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英語科教育法における模擬授業と学びに関する考察 吉住 香織

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立教大学教職課程 2017 年 4 月

英語科教育法における模擬授業と学びに関する考察

吉住 香織

1 はじめに

省察(リフレクション)が教師の成長と専門 性の向上のために果たす重要な役割について は、近年広く認知されている。実際、教師をめ ざす学生が学ぶ大学の教員養成課程において も、履修生の成長を促す省察の意義や理論はか なり普及してきた(神保他 , 2011)。とりわけ 模擬授業や録画映像を取り入れた省察は、履修 生の成長を促すよい機会と言えるであろう(髙 木 , 2015)。模擬授業は教師をめざす学生にとっ て、学んできた知識や技術を試す重要な実践の 場であり、さらにその経験から自分の授業指導 のあり方を批判的に理解し、その後の学びと成 長に活かす貴重な省察の機会となり得るからで ある。

しかしながら、授業数や履修者数など様々な 事情から、履修生 1 人当たりの模擬授業の回数 は現実には限られている。教職課程在籍中に 1

~ 2 回の模擬授業しか経験できない場合もある

(及川 , 2013)。筆者が「英語科教育法」を担当 する首都圏の大学でもその状況は大きくは変わ らない。教職課程に在籍中に履修生が経験でき る模擬授業は多い場合でも 3 回程度である。回 数が限られている模擬授業を履修生の学びと成 長につながる貴重な省察の機会としていかに活 かすことができるかは、教職課程で教科教育方 法を担当する者に共通の課題と言ってもよいだ

ろう。

リフレクティブ・プラクティスは「教師が教 室での経験をふり返り、自身のティーチングに 対する理解を深めることによって成長を志向す る(玉井 a, 2009)」授業研究法の1つである。

筆者は、教師の成長を促す省察の手法として広 く認められているリフレクティブ・プラクティ ス(神保他 , 2011)の発想を、担当する「英語 科教育法」の模擬授業に取り入れ、学び合いと 段階的な振り返りを通した履修生の学びの深化 と成長を目指してきた。このような模擬授業経 験から、履修生はどのようなことを学んでいる のだろうか。それは彼らの成長を促すものであ ろうか。

本稿では、模擬授業からの履修生の学びに焦 点を当て、模擬授業とその省察を通した履修者 の学びの全容を明らかにすることを目指し、ま た学びを促す要因について検討する。具体的に は、全ての模擬授業の終了後に履修生を対象に 実施したアンケート調査のデータを質的量的な 混合研究法を用いて分析した結果を報告し、模 擬授業とその省察を通した履修生の学びについ て考察する。

結果は、学び合いと協働の中で自他の模擬授 業を体験しリフレクティブ・プラクティスの視 点に立つ省察を段階的に行うことは、履修生の 重層的な深い学びを引き出し、自律的な成長プ ロセスを促す貴重な契機にもなり得ることを示

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唆するものであった。

2 研究の目的

本研究の目的は以下の 2 点である。

(1) 英語科教職課程で学ぶ履修生は、自他の模 擬授業からどのようなことを学んでいる か。

(2) 模擬授業を通した学びをより深化させる要 因や背景はあるか。もしあるのであれば、

それはどのようなものか。

3 研究の方法

3.1 研究環境 3.1.1 授業の概要

本研究が対象とした授業は、2016 年 9 月か ら 2017 年 1 月までの期間に後期(秋学期)科 目として開講された「英語科教育法 2」(半期・

2 単位)である。本授業は、中学・高等学校の 英語科教員免許状の取得を希望する教職課程に 学ぶ履修生の中で特に中学の英語教員を目指す 学生にとっては必修の授業であり、多くの場合 3 年生が受講する。英語科の指導に直接関係し ている必修の授業としては、本授業同様後期に 開講される「英語科教育法 1 演習」(後期・2 単位)がある。本授業および「英語科教育法 1 演習」はいずれも、前期(春学期)に開講され る「英語科教育法 1」(前期・2 単位)を修得 した者のみが受講できる。

