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低次元フェルミ系における集団励起と熱電輸送

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低次元フェルミ系における集団励起と熱電輸送

早稲田大学大学院理工学研究科

物理学及応用物理学専攻 低温量子物性研究

吉元広行

(2)

目 次

第 章 序論

電荷密度波における熱電輸送

熱電輸送

電荷密度波

研究の意義と章の構成

次元調和振動子的外場における中性フェルミ気体の集団励起

章 電荷密度波系における熱電輸送効果の解析

熱電輸送と電荷密度波

熱電輸送

電荷密度波

接合系における準粒子の熱電輸送

トンネルハミルトニアン

熱流と電流

線形応答

熱流と電流の数値計算

まとめ

集団励起による熱電輸送の解析

研究の背景

モデルハミルトニアンと熱電輸送演算子

熱起電力

熱伝導度

まとめ

章 調和ポテンシャル中で相互作用するフェルミ原子気体の解析

任意の次元における解析的手法

背景

調和ポテンシャルの量子数によるモデルの定式化

基底状態

有限温度

まとめ

次元調和ポテンシャル中での集団励起の解析

背景

モデルハミルトニアンと平均場近似

各種振動モード

まとめ

(3)

章 まとめと今後の展望

章 付録

章、第ダイアグラムの計算

寄与しないダイアグラムの例

熱伝導度に寄与するダイアグラム

式の集団励起に関するグリーン関数の計算

節の摂動計算

式の導出

次元でのエネルギーの導出

式の導出

式の導出

式の導出

節の計算

時間依存する方程式の初期値問題

粒子密度の構成

謝辞

参考文献

研究業績

(4)

第 章 序論

低次元フェルミ粒子系は、特殊な結晶構造を持つ導体中や接合系の界面、あるいは磁気また は光学トラップされた中性原子気体など、粒子の自由度が つの方向、あるいは つの面内に 制限される様々な状況下において実現する。これらの系では、状態密度の特異性や、長距離 秩序の不在といった低次元特有の性質のために、粒子間の相互作用は次元系にはない様々 な現象を引き起こす。これら低次元系のもつ性質は、理論的解析においても次元系にはな い様々な手法によって調べられている。例としては、による 次元ハイゼンベルクモ デルの厳密解の構成 以後、様々な系に適応された 仮説の方法、 次元相関 電子系における朝永の理論 !による次元量子ホール系における基 底状態の波動関数の構築 などが挙げられる。近年の実験技術の進歩により、様々な低次 元系が理論、実験の双方から研究されており、物性科学において今後も、この系の持つ未知 の性質を解き明かしていくことは、純粋に学問的にも、また様々な応用技術を見すえた上で も非常に重要なことである。

本研究ではこのような低次元フェルミ粒子系で、これまで理論的研究の対象となることの 少なかった 次元電荷密度波における熱電輸送、および次元調和ポテンシャル中での集団励 起のつの系に焦点をあてる。前者は、古くから用いられて実験をよく説明してきたバンド 描像にもとづく現象論的方法では導かれない、低次元特有の集団励起による熱電効果を扱っ たものであり、後者は非一様な場の下にあるために、通常の場の理論で用いられる方法の適 用が困難な系での集団励起を扱ったものである。前者と後者の系はそれぞれ固体中の電子 と極低温におけるトラップされた中性原子気体という別々の系を扱っているのだが、後者は

年に"#" 凝縮の観測に成功して以来急速に実験技術が進展し、現在では様々 な固体物理における多体現象を検証する格好の場となっている系であり、熱の流れに関する 理論的研究も少数ではあるが始まりつつある など、今後前者の系とも互いに関係 しあうことが期待される。このため、後者の非一様系での系統的な解析手法の確立すること は前者の系の研究を発展させる上でも重要なことと期待される。

章では前者の系、第章において後者の系について述べ、また章では全体のまとめ と今後の展望に述べる。本章では、以後それぞれのテーマにおける研究の意義と本論文にお ける構成について述べる。

電荷密度波における熱電輸送

電荷密度波と量子多体系における熱電輸送の研究は、それぞれ研究分野として独立した歴 史的経緯をもつ。本節では熱電輸送、電荷密度波の順にそれぞれ説明し、最後に密度波にお ける熱電輸送の研究の意義と第章の構成について述べる。

(5)

熱電輸送

熱電輸送とは、電気伝導に加え、物性理論ではこれまで微視的理論の対象となることの少 なかった熱伝導と熱電効果を指す。熱電効果とは、金属の両端に温度勾配をかけることによ り電気が流れる現象($%&効果、 年ドイツの'($%&が発見)、あるいは金属 に電流を流すことによりその両端に温度勾配が生まれる現象)!効果、 年フランス の( *)!が発見などをいう。この$%&効果と)!効果の両者は熱と電気に関 して互いに逆の効果であるが、熱力学量の平衡状態からの揺らぎに関する+" の相反定 理 により互いに同等の現象であることが知られている。従って熱電輸送に関して得られ る物理量は、電気伝導度、熱起電力、および熱伝導度の種類である。これらの正確な定義 は次章で説明する。

熱伝導や熱電効果は電気を生み出すための廃熱の有効利用などの用途をもつため、これま で主に応用を目的として、様々な導体の熱電輸送特性が調べられてきた。その中でも、高い 熱電変換効率を持つ材料として、多くの研究がなされ実用上も用いられてきたのは 'な どの半導体である。これは、通常の金属では温度勾配に対して、キャリアである電子と 正孔は互いに逆方向に流れるため得られる熱起電力は小さくなるのに対し、不純物ドープし た半導体ではキャリアを一方向に制限できるからである。一方、近年では, * +などの 強相関電子系や、重い電子系が新しい熱電変換材料の候補として研究されており、これ らの系では電子相関効果が高い熱起電力を生み出すための重要な役割を果たしている。

