小農ココア生産の供給分析――ガーナを事例として
――
著者 細見 真也
権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名 アジア経済
巻 9
号 10
ページ 78‑90
発行年 1968‑10
出版者 アジア経済研究所
URL http://doi.org/10.20561/00052313
はじめに
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小 農 コ コ ア 生 産 の 供 給 分 析
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は じ め に
ココアはチョコレートの主たる原料である。よ り正確にいえば, ココア豆から搾出されるココア
・パターと, ココア・パウダー,ココア・ぺース トにミルク,砂糖,および香料を添加してチョコ レートが製造される。
ところで,ココア豆はいわゆる熱帯作物の一つ であり,赤道をはさむ南北20度の緯度に位置し,
高温多湿な地域でしか栽培することはできない。
このため,世界の主要生産国は西アフリカのギニ ア湾沿岸地域とラテン・アメリカの中部地域に限 られ,いわゆる低開発閣の
1
次産品となってν
る。 これに対して, チョコレートは噌好品として需 要の所得弾力性がきわめて高い商品の一つであり
, その消費市場は主としてアメリカ合衆悶やヨ ーロッパなどの先進諸国に限られているのしかも、
これら先進諸国においては,第
1
にチョコレート 製品に対する閣内市場が大規模であること, 第2
細 見 川 真 也
やにチョコレートの製造技術が古い伝統に支えら れ,消費者の微妙な噌好に適合することができる 状態にあること, などの条件が備わっているため チョコレート製造は企業として成立したのである が,それらの諸条件に欠け、民族資本の発達が遅 れているココア豆の生産国はチョコレート製造に 着手することはきわめて困難な状況にある。
以上,述べたところから明らかなように,ココ ア豆は原料として熱帯の低開発国から輸出され,
先進諸国はココア豆を輸入じてチョコレート製品 に加工し消費している。したがって,先進国と低 開発国はチョコレート製品の原料たるココア豆の 生産と加工をめぐって,完全な分業体制を維持し ているといえよう。こうして,
1966
年現在で年間1
似治トン以上のココア豆を生産しているものは3 1
カ国におよび,同じく年間
1
側約トン以上のココア 豆を輸入しているのは40
カ国にも達している。ま さに, ココア豆は国際的な1
次産品なのである。そこで, ココア豆の輸入者たる先進諸国の側治、
らは,国際価格をできるだけ下げたいという要求 がだされ, ココア豆を生産し輸出している低開発 悶からは国際価格の上昇を求めることになり,両 者は困際市場におU、て激しい利害の対立に直面す
ることになる。
それでは,実際にココア立の間際市場,なかん ずく両者の利害対立の焦点たる国際価格はどのよ うな動向をたどっているのかといえば,
1960
年以Ⅰ 国際市場の動向
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およびストックであると脅えて 需要と供給,
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の「製粉量」のことを意味し, 供給はココ よレ。そして、最七t主要なJJ;(
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まず最初に, 1947年から66年にいたる20カ年に コア豆の国際市場における需給状態と側格の動的
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おける世界のゴコア互の総生産量をみれば 多 少 コゴ
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培農家ぴ〉生産費に主観察|ィ;)とと七に、
の曲折はあるとはいえ確実に増加してきたことが ついても{子細に検付する。
l947年度にはわずか61 明九方、であるれすなわt:,'
万トン弱の生産量を記録Lたにすぎなかったもの
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2年後の1949年には早くも
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トンを突破し 5friFには83.S‑hトンにまで成長した。したがr》て,品
投機的な先物取引とい
、
その!
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際価格を決 ココア立の商取引には,う行為が行なわれてL、るため、
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1 9 4 7
年から56年までの1 0
年間における総生産量の 伸び率は37.1%を記録したことになる。その後,ココア立の生産量は依然として増加の 一途をたどり,印刷)年にはJ山、に
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トンに 達して1附万トン台を超え,1
併お年には実に15 0
万 トン近し 生産量をあげたのであら。 この年の驚具 的な生産量が気候にめぐまれた結果もたらされた ι のであるとしても, 66 年には 120. :~万トンを記 録したのであり,世界の生産量はすでに1 2 0
万ト ン台を突破するだけの規模に達したホのと考えふ れる。つまり、この1 9 5 6
年から66
年までの1 0
カ午・ における|吐界のココア. 1
,:の生産力はおよそ持%の 成長本を維持してきたのである(第l炎今照)ο2 .