本授業では特に、英語教育の知見や研究成果 をふまえた理論学習や指導技術の習得を通し て、中学校での英語授業指導に必要な実践力を

養うことを目指した。授業は主に討論やワ−ク ショップスタイルの演習など、履修生参加型形 式を取り入れた授業と履修生全員が行う模擬授 業を柱として構成されていた。後期 14 週、計 14 回の授業を行ったが、その中の 5 回分を模 擬授業の実施に割り当てた。模擬授業前の 4 回 分の授業では、模擬授業実施に向けて、指導内 容や背景理論、指導技術を学ぶと共に、現場の 授業 DVD 視聴と分析(2 回)を通して実践的 な理解を促した。模擬授業後の授業では、「模 擬授業全体についての振り返りとまとめ」、模 擬授業で扱った内容に関連づけた「指導と評価」

についての講義と演習、最後のまとめでは「英 語教育における重要概念」をテーマに、第二言 語習得理論を含む英語教育上の重要概念の中 で、特に模擬授業で扱った授業指導に関連する 内容について、履修生によるリサーチ、および 発表を行った。

3.1.2 模擬授業の概要

模擬授業の概要を説明する。履修生全員が、

単独、またはペアで、中学で扱う新出文法項 目について、口頭導入、定着のための口頭練 習、産出のためのコミュニケーション活動まで の部分についての授業を行う。実施時間は、単 独での模擬授業を希望した場合は 14 分間、ペ アでの模擬授業を希望した場合は 16 分間であ る。指導内容の中でも特に、文脈や場面を活か した英語による口頭導入と、task を取り入れ たコミュニケーション活動指導までの一貫性を 重視させた。また、模擬授業の目的を十分理解 した上で、目安として授業全体の 70% 前後は 英語を使って授業を展開することを求めた。模

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擬授業期間が始まるまでの計 4 回の授業、およ び DVD 視聴から学んだ授業指導に関する知識 や技術(task 活動や練習のさせ方、ビジュア ルエイズや補助教材、板書計画ほか)を活かし て、履修生はそれぞれ、指導案の作成・検討を 経た後、練習を重ね、各自の模擬授業本番に向 けた準備を進めていった。

模擬授業実施に伴う主な手順と内容は以下の 通りである。

1) 模擬授業で扱う項目の選定:履修生は指定 された 8 つの文法項目(=①受動態 ②不定 詞(目的を表す副詞的用法)③関係代名詞 主格の who ④比較 ⑤疑問詞 where ⑥過去 形 ⑦三人称単数現在の S ⑧経験を表す現 在完了形 )の中から自分が希望する 1 つを 選んだ。

2) 模擬授業担当の決定:同じ文法項目を希望 する者の中で、ペアで行うか単独で行うか、

各自の希望で決定した。

3) 「学習指導案(1st version)」の作成・検討・

提出:履修生全員が導入から産出段階まで の「学習指導案(1st version)」を立案して 持ち寄り、内容を検討し合った。また授業 担当者が適宜助言した。※「学習指導案(1st version)」は授業担当者が持ち帰って検討 の上、次の授業時に再度助言した。

4) 最終版「学習指導案(final version)」の作 成と提出:「学習指導案(1st version)」に ついての助言と学び合いを受けて、履修生 は、Teacher talk の script や板書計画、模 擬授業で活用を義務づけた worksheet の 構想案を盛り込んだ最終版の「学習指導案

(final version)」を作成し、提出した。

5) 模擬授業の練習:実施当日に向けてそれぞ れが自主練習とリハーサルを行った。※練 習のために授業の前後の時間に模擬授業を 行う教室と同じ仕様の教室を確保し練習環 境を整えるようにしたが、授業が重なって いない限り、実際多くの履修生が積極的に 利用していた。

6) 模擬授業の実施:毎回 3 組(ペア/単独)

の模擬授業を行った。当日の模擬授業の担 当者は使用する worksheet を、開始前に全 員に配布し、他の学生は、事前に生徒役、

観察役に分けられた他の学生は指定された 座席で授業を受けた。※模擬授業は録画さ れた。

7) 模擬授業終了直後の省察のための振り返り:

各自の模擬授業の終了直後、まず 2 分間程 度、授業者も含めて省察の為の時間をとっ た。その後、模擬授業のよい点と改善が望 まれる点について、学生数名と指導教員が 口頭でコメントを述べた。さらに模擬授業 についての「リフレクションシート」(B6 版)

を授業者を含む全員に記入させた。※終了 後集めた「リフレクションシート」と模擬 授業の録画映像は、模擬授業実施者が持ち 帰った。

8) 省察のための「模擬授業(MT) 振り返りシー ト」(補遺参照)の提出:学生・授業担当 者からのコメント、履修生全員のリフレク ションシート、模擬授業の録画映像などを 参考に、模擬授業の担当者各自があらため て自分の模擬授業について省察し、終了 2 週間以内に「模擬授業振り返りシート」を

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「リフレクションシート」と共に提出した。

※模擬授業期間中の全 5 回中は毎回、この 1)

~ 8)までの流れを繰り返した。

9) 模擬授業全体の総括:履修生全員の模擬授 業が終了した後の授業で、授業担当者は履 修生と共に模擬授業全体を振り返り、模擬 授業の総括を行った

10) 省察のための授業アンケートの実施:本授 業及び模擬授業からの学びについて、履 修生の省察を目的とするアンケートをあ らためて実施した。内容は 5 件法での回答 を求める質問と記述式回答を求める質問で 構成されていた。本研究に直接関連するア ンケート中の項目と内容については、対象 データ(データ 1 とデータ 2)として利用 した。詳細は後述する。

3.2 参加者

研究の参加者は 24 名 で、全員が大学の英語 教職課程に学び英語科教育法を受講していた。

履修生の多くは 3 年生で、その大半が 4 年次に 中学、または高等学校での教育実習を予定して いる。

3.3 研究対象となるデータ

対象となる 2 つのデータは、いずれも、全 ての学生の模擬授業が終わった後に行ったア ンケートである。1 つ目のデータは、5 つの質 問項目に対して履修生に選択式で回答を求め た。2 つ目のデータは記述式アンケートであ る。2 つの質問に対して履修生に記述式の回答 を求め、さらに自由記述を加えた。本稿ではこ れ以降、前者をデータ 1、後者をデータ 2 と呼

ぶ。また本アンケートは、授業課題の一環とし て行ったものであるため、実際のアンケートに は本研究がデータする以外の質問項目もあった が、今回は、本研究に直接関連する 7 つの項目 のみをデータとして用いてある。そのため質問 の番号については、一部、元のアンケートと異 なっている。

データ 1 の 5 つの項目中、質問 1 だけは、模 擬授業を実施した時点における参加した回答者 の状況を把握することを目的としていた。具体 的には「あなたは今回の模擬授業以前に、他で

(例:英教 1A 授業)英語の模擬授業を行った 経験がありますか。」という質問に、「初めて」

~「4 回以上」までの 5 つの選択枝の中から回 答者が自分の状況に合う答えを選ぶ、というも のであった。その他の質問 2 から質問 5 までは いずれも、模擬授業に関連する質問に 5 件法で 回答する形式である。質問 2 は「模擬授業の録 画映像は、自分が模擬授業をふり返る上で参考 になったと思いますか。」、質問 3 は「他の学生 からのコメントは、自分の模擬授業をふり返る 上で参考になったと思いますか。」、質問 4 は

「授業で自分が模擬授業を行ったことは、自分 の授業力を向上させる上で役に立ったと思いま すか」、そして質問 5 は「模擬授業全体(前後 の授業を含む)を通して、英語の授業について 新たに学んだ、あるいは気付いたことがあった と思いますか。」という内容である。質問 2 か ら質問 5 についてはいずれも、ア) 大いに思う、

イ) 思う、 ウ) どちらとも言えない、 エ) あまり思 わない、オ) 全く思わない、から回答者が自分 の状況にもっとも近いものを選んで回答した。

データ2の内容は、質問6が「模擬授業全体(前

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後の授業を含む)を通して、英語の授業につい て新たに学んだ、あるいは気付いたことはどの ようなことですか。」、質問 7 は「模擬授業を通 して、自分はどのようなことが向上した、ある いはできるようになったと思いますか。簡単に 記述してください。」であった。また自由記述は、

