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法科大学院擁護論 法科大学院 をつぶす な,つぶす な ら法学部 をつぶせ !*

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47

法科大学院擁護論

法科大学院 をつぶす な,つぶす な ら法学部 をつぶせ !*

*この副題 は

8 0

歳 を過 ぎた老人 の言葉 として は粗暴,激越 に過 ぎる と我 なが ら思 わぬで も ないが,私 の本心 の叫 びであるか らあえて書

き留 めてお く。

目次

1

は じめに‑ 四面楚歌 の法科大学院

2

法科大学 院 は 「この国 のかた ち」 を変 える

‑ 「縦 社 会」か ら 「横 社 会」へ の転 換 の 担い手

3

法科 大学 院か,法 学部 か ?‑ 究極 的 な選 択 ・その1

4 法 の担 い手 の特殊 日本 的存在形 態 (法曹 と 準法曹 との併存) を ど うす るか ?‑ 究極 的 な選択 ・その

2

5

補論 法科大学院出身者 を待つ多様 な職域 6 結語 ‑ この後 の者 に も

1 はじめに‑ 四面楚歌の法科大学院

法科大学院は今や危急存亡 の秋 を迎 えてい る ようにみ える1)。

2 01 2

4

2 0

日総務省 は,司法試験 の合格 者数 を年3千人 に増や し,法曹人 口を計 5万人 程度 にす る との政府方針 を下方修正す るよう法 務省 な どに勧告 した。 これには法科大学院の定 員削減や統廃合 の必要性 も含 まれてい る。

この勧告 内容 自体 は従来か ら提起 されてい る 日弁連 ・弁護士界 な どの主張 とも軌 を一 にす る ものであ り,驚 くには当た らない。 おそ ら くは これに対す る真剣 な反対 は勧告先か らも起 きな

萩 原 金 美

( 本学名誉教授)

い ので はないか。 しか し,私 には これは実 に異 様 な所業 と映ず る。行政府 の一部 門に過 ぎぬ総 務省 (の一部局) が政府 の正式 に決定 した方針,

しか も司法 の根幹 に まで影響 を与 えかねぬ重要 問題 について この よ うな勧告 を出 したのである。

た しかに総務省 (行政評価局) は 「各府省 の政 策 について,評価専管組織 の立場 か ら評価 を実 施 し,政策 の見直 し ・改善 を推進」す る職務権 限 を有す る。だが, この勧告 は意識的 ・無意識 的に司法制度改革 を崩壊 させ, ひいて これ と連 動 して な され るべ き行 政 改 革2)を阻止 し, 自

らの現状 を温存す るこ とに寄与す る とい う反動 的 な効果 をもた らす ものなので ある。 その形容 を絶す る危険性 は声 を大 に して指摘 されなけれ ばな らない3)

法科大学院の創設 は,裁判 員制度 の導入 お よ びい わゆ る法 テ ラスの発足 とな らぶ司法制度改 革 の三本柱 の一つ とされ る。 そ して この三つ の 中で法科大学院 の創設す なわち法曹養成制度 の 根本的改革 ‑法曹人 口の飛躍的増大 こそは,義 判 員制度や法 テ ラスがその所期 の機能 を十全 に 果 た しうるために不可欠の前提要件 を成す もの で あ って, それが危殆 に瀕す るこ とは, とりも なお さず司法制度改革全体 の帰趨 に決定的 な負 の影響 を与 えかね ない ので ある4)。 のみな らず, 後述す る ように法科大学院制度 はい わゆ る縦社 会か ら横社会‑ の転換 を容易 に し, この国の積 年 の通 弊 で あ る縦 割 り規制 行政5)を廃 絶 で き

る起爆剤 としての大 きな可能性 を秘 めてい る。

この意味 において法科大学院制度 は まさに司法

(2)

制度改革審議会 (以下 「司法審」 とい う)意見 書 のい う 「この国 のか た ち」6)を変 える力 の源 泉 その もの, まさに 日本 の将来 に対す る掛替 え のない貴重 な遺産 の提供 とい うべ きものなので あ る。 (この点 はそ の重 要性 にか ん が み

2

で再 説 す る。)遺憾 なが ら法科 大学 院 問題 をあげつ ら う論者 は意識 的 ・無意識 的 に この大事 を無視 ない し看過 す る近視 眼的誤 りを冒 してい る。上 記 の総務省勧告 ももち ろん その例 外で はない。

私 は司法審 意見書 が発表 された当時,「最悪 の シナ リオ を考 える と, 日本 の法曹養成制度 は 異 常 な長 期 間 (法 学 部 +法 科 大 学 院 +司法 修 習), コス ト高,晶質粗 悪 とい う三 大 欠 陥 を抱 え込んだ制度 に堕 しかね ない危険 をは らんでい る こ とを警 告」 した7)。 その私 が今 ここに四面 楚歌 の法科大学院 に対 して擁護論 を声高 に主張 しよ うとす るのは,法科大学院存亡 の シグナル の作動 はす なわち司法制度改革崩壊 の最 大 の予 兆 に他 な らないか らで あ る。

法科 大学 院発足 と時 を同 じ くして

7 3

歳 で法 学教育 の現場 か ら退い た私 は,傍観者 の身 は法 科大学院 を含 む司法制度改革 の諸 問題 に関す る 無責任 な発 言 は禁欲すべ きだ と考 え,主 に ス ウ ェーデ ン法 の研究 に没頭 す る 日々 を送 って きた のだが,裁判法研究者 として長年取 り組 んで き た司法制度改 革 と りわけ法科大学院問題 に関す る関心,懸念 は一 目も脳裏 を離 れた こ とが ない。

ス ウェーデ ン法研究 の仕事 を進 め る中で法科大 学院 につい て 「この壮大 な社会的構築物 が既 に して重度 の変質過程 にあ るこ とは紛 れ もない」

とい うよ うな重 大 ・深 刻 な発 言8)な どを耳 に して心が休 まらず座視 Lがたい思い を感 じざる を得 なか った。

幸い とい うべ きか,別 に意 図的 に スウ ェーデ ン法 と司法制度改革 とい う二つ の問題 へ の取組 み とい う両面作戦 を敢行 したわけで はない のだ が,諸般 の事情 に迫 られて スウェーデ ン法研究 の合 間に法科大学 院 に直接 ・間接 に関連す る若 干 の論稿 を発表 して きた9)。 わが晩年 にお け る

「ス ウ ェーデ ン法 三部作」 を刊 行 し, ス ウ ェー

デ ン法研究者 として の一応 の義務 (と自分 で考 える もの) を果 た し得 た現在 ,上記諸論稿 を踏 まえて法科大学 院擁護 のた めの ささやか な論 陣 を張 ろ うとす るのが本稿 の意 図で あ る

司法審会長 で あ った佐藤幸治博士 の著書 に白 洲正子氏 の 「一人 の力 で は ど うに もな らぬ もの で あ る。 だが,一人 の力 を信 じな くて何 がで き る とい うの だ ろ う」 とい う言 葉 が 引 か れ てい る10)。昨 今 の わ が 国 の混 迷 を極 め る政 治 ・経 済 ・社会状況 をみ るにつ け個人 の無力 さを痛感 す る。私 ご とき老妻 の‑研究者 の発 言が果 た し て法科大学院擁護 に何 か意 味 を もち うるのか甚 だ心許 ない けれ ど, この国 の よ り良 き明 日のた めに,法科大学院で学ぶ また は学 ぼ うとす る現 在 お よび将来 の学生諸子 のた めに どん なに些少 で もプ ラスにな りうるこ とを してお きたい。 そ ん な思い に駆 られ 白洲氏 の言葉 の真理性 を信 じ て本稿 を世 に問 う次第 で あ る。

(カ オ ス理 論 の 「バ タ フ ライ効 果」 に よれ ば, ア フ リカ大陸で羽 ばた く一 匹の蝶 の羽 が生 み出 す振動 が アメ リカに‑ リケ ‑ ンを引 き起 こす こ とだ って あ り得 ない で は ない とい わ れ る11)。 本稿 が この一 匹 の蝶 の羽 の役割 を果 た しうるか

も知 れ ない ので あ る12

) 。 )

2

法科大学院は 「この国のかたち」を変える

‑ 「縦社会」か ら 「横社会」への転換の担い手 法科大学院 の教育 と司法試験等 との連携等 に 関す る法律 (い わゆ る連携 法) 附則

2

条 は, 同 法施行 か ら

1

0年 を経過 した時点 (平成

2 5

4

月) におけ る見直 し条項 を置い てい る。 それ ま で には まだ

2

年 は どの時間的余裕 が あ る ものの, 法科大学 院 をめ ぐる諸般 の厳 しい状況 にかんが み ロース クール研 究

1 7

( 2 01 1

5

月刊 行) は 「司法制 度 改 革審 議 会意 見 書 の

1 0

年」 と題 す る特集 を組 んでい る。 そ こで は法科大学院協 会理事 長 ・青 山善 充教授 の もの を始 め とす る

4

篇 の論考 が掲載 されてい る。

司法審意見書 か らみた法科大学 院 の現実 と課 題 を論 ず る青 山氏 の論考 に触発 されて本節 で も

(3)