需 要いっぽう,世界のココア豆の製粉肢をみれば,
順調な増加傾向をたどっているのは事実である が,
1 9 4 7
年から56
年までの成長率が;1"3よ そ 加 点 % であり,57
年から同年にいたる1 0
年聞の伸び率は55.3%
を記録し,最近10
年間における増加がきわ めて急速であ叶たことが一つの特徴であったとい える。しかし,過去20年間における幣要最を.年度ご とに供給量と比較すれば,需要が供給を上
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りた のは8カ年度にすぎず,残りの 1 2
カ年は,u
、ずれ色 供給が需要を超過していたのである(第1表参照)。3 . ス ト ッ ク
ココア立の国際的な需給関係は,先に述べたよ うに,過去2
0
年間のうちの1 2
カ年については供給 超過の状態で推移した。そこで,i 9 4 7
年10 月 1 日
現在,およそ加万トンであると推定されたココア 主主のストック量は大幅に減少しなかっただけでた く,1 9 6 2
年以降ではきわめて急速な増加をみせ、1 9 6 1
年に25 . 3
万トンであったものが現年には:ゅ. 7
万トンにまで達し,1 9 6 6
年には実にら7. f i . T j
トンという大震まのスト、ソクを持つにいたったのである
(ii l)
以上,世界のココア豆のストック量について述 べたが、 それぞれの消費国におけるココア豆のス
ト、ソク最をみても,過去
2 0
年間そのストックはむ しろ増加l
傾向を示しており,特に1 9
前年以降にお ける増加はきわめて著しいものがある。すなわれ, 消費 同におけるストサク量
l
士、1 9 4 7
年には1 9 :m
トンでありたものが、56
年には27 . 7
万トンへ4:L5% の伸びを記録し,さらに ~5年には らfi.()J i
トンにまで激増した。このため消費国にお けるストック最の製粉量に対する比率も高い水準 で推移し,l ! H 7
年から印年まではほぼ80%であっ たものが,そのごの5
年間は40%
を超えるにいた 勺たのである(第1表参照)。4 .
国 際 価 格二れまでに述べてきたように,少なくとも過去
2 0
年聞における世界の需給関係をみるかぎりココ ア豆は完全に供給過剰の状態であった。その結果 ココア瓦の国際価格はニ,三の例外はあるもの の1 9 6 0
年までは,ほぽ横ばい状態で推移してきた が,その後は記録的な低水準にまで下降した。すなわ九, エューヨーク市場におけるココア豆 の悶際価格は,重量ポンド当たりで1
9 4 7
年には25
セントであったが, 60年には26
セント,翌日年に は21
セント,そして1 9 6 5
年にいたりついに15
セントにまで大幅に低下したのである(第1表参照)。
しかし,
I
過際価格の動向を仔細に観察しなけれ ば供給過剰によって価格の低下がもたらされてい ることを断定することはできない。そこで,世界 のココアI L
のスト、ソク量の変化と闘際価格の動向.