模擬授業全般について自由に回答できるもので ある。いずれについても履修生は記述式で回答 した。特に文字数等の制限はしなかった。

データ 1 の 1 から 5 までの質問はいずれも質 問 6、質問 7 に対する回答内容と関連があるが、

特に質問 4 と質問 5 の回答については、質問 6 と質問 7 の回答を分析・検討する際に、根拠と なる事実認識の裏付けを提供する役割を果たす ことを期待した。

また、参加者の回答記入は授業中には行って いない。周囲に煩わされず、じっくり考えて回 答してもらいたいと考えたからである。授業で はアンケート用紙を配布して実施者が主旨を説 明し、1 週間後の授業時に回答用紙のみ提出し てもらった。なおデータ 1、データ 2 はいずれも、

模擬授業を中心とする半期の授業全体の省察を 目的として課した授業課題であり、履修生に省 察の機会を提供することを第 1 の目的としてい る。授業実施者として得たデータを研究するこ とで、履修生の模擬授業からの学びと省察の内 容を読み取り、さらに実施者が今後模擬授業を 実施する際の授業の改善に役立てることを目指 したものである。

3.4 データの分析方法

本研究では量的質的な混合研究法を採用し た。データ 1 については集計結果を一覧表の形

で示した(補遺参照)。データ 2 に対しては、テー マ分析法を用いて分析した。具体的には質問中 のキーワードに加え、文章テキストの記述を何 度も読んで、浮かび上がってくるテーマをまず 探した。次に各テーマ別に、文章テキストに含 まれる似通ったテーマを見つけ出すコーディン グの方法を用いて、記述を分類しながらサブ テーマを探した。同じサブテーマについて回答 の傾向と要点をつかむために再度コーディング 法で分析し、共通すると思われる項目にコード 番号をつけて分類した。なお、記述者の特定化 をさける為、また多くの記述がある場合は全て を掲載せず、典型的な記述を代表例とした。そ のため、分析者の責任において記述文の一部を 割愛し、また要点をしぼる形でまとめたものも ある。

4 研究結果

データ 1, データ 2 の順序で、分析した研究 結果について報告したい。

4.1 データ 1 について

データ 1 は模擬授業実施前の状況、および実 施後の振り返りに関連する 5 つの質問項目に対 する回答である。詳しい数値は、表1(補遺参 照)に示した。ここでは結果と数値に表れた傾 向について報告する。

質問 1 では模擬授業前の回答者の状況を把握 することを目的として、今回の模擬授業実施以 前に経験した英語の模擬授業の回数を尋ねた。

結果は平均が 1.1 となり、履修生の多くは今回 以前に1度以上は模擬授業を経験したことがあ

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ることが分かった。だが一方で 4 人に 1 人の履 修生は、今回初めて模擬授業を行ったことが結 果に示された。データ 2 の結果を分析・考察す る上で考慮すべき事項である。自分の模擬授業 の録画映像が振り返りの際の参考になったかど うか尋ねた次の質問 2 では、平均値は 4.4、ま た回答者全員が参考になったと答えており、授 業振り返りにおける授業映像の有用性を物語る ものであった。質問 3 では、口頭やリフレク ションシートを用いて示された他の履修生から のコメントがどの程度参考になったかを尋ねた が、平均は 4.4 とやはり高く、91%の回答者が 他の学生のコメントが参考になったと答えてい た。ピア・フィードバックを通した学び合いも また、模擬授業の振り返りに有効であることが 読み取れた。質問 4 は「授業で自分が模擬授業 を行ったことは、自分の授業力を向上させる上 で役に立ったと思いますか」、質問 5 は「模擬 授業全体(前後の授業を含む)を通して、英語 の授業について新たに学んだ、あるいは気付い たことがあったと思いますか。」という内容で ある。いずれも模擬授業からの学びを履修生が どの程度認知しているか、数値で示す目的で設 定した質問であった。前者については、結果が 示す平均は 4.41、履修生の 91% は何らかの点 で授業力の向上を認知していた。また、質問 4 にウ)「どちらとも言えない」と回答した 2 人の 履修生についても、データ 2 の記述回答には、