熱電輸送の理論的解析には、現象論的な!-. の輸送方程式が用いられることが多 く、正常状態の金属や、半導体などの熱電輸送特性はこの方法によりよく説明される。一方、

上で述べた電子相関など量子多体効果が重要となるような系の解析では、現象論は不十分で あり量子統計力学の手法による微視的な理論が必要となる。しかし、熱の流れに関する微視 的な理論を構築するには様々な問題がある。具体的には、温度が量子統計力学では外場のよ うな空間依存性を持った量ではなく、系全体の特徴を記述する つの量であるために温度勾 配を持つ系を微視的に統一して記述することが困難であること、電気伝導に関して用いられ る久保公式とは異なり、非平衡状態をもたらす摂動項がはっきりしないしないことなど である。これらの問題は本質的には現在でも未解決なのだが、本研究では次々節で説明する 異なるつの温度を持った接合系による方法と、によって導出された線形応答 の方法を用いて解析する。

電荷密度波

結晶中においてある特定の方向にのみ伝導性が高い、擬一次元物質と呼ばれる物質系には

次元系にはない様々な現象が現れる。その つが、絶対零度においてフェルミ波数 倍の波数成分に対する応答が発散する、)!"不安定性と呼ばれる現象である。これが引き 起こす現象の典型に電荷密度波*/01* /"2 0 3がある。これは結晶格子と伝 導電子の相互作用により、ある温度以下で格子変形を伴う相転移をおこし、伝導軸にそって 電荷に疎密の波が形成される現象である。なおこのとき、伝導電子のバンドにはフェルミ面 でギャップが形成されるために、 粒子のスペクトルは半導体に類似したものとなる。歴史 的には、この現象は 年、4!%、ついで 年、)!"によって理論的に提 案された。実験で実際に観測されたのは、年代を下り 年代に合成された擬一次元物質

''4'*,5 6!3 ! %2 7. で確認されてからである。こ

(6)

れ以後、''4'*,5の類似物質や,$' 、といった遷移金属トリカルコゲナイドお よびそのヨウ素化合物数、また89+:$9+といったブルーブロンズと呼ばれる 物質系など多くの物質において*/0は観測され現在に至っている。なお近年では、次 節において述べる#*に代表される、磁気的あるいは光学的なトラップのもとでの中性原 子気体の系においても、フェルミオンとボソンの相互作用によって*/0に類似した原子気 体の密度波が観測されることが期待されている

*/0が形成された状態には、つのタイプの集団励起モードが存在する。 つは振幅モー ドと呼ばれる、伝導軸にそって形成された密度波の振幅がゆらぐ励起であり、準粒子ギャッ プの 分の 程度の大きさを持つギャップをもつ。もう つは位相モードと呼ばれる、密度 波全体がその形を保ったまま並進運動する励起である。この励起は、)!"転移に伴う電荷 密度の並進対称性の破れに対応した対称性の破れを回復する;!"モードであり、結晶 格子や不純物など、この並進運動を阻害する要素のない理想的な状態では、任意に小さな電 場でも引き起こされる 。このため4!%は当初この励起を超伝導の機構と考え ていたのだが、実際には位相モードは、不純物あるいは結晶格子の作るポテンシャルなどに よる効果によって、ある閾値以上の電場のもとではじめて引き起こされる。なおこの励起に よる電流は、*/0ギャップより上の準位に励起した準粒子によるものとは明確に区別され、

実験で*/0が実現していることを確認する重要な手段の つとなっている。

位相モードの閾値以上での電場依存性は非線形的なものであるが、電場を強くするにつ れて線形なものとなっていく。この状態では、外部からの電場による仕事とつりあうエネル ギー散逸には様々な要素があるが、種類の集団励起の間の非線形的な相互作用によるエネ ルギーの減衰も重要な要素のひとつと考えられる

研究の意義と

章の構成

章では、電荷密度波における熱電輸送効果について解析する。この章での研究の目的 は、本質的に量子多体効果が熱電輸送に関わる現象を探ることである。電荷密度波の系は、

これまで集団励起の効果に着目した多くの電気伝導の研究がなされており、解析手法も確立 している。このような系で、量子多体効果が熱電輸送に関わるような現象を見出すことは、

今後より様々な系における熱電輸送の機構の解明、ならびに新しい熱電変換材料の探索の指 針にもつながると期待される。

節では、熱電輸送現象における物理量および、章で扱うモデルについて基本的 な事柄の説明をする。はじめに、導体一般における熱電輸送について簡単に説明した上で、

電気伝導度、熱起電力、熱伝導度の定義を説明する。次に、本章で用いる*/0を記述する モデルである、4!%ハミルトニアンについて説明し、平均場近似による解析を行う。電 荷密度波系では、電流と熱流の担い手には準粒子と集団励起があり、これらの寄与をそれぞ れ節を分けて別の方法によって解析する。

節では、左右つの電荷密度波物質の間に充分に薄い絶縁物質を挟んだ接合系での、準 粒子の寄与による熱電輸送効果を説明する。モデルは、平均場近似をした4!%ハミルト ニアンと左右の*/0をつなぐトンネルハミルトニアンを用い、左右の*/0に電位差およ び温度差をつけた状態で、 次摂動を適用することにより電流と熱流を導出する。この結果、

