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論文審査の結果の要旨 氏名:清

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:清 水 尚 憲

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:統合生産システム(IMS)における ICT 機器を組み合わせた支援的保護システムの構築とリス ク低減方策に関する研究

審査委員: (主査) 教授 高 橋 聖

(副査) 教授 吉 川 浩 名誉教授 中 村 英 夫

本論文の研究領域は,機械安全,中でもプレス機械,木工機械,食品加工用機械を対象とした保護装 置の開発である。また,保護装置の要素技術として,RFID システムや UWB アクティブタグシステム,

3D-LiDAR(レーザーレーダー)や光通信システムを利用した個体識別,作業者の 3 次元位置確認に関す る研究も本研究領域に含まれる。近年,日本の産業現場の生産形態は,単体機械を組み合わせた統合生 産システム(Integrated Manufacturing System:IMS)が主流となりつつある。IMS では,自動機械の 非定常作業時における危険点近接作業(作業者が機械の可動部を停止させずに可動部に近接した状態で 行う運転確認,調整,保守・点検,修理,清掃等の作業)において,経験の少ない作業者による労働災 害が依然として高い割合で発生している。さらに,生産現場の作業形態は,安全領域と危険領域を分離 する作業形態から,人と機械の共存・協調型作業形態へと変化しており,定常作業においても,国際安 全規格による機械安全の原則である停止と隔離の原則だけでは十分なリスク低減ができず,高い残留リ スクが作業現場に残存していることが問題となっている。このように IMS で特異的に発生する新たなリ スクに対する低減方策は,人の注意力に大きく依存しているのが現状であり,適切な安全管理方策につ いては,十分に示されているとはいえない。今後,IMS を対象とした新たなリスク低減方策が必要とな る。

以上のような課題に対し,申請者は,まず国内の労働災害の分析を通し,IMS の安全性に関する問題 点を明らかにした上で,残留リスクを低減するための具体的な方法として,ICT 機器を組み合わせた「支 援的保護システム」を新たに構築した。支援的保護システムは,RFID タグシステムや,ステレオカメ ラなど,適切な ICT 機器を組み合わせた安全管理支援システムであり,IMS に導入することにより,人 の注意力に大きく依存していたシステム運用のリスク低減を確実に向上させるものである。そして,4 つの実証実験を行うことで,ICT 機器の組み合わせの最適化や,リスク低減効果の検証も行っている。

この支援的保護システムは,特許申請を行うとともに,本研究の成果を盛り込んだ国際安全規格 ISO/TR22053「支援的保護システム」の策定作業も進められている。さらに,ISO11161「統合生産シス テムの安全性」の改正内容にも具体的な例として引用される予定である。

以上のように,本論文は,社会に与える影響も大きく,技術領域での水準も高いものである。以下,

論文の章立てに沿って審査の内容を報告する。

論文は,第 1 章の序論から第 6 章の結論に至る全 6 章から構成されている。

「第 1 章 序論」では,本研究の背景と目的,本論文の構成および用語の定義についてわかりやすく 説明されている。本章では,本研究の課題を明確に浮き上がらせており,本論文の重要性が明確にされ ている点で評価できる。

「第 2 章 統合生産システム(IMS)と労働災害」では,ISO で定義された IMS の概要とその安全性に ついて整理するとともに,過去の労働災害の分析から,災害防止対策およびヒューマンエラーに対する リスク低減方策の必要性について述べている。IMS では,複数の機械が連動して生産を行っているため,

単体の機械を対象とする停止と隔離の原則による安全の考え方に加えて,対象となる機械の動きが他の 機械の動きに関係していることを考慮して保護方策を実施する必要があることなど,IMS 特有のリスク 低減方策の必要性を明らかにしている点が評価できる。また,平成元年〜平成 14 年および平成 26 年〜

平成 30 年の 2 つの期間における機械に起因する労働災害分析を行い,技術的安全方策が困難な作業に よる災害が増加しており,これらの作業による残留リスクに関しては,人の注意力のみに依存しない確

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定性の高い安全管理支援システムの構築が必要であると述べている。本章は,災害事例の分析も踏まえ,

次章以降に続く支援的保護システムを構築する上で必要となる要件を明確にした点で高く評価できる。

「第 3 章 残留リスクの低減方策に ICT 機器を利用する場合の考え方」では,ICT 機器を生産現場の リスク低減方策として使用するときの適用方法や,国内の機械を対象としたガイドラインに規定されて いるリスク低減方策である,3 ステップメソッド(本質的安全設計方策,安全防護,使用上の情報提供)