神奈川ロージャーナル 第

5

法科大学院設置 の前史 をい ささか回顧 してみた い と思 う。大袈裟 な言い方 だが,温故知新 とい うこ ともある (この国の法律家の世界 は健忘症 患者 で溢 れ てい るのだ13)。実 は法 科 大 学 院 の 設置 ・発足 にあた って意識的 ・無意識的 に放置 された諸 問題 が法科大学院 の今 日の惨状 を招い てい るか らで ある。

そ もそ も法科大学院創設 の提案 は大学 の外か らな された ものであ り (その火付 け役 とい うべ き存在 は柳 田幸 男弁護 士)14),大学 ヨ リ具体 的 には法学部教 員は法科大学院の設置 に決 して積 極 的ではなか った こ と, しか るに司法審 が設置 され,法科大学院創設 の問題 が狙上 にのぼ るや 香 や多 くの大学が法学部 のその ままの存在 を前 提 とす る自己防衛 の色彩 が極 めて濃厚 な法科大 学院構想 を次々 と提案 した こ とが指摘 されなけ ればな らない。法学部廃止 とい う根源的 な提案 を した大学 は皆無 で あ った。 (私 は これ を大学 案 は右手 と左手 が正反対 の ことを してい るの と 同 じに思 える と評 した15)0

この こ とについては現在 では大学人 (法学部 教 員) の間に も多少 の反省 がみ られ るようであ る。瀬木比 呂志氏 (当時判事,現在 は退官 して 法科大学院教授) の著書 における以下 の記述 は その一端 を示 してい る とい えよう。

「研究者 の方 々か らも 『‑‑‑大学 において も, た とえば文部科学省 の意 向 を伺 うような傾 向, 習性」が存在 し,「その根 は 日本社会 の保守性, 権威主義的傾 向 とい った構造的 な問題 ‑‑にあ

るのか もしれない』 との意見があ った」16)

「研究者 の方々の うち相当部分か らも,『大学 は,今 回の制度改革 に対 しておおむね受 け身 の 対応 に終始 し,大学 自身が,法学教育 ・研究 の 問題 を主体 的 に考 え,克服す るための制度 とし て法科大学院制度 を とらえて こなか った (各大 学が まずはみずか らの生 き残 りの方 向へ と走 っ て しまった)傾 向は否定で きない と感 じる』 と の感想 をお聴 きしてい る」17)

法科大学院 をめ ぐる論議 の中で当時の太 田誠 一総務庁長官 は,「国家公務 員の法律職 とい う

49

試験 は司法試験 と同 じもので あ っていい のでは ないか とい うこ とを考 え」 てい る と示唆的な発 言 を してい る18)。 そ して柳 田氏, 田 中成 明, 阿部泰隆両教授 は同様 の意見 を明確 に表 明 して い る。す なわち,柳 田氏 は 「国家公務 員 1種試 験 の うち法律職 の試験 については,司法試験 を もって代 えるこ とにす る。」 こ とを提 案 し, 田 中氏 は 「国家公務 員の法律職 な どは,司法試験 と一体化 し,法曹資格保持者 が行政 に も進 出す る方 向に向か うべ き」 だ とし,阿部氏 は 「国家 公務 員上級職試験 の法律職 を廃止 し,官庁 は法 律職 として は司法修習 を終 えた者か ら優秀 な者 を採用 すべ きで あ る。」 と主張 す る19)。全 く正 当な意見で あ り, これが採用 されていれば, わ が国における法 の支配 の確立 は大 き くその歩 を 進 めた こ とは明 らかで ある。 しか し,明治以降 確 固 として存続 して きたわが国特有 の擬似 的法 の支配 の担い手 の中枢 を揺 るがす この ような改 革 を司法制度改革 の中で実現す るこ とは容易 で はないので,私 自身 は 「三氏 の意見 に大賛成 な のだが, そ う簡単 にゆ くか どうか楽観 で きない。

強力 な政治指導 を期待 す るゆ えんで あ る

」20)

と述べ て,太 田氏や これに同調す るで あろ う政 治家諸氏 (とくに法曹有 資格者) の影響力 に大

きな期待 を寄せたので あ った。

しか しこれに関す る事態 はなん ら変 わ ってお らず,司法試験 と公務 員 1種試験 (以下,上級 職 試 験 とい う) とは全 く別 個 独 立 の ま まで あ

る21)0

太 田氏 は最近政界か らの引退 を表 明 してお り, 現在 の国会議 員の中に太 田氏 と同様 の卓見 を有 す る人 が存在す るこ とを私 は寡聞に して知 らな い。 田中氏 は現在文部科学省 の法科大学院特別 委 員会 の委 員で あるが, その立場 か ら可能 な限 り自説 の正 当性 の主張 ・実現 に努 めて欲 しい と 願 わ ざるを得 ない。

ところで,上級職試験 の合格者 そ して各省庁 の最終的採用者 の大部分 は東京大学お よび京都 大学 の各法学部 の出身者 で ある。両大学 に法学 部 が存在 しなければ上記 の問題 は難 な く解決 し

(4)

て しま うで あ ろ うこ とは明 らかで あ る。 ここに 法学部 の存在 が法科大学院問題 ‑法曹人 口問題 の大 きな障碍 の一 つ ‑ 実 は最大 の障害 ‑ で あ るこ とが看取 され るので ある。

上級公務 員法律職 の採用者 が法科大学院 出身 者 で あるべ きこ との重要性 につい て,司法審 の 審議 の過程 で,私 は以下 の ように論 じた。

「彼 らはそれ ぞれ の 中央 省庁 にお け る関係 法 令 の立案 に携 わ り,通達類 の作成 を行い,法規 の解釈 ・執行 に重要 な役割 を演 ず る。 内閣法制 局 の参事官 (捕) も各省庁 か ら出向す るのが通 例 の よ うで あ る。彼 らが法学部教育 しか受 けて い ない ので は,法 の支配 に とって大 きな悪影響 が あ る と考 える。法 は単 に行政 目的 の実現 に資 す る もので はな く, また,論理 的整合性 を完備 してい るだけでは足 りない。 それ は国民 に とっ て権利 の主張 ・実現 の手段 として の実効性 を備 えてい るこ とが肝要で あ る。 そのためには,義 判手続 の実態 に まで配慮 した立法 (莱)作業 が 必要 で あ り, その よ うな能力 を身 につ け るた め には最低 限,法科大学院で の教育 と司法修 習 を 経 るこ とが必要で あ ろ う。 これ まで その必要 が 感 じられ なか った のは, そ もそ も行政訴訟 の提 起 が原則 的 な事態 と認識 されてい なか ったか ら で はあ るまいか。通達類 と行政指導 だけで足 り るな らば,精微 な形 式的法律論理 を駆使 で きる だ けの能力 で こ と足 り,優秀 な法 学士で十分 だ か らで あ る。」22)

東 日本大震 災お よびそれ に よる福 島第一原発 事故 とこれ に関連 す る事故処理 その他 の様 々 な 出来事 が 日増 しに明 らか に しつつ あるのは, わ が国の擬似 的法 の支配, その制度 的表現 ともい うべ き縦割 り規制行政 の もた らした積年 の弊害 だ とい って よい23)。 この弊 害 の認 識 は少 な く

ともバ ブル崩壊後 は心 あ る多 くの観察者 に共有 されて きた こ と とい って よい と思 うが

,3 . l l

とその後 の出来事 は これ を白 日の下 に晒 した の で あ る。古賀茂 明氏 は 「天下 り」 が全 て の制度 の改 革 を阻 む根 本 原 因 だ と指 摘 す るが24),天 下 りを現実的 に可能 な ら しめてい るのは縦割 り

規制行政 なので あ る。 また,公益通報者保護法 が全 く空文化 してお り, 内部告発 が国家 ・社会 の浄化機能 を果 た しえない根源 に もわが国の公 私 の組織 のガ ンジガ ラメの縦社会的構造, それ を支 える縦割 り規制行政 の存在 が看取 され る と い って よい。

(ち なみ に,千 葉恭 裕 氏 (人事 院人 材 局審 議 官) の論考 に よれば,法科大学院 出身者 で上級 職試験 を受験 す る者 につい て合格率 は高い が採 用率 は非常 に低 い との こ とで, その理 由の一 つ として 「自分 として はぜ ひ とも志望す る省庁 の 中に入 って実力 を発揮 してみたい と,熱意や説 明力 を しっか りア ピール しない 限 りは,残念 な が ら採 用 に は結 びつ か ない。」 と説 明 され てい る25)。 この説 明 は一 見 も っ ともな よ うで あ る が,私 として はい ささか異論 を有 す る。当初 か ら特定 の省庁入 りを熱望 してい る者 が必ず しも 公務 員 として適格 だ ともい えない面 が あるので はない か。 なぜ な らば, この よ うな若者 は容易 に周 囲 の悪 しき洗脳 を受 けて省益す なわち国益 と即 断 し,国民 の利益 に反 す る既得権益 の擁護 者 と化 して しま うおそれ のあ る,い わば既得権 益 の立場 か らの期待 と願望 に容易 に応 え得 る従 順 な公務 員志望者 で しか ない可能性 が あ る。 そ れ に激動す る時代 の推移 の中で行政組織 も不 断 に変化 せ ざるを得 ない か ら, あ ま りに硬直 した 特定 の既存 の組織 へ の帰属 意識 の保持者 は公務 員 としてむ しろマ イナスな面 もあ るので はあ る まい か26)。