「時間配分が向上した」「英語使用の重要性がわ かった」といった模擬授業後の向上点や気づき を具体的に記載していたことを付け加えておき たい。後者の質問 5 に対する回答結果では、平 均値は 4.16、しかもエ)、オ) を選んだ回答者は 1

人もいなかった。8 割近い回答者は授業につい て新たな学びがあったと受け止めていることが 読み取れる。では実際、回答者は模擬授業を通 して何に気づき、あるいはどのようなことを学 んだ、と受け止めているのだろうか。データ 1 の結果を踏まえながら、次にデータ 2 の結果に ついて報告したい。

4.2 データ 2 について

データ 2 は、模擬授業についての記述式アン ケートで、2 つの質問に対して回答者に記述式 の回答を求めるものと、任意の自由記述であっ た。質問の内容は、質問 6 が「模擬授業全体(前 後の授業を含む)を通して、英語の授業につい て新たに学んだ、あるいは気付いたことはどの ようなことですか。」、質問 7 は「模擬授業を通 して、自分はどのようなことが向上した、ある いはできるようになったと思いますか。簡単に 記述してください。」である。自由記述も含め て記述された回答を何度も読み、テーマ分析法 を用いて分析した。その結果、質問項目のキー ワードである「学んだこと・気付いたこと」「身 に付いたこと」に、「課題と抱負」を加えた 3 つの大きなテーマが浮かびあがってきた。さら に各テーマ別に、テキストに含まれる似通った テーマを見つけ出すコーディングの方法で分析 した結果、「授業全般に関わること」「授業実践:

特に指導内容や指導方法に関わること」「授業 実践:特に運営や指導技術に関わること」「自 分自身に関わること」「模擬授業経験の意味」「今 後の課題」の 6 つのサブテーマが浮かび上がっ た。さらにサブテーマについて記述した内容を 読み込み、共通要素がある場合にはキーワード

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を内容の項目として示した。

模擬授業からの学びを回答者がどのように捉 えていたか、データ 2 の分析結果を報告したい。

報告は、テーマ、サブテーマ毎に、分析した内 容の傾向や特徴と共に具体的な記述例を示す形 で行う。なお、引用した記述例については、仮 名遣いや文章上の大きな誤り以外は回答者の記 述をそのまま記すことを原則とした。ただし、

同様の記述が多い場合は共通項でまとめ、他の 項目にまたがる記述の場合は途中で切って短く まとめた。

4.2.1 模擬授業を通して学んだこと、気づいた こと

1授業指導全般に関わること

記述からさらに浮かび上がってきたキーワー ドは「生徒目線」「教師の役割と資質」「英語使 用とコミュニケーション」の 3 つであった。

1) 生徒目線の重要性:

半数の回答者が、学び手の側に立つ視点から 気づいたことについて記していた。特に生徒目 線で考えることの重要性や生徒の立場からの分 かり易さに言及するものが目立った。

・ 教師が教えやすいと生徒が分かり易いは異 なることをあらためて学んだ。

・ 模擬授業前や模擬授業準備をしている最中 どうしても教師側の都合のよい方に考えが ちになっていたが、模擬授業後はいかに生 徒の気持ちになって考えることが大事なの かがわかった。