電流と熱流は、半導体と同様にギャップの上に励起された準粒子、および正孔によって運ば れることが分かる。また半導体とは異なり、接合面における*/0の位相が集団励起によっ て電流と熱流に影響を及ぼすことが示される。またこの系においても、熱電輸送係数につい

(7)

+" の相反定理が成立していることも示す。位相の効果は、現実の系では見出すこと が困難なため、これ以外の寄与を考えた上で電流と熱流を数値的に計算する。

節では、*/0の集団励起による熱電輸送効果を4!%ハミルトニアンに平均場近 似からの揺らぎの寄与を取り入れることによって解析する。各物理量は、電流演算子と熱流 演算子を構成したうえで、によって提案された線形応答理論 を用いて計算す る。この方法は、まず熱の流れを引き起こす外場として、仮想的な重力場を想定する。これ は#" らによる局所的に変化する重力場が熱流を生み出すという着想にヒントを 得ている。また、電気伝導における電流演算子に相当するものとして、局所的なエネルギー 保存則に対応した連続の方程式から、熱流演算子を定義する。最後に電流や熱流の演算子の 相関関数によって表される電流と熱流の式を、現象論で知られている関係式と結びつけるこ とにより各物理量を導出する。この方法には、電子とフォノンなど種類の粒子が相互作用 する場合には、相互作用部分のエネルギー部分の熱流の担い手を区別することができないな どの解決すべき問題もあるのだが、微視的に熱電輸送の解析する際には標準的な方法と して用いられている。

この節では特に*/0の集団励起の効果を扱うので、相関関数の高次の摂動による寄与を 解析する。まず初めに、高次摂動において寄与を持つ42. ダイアグラムを分類する。こ れにより熱起電力については ループタイプのダイアグラム、熱伝導に関しては、位相モー ドと振幅モードの両方の効果を取り入れたタイプの"! . -3 & ダイアグラムが 必要であることを示す。次に熱流演算子と電流演算子の相関関数を計算することにより、熱 起電力は*/0の振幅モードとの非線形相互作用によって減衰する位相モードにより温度に 反比例することを示す。最後に、熱流演算子同士の相関関数を計算することにより熱伝導度 を導出する。熱流演算子には電子のものとフォノンのものがあるが、それぞれからの寄与を 計算する。電子の寄与はダイアグラムから計算し、この寄与による熱流は、振幅モード と位相モードの励起が互いにエネルギーを受け渡しあう過程によって運ばれることを示す。

フォノンの寄与も同様の過程によって導出し、つの寄与は本質的には同等であるが、フォ ノンの寄与のほうが1〜 倍程度の大きさとなることを示す。

最後に第章のまとめについて述べる。

次元調和振動子的外場における中性フェルミ気体の集団 励起

年に9<'のグループらがアルカリ原子を用いた"#"凝縮#*の観測に 成功して以降 、極低温における中性原子気体の研究は、急速な進歩を遂げ、現在で は低温量子物性において つの大きな研究分野を形成するに至っている。特に本研究で扱う フェルミ原子気体についても、(<のグループがのフェルミ縮退の観測に 成功し、以後超流動の観測に向けた研究が進み 、現在では引力系において*状態から

原子分子の#*へのクロスオーバーの観測などが実現している。

この系の大きな特長には、原子間の相互作用を4"$ %共鳴の手段を用いて自由に変え られること、原子気体の閉じ込めポテンシャルとしての磁気または光学トラップの形状 を変えることにより実効的な系の次元を変えることができること、あるいはフェルミオンと ボソンを混合系も作成できることなど、様々な物理系を容易に実現できることがある。この ためこの系は現在、固体物理における、様々な状況を検証するための格好の場を提供してい

(8)

る。前節での熱の流れに関しても、 において超流動成分と非超流動成分の成分の ボース気体の熱伝導度の理論的解析がなされており、将来的には、互いに異なる温度の気体 を接触させるなどの方法により熱の流れ、あるいは)!効果に相当する温度勾配に伴い 粒子の流れる現象も観測されることが期待される。

一方でこの系は気体を閉じ込めるためのトラップポテンシャルの影響のために、この系で 得られる現象を解析するには非一様な場の影響を考慮する必要がある点が、固体中の電子系 のような一様な場の下にある系とは大きく異なっている。トラップポテンシャルの形状は、

光学トラップにおいては現在、固体中の結晶のような格子状の形状や、ランダムポテン シャルなど様々な形状が作成されているが、これらの系はすべて、調和ポテンシャルで 近似される磁気的な閉じ込めポテンシャルのもとにある。このため中性原子系では理論でも 多くの研究で、調和ポテンシャルの影響が調べられている。

非一様系では並進対称性がないために、一様系において用いられる運動量は、系を記述す るよい量子数ではなく、粒子間に働く相互作用を一様系のような摂動論で扱うことは一般に は困難である。また、フェルミ粒子系では系全体をひとつの状態で記述できる"凝縮体 とは異なり、) !の排他律が存在することも非一様系での摂動論的な解析を難しくしてい る。このため、これまで多くの系の研究では、平衡状態での解析ではトラップ中の局所ごと の熱平衡を仮定した'. "4.近似、集団励起の解析では半古典的な輸送方程式などの 方法が用いられている。これに対して、本研究では将来的に章で扱う熱電効果も含む、様々 な現象を非一様系の場の下で系統的に扱う方法を確立することを目的とし、調和振動子的外 場のもとでの固有状態である、エルミート多項式による波動関数の量子数を用いた解析を行 う。なお粒子間の相互作用は点接触型とし、外場は等方的とする。

