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2 地域熱供給都市部のエネルギー効率化 Version 10 Printed December, 2016 表紙の写真カバー写真 : ヴィボー熱電併給プラント建築家 :Kjelgaard & Pedersen 写真 :Kontraframe 監修ステートオブグリーン State of Green)

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全文

(1)

グリーン経済・社会のための白書

都市部のエネルギー効率化

地域熱供給

この白書の内容

地域熱供給の軸 使用燃料の柔軟性と安定供給 計画と規制 -前提条件 規制プロセス、役割と必須条件 熱源の多様化により持続可能性が確保される地域熱供給 エネルギーを知的に利用するカギ 蓄熱の必要性 経済的な節約と安定供給 地域熱供給の未来 世界中の潜在力の実現

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地域熱供給 都市部のエネルギー効率化 Version 1.0 Printed December, 2016 表紙の写真 カバー写真:ヴィボー熱電併給プラント 建築家:Kjelgaard & Pedersen

写真:Kontraframe 監修

ステートオブグリーン(State of Green) 編集委員会

デンマーク・エネルギー庁 Helle Momsen Fredslund, hmf@ens.dk

デンマーク熱供給協会 (DBDH) Morten Jordt Duedahl, md@dbdh.dk

デンマークエネルギー産業連合会 Hans Peter Slente, hps@di.dk

白書への寄稿者

ABB Denmark Martin B. Petersen, martin.b.petersen@dk.abb.com

Arcon-Sunmark Søren Elisiussen, se@arcon-sunmark.com

Babcock & Wilcox Vølund Ole Hedegaard Madsen, ohm@volund.dk

COWI Theodor Møller Moos, tmm@cowi.dk

Danfoss Jonna Senger, senger@danfoss.com

Grundfos Anders Nielsen, anders@grundfos.com

HOFOR Henrik Lorentsen Bøgeskov, hbog@hofor.dk

Kamstrup Steen Schelle Jensen, ssj@kamstrup.com

Logstor Peter Jorsal, pjo@logstor.com

Logstor Jørgen Ægidius, jae@logstor.com

Ramboll Anders Dyrelund, ad@ramboll.com

Ramboll Flemming Ulbjerg, fu@ramboll.com

VEKS Lars Gullev, lg@veks.dk

詳細についてのお問い合わせ

この白書のご用命やこれに関連した刊行物に関しては、State of Green info@stateofgreen.com (英文)、 もしくは tyoamb@um.dk (和文)にお問い合わせください。

Copyright State of Green 2016

(3)

この白書について

地域熱供給の価値は、暖房と給湯と冷房が個別ではなく、集中的に供給されることにあります。ある場所ではそれほ どの価値のない熱(もしくは冷気)も、それが必要とされている場所に運ばれることで非常に有益になります。地域熱 供給はこの価値創造のためのシステムです。温水または冷水は輸送手段として利用されます。簡単に言えば、地域熱 供給とは価値のある熱を持った水を、生産地から消費地へ運ぶことなのです。システムの効率は、温水または冷水の 製造、熱損失を抑えた供給、かつ消費者側での適切な設備の設置と利用の3つすべて要素から成り立ちます。 地域熱供給は、工業地帯や人口密集地域など暖房または冷房の必要性(熱密度)が高い多くの場所で実現可能で す。地域熱供給の初期投資の大部分は、地中にパイプを敷設することによりインフラを作ることです。高品質の断熱 パイプを使用することで、インフラの耐用年数を長くすることが可能で、時とともに地域熱供給を運営するためのト ータルコストのほんの一部になります。消費者側での適切な設備の設置、供給された熱の適切な計測および温度管 理により、利用や支払いに手間がかからず、改善された室内環境の提供につながります。 この白書は、デンマークと世界中の100年以上にわたる地域熱供給の経験の集大成です。ここでは、システム、規制 の枠組み、計画、エネルギー源の効率との柔軟性、蓄熱や将来の展望についてなど、世界の関連事例を含めながら、 地域熱供給の導入や拡大したい時に考慮すべきいくつかの教訓に焦点を当てています。地域暖房と地域冷房の技 術の大部分が同じであることから、主に地域熱供給という用語を用いていますが、地域冷房においても似たようなソ リューションを適用することが可能です。 この白書について 3

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目次

効率と競争力のカギとなる地域熱供給 ...3

地域熱供給は多くの実績のあるコンセプトで、グリーンな経済成長を促進し、今後、柔軟性の高い

エネルギーシステムの中心的存在となります

地域熱供給の軸 ...6-7

使用燃料の柔軟性と安定供給

最新の地域熱導管-エネルギーを節約する上で最も効率的な方法 ... 8

スマート地域熱供給 ...9

計画と規制 -前提条件 ... 12-13

規制プロセス、役割と必須条件

コペンハーゲン広域の総合地域熱供給システム ... 14

ハンブルグ・ハーフェンシティの地域熱供給 ... 15

エネルギー効率が高まるシャングリ・ラ ...16-17

熱源の多様化により持続可能性が確保される地域熱供給 ...18-19

エネルギーを知的に利用するカギ

受賞した太陽熱地域熱供給 ...20-21

余剰熱を利用した暖房 ... 22

水分を地域熱供給に変える ... 23

蓄熱の必要性 ...24-26

経済的な節約と安定供給

大規模蓄熱の可能性の発見 ... 27

地域熱供給の未来 ...28-29

世界中の潜在力の実現

低温地域熱供給に移行する自治体 ... 30-31

地域冷房がコペンハーゲン中心部のCO

2

排出量を削減する ...32-33

ステートオブグリーン(State of Green)について ...34-35

デンマーク・エネルギー庁、デンマーク熱供給協会(DBDH)、デンマークエネルギー産業連合会

目次 5

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地域熱供給システムの概要

熱は生産されるかもしくは余剰熱として多くの供給源(イラストの下の部分)から収集され、効率が高い地域熱供給の配管を通って消費者に届けられま す。蓄熱設備を利用すれば、短期から数か月もの長期の間、熱の生産を一時的に止めることが可能です。 複数の熱生産施設を設けることによって、地域熱供給システムの経済性を継続的に最適化することができます。消費者に届く熱は単一の燃料からではな く、利用可能な最適な供給源から生産されています。 6 地域熱供給システムの概要

(7)