法曹 資格 を有 す る法科大学院 出身者 は キ ャ リ アの途 中で組織 を飛 び出 して もその資格 と経験 を活用 して再 生 の道 を比較 的容易 に見 出す こ と が で きる27)。本 人 に とって は もち ろん 国家 ・ 社会 に とって も貴重 な人 的資源 の有効利用 とし てす こぶ る望 ま しい こ とで あ る。 そ うい う法曹 資格 を有す る者 の転職 の現実的可能性 が,次第 に縦 社 会 の この国 を横 社 会 に変 えて行 く。 (節 聞記者 も法曹 資格 を有 す る者 は転職 の可能性 が 高い か ら, マ ス ゴ ミと批判 ・蔑視 され る大新 聞 や テ レビの論調 も大 き く変化 せ ざるをえ まい。)

(5)

神奈川ロージャーナル 第

5

その変化 は緩慢 にあるい は急激 に生ず るだ ろ う か ら,軽 々な予測 を許 さない けれ ど,遅 くとも

1

世代

3 0

年 を経 た この国 は現在 の縦社 会 か ら 横社会 に実質的 に転換 してい るこ とだ ろ う。法 科大学院 は今 まさに この転換 の重要 な担い手 を 創 出 しつつ あるのである。法科大学院の廃止や 縮小 を主張す る論者 は この理 を悟 るべ きで ある。

この こ とを切 言 してお きたい。

他方,意見書 の所期す る法科大学院 に よる法 曹 の大量養成 に対 して は, それが伝統的 な弁護 士業務へ の経済的直撃 に連動す る面 があ り, 日 弁連 ・弁護士界 の側 か らの切実 な反対論 は今や 悲鳴 とも聞 こえる。弁護士急増 が既存 の弁護士 に与 える影響 の深刻 さについては,例 えば河野 真樹 『大増 員時代 の弁護 士 弁護 士観 察 日記

PARTl 』( 2 0 1 1 )

,『破 綻 す る法 科 大 学 院 と弁 護 士 弁護 士観 察 日記

PART2

』 (同)『司法 改 革 の 失 敗 と弁 護 士 弁 護 士 観 察 日 記

PART3 』( 2 0 1 2 )

(い ず れ も共 栄 書 房) が活 写 してい る。私 自身 も実務 にはほ とん ど関与 して い ない にせ よ長年弁護士登録 を続 けてい る者で あ り,裁判法研究者 とい って も徒 に大所高所 か らの理想論 を振 りか ざ して現実 の弁護士たちの 窮境 に 目を覆 うつ も りは毛頭 ない。

河野氏 は多年 『週刊法律新聞』 の編集長 を務 めた人で あるか ら,おそ ら くこの改革が既成 の 弁護士たちに与 えつつ ある深刻 な影響 について 最 も豊富な情報 を有 してい るこ とだ ろ う。 そ し てその立場か ら氏 は,著名法学者 や大新 聞な ど が描 く法科大学院支持論 に対 して厳 しい批判論 を展開 してい る。私 は司法評論家 とで もい うべ き氏 の活動 に注 目 してお り,多 くの弁護士現場 の声 を率直 に代弁 してい る と感 じられ る氏 の所 論 の正 当性 を一部是認す るこ とに客 かで ない。

しか し残念 なが ら氏 の議論 には,上述 した法科 大学院が 「この国のかたち」 を変 える大 きな可 能性 に対す る視 点が脱落 してい るこ とが惜 しま れ る。が,たぶん これは氏 の意識 的な選択 なの だ ろ う。氏 はあえて鳥の 目を捨 てて虫の 目に こ だわ り,市井 ・町場 の弁護士 に密着 した司法 ジ

51

ヤーナ リス トで あるこ とを大切 に してい るので はないか。 それはそれで リスペ ク トに値 す る仕 事 だ と思 う。いずれにせ よ,氏 の仕事 は裁判法 の フィール ドワーク ともい える面が あ り,裁判 法研究者 に とってす こぶ る有益で ある。好漢 自 重せ よ ! とェ ‑ル を送 りたい28)。

日弁連 ・弁護士界 の増 員反対論 に対す る批判 については,拙稿 「司法制度改革 と日弁連新会 長 ‑ 日弁連 は司法 制度 改 革 を逆行 させ るの か」神奈川 ロージャーナ

ル3

( 2 0 1 0 )

に書い た こ とをその ままここに援用 して再説 を避 ける。

その後, 日弁連会長 は激烈 な選挙 の結果変 わ っ たけれ ど,法科大学院問題 ‑法曹人 口問題 に関 す るか ぎ り新 旧両者 に どんな違いが あるのか不 敏 な私 には不 明で ある29)。

ただ,最後 に私 の率直 な心情 を少 し吐露 して お きたい。

司法審意見書 を読んだ とき,意見書 は結果的 に (意 図的 とは思 わないが)弁護士制度 と大学 の法学教育 とい う二つ の攻撃 しやすい部分 に改 革 の集 中砲火 を浴 びせたので はないか, とい う 複雑 な思いが私 の脳裏 を去来 した。 これ を前置

きとして私 は以下 の ように書いた。

「弁護 士制度 も大学 も強 固 な 自治 に守 られて お り, こ との性質上改革 な るものは内部か らは 極 めて困難 だか ら, 自治 は しば しば改革 を阻害 す る原 因の温床 とな る。 この意味では審議会 と い う第三者 に よる大手術 もやむ を得 ない とい え よう。 しか し矛盾 した こ とをい うよ うだが,大 学 は もち ろん弁護士制度 も外部か らの圧力 にす こぶ る弱い面 が ある・‑‑。弁護士制度 や大学 の 改革 について は慎重 な配慮 が求 め られ る とい わ なければな らない。」30)今で もそ う思 ってい る。

お よそ改革 とい うものは痛 み (しか もしば し ば激烈 な) を伴 う。 その痛 みが必ず しもフェア に分有 され るわけで はない のが問題 だが, それ は改革 が人間の営為 で ある以上 ある程度 まで不 可避的 と諦 め る しか ない。弁護士 自治 や大学 自 治 (実際 には教j受会 自治) の濫用 が今 日の自 ら の窮境 を招来 したのだ, とい う謙虚 な反省 も必

(6)

要 で は あ る まい か。 (大学 自治 の こ とは次節 で 扱 うべ きだ ろ うが,叙述 の関連上 ここで言及 し た。 そ もそ も

3

4

とは同 じ盾 の両面 とい うべ

き問題 を包蔵 してい るので論述 が未整理 との印 象 を与 えるか も知 れ ない が,問題 の性質 と私 の 能力 の貧 困 にかんがみ ご了承 を乞 うはか ない。)

3

法科大学院か,法学部か ‑ 究極的な選択 ・ その 1

法科大学院 は米 国の ロース クール をモデル と して い る よ うに み え る31)。少 な くとも比 較 法 的 にみて世界 の法学教育 ・法曹養成制度 の中で 法科大学院 に最 も近似 してい るのは米国の ロー ス クールで あ る。 しか し米 国には学部 レベル に おけ る法学教育 は存在 しない。 したが って,法 科大学院創 出の論議 におい て まず問題 とされ る べ きで あ ったのは既存 の法学部 と法学部 との関 係,具体 的 には法学部 を どうす るのか とい うこ とで あ った はずで あ る。 しか し奇妙 な こ とに こ の よ うな議論 は皆無 に等 しい ので あ る32)

私 自身 は法学部 の廃止 な ど現実的 には とうて い不可能 な こ とにかんがみ,法学部 が法 を中心 とした一般教養学部 また は (お よび)一般教養 (前 半) +中級 法律職 のた めの徹 底 した職 業 教 育 (後 半) に変 身 す る こ とを試 論 的 に提 言 し た33)。 しか し,賛 否 は別 と して も私 見 に真 剣 に耳 を傾 けて くれた人 を知 らない。論者 は法科 大学院 と法学部 との教育上 の役割分担 とい う難 問 を どう考 えてい たのか。 あるい は何 も考 えて い なか ったのか も知 れ ない。 だ とす れば, その 思考停止ぶ りは理解 しがたい ものが あ る.私 は 自己の提案 に関連 して次 の よ うに述べ た。