には相関関係があるかどうかを検討しよう。
この検討のための資料として第
1
表を見ていた だきたい。そして, 国際価格が魯激な上昇を記録1968100083.TIF
した1
9 5 : l 〜 5 5
年と1 9 5 8 〜 59
年の二つの期間にお いて,世界のストック量変化,消費国における製 粉量に対するストック量の比率, および国酪価格 円三者が, どのような変動をみせたかを在日したし\〕
まず最初に
1953‑55
年の価格上昇期におけるス トックの動きをみれ1: f , t i
/:界のてト叶ク7震は1 9 5 : 2
年と5 3
年のZ
カ年にわた〉て大幅な減少をみせ,5 3
年の推定ストック量は1 3
万トンとそれまでの最 低を記録した。このように世界のストアク廷が大 幅に減退したにもかがわらず,[吐界の需要最(製 粉量)は1 9 5 2
年の7 1 . 9 7 1
トンから80
万トンへ飛騨 的に増加したため,ココア豆の消費\i;jにおける製 粉量に対するストソケ量の比率は1 9 5 : 2
年の立7. 1 ヲ 4
から翌年は24.3%へ大きく後退した。
そこで, 世界の治費国;土ココア豆の価格がiま
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セント台で安定してし、るのを見込んでそのストヴク量を拡大するために買付量を増加した。そこ で,
1 9 5 4
年には消費国での製粉孟に対するストッ ケ量比率は32.J%に:主で高められ, 逆i
こ世界のス トック量は1 3
万トンから1 2
万トンへと低下し,そ の国際価格は一挙に4 9
セントへと高騰したのであ るしかし,その後
1 9 5 4
年から5 5
年にかけて世界の ココア茸に対する需要(製粉量〕は72 〜 7 3
万トン で停滞してU、たため,54
年に言己録した49
セントと いう高ャ国際価格も翌年には早くも3 7
セントにま で下落し,さらに56
年には2 6
セントにまで急速に 低下した。フぎに,
1 9 5 8
年から59年にかけて起三った悶際 価格の上昇をみると, それがココア立に対する需 要の供給に対する大幅な超過, つまり世界のストゾケ量と消費国における製粉量に対
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るストック 震の比率が急速に下落したことによ寸てもたらされえことが明らかである。すなわち,世界の供給 量は
1 9 5 7
年には88 . 7
万トンであったものが翌年は7 6 . 3
万トンにまで減退し,それとともに世界のス トアク最も5 7
年と比較して58
年は8 . 5
万トンもの 減少となった。これに対して,世界の需要最(製粉 議)はわずかに減退したものの,その絶対量におヤ ては依然としぐ供給量;を上回っていたため,消費 問におけるストック最は6. 5
万トンも減少し,製粉 最に対するストック最比率も1 9 5 7
年の29.9%から5 8
年には24.5%
へ激減した。この結果その国際価 格は5 7
年の26
セントから58
年には3 9
セントへちょうど
50%
もの大幅な上昇を記録することになった のである。しかし,
1 9 6 0
年には供給過剰傾向が一段と激し くなって,世界のストック量は59
年と比較して10 万トン以上の激増を記録するi
こL、たったため,そ の 国 際 価 格 は 早 く も2 6
セントに低下したのであ る。その後世界のココア豆の需給関係は依然とし て供結超過で推移し,世界のストック量も増加の【途をたどり,
1 9 6 0
年には1 5
万トン桂度にすぎな かったのが1 9 6 3
年には40万トンを突破し,66
年に はついじ57.8
万トンにまで激増した。ーのため国 際価格は1 9 6 1
年以降21
セント台で低迷をつづけ,65
年にいたっては1 5
セントにまで鋭〈落ち込んで しまったのである。そこで世界の消費闘はこの低価格に便乗して着 々とそのストック最を増加させ,
6 1
年に41
万トン であった消費閣のストック量は6 5
年には56
万トンi
こまで拡大された。 したがって消費国における製 粉盤に対するストック量比率も増加し,6 0
年には33.2%
であったものが6 1
年には40.3%に上昇し,6
'.\年には4 3 . 2
')らというように過去2 0
年間での最高 を記録するにいたった(第1
表参照〉。そこで,これまでの叙述をまとめて, つぎのよ 81
Ⅱ 供給の価格に対する非弾力性
1968100084.TIF
うにいうことができる。
すなわちココア豆の国際価格はその需給関係に よって成立するものであり, それがきわめて不安 定な動きをとるのは,需給関係の不安定さによる ものである。そしてココア豆に対する需要が供給 を超過し,消費固における製粉量に対するストッ ク量の比率が25%以下になったばあい,はじめて ココア豆の国際価格は上昇する。つまりココア豆 の国際価格は,たんに需要が供給を超過しただけ では上昇せず, その需要が消費固における手持ち のストックを大幅に減少させたのち,はじめて価 格の上昇が起こるのである。
しかし第 2次大戦後の却年聞に関するかぎり,
消費国での製粉量に対するストック最比率を25%