節では、 次摂動を用いて任意の次元における系のエネルギーと化学ポテンシャルを 解析的に計算する。まずこの節における背景について説明し、その後モデルおよび 次摂動 を用いた計算手法について説明する。次に絶対零度における 次元から次元までのエネル ギーと化学ポテンシャルについて、順番に説明する。この結果、絶対零度では次元では非 摂動部分のエネルギーが粒子数の = 乗に比例する一方で、摂動部分である相互作用エ ネルギーは次元によらず粒子数の>乗に比例することを示す。特に、次元系ではエネル ギーは完全に解析的に導出され、この系では相互作用エネルギーの粒子数依存性は、非摂動 部分のエネルギーと一致することを示す。また!-. 統計が適用できるような高温極限 では、非摂動部分のエネルギーが温度に比例する一方、相互作用エネルギーは温度の乗 に反比例することを示す。最後に 節でのまとめについて述べる。

節では、 節と同様に調和ポテンシャルの量子数を用いて次元等方トラップの下で の系の集団励起を解析する。相互作用については平均場近似を適用し、系の集団励起は時間 依存する? 方程式の初期値問題を解析的に解くことにより導出する。なお計算方法に は各波動関数に対して08近似を用いて、? ポテンシャルを構成し、これが自己無 撞着になるように方程式の解を構築する。この結果、波動関数は次元系の特殊性により、

定常状態における固有関数と時間依存する位相因子を用いて表され、系の集団励起は気体の 平均的な広がりを表すスケーリングパラメータおよび、気体の重心座標で表されることが示 される。またこの種類のパラメータについての運度方程式を導出し、これを様々な制限の もとで解くことにより、単極子振動、双極子振動、四重極振動、および磁気分極振動などの 集団励起を導出する。これらの中で磁気分極振動の振動数は、相互作用が一定の大きさを超 えると虚数となるため、このとき系は不安定化することが示唆される。この不安定性につい ては、さらに'. "4.近似を用いた方法で考察する。この結果、相互作用の増大にと

(9)

もなって、成分のフェルミ原子気体は相分離をおこすという結論を得る。最後に節の まとめを述べる。

(10)

章 電荷密度波系における熱電輸送効 果の解析

熱電輸送と電荷密度波

本節では、まず熱電輸送および電荷密度波についての基本的事柄について説明する。熱電 輸送については、現象論での電流および熱流の式を導入し、ここから各物理量の定義を説明 する。また、電荷密度波については、電子とフォノンの相互作用を記述する4!%ハミル トニアンについて平均場による解析を行う。

熱電輸送

金属などの導体に電位勾配をかけると電流が流れ、またこれに伴って導体には熱の流れが 生まれる。また、温度勾配のもとでも同様に、電流および熱流が生まれる。このような状況 下において、電流および熱流 は以下のように表される

@

AB=

A

@

AB= A

ここでAB@ =Aとし、 は外部からの電位差であり、は電荷である。Aは、導体の両 端に生まれた化学ポテンシャルの差である。また、Aは両端の温度差であり、A

@

である。なおについては、+" の相反定理 より @ が成り立つ。

電気伝導度は、A @ A@ のもとでの電位勾配に対する電流の比をもとに定義 され、

@

と与えられる。また、熱起電力は温度勾配のもとで、両端に生まれる電位差の比として定 義され、式において @とし、

@ A

A

@

と与えられる。最後に熱伝導度は電流が流れていない状態で、温度勾配をかけたときの熱 流と温度差の比として定義され

@

と与えられる。ここで式の右辺第項は、導体の温度差によって生まれた熱起電力の 効果を表す。

(11)

電荷密度波

金属などの導体中において、結晶中の格子は、伝導電子と互いに影響をおよぼしあう。結 晶格子を構成するイオンの振動を量子化したものはフォノンと呼び、 次元上で、電子とフォ ノンが相互作用しあう以下のモデル

@

=

C

=

=

4!%ハミルトニアンと呼ぶ。ここで、は運動量空間における電子の生成演算子 であり、はフォノンの生成演算子である。またCはフォノンの分散とし、は格子の数 であり、以下のような相互作用係数である。

ここではそれぞれイオンの質量、価数および密度である。式において第 項 が電子の運動を表し、第項がフォノンのエネルギー、第項がフォノンと電子の相互作用 を表す。簡単のために電子スピンは無視する。このモデルでは、自由電子は連続的に分布す る正の電荷の背景を運動するものとし、結晶格子の影響は第項の相互作用のみで表す。な お、このようなモデルは一般にD!!.モデルと呼ばれる。

この系では、電子の応答関数が運動量成分が倍のフェルミ波数@ で発散するこ とに対応し、フォノンの分散は、)!"転移温度以下で、この波数において極小値をもつ。こ れは8異常とよばれ、この温度以下では、フォノンはの成分が一種の"#"

凝縮を起こす。このとき式は、平均場近似によって以下のように表される。

@ =

=

@

=

=

@C

=

C

=

C

=

=

C

=

C

@

=

C

上式では、フォノンの成分は全てに凝縮しているとし、それ以外は無視しC @ C

@

とする。また、 @ = @

とする。また上の式で、それぞ れ は電子、はフォノン、 は定数の寄与を表す。における釣り合いの式より、

@

@

となる。従って

A

C

A

C

によって*/0ギャップAを定義すると系のハミルトニアンについて、電子部分は以 下のように対角化される。

@

=A

=A

@

A

A

@

=A

(12)

ここで @ @ @ はフェルミ面を原点としたエネルギーである。また

@

=

@

@

=

=A

@

=A

であり、はそれぞれ、*/0ギャップの上下の準粒子および正孔の消滅演算子である。

なお、式の行目の表示では演算子は南部形式で表されているが、節ではこの表示 を用いた解析を行う。

一方、系のハミルトニアンのフォノン部分および定数部分の和は、以下のように表される。

@C

=

C

A

式より、*/0転移することによる正常状態からのエネルギー変化A!は以下 のように表される。

A! @

=A

=

C

A

上の式において、和を積分で置き換えると、以下のようになる。

A! @

A !

