の南西側の縁の形状(既存の活断層のトレ ースにほぼ一致)に屈曲が見られることなどは, 図 1 で見いだされた特徴と同じである.しかしな がら,図 1 と図 3 では,表示されている地殻変動 の成分(変動の向き)が異なっているので,細か く見ると違いがある.たとえば,バラコット南部 の約 10 km の区間において図 1 では地殻変動(衛 星視線方向成分)の分布と既存の活断層位置がよ く一致しているように見えるが,図 3 の地殻変動 の上下成分の分布は活断層線の西側にややはみ出 している.これは,総合的に判断すると,バラコ ット南部では図 3 のように地殻変動は地形的に判 断された活断層線と少しずれているというのが正 しい解釈である.このように,SAR による地殻変 動の解析では,異なった方向からの観測を組み合 わせて,地殻変動の 2 次元もしくは 3 次元の把握 をすることでより正確な地殻変動の様相を捉える ことができる.   III 既存の活断層と地殻変動との関係       1.地表断層位置の推定      今回のパキスタン北部地震では地震災害を受け た地域のほとんどが山間部にあり,道路が地すべ り等の被害を受けたために現地調査がきわめて限 られる状況であった.特に,SAR による地殻変動 量分布に基づく地震断層の推定が初めて公表(国 土地理院 2005)された 2005 年 11 月の段階では地 図 3 SAR によって得られた3次元の地殻変動図 赤矢印は水平方向の地殻変動量,カラーは鉛直上向き方向の地殻変動量を表す.黒線は 活断層(Kumahara and Nakata 2006).

Figure 3 Full 3-D crustal deformation and active faults (Kumahara and Nakata 2006)

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表断層が発見されておらず,SAR による断層位置 推定が重要な役割を果たした.     図 1(c)および図 3 から明らかなように本研究 で見出された地殻変動は,その位置がこの既存の 活断層に沿っており,その変動の向きも一致して いる.地震断層の大部分は地下に埋もれているの で,地震断層の地表に近い側の位置を地殻変動か ら客観的に明らかにするために,SAR で計測され た地殻変動量の水平勾配(断層に直交する方向成 分)(Fujiwara et al. 2000)を計算した.このとき 水平勾配とは,地殻変動量の水平方向の変化率の ことである.この水平勾配の大きい地域が帯状に つながる場所は,地震時にずれた断層の上面端が 浅いところで,その地上側への延長部分にあたる と推測される.図 4 から,水平勾配の大きい地域 は,きわめて細い帯状に既存の活断層に一致する ように存在しており,今回の地震が既存の活断層 を含む場所で発生したことは明らかである.また, 変位の水平勾配からも,ムザファラバード付近で の地殻変動量分布の形状の屈曲が明瞭に現れてお り,この付近が地殻変動からみると特異な場所で あり,この場所を境に 2 つの断層グループに分け ることができる.     ところで,ここでの既存の活断層とは,地形学 的に見いだされたものであり(Kumahara and Na-kata 2006),過去に同様な変動を引き起こす地震 が繰り返し発生することで個々の地震に伴う地殻 変動が蓄積し,その結果として活断層地形を形成 していると考えることができる(Fujiwara et al. 2000;藤原ほか 2000).したがって,2005 年パキ スタン北部地震の地殻変動が既存の活断層と一致 することは,過去に同様な地震が繰り返し発生し 図 4 地殻変動(図 1(c))の水平勾配(北東-南西方向)と断層モデル 各長方形はシミュレーションによって求められた地下の地震断層の位置で,点線が断層 の深い側の端にあたり,各矢印は断層のすべりを表す.黒線は活断層(Kumahara and Nakata 2006).

Figure 4 Surface displacement gradient map of Figure 1(c) in the northeast-southwest direction

The black curves show the locations of active faults (Kumahara and Nakata 2006). Rectangles are the calculated fault positions, and dashed lines show the deeper side of each fault and arrows show slip vectors of each fault plane.