「全 国各大 学 にお け る法科 大学 院 に関す る シ ンポジウムが引 っ切 り無 しに行 われてい る。 関 係者 の真撃 な努力 を認 めつつ あ えて直言す るが, 筆者 には壮大 な時間 とェネル ギ ーの浪費 としか 思 われ ない。 この こ とは シ ンポ ジウムに招 かれ る講 師 の顔触 れが一部 固定 してい るこ とか らも 明 らかだ と思 う。本 当 に法学教育,法曹教育 を 改 革 したい な らば,他 に もっ と考 えるべ きこ と,

や るべ きこ とが あ るので はない か。/かつ て 山 本七平氏 は

「空気」 の研究

』( 1 9

77,文芸春秋

/1 9 8 3

,文春 文庫) とい うユ ニ ー クな著作 を書 き, 日本 に お け る重 要 な意 思 決 定 (戦 争 を含 む) が 「空気」 に よる決定 で あ るこ とを解 明 し てみせた。い ま法科大学院 に関す る大学 (人) の言動 を目撃 して 山本説 の正 しさが例証 されて い るこ とを痛感 せ ざるを得 ない。 日本的知性 の 限界 を思い知 らされた気 がす る。 この間題 と真 剣 に対決す るこ とな しには,司法制度改 革 は結 局 この国に豊 か な結 実 を もた らさない ので はな いか とい う不吉 な予感 さえ覚 える。 この率直 な 感想 をあえて記 してお く。」34)

これ を書 い た の は

21

世 紀 に入 った年 す なわ ち

2 0 0 0

年 の こ とだが,

1

0余年前 の不 吉 な予感 は今 まさに現実化 しよ うとしつつ あ る。誤解 を 避 け るため断 ってお くが,私 は決 して徒 に他者

を批判 す るた め こん な こ とを書い てい るので は ない。 (私 だ って 当時,大 学経 営 ・運 営 の責任 の一端 を担 うよ うな立場 にあれば,生 き残 り策 と して 同様 の こ とを した か も知 れ ない ので あ る。) 司法制度改革 の所期 の 目的 を実現す るた めに同 じ誤 りを繰 り返 して欲 し くない一念 か ら の所為 で あ る。

この文章 に続 けて私 は こ う書 い た。「われ わ れは進 む も地獄 ,退 くも地獄」 とい うべ き厳 し い状況 の中にあ る と思 う。 だ とすれば,座 して 自滅 の道 を選ぶ ので はな く,死 中に活 を求 めて 改革 の道 を前進す る よ りはか ない ので はない か。

今 こそい わば悲観 的 な楽観主義 が必要 なので あ る。」35)しか るに,法 科 大 学 院発 足 前 後 の時期 の大学 関係者 な どの間 には能天気 な楽観主義 が 禰漫 してい た。例 えば,学生 に対 す る経済 的影 響 の問題 につい て も実 に雑駁 で安易 な議論 しか な されてい なか ったので あ る36)

司法制度改革 が所期 す る法曹養成 を実現す る ためには法科大学 院 の入学者 は法学未修者 を原 則 とす る必要 が あ る37)。そ うで なけれ ば多様 な 人材 を法科大学院 ひい て法曹界 に集 め るこ とは で きない。 ところが,法科大学院 には末修者 の

(7)

神奈川 ロージヤ‑ナル 第

5

ほか,既修者 お よび隠 れ未修者 が存在す る。 そ して

3

者 は全 く同一 の条件 の下 に司法試験 を受 け るので ある。 これは明 らか に極 めて ア ンフェ アだ とい わなければな らない。 しか も新 司法試 験 は旧司法試験以上 に筆記試験重視 に こ りかた ま ってい るのみな らず, その筆記試験 な る もの の主流 はなお 旧司試式 の試験,つ ま り長年 か け て記憶 して きた知識 の吐出 しで対処 で きる試験 だ とい われ る38)

その結果 として何 が現実 に生 じてい るのか。

久保 利 教授 (弁護 士) に よれ ば

,

「もはや真正 末修者 は絶滅寸前 で あ る。真正未修者 の司法試 験合格率 の低迷 と増 員の停滞 に, 多様性 の担い 手 た る真正未修者 自身 がた じろい でい るのが現 実 で あ ろ う。」 との こ とで あ る39)

そ して久保利氏 は,新 司法試験 について 「法 務省 と司法試験委 員会 が新 司法試験 と法科大学 院 の意義 を理解 してい ない」 として次 の よ うに 述べ る

「短 答 式試験 とい う記憶 とス ピー ドを 競 う試験 が存置 された ままで司法試験法 が改正 されず,合否決定 の総合点 に も算入す るのは, 法務省 や司法試験委 員会 の意識 が 旧試験 か ら抜 け出てい ないか らで あ る。未修者 を標準 とす る 以上, その法律知識 の範 国や,深度 を従来 とは 異 な った基 準 で判 定」す べ きだ40)。 この主 張 は短答式 が まだ存在 しない ころの旧試験 の恩恵 で短期 間 に合格 で きた私 の個人 的経験 に徴 して

も全 く正 当だ と思 われ る。

また米倉教授 は現状 の改 革案 として,① 司法 試験 の競争試験 か ら資格試験へ の移行,② 受験 者 はすべ て真正末修者 ばか りとす るこ と (具体 的 に は法学部 の廃止),(歪適性試験 お よび短答 式試験 の全廃等 々 を挙 げ る41)0

ところで,久保利氏 も米倉氏 も法学部 の廃止 を割合い容易 に考 えてい る ようで あ る (両氏 と も韓 国の例 を引 くが, これ につい ては本節 の最 後 で触 れ る)。 しか し法学部 の廃 止 は難事 中の 難事 で あ り, おそ ら く最大 の抵抗勢力 は法学部 教 員 (法科大学院 の研究者教 員 を含 む) で あ る。

私 が法学部 に対 して法 を中心 とす る一般教養学

53

お よび中級法律専 門職 のた めの職業教育 を行 う 学部 に脱皮す るこ とを求 めたのは法学部廃止 と い う大学経営上 の激震 を生 じかね ない一大難事 について な るべ くソフ トラ ンデ ィングの道 を探 索す るこ とに苦慮 した挙 げ句 の提案 で あ った。

だが,上述 した とお りこの提案 に耳 を傾 けて く れ た人 は管 見 のか ぎ り皆無 で あ る。 (なお,以 上 はい わゆ る普通 の法 学部 ‑平均 的法学部 を前 提 に した もので あ る。 ご く少数 の 「エ リー ト官 僚養成機 関 として の法 学部」 あ るい は 「法学部 にお け るエ リー ト官僚養成面」 は法科大学院 に 脱皮 すべ きで あ る。)42)

しか し,今 や法学部 が生 き残 るためには上記 私案 の よ うな対策 を講 ず るはか ない ので はあ る まい か。法学部 を廃止 し,大学経営 を破 たん さ せ,教職 員の生活 を路頭 に迷 わせ るこ とを避 け よ うとす るな らば。 したが って, この私案 をベ ースに して法学部 に とってい わば緊急避難 とも い うべ き措置 を とるこ とが必要 だ ろ う。やや詳 言すれば以下 の とお りで あ る。

(法科 大 学 院再 生 の道 は,真正 未修 者 中心 の 法曹養成機 関 として 自己 を確 立す るこ とで あ る。

これが アル フ ァで あ りオメガで あ る。)

真正末修者 を法科大学 院 に呼 び寄せ るた めに は,大学 が隠れ末修者 の問題 をは っき り清算 し なければな らない。法学部 出身者 につい て は原 則 として末修者 として の入学 を厳 し く禁止す る。

例外 的 に上記私案 の よ うな構造改革 を行 った法 学部 の出身者 につい て のみ卒業後一定期 間が経 過 し, その間 に一定 の有用 な社会生活 ・職業経 験 を獲得 してい る場合 (例 えば

NPO

な どで の 活動) に限 って未修者 としての入 学 を認 め る。

この よ うに して法科大学院 を未修者 中心 にで き, かつ既 習者 の グル ープの中か ら中途半端 にだ ら だ ら法律 だけの勉強 を続 け よ うとす る知的好奇 心 の貧 弱 な法 学 部 出身者 (法 律 専 門 バ カ候 補 坐) を排 除で きる。

これ は "法科 大学 院 ・法 学部 に よる法 学部 の脱法学部化" とで もい うべ きもので あ る。

(8)

法学部 出身者 は法科大学院 において隠れ末修 の 道 を閉 ざされ, ひい て司法試験 におい て有利 な 取扱 い を受 け るこ とがで きな くな る。 その結果 として生ず る未修者 との フェアな 自由競争 の場 で生 き残 って行 か なければな らない。 これで は 法学部 の魅力 は法曹志望者 に とって は半減い や 消滅 して しま うか も知 れない。 しか し,大部分 の学生 に とって現状 の法学部 はほ とん ど 「サ ラ