A =

=

A

"

ここで、は正常状態でのフェルミ面上における状態密度であり、"@

とする。

式をAについて微分すれば容易にわかるように、A!A@ のときに最小 値 をもつ。なお、この結果はAを定義式であるから自己無撞着に計算 しても同様に導出される。

(13)

接合系における準粒子の熱電輸送

近年の微細加工技術は量子ドットや超伝導体、あるいは*/0ヘテロ接合など様々なメゾ スコピック系の観測を可能にしている。また、実験技術の進歩は、このような系の熱電輸送 に関しても観測を可能にしつつある。接合系における電気伝導に関する現象としては、

これまで半導体や超伝導体の接合系で多くの研究がなされている。なお、超伝導体では左右 の超伝導体の位相差によって電流が流れるジョセフソン効果が興味の中心となっており、熱 輸送に関しての位相依存性に着目した研究もなされている

本節で扱う*/0における接合系の熱電輸送効果は、相転移温度以下、大きさの変化する ようなギャップの下での半導体的な電流電圧特性を持つ系であり、超伝導体と類似している。

ただし、超伝導体のような位相差が生み出すような電気伝導は存在しない。しかし、*/0 の準粒子がもたらす熱電効果を見出すためには、理論としても扱いやすく、また大きな電位 勾配のもとでは*/0の位相モードによる影響も観測されることが期待される。

トンネルハミルトニアン

本節では、以下のモデルから出発する。

@

=

=

ここで 右側および左側の電荷密度波を表し、 は左右の系をつなぐトンネルハミル トニアンとする。

平均場近似を用いると は以下のように表される。

@

#

#

=

A

#

#

=$

ここで@ であり、Aおよび %は電荷密度波の振幅および位相に対応した秩序パラメー タである。簡単のためにスピンの指標は無視する。また%は接合面の状態によってきまる値 である。両側の*/0をつなぐトンネルハミルトニアンは以下で与えられる。

@

#

=$

ここで は電子のトンネル振幅を表す。一般にはこれは運動量依存性をもつが、輸送効果 はフェルミ面付近の状態で決まるためにここでは一定の値で近似する。また簡単のためにプ ランク定数およびボルツマン定数についてE$@ @ とする。本節では、このモデルを用 いて、両側の系に電圧勾配下および温度勾配をかけることによって電流および熱流を導出す る。電流演算子は、一方の側の粒子数演算子の時間微分から構成される。ここでは左から右 に流れる電流でこれを定義し以下の式で与える。

& @

'

@

@ (

#

$

ここで は右側の電子に関する生成演算子とする。また は左側の粒子数演算子とし

@

# #

で定義する。なお熱流演算子は、系のエネルギー変化から化学ポテンシャル

(14)

の変化を引いた、熱演算子@ の時間微分であり、以下のように与えられる

&

@

@

#

A

#

=A

#

$

ここで

である。電流および熱流演算子&&

の熱平均は 次摂動を用いて 導出する。まず、系のハミルトニアンに対する実時間グリーン関数を以下のように与える。

)

'@ #

'#

)

'@ #

#

'

上式は具体的には以下のように与えられる。

)

'

)

' )

'

)

' )

'

@

* !

=

*!

ここで ! @

=A

@

=

@

であり、 *!はフェルミ分 布関数である。なおこの式において左右の側を区別する指標は省略した。この式の)' において% % および *! * ! の置き換えをすることにより )'が与え られる。

つの演算子の熱平均は同様の計算で得られるが、電流演算子については様々な文献

において計算されているため、ここでは熱流演算子&の計算について説明する。

式を 次摂動論に適用すると &は以下のように与えられる。

&

@ !.

'&

''

上の式は以下のように計算される。

&

@&

&

ここで &

は以下で与えられる。

&

@ :!.

'

)

'

)

=)

)

)

=A

%

)

=)

=A

)

=)

ここで (+ @であり は外部からかけた電圧である。また)

' は簡単のために )

と表記する。さらに上の式にグリーン関数における :の指標はそれぞれ左右の側からの 寄与を表すものとする。&

については上の式において )) を入れ替えること によって得られる。

(15)

熱流と電流

熱流&式を式に代入することによって以下のように与えられる。

&

@

!

!

! A

! =

!= A

,!%

A

,!= %

A

*

*

-!= A

- ! A

-! A

- ! A

! ! (

!%

%

A

A

ここで @. である。これは絶対零度での正常状態の金属の接合の電気伝 導度を表している。また は外部電圧、は左右両側の温度とする。また,!%A@

=

%"%とし、*はフェルミ分布関数でありはそれぞれ、左右の*/0 についての正常状態でのフェルミ面での状態密度とする。電流 &についても同様の計算に よって得ることができ、以下のように表される

&@

!(

!%

%

A

A

線形応答

前項で得た式および式は外部電圧差と温度差に対する非線形的な応答を含ん でいるが、熱電輸送係数は、これらに対して線形な応答領域で定義される。従って本項では、

@A となるような極限を考える。このとき式およびは 以下のように表される。

&

A

@

!F A

! F

&

A

@

! F

A

!F

ここで AB @. GAAである。

F @

! =A

%"%

A

%"%

! A

! A

"%

!

F

@

!A

%"%

=A

%"%

! A

! A

"%

!