以下にまで低下させるほどの需要があったのは,
1 9 5 3
年と5 8
年の2
カ年だけであった。それ以外の 年度では,ほぼ慢性的な供給超過があり,そのた め消費国では手持ちのストックを放出することに よって価格がそれ以上に上昇することを防止する とともに,その低下を待つことができたのである。そして,ひとたび国際価格が低下しはじめるや,
急激にストック量を増加させて将来の価格騰貨に 備えてきたのである。
したがって,過去
20
年間におけるココア立の国 際市場では,需給のバランスが崩れて価格の急騰 が超とっても,消費国ではそのストックを放出す ることによって直ちに価格を低下させることが可 能であったといえる。 これに対して,ココア主主の 生産国は価格の大幅な下落が起こっても直ちにそ の供給量を縮小させることができず, そのため,ひとたび低下した価格は容易に上昇することがで きなかったと考えられる。
先に述べた
1
問。年以降におけるココア豆の供給 過剰棋向と,国際価格の低迷とはt
述のような要閃によってもたらされたものと思われる。
(注1) 「ストック最jは,いずれも Gill& Du妊us Ltd.,
Coe
四aS t a t i s t i c sにおける推定値である。
I I
供 給 の 価 格 に 対 す る 非 弾 力 性 ココア豆の供給がその国際価格に対してきわめ て非弾力的であることは先に指摘したとおりであ り, その結果国際価格はひとたび低下すれば容易 にもとの水準を回復することができなかった。それでは,いかなる要因によってココア豆の供 給は価格に対して非弾力的になっているのであろ
うか。
ここでは, その要因を生産者段階でのそれと,
輸出段階におけるそれとに分けて考察する。
1. 生産者段階での非弾力性
ここでの考察をすすめるにあたって,現在,世 界のココア豆生産量の
30%
強を産出し文字どおり の主生産国である西アフリカのガーナにおけるコ コア生産者農家を対象とする。この国のココア生 産はラテン・アメリカ諸国のばあいと異なり,い わゆる「小農」にようて行なわれているが, この ような小農によるココア生産はほかのアフリカ諸 国のばあいにも一般的に見られるものである。 し たがって,われわれはプランテーション方式によ るココア生産に関する経済分析を行なうことが必 要であるとしても,小農によるココア生産を分析 することはきわめて有用な作業であると考えてよu 。 、
く生産費構成>
商アフリカ, ギニア湾沿岸地域にココアの栽培 がはじめて移入されたのは
1 9
世紀末のことであ り,すでに8 0
年以上の腫史を持っている。しかし 先に述べたようにこの地域でのココア栽培がほと んどすべて小農形式で行なわれてきたため,生産スン 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
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ポ1 第 2議 ガーナ・ココア君主家の平均生産費
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幼樹期における生産費
1. 森林地の開墾,整地作業(労働日数300日〕
2. プランティン吸枝購入費(100本につき7シル6ペンスでし700本)
3. ココヤム球茎購入費(100個につき6シルで800個) 4. 種子用ココア・ポッド1,800個購入費
5. 17,420本のココア苗木の植付作業(労働日数80日) 6. 1,700本のプランティン吸枝の植付作業(労働日数40日) 7. ココヤム球茎の植付作業(労働日数80日)
8. ココア植付後8カ月日での除草作業(労働日数120日)
か 16カ月 11 ( 11 100日)
か 22カ月 II ( II 53日)
。
2渇カ月 グ ( II 140日)" 35カ月 か ( II 130日)
グ 39カ月 グ ( " 100日)
。
45カ月 " ( " 100日)" 5年目 グ ( 11 120日)
" 64〜94カ月目M ( 11 600日)
農場管理人への支払い(最初の5年間は36ポンド,のち3年間は毎年48 ポンドずつ支払う)
差是場管理人のための住宅建設の費用一部負担
;農器具購入費 斧3本(@12シル)
鎌12本(@2シル6ペンス)
鋼やすり 2本(@3シル)
砥石3個(@ 2シル)
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9. 10. 11.
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3 0 1 0 5 0 2 0 1 1 3
Shade‑treeの整理作業(日当6シルで35労働日)
害虫駆除:
88ガロンの水を4ガロン当たり 6,ミンスで2.5マイル運搬 薬剤散布器の購入費(一部負担)
育苗用の能の購入代金(500個を3ペンス単価で)
土地購入にともなう国庫納入分担金
(土地l枚当たり1ポンドの基本料と, 30エーカーにつき5ポンド)
植付後7年目と8年目における収穫,発酵,乾燥,運搬作業(年間17労働日)
その他,発酵箱,乾燥棚等の購入費 12.
13.
14目
15. 16. 17.
