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オオイタデジタルブック「未来をはぐくむ~地域と歩む子育て」

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Academic year: 2021

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(1)

地域と歩む子育て

未来をはぐくむ

未来をはぐくむ

第  回

第9部・家族のかたち/後編(下)

22

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  4人掛けの木製テーブル二つを組み合わせ た食卓に、 8脚のいすがぐるりと周りを囲む。   家族みんなでご飯を食べ、たわいもない話 で 盛 り 上 が る。 子 ど も た ち が 宿 題 を し た り、 夫婦でくつろいだり。親子が集う食卓を中心 に、家族の営みは広がる。   別 府 市 の 運 送 業、 南 純 司 さ ん( 37)、 涼 子 さん( 30)夫婦は4男2女に恵まれた。上は 10歳から、下は生後1カ月まで。涼子さんの 父 を 含 め て 計 9 人 の 大 家 族。 「 人 数 が 多 い か ら、毎日にぎやかでね」と純司さん。 2 0 1 0 年       12月 17日 掲 載

大家族、支え合いの精神

個性に目を向け、見守る

  産後間もない涼 子 さ ん に 代 わ り、 純司さんが朝食を 作り、夜は子ども たちが台所に立っ て 皿 洗 い を 手 伝 う。   「 小 さ な 子 だ っ て、家庭の状況を 見て何をすべきか 自 然 と 分 か る も の。子育てとはい え、親だって子ど もに支えられてい る。それが 『家族』 じゃないですか」       子どもを育てる ―。それは必ずし も楽しく、うれし いことばかりでは ない。一歩一歩の 成 長 を 喜 び な が 南さん宅のリビング。きょうだいは宿題をしたり、人形で 遊んだり。テーブルを囲んで、温かい家族の時間が流れる

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す」   20歳で産んだ第1子。2~3時間おき の授乳に疲れ果て、泣きやまないわが子 に途方に暮れた。   育児書を読みあさっては、逆に不安ば かりが募る日々だった。   「 マ ニ ュ ア ル の 通 り、 完 璧 に 育 て よ う と気を張って…。子どもの個性に目が向 か ず、 頭 の 中 の 理 想 に が ん じ が ら め に なっていた」   第4子の三男を産んだとき、不思議と 一線を越えた気がした。両手で2人の子 と手をつなぎ、もう1人をおんぶする。   「 で も 4 人 目 と な る と、 両 手 も 背 中 も 空 き が な い。 も う お 手 上 げ で し ょ」 。 そ う考えると、ふっと肩の力が抜けた。   母 親 だ け で 育 児 が で き る は ず が な い。 そもそも、完璧な育児って何だろう。   10人 の 子 ど も た ち を 見 て、 「 誰 ひ と り 同 じ じ ゃ な い 」 と つ く づ く 思 う。 性 格、 しぐさ、食べ物の好み…。それこそ〝十 人十色〟だ。   子 育 て に 唯 一 の 正 解 な ど あ り 得 な い。 「大丈夫、なるようになりますよ」 。   綾子さんが同じ子育て中のママたちに 送 る メ ッ セ ー ジ。 そ の お な か に は い ま、 11人目の命が宿っている。 【大分県の出生状況】 2009 年の県内人口動態統計(概要)によると、出生数は前 年比 345 人減の 9961 人(全国 23 位)で、4 年ぶりに1万 人を割り込んだ。女性1人が生涯に出産する子どもの推定 人数を示す「合計特殊出生率」は 1.50(前年比 0.03 ポイン ト減)で全国7位。ただ、合計特殊出生率は、高い九州・ 沖縄地域で見ると、福岡、佐賀両県に次いで下から3番目 に低い。 ら、親は皆、不安、ストレスを抱えてい る。   「 子 育 て は 個 性 そ の も の。 そ こ に 親 の エゴは必要ない。その子らしく育つ邪魔 をしちゃいけません」   18歳から1歳までの6男4女を育てる 綾子さん( 38)=大分市、仮名。   「 大 変 で し ょ う 』 っ て 言 わ れ る け ど、 子 ど も の 力 を 信 じ て 見 守 る の が 親 の 役 目。子どもが求めるときにきちんと向き 合い、手を差し伸べてあげればいいんで