リーマ ン (公務 員 を含 む広義 での)学部」 と同 意 なのだか らそれで別 に問題 はない はずで あ る。

問題 は,法科大学院 に よる真正 な法曹養成教育 の阻害要 因 とな る法学部 の不 当 な影響力 を限 り な く無化 す るこ となので あ る。

このあた りが法科大学院 と法学部 とが併存 し て発展 で きるた めの現実的方策 で はあ るまいか。

この程度 の改革 で も大学 は蹟謄 うか も知 れ ない。

しか しその先 に待 ち受 けてい るのは両者 の共倒 れか どち らかの破産宣告 だ ろ う。 それは 自業 自 得 とい うべ きで あ るが, その直接 の犠牲者 は学 生 た ちで あ り,長い スパ ンでみれば この国 の未 来 で ある。犠牲者 を出 さないた めに出来 るこ と

は何 で もす るのが大学人 の ノーブ レス ・オ ブ リ ージのはずで あ る。

大学側 の この よ うな 自助努力 と並行 して,文 科省 ,法務省,最高裁 の側 (日弁連 も協力) に おい で は,適 性 試 験 お よび短 答 式 試 験 の改 善 (な るべ くな らば全廃) に努 め るべ きだ。 これ らの試験 について は,私 は米倉氏 の意見 に同調 したい。 これ らの試験 は学生 に無用 ・過大 な時 間 と費用 を要求 し,法曹 の資質 の向上 にあ ま り 資 さない と考 え られ るか らであ る。 どん なに難 解 な試験 で あ って も平気で ク リアす る能力 を示 す受験秀才 が存在 す る。 しか し,試験 には必ず 正解 が存在 す るけれ ども,現実 の社会 におい て 生起 す る問題 には しば しば正解 が存在 しない の で あ る。法曹 の能力 が真 に試 され るは この よ う な正解 が存在 しない法律 問題 の処理 においてで あ る。 そん な場合 に輝 け る受験秀才 が果 た して どれほ ど役立つか疑 問で あ る43)。

なお,司法研修所教育 について は必ず しも必

要的 な もの とせず,訴訟 を中心 とす る法律実務 を目指す者以外 につい て は弁護 士事務所 その他 におけ る実務修 習 を もって代替 で きるこ とに し て よい と思 う44). た だ, 司法 研 修 所 教 育 は戦 後 司法 の貴重 な成果 の一 つで あ り, その今後 の 在 り方 につい て は慎重 な検討 が望 ま しい と考 え

る。

(ち なみ に, 司法 試験 予備 試験 につい て は, 主 として経済 的理 由に よ り法科大学院教育 を受 け るこ とがで きない人 々 に対 して司法試験受験 の機会 を与 え,法曹界 に入 る道 を開 くとい う, その本来 の 目的 ・機能 に厳 しく限定 した運用 が な され るべ きで あ る。予備試験 の実施 に よって 法科大学院 は亡 び,栄 えるのは法学部 と予備校 とい う結果 を招来す るな らば,予備試験 の拡大 的運用 の関係者 は 「この国 のかた ち」 を変 える 司法制度改革 の失敗 の重要戦犯 として厳 しく断 罪 され なければな らない。)

さて, お隣 りの韓 国 におい で も 日本 と同様 に 一連 の司法制度改革 が進行 してお り, それ はお おむね 日本 のそれ を反面教 師 として制度設計 が な されてい る よ うで ある。 そ して, その 「法律 専 門大学院」 の設置 にあた って は法学 を有す る 大学 は これ を廃止 す るこ とが要求 され,最 大 の エ リー ト校 で あ るソウル大学 も苦渋 の選択 の結 果 法 学 部 を廃 止 した と伝 え られ る45)。 わ が 国 でい えば,東 大 が法学部 を廃止 し,法科 大学院 を設置 した に等 しい とい え よ う。 その英断 には 心 か ら敬意 を表 したい と思 う。 しか し,私 が消 息通 の某氏 か ら聞い た ところに よれば,既存 の 法 学部 は その名 称 を 「政 治 経 済 学部」「政策 学 部」等 に変更 したのみで,法学部 の実態 はほぼ そ の ま ま存 続 して い る との こ とで あ る46)。韓 国の法学部廃止 とい うこ との具体 的 内容 につい て は よ り精密 な検討 が必要 だ ろ う。

だが,隣国 の こ とはそれ として われわれ は こ の国の法科大学院が存続 ・発展 してい く道 を必 死 で探 求 しな けれ ば な らない。「弁護 士 の多様 性 (す なわちそ うい う弁護士 を輩 出す る法科大 学院 ‑ 引用者注) をあ きらめた ら日本 はお し

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神奈川ロージャーナル 第

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まいで ある」 とは久保利氏 の至言である。私 の 脳裏 には この言葉が雷鳴の ように響いて くるの で ある47)0

4

法の担い手の特殊 日本的存荏形態 (法曹と準法 曹 との併存)をどうするか ?‑ 究極 的な選 択 ・その

2

わが国にはおおむねの欧米諸 国には存在 しな い弁護士以外 の法的業務 を行 う職種 が存在す る。

司法審意見書 はこれ を 「隣接法律専 門職種」 と よぶが,私 は 「準法曹」 と称 してお り,司法書 士,行政書士,弁理士,税理士,社会保険労務 士 を含 めて考 えてい る (同意見書 は土地家屋調 査士 も含 めてい る。)48)そ して法学部 は準法曹 (お よびその予備軍) の主要 な大量 生産工場 と

して機能 して きた。

擬似 的法 の支配 の担い手である 「準法曹」 の 大量生産工場 として機能す る法学部 の存在 は, 必然 的に法科大学院の正常 な発展 を阻害 し,法 の支配 の実現 に大 きな負 の影響 を及 ぼす こ とに なる。法学部教育 が 日本 の法 と学問の歴史 にお いて大 きな役割 を果 た して きた こ とは承認 され るべ きであるが, その負 の側面 としてそれが擬 似的法 の支配 を強化す る機能 を営んで きた こ と

も率直 に認 めなければな るまい。 しか し法学部 関係者 は意識的 ・無意識的に この冷厳 な事実 を 看過 ない し忘却 してい るので あ る。 (ここでい う準法曹 (予備軍) の大量生産工場 としての法 学部 は,前節で論 じた法科大学院教育 の阻害要 因 としての法学部 とは一応別個異別 の問題 で あ る。 それにい うまで もな く,準法曹 は法学部 出 身者 であるこ とを要す るわけではない。)

それはそれ として,準法曹問題 を考 える とき は とりわけ複 眼的 な考察が要求 され る。 われわ れはそれが国民 に対す る法的サ ー ビスの面 で有 して きた, そ して現 に有す るメ リッ トに も十分 に留意 しなければな らない。準法曹 は しば しば, 安価 でかつ分野 に よっては法曹 よ りも適切 な法 的 サ ー ビスを提供す るこ とがで きる。行政 は巧 妙 に準法曹 の この よ うなメ リッ トとこれに対す

55

る国民 のニ ーズに対応 し (ときに これ を先取 り して) その権益 の確保,拡大 のために利用 して きた面 が ある。具体 的には当該省庁 の権益 の拡 大強化,職 員の天下 り先 (再就職 の場) の確保, 国政選挙 の場合 の準法曹団体 の集票 マ シー ンと

しての機能 な どが挙 げ られ る49)0

わが国におけ る法曹人 口の問題 を考 えるにあ た っては この ような準法曹 の存在 を不可避的 に 顧慮 しなければな らない。準法曹 の仕事 の多 く は諸外 国では弁護士が行 ってい るもので あ り, その数 は弁護士 よ りもは るかに膨大 だか らで あ る。数年前 の統計数字で あるが, その総数 は実 に

2 0

万名 に近 く,税 理士 だ けで約

7

万名 に達 す るので あ る50)。 しか るに,司法 審 意 見 書 は これ を怠 り,ほ とん どすべ ての論者 は意識 的 ・ 無意識 的 に この間題 を取 り上 げ るこ とを回避 し て きた。現在 の司法試験合格者 の数 (の制 限) に関す る議論 の根源 には この問題 が盤距 してい るこ とを明確 に認識す る必要があ る。

実 は一度 だけ準法曹問題 が 日弁連 に よって真 剣 に議 論 され た こ とが あ る。 そ れ は

GATS

(サ ー ビス貿易一般協定) に よる自由職業 サ ー

ビス (弁護士業務 もこれに含 まれ る) の国際的 規制緩和 の拡大 と くに

MDP

(異業種 間共 同) の実現 の脅威 と関連 してで あ った。深刻 な危機 意識 に駆 られた 日弁連 中枢 の弁護士か らは,弁 理士,税理士,司法書士全 員 を特許弁護士,税 務弁護士,登記弁護士 として 日弁連 に受 け入 れ る とい うラジカル な提 案 さえみ られた51)。 日 弁連 は会 員に対 して, 日弁連外 国弁護士及 び国 際 法律 業 務 委 員会 編

『 wTO/ GATS

が弁 護 士 職 に どの よ うな影 響 を及 ぼす のか ?