。
180 8
6
576 0 0 25 0 0 20 0 0 15 0 0 2 10 0 60 0 0 540 0 0 70 0 0 1,308 : 10 : 0
11 合計 709
成樹期における生産費
18. 農場管理人への支払い(年間48ポンド)
19. 農場管理人のための住宅の維持費一部負担 20. ココア貯蔵庫の建設,維持費
21. 乾燥棚,育首用能等の準備に要する費用 22. 発酵器等の器具の移動に要する費用
23. 病虫害防除(年間エーカー当たり約10シリング)
24目 除草,収穫,発酵,乾燥,運搬作業(エーカー当たり年間労働日数30日) 25. 臨時支出のために借入したもの利子等
幼樹期における生産費
D. H. Urquhart, Tropical Agriculture Series: Cocoa (London, 1961), pp. 238〜240.
(出所〉
1968100086.TIF
者農家の生産費分析に耐えうるような調査は行な われなかった。その意味において,以下において 利用する
D .H. Urquhart
の生産費調査はまさに 貴重なデータであるといえる。Urquhart
はココア農家の生産費の算出にあた って,ココアが作付けされてから 8年目までの幼 樹期と,9
年目から2 1
年目までの12
年聞を成樹期 として区別し, それぞれの期聞について支出され たココア豆の生産費を第 2表のように算定してい る。ただし, ココア生産農家における自家労働の 投入部分は,雇用労働の賃金率(日当3シリング〉で評価して貨幣換算を行なっている。
そこで以下順を追って,幼樹期と成檎期におけ る生産費構成の特徴を指摘する。
U r q u h a r t
によれば,幼樹期において支出された 生産費の平均価額は7 0 9
ポンド11
シリング6
ペン スであるとされているが, これは成樹期の生産費 を合わせた総生産費の35%
強に相当するものでありきわめて高額である。
周知のように, ココア樹は作付後
6 〜 7
年聞は 完熟したココア豆を産出することができず, その ため幼樹期において生産者農家はココア豆の販売 によって現金収入を得ることはできないのであ る。したがって,幼樹期の生産費が総生産費の3 5
%にも相当する事実を見るかぎり, ココア栽培は 多額の「先行投資jを必要とする生産であるとい うことができる。そして,このような多額の「先 行投資
J
が, ココアの新規作付や栽培面積の拡大 にとってきわめて重大な阻害条件となると考えら れる。しかしながら幼樹期の生産費を仔細に観察すれ ば, ぞれが必ずしもココア生産農家の現金支出を 伴わないことを知る。すなわち幼樹期の生産費約
7 0 9
ポンドのうち労賃部分はおよそ520ポンドに逮し
73%
強を占めている。したがって,幼樹期に必 要とされる労働作業のすべてを自家労働によって 充足することができれば, この期聞における生産 費の現金支出部分は27%
弱の1 8 9
ポンド程度にま で押えることができるのである。そこでココア栽培は家族労作的な小農に最も適 したものであるということができる。
しかし先に指摘したように比較的多額の先行投 資を伴うものである事実には変わりなく, ココア 供給の価格に対する弾力性を問題とするばあい重 要な意味をもっている。
つまりココア生産が比較的多額の先行投資を必 要とするものであるため, ココア樹が成樹期に達 し生産活動を開始した後において,たとえ価格の 低下が起こったとしても,成樹期の生産活動を停 止することはできない。仮に価格が低下したこと
によって成樹期の生産活動を停止すれば,幼樹期 に投入された比較的多額の先行投資は無為に帰す ことになるためである。
こうしてココア豆の供給は価格に対しては非弾 力的な動きをとるようになると思われる。
つぎに成樹期の生産費構成から,われわれはコ コア生産が労働集約的な特徴をもっていることに 注目しなければならない。
すなわち
Urquhart
の算出した成樹期の生産費 はおよそ1却8
ポンドであるが,そのうちの87.2%
に相当する
1 1 4 1
ポンドは労賃として支出されたも のである。このように労賃部分が高い比率を占め ていることはココア栽培が著しく労働集約的であ ることを示している。この事実はわれわれが今問題としているココア 供給の価格に対する弾力性を分析するばあい, き わめて重要な条件となる。
第
1
にココア生産が労働集約的であるというこ1968100087.TIF
とは,仮にココア生産農家が必要な労働力をすべ て自家労働によって充足したばあい, その自家労 働は労働の限界生産性という尺度によっては評価 されず,現実には労働の再生産費によって評価さ れる。 しかしほとんどの小農では労働の再生産に 必要な財貨, なかんずく食糧は自給しているため 自家労働の再生産費はきわめて低く見積もること ができる。そのためココア豆の価格が低下しでも,
自家労働の再生産費を低下させることによってコ コアの生産を継続することができる。