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  抜 け る よ う な 青 空 が 広 が っ た 休 日。 家 族 み ん な で 朝 食 を 囲 む。 「今日は何をしよう?」 。夫淳二さん(35)と4男3女のにぎや かな食卓、いっぱいの笑顔。いつもと変わらない風景。家族と過 ごすひとときに、 中山香織さん( 35)は心がじんわり温かくなる。   大分県内の住宅地にある中山さんの自宅。庭の片隅で、家族で 作り上げた木製ブランコが揺れる。シーソーもお手製。直径 30セ ンチほどの丸太に木板を載せれば、あっという間に完成だ。   おもちゃは買わない。それが中山家のルールになって数年がた つ。 子 ど も は 遊 び を つ く り 出 す 達 人。 「 家 の 中 も 屋 外 も、 ま る ご とおもちゃになるんです」 2 0 1 0 年       12月 18日 掲 載 自宅庭のブランコに家族が寄り添う。「あったかいね」。中山さん一家は笑顔だった

完璧なしつけ、あり得ぬ

「達成した喜び」親子で共有

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言 や 行 動 に 子 育 て の コ ツ が あ る 」。 何 で も 大 人 の ま ね を し た が る 子どもにとって、良くも悪くも、身近な大人はすべてお手本だ。   「何人育てても、完璧なしつけなんてあり得ません」 。香織さん は そ う 前 置 き し、 力 を 込 め て 言 っ た。 「 子 ど も を 変 え よ う と す る 前に、まず親が変わること。それが子育ての根本です」   これまでの子育ては、 決して平たんな道のりではなかった。 「〝ト ンネル〟に迷い込んで、落ち込み、泣いたことは何度もあった」   子育ては己育て。香織さんはつくづく思う。子どもが生まれる た び、 何 度 も 自 分 を 育 て 直 す こ と が で き る。 「 そ う 考 え れ ば、 私 は 本 当 に 幸 せ 者 な ん で す よ 」。 わ が 子 を 見 つ め る 母 の 目 は、 限 り なく優しかった。        連載担当=報道部・百崎浩嗣、吉良政宣、         写真映像部・青木茂之 【子育てに関する相談窓口】  県は子育てを下支えし、虐待予防の領域を広げる ため、こども・女性相談支援センター(大分市荏隈) を開設、子育てに関する不安や悩みを24時間受け 付ける「いつでも子育てほっとライン」を設けた。 子育ての悩み、虐待が疑われる事例があった場合は、 県中央、中津両児童相談所や各市町村の窓口に相談 するよう呼び掛けている。   子どもは好奇心、チャレンジ精神の塊 だ。 「 学 校 や 幼 稚 園 に 丸 投 げ し た り、 過 度 に お 金 を 掛 け た り す る 必 要 は な い 」。 身近な暮らしこそ、教育の基本になる― と香織さんは思う。   そもそも家庭には、子どもの経験や創 作力を育む機会があふれている。   おもちゃの掃除機を買うのなら、本物 を使って実際に掃除してもらう。おやつ 作りにしても、親子で一緒にキッチンに 立つ。日ごろからリビングに裁縫道具を 置いておき、子ども服のボタンが取れれ ば、香織さんが裁縫の手ほどきをする。   「 最 初 に 手 取 り 足 取 り 教 え れ ば、 目 を 輝 か せ て の め り 込 ん で く れ る 」。 大 切 な のは、子どもが達成感を味わい、その喜 び を 親 子 で 共 有 す る こ と。 「 わ が 子 の 晴 れ晴れとした表情を見逃したらもったい ないですよ」   香織さんの子育てはいたってシンプル だ。 「 7 人 も い れ ば、 一 人 一 人 に リ ズ ム を合わせるのはとても無理。おおらかに 楽しく、そして臨機応変が基本です」   確かに、しつけに悩まないと言えばう そ に な る。 「 で も、 子 ど も の 何 げ な い 一