F

@ ! F

および は+" の相反定理 @ が満たされていることを示している。ま たFおよびFは、両側の*/0の界面での位相とは独立な項と、位相に関してA%"%A%"% に比例した項を持つが、Fは位相に関しては異なる依存性、つまり A%"%=A%"%

(16)

比例している。このためFは位相に依存した項のみを持ち、これは位相モードを通して時 間変化するような寄与をもつことが期待される。しかし現実の物質では、 次元の層が何層 にも重なっているため、それぞれの位相は平均化され、熱起電力を実際に観測することは困 難である。なお A @A @Aのときには式は! @Aにおける特異性のために発散 する。しかし実際にはこの発散は物理的な意味はなく、揺らぎの影響、あるいは摂動の高次 の補正などで消えると期待される。また、この計算で特にA @ A @A とすることに より正常状態の金属と*/0の接合を記述することもできる。このときには、発散は起きず 各物理量は、有限の値となる。 図は、この状態での熱伝導度の数値計算結果である。こ こでは、*/0ギャップの存在を反映して、低温にいくにしたがって熱伝導度は指数関数的 にに向かう傾向が示されている。なお、ここでは位相の効果を見出すことは困難なので、

%

@%

@とし、考慮には入れていない。

0 ∆

2 σ κ e

∆ / T

0.2 0.4 0.6 0.8 1

2 4 6 8 10 12

1 正常金属*/0接合における熱伝導度。横軸は*/0ギャップAで無次元化した系 の温度である。また縦軸は*/0ギャップAおよび正常状態の金属の電気伝導度で無次 元化している。

熱流と電流の数値計算

図、図はそれぞれA @A @Aとしたときの熱流と電流の寄与を特に電位勾配の もとでの数値計算結果である。前項と同様に% @% @位相の効果は含めない。熱流は、

電流と同様、 @ Aよりも大きな電位差をかけると急激に増大する、半導体と似た性質 を示している。実際には、この電位差の下では位相モードが熱流および電流に影響をおよぼ すことも期待される。

(17)

0.5 1 1.5 2 2.5 3 0.5

1 1.5

2 0 / I σ ∆ e

eV

1 */0接合における電流電圧特性。横軸は*/0ギャップAで無次元化した系の温 度である。縦軸は*/0ギャップAおよび正常状態の金属の電気伝導度で無次元化した。

また温度は @Aである。

0.5 1 1.5 2 2.5 3

0.5 1 1.5

2 2.5

3 2 2

0 /

I E

σ ∆ e

eV

1 */0接合における熱伝導度。横軸は*/0ギャップAで無次元化した系の温度であ る。また縦軸は*/0ギャップAおよび正常状態の金属の電気伝導度で無次元化してい る。また温度は @Aである。

(18)

まとめ

本節ではつの電荷密度波の間に絶縁物質を挟んだ接合系における熱電輸送効果を、特に 準粒子の寄与に着目して解析した。解析手法としては平均場で近似した*/0のハミルトニ アンにトンネルハミルトニアンの方法を用いて 次摂動によって電流と熱流を計算した。こ の系は、半導体と同じように、温度変化するギャップの上に励起した粒子と正孔によって、

熱流と電流が流れるが、半導体とは異なり接合面における電子密度の影響を受け、これが電 荷密度波の位相の形で影響することを確認した。またこの系において、線形応答の極限をと り熱電輸送係数に+" の相反定理が成立していることを確認した。正常状態の金属と

*/0の接合系での熱伝導度の計算では、半導体などのギャップを持った物質と同様にこの 系は低温に向かうにしたがって指数関数的に準粒子の効果は小さくなることを確認した。最 後に、*/0同士の接合での電流と熱流の電位差の依存性を計算し、これが半導体と似た性 質を示すことを確認した。

(19)

集団励起による熱電輸送の解析

研究の背景

本節では、*/0での集団励起が引き起こす熱電輸送現象を扱う。*/0には、振幅モード と位相モードの種類の集団励起モードが存在し、特に位相モードは原理的には永久電流を 流すことが知られている 。このため*/0系ではこれまで集団励起の電気伝導への 寄与について多くの研究がなされてきている。現実の物質では、不純物効果や結晶格子の影 響のため、位相モードは交流電流に対する周波数依存性や、揺らぎの影響が強く現れる転移 温度付近での直流伝導、あるいは閾値電場を超えた電場に対する非線形的な直流伝導を通し て観測される。特に、直流伝導に関する現象は、振幅モードと位相モードの非線形相互作用 で説明されると考えられており 、本研究では、これが熱電効果に与える影響に着目 する。*/0系での集団励起が引き起こす電気伝導に対しては、これまで多くの研究が理論、

実験両面においてなされてきている一方で、熱電輸送に関する理論的研究は、これまでほと んどなされていない。しかし実験の側からは、電場に対する非線形応答領域において、集団 励起による熱起電力の影響が調べられている。またゆらぎの影響が大きくなる転移温 度付近の熱伝導度の観測により、熱伝導度の集団励起の効果も報告されている 。 転移温度よりも十分に低温な領域では、不純物などによって位相モードがピン止めされてし まうため、集団励起の熱電輸送への影響を確認することは容易ではない。しかし、この領域 で集団励起の影響による熱電輸送現象は様々な実験の手段によって示されると期待される。

モデルハミルトニアンと熱電輸送演算子

モデルは以下の4!%ハミルトニアンで与える。

@

=

/

=

=

電子フォノン相互作用の係数 は一般に運動量依存性を持つ。しかし、電荷密度波の集団 励起を考える範囲では@ からの小さなずれを考えれば十分なので、本節では定 数とする。また、簡単のためにスピンの指標はここでは省略する。南部形式を用いるとハミ ルトニアンは以下のように書き換えらる