地域熱供給による価値創成 地域熱供給システムは、基本的にまとまった場 所で製造された熱を、熱導管を通して多くの消 費者に供給します。このように、例えば工業排熱 などある場所ではまったく、もしくは少しの価値 しかない熱も、小さな町や大規模な都市社会な ど熱需要がある場所に運ばれることで高い価値 に変換できます。例えば、工業地帯からいくつか の住宅地に熱を供給することがこれにあたりま す。 個別暖房・給湯と比較した際の地域熱供給の 優位性 個別暖房・給湯では、石炭、石油、天然ガス、(電 気)など特定の燃料タイプ一種類のみが利用可 能です。これは、消費者にとって、特定の燃料の 価格上昇に暖房費が経済的に完全に左右され ることを意味します。その点、地域熱供給では、 自由市場の原理による異なる種類の燃料の価 格の変動を上手く利用することが可能です。そ の他、地域熱供給は燃料輸入からの脱却や二 酸化炭素排出量の削減目標など、社会の意向や 政治的目標を満たすことも可能にします。要す るに、暖房・給湯の燃料を変えたい時に何千と いう個々の住宅の機器を変えるよりも、ひとつの 集中施設で燃料を変えるほうがはるかに簡単で す。大規模な地域熱供給システムでは、燃料の 変更をほとんど日常的に行うことが可能なので す。 地域熱供給は多種の燃料を利用可能 集中型の地域熱供給は、複数の種類の燃料を 利用しやすく、熱製造がとても柔軟になります。 これは、供給の安全保障と生産効率の両方を向 上させます。もし設備のひとつが故障しても代替 設備を利用でき、地域熱供給事業者は常に最も 安い燃料を選べます。地域熱供給の構築は、低 品質の熱を社会での利用を可能にします。産業 や廃棄物処理からの排熱や熱電併給(CHP /コ ジェネレーション)の熱も熱供給に利用できま す。 100年前から今日まで尊ばれる技術 世界では、利用可能なすべての持続可能エネル ギー資源を最善の方法で活用することにいっそ う重点的に取り組む必要があります。これは、余 剰熱をうまく活用し、化石燃料から太陽熱やバ イオマスなどの再生可能エネルギーに転換し、 同時に電気と熱を包括的に捉えることを意味し ます。将来的には、大規模な季節蓄熱の形で夏 の熱を冬のために貯めておく可能性も拡大する でしょう。地域熱供給は、こうした課題に対する 答えのひとつを提供し、だからこそ明日の都市 社会やスマートシティの中心として考えられてい るのです。地域熱供給の構築は小規模から開始 することが可能で、時間をかけて徐々に都市社 会全体をカバーしていくことができます。コペン ハーゲンはその好例です。ここでは1903年に小 さな地域のシステムから始まり、現在では市の 98%に地域熱供給が普及しています。

地域熱供給の軸

使用燃料の柔軟性と安定供給

地域熱供給はリジリエント・強靱です。同時に、地域熱供給は100年以上の歴史があり、

今日では持続可能な都市への転換の重要な役割を担っています。

ラース・ガルブ VEKS代表取締役社長、DBDH会長 地域熱供給の軸 7

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熱供給事業の財務状況や環境負荷は、 配管システムの影響を受けます 地域熱供給の配管システムは社会と地域熱供 給事業者の資本財です。配管システムは、熱を供 給することで消費者に快適さと便利さを提供し ます。地域熱供給網の機能性は、地域熱供給事 業全体のエネルギー効率、二酸化炭素排出や運 転維持費に重要な影響を与えます。今日の断熱 パイプを使った配管システムの耐用年数は30 年以上です。従って、長期の総所有コスト(TCO) の見直しや最適化を行うことで、 機能性を確保 し、配管システム及び地域熱供給運営のエネル ギー効率を高めることが重要になります。このよ うに、最新の配管システムは、熱供給網への投 資を守る役割を果たします。 総所有コストが最適な配管システムを 選択するカギ 配管システムの耐用年数は数十年にも及びま す。耐用年数が長いことから、初期コストが高く ても高品質のパイプを選択するメリットがあり ます。地域熱供給システムの総所有コストの大 部分が配管システムからの熱損失であること は、計算、実証、経験が証明しています。したがっ て、システムの総運用期間における熱損失を最 小限にすることがエネルギー効率、ひいては熱 供給事業の運営費の削減に貢献することになり ます。これは、デンマークのヒレロド(Hillerød)で の例でも示されています。

最新の地域熱導管-

エネルギーを節約する上で

最も効率的な方法

将来の地域熱供給プロジェクトには総コストが極めて重要

地域熱供給ネットワークの機能性はエネルギー効率、二酸化炭素排出量及び運営コストに大きな影響を及ぼします。

LOGSTOR地域熱供給営業責任者 ヨエン・エギディウス 、製品マネージャー ピーター・ヨーサル ヒレロド市における総所有コストの削減 ヒレロド市の熱供給網の検討にあたり、総所有コストの考えが導入された。 プロジェクトの詳細: • 14 kmの埋設配管 主にdn150 – dn100 • 運転条件 Tf/Tr:/Ta 80/40/8°C • エネルギーコスト 27 ユーロ/MWh 必須システム:ツインパイプ LOGSTORからの複数の提案: • TWINpipe (ツイン断熱パイプ)シリーズ2 • TWINpipe (ツイン断熱パイプ)シリーズ3 選択されたソリューション: 入札の評価基準には、初期コストに加えて、総資本コストの約40% に該当する30年間を通 じての熱損失に関わる運営コストも含まれていました。提案された製品とソリューションの 技術的価値も、評価に含まれました。 プロジェクト所有者は、優れた断熱性を持つことで運営コスト面での利点を示し、TCOを考 慮した上での最適なソリューションを提示したLOGSTORのTWINpipe(ツイン断熱パイプ)シ リーズ2を採用することにしました。 メリット: ツイン断熱パイプシリーズ1と比較して、約20%エネルギーを節約できるエネルギー効率の 高いシステムであり、同じシリーズ2のシングル断熱パイプ2本の場合と比較して熱損失を 40%少なくできます。 配管システム最適化の重要事項 総所有コストはいくつかのパラメーターの影響 を受けます: 設置された断熱パイプシステムの種類 シングル2本もしくはツイン断熱パイプ。 断熱材の厚さ 断熱材の種類は、エネルギー損失に影響を与え ます。 製造方法 ウレタンフォームの適用方法。 拡散バリア層 オプションで外層のポリエチレンケーシングとウ レタン断熱材の間にアルミニウムもしくはエチレ ンビニルアルコール(EVOH)のバリア層を設ける ことにより、注入された脱縁ガスがウレタンに留 まるようにします。 配管デザイン 製造者のガイドラインとEN13941に従ったデザ インにより、システムの簡素化、及び熱ロスの要 素となるU字型ループなどを削減し、配管の全長 の短縮に繋がる。 運営条件 ウレタンの絶縁性は温度の影響を受けるので、 運用温度を下げると、エネルギーの節約になり ます。 漏水検知システム 配管システムの状況と漏水検知の連続監視によ る、耐用年数の延長とメンテナンス費用の削減。 8 最新の地域熱導管- エネルギーを節約する上で 最も効率的な方法

(9)