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ており,今回の地震もそれに類似した固有地震で あったことを示唆するものである.     なお,図 4 からも既存の活断層の南東延長に地 震断層が存在することが明らかであり,空中写真 や衛星画像により地形学的に判別された変動地形 を南東に延長すれば,今回検出された地殻変動の 傾向と符合すると推定される.ただし,短時間に 大量の写真や画像を判読することは困難であるの で,広域的に同一のデータ処理を適用して得られ る SAR を利用した地殻変動検出は,地表地震断層 の把握にきわめて有効であることがあらためてわ かる.      上記の議論からも,地震による地殻変動と活断 層地形の空間的分布が非常に似ているという単純 な事実がわかる.たとえば図 2 の鳥瞰図を見れば わかるように,谷もしくは地形の境界に沿って活 断層が走っており,地形と地殻変動分布の相関の 高さは明らかである.過去の地震による地殻変動 の蓄積が現在の地形を作っている場所があること は,兵庫県南部地震(藤原ほか 2000)や岩手県内 陸北部地震(Fujiwara et al. 2000)でも SAR によっ て確認されており,面的な地殻変動検出技術によ って一目瞭然となった.       2.  地震断層モデルの構築      SAR によって求められた 3 次元の地殻変動量(地 表の変位量)を用いて,地下の断層の位置とその 動きを表すシミュレーションを行い,断層モデル を作成した.     まず,初期的なモデルとして,各断層が長方形 ですべり量が各断層面ごとに一様としたものを 4 枚配置したモデルを仮定し,各断層要素パラメー タを最小二乗法で決定した(図 4).しかし,この モデルでは地表の地殻変動量を必ずしもよく表現 図 5 詳細な断層モデルシミュレーションによって求められた断層面上でのすべり分布 青矢印は水平方向のすべり,カラーは鉛直上方向のすべり量を表す.点線は断層面の 深さ(km)を表す.

Figure 5 Distribution of detailed slip on the earthquake faults

Blue arrows show horizontal slip and a color map shows vertical slip calculated by fault model simulation. Dashed line shows depth of the fault plane (km).

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できないことがわかった.     次に,4 枚断層モデルの断層面位置を固定し,断 層面をやや広げた上で,断層面上のすべり量をよ り細かく推定した(図 5).このモデルによる地殻 変動は元の地殻変動をよく表しており,断層面上 のすべり量が一様ではなく,すべり量が図 5 のよ うにかなり複雑に分布していることがわかった.     4 枚断層すべりモデルでは,ムザファラバード北 部で断層走向を変えており,詳細すべり量分布モ デル(図 5)においても,ムザファラバード付近を 境にすべり量が大きく異なった分布をしている.     さらに,ムザファラバードから断層傾斜方向(北 東)にそのまま延長した先の断層最深部付近に, USGS による震源位置がある.また,この震源はす べり量推定値が最大となる部分の最深部でもあり, かつ断層傾斜角が変化している場所付近でもある. USGS による震源位置の精度に問題がなければ,か なり興味深い一致であり,地震の発生過程の推定 に役立つ事実であろう. IV 最後に-「だいち」への期待   防災・減災を視野に入れた場合,本研究からは 2 点の重要な示唆が得られた.1 点目は,本地震が既 存の活断層で起きたことを明らかにしたことによ り,将来の地震災害の推定には既存の活断層の調 査がきわめて重要であることが再認識された.そ して 2 点目は,SAR 観測が地震断層とその動きを 明らかにしたことにより,地震直後に被災地域の 推定が可能であることを示したことである.つま り,断層の位置とその動きから被害の大きな地域 を大まかに推定することは容易である.被災地か らの情報がなくとも,大きく動いた断層直上にあ るバラコットやムザファラバードの被害が大きそ うなことはすぐに想像できることである.すなわ ち,救助・救援活動をどこに集中させればよいの かについての重要な情報となる. このように衛星 SAR 観測は学術面だけではなく 防災面でも重要な役目をはたすことがわかる.現 在使用できる SAR 衛星は今回使用した ENVISAT のほか,カナダの RADARSAT-1 などがある.これ らの衛星は木の葉や枝を透過できない C-バンドと 呼ばれる波長の短い電波を使用しており,日本の ように植生が多い地域では必ずしも良好な結果を 得ることができない.しかし,日本の宇宙航空研 究開発機構(JAXA)が 2006 年 1 月に打ち上げた 陸域観測技術衛星「だいち」には,波長の長い L-バンドの SAR が搭載されており,今後の活躍が期 待される. (2006 年 9 月 25 日受付 2006 年 11 月 8 日受理) 文    献  国土地理院 2005. 人工衛星によるパキスタン北部 地 震 の 地 殻 変 動 の 検 出 ( 記 者 発 表 ). http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/20 05/1111.htm 藤原 智・飛田幹男 1999. 地表変動検出のための 干 渉 SAR 画 像 作 成 技 術 . 測 地 学 会 誌 45: 283-295. 藤原 智・小沢慎三郎・村上 亮・飛田幹男 2000. 干渉 SAR によって得られた地表変位の勾配解析 による 1995 年兵庫県南部地震の地表断層位置推 定. 地震 2 53: 127-136. 飛田幹男・西村卓也・小沢慎三郎・藤原 智 2006. SAR 観測が捉えた 2005 年パキスタン北部地震 の地殻変動(2):SAR 画像マッチングと 3 次元変 動マップ. 日本地球惑星科学連合 2006 年大会予 稿 集 . http://www.jpgu.org/publication/cd-rom/2006cd-rom /pdf/D124/D124-017.pdf