Q&A

( 2 0 0 0

3

)

』 を配 布 した。 だ が,今 で は こ の出来事 は遠い昔 の こ との ように忘れ去 られて い る。

当時私 自身 は, この間題 に関連 して次 の よ う に書いた。

「将来 的 には我 が国 の法律専 門職 は弁護士職 へ の一本化 とい う統合 の道 を選択すべ きで ある。

現状 の よ うな準法曹 の分立 ・割拠 の維持 ・存続

(10)

は,準法曹 が高度 に専 門化 すればす るほ ど,汰 的 サ ー ビスの利用者 で あ る国民 の利益 を害 し, 法 の支配 に悪影響 を もた らす危 険が あ る。現状 を是認 し,弁護士 とこれ ら準法曹 との業務提携 を促 進 す る こ とで利 用 者 ‑国民 の ニ ーズに応 え よ うとす る見解 は,一見妥当 な現実論 の よ う で あ るが,実 は非現実的 なので ある。 なぜ な ら ば,現状 か ら生ず る相互 間の不和 ・対立 は構造 的 な もので あ り,構造 自体 を変革 しない 限 り根 本 的 に解消す る もので はないか らで あ る。 それ に法 の支配 は本来行政権 に対す る もので あるこ とを思 えば,現在 の準法曹制度 の限界 ‑ 個 々 の準法曹 が どれほ ど優秀 で あるか, また人権擁 護 の使命感 を有 してい るか にかか わ らず ‑はお のず か ら明 らか なはずで あ る。『分 割 して統 治 せ よ』 とい う言 葉 も こ こ に 想 起 さ れ て よ

。」52)

念 の た め に蛇 足 を加 えれ ば,「相 互 間 の不 和 ・対立」 が頂点 に達 した事例 はい わゆ る福 島 事件 で あ る。福 島県 において登記事務 を行 った 行政書士 を司法書士 が検察官 に告発 した結果, 最 終 的 に は最 高裁 で被 告 人 ‑行政 書 士 に対 す る有 罪判 決 が下 され た53)。準 法 曹 制 度 の限界 の意味 について はそれが縦割 り規制行政 の産物 で あ るこ とを思 えば とくに説 明 の要 はない だ ろ

う。

突然話題 を変 える よ うで恐縮 だが,東京 スカ イツ リーの完成 時 に, その高 さ

6 3 4

メ‑ い レは 高尾 山

( 5 9 9 . 1 5 m)

をは るか に超 え る もので素 晴 らしい とい う新 聞記事 を読んだ。 その際 にふ と私 の脳裏 を よぎ ったのは,法曹養成 にお け る 少数精鋭 の ノ ッポ ビル方式 にはや は り大 きな限 界 が ある とい うかねての思いだ った。 この記事 に水 を差 すつ も りは毛頭 ない けれ ど, スカイツ

リーの高 さも富士 山に比べ れば問題 にな らない。

富士 山の頂上 に匹敵す る世界的高水準 の優秀 な 法曹 が生 まれ るためには, その広大 な裾野 を成 す 多数 のやや低水準 の 巨大 な法曹集 団 の存在 が 必要 なのだ。

それに新 司法試験合格者 ‑法科大学院 出身者

の質 が低 い と批判 されてい るが, その質 とはい ったい何 なのか ? 「何 とな く漠 然 と過 去 の法 律 家 の質, しか も誰 も定義 した こ とも計測 した こ ともない過去 の法曹 の質 を 『所与』 として, あ るい は 『理想』 として議論 してい る よ うで あ る。」54)とい う太 田勝 造教 授 の指 摘 は ま さに青 紫 に中 ってい る。氏 はその関係 してい る 日弁連 法務研究財 団 の財 団研究 「法曹 の質」 な どに よ

る研究 (継続 中) の一環 で あ る調査結果 に よれ ば,市民 か らみた弁護 士 イメージは弁護士 の 自 己 イ メ ージ と大 き く異 な り

,

「弁護 士 を遠 い存 在 として位 置付 け,弁護 士 にはかか わ らない で 済 む人生 を願 ってい る とい うこ とにな る」 と述 べ てい る。 そ して,「この よ うな市民 の もつ弁 護 士 イメージは過去 の弁護 士 につい て の イメ ー

ジで あ るこ とに鑑 みれ ば,合格 率2%,合格 者 数

5 0 0

人体制 の時代 の弁護 士 が築 き上 げて きた イ メ ージで あ る こ とにな る。『従 来 の弁護 士 の 質 を維持 しなければ な らない』 とい う言明 の も つ社 会 的含 意 は意 外 な もの とな るか も しれ な い。」 と結 んでい る55)。軽 々 に新 司法 試験 合格 者 ‑法科大学院 出身者 の質 の低下 を云 々す るこ

とは戒心すべ きで あ ろ う56)

この関係 で附言 してお きたい のは, 占領下 の 沖縄 で は大量 の法学部卒業者 に対す る弁護士資 格 の付与 が行 われたが, それが司法運 営,法 的 サ ー ビスの提供 に与 えた負 の影響 の有無 ・程度 とい う問題 で あ る57)。 この 間題 は講 和 条 約 の 発効 に よる沖縄 の本土復帰 に際 して 日弁連 で も 議論 された よ うで あ るが,結局 はその ままにな ってい る。私 は何度 か法社会学者 な どに この間 題 の実証 的 な調査 を行 うこ とを勧 めてみたが, 興味 を示 しで も調査 の実施 に まで踏 み切 って く れた人 は皆無 で あ る。現在 で はおそ ら く存命 の 関係者 は絶無 に近 く,調査 は不可能 だ ろ う。

結局 ,準法曹 の制度 的廃止 は関係 各界 の既得 権益 の頑強 な抵抗 に遭遇 す るか ら極 めて困難 と い うほ か あ る まい58)。 しか し,準 法 曹 制 度 を 事 実上廃絶 して しま う戦略 は存在 す るので あ る。

法科大学院か ら次 々 に生 まれ る大量 の新法曹 が

(11)

神奈川ロージャーナル 第

5

新 たな市場 を求 めて奔流,いや津波 の ご とく準 法曹 の職域 になだれ込 めば よい のだ。 (法曹 と 準法曹 とのあるべ き姿 に関す る基本的選択 はす でに司法審意見書 においてな されてい るこ とを 銘記 しなけれ ばな らない。「究極 的 な形 で問題 を提示すれば,司法審意見書 において一発勝負 の旧司法試験 は否定 されたのだか ら,‑‑‑わが 国の法的 サ ー ビスの多 くの分野が一発勝負 の試 験合格者や天下 りの公務 員

OB

に よって行 われ て よい のか, それ とも‑‑‑法科大学院出身者 に よって担 われ るべ きか とい う二者択一 の課題 に な る。」 ので あ る59)。この戦 略 は決 定 済 み の課 題 の実現 にはかな らない。)

法曹 は訴訟代理 とい う公権力 に対抗す る強力 なキバ を持 ってい るので, この分野では準法曹 は太刀打 ちで きない。だが,本来 の準法曹 の職 務 の範 囲で は両者 のいずれが勝 るか を決 めるの はその提供す る法的サ ー ビスの良否 であ り,刺 用者 の選好で ある。一般論 として この面で は法 曹 は準法曹 に劣 る ようで ある。心すべ きこ とで ある。 ち ょっ とケースは異 なるが,消費者金融 等 に対す る過払い金返還請求事件 の処理 は弁護 士 と司法書士が競合す る分野であるけれ ど,司 法書士 のほ うがサ ー ビスが良い とい う話 も聞 く。

法科大学院出の新法曹 は,準法曹 の職域 に果 敢 に踏 み込んでそれ を自己の職域 として確立 し てい く真撃 な努力が求 め られ る。

とくに税理士 の職域 は納税者で ある国民 の権 利 の擁護 のために重要であ り,欧米諸 国におい ては弁護士 の重要 な職域 の一部 を成 してい るの で あるか ら, 日本 で も

1

日も早 くそ うなるよう 努力すべ きで ある。弁護士法3条 2項 が 「弁護 士 は当然,弁理士及 び税理士の事務 を行 うこ と がで きる。」 と規定 してい るこ とを忘 れて はい けない60)

また,行政書士や社会保 険労務士 の業務‑ の 弁護士 の進 出は,出入 国 ・移民関係行政 におけ

る人権保障の強化,社会保 険関係行政 の迅速化, 透明化 な どに も大 き く寄与す る とい え よう。 こ れ らの分野 は直 ちに弁護士 の収入 の増加 につな

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が らないか も知 れない が,未開の荒地 を開墾す る農民 の ような地道 な努力 はやがて大 き く報 わ れ るこ とを信 じよう。農民 の子 で ある私 はその 実例 を何度か 目撃 してい る。