スマートメーターとの新たな可能性 2012年、デンマーク第二の都市オーフスの地 域熱供給事業者であるAffaldVarme Aarhus (AVA) は、域内の3分の2にあたる古い熱量計を 交換することになった時、できる限りインテリジ ェントなシステムに切り替えを行うと決めまし た。Kamstrupのスマートメーターソルーション を導入することにより、全56,000カ所の熱量計 の遠隔検針を可能とし、同時に漏水監視を導入 して、消費者の関与を促進しました。スマートメ ーターの導入により取得できるデータ量の増加 は、全く新しいレベルの分析や故障点検、改善 の選択肢の提供を可能としました。この設備は、 投資した3,300万ユーロに関して、更なる頻度 の高いデータ収集を基にシステムの最適化を図 り、設備投資の回収期間を半減することが期待 されています。 水のムダを少なく、コスト削減 す。さらに、AVAではスマートメーターの導入に より計測ミスや計測漏れ対応による管理費を ほぼ削減しました。現在までの導入による成果 は、見積もっていた1日当たり50m3の水損失の 削減の倍の実績を出していて、年間24万ユーロ の地域熱供給の循環水の節約に相当します。目 下、36,000台の新しいスマートメーターが稼 働していますが、すでにAVAは、一日あたり100 m3を削減しており、熱供給事業の損益だけでな く環境にも貢献しています。同様に、メーターか ら得られるデータを基にAVAは消費者側での使 用状況等をより正確に把握できるようになり、よ り最適な熱の利用方法などについて助言できる ようになりました。「ひとつのビジネスプロジェク トとして実施しましたが、今の段階でその効果は 既に予測を上回いる。これが続くようであれば、 スマートメーターの耐用年数である16年の半分 の年月で投資を回収できる。」とAVAのプロジェ クト・マネージャーであるエリック・ブレナーは語 っています。 メーターデータが新たな知識を提供 AVAにとって、インテリジェントな地域熱供給へ の転換は、メーターデータを全く新しい形で利 用することを意味していました。顧客はeButler というアプリを使って自分のデータに直接アク セスでき、データは単なる課金のための利用に とどまっていません。エリック・ブレナーは1年以 内にAVAが熱の供給側データと消費側のメータ ーデータをつなげるスマート熱グリッドを構築 しているだろうと予測しています。これにより、過 去のデータ、消費パターン、建物のエネルギー性 能などの情報を利用して、熱供給におけるエネ ルギー効率の最適化というかつてない機会を提 供します。

スマート地域熱供給

メーターデータを使用したエネルギー効率の改善

デンマーク第二の都市では、56,000カ所の熱量計の半分をスマートメーターに交換したところ、

一日に100 m

3

の水の節約につながりました。

Kamstrup 製品管理部長 スティーン・シェレ・イェンセン eButlerで消費者の関与を促進 eButlerはKamstrupのメーターデータを可視化するためのオンライン・ソリューションです。eButlerは顧客にとって目に見える結果を示すことができる 実用的なツールです。デンマーク技術研究所(Danish Technological Institute)が行った、約1,200名の顧客インタビューに基づく研究から、eButlerを 試した人の73%が再び利用しています。利用者は全般的に非常に満足しており、eButlerの情報をもとに熱消費を削減し、その結果、実質的な節約を達 成しています。

(10)

デンマークにおける地域熱供給の歴史

1973/74.国際的なエネルギー危機に起 因するエネルギー価格の高騰により、デン マークはエネルギー自給とエネルギー効 率の改善への意欲が高まる。

エネルギー効率と安定供給の重視

国産燃料への注目の高まり

国家計画からプロジェクトベースでの取組みへの変貌

1984.北海におけるデンマークの天然ガ ス産出を開始。エネルギー省は、発電所に 天然ガス設備の設置を指示。 1990.熱供給に関する法改正で、新たな 計画システムを導入。熱計画に関する指令 と熱電併給プラント(コージェネレーショ ン/CHP)においての燃料の選択に関する ガイドラインをすべての地方自治体/自治 体に提供。 1976-79. デンマークで初めての総合エ ネルギー計画の策定によって、長期エネル ギー政策とデンマーク・エネルギー庁設立 の基礎となる。熱供給に関する最初の法 律が、現在も続く公共における熱供給計 画時代のスタートとなる。 1985-86.デンマーク議会が原子力発電 に依存しない公共エネルギー計画を議 決。石炭を熱供給計画から除外。原油価格 の下落に伴いエネルギー税を増税。コジェ ネレーション合意では、主要なエネルギー 政策の優先順位として小規模CHPプラン トを重視。 1992.省エネルギー、CHPおよび再生可 能エネルギー資源を後押しするために、様 々な補助金が導入される。 1981-1982.国主導での熱供給計画を 全国で実施。熱供給計画には効率的で環 境への影響が低いエネルギーシステムの 確立を目的とした「ゾーニング」も含まれ る。 1990. 天然ガスによるCHPプラントとバ イオマスを燃料とする熱を使った地域熱 供給の促進に関する政治的合意。さらに、 同合意は風力発電の設置の増加にも及ん だ。 1993-2000.電力生産におけるバイオマ ス利用に関しての政治的合意。熱供給に 関する法改正。デンマーク議会の多数派 が、主要都市以外にある250の小・中規模 CHPプラントの状況改善を決定。 10 デンマークにおける地域熱供給の歴史

(11)

地域熱供給− デンマークのグリーン経済・社会への 移行の第一歩 デンマークで最初の熱電併給プラントは1903 年に作られました。これは廃棄物焼却施設で、 廃棄物処理を行い、電気と熱を近くの病院に供 給するという2つのサービスを同時に提供する ことを可能にしました。 1920年代と1930年代には、地域の発電設備 の余剰熱を利用する地域熱供給システムが展 開されました。ここから、熱電併給(CHP)から の地域熱供給がデンマークの都市部で普及 し、1970年代までには約30%の家庭が地域熱 供給の恩恵を受けていました。 エネルギー依存と消費者コストを削減 1973〜74年のエネルギー危機まで、一人あた りのエネルギー消費量は大幅に上昇していまし た。エネルギー危機が、輸入燃料への依存を減 らし、消費者の暖房・給湯費を減らすために、省 エネが重要だということを明らかにしました。そ の結果、燃料効率の良いCHPシステムがデンマ ークの大都市だけでなく、後には小・中規模都 市でも普及させるという決定がなされました。 1979年に最初の熱供給法策定 デンマークでは1979年まで、熱供給を規制す る法律はありませんでした。国の大半は小型の 灯油ボイラーもしくは他の形式の個別暖房を 利用していました。政策目標を達成するために、 デンマークは1979年に最初の熱供給法を可決 しました。法律には、デンマークにおける熱供給 計画の在り方ついての規制が盛り込まれ、今日 も存在する公共熱エネルギー計画の新しい時 代の幕開けとなりました。 長期計画の成果の一つ - 高いエネルギー効率 今日、デンマークのすべての住宅の63%が地域 熱供給に接続されており、暖房のためだけでな く家庭用温水も供給されています。CHPで熱と 電気を生産する場合、熱と電気を別々に生産す る場合と比較して、全体のエネルギー効率は極 めて高くなります。CHPプラントのエネルギー効 率は85−90%で、熱と電気を別々に生産する場 合と比較して、全体で約30%の燃料削減が可能 です。地域熱供給とCHPは、これまでも、これから もデンマークのグリーンな社会への移行の重要 な決め手だということに変わりありません。

