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生体内三次元位置計測システムの開発

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(1)

生体内三次元位置計測システムの開発

Development of three-dimensional position measurement system in the living body

2005 年 2 月

早稲田大学大学院理工学研究科

生命理工学専攻 生物電子計測・制御研究

永岡 隆

(2)

目次

目次...i

図目次... v

表目次...viii

第1章 序論...1

1.1 研究の背景...1

1.2 関連研究の動向...3

1.3 研究の目的...7

1.4 数値目標の設定...7

1.5 本論文の構成...8

第2章 有線式カプセル型三次元位置センサの開発... 10

2.1 はじめに... 10

2.2 計測原理... 10

2.2.1 ソレノイドコイルの作る磁場... 11

2.2.2 センサの構成... 14

2.2.3 等磁場面の計測... 14

2.2.4 センサ位置の取得... 16

2.2.5 センサ姿勢の取得... 19

2.2.6 センサ位置の補正... 19

2.3 装置... 21

2.3.1 設計... 21

2.3.2 磁場発生装置... 23

2.3.3 センサ本体... 24

2.3.4 信号処理装置... 25

2.4 実験... 27

2.4.1 動作検証実験... 27

① 実験の目的... 27

② 実験装置... 27

③ 結果... 27

④ 考察... 30

2.4.2 精度検証実験... 30

① 実験の目的... 30

② 実験装置... 30

③ 結果... 30

④ 考察... 37

(3)

ii

2.4.3 消化管蠕動運動解析システムの開発... 38

① 実験の目的... 38

② 実験装置... 40

③ 結果... 42

④ 考察... 44

2.5 まとめ... 46

第3章 無線式カプセル型三次元位置センサの開発... 47

3.1 はじめに... 47

3.2 計測原理... 47

3.2.1 三次元位置計測... 47

3.2.2 無線伝送... 49

3.3 装置... 54

3.3.1 設計... 54

3.3.2 磁場発生装置... 54

3.3.3 センサ本体... 55

3.3.4 信号処理装置... 59

3.4 実験... 60

3.4.1 コンピュータシミュレーション... 60

① 実験の目的... 60

② 実験装置... 60

③ 結果... 60

④ 考察... 61

3.4.2 生体内伝送実験... 61

① 実験の目的... 61

② 実験装置... 62

③ 結果... 64

④ 考察... 65

3.4.3 カプセル連続駆動実験... 65

① 実験の目的... 65

② 実験装置... 65

③ 結果... 66

④ 考察... 66

3.4.4 動作検証実験... 67

① 実験の目的... 67

② 実験装置... 67

③ 結果... 67

(4)

④ 考察... 67

3.4.5 精度検証実験... 71

① 実験の目的... 71

② 実験装置... 71

③ 結果... 71

④ 考察... 73

3.5 まとめ... 75

第4章 永久磁石を用いた三次元位置センサの開発... 76

4.1 はじめに... 76

4.2 計測原理... 77

4.2.1 永久磁石の作る磁場... 77

4.2.2 磁場受信センサの構成... 77

4.2.3 センサ位置の取得... 78

4.2.4 計測範囲拡張に向けた検討... 79

4.3 装置... 82

4.3.1 設計... 82

4.3.2 カプセル... 83

4.3.3 磁場受信センサ... 84

4.3.4 信号処理装置... 85

4.4 実験... 87

4.4.1 精度検証実験... 87

① 実験の目的... 87

② 実験装置... 87

③ 結果... 87

④ 考察... 90

4.4.2 計測範囲拡張に向けた検討... 91

① 実験の目的... 91

② 実験装置... 91

③ 結果... 92

④ 考察... 92

4.4.3 消化管蠕動運動解析システムの開発... 93

① 実験の目的... 93

② 実験装置... 94

③ 結果... 96

④ 考察... 98

4.5 まとめ... 100

(5)

iv

第5章 まとめと今後の展望... 101

5.1 各センサの比較... 101

5.2 まとめ... 102

5.3 今後の展望...103

付録A ソレノイドコイルが作る磁場... 107

A.1 電気双極子が発生する電場... 107

A.2 微小円電流が発生する磁場形状... 109

付録B 大腸における運動... 116

付録C フラックスゲート磁気センサの原理... 119

謝辞... 121

参考文献... 122

研究業績... 126

(6)

図目次

Fig 1.1 日本におけるガンの種類別死亡者数の推移(文献1より引用改変)...1

Fig 1.2 カプセル型内視鏡...2

Fig 1.3 三次元位置センサ Fastrakの概観...4

Fig 1.4 ホール素子を用いたカテーテル先端の三次元位置計測概要(文献23より引用) ...5

Fig 1.5 ホール素子を用いたカテーテル先端の三次元位置計測システム(文献23 より 引用)...5

Fig 1.6 ソレノイドコイルを用いた視線トラッキングシステム(文献25より引用) ....6

Fig 1.7 LC共振回路を用いた三次元位置計測システム(文献29より引用) ...6

Fig 1.8 本論文の構成の概要...9

Fig 2.1 センサ1における三次元位置取得フローチャート... 10

Fig 2.2 ソレノイドコイルの作る磁場... 12

Fig 2.3 ソレノイドコイルの作る磁場形状の楕円球近似... 12

Fig 2.4 楕円球近似と理論値... 13

Fig 2.5 近似値と理論値の違い... 13

Fig 2.6 フィードバック処理のフローチャート... 16

Fig 2.7 1次コイルの配置... 19

Fig 2.8 センサ1 ブロック図... 21

Fig 2.9 二次コイルの断面積と誘導起電力の関係... 22

Fig 2.10 二次コイルに発生する誘導起電力とコイル間距離の関係... 22

Fig 2.11 磁場発生装置... 23

Fig 2.12 カプセル型センサ... 25

Fig 2.13 LabVIEW表示画面... 26

Fig 2.14 表示系... 26

Fig 2.15 LabVIEWによりPCに取り込まれた誘導起電力波形... 27

Fig 2.16 誘導起電力のFFTスペクトル... 28

Fig 2.17 誘導起電力の変化と一次コイルへの印加電圧... 28

Fig 2.18 計測された等磁場面形状... 29

Fig 2.19 計測の概観... 29

Fig 2.20 方法1における精度検証実験結果(磁場発生装置と平行な面) ... 31

Fig 2.21 方法1における精度検証実験結果(磁場発生装置と垂直な面) ... 32

Fig 2.22 方法1における精度検証実験結果(磁場発生装置との距離)... 32

Fig 2.23 方法1におけるセンサ位置と磁場発生装置の印加電圧の関係... 33

Fig 2.24 方法1におけるセンサ位置とセンサに生じる誘導起電力の関係... 33

(7)