Fujiwara, S., Nishimura, T., Murakami, M., Nakagawa, H., Tobita, M., and Rosen, P.A. 2000. 2.5-D surface deformation of M6.1 earthquake near Mount Iwate detected by SAR interferometry. Geophys. Res. Lett. 27(14): 2049–2052.

Fujiwara, S., Tobita, M., Sato, H.P., Ozawa, S., Une, H., Koarai, M., Nakai, H., Fujiwara, M., Yarai, H., Nishimura, T., and Hayashi, F. 2006. Satellite data gives snapshot of the 2005 Pakistan earthquake. EOS,

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73-77.

Kumahara, Y., and Nakata, T. 2006. Active faults in the

epicentral area of the 2005 Pakistan earthquake.

Special Publication No.41, Research Center for Re-gional Geography, Hiroshima University.

Tobita, M., M. Murakami, H. Nakagawa, H. Yarai, S. Fujiwara, and P. A. Rosen 2001. 3-D surface defor-mation of the 2000 Usu eruption measured by matching of SAR images. Geophys. Res. Lett. 28(22): 4291–4294. <著者略歴> 藤原 智(ふじわら さとし) 国土地理院 企画部 <著者略歴> 飛田幹男(とびた みきお) 国土地理院 地理地殻活動研究センター 宇宙測地研究室 <著者略歴> 佐藤 浩(さとう ひろし) 国土地理院 地理地殻活動研究センター 地理情報解析研究室 <著者略歴> 小沢慎三郎(おざわ しんざぶろう) 国土地理院 地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室 <著者略歴> 宇根 寛(うね ひろし) 国土地理院 地理地殻活動研究センター 研究管理課

図 2    南側上空から見た地殻変動(図 1(c))と活断層(Kumahara and Nakata 2006)の鳥瞰図  Figure 2 A bird's-eye view of crustal deformation (the same as Figure 1(c)) and active faults (Kumahara
Figure 3 Full 3-D crustal deformation and active faults (Kumahara and Nakata 2006)
Figure 4 Surface displacement gradient map of Figure 1(c) in the northeast-southwest direction
Figure 5 Distribution of detailed slip on the earthquake faults

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