・ 生徒の目線に立つと目から入ってくる情報

は効果的だと感じた。

また回答者は、現実に模擬授業を行ったこと で、生徒視点に立つ授業実践の難しさにも気づ いていた。

・ 生徒目線で授業をすることはとても難し いと感じた。それは決して一方的な説明で はなし得ないと思う。

・ 大学生だから答えられるが中学生だったら 答えられるのか、という質問もあって目線 を中学生まで下げることの大変さがわかっ た。

この点に関連して、楽しさ、興味や関心の喚 起など生徒への動機づけの重要性や必要性を指 摘する記述も複数あった。また 生徒理解の大 切さを記した者もいた。

・ やはり英語の授業は楽しくなければいけな いと強く感じた。楽しさが生徒 1 人 1 人の モチベーションに直結していることをあら ためて学ぶことができた。

・ 英語学習を通して楽しさを教えることが大 事だと思う。

・ 生徒の視点に立ってどの指導法が効果的 か、どんな話をしたら生徒が食いつくか、

どんな説明が分かり易いのかなどを考えな がら授業を作り上げていくことが大事であ るとわかった。

生徒視点の重要性に気づくとともに、教師役 だけでなく生徒役を経験した上で、あらためて 授業を作る難しさを自覚した記述も目立った。

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2) 教師の果たす役割や求められる資質:

英語の授業指導の中で教師がどのような役割 を果たすべきか、その責任の重さに思い至った と記した回答者や、教師の仕事の大変さに気づ いたと記した者もいた。

・ 英語の授業とはいかに文法を正しく伝える か、を教えることができることだと思って いたが、模擬授業を通して教師次第で教え 方は無限に広がることを学んだ。

・ 授業者次第で生徒のコミュニケーション能 力は高めることも低めることも出来ると 知った。

・ 現役の先生方がさりげなく使っていたフ ラッシュカードやイラスト1つ用意するの も意外に大変なんだとわかった。

またそのような実体験を通してあらためて、

英語力や教師に求められている資質について記 した内容も複数あった。

・ 教師として誤った英語を使用しないだけの 正しい英語力を持っていることの必要性を 強く感じた。

・ 生徒が発言しやすい雰囲気を作る、という のは教師の態度だけでなく、発問のレベル や尋ね方も大きく影響することがわかっ た。

・ 緊張しても英語を使って明確に指示を出せ るようになる必要があると分かった。

・ どの段階でも指導技術をつかうためのクリ エティブさが求められている。

・ アドリブでその場を盛り上げることができ ることも必要。

・ 生徒役を通して、生徒が予想もしない答を

発した時、教師が何もなかったかのように 進めていくのは難しいと思った。

・ 授業中、教える事に手一杯にならず、常に 生徒と向き合い臨機応変に対応できること が大事。

3) コミュニケーションを意識した教師・生徒 の英語使用:

複数あった記述の中で顕著だったのは、授業 をコミュニケーションの場と捉え、コミュニケ

−ション能力を育成する観点からインターラク ションの重要性や teacher talk を含む教師、そ して生徒の英語使用に関する気づきであった。

とくに最初に引用した記述例には、その意味が 集約されていた。

・ 授業全体がコミュニケーションだと思っ た。

・ 生徒との interaction を通した communicative な授業を行うことの重要性に気づいた。

・ interaction 通して英語を身に付けると記 憶に残ると、模擬授業で生徒役をやって実 感した。

・ 生徒とどうコミュニケーションをとるか は、今までなかった観点だった。

・ 従来の授業よりも生徒対先生、生徒同士の コミュニケーションを重視した授業にする こと必要。

・ 英語を使ってぺらぺら喋るのでなく、生徒 のためにたくさん準備して生徒とコミュニ ケーションをとる教師が生徒の心を開き、

楽しい分かり易い授業が行えると思った。

英語の言葉としての役割に焦点を当てた気づ

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きを記した者も複数いた。そして生徒の英語使 用を促す機会を与え生徒の英語力を高めるため にも、やはり教師の役割が問われる、と結論づ けていた回答も複数あった。

・ 英語は生きた言語であり、形式を覚えるよ り使うことに重点をおくべきである。

・ コミュニケーションの為の英語が大切だと 思った。

・ 授業中に教師が英語をできるだけ使うよ うにすることの重要性。これまでより speaking や listening の力も鍛えることが できるようになることに気がついた。