vi

Fig 2.25 方法 1 におけるセンサの移動に伴ってセンサに生じる誘導起電力の時間変

化... 34

Fig 2.26 方法 1 におけるセンサの移動に伴ってセンサに生じる誘導起電力の時間変 化... 34

Fig 2.27 方法1と方法2の比較... 35

Fig 2.28 方法1と方法2の比較... 35

Fig 2.29 金属による計測誤差... 36

Fig 2.30 金属の存在する計測空間における補正... 36

Fig 2.31 Fastrakにおける磁場発生装置からの距離と誤差の関係... 38

Fig 2.31 消化器系臓器模式図(文献35より引用)... 39

Fig 2.32 動物実験模式図... 40

Fig 2.33 動物実験の概観... 41

Fig 2.34 避妊具に包まれた有線式三次元位置センサ... 41

Fig 2.35 表示システムの概観... 42

Fig 2.36 カプセル移動軌跡の三次元表示... 43

Fig 2.37 ストレインゲージゲージとカプセルの移動(1) ... 43

Fig 2.38 ストレインゲージゲージとカプセルの移動(2) ... 44

Fig 2.39 圧力センサを搭載した有線式三次元位置センサ... 45

Fig 3.1 センサ2における三次元位置取得フローチャート... 48

Fig 3.2 角度θ, φ の定義... 49

Fig 3.3 無安定マルチバイブレータを利用した周波数変調回路... 51

Fig 3.4 開発した変調回路の発振周波数の理論曲線... 51

Fig 3.5 生体を伝送路として用いるテレメトリシステムの一例(文献36より引用) .. 52

Fig 3.6 ... 52

生体に安全な電流量(文献37より引用)... 52

Fig 3.7 周波数復調原理(文献32より引用)... 53

Fig 3.8 センサ2 ブロック図... 54

Fig 3.9 センサ2における一次コイルの配置... 55

Fig 3.10 開発したセンサのイメージ図... 56

Fig 3.11 開発した無線式カプセル型三次元位置センサ... 56

Fig 3.12 機械巻きコイル設計図... 57

Fig 3.13 カプセルに内蔵されている回路... 57

Fig 3.14 カプセルに内蔵されている回路(1) ... 58

Fig 3.15 カプセルに内蔵されている回路(2) ... 58

Fig 3.16 カプセルに内蔵されている回路(3) ... 59

Fig 3.17 発振・変調特性確認用評価基板... 59

(8)

Fig 3.18 コンピュータシミュレーション結果... 61

Fig 3.19 生体内の導電率および誘電率... 62

Fig 3.20 生体内伝送実験全体図... 62

Fig 3.21 入力側回路... 63

Fig 3.22 入力側回路の周波数特性... 63

Fig 3.23 出力側回路... 64

Fig 3.24 実験結果(1)... 64

Fig 3.25 生体を導電体とみなした場合の周波数特性... 65

Fig 3.26 カプセル連続駆動実験結果... 66

Fig 3.27 無線式三次元位置センサ動作検証実験... 68

Fig 3.28 LabVIEWによりPCに取り込まれたセンサ出力波形... 69

Fig 3.29 FM復調波形およびFFTスペクトル... 70

Fig 3.30 センサ位置と磁場発生装置の印加電圧の関係... 72

Fig 3.31 精度検証実験結果(磁場発生装置と平行な面) ... 72

Fig 3.32 精度検証実験結果(磁場発生装置との距離)... 73

Fig 3.33 発振安定性を考慮に入れた回路設計... 74

Fig 3.34 発振安定性を考慮に入れたセンサのイメージ図... 74

Fig 4.1 永久磁石の作る磁場... 77

Fig 4.2 2つのセンサアレイによる計測範囲の挟み込み... 80

Fig 4.3 計測範囲拡大型計測システムの概観... 80

Fig 4.4 立体角を用いた磁気センサの選別... 81

Fig 4.5 表示系... 81

Fig 4.6 センサシステムの概観... 82

Fig 4.7 永久磁石が作る磁場... 83

Fig 4.8 カプセル... 83

Fig 4.9 磁場受信センサ... 84

Fig 4.10 表示系... 85

Fig 4.11 LabVIEW表示画面... 86

Fig 4.12 磁石を移動させた際のLabVIEW表示画面... 86

Fig 4.13 磁場の強さとフラックスゲート磁気センサ出力の関係... 88

Fig 4.14 フラックスゲート磁気センサと磁石の距離と磁場の強さの関係... 88

Fig 4.15 フラックスゲート磁気センサ出力の時間変動... 89

Fig 4.16 精度検証実験結果(位置)... 89

Fig 4.17 精度検証実験結果(角度)... 90

Fig 4.18 精度検証実験結果... 92

Fig 4.19 食道の模式図(文献43より引用) ... 93

(9)

viii

Fig 4.20 動物実験の概観... 94

Fig 4.21 透明なチューブに包まれた永久磁石... 95

Fig 4.22 超音波断層像による永久磁石の位置確認... 95

Fig 4.23 実験中の表示系の様子... 96

Fig 4.24 永久磁石の移動軌跡... 97

Fig 4.25 実験中取得した超音波断層像... 97

Fig 4.26 肺表面への永久磁石の取り付け... 99

Fig 4.27 永久磁石を肺に取り付けた際の位置変動... 99

Fig 4.28 心表面形状計測による心筋応力分布の計測(文献45より引用)... 100

Fig 5.1 スパイラル型磁気マイクロマシン(文献45より引用) ... 104

Fig 5.2 圧電素子を利用したアクチュエータ... 104

Fig 5.3 出血検知センサ(文献46より引用)... 105

Fig 5.4 出血部位検出センサ(イメージ図) ... 105

Fig 5.5 出血部位検出センサ回路図... 106

Fig A. 1 電気双極子... 107

Fig A. 2 微小円電流による磁場... 109

Fig A. 3 微小円電流が発生する磁場形状... 111

Fig A. 4 交流電流を流した際の磁場変位(円電流近傍点) ... 112

Fig A. 5 z = ∞からxy平面を見たときの磁場変位(円電流近傍点)... 113

Fig A. 6 交流電流を流した際の磁場変位(円電流遠方点)... 113

Fig A. 7 z = ∞からxy平面を見たときの磁場変位(円電流遠方点)... 114

Fig A. 8 コイルから遠方における三次元磁場形状... 115

Fig B. 1 ヒト大腸の構造... 116

Fig B. 2 大腸運動の分類... 117

Fig B. 3 大腸運動の病態の分類... 118

Fig C. 1 磁気センサの検出可能範囲による分類... 119

Fig C. 2 フラックスゲート磁気センサの概要... 120

表目次

Table 1.1 位置センサの比較(文献19より引用)...4

Table 2.1 TRITEC社製エポキシ樹脂充填制振型コイル仕様... 23

Table 2.2 Yamaha社製オーディオ用パワーアンプ仕様... 24

Table 2.3 二次コイルのインダクタンス... 24

Table 2.4 Fastrakの仕様... 37

(10)