@

0

=

0

=C

=

=

=0

ここで 00 および 0 はパウリ行列であり、 0 は単位行列である。また @$E はフェルミ速度)であり、 はフェルミエネルギーである。電子およびフォノンの演算子は 以下で与えられる。

@

@

(20)

式において電子及びフォノンの状態の和は1 および 1とする。ここで

の項は波数に関する二乗の分散からの寄与である。通常、輸送現象はフェルミ面のごく 近傍の状態に関するものなので、特に 次元系では線形の分散関係が用いられる。しかし、

熱電輸送においては、電子と正孔は電場に対して逆の方向に熱を運ぶために線形分散の範囲 では合計の熱流は完全に打ち消される。従って準粒子の効果に関する熱電効果に関しては、

電子と正孔の非対称性を考えることが必要となる。集団励起の問題についても、後の計算に よってこの非対称性が重要であることが示される。

電気伝導度 、熱起電力および熱伝導度はそれぞれ前節で説明した、式 およびで与えられる。なお熱電輸送係数 はそれぞれ電流演算子同士、

電流演算子と熱流演算子、および熱流演算子同士の相関関数であり、これらは久保公式 を用いて計算される

電流演算子は以下で与えられる。

@

0

=

0

これに対して、熱流の担い手は電子とフォノンの種類存在するため、熱流演算子も電子、

およびフォノン部分の種類からなる。この演算子の構築には電子とフォノンの相互作用の 取り扱いに幾通りもの方法があるために、歴史的には幾つもの方法が考えられてきた。 しかし、これらの違いは以下の解析においては無視できる程度のものである。本研究では熱 流演算子の電子部分は以下のように与える。

@

(

=/

0

=

0

=/

ここで および/はそれぞれフェルミオンおよびボソンの松原周波数である。

また熱流演算子のフォノン部分は以下で与える。

@

(

=/

=/

=/

この式は以下のように書き換えられる。

@

=/

=/

ここで / はともにボソンの松原周波数である。これらの演算子を用いて熱電輸送係 数 (+ @ は松原周波数の実数への解析接続によって以下のように与えられる。

@ !.

<.

B

/=

./

ここでB/はそれぞれの添え字に相当する相関関数とする。以下では電荷密度波への相 転移温度よりも十分に低い温度 に議論を限定する。この温度領域では準粒子の ギャップAは温度によらない一定の大きさとなり、

および はそれぞれ、*/0の 振幅および位相に関する集団励起モードの演算子として解釈できる。

平均場近似のもとでの電子のグリーン関数は以下のように与えられる。

)

@

A

A

A

(21)

また、集団励起モードのグリーン関数は以下で与えられる。

2

(/

@

0

0

2

(/

@

0

%

0%

ここで0および%0は振幅および位相の変位を表す演算子であり、以下で与えられる。

@

=

%

@ =

準粒子ギャップAよりも十分に小さな励起のもとではグリーン関数は以下で与えられる

2

(/

@

C

=

(/

"C

2

(/

@

C

=

(/

ここで C/ であり、 "@ !

"#

は無次元の定数である。また #系の格子定数であり、

@

$

は電荷密度波の質量パラメータと呼ばれる無次元量で通常 程度の大きさを持つ。

(a)

(b)

(c)

(d)

1 高次摂動からのダイアグラム。それぞれ は ループタイプ、 $ダイアグ ラム 、%は 9 &'.H" ダイアグラム、そして は"26" " ダイアグラム である。二重線は電子を表し、実線は位相モードあるいは振幅モードを表す。または各々 のダイアグラム対応した任意の頂点部分である。

本節ではこれ以降、熱起電力及び熱伝導度について述べるがその前に相関関数の計算にお いて現れる、様々なダイアグラムのうち実際に寄与するものについて解析する。

本項において扱う高次のダイアグラムは図 、$にあるような ループタイプ、"! . -3 & タイプ である。集団励起の特徴的なエネルギーは振幅モードのギャップ

(22)

@"C 程度であり、これは準粒子のギャップの 分の 程度の大きさなので、これらのダ イアグラムにおいて電子と集団励起モードの間で受け渡される運動量の依存性は無視する。

なお、この近似のもとでは図%にあるようなタイプと同じ高次のダイアグラム である9 &'.H" および"26" " ダイアグラム は無視できる。

また、この近似のもとでは、実際に相関関数に寄与するダイアグラムは電子部分の空間反 転に対する対称性から分類できる。これらのダイアグラムはそれぞれ、電流0、熱流

(a) (b) (c)

(d) (e) (f)

1 ループタイプおよびダイアグラムに関わるファインマンダイアグラム。 は 電流頂点0を表し、 およびは熱流頂点=/0を表す。なおÆ@

0

および

@

0 はそれぞれ振幅モードと位相モードの頂点部分である。

エネルギー0、位相モード 0 、および振幅モード0種類の頂点部分を持つ。

これらの励起の中では、空間反転に対して振幅モードのみが隅パリティを持ち他の励起は奇 パリティを持つ。電子部分が奇パリティを奇数個持つようなダイアグラムは、積分の結果消 える。従って残るのは図の 、$および のみである。 項の付録に、

寄与しないダイアグラムの例である図 %および図 の計算を示す。なお図6 は隅パリティだが打ち消される。この理由は、電流が電子と正孔の入れ替えに対して奇パリ ティである一方で、熱流は隅パリティであることと関係していると考えられる。なお、この 計算に関しても詳細は 項の付録に示す。最後に、図は振幅モード と位相モードの頂点部分を入れ替えることにより符合を変えることに注意する。の頂点 部分はこの操作によって符合を変えることはないので、結果として熱流演算子に関して