ところで小農経営における自家労働の生産性を どのように評価するかという問題は,従来から農 業経済学の主要課題のーっとされてきたし, その 解明に多くの努力が払われてきた。そして理論的 には雇用労働の賃金によってそれを評価すべきで あるとの結論に到達している仰1。)
この見解は, いうまでもなく一種の機会費用概 念にもとづくものである。 したがって労働市場が 完全競争の状態にあることを前提としているので ある。
しかしながら, ココア生産に従事する小農にお いては, このような機会費用概念さえも成立しえ ないのである。なぜなら,成樹期における自家労 働の投入という行為は,幼樹期の先行投資によっ て利潤をあげるための追加投資にほかならず, そ れは成樹期の労働生産性を麗用賃金によって評価 した結果起こるものでなく,幼樹期の先行投資と は不可分離のものなのである。したがって成樹期 の追加投資(その圧倒的部分は,このばあい自家労働 の投入という行為である〉は労働生産性とは無関係 に行なわれ, その労働生産性を規定するココア立 の価格も,成樹期の追加投資を規定することはで きないのである。
第 2に想定されることは, ココア生産農家が必
要な労働力のある部分を雇用労働によって充足す るばあいである。これはココア栽培がほかの農産 物一般についてと同様に,季節的な労働投入量の 偏在があることを考えたとき最も現実的な姿であ る。事実西アフリカ各地のココア生産はこのよう な季節労働に少なからず依存している。
このばあいは生産費の現金支出が伴うので第
1
のばあいと比較して,雇用労働の投入量は価格の 変動に敏感であるように考えられる。しかしここ でも労働力の投入つまり追加投資は先行投資によ って強く支配されており,成樹期における価格が それを規定する力はきわめて弱いといえる。以上の叙述によって明らかなように, ココア栽 培は比較的多額の「先行投資
J
を必要とし,著し く「労働集約的生産」であるため, その生産段階 において供給は価格に対してきわめて非弾力的と ならざるをえない。2 .
輸出段階での非弾力性ココア豆の供給が生産者段階において価格に対 して非弾力的であることはすでに述べたとおりで ある。しかし, これだけでは国際市場におけるコ コア豆供給の国際価格に対する非弾力性を説明す ることはできない。
そこで,ここにおいては生産者段階と国際市場 の中聞に存在する輸出機能を分析し, それがココ ア供給の価格に対する硬直性をもたらしているこ とを明らかにしておきたい。
すでに, はしがきにおいても述べたように,コ コア立は熱帯のいわゆる低開発固において産出さ れる
1
次産品である。そして世界の主要ココア生 産闇においてココア立は, ほとんど例外なしに輸 出産品の大宗となっている。その典型的事例の一 つは西アフリカのガーナについて見受けられ, そ こでは輸出総額の中でココア立およびその関連産8
おわりに
1968100088.TIF
品が占める割合は
70%
にも遺しており,いわゆる 輸出モノカルチュア構造が存在する。つまりガー ナにおいてココア産品は外貨獲得の代表的1
次産 品である。さらに低開発国の通例として, ガーナにおいて も, その国家財政の収入源を関税や消費税などの 間接税に求められており, ココア産品に課せられ る輪出税は財政収入の重要な源泉のーっとなって いる。
世界のココア生産国の中でガーナのようにココ ア産品の輸出モノカルチュア構造を持ち, それに 対する輸出税収入が国家財政の主要財源となって いる国は,ナイジエリア,カメルーン, アイボリ ー・コーストをはじめとしてきわめて多数にのぼ っている。
したがって先に述べたようなココア産品の輸出 モ/カルチュγ構造にある諸国では, ココア輪出 が減退することはその輸出収入と輪出税収入の両 面における後退を意味する。そして輸出収入が減 退し,財政収入が縮小することは,当該国民経済 の開発に必要とされている生産財や資本財の輸入 減退をもたらし,経済開発政策は根底からおびや
かされることになる。
しかも, それらのココア輸出閣の大部分はココ ア豆を長期に品質の低下をもたらすことなく保存 するための貯蔵設備を持たず, そのため国内で生 産されたココア立はすみやかに輸出されなければ ならない現状に置かれている。
いっぽう,すでに述べたように世界で年間
1 0 0 0
トン以上のココア立を輸出しているものは31
カ閣 の多きにのぼっており, ココア栽培が労働集約的 でしかも比較的多額な先行投資も自家労働の投入 によ,って充足しうるというように「小農生産jt
こ 適合する産業であるため,既存の生産国においては今後ともココアの生産が拡大される可能性が強 い。したがって, ココア輸出の国際競争は一段と その激しさを増すであろうことが予想される。
これまでに述べてきたような事情があるため,
大部分のココア生産・輸出国において,輸出の段 階で国際価格の動向を観察しつつ, 自主的に輸出 量を調整することがきわめて困難となる。それだ けでなく,国際価格の低下が起こったばあいには,