地域熱供給における成功のカギ

デンマークでの40年の経験から得た教訓

地域熱供給および熱電併給(コージェネレーション/CHP)の普及が、

過去数十年にわたって国全体のエネルギー効率を上げ、

二酸化炭素排出量を削減することが可能になった主な理由の一つです。

デンマーク・エネルギー庁長官 モーテン・ベック

気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー効率の3つを重視

2008.風力エネルギーやその他の再生可 能エネルギー導入に向けた条件改善につ いて政治的合意。 2012. 2012年-2020年におけるデンマ ークのエネルギー政策に関する政治的合 意。これにはエネルギー効率、再生可能エ ネルギーやエネルギーシステムにおける広 範囲にわたる野心的な取り組みや投資も 含まれる。 2020.政治的合意の履行により、2020年 には電力消費量の約50%が風力エネルギ ーによって賄われ、最終エネルギー消費の 35%以上が再生可能エネルギー源によっ て供給され、2006年比で12%のエネルギ ー消費量を削減。 地域熱供給における成功のカギ 11

(12)

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H.C. Ørsted

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Nordjylland

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! ( ! ! ! ! ! ! ! ( 0 25 50 100 キロメートル プラントの種類(容量>1 MW) 天然ガス網 供給エリア バイオ燃料 天然ガス 石炭 重油 太陽熱 その他 前年に稼働なし 地域熱供給 都市ガス 集中型プラント 分散型プラント 小規模分散型、及び自家用プラント 天然ガス網

デンマークの熱供給マップ

12 デンマークの熱供給マップ

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明確な役割と役割 1979年に施行されたデンマークの地域熱供給 法は、熱供給部門の規制と、地方自治体に地域 の熱計画やエネルギーインフラに関する意思決 定と利用資源の優先順位付けの権限を与えて います。法律と付随するガイドラインはデンマー ク・エネルギー庁(DEA)によって作成されました が、法律と政策の施行は地方自治体の責任の下 にあります。 地域の知識を活用 熱供給に関わる規制に関してのデンマークのア プローチは、地方自治体が地域の熱システムの 設計に完全な権限を持ち、しかしながらその実 施については国が提示している政策と技術的枠 組みに依拠して行うという、役割を明確に分担 しています。こうして、地域熱供給プロジェクト は、熱供給部門の発展という面では国全体の野 心と一致しつつ、同時に個々の熱供給プロジェ クトに対する評価や決定は、都市計画、地域の 熱需要やその他関連する地域の考慮事項に精 通した地方自治体が行います。 1979年に制定されたデンマーク熱供給法の 主な原則: • 地方自治体は新規の熱供給プロジェクトの承 認に対して責任を負う。 • 地方自治体は最も社会経済的な利点を有す る熱供給プロジェクトを選択しなければなら ない。 • 可能な限り、(熱生産のみならず)熱電併給を 行う。 • 地域熱供給の熱価格は 「必要経費」に基づい て設定する。つまり、熱価格は実際の熱生産コ ストより高くても低くてもいけない。 デンマーク熱供給法は国全域の熱供給における ゾーニングを行っています。 各ゾーンによって異 なる熱の供給方法が推進されています。 ゾーニングは以下の通りです。 • 戸別暖房・給湯 • 天然ガス網を介して供給される天然ガスを活 用した暖房・給湯 • 分散型地域熱供給 • 集中型地域熱供給 熱の供給方法の選択は 社会経済的費用対効果の分析をもとに 熱の供給方法の選択は社会経済的費用対効果 分析に基づいている必要があります。地方自治 体が経済分析を実施しやすいように、DEAはガ イドラインと多くの社会経済的仮説を網羅した 方法論を提供しています。これらの仮説は、とり わけ燃料価格、電力価格、排出量の外部コスト や金利などの情報を含んでいます。DEAは、参考 データとして利用できるよう技術データも提供 しています。これは、熱供給の可能性を調査する 全国の地方自治体にとっての統一基準となって います。 消費者の熱価格に関する規制 熱の価格は、デンマークのすべての地域供給エ リアで同じではありませんが、熱の価格を決定 する原理は同じです。 熱の価格を設定するための方法は、法律で決め られています。法律は、消費者が支払う熱の価 格は、熱供給に関わるすべての必要経費がカバ ーすべきとしています。しかし、熱供給事業者は、 デンマークの法律で非営利でなければなりませ ん。 熱供給事業者は、熱生産および供給コスト以上 の価格を消費者に請求できません。しかし、強調 すべきは、熱供給事業者が短期および長期にわ たり財政的に持続可能であるために、コストに は資産や資金調達コストの減価償却費含まれ ているということです。従って、消費者が支払う 熱の価格は、以下の要素に影響を受けます。 • 生産設備への投資 • 地域熱供給ネットワーク(パイプなどの供給イ ンフラ)への投資 • 生産設備の運転、保守 • 地域熱供給インフラの運営、保守 • 燃料価格 • 生産設備の効率 • 地域熱供給ネットワークにおける熱損失 • 税金と付加価値税(VAT) • 財政支援/助成金 • 電力価格(電力を利用する、もしくは熱と同時 に電力を生産する地域熱供給施設の場合) 投資コスト対運用コスト 地域熱供給システムの確立には、集中型ではな い熱供給手段(個別暖房や給湯など)と比較し て多額のインフラ投資を必要とします。しかし、 運営コストと環境への影響は、多くの場合、かな りの水準で低くなります。例えば熱生産がエネ ルギー効率の高いCHP(コジェネ)で作られた場 合、もしくは鉄鋼またはセメント工場からの排熱 を活用した場合は、とくに当てはまります。 均等化されたエネルギーコスト デンマークの経験から、地域熱供給の実現可能 性を評価する場合、熱供給システムの寿命全体 のコストを考慮することが重要です(一般的に、 「均等化された発電コスト」 もしくは「LCoE」と 呼ばれる)。多くの場合、ライフサイクル分析に基 づき地域熱供給が最も適したソリューションと 評価されます。大規模なインフラ投資は、低い年 間コストにより短い年数で回収されます。もちろ ん、実現可能性はその特定の地域の熱需要や熱 密度を含めた多くの要因に依存します。初期コ ストが高くなっても、高品質の設備・部品を使用 することにより年間コストは低くなり、多くの場 合、より低い保守コストと長い寿命に起因して 熱供給システムの寿命全体を通じたコストも低 くなります。これはまた、熱消費者の負担額が低 くなることも意味します。質の高い地域熱供給 ネットワークの技術的寿命は、通常40~50年で あるということも考慮に入れる必要があります。