の相関関数は寄与しないことが分かる。

熱起電力

本項では、熱起電力について解析する。本節では、集団励起モードからの寄与のみを扱 い、不純物の効果は無視する。また、準粒子の効果についても転移温度よりも十分小さい温

(23)

+

+ +

1 位相モードのグリーン関数の自己エネルギーに寄与するファインマンダイアグラム。

実線および点線はそれぞれ位相モードおよび振幅モードの寄与を表す。電子に関する頂点部 分は三角および四角の点で表す。なおこの部分は定数としてのみ寄与する。

度領域 では温度に関して指数関数的に減少するために無視する。また、励起の減衰 時間0は、位相モードと振幅モードの非線形的な相互作用に起因するものを扱う。参考文献

にあるように0 は、位相モードの減衰時間であり以下のように表される。

0 @

./

"

/

ここで/ @ $Cである。式より減衰時間0は振幅モードのギャップ /より大きな 温度領域では温度 に逆比例し、これよりも十分小さな温度では指数関数的に減少する。参 考文献にあるように電気伝導度は図 、図のダイアグラムから計算され る。これは、非線形相互作用により減衰する位相モードの寄与であり @

"

0 で与えられ る。このダイアグラムは および への寄与も持つので、この部分を および と すると

@ A

"

A

@ A

"

A

である。上のつの式はともに

の因子をもつがこれは、 が電子と正孔の対称性 が破れているときのみでない値を持つことを意味している。なお

は通常、電荷密度波 の系では 程度のオーダーを持つので必ずしも無視できない大きさである。

式、式、および式を用いると熱起電力は以下のように与えられる。

@ A

"

A

式で表される熱起電力は、不純物による密度波のピン止めをはずすためのエネルギー が系の熱的なエネルギーよりも小さくなるような系においては実際に観測されることが期 待される。近年のブルーブロンズでの実験で、温度に逆比例した熱起電力が観測されている

(24)

(d)

(b) (c)

(e) (a)

1 輸送係数に寄与するファインマンダイアグラム。 で表される ループタイプのダイ アグラムは電気伝導度および、熱起電力に寄与をもち、一方$ で表される"! . -3 &ダイアグラムは電子部分に関する熱伝導度に寄与する。

。この効果は論文中ではフォノン・ドラッグの効果とされているがの効果である可 能性もある。また、密度波のピン止めを外部電場によってはずした非線形領域で、この効果 が観測されることも期待される。外部電場が位相・振幅の非線形相互作用に起因するエネル ギー損失による仕事とつり合っているときには、密度波の並進速度は外部電場に比例し、こ のような条件下では、線形応答の計算結果を適用することができる。参考文献でブルー ブロンズの系で非線形的な の電場に対する応答が観測されているが、この系においても

式で表されるような熱起電力の温度依存性が観測されるかもしれない。

なおは絶対零度で発散しているが、これは不純物や準粒子の効果を無視しているこ とが原因だと予想される。

熱伝導度

熱伝導度は電子およびフォノンの寄与の二種類があり、電子の寄与を またフォノン の寄与をと表記する。

初めに電子からの寄与について考察する。まず、図の のダイアグラムは寄与を持 たないことが分かる。実際 から容易に

@を確かめること ができる。これは非線形相互作用により減衰する位相モードの熱伝導への寄与は、逆向きに 流れる式のような電流が生み出す熱起電力によって完全に打ち消されていることを意味 している。そこで、本節第項にあるようなダイアグラムの寄与を調べる。図にお いて$ が熱伝導度に対して有限の寄与を持ち、それ以外のダイアグラムは消える。な お電気伝導度および熱起電力に関しては、これらのダイアグラムは全て寄与を持たない。

計算は以下のようにして得られる。まず、ダイアグラムの和は以下のように表される。

(25)

1 図 におけるダイアグラムの電子部分の一例。 は運動量、 /% はフェ ルミオンの松原周波数、また/はボソンの松原周波数である。/ は計算の最後で/=に 解析接続する。

* /

% /

2

/

% 2

/

%

=/

=2

/

%

=/

2

/

%

ここで は格子数、 は温度の逆数 、また関数*/%/は、 図$ のダイ アグラムの電子部分についての和を表す。図にあるように、電子部分のダイアグラムに ついては、種類の松原周波数/%があり、 の和は完全に計算することができる が/% については実際には計算は困難である。そこで、この計算においては、/%について の状態和は、複素平面上に解析接続し積分に置き換えたあと、密度波のグリーン関数の極の みを拾う。なお電子のグリーン関数の極については、転移温度よりも十分低温な領域を考え ているので無視する。この仮定のもとでは から導出される輸送係数は以下のように計 算される。

C

"

*

A/

=*

A /

において関数 *

A/

はなお直接計算することは困難であるが、 項の付録にあるように*/=* /

"C =3

を示すことがで きる。なお、フォノンのグリーン関数の部分の計算も項の付録で説明する。

従ってこの式を用いて最終的に以下の式が得られる。

A

/

&

" . E

$

0

次にフォノン部分の計算をする。熱流演算子 式は位相モードと振幅モードの間の生成 消滅過程を表している。従って、相関関数はつの集団励起モードのグリーン関数から計算 されることが分かる。よってこの ループの寄与は以下で与えられる。

@

/

&

".

E

$

0

はともに位相モードの減衰時間0に逆比例している点が共通である。実際計算 上でも* ///=/ に置き換えることによっては得られる。つまり

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