・ 生徒に英語を実際に使わせながら考える授 業方法は、より生徒の英語運用を促すと感 じた。

・ 身に付けた知識を生徒が実用できるような 授業をすることが重要で、生徒が英語を話 す時間を多く取る必要性を感じた。

・ 教師次第でコミュニケーション力は高めら れると思う。

・ 教師が沢山準備して生徒の心を開きコミュ ニケーションを取れることが大切。

2「授業実践:指導内容や方法に関すること」

履修生が行った模擬授業は14~16分程度で、

授業全体の大きな流れはある程度決められてい た。今回の模擬授業では特に、文脈や場面を活 かした口頭導入の指導を最も重視した。予想さ れることではあったが、多くの履修生にとって、

それは未経験で新しい指導方法であったことが 結果から読み取れる。そのためか回答者の記述 数は非常に多かった。分析から浮かび上がった サブテーマの中で記述の内容に共通した項目毎

に、履修生の学びや気づきの内容と典型的な記 述例を紹介する。

1) 授業の流れや組み立てへの意識:

本模擬授業では、期待されている達成目標が 模擬授業以前の授業で示され、それを実現する ための授業の大きな構成は、ある程度まで決め られていた。回答者の記述は、学習指導計画を 作成する際に、必要な「流れ」や「組み立て」

をどのような視点で考えるべきかについて、あ らためて自分達で意識しながら模擬授業に取り 組んでいたことを示していた。

・ 最初から最後まで一貫した流れがあると楽 しめて分かり易い授業になると思った。

・ 今まで授業を受ける側の気持ちしか分から なかったが、模擬授業をやってみて授業の 中の1つ1つの流れに意味があるというこ とがわかるようになった

・ 授業の組み立てに目を向けるようになっ た。

・ 英語教員には、新出文法項目を使いやすい 授業構成が求められると思った。

2) 音声や文脈・場面を重視する口頭導入やコ ミュニケーション活動の指導:

模擬授業ではたとえ同じ文法項目を扱ってい ても、導入から展開までの授業指導の手法やそ の内容は履修生によって異なる。回答者の 8 割 以上は、特に授業指導の内容に関して模擬授業 を通して気づいた点やあらたに学んだことにつ いて記していた。記された内容に応じてさらに 大きく 2 つの項目に分け、以下代表的な記述例 のみ紹介したい。

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●音声重視や適切な指導のあり方:

・ 文字を見せないところから始まる授業はあ まりないことなので驚いたが、音声から意 味を推測していく方が印象深く頭に残りや すいと実感した。

・ 生徒の視点からどの指導法が適当か考える 必要がある。

・ 以前は分かり易い説明をすることが重要だ と感じていたが、今はいかに生徒が文法事 項に気づけるようにできるか、導入部分の 大切さに気づくことができた。

・ これまで全く知らなかった導入方法につい ての新しい知識や考え方を学んだ。

・ 演繹的理解より帰納的理解の方が生徒の記 憶に残る。

・ コミュニケーション活動は説明に時間がか からないシンプルな活動の方が生徒に分か り易いと気づいた。

・ 自分では思いもつけないような発想による 導入法やコミュニケーション活動を見るこ とができてとても参考になった。同じ文法 項目でも色々な導入法が可能であること。

● 文脈や日常と関連がある場面の重要性:

・ 特に導入の際は、生徒の興味をひく理解し やすい文脈を考える必要があると思った。

・ 自分が中学時代に学んできたのとは全く違 う形で意味と場面、機能を結びつける方法 があると知った。

・ やはり導入は生徒になじみのある内容だと 引き込むことができると思った。

・ target となる文法が使用される自然な場面 を設定することが重要と分かった。

・ 場面や文脈があると使用例から気づきを引 き出すことができる。さらにそれを繰り返 すと記憶に残るようにできると分かった。

・ 教える文法が使用される自然な場面を設定 することが重要と分かった。

・ 生徒に身近な話題や日常生活と関連する活 動を設定するのは重要だが、難しい。

・ 英文法を教えるのではなく、英語という言 語を教える授業。前者は塾でもできるが後 者は学校ならではの教え方があると思うか ら、OI でストーリー性を持たせたり、会 話の中で気づかせたりがとても大切だと 思った。