1 章 序論

1.1 研究の背景

近年,食生活の欧米化により,ガン治療の進歩にもかかわらず,消化器系疾患は現在増加傾向にあ る.近年の日本におけるガンの種類別死亡者数の推移をFig 1.1に示す.特に大腸ガンの増加が著し く,1970年に比べ大腸ガンによる死亡者数は4.3倍に達していて1,日本人の大腸ガンによる死亡者 数は肺ガン,胃ガンに次いで多い.大腸ガンは早期発見が重要であり,バリウムを用いた消化管造影 検査が有用であるが,バリウムを飲んでのX線撮影は患者に対する負担が大きく,容易に行うことが できる検査ではない.また確定検診には内視鏡による直接診断が必要である.内視鏡は1868年に硬 性胃鏡が開発されてから一世紀に亘り開発が進められ2,現在では内視鏡下で手術が行えるまでにな っている.しかし内視鏡検査にはある程度の教育と経験のある内視鏡科医が必要であり,それでも患 者は「死ぬほど辛い検査」とも言われる苦痛を感じる.また,腸管穿孔などの偶発症の問題もあり, 日本では穿孔の頻度が0.02~0.03 %,検査中における死亡も0.01 %報告されている3.大腸内視鏡検査 時における被曝線量はおよそ2.5 mSvと報告されている4.被曝性の発ガンで問題とされる閾値の200 mSvに比べると低い値だが,患者QOL向上の観点からも,被曝線量は極力低い方が好ましい.

Fig 1.1 日本におけるガンの種類別死亡者数の推移(文献1より引用改変)

このような現状のもと,内視鏡を小型・無線化し,飲み込むだけで現在の内視鏡検査が行える,い わゆるカプセル内視鏡の構想は,古くから内視鏡科医の夢であった.医用テレメータの研究は古く,

1957年にR.S.Mackeyらがトランジスタを用いた飲み込み可能な消化管用のテレメータを発表して以

(11)

1.1研究の背景 2

5,半世紀以上研究されている.本邦においても1959年以来独自の方法によるカプセルの研究が始 まり6,1961年に南雲らにより無電池式のエコーカプセル7が,続いて東大木本外科でその臨床成績が 発表されるに至り8,臨床応用に関心が集まった.しかし,カプセルの製作コストやカプセルの位置 を検出するために長時間レントゲンに被爆する必要があることなどの問題から,広く応用されること は無かった.

しかし近年の回路集積技術の発達により,周辺回路や撮像素子の開発が進み,2000年にカプセル内 視鏡の試作品が発表された9.2001年8月にはGiven Imaging社のカプセル内視鏡M2Aが開発された. その後アメリカ連邦食品医薬品の承認を受け,以降様々な臨床実験結果が報告されていて,特に今ま で内視鏡が届かなかった小腸領域内での成果が高く評価されている.現在まで腸管内でのカプセルの 残留も報告されておらず10,画質も従来の内視鏡と比較して問題が無いとの報告もあり11,今後臨床 に広く応用される可能性を秘めている.カプセル内視鏡の概観をFig 1.2に示す.

Fig 1.2 カプセル型内視鏡

左:M2A12 右:Olympus製13

このようにカプセル内視鏡をはじめとした,カプセル型医用機器の研究・開発は進んでいるが,カ プセルの姿勢検出・制御に関する技術は確立していない.従来はカプセルを飲み込んでからの経過時 間により,おおよその位置を判定していた14ため,消化管内での長時間の正確な位置の計測は困難で あり,カプセルを飲み込むと,どの方向の映像が撮影できるのかは運任せであり,ある地点で同じ画 像を取得し続けることも困難であった.消化管内での位置計測法が確立されると,カプセル型医用機 器の位置判定だけに留まらず,より正確なdrug delivery systemの開発,さらには消化管の運動解析や, 内容物の移動解析などへの応用が期待される.

消化管の蠕動運動についての研究も同様に古く15,1950 年代よりネコ16,ウサギ17など様々な動物 の蠕動運動についての報告がなされている.消化管は食物の消化・吸収器官としての役割を担ってい て,その役割を果たすために消化管には運動・分泌など多様な機能が備わっている.その巧妙な機能 体系を持つ消化管ゆえ,腫瘍や炎症,機能異常をきたす疾患の頻度は極めて高い.特に近年,ストレ ス,ライフスタイルの乱れ,不規則な排便習慣,食生活の偏り等が原因で便秘・下痢といった排便異

(12)

常を訴える患者数が増加していて,潜在患者を含めると患者数は日本の15才以上全人口の約2割と 言われている18.それら機能異常疾患の症状は極めて多彩であるだけではなく,その種類,程度も極 めて多様で,正確な病態は解明されていない.現在行われている腸の検査においては,バリウムなど の造影剤を投与し,X線装置を用いて目視により診断し,運動機能などの判断基準は担当の医師に委 ねられることが多く,定量性や再現性の面で問題があった.これら消化器に関する病気の病態解明の 点でも,消化器の運動機能の解明は重要である.

1.2 関連研究の動向

三次元の空間における物体の位置を計測する方法としては,電波や超音波,光など,様々な物理現 象の応用が考えられる.様々な物理現象を用いた位置センサの比較をTable 1.1に示す19.Table 1.1に 示した中でも原理的に生体が位置計測の妨げにならず,かつ生体に使用する上で安全性が確保でき,

その他の作業の妨げにならず,実用上問題にならない程度の精度で位置計測が行える手段として,交 流磁界を用いる方法が考えられる.磁場を用いた三次元位置計測センサは,もともと地中に埋まった 地雷の検出のために開発されたものが起源である.Olsen ら20によりビーコンやループアンテナを利 用した地雷検出装置が開発された.これらのセンサは地雷の検出を目的に開発されたため,精度は 0.5m程度とあまり高くなく,広範囲に広がる地雷の大まかな位置検出に用いられていた.その後Raab ら21により3軸コイルを用いた相互誘導現象による位置・姿勢検出センサが開発され,現在では有線 式の三次元位置取得装置としてFastrak(Pohemus社製)をはじめ,様々な装置が商品化されており,教 育や医療,軍事目的から,シミュレーションやゲームなどのエンターテインメントまで,様々な分野 で応用がなされている22.Fastrakの概観をFig 1.3に示す.これらの位置センサの精度は数mm以下と 非常に高いものの,Fig 1.3に示すように比較的大型であり,かつ太いケーブルで接続されているため, 生体内の位置情報取得に応用することは困難であった.