計画と規制 − 前提条件

デンマークでの地域熱供給プロジェクトにおける規制プロセス、役割と必須条件

1979年に施行された最初の熱供給法は、役割と権限の分担について定義しています。

これは、熱供給プロジェクトの計画と実施を規制する主な法律です。

デンマーク・エネルギー庁長官 モーテン・ベック 計画と規制 − 前提条件 13

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歴史 1903年から1979年にかけて、地域熱供給は発 電所や廃棄物焼却炉の排熱をベースに、重油ボ イラーも含め、戸別のボイラーの代替案として 着実に発展しました。1979年以降、熱供給法を 軸に電力、廃棄物処理と共生しながら大幅に増 加しました。最近では、天然ガス供給地区もCO2 排出量コストも考慮し、費用対効果の高い熱供 給を目指し、地域熱供給に転換されてきました。 所有権 熱供給網と廃棄物処理業者は自治体所有 で、20の限定された地域に熱供給を行う事業体 は自治体もしくは消費者に所有されています。従 って、すべての事業体が共に、コペンハーゲン地 区の消費者に対し最も費用対効果の高いソリュ ーションを見出すことに大きな関心を抱いてい ます。 地域熱供給システム 熱供給網、蓄熱タンクおよび熱負荷配分ユニ ットは、資源の利用の最適化と競争力のある 熱価格の実現に向けて不可欠です。コペンハ ーゲン広域では、床面積7,500万平方メートル 分の熱を供給しています。年間の熱売上高は 8,500GWhで生産量は10,000GWhです。シス テムの骨格部分は、全長160km、25気圧の熱供 給網(地域導管)(最高110℃)と24,000m3×3 基の蓄熱タンク。このシステムは熱交換器を通じ てより狭い地域に熱を届ける熱供給網と接続さ れています。熱供給網を管轄する事業者が組織 している熱市場ユニットは、CHPプラント、廃棄 物焼却炉および50以上のピーク時対応ボイラ ーやその他の小規模熱供給事業者の熱生産を 最適化する責任があります。 今後の展開 コペンハーゲン広域システムは、第四世代地域 熱供給への移行過程にあります。 • CHPプラントは石炭や天然ガスから、主にワラ や木材に移行 • 蓄熱容量を、大きいタンクや地中貯蔵で大幅 に増加 • 地域冷房システムの数を、冷水貯水、冷温水 のコジェネレーションおよび季節貯蔵(ATES) など地域熱供給との共存することによって、5 から20以上に増加 • 合計熱量1,000GWh以上に相当する消費者 を、戸別のガスボイラーから、地域熱供給シス テムへ切り替え • 熱供給網は、近隣の2つの自治体にさらに拡 大 • 変動する風力発電を補うために、より大きなヒ ートポンプや電気ボイラーを設置 • 古い蒸気での熱供給の残りの部分は、2020 年以降なるべく早い時期に温水でのシステム に交換 • 超高温水(165℃)は産業行程で使われる限 定的な需要しかない為、唯一残っている超高 温ネットワークを一部は低温ネットワークに 移行 • 需要側の設備を更新することにより、供給さ れるお湯の更に効率の高い利用と戻り湯の温 度の低下を実現 • 従って、熱供給網内の温度を低くし熱損失を 低減

コペンハーゲン広域の

総合地域熱供給システム

22

自治体、100万人へ費用対効果の高い低炭素熱供給

自治体と消費者が所有する地域熱供給事業者が総合的な地域熱供給システムを設立。

熱は廃棄物焼却炉(25%)と発電所(70%)で効率的に作られます。

ボイラー設備による熱の生産はわずか5%です。システムは第四世代地域熱供給へ移行段階にあります。

ランボル シニア・マーケティング・マネージャー アナス・デュアルン CTRとVEKSが所有する熱供給網は、最適な熱 生産と運営を行うため、2つのCHPプラント、3つ の大規模廃棄物焼却炉と20の地域の熱供給 事業者と相互接続しています。最大の熱供給事 業者HOFORが運営している蒸気システムも、 温水システムに転換しています。熱供給事業者 Vestforbrængingは、同社の顧客への熱供給 を行いさらに夏の余剰熱は20km北のヒレロド (Hillerød)に供給しています。 14 コペンハーゲン広域の 総合地域熱供給システム

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類のない都市開発 Iドイツでは、全世帯の約14%が地域熱供給シ ステムとつながっています。ハンブルグ市は地域 熱供給における先駆的存在です。同市の地域熱 供給網は全世帯の19%に接続しています。担当 政治家は、地域熱供給インフラを拡大すると断 言しています。同市の目標は、2020年までにさ らに5万世帯を地域熱供給網につなげることで す。ハーフェンシティは、全く新しい市街区として ハンブルグの中心部に作られました。居住施設、 オフィス、娯楽施設、小売業や文化エリアが混在 する155ヘクタールの港湾地区です。都市計画 の担当者は、最も持続可能且つ経済的に有利な 長期的なソリューションとして熱供給を選択し ました。すべての建物は地域熱供給に接続され ています。最も厳しい経済および環境要求事項 を満たすエネルギー供給コンセプトを開発する ことを目的とされてきました。コンセプトは、既存 の豊富な実績のあるハンブルグの地域熱供給シ ステムと、分散型の地域熱供給設備との共存が ベースとなっています。使用燃料は主に石炭と家 庭及び産業廃棄物、天然ガスと、ごくわずかな軽 質燃料油。二酸化炭素排出量をさらに減らすた めに、既存のハーフェンシティ熱計画は、実証プ ラントとして蒸気タービンと燃料電池が装備さ れています。さらに、2つの新しいCHPプラントが ユーバーゼークアティア(Überseequartier)地 区とクルーズ船ターミナルに計画されています。 主に住宅として使われる建物には、家庭用温水 給湯用の太陽熱収集パネルが設置されます。 持続可能な都市開発のための 新しいスタンダードを示すハーフェンシティ 熱と電気を組み合わせると、発電所の余熱を排 熱として捨てるのではなく、ハーフェンシティ地 区の建物の熱供給に使えます。そうすることで、 一次エネルギーの90%を利用することができ、 このコンセプトは他の住宅地や街にも容易に拡 大できます。従来の化石燃料を用いた熱供給と 比較して、年間約370万ユーロの燃料コストと 14,000トンのCO2排出量の削減になります。

ハンブルグ・ハーフェンシティの

地域熱供給

新都市開発における持続可能で収益性の高い地域熱供給

ハーフェンシティはドイツ・ハンブルグの中心部に作られている全く新しい市街区です。

これは、現在ヨーロッパ最大の都心部開発プロジェクトで、都市開発に新たな基準を打ち立てています。

ダンフォス・ヒーティング・セグメント コミュニケーションアドバイザー ヨナ・センガー ダンフォス社のサブ・ステーション(中継基地)と家庭用温水システムの利用を通じてハーフェンシティの建物に供給される地域熱供給は、家の所 有者、テナントやエネルギー供給者の利益となるよう、すべてのエネルギーが可能なかぎり効率的に利用されます。それぞれの建物にも、暖房冷 房システムのエネルギー消費をコントロールして快適な室内環境を提供するために、ダンフォスの技術が導入されています。 ハンブルグ・ハーフェンシティの 地域熱供給 15

