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黄麹菌Aspergillus oryzaeにおける糖タンパク質分 泌に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

黄麹菌Aspergillus oryzaeにおける糖タンパク質分 泌に関する研究

李, 秋実

http://hdl.handle.net/2324/4060238

出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 李 秋実

論 文 名 黄麹菌Aspergillus oryzaeにおける糖タンパク質分泌に関する研究

論文調査委員 主 査 九州大学大学院農学研究院 教授 竹川 薫 副 査 九州大学大学院農学研究院 教授 松岡 健 副 査 九州大学大学院農学研究院 准教授 沖野 望

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

真核生物において分泌タンパク質は小胞体で合成された後、さまざまな修飾が行われる。その中 でも、タンパク質へ糖鎖が付加されるグリコシレーションは非常に重要なプロセスである。タンパ ク質が合成されて細胞外に分泌される際、その多くは糖鎖が付加された糖タンパク質となる。近年 需要の拡大しているバイオ医薬品の多くは、哺乳動物細胞株を用いて生産された糖タンパク質であ る。しかし、哺乳動物細胞由来のバイオ医薬品糖タンパク質は高価であり、その糖鎖構造はヘテロ であるため薬効の不均一性が生じる。本研究は、異種タンパク質分泌生産用の宿主として広く利用 されている黄麹菌Aspergillus oryzaeを用いて、効率よく均一糖鎖構造を持つ糖タンパク質を生産す るための技術開発を試みたものである。

現在、均一な糖鎖構造を持つ糖タンパク質を酵素化学的に調製するため、エンド-β-N-アセチルグ ルコサミニダーゼ(ENGase)による糖転移技術が主に用いられている。この方法では、不均一な糖鎖 を 有 す る 糖 タ ン パ ク 質 か ら ENGase に よ り N-結 合 型 糖 鎖 を 切 断 し 、N-ア セ チ ル グ ル コ サ ミ ン (GlcNAc)が1分子残存したGlcNAc-タンパク質を調製する。その後、構造既知の均一糖鎖を糖転移 活性を向上させたENGase変異体を用いて転移させる。本研究では、糸状菌Hypocrea jecorina由来 の ENGase(EndoT)を黄麹菌のゴルジ体膜に発現させることで、GlcNAc-タンパク質を分泌生産する AoGlycoDelete株の作製を試みている。

まず、黄麹菌のゲノム情報をもとに、ゴルジ体膜に局在すると推定される膜タンパク質4種類を 選抜している。それらの膜貫通領域(TM 領域)と黄麹菌用にコドンを最適化した EndoT を発現する プラスミドを構築し、4種類のAoGlycoDelete候補株を作製している。4種類のAoGlycoDelete候補 株によって分泌生産されたα-アミラーゼの分子量は、野生株のものと比べて低下が確認されている。

このことから、作製した4種類のAoGlycoDelete候補株はN-結合型糖鎖を欠損したα-アミラーゼを 分泌生産することが示唆されている。

次に、野生株および4 種類のAoGlycoDelete候補株の生育を寒天培地上で比較している。その結 果、4種類のAoGlycoDelete候補株の中で、分裂酵母糖転移酵素Omh1オルソログのTM領域を使用

した TM391-EndoT 発現株において、野生株と比較してコロニー形態の異常が確認されている。こ

れは細胞表面の糖タンパク質糖鎖がEndoT によって切断され、正常な細胞形態の維持ができなくな ったためと示唆される。また、AoGlycoDelete 株における EndoT の細胞内局在を解析するために、

EGFPとの融合タンパク質発現株を作製して、蛍光顕微鏡観察を行っている。いずれのAoGlycoDelete 候補株でも EndoT-EGFP はゴルジ体マーカーと共局在することから、ゴルジ体に局在することを明 らかにしている。

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最後に、野生株およびAoGlycoDelete(TM391-EndoT)株を用いて、α-アミラーゼであるAmyB、グ ルコアミラーゼである GlaA の HA タグ融合タンパク質発現株を作製している。分泌生産された AmyB-HA、GlaA-HA を精製した後、インタクト質量分析に供している。その結果、AoGlycoDelete 株由来のAmyB-HA、GlaA-HAはN-結合型糖鎖がEndoTにより遊離され、GlcNAcが1分子残存し ていることを示している。さらに、これらの GlcNAc-アミラーゼの酵素活性を測定したところ、N- 結 合 型 糖 鎖 の 有 無 で 酵 素 活 性 に 有 意 な 差 が 見 ら れ な い こ と を 示 し て い る 。 以 上 の 結 果 か ら 、 AoGlycoDelete 株を用いることで GlcNAc-アミラーゼを分泌生産することを確認している。今後は 様々な有用糖タンパク質由来の GlcNAc-タンパク質を分泌生産する宿主としての利用が期待される。

以上、本研究はこれまでほとんど解析が行われていなかった黄麹菌における分泌糖タンパク質の 糖鎖に着目し、そのN-結合型糖鎖を切断・除去したGlcNAc-タンパク質を生産可能なAoGlycoDelete 株を開発することができ、多くの新たな知見が得られている。さらに、本株は均一な糖鎖が付加さ れた糖タンパク質の生産に有用であることから、応用微生物学の発展に寄与する価値ある業績と認 める。よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。

参照

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