生体内の位置計測に関しては有線式のセンサを用いた検討が多い.Tanaseら23はカテーテル先端に 超小型ホール素子を搭載し,血管内のカテーテル先端のモニタ装置を開発し,臨床応用に向けた研究 を進めており(Fig 1.4,Fig 1.5),田村ら24も同様にカテーテル先端に超音波発振子を搭載し,超音波の 減衰からカテーテル先端位置の計測を行っている.これらのセンサはもともとカテーテルを対象に開 発されたものであり,受信信号を有線で体外に取り出すことができるため,センサの大幅な小型化を 実現している.変わった所ではPapernoら25はコンタクトレンズ上にソレノイドコイルを搭載し,相 互誘導現象を利用して視線のトラッキングシステムを開発している(Fig 1.6).0.5 m立方の範囲内であ れば1 mm以下で眼球の方向を検出することが可能であるが,被験者自体を1 m立方のコイル内に固 定する必要があり,実用性は低い.無線式では永久磁石の静磁場を検出することにより三次元位置を 検出する方法が多く検討され,Zhang26,薮上27らが報告している.永久磁石は小型化が容易なため生 体内の三次元位置計測に適しているものの,強い磁場を発生させることが難しく,シールドルームな ど地磁気の影響をキャンセルする方法が必要であり,またその他の手法に比べ精度は若干悪く,特に 姿勢の検出ではセンサと磁石の向きによってはまったく計測できない場合も多い.無線式でかつ変動 磁場を用いた位置検出では,LC 共振回路によるマーカを用いた位置検出システムの報告が多く,

(13)

1.2関連研究の動向 4

Paradiso28ら,薮神ら29が開発,報告している(Fig 1.7).これらの装置はバッテリを搭載する必要が無く 生体への安全性が非常に高いが,検出コイルとマーカ内コイルが直交する位置にある場合,精度誤差 が悪化する問題点がある.

Table 1.1 位置センサの比較(文献19より引用)

Mechanical Optical Magnetic Acoustic Accuracy 0.1 - 2.5 mm 0.1 - 0.5 mm ~5 mm ~1mm

Resolution best~0.01 ~0.1 mm

Bandwidth >3000 Hz 100-2500 20-100 Hz 500-1000 Interference

Sources

physical occlusion

heat, occlusion

ferrous objects,

temp., humidity,occ Examples Faro Arm,

NeuroNavig

Optotrak 3020,

Polhemus,

Flock of Sonic Wand Contact /

Non-contact

Direct Contact

Contact with targets

Contact with targets

Contact with targets Passive /

Active Passive Active Active Active

Fig 1.3 三次元位置センサ Fastrakの概観

(14)

Fig 1.4 ホール素子を用いたカテーテル先端の三次元位置計測概要(文献23より引用)

Fig 1.5 ホール素子を用いたカテーテル先端の三次元位置計測システム(文献23より引用)

(15)

1.2関連研究の動向 6

Fig 1.6 ソレノイドコイルを用いた視線トラッキングシステム(文献25より引用)

Fig 1.7 LC共振回路を用いた三次元位置計測システム(文献29より引用)

(16)

1.3 研究の目的

上述した現状より,現在カプセル型医用機器の抱える問題点は以下の3点である. (1) 高コストのため,研究目的にしか利用できない

(2) X線などの被爆無しに正確な位置を把握できない

(3) カプセルを任意の位置へ移動・固定させることができない

本研究においては,生体内三次元位置計測技術の完成を目指し,このカプセル型医用機器の抱える

問題点(1)ならびに(2)の解決を目指す.本研究では消化管内計測用三次元位置センサの開発に向けて

二通りのアプローチを試みる.一つは相互誘導現象を応用した位置検出センサ(以下センサ 1),もう 一つは永久磁石を用いた位置検出センサ(以下センサ 2)である.前節で述べたとおり,生体内の無線 位置検出には様々な方法があるが,その中でも高精度での位置検出が可能な相互誘導現象を応用した ものと,小型化が実現可能な永久磁石を用いたものを試み,両者の比較・検討を通してより有用な生 体内三次元位置検出センサの開発を行う.センサ1では生体内無線伝送技術や超低消費電力型周波数 変調回路などを開発し,センサの小型化を推進する.さらに交流磁場の検出に一般的に用いられてい る3軸コイルを1軸に減らし,低消費電力化とセンサに搭載される回路の簡素化を実現する.簡素な 回路構成と低い消費電力により,大型の電源供給装置は不要となり,安価にセンサを製作することが 可能である.センサ2では磁場計測に微小な磁場も計測可能なフラックスゲート磁気センサを採用し,

そのセンサアレイから得られた信号を用い,数学的手法で位置を計測するアルゴリズムを開発する. 複数のセンサを用意することで,従来手法では苦手とされてきた永久磁石の回転による位置計測精度 悪化を克服する.

さらに本研究により開発されたセンサを応用することで容易に実用化が可能であると考えられる, 消化管蠕動運動解析システムの開発を推進し,センサの生体内での駆動検証を行う.

1.4 数値目標の設定

生体内三次元位置計測システムを開発するにあたり,以下の3点を重要項目として挙げた. (1) 低消費電力化

(2) 計測空間内における精度の安定化 (3) 磁性金属の存在による精度悪化の低減

「(1)低消費電力化」はカプセルに搭載する電源の小型化に繋がり,飲み込みやすさの向上に繋がる. 1.1で述べたM2Aはカプセルの体積に占める電源の比率が60 %を超えており,それでも連続駆動時 間は8時間程度である.本研究では電源の占める体積の比率が50 %を超えないことを目標に開発を

進めた.「(2)計測空間内における精度の安定化」は交流磁場を用いる場合に避けられない,磁場発生

装置から距離が離れることによる精度の悪化を防ぐ新しい方法を導入し,小型化・無線化を実現して も,現在市販されている有線式の三次元位置センサと同等の1 mm以下の計測誤差を目指す.最後の

「(3)磁性金属の存在による精度悪化の低減」も,交流磁場を用いる場合には避けられない問題の一つ である.本研究では数学的手法を応用し,計測空間内に磁性金属が存在した場合でも安定して位置を

(17)

1.4数値目標の設定 8

計測することができるアルゴリズムを開発した.

本研究では研究の具体的な目標として,数値目標を定めた.サイズは一般的な薬品のカプセルに使 われているサイズで最大程度である直径10 mm以下,長さ15 mm以下とし,精度に関しては既存の 有線式三次元位置センサと同様の精度である磁場発生装置より1 mの範囲内での計測誤差が1 mm以 下,駆動時間は排泄までの平均的な時間である20時間以上の安定動作を生体内環境で目指す.この 数値目標は現在市販されているカプセル内視鏡M2Aの性能を参考に設定している.M2Aは直径11 mm,長さ26 mmと大型で飲み込みにくく,連続動作時間も8時間であり,消化管末端では計測でき ない可能性が高い.最終的にはこのM2Aに本研究で開発した位置センサを付着させ,同時に計測す ることでより有用な消化管内の映像を取得するシステムの開発を行う.