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支え合う社会めざせ   子どもを安心して産み、育てることができ る社会を考える年間企画「未来をはぐくむ」 。 最終シリーズの第9部 「家族のかたち (後編) 」 では、障害と向き合う親子の姿を通して、早 い時期からの障害児療育と、親子を支援する 必要性を考え、大家族の暮らしから子育ての 原点を見つめた。第8部に続き、大分大学教 育福祉科学部の山岸治男教授 ( 63) に聞いた。   ―障害児療育を取り巻く社会環境をどう見 るか。   障害児の子育て、教育はその家族だけに負 わせず、地域全体で支えるべきだ。療育機関 の充実、障害の早期発見に向けた仕組みづく りは急務。   い っ た ん 障 害 が 見 逃 さ れ、 放 置 さ れ る と、 言葉の習得といった特定の機能が本来発達す べき時期(臨界期)を過ぎてしまい、その後 2 0 1 0 年       12月 19日 掲 載 やまぎし・はるお 東北大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。大分大講師、 助教授を経て、1991 年から現職。今年、「男女共同参画社会づくり功労者」として内閣 総理大臣表彰を受けた。 大分大学リレーインタビュー 教育福祉科学部

 

山岸

治男

教授

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の発達支援に大きなマイナスが生じる。   障 害 の あ る 子 が ど の 家 庭 に 生 ま れ る か は 〝 自 然 の 摂 理 〟 の 範 囲。 そ の 意 味 か ら も 障 害 児 療 育 は 社 会 全 体 で 受 け 止 め る べ き も の だ。 しかし、 現状を見ると経済的にも身体的にも、 まだ障害児の保護者に負担が掛かりすぎてい る。   ―地域、社会に求められるものとは。   障害児の親は、わが子の障害を受け入れる までに相当な葛藤がある上に、いじめや偏見 を受けないかという不安にさらされる。   た だ、 親 が 限 ら れ た 世 界 に 閉 じ こ も れ ば、 その子の社会的な発達をかえって止めてしま う恐れがある。障害児の親子が外に出ること は、相当な勇気と覚悟が必要だ。周りが「大 丈夫」と心を支え、勇気を与えられる社会に しなくてはならない。   ―現代の子育て事情は。   赤ちゃんが夜泣きする、子どもが騒ぐ―な んてごく自然なことなのに、いまは隣近所か ら苦情が来ないか親がびくびくする状態。教 育に関しては、幼少期は遊びを通して社会性 を育むべきなのに親が知識の学習面ばかりに 目を向け、子どもを縛り、心の発達を阻害し ているケースも多い。   ―少子化社会。子育てのこれからをどう見 るか。   子育てが人間本来の自然な形から乖離(か いり)してしまった。その結果、虐待や母親 のうつ、子どもの非行といったひずみを社会 に生み出している。 子育てに優しい環境とは、 誰もが暮らしやすい社会のはずだ。地域社会 はいま、その在り方を根本から見つめ直す時 期に来ている。        (報道部・百崎浩嗣、吉良政宣)

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■オオイタデジタルブックとは  オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と学校法人別府 大学が、大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げた インターネット活用プロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一 環です。  NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要 な、さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します。そして、 読者からの指摘・追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発 展を図っていきたいと願っています。情報があれば、ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください。  NAN-NAN では、この「未来をはぐくむ」以外にもデジタルブッ ク等をホームページで公開しています。インターネットに接続 のうえ下のボタンをクリックすると、ホームページが立ち上が ります。まずは、クリック!!! 別 府 大 学 ⓒ 大分合同新聞社 デジタル版「未来をはぐくむ~地域と歩む子育て~」 第 22 回 編集     大分合同新聞社 初出掲載媒体 大分合同新聞(2010 年 4 月 20 日~ 2011 年 2 月 12 日) 《デジタル版》 2011 年 7 月 29 日初版発行 編集 大分合同新聞社 制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部/川村研究室 発行 NAN-NAN 事務局    (〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 企画調査部内) ⓒ 大分合同新聞社 ●デジタル版「未来をはぐくむ」について  「未来をはぐくむ」は、大分合同新聞社が 2010 年4月から 翌 2011 年 2 月まで、同紙夕刊に掲載した連載記事。今回、 デジタルブックとして再構成し、公開する。登場人物の年齢 をはじめ文中の記述内容は、新聞連載時のもの。  閲覧には Adobe Reader をご利用下さい。ほかの PDF ビュー アではリンクやボタン機能が使えない可能性があります。 2011 年3月4日           NAN-NAN 事務局 大分合同新聞社

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