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シャングリ・ラは、以前は石炭ストーブ利用による大気汚染に覆われていま した。今日では、エネルギー効率に優れた地域熱供給が導入されたおかげ で、屋根からの素晴らしい眺めを楽しめるようになりました。

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大気汚染を減らし、地域環境を向上させる地 域熱供給 シャングリ・ラは、化石燃料や木材を熱源として 使う、50,000人の居住者の個別ストーブによる 大気汚染に悩まされてきました。今は、地域熱供 給の導入によって大気汚染は大幅に低減し、地 域の生態系の保護も促進されています。シャング リ・ラは、中国雲南省の北西、海抜3,300メート ルに位置します。シャングリ・ラでは、大きな熱需 要があります。日々の温度は低く、冬は−27℃か ら1℃と劇的に変化します。 完全な地域熱供給システムの導入 シャングリ・ラの5つの地域には、新しい包括的 な地域熱供給システムが整っています。ABBは ボイラールームの熱交換器から需要側の設備ま で、様々な設備を提供しています。これには市民 に十分な熱を供給するための、電気および機械 設備も含まれます。それら設備は、新しい熱供給 プラントをモニタリングし効率を最大限に引き 出し、50,000人の居住者に安全で信頼できる 熱源の供給を実現しています。 また、空気熱源ヒートポンプが設置され、それ によって個別の熱専用ボイラーやストーブから CO2フリーの水力発電ベースの電力を使うボイ ラーに変わりました。ヒートポンプがシステムの エネルギー効率を高め、石炭火力排出量を減ら すことで生活の質を著しく向上させるのに役立 っています。 住民の熱需要が確実に満たされ、十分な熱が最 も効率的な方法で届けられるよう、地域5カ所の 全自動コントロールシステムが中央制御および 監視システムと通信しています。 ストーブの使用から地域熱供給システムへの転 換は、年間10万5,000トンにもおよぶCO2排出量 と460トンの粉塵の削減、さらに17,000トンの 石炭の節約になることから、著しい環境負荷の 改善をもたらします。 デンマークはエネルギー効率が高く環境にやさ しい地域熱供給で独自のポジションを確立して います。地域熱供給は電力生産による余剰熱を 利用することでCO2の排出量を削減できる大き な手段として認識されてきました。ABBデンマー クは、地域熱供給の分野におけるABBグループ 中心的研究拠点です。

エネルギー効率が高まる

シャングリ・ラ

中国におけるエネルギー効率に優れた熱供給の新しいスタンダード

非効率的な個別暖房のストーブから、集中型の地域熱供給システムへのシフトは、

環境を守り、経済発展を促し、生活の質を向上させます。

ABB Northern Europe 地域マーケティング&セールスマネージャー マーティン・B. ピーターセン

広い市街地エリアに、フレキシブルなエネルギー源を使用して集中暖房を供給するための、地域熱供給システムのレイアウト。

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デンマーク コペンハーゲンのアマー・リソース・センターはエネルギー効率90%以上の廃棄物コジェネレーション(CHP)プラント。 イラストレーション:アマー・リソース・センター

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49,1% 2,3% 0,5% 23,9% 15,5% 8,7% 石油 天然ガス 石炭 廃棄物(有機廃棄物除く) 再生可能エネルギー 電気(ヒートポンプ・電気ボイラー) 多様なエネルギー源 地域熱供給は熱源の選択肢で言えば、非常に 柔軟性に富んでいます。基本的に、すべての熱源 に対応可能で、風力発電や太陽光発電などの変 動があるエネルギー源や、工業プロセスからの 排熱なども利用できます。複数の熱源を持った より大きな地域熱供給システムでは、需要など の地域の状況や売電価格、二酸化炭素削減目 標などの志によって燃料源を替えることが可能 です。地域熱供給システムなら、需要側の小型ボ イラーを取り替える必要がなく、新しい燃源を 利用することが可能です。 電気および熱、両エネルギーシステムの統合 電力総生産量に、太陽光や風力などの変動的な 電力源が占める割合は増えています。国境を超 えた系統連系や蓄電は、供給の変動を一部緩和 することができますが、十分ではなく、多くの場 合最も経済的で効率がいい選択肢ではありませ ん。電気および熱の2つのエネルギーシステムの 統合が、一つの解となりえます。電気ボイラーと 大規模な工業ヒートポンプを地域熱供給の熱 生産に導入すれば、熱供給網は大規模エネルギ ー貯蔵の役割を果たします。風力発電や太陽光 発電からの過剰供給で電力価格が低下した場 合には、余剰となるそれら再生可能エネルギー( 電力)を熱生産に利用できます。 余剰熱 工場などからの余剰温熱もしくは冷熱は、多くの 場合無駄になりますが、地域熱供給で簡単に利 用できる貴重な資源です。熱発生源となる工場や 商業ビルが熱供給網に隣接していれば、余剰熱 の活用のために地域のエネルギー供給事業者と 協力することは有益であり得ます。経済的なメリ ットだけでなく、 熱生産の化石燃料を余剰熱に 置き換えることも可能です。 廃棄物からのエネルギー 廃棄物は大きな可能性を持つ資源です。より多 くの価値を廃棄物から得られる社会は、より良 い社会です。削減(リデュース)、リユース(再利 用)、リサイクル(再生)できない廃棄物は、エネ ルギー回収のために利用できます。現代の廃棄 物処理施設は廃棄物を処理しつつ発電し、熱を 近隣の建物に供給しています。最良かつ最も近 代的なシステムでは、高度な技術を屈し100% に近いエネルギー効率で稼働します。これらのプ ラントの環境への影響は、フィルターやその他の 技術の先端的利用により最小限に抑えられ、デ ンマークのコペンハーゲンに見られるように、大 都市の中心にプラントを位置することも可能に なっています。 電力生産からの大量な余剰熱は、一般 的に無駄になっています。このエネルギ ー資源は徐々に地域熱供給システムに 取り入れられ、建物の暖房と冷房に利 用されています。

熱源の多様な選択肢により持続可能性が

確保される地域熱供給

エネルギーを知的に利用するカギ

地域熱供給は持続可能性と柔軟性を可能にします。

変動的な再生可能エネルギーや余剰熱を含む、非常に多様なエネルギー源を利用できます。

DBDH (デンマーク熱供給協会)ビジネス開発マネージャー モーテン・ヨート・ドゥデール デンマークでは、2014年に地域熱供給の約50%が再生可能資源から生産されていました。再生可能資源は、バイオマス(木材、廃棄物、ワラ、バイオ燃 料)、バイオガス、太陽熱、地熱および電気(ヒートポンプと電気ボイラー)です。 熱源の多様な選択肢により持続可能性が 確保される地域熱供給 19

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ドロニングルンでは、未使用の土地の一角を太陽熱収集プラントとして利用しています。太陽熱収集設備の表面積は37,537㎡です。地中に作られ た季節畜熱設備の総容量は62,000m3。年間熱生産量は18,000MWh。太陽熱収集パネルは、景観や周りの環境を乱さないように設置されてい