本章ではこれらの実現のために二通りのアプローチを試みる.一つは相互誘導現象を応用した位置 検出センサ(センサ1),もう一つは永久磁石を用いた位置検出センサ(センサ2)である.まず,交流磁 場を用いた三次元位置センサの開発に取り組み,上述の(2),(3)に示した新しいアルゴリズムの有用 性を確認するために,有線式のカプセル型三次元位置センサを開発した.その後(1)に示した低消費電 力化を実現するために,新しい周波数変調方式を考案し,その有用性を確認した.また交流磁場を用 いた位置検出センサと平行し,永久磁石を用いた位置検出センサの開発も行った.永久磁石を用いる 場合,カプセル側に位置検出用の電子回路や電源を搭載する必要が無く,交流磁場を用いた位置セン サと比較して,大幅な小型化の実現が予想される.静磁場の検出センサとしてはホール素子やフラッ クスゲートなどを検討し,それぞれの比較・検討を行った.

1.5 本論文の構成

本論文は1.3で述べた研究目的と方針に沿い,全5章で構成されている.

第2章では有線式カプセル型三次元位置センサの開発について述べる.まず電磁気学理論を応用し た三次元位置取得原理について述べ,磁場のフィードバック制御による計測精度の安定化についてと, 位置補正アルゴリズムについて述べる.さらに開発した装置の概要について述べ,in vitro,in vivoで の検証実験結果について述べ,考察を行う.

第3章では第2章で得られた知見を元に開発された,無線式カプセル型三次元位置センサの開発に ついて述べる.有線式センサから改良を加えた三次元位置取得原理について述べ,生体を伝送路とし て用いた無線伝送手法について述べる.さらに開発した装置の概要について述べ,in vitroでの検証実 験結果について述べ,考察を行う.

第4章では第2章,第3章とは異なるアプローチで開発した永久磁石を用いた三次元位置センサに ついて述べる.三次元位置取得原理について述べ,永久磁石の作る磁場を検出するセンサの構成につ いて述べる.さらに開発した装置の概要について述べ,in vitro,in vivoでの検証実験結果について述 べ,考察を行う.

第5章において,開発したそれぞれのセンサの利点・欠点,ならびに既存の三次元位置計測法との 比較を通じて,本システムの有用性・評価について述べる.さらに本研究の総括と得られた知見,今 後の研究課題について述べる.

(18)

なお第2章から第4章までは「1.はじめに,2.計測原理,3.装置,4.実験,5.まとめ」の5節で構成 され,第4節「実験」内はさらに「①実験の目的,②装置,③結果,④考察」の4小節で構成されて いる.本論文の構成の概要をFig 1.8に示す.

Fig 1.8 本論文の構成の概要

(19)

2.1はじめに 10

2 章 有線式カプセル型三次元位置センサの開発

2.1 はじめに

本章では,有線式カプセル型三次元位置センサの開発について述べる.第1章で述べた目的を達成 するために,まず有線式カプセル型三次元位置センサを我々が開発した三次元位置取得原理の確認と, 消化管蠕動運動解析システムへの応用のために開発した.三次元位置取得の基本原理はビオ・サバー ルの法則に基づいた相互誘導現象の応用だが,実際にソレノイドコイルの作る磁場と,磁気双極子近 似によって計算された磁場には若干の差異があると考えられる.また,本研究ではソレノイドコイル の作る磁場を単純な楕円球として近似する.そこで近似と実際の差異の確認と,本研究で新しく開発 された手法の確認のため,装置を設計・製作し,動作検証実験を行った.本章では2.2で三次元位置 取得原理について述べ,2.3で装置設計のための方針,実際に設計を行った結果について述べる.2.4 では装置を実際に動かした際の検証結果と,in vitroにおける精度検証実験結果について述べる.さら に,本システムの応用として開発された消化管蠕動運動解析システムについて述べ,動物を用いて行 った実験結果について報告し,2.5で本研究により得られた知見について述べる.

2.2 計測原理

有線式カプセル型三次元位置センサ(センサ1)における三次元位置取得のフローチャートをFig 2.1 に示す.本アルゴリズムはフィードバック制御,等磁場面形状推定,センサ位置計測に大別される. 以下,各項目について述べる.

Fig 2.1 センサ1における三次元位置取得フローチャート

(20)

2.2.1 ソレノイドコイルの作る磁場

本研究ではソレノイドコイル(以下一次コイルと呼ぶ)に交流電流を流すことにより交流磁場を生成 し,センサでその磁場を検出し,センサの空間位置と姿勢を求める.一次コイルが作る磁場は,一次 コイルからの距離が十分に遠い場合,磁気双極子が発生する磁場に等しく,ビオ・サバールの法則か ら求めることができる.一次コイルと二次コイルをFig 2.2に示すように配置すると,二次コイルに おける一次コイルが作る磁場は式(2.1)のように表すことができる.

 

 

=

=

=

) 3

4 ( 4 3 4 3

2 2 5 2

5 2 5 2

R R Z

H Ia

Z R Y H Ia

Z R X H Ia

z y x

(2.1)

ただし,

R = ( xx

1

)

2

+ ( yy

1

)

2

+ ( zz

1

)

2

.

(2.1)式において,Iは一次コイルに流れる電流を,aは一次コイルの断面積を示している.(2.1)式を

用いてコイルからの距離が十分に遠いときの等磁場面形状をFig 2.3に示す.(2.1)式とFig 2.3により,

ソレノイドコイルの作る磁場の強さは原点からの距離の3乗に逆比例し,その形状は球に近い楕円球 形状をしている.詳細は付録Aに示した.楕円球はz軸方向に対して長く,x,y軸方向はz軸につい て対称となる.以下z軸方向を長軸方向,x,y軸方向を短軸方向と呼ぶ.y = 0の平面で切断した楕円 球と理論値曲線をFig 2.4に,その差異をFig 2.5に示した.本研究では後述する通り,3つの等磁場 面形状の交点を求めることにより,センサの位置を取得する.(2.1)式をそのまま使うと交点の導出が 非常に複雑となるため,Fig 2.5に示したとおり,最大で約5 %程度の誤差が認められるが,本研究で はソレノイドコイルの作る等磁場面形状を楕円球で近似し,式(2.2)のように表すこととした.ただし,

Aは楕円球の長軸方向の軸長を,Bは楕円球の短軸方向の軸長を示す.