最後 に準法曹 (志望者)諸氏へ のメ ッセ ージ を一言。本節 を読 んで 自己の職種 ・職域 の将来 に危機感 を覚 えられた方 は白身 または後継者 と

して想定す る子女 な どが法科大学院に学んで法 曹資格 を取得す るこ とを是非真剣 に考慮 して欲 しい と思 う (法科大学院へ の進学 が不可能 ない し著 しく困難 な場合 には予備試験 の利用 もやむ を得 ない が)。私見 に反対 され るのは一 向に構 わない けれ ど, 巨視 的 にみて準法曹 とい う特殊 日本的法専門職 の存在 が何時 まで許容 され うる か冷静 に判断 して もらえれば,結論 は自ずか ら 明 らかで あろ う。

5

補論 法科大学院出身者を待つ多様な職域 ロース クーノレ研 究

1 7

号 は 「法科 大学 院修 了 生 の進 む道」 と題す る特集 を組 み, そ こには合 計10篇 にお よぶ各界 の人事 関係 の担 当者 な ど の論考が寄せ られ, その中には法科大学院問題 に関す る貴重 な示唆 に富む指摘 がみ られ る。本 節 では ランダムにその若干 を引用 Lかつ多少 コ

メ ン トめいた こ とを記 して, とくに前節 の補強 としたい61)。

( ∋

千葉恭裕 (人事 院人材局審議 官)「国家公 務 員 ‑ 法科大学院出身者 の国での採用」

この論考 については4で言及 した62)0

② 林新一郎 (日本銀行総務人事局人事課長)

「日本銀行 ‑ 法科大学院生へ の期待」

日銀 の総合職 の うち法学部 出身者 の割合 が経 済学部 出身者 とほぼ同程度 の

3 ‑ 4

割 もあ り, ま た現実 に 日本銀行 が法科大学院修 了者 の就職先 の一つ にな ってい るな どとい うこ とを私 は寡 聞 して知 らなか った。 ところで,法科大学院出は 学部生や他 の大学院生 に比較 してい わゆ る企業 研究 のための努力が不足 してい る, と批判 され てい る。「私 た ちは弁護 士事務所 に就職 で きな い法科 大学 院生 の救 済機 関で はない。」63)とま

(12)

でい うが, 日銀 マ ンの高い プライ ドか らすれば 当然 の こ とだ ろ う。上述 の ような企業研究 のた めの努力 の不足 は他 の人事担当者か らも指摘 さ れてい る ところで あ って, その意味 については 後 に一括 して考 えてみたい。

(彰 加藤格 (三井物産株 式会社法務 部長)「民 間企業 ‑ 法律 を最 も得意 とす るす ぐれた ビジ ネスパ ーソ ンを期待す る」

「職人 的 な法務 マ ンとい うよ りは,バ ラ ンス 感覚 にす ぐれた,法律 を得意 とす るジェネ ラ リ ス トを必要 としてい る」64)とい う言葉 は示唆 に 富む。 この ような能力 を有す る人材 の判定 に現 在 の司法試験 は どれほ ど適切 なのか検討が必要 で はあ るまいか。「法科大学院 の 目的が多 くの 司法試験合格者 を輩 出す る とい うこ とだけで あ れば,極端 な話,法科大学院は不要であ り,千 備校 で よい で あ ろ う。」65)とい う指摘 は全 くそ の とお りで ある。法科大学院,司法試験 の関係 者 が耳 を傾 けるべ き至言だ ろ う。司法試験不合 格者で企業法務 マ ンとして優 れた能力 を発揮 し てい る事例 の紹介 も示唆的である

。「 5

法科大 学院へ の要望」 と題 す る項」66)のほ とん ど全 て は法科大学院に とってす こぶ る有効 な助言だ と 思 う。

須崎将人 (ソフ ト ヾンク株式会社法務部部 長)「民 間企業 ‑ 日本 が国際競争社会 の 中で 勝 ち抜 くための人材 を求む」

弁護士が 「企業 が要求す る レベル を満 た さな い例 は以前 か らい る (ママ)0(中略) すべ て の仕事 において常 に秀才弁護士 を必要 とす るも ので もない‑‑・。」67)「グローバル な戦い の場で は多様性が求 め られ る。多様性 を求 め る場合, 母数 となる数 も重要である。個 々の優秀 さだけ 誇 っていて も世界 レベルの競争で は限界 があ り, 勝 負 にな らない。」68)とい う言葉 が印象 的で あ

る。母数 の大 きさの重要性 を説 く後段 は,近視 眼的に司法試験合格者数 の制 限 を主張す る立場, 論者 に対す る頂 門の一針 となろ う。

6) 西 田 章 (西 田法務研究所所長 ・弁護士)

「法律事務所 の職域 と人事採用」

西 田氏 は法務系 の人材紹介業務 に携 わ って き た人 とい う。 その豊富 な知見 に基づ き多 くの弁 護士や法科大学院の教 員な どが必ず しも明確 に は意識 してい ない と思 われ る様 々な問題 を見事 に整理 して提示 して くれ る。

( む

中村健人 (日本組織 内弁護士協会理事 ・シ スメ ックス株 式会社法務部課長)「企業 内弁護 士 の現状 と課題」

企業 内弁護士 の統計的 な現状 に加 えて,企業 に とっての顧 問弁護士 と企業 内弁護士 との法的 サ ー ビスの特質 の対比 な ど興味深い指摘 がみ ら れ る。

( む

山本 晋 平 (弁護 士 ・ニ ュー ヨー ク州弁護 士)「法律実務家 が国際機 関

・ NPO( NGO)

で 働 くために」

NPO( NCO)

につい て は,現在 の とこ ろ安 定 した報酬 ・対価 を得 られ るものはない ようで あるが,将来的 には魅力的かつ チ ャ レンジ ング な職域 だ ろ う。余談 だが,私 のかつての同僚 で 敬愛す る阿部浩 己教授 が理事長 を してい る国際 人権

NGO

ヒューマ ンライツ ・ナウ

( NRN)

の 存在 を知 り,嬉 しくな った69)0

⑧ 曾 根 威 彦 (早 稲 田大 学 法 学 学 術 院教 授)

「法科大学院か ら法学研究者 の道へ」

い うまで もな くこれは極 めて重要 なテーマで あるが, こ との性質上様 々な見解 があ りうる と 思 われ る。早稲 田大学 の新 たな研究者養成 シス テ ム も紹介 され てい るが

,2 0 0 7

年度 以 降 の博 士後期課程へ の法科大学院出身者 の数 は多い年 で

2

,0

名 の年 もあ った との こ と.ただ,氏 の 「法曹資格 が研究者教 員に とって教育研究上 本質的な意味 を もつか, と問われれば大い に疑 問で あ る。」70)とい う主張 には賛 同 しがたい。

これは氏 の専門が刑法 で あるこ ととある程度 ま で関係 してい るのか も知 れないが,基礎法学 は 別 として解釈法学 については一般論 として疑問 で ある。

例 えば,優 れた研究者的実務家 の側 か ら 「研 究者 も, これか らは,実務 をある程度 は知 り, 実務 の平均的 な感覚 をある程度 は自分 の もの と

(13)

神奈川ロージャーナル 第

5

す る必要 が あ るので はない か」71)

,

「研 究 者 は 同 じ法律家 として実践者 の側面 も潜在的に持 っ てい る‑・‑ 」72)とい う意見が ある。 こ うい う意 見 に対 して氏 は ど う答 えるのだ ろ うか73)。

今後 の研究者 の養成 ・リクル ー トは法科大学 院出身者 を中心 として行 うのが筋 で あろ う。研 究大学院 (少 な くとも博士後期課程) は存置す べ きだ と考 えるが,法科大学院 を単 なる実務家 養成 に特化 した もの とみ るべ きで はな く,法科 大学院はそれに堕 してほな らない と思 う。法科 大学院はその名 の とお り 「大学院」で あ って, 法律実務 の専 門学校 ではない ので ある74)。 (勤 北沢義博 (大宮法科大学院教授 ・弁護士)

「法律事務所 フロンテ ィア ・ローの試 み ‑ 港 科大学院教育 と連携す る法律事務所 として」

北沢氏 の 「『一般 的 に適正 な人 口』 な ど とい うものがあ り得 ない よ うに,『適正 な法曹人 口』

な ど とい う概念 もあ り得 ない。」75)とい う言葉 は興味深い。

残念 なが ら,壮大 な理念 をもって発足 した大 宮法科大学院だが,来年

( 2 01 3 )

度 か らは経営 上 の理 由で桐蔭横浜大学法科大学院 と合併す る こ とにな った と聞 く。 この野心的 な法律事務所 も存続す るこ とを祈 りたい と思 う。

以上で各論考 の瞥見 を終 わ るが,国家公務 員, 日銀 その他 の人事 関係者 がほぼ異 口同音的 に法 科大学院出身者 は学部生や他 の大学院生 に比較 してい わゆ る就職先 (企業)研究 のための努力 が不足 してい る, と批判 してい るこ とについて 少 し考 えてみたい。 もちろん この点 は求職者 に とって有用 な反省材料 だ ろ うが, ある意味では プラスの意味 を持 ち うるのか も知 れない。 とい うのは, わが国の官庁や 巨大組織 では組織 中心, しか も縦割 りの弊害が顕著 なので,求職時か ら 視野狭窄 な熱血漢 (?) よ りもクールな心構 え の者 のほ うが就職後 に組織 の弊害 に囚われない 有能 な組織人 た りうる可能性 を有す る ともい え るか らで あ る76)。 この点 は