むしろその輸出量を増加することによって,従来 どおりの外貨収入や財政収入を維持しようとする 傾向さえみられる。このため,ひとたび低下した 鼠際価格はもとの水準に回復することがきわめて 闘難になるのである。
小稿において当初問題としたココア国際価格 の,特に1
9 6 0
年以降における激しい低落の原因は,主としてココア生産国側における供給(輸出〉の 価格に対する著しい非弾力性と, いわゆる小農経 済が特徴的に備えているところの生産費評価の極 端な柔軟性とによってもたらされたものであると 考えられる。
このようにココア国際価格の低下の原因を,生 産(輸出〉国側の輸出と生産構造に求めるかぎり,
近い将来,間際価格が大幅に上昇することを期待 することはむずかしい。
(注1) わが闘においては大川一司数授を中心とす る研究グループが,この問題を明解に理論化している。
これについては.大川一司箸『農業の経済分析』(大 明堂〉などを参照するとよい。
お わ り 位
以上の叙述によって明らかなように, ココア主主 の供給は,生産者段階においても,あるいは輸出 段階においても価格に対して非弾力的である。し かも, ココア立の主要生産国は商アフリカのガー ナ,ナイジエリア, カメルーンおよびアイボリー
1968100089.TIF
・コース卜などのような低開発国であり, かれら
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石可欠と!;_る。先進諸国か九円経済援助を別
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それでは, ココア生産諸国は,ジ斗ネーブでの
第
1
回国連貿易開発会議で主張された上うに,先進諸国におけるココア翰入最の拡大を要求するだ
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で十分日のであン》うか。もちろん,先進諸国におけるココア産品の輸入 居まは増加されなければなるまいい その結果,ココ
(生産諸国からの輸出量が比大すれt、工 il:dこ錨協
の低下が起こっても輸出額を増加することが可能 となるであろう。
しかし,周知のように,ココア産品はチョコレ ートと\'
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令。そのため, Iコア産品の取引市場には,生産
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ルチュ 7を改善「ることに尽きる。 いう,し,産業
構造の多様化ということは, これを理想として掲
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るのは比較的容易?あるとしても, それを実現することは非常に困難である。
なぜなら,すでに述べたようにココア栽培は,
労働集約的な生産であるから家族労作的小農に適
合している。小農は,その自家労働の生産性を低
く評価することによって, ココア産品の価格低下
に 対 し て 強 い 抵 抗 力 を も つ こ と が で き る の で あ る。三のような小農経営が数多く存在することは,
国民経済全体として労働力の無駄があることを意 味する。そこで,これらの余剰労働力を小康経営 かん切り離して,他産業部門へ配置転換すること
が必要となるo
そろ干ることによって, はじめて小農は,その
自家労働の生産性を高めるよ二とで悩格の低下とい う事態、に対処することが可能となるのである。
〈参考文献・資料〉
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J
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〜
69ページ。6. 拙稿「抵開発国の1次産品輸出における矛!古川Tア
ジア経済』,昭和41年12月号), 41‑54ページ。
7 .
Ghana,0
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,1samankese Area, 1955‑56 (Gh阻 a,1958). 9. Cill & Duff us Ltd., Cocoa Statistics (London,
1967).
87
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付図
1
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付図
2
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(出所) Gill & Duffus Ltd., Cocoa Statistics
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