2

1

2 2 2 2

2

+ + =

B z B

y A

x

(2.2)

(21)

2.2計測原理 12

Fig 2.2 ソレノイドコイルの作る磁場

Fig 2.3 ソレノイドコイルの作る磁場形状の楕円球近似

(a) ソレノイドコイルの作る磁場形状 (b) (a)とほぼ同形状の楕円球

(c) (a)と(b)の重畳表示 (a)

(b)

(c)

(22)

Fig 2.4 楕円球近似と理論値

Fig 2.5 近似値と理論値の違い

(23)

2.2計測原理 14

2.2.2 センサの構成

本研究では一次コイルが作る磁場を検出する方法として,相互誘導現象を採用した.本研究で開発 したセンサには,互いに直交する3個の小型のソレノイドコイル(以下二次コイルと呼ぶ)が内蔵さ れている.各コイルは中心が一致するように配置され,各コイルに発生する誘導起電力から,磁場の 強さの3直交軸方向の成分を得ることができる.各成分のベクトル和から磁場の強さが求められ,セ ンサが一定の位置でどのような姿勢であっても,その点での磁場の強さを計測することができる.

2.2.3 等磁場面の計測

2.2.1で述べた通り,磁場の強さは一次コイルからの距離の3乗に逆比例して減衰する.したがって,

一定の交流電流を一次コイルに流し,交流磁場を生成すると,一次コイルとセンサの距離が離れるに したがい,磁場が急激に減少するためにS/Nが悪化し,位置を安定して計測できなくなる恐れがある. そこで本研究では,センサの空間位置に関わらず,センサが検出する磁場の強さが一定になるように 一次コイルに流す交流電流をフィードバック制御する方法を採用した(以下方法1と呼ぶ).なお, 比較のためにフィードバックを用いずに電流を流す方法(以下方法2と呼ぶ)も検討した.方法2の 場合,二次コイルの誘導起電力は一次コイルとの距離の3乗に比例して減少する.つまりコイル間距 離が長くなるほど,距離に対する誘導起電力の変化が小さくなることがわかる.したがって,遠くな るほど微小なコイル間距離を計測しにくくなり,分解能が低下する.方法1の場合,誘導起電力は一 次コイルとの距離の3乗に比例して増加する.方法2とは逆にコイル間距離が長くなるほど距離に対 する印加電圧の変化が大きくなることがわかる.したがって,コイル間距離が離れても微小なコイル 間距離を計測しやすくなり,分解能が向上する.しかし誘導起電力の応答時間については方法2は一 次コイルに印可する電圧が一定なので,計測環境下において磁場が定常状態となり,誘導起電力の応 答時間は早い.方法1は一次コイルに印可する電圧を変化させるので,磁場は常に変動している.一 次コイルへの印可電圧を変化させた後,二次コイルの誘導起電力にその影響が表れるまで待つ必要が あり,必然的に応答時間が遅くなってしまう.本研究では生体内を計測対象としているため,正確な 位置検出を重要視した.応答時間に関しては10 Hz程度の計測が可能であれば,実用上問題はないと 判断し,方法1を採用することとした.

フィードバック処理のフローチャートをFig 2.6に示す.本手法を用いると,目標値の値により計 測できる範囲が決まってしまう.本研究では計測機器の分解能とあらかじめ設定した数値目標に従い,

一次コイルから1 mの範囲内で計測が可能となるように目標値を設定した.フィードバック制御には 目標値と計算値の比率の 10%を出力電圧に乗算する方法を採用した.つまり計測値が目標値の 90%

だった場合,出力電圧を現在の値から1%増加させる.増加の比率が大きすぎるとフィードバックが 一定値に収束せず,増加の比率が小さすぎるとフィードバックの収束に時間がかかってしまう.10%

という値は実測から経験的に定めた.

計測の前処理として,一次コイルと二次コイルを正対させ,二次コイルに発生する誘導起電力の大 きさが一定になるように,一次コイルに印加する電流を計測する.一次コイルと二次コイルを正対さ

(24)

せた場合は式(2.1)にx = y = 0 を代入したことに等しい.したがって,一次コイルの中心軸上にあり, その原点からz 離れた位置にある二次コイルを貫く磁束 H は式(2.3)のように示すことができる.

3

=Kz

H

(2.3)

磁場のフィードバック制御を行っているため,一次コイルへの印加電圧は,一次コイルと二次コイ ルの距離の三乗に比例して増大する.一次コイルの中心軸上にあり,その原点からz 離れた位置に二 次コイルを置いた際の電圧Vは式(2.4)のように示すことができる.

z

3

K

V =

V (2.4)

一次コイルと二次コイルの距離とそのときの一次コイルへの印加電圧をプロットし,最小二乗法を 用いて指数近似を行うと,式(2.4)のKVを得ることができる.式(2.4)の逆関数として,式(2.5)が求めら れる.

3 / 1 1

)

(

= K V

z

V (2.5)

式(2.5)を用いることで,一次コイルと二次コイルが正対している場合,一次コイルへの印加電圧か

ら,Fig 2.3に示した長軸の長さを求めることができる.楕円球の長短比は2:1であるため,一次コイ ルへの印加電圧より,その一次コイルが生成する等磁場面の形状を一意に定めることができる.一次 コイルと二次コイルが正対していない場合でも,フィードバック制御によって二次コイルが発生する 誘導起電力が規定値になるように一次コイルへの印加電圧を変化させると,印加電圧の値からその二 次コイルが存在する等磁場面の長軸の長さを式(2.5)より求めることができ,正対しているときと同様 に,その形状を一意に定めることができる.周波数によって式(2.5)に示すKVは異なるため,事前に 全て求めておく必要がある.これらの処理をおこなうことで,それぞれの一次コイルが発生し,セン サを貫く等磁場面の形状を得ることができる.

(25)

2.2計測原理 16

Fig 2.6 フィードバック処理のフローチャート

2.2.4 センサ位置の取得

2.2.3で述べた方法で等磁場面の形状を決定できるが,一次コイルが1つの場合,等磁場面のどの点

にセンサがあっても区別できないため,一意に位置を求めることができない.そこで,二次コイルと 同様に3つの一次コイルを用意した.一次コイルの配置をFig 2.7(a)に示す.本研究では後述する通り, 3つの等磁場面形状の交点を求めることによりセンサの位置を取得する.したがって,それぞれの一 次コイルは空間内における位置と方向が正確にわかれば任意の位置・方向に設置しても良いが,装置 の製作の簡便さや3つの等磁場面形状が交点を持つ可能性を最大化させるために,Fig 2.7(a)に示すコ イル配置を採用した.それぞれの一次コイルが発生した交流磁場を識別するために,異なる周波数の 交流電流を流した.得られた誘導起電力の大きさから式(2.5)を用いて楕円球の形状を求める.その結 果,それぞれの一次コイルにおいて等磁場面を求めることができ,3つの等磁場面の交点がセンサの 位置となる.