2

の末 尾 で述 べ た こ ととやや重複す るけれ ども, あえて再言 して お きたい。

59

編集部 に よれば,寄稿 して もら うこ とはで き なか ったが,地方 自治体 の職 員,国会議 員政策 秘書 として も法科大学院出身者が活躍 してい る こ とが記 されてい る77)。いず れ も法科大学院 出 に とって今後重要 な職域 である。

とくに地方 自治体 は行政機能 (準司法的機能 を含 む) に加 えて条例制定権 とい う一種 の立法 権 を有す るので あるか ら,条例 の立案作業 に携 わ る 「条例 に関す る法制局」的存在 としての法 曹有 資格 者 に対 す るニ ーズ も大 きい はず で あ る78)。この意味 で注 目に値 す るの は,兵庫県 明 石 市 が

2 0 1 2

年春,弁護 士

5

名 を職 員 として採 用 した とい う報道 であ る。弁護士 出身 の市長 の 意 向が強 く働いた といい,来年 も

2

名採用予定 す る との こ とで あ る79)。 こ うい う動 きが全 国 規模 で広 まるこ とが望 ま しく, 日弁連 な どはそ れに向けて最大限の努力 を行 うべ きで ある80)。 以上 のほか,法科大学院出の職域 として私 が かねて主張 して きたのは公証人役場 におけ る公 証人補佐職 の創 出で ある。公証人 の職務 は法化 社会 において極 めて重要で あるのに, その人的 側面 の実態が甚 だ しく貧弱で ある (判 ・検事等 の天下 り先 と化 してい る)。抜本 的改 革 を必要 とす るが, その改革 の一環 として公証人補 の制 度 を設 けて若い法曹 の職域 を創 出す るこ とが望

れ る81)。

ちなみに,裁判所職 員について も法科大学院 出身者 が存在す るこ とを知 った。裁判所職 員総 合 研 修 所 の 「書 記 官 研 修 部」 の 「養 成 課 程 研 修」 の第 1部 は,大学法学部卒業者が

1

年間の 研修 で書記 官 資格 を得 る コースで あ る。平 成

2 1

4

月入所 の デ ー タに よれ ば, その入 所者 約

2 0 0

名 の うち法科大学院 を含 む大学院出身者 が約

1 5%

お り,大学卒 業者 につい て も著名 大 学出身者 が多 く,大学名 だけで見 る と司法修 習 生 と変 わ る とこ ろが ない, とい う82)。 こ うい う高学歴 の裁判所職 員が今後増加 してゆ くこ と を考 える と,裁判所書記官 の処遇,役割分担 の 問題 は簡易裁判所判事制度 や検察 における副検 事制度 のあ り方 と共 に慎重 な再検討 を要す る悩

(14)

ま しい将来 の課題 とな ろ う。が, ここで は上記 事実 の紹介 のみに とどめ る。

脱 稿 間際 に, グ レ ン M.ウ ォ ン‑川井圭 司

『スポ ーツ ビジネ スの法 と文化 アメ リカ と 日 本

』( 2 01 2

,成 文 堂) とい う好 著 に接 した。川 井圭 司教授 か らの ご恵送 に よる。氏 はわが国に お け るスポ ーツ法 の代表 的研究者 の一人 で あ る。

ア メ リカで は

1 9 7 0

年代 初期 か らスポ ーツが ビ ジネス として認識 され,運 営 されて きた こ と, そ してそれが スポ ーツ法 とい う研究分野 を生 み 出 した こ と, また司法 が アメ リカスポ ーツ政策 の骨格 を作 り上 げて きた ともい えるこ とな どを 同書 は教 えて くれ る83).わが国で もスポ ーツ法 の分野 が魅力的 な法学 の一分野 で あ る とともに 弁護士 に対 して豊僕 な どジネスチ ャ ンスを提供 す る場 にな るこ とは確 言 して よい だ ろ う。現 に,

「日本 スポ ーツ法 学会」 の ア クテ ィブな会 員 の 相 当数 は 中堅 ・若手 の弁護士で 占め られてい る (ちなみに,私 は同学会 の設立発起人 の一人 で, 現在 は名誉 理事)。 スポ ーツ法 関係 の こ とも本 節 で紹介す るのにふ さわ しい と考 えるので ここ

に記 してお く次第 で あ る。

6

結語 ‑ この後の者にも

私 は拙著 『法 の支配 と司法制度改革』 の 「第

2

章 司法制度改 革 の課題 と行方 ‑ 『司法制 度 改 革審 議 会 意見 書 ‑

21

世 紀 の 日本 を支 え

る司法制度 を‑ 』 を読 む」 の最終節 の副題 を ジ ョン ・ラスキ ンの著書 の表題 に倣 って 「この 後 の者 に も」 と した84). それか ら

1

0余年 を経 た今, よ り一層強 い思い をもって この言葉 を憩 起せ ざるを得 ない。 この表題 は新約聖書 マ タイ 伝

2 0

章 の葡 萄 園 の比 境 か ら とられてい るが, 私 が これに心惹 かれ るのは,単純素朴 にわれ わ れ は後世 の人 々の こ とも配慮 しなければな らな い とい う意味 におい てで あ る (聖書 の寓意 か ら

は大 き く離 れ るだ ろ うが)0

歴史学者 の磯 田道史准教授 はその好 きな言葉 として,渡辺華 山の 「眼前 の繰 り回 しに百年 の 計 を忘 す る勿 れ」 とい う言 葉 を紹 介 して い

85)。法 科 大 学 院 ひい て法 曹 人 口 をめ ぐる現 在 の論議 のほ とん どは,正 に眼前 の事象 に振 り 回 されて百年 の大計 を忘 れた もの と評せ ざるを 得 ない。 われ われ は過去 の賢人 に対 して も後世 の人 々 に対 して も恥 ずか しくない言動 を とるべ きで あ る。 それが この国の司法制度改革 の時代 に居合 わせた法律 家 の当然 の心得 で はあ るまい か。

最 近 ,古 市 憲 寿 『絶 望 の 国 の幸 福 な若 者 た ち

』( 2 0 1 1

,講 談 社) とい う本 が話 題 に な って い る。著 者 は

2 6

歳 の社 会 学者 , ま さに典 型 的 な若者 の一人 で あ る

。2 0

代 半 ばの若者 と

8 0

歳 を超 えた私 の よ うな老人 とが どれほ どコ ミュニ ケー トで きるか覚束 ない けれ ど,現在 の この国 の在 り様 につい て応分 の製造物 責任 を負 うはず の者86)で あ る以 上,若 者 に とって絶 望度 が少 しで も低 くな る よ う自分 の仕事 の領域 で努 めた い, と私 は払そか に願 ってい る. この蕪雑 な文 字通 りの拙稿 に もそ うい う願 い が込 め られてい

るので あ る87)0

1) 東 京 新 聞201275日 (木)朝 刊26面 の

「こち ら特 報 部」 の見 出 しは 「法科 大 学 院崩壊 寸 ?」で あ り,神戸学院大学 の法科大学 院が来年 度 か ら学生募集 を中止す るこ と, これ は全 国で4 校 目の募集停 止 で あ るこ とな どを伝 える。 また, 同月7日 (土)朝刊3面 に よれ ば駿河 台大学法科 大学院 も来年度 の募集 を停止す る とい う。最近 ま で同大学総長 だ った竹下守夫博士 は私 の敬愛す る 碩学 の知 己で,司法審 の会長代理 を した人である。

それだけに同大学 の法科大学院教育 か らの撤退 を 聞 き,事態 の深刻 さに驚 きかつ複雑 な思い を覚 え ざるを得 ない。

2 )

拙稿 「わが国へ の国会 オ ンブズマ ン制度導入 の 可能性 ‑ ス ウェーデ ンの国会 オ ンブズマ ン制度 か らみ た 課 題」行 政 苦 情 救 済 & オ ン ブ ズ マ ン Vol.23(2012)1頁以下参照。

3) この勧 告 に先 行 す る総 務 省 政 務 官 が主 宰 す る

「法科大学院 (法曹養成制度) の評価 に関す る研究 会」 の報告書 (平成221221日公表) につい て,青 山善 充教授 は 「現在 の法曹養成制度 は,文 部科学省 ・法科大学院,法務省 ・検察庁,最 高裁 判所 ・地方裁判所, 日本弁護士連合会 ・単位弁護 士会 のすべ ての協力 ・連携 の上 に成 り立 ってい る が, この研究会 の評価 は,根拠法 の建前上,行政 機 関た る文部科学省,法務省 の政策 だけ を対象 と

してお り, その意味 で一定 の制約 が あ るこ とは免 れない。」 と批判的 な指摘 を してい る (同 「司法制

参照

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