と支援的保護システムの関係について述べている。まず ICT 機器を安全防護の代替として適用する場合 は,単体では保護装置としての安全の要件を満たすことは困難であるとしている。また,3 ステップメ ソッドを適用した後の残留リスクに対して適用する場合には,すでに実施されているリスク低減方策や 安全管理対策などの代替として使用してはならないこと,設備の安全関連部に直接関与させてはならな いことを主張している。そして,支援的保護システムを適用する場合,事前にリスクアセスメントを行 い,3 ステップメソッドにてリスクを低減しておくことが前提となり,その上で ICT 機器を適用するた め,万が一,適用した ICT 機器が故障した場合には,採用されている保護装置等により当該機械を停止 させたり,危険区域に侵入することができなくなるような階層インタロックを構成することが必要であ ると述べている。本研究に関する海外の研究は少ない。特に ICT 機器を組み合わせた支援的保護システ ムを,安全性の分野で,特に 3 ステップメソッドのステップ 2 以外の部分で利用することは,本論文の 新規性として非常に高く評価できる。

「第 4 章 統合生産システムにおける「支援的保護システム」を適用した実証実験と考察」では,IMS に支援的保護システムを導入した環境下で作業を行うことを想定した,4 つの実証実験を行った結果と 考察を述べている。実証実験 1 は大型モータ製造工場において,1 人の作業者が 1 つのタスクを行うこ とを条件とした実験である。実証実験 2 は自動車用バンパ組立ラインにおいて,1 人の作業者が複数の タスクを行うことを条件とした実験である。実証実験 3 は可搬式作業台自動洗浄ラインにおいて,複数 の作業者が複数のタスクを複数のタスクゾーンで行うことを想定した実験である。これら 3 つの実証実 験では,いずれも支援的保護システム導入後には,導入前に発生していた不安全行動の発生が 0%とな り,高いリスク低減効果を得ることができることを示している。さらに,実証実験 4 では,支援的保護 システムの妥当性について,行動分析学的手法を用いて,生産性の定量評価に加え,作業者に対する精 神的・肉体的な負荷についての評価も行っている。その結果,作業効率および安全面からも支援的保護 システムの導入が望ましいことを示唆している。以上の実証実験は,いずれも綿密かつ周到に準備され たもので,本研究で構築した支援的保護システムの有効性を定量的に実証した点で高く評価できる。

「第 5 章 支援的保護システムの国際規格化」では,ISO/IEC の規格体系と JIS の関係を明確にした 上で,ISO/TR22053「支援的保護システム」をグループ安全規格(B 規格)としての発行を目指している ことについて述べている。また,同時に行っている ISO11161「統合生産システムの安全性」の改正作 業についても,構築した支援的保護システムを付属書(Annex B)に追加する形での完成を目指すとと もに,今後 JIS や労働安全衛生規則への適用も視野に入れた安全衛生活動について論じている。労働災 害をなくすためには,リスク低減方策を提案するだけでなく,国際規格等へ展開されることが重要であ り,申請者の研究成果を基に ISO/TR22053「支援的保護システム」の策定作業も進められている。さら に,ISO11161「統合生産システムの安全性」の改正内容にも具体的な例として引用される予定であり,

その社会的意義は大いに評価できる。

「第 6 章 結論と今後の課題と展望」では,申請者の行った研究の成果や今後の課題を述べている。

本研究で取り上げた,単体機械を組み合わせた IMS で発生する新たなリスクに対する低減方策は,人の 注意力に大きく依存しているのが現状であり,適切な安全管理方策が十分に示されていないという課題 があったが,本研究によって,この課題に対して十分な成果が得られたことを明確に結論づけている。

申請者の研究は,IMS で発生する残留リスクを低減するための具体的な方法として,ICT 機器を組み 合わせた「支援的保護システム」を新たに構築し,人の注意力に大きく依存していたシステム運用のリ スク低減を確実に向上させるものである。また,本研究では,国際規格等への展開にも言及しており,

広く世界の労働災害低減にも貢献する可能性を持っているものとして非常に高く評価できる。

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以上のことは,本論文の申請者が自立して研究活動を行い,又はその他の高度な専門的業務に従事 するに必要な能力及びその基礎となる豊かな学識を有していることを示すものである。

よって本論文は,博士(工学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上

令和2年10月22日

参照

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