 

 



 

=

− + +

= +

− +

= + +

) 1 (

) 1 (

1

3 2

3 2

3 2

2 2

2 2

2 2

1 2

1 2

1 2

b z a

t y b x

b z b y a

s x

a z b y b x

(2.6)

(26)

3つの等磁場面形状は式(2.6)のように表すことができる.ただしs,tはFig 2.7(a)に示した原点に配 置されていない一次コイルのx軸,y軸における位置を示し,an,bnは得られた楕円球の長軸,短軸 の長さを示している.式(2.6)の連立方程式の解がセンサの三次元位置(Cap_x, Cap_y, Cap_z)となる.こ の連立方程式を解くためにガウス・ニュートン法を用いる30

ここで関数

f , g , h

を式(2.7)のように定義する.

 

 



 

− − + +

=

− + +

=

− + +

=

) 1 ) (

, , (

) 1 ) (

, , (

1 )

, , (

1 2

1 2

1 2

1 2

1 2

1 2

1 2

1 2

1 2

a t z b y b z x y x h

b z a

s y b z x y x g

b z b y a z x y x f

(2.7)

h g

f , ,

0 となる

( x , y , z )

が式(2.6)の連立方程式の解

( Cap _ x , Cap _ y , Cap _ z )

である

h

g

f , ,

1次の項までTaylor展開すると式(2.8)を得る.

( ) ( )

( ) ( )

( ) ( )









∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

=

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

=

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

=

z z z y x y h

y z y x x h x

z y x z h

y x h z y x h

z z z y x y g

y z y x x g

x z y x z g

y x g z y x g

z z z y x y f

y z y x x f

x z y x z f

y x f z y x f

) , , ( )

, , ( )

, , , (

, ,

,

) , , ( )

, , ( )

, , , (

, ,

,

) , , ( )

, , ( )

, , , (

, ,

,

0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0

(2.8)

ここで(

x

0

, y

0

, z

0)は任意の値であり,

x = xx

0

y = yy

0

z = zz

0であ.したが

って,

( )

( )

( )









=

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

∆





=

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

∆





=

∆





∂ + ∂

∆





∂ + ∂

∆





0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0

, ) ,

, , ( )

, , ( )

, , (

, ) ,

, , ( )

, , ( )

, , (

, ) ,

, , ( )

, , ( )

, , (

z y x h z z

z y x y h

y z y x x h

x z y x h

z y x g z z

z y x y g

y z y x x g

x z y x g

z y x f z z

z y x y f

y z y x x f

x z y x f

(2.9)

を解くと,現在の(

x

0

, y

0

, z

0)よりも解である(

Cap _ x , Cap _ y , Cap _ z

)に近づくことになる. 上式を行列式で表すと式のようになる.

A

J⋅ =− (2.10)

(27)

2.2計測原理 18

ただし,

( )

( )

( )



=





=













=

0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0

, ,

, ,

, , ,

, ) , , , ( ) , , , ( ) , , (

) , , , ( ) , , , ( ) , , (

) , , , ( ) , , , ( ) , , (

z y x h

z y x g

z y x f z

y x

z z y x h y

z y x h x

z y x h

z z y x g y

z y x g x

z y x g

z z y x f y

z y x f x

z y x f

A

J

ここでJはJacobian (ヤコビ行列)と呼ばれる.新しい(

x

0

, y

0

, z

0)を得るためには,

A J

= −

−1

(2.11)

を求めれば良い.

n返えとで





=

z Cap

y Cap

x Cap

n

_ _ _

(2.12)

が得られる.したがって,式(2.10)よりJacobianは式(2.13)のように求められる.

( )

( )

















= −

2 3

0 2 3 0 2

3 0

2 2

0 2 2

0 2

2 0

2 1

0 2 1

0 2

1 0

,2 ,2

2

,2 , 2

2

,2 , 2

2

b z a

t y b

x

b z b

y a

s x

a z b

y b

x

J (2.13)

ニュートン法の収束速度は初期値に依存し,解に近い値を初期値とすると,高速に収束することが わかっている30.本研究では計測対象を消化管の運動としているため,それほど高速な位置の変化は 想定していない.したがって,直前に得られたセンサ位置を初期値として設定することで,収束の高 速化を図った.

(28)

Fig 2.7 1次コイルの配置 (a) 1次コイルの配置 (b) センサ位置の取得

2.2.5 センサ姿勢の取得

2.2.4で述べた方法を用いて位置を取得した後,センサの姿勢を取得する.求めた位置を式(2.1)に代

入することで,センサ位置での磁場の方向ベクトルuを求める.センサに内蔵されている三軸の二次 コイルから得られた磁場の方向ベクトルをvとすると,uvのなす角度がセンサの回転角を示し,

それぞれをXY,YZ,XZ平面に投影することで,各軸におけるセンサの回転角を求める.しかし,セン サが任意の姿勢に対して点対称の姿勢(vと-v)にある場合,誘導起電力の大きさが同じになってしまい, 姿勢の識別を行うことができない.そこで,一次コイルに流す交流電流波形と,センサで得た誘導起 電力波形を同期して取得することで両者の位相差を求める.センサが点対称の姿勢にある場合には位 相が反転するため,識別が可能となる.

2.2.6 センサ位置の補正

本研究で開発したセンサは交流磁場を用いているため,周囲の環境による磁場の歪みが位置検出に 大きな影響を及ぼす.本研究で開発したセンサは最終的にカプセル型内視鏡などのカプセル型医用機 器での利用を想定しているため,手術室のような周囲に多数の金属が存在する環境での使用に対応す る必要がある.そこで,歪んだ磁場環境でも計測が可能な補正法の開発を行った.

センサ位置の取得2.2.4で述べた通り,本研究では3つの楕円球の交点からセンサの位置を求めた. 楕円球は二次方程式で表すことができる.磁場に歪みがあると,楕円球の推定に誤差が生じ,計測結 果はある二次曲面にしたがって真値から離れてしまう.そこで,計測値と真値の集合から磁場の歪み を示す二次曲面の式を求め,逆算することで位置の補正を行った. i回目の計測値をMxi, Myi, Mzi,真 値をTxi, Tyi, Tziとすると,両者の関係は式(2.14)のように表すことができる.