ます。さらに、騒音も臭いもありません。

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消費者の暖房費を下げる太陽熱 1980年代以降、多くの地域熱供給システムで 大規模な太陽熱が導入されました。太陽は最も クリーンなエネルギー源であり、再生可能エネ ルギーの最も強力な資源です。CO2も排出しませ ん。太陽熱のコストはいつでもゼロです。設備コ ストを考慮しても、大規模太陽熱収集設備は最 低限の熱生産コストで済みます。さらに、騒音や 臭いもなく、環境を汚しません。 最新の革新的開発では、太陽熱の大規模蓄熱 を可能にしています。ドロニングルンの地域熱供 給の顧客1350世帯は、環境へのメリットと、暖 房費が20%も安くなったことから、このクリー ンで再生可能な技術を喜び、誇りにしています。 新しい決断が大きなインパクトに 導入されて40年が経った石油ボイラーの交換 が必要になったことからすべてが始まりました。 地域熱供給網全体を見直し、将来、最も効率的 な地域熱供給にするにはどうしたらいいかを決 めるいい機会でした。アドバイザーからの支援を 得て、化石燃料の一部を太陽熱エネルギーに置 き換えるのが、経済的にも環境の面からも理に かなっているという結論に達しました。 設 置 さ れ た 2 ,9 8 2の 太 陽 熱 収 集 パ ネ ル は、37,573㎡の太陽熱プラントに相当します。大 規模な季節蓄熱設備も作られました。これは、断 水シートによって形成された貯水池で、断熱さ れた蓋がついており、62,000m3の水を貯めるこ とができます。これは、魔法瓶のような働きで、夏 から冬にかけてエネルギーを貯蔵しておくこと が可能です。夏の間、プラントは一日に需要の10 倍の熱を作り、余剰熱は、あとで必要な時に備え て貯められます。5〜10月は太陽熱だけを使い、 年間でも需要の40〜50%をカバーできます。冬 の間の熱供給は天然ガスとバイオ燃料で補い ます。この設備の設置は、各世帯で年間2トンの CO2排出量の削減を実現しています。 ドロニングルンの地域熱供給は、EUROSOLAR の2015年ヨーロピアン・ソーラー賞を受賞。こ の受賞によって、ソーラー・エネルギーのパイオ ニアやリーダーに認識され世間の注目を集め、 再生可能エネルギーベースの分散型エネルギ ー転換に刺激を与えました。

受賞した太陽熱地域熱供給

経済と環境にやさしい太陽熱エネルギーを用いた地域熱供給

デンマーク・ドロニングルン(Dronninglund)では、大規模な季節蓄熱と組み合わせた大規模な太陽熱設備が、

年間の地域熱供給需要の40%をカバーしています。

Arcon-Sunmark CEOソエン・エリシウセン 受賞した太陽熱地域熱供給 21

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2013年、ポンプ会社グルンドフォスとビェリング ブロ(Bjerringbro)地域熱供給事業者は、グル ンドフォス工場内の生産機械を冷却するための 冷却用コンプレッサーからの熱を地域熱供給に 利用するため、共同システムを発足しました。コ ンプレッサーの稼働には多くのエネルギーを必 要とし、高額であり、また多くの余剰熱は冷却塔 を用いて冷やして大気に放つ必要があります。 蓄熱システム 新しいプラントは、以下の3つの要素に基づいて います。冷却器からの余剰熱の活用、帯水層で の間接的蓄熱、そして貯蔵された熱の加温にヒ ートポンプの利用です。余剰熱は地域熱供給シ ステムで利用されます。 夏の間は、グルンドフォスからの熱は必要ないの で、冷却コンプレッサーからの熱は配管を通っ て、地下750mの帯水層に「在庫」として保管さ れます。秋になり、地域熱供給システムが貯蔵場 所から熱を必要になる時、夏の間に貯められた 80〜85%の熱が利用可能です。地域熱供給ネ ットワークで活用する為に必要な加温はヒート ポンプを使います。冬には、熱を貯蔵している帯 水層と直接コンプレッサーから得ます。 コストと排出量の削減 当初から現在のプラント容量ではグルンドフォ スの冷却要件を完全にカバーすることはできな いのは明らかでした。しかしながら、その後わず か数年の稼働で、現在ではこのシステムをさらに 拡大するのに経済的に十分に魅力があることが 明確になりました。さらに、冷却装置の電力消費 量を減らすことで、炭素排出量を削減するという グルンドフォス全体の目標を達成することにもつ ながっています。 グルンドフォスは、現在までに、これまでに冷却 塔で使われた電力消費量を最大90%節約し、 地域熱供給事業者はCHPプラントでのガス使用 を削減できるようになります。両社によってコス トは折半され、合計600万米ドルが投資されま したが、エネルギーコストは年間50万米ドルの 節約になります。 これは、初期投資の回収期間が12〜13年に相 当し、地域熱供給会社にとってはよくても、一般 の企業にとっては少し長い期間です。しかし、同 時に年間のCO2排出量が3,700トン削減され、グ ルンドフォスの省エネルギーおよび持続可能性 というポリシーを考慮すれば、この結果は会社 にとって満足できる内容です。

余剰熱を利用した暖房

帯水層と熱回収でエネルギーシステムを再考

地域の企業と地域熱供給事業者とのパートナーシップは、両者に節約をもたらし、環境にも貢献します。

既存の地域熱供給システムの中で蓄熱によりエネルギー廃棄をなくすことは、

建物のエネルギー効率を向上させることに相当します。

グルンドフォス アプリケーション・マネージャー アナス・ニールセン グルンドフォスの工場では、地下水が冷却に使 われています。水の温度は供給時が6〜12℃、戻 りは18℃です。水温はヒートポンプで46〜67℃ に上昇させて、地域熱供給ネットワークに供給 されます。ヒートポンプによる暖房の性能係数 (COP)は4.60。夏の熱需要が低い時期は、余 剰熱は後の利用のために貯蔵されます。 22 余剰熱を利用した暖房