(a) (b)

(29)

2.2計測原理 20

 

 

+ +

+ +

+ +

=

+ +

+ +

+ +

=

+ +

+ +

+ +

=

7 6

2 5 4

2 3 2

2 1

7 2 6 2 2 5 2 4 2 2 3 2 2 2 2 1 2

7 1 6 2 1 5 1 4 2 1 3 1 2 2 1 1 1

a M a M a M a M a M a M a T

a M a M a M a M a M a M a T

a M a M a M a M a M a M a T

zn zn

yn yn

xn xn

xn

z z

y y

x x

x

z z

y y

x x

x

M

(2.14)

式(2.14)と同様の式がTyn, Tznについても表すことができる.事前にa1からa7までの係数を求めるこ とができれば,式(2.14)を用いて計測値から真値に近い補正値を求めることができる.式(2.14)を行列 で表すと,式(2.15)のように表すことができる.

T = M a (2.15)

計測回数をnとすると,Mはn行7列となる.aを求めるためには,Mの逆行列が必要だが,M は一般に正方行列ではないため,逆行列を求めることができない.そこで,最小二乗法を用いた.誤 差ベクトルをeとすると,式(2.15)は式(2.16)のように表すことができる.

T = M a + e (2.16)

誤差を最小にするため,eをaで偏微分し,式(2.17)のように表すことができる.

2

0

∂ =

e

a

(2.17)

式(2.17)より,式(2.18)を求めることができる.

T M M M

a = (

*

⋅ )

1

*

(2.18)

ただし,M*は転置行列を示している.本研究で開発したセンサでは,事前に取得した計測値と真値 の集合を用いて式(2.18)よりaを求め,計測値の補正を行う.

(30)

2.3 装置

センサ1のブロック図をFig 2.8に示した.本システムは大きく分けて,磁場発生装置,センサ本 体,信号処理装置の3つに大別される.以下,各装置について述べる.

Fig 2.8 センサ1 ブロック図

2.3.1 設計

1.4で述べた数値目標や,後述する装置の仕様などに基づき,設計を行った.

広範な領域で位置を計測するためには,強い磁場を発生させる必要があり,そのためには式(2.1)よ り,一次コイルを大きくするか,流す交流電流を大きくする必要がある.一次コイルの形状には一定 の限界があるため,本研究ではパワーアンプを用いて一次コイルに流れる交流電流の増加を図った.

3つの一次コイルに流す交流電流の周波数は,高調波成分が互いに影響しないことと,回路に利用 可能な素子値などを考慮し,1080 Hz,1379 Hz,1739 Hzを採用した.

Fig 2.9に式(2.1)より求めた二次コイルの断面積と誘導起電力の関係の理論値を示した.ここでは一

次コイルと二次コイルは500 mmの間隔を開けて正対させた状態の理論値を求めている.Fig 2.9から,

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二次コイルの断面積を25 mm2とし,パワーアンプの最大出力時の二次コイルに生じる誘導起電力 とコイル間距離の理論値をFig 2.10に示した.後述するPCへの取り込み時のA/D変換時の分解能が 0.3 mVであるため,1.4で述べた計測範囲内で最低0.3 mV以上の入力を確保するため,誘導起電力を アナログ的に3000倍に増幅することとした.

(31)

2.3装置 22

Fig 2.9 二次コイルの断面積と誘導起電力の関係

Fig 2.10 二次コイルに発生する誘導起電力とコイル間距離の関係

(32)

2.3.2 磁場発生装置

磁場発生装置には2.2.1 (a)で示した一次コイルが含まれている.本研究では一次コイルとして 1.8 mHのエポキシ樹脂充填制振型の空芯コイル(TRITEC社製)を用いた.その仕様をTable 2.1に示す.

製作した磁場発生装置をFig 2.11に示す.3つの一次コイルをアクリル板で覆い,コイル間距離(式(2.6) のs,t)は5.45 mmとした.

本研究では50 Wのオーディオ用パワーアンプ(P4050,Yamaha社製)を用い,一次コイルに流れる交 流電流の増加を図った.Table 2.2にオーディオ用パワーアンプの仕様を示した.

Table 2.1 TRITEC社製エポキシ樹脂充填制振型コイル仕様

インダクタンス 電線 直流抵抗 重量 寸法D×F

[mH] [mm] [Ω] [g] [mm]

EC-1.80 1.80 1.2 0.52 370 62×31

型番号

Fig 2.11 磁場発生装置

(33)

2.3装置 24

Table 2.2 Yamaha社製オーディオ用パワーアンプ仕様

連続出力 50W + 50W + 50W + 50W (8Ω,20Hz~20kHz,THD=0.1%) 周波数特性 20Hz~20kHz,0dB±1dB (8Ω,1W)

パワーバンド幅 20Hz~20kHz (8Ω,25W,THD=0.1%) 全高調波歪率(THD) 0.05%以下(8Ω,25W,20Hz~20kHz)

混変調歪率(IMD) 0.05%以下(8Ω,25W,60Hz : 7kHz = 4:1)

チャンネルセパレーション 60dB以上(25W,@8Ω,20Hz~20kHz,ATT=max,入力600Ωシャン 残留ノイズ -86dBm以下(ATT=min.,fc=12.7kHz,-6dB/oct LPF)

S/N比 96dB以上(入力600Ωシャント,fc=12.7kHz,-6dB/oct LPF) ダンピングファクタ 50以上(1kHz,8Ω)

スルーレート ±10V/µsec (8Ω,Full Swing)

入力感度 +4dBm (8Ω,50W,ATT=max.,@1kHz) 最大電圧利得 24.2dB (8Ω,ATT=max.,@1kHz)

入力インピーダンス 15kΩ以上(Balance/Undalance,ATT=max.)

定格電源 100V,50/60Hz

定格消費電力 250W

寸法 480(W) × 56.4(H) × 452.2(D)mm

重量 6.8kg

0dBm=0.775Vrms

2.3.3 センサ本体

センサ本体をFig 2.12(a)に示した.センサは直径約10 mm,長さ約15 mmの円筒形状のポリエチレ ン製カプセルで包み,防水処理を施した.センサには直径50 µmの銅線を5 mm角のアクリル樹脂に 500巻きした二次コイルを3つ内蔵し,それぞれ直交するように配置した.カプセルを除去し,二次 コイルが露出した状態をFig 2.12 (b)に示した.Table 2.3にそれぞれの二次コイルのインダクタンスを 示した.二次コイルはその内部に別の二次コイルを包み込んでいる場合があり,外側と内側の二次コ イルでは,直径が異なってしまう.その結果インダクタンスは外側にある二次コイルの方が大きくな るが,信号処理の段階で各コイルのインダクタンス比を乗算することで補正を行った.センサ本体と 信号処理装置をつなぐケーブルには直径100 µmの銅線を用い,強度を保つために直径1 mmのより

糸に巻きつけ,さらに直径2.5 mmのシリコンチューブ内に封入し,防水処理を施した.

Table 2.3 二次コイルのインダクタンス

インダクタンス (mH)

比率 (%)

3.61 4.20 6.18

25.80 30.02 44.17

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