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リンゴの芯を燃やすことに意味はある? 「リンゴの芯やその他の有機廃棄物を燃やすこ とに意味はあるのか?」潜熱回収の技術によっ て、この質問に対する答えは「イエス」であると言 えます。なぜなら、リンゴの芯が持つエネルギー 含量から熱と電気は作るだけでなく、その含水 量からもエネルギーが回収できるからです。実 際に、家庭ごみからの燃焼によるエネルギー回 収は木質チップなど他のタイプのバイオマスと 同じくらいに意味のあることなのです。家庭ごみ と木質チップの含水率は、およそ35%で同じで す。 廃棄物燃焼プロセスにおいて、水分は濃縮され、 燃料からのかなりの量のエネルギーが使われま す。その後、このエネルギーはプラント内の潜熱 回収の過程で回収されます。エネルギーが回収 されるだけでなく、水も回収されるのです。 潜熱回収はエネルギー回収を20~25%アップ 熱交換器と吸収式ヒートポンプの潜熱回収は、 エネルギー回収を大きく増加させます。洗浄塔 においてガスを冷却することにより煙道ガスを 凝縮し、熱を取り出して地域熱供給グリッドに送 ります。これには2つの段階があります。まず、煙 道ガスが熱交換器をかえして、約50℃に冷却さ れます。そして、吸収式ポンプが煙道ガスをさら に約30℃まで冷却します。この吸収式ヒートポ ンプによるさらなる熱回収が、廃棄物からのエ ネルギー回収を20〜25%改善することにつな がるのです。この理由から、投資はすぐに回収で きます。潜熱回収は新規、もしくは既存の廃棄物 焼却施設の両方に利用できます。 フィルボーナプラント 2013年以前、スウェーデン・ヘルシンボリ市 の家庭ごみは、同国の他の廃棄物処理場に運 ばれていました。でも、今ではゴミから電気と 熱を作ることができます。フィルボーナプラント (Filbornaverket)の主な燃料は家庭、業務、 産業廃棄物で、同プラントは地域の膨大な量の 可燃性廃棄物からの熱電併給を可能にしまし た。フィルボーナプラントは年間20万トンのごみ を燃やすことができ、全体の熱効率はほぼ100 %です。非常に高度な潜熱回収システムがこれ を可能にしています。

水分を地域熱供給に変える

次世代廃棄物熱電併給プラントのエネルギー回収率は20%アップ

北欧では、ほとんどの廃棄物発電・熱電併給プラントに潜熱回収設備が装備されています。

多くの場合、ヒートポンプも併せて設置し、さらなるエネルギー回収を行っています。

バブコック&ウィルコックス ヴォルン マーケティング・技術 ディレクター オレ・ヘデゴー・マッズセン 潜熱回収の技術を説明する簡単な方法は、シャワーを浴びたあとの鏡がどうなっているか見ることです。鏡の上の水滴は水分を含んだ空気の温 度が下がったことによる凝縮の結果です。 暖かい空気が冷たい空気よりも水分を多く含んでいるので、空気中の温度の低下は、凝縮を招きます。 これと同様のことが、潜熱回収システムの中で起きているのです。 水分を地域熱供給に変える 23

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コペンハーゲン近くのアヴェドアプラント(Avedøre Plant)にある、2つの大規模蓄熱タンク。この蓄熱施設は主に、プラント所有者にとって日常 的に電力価格が適正なときに発電して余剰熱を貯蔵し、電力価格が下がった時に貯蔵した熱を使うという目的で使われています。その結果、蓄熱 システムがプラントの経済の最適化に貢献しています。

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蓄熱の価値 地域熱供給のユニークな特徴は、温水を日々、そ して夏から冬へと季節間両方の形で貯蔵できる ことです。蓄熱は、熱生産と消費のタイミングを 分離するという意味で、他の製品(含む電気)の 貯蔵と違いはありません。CHPプラント、太陽熱 収集パネル、風力発電の余剰電力や工業の余熱 など、エネルギーを得られるときに熱として貯蔵 し、それを必要なときに使うことができます。デ ンマークでは、集中型および分散型CHPは蓄熱 設備を備えています。 日々の蓄熱は、CHPプラントを電力需要(売電価 格)に基づいて適切に熱電併給を行いつつ、必 要なときに熱を供給することを可能にします。 大規模な蓄熱は、なければ捨てられていたであ ろうエネルギーの活用可能にします。大規模な 蓄熱なら、暖かい時期に寒い時期へ向けての蓄 熱ができます。熱は、太陽熱収集パネル、CHPプ ラントや工業プロセスなど、必ずしも安定した生 産をしない多くの熱源から集めることができま す。 日々の蓄熱 デンマークのすべての地域熱供給ネットワーク で非常に重要な要素のひとつは、短期間の蓄熱 です。短期間の蓄熱の目的は、CHPの電力生産 と熱需要を切り離すことです。すなわち、CHPプ ラントは、変動する電力の市場価格に基づき、熱 供給で妥協することなく熱電併給を最適化でき るのです。CHPプラントは、電力価格が高い時( 通常は朝や午後)のみ電気(と熱を)作り、熱は 一日のうち、それが必要な時間帯が来るまで地 域熱供給用の温水を貯蔵します。デンマークで は、大規模、小規模両方の地域熱供給システム で短期間の蓄熱を採用しています。短期間の蓄 熱は、経済的にも環境的にも最適化に向けた、 重要なエネルギーシステムの柔軟性をもたらし ます。 日々の蓄熱は、地域熱供給事業者がコントロー ルできない外部の熱源を地域熱供給システムに 導入する際に活用されています。これらの熱資 源は、例えば一日または週を通して工場での生 産が変化する産業の余剰熱です。産業活動から 排熱が発生する期間に余剰熱がある場合には、 小規模な蓄熱タンクに貯蔵されます。 季節間蓄熱 今日、デンマークでの季節蓄熱設備は、主に夏 の間に大規模な太陽熱収集パネルによって、す ぐに必要とされない熱が製造された時の貯蔵の ために利用されています。季節蓄熱は、一般的に は、ピット、地面に非常に大きな穴をつくり、底を 断水シートで覆い水を溜め、その上に浮遊断熱 層をかぶせたものです。他には地下水貯蔵シス テムがあり、余剰熱を低温で貯蔵し、後に必要な ときにヒートポンプで温度を上げて利用します。 地下水貯蔵システムは大規模ピット貯蔵のスペ ースがない都市部に向いています。どちらのシス テムも、熱需要が上昇するまで数週間もしくは 数か月単位で貯蔵され、秋や冬に消費されます。 デンマークの多くの地域熱供給システムにとっ て、季節蓄熱は捨てられていたかもしれないエ ネルギーを活用する手段として、今後ますます 重要性を増し、グリーンな社会への転換にとっ ても大事な要素です。 余剰風力発電 デンマークでは、電力の42%以上が風力で賄われています。風力発電は変動があるので、デンマークではよく余剰電力が非常に低価格になります が、現在のところ、電力を直接効率的に貯蔵する方法はありません。 短期および長期の貯蔵を組み合わせることで、余剰電力を地域熱供給に活用することは可能です。電力価格が適正な(安い)時に、地域熱供給事 業者はボイラーを使って直接、またはヒートポンプを通じて温水を作るために、電力を利用します。

蓄熱の必要性

季節間蓄熱-サイズがカギ

205,000m

3

の世界最大のピット型蓄熱槽と70,000m

2

の太陽熱プラントの組み合わせは、

CO

2

排出量削減の効率的で費用対効果の高い方法です。

デンマーク熱供給協会(DBDH)ビジネス開発マネージャー モーテン・ヨート・ドゥデール 蓄熱の必要性 25

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季節蓄熱は大きく、いくつかのスイミングプールを合わせたような大きさです。数か月かけて水で満たし、次に浮遊断熱層で表面を覆います。その 後、貯湯槽の水と壁を温めるのも数か月かかります。すべてが温まったら、利用できます。

参照

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