3「授業実践:授業運営、指導導技術に関すること」

授業の運営や指導に必要な細かい技術につい ては、ある程度まで練習での習熟が可能である が、やはり実際に教師役、生徒役を両方経験で きる模擬授業であるからこそ気が付くきっかけ となることが多い。典型的な記述例を項目毎に 紹介する。細かい点にまでよく気がついている ことが、回答者の記述から読み取れた。

1) 指名方法:

・ 生徒を指名する時にもうまく聞かないとほ しい答えもかえってこないと言うことを痛 感した。

・ 生徒の指名の仕方ひとつで、生徒の “ 当事 者意識 ” は大きく違ってくると感じた。

2) 板書 , 掲示資料などの活用:

・ 黒板の書き方、特に見やすさを意識する必 要があると感じた。

・ ジェスチャーや図を使うことが大切だとい うことを学んだ。生徒の立場に立って目か

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ら入ってくる構成が効果的だと感じた。

・ 板書の際の絵やカードの使用や文字の色分 けや大小の使い分けなど、単純だが小さい 工夫が、生徒の授業への集中度合いや理解 度を高めることになると学んだ。

3) 生徒の視線への意識:

・ 授業をやるとどのように生徒が注目するの かがわかり、その視線は実際にやらないと わからないことだと感じた。

4) ワークシート:

・ 実際に生徒として模擬授業を受けてみると ワークシートの内容ややりやすさが気に なった。

4.2.2 模擬授業を通して身に付いたこと、向上 したこと

記述内容を検討した結果、そこから共通に浮 かび上がってきたサブテーマ、またその中で記 述に共通する内容として浮かび上がってきた項 目は、大半が前述した 4.2.1 「模擬授業を通し て学んだこと、気づいたこと」 と重なっていた。

だが、模擬授業を通して「身に付けた」あるい は「向上した」点を記した回答数は、模擬授業 を通して 「学んだ」 あるいは 「気づいた」 こと の回答数より明らかに少なかった。全体的な特 徴としては、多くの履修生が言及していた生徒 の立場に立つ指導と、模擬授業の焦点である指 導内容に関する記述がここでも多かった。先程 と同様に 1 ~ 4 の各テーマについて、記述内容 共通のサブテーマ、さらにキーワードを項目と して示しながら、内容の要点と傾向、典型的な 記述例を紹介したい。

1授業指導全般に関わること

気づきで多くの履修生が言及していた生徒の 立場に立つ指導と、今回の模擬授業の中心とな る指導法に関する記述が多かった。

1) 生徒目線に立つ授業や指導

模擬授業を通して、生徒目線という視点が加 わったことが授業指導や実践にどのような形で 表れているか、を伝える記述が多かった。

・ 生徒目線で授業を考えられるようになっ た。

・ 生徒目線でわかりやすさを意識した説明を 考えられるようになった。

・ 生徒目線で Oral introduction や . コミュニ ケーション活動の構想を練れるようになっ た。

・ 今までは塾で教えていて個人への指導が中 心だったので考えたことがなかったが、模 擬授業を通してどんな生徒にも易しい進め 方や板書法などを考えられるようになっ た。

・ 生徒の立場に立つのは口で言うよりむずか しいが、お陰で掲示の大きさ色分けも含め 説明方法を工夫できるようになった。

2) コミュニケーションを意識した教師・生徒 の英語使用

数は少ないが他の学生の模擬授業での生徒役 や自分の模擬授業の中で実際に生徒とのやりと りを行うことを通して、身に付けたスキルにつ いて記すことができた履修生もいた。

・ 生徒の発言を引き出すスキルが身に付い た。

・ 生徒への伝え方が向上したのではないかと

(12)

思う。

2 授業実践:指導内容・指導法に関すること 授業の組み立てと、今回の模擬授業で重視し た指導の考え方に関する記述が多かった。

1) 授業の流れや組み立て

授業計画を何度も練り直し、また模擬授業本 番に向けた練習をする中で、あらたな視点や考 え方を徐々に身に付けていったことが伝わる記 述が多かった。

・ 模擬授業後は、必然性があるシチュエー シ ョ ン 設 定 が あ る 導 入 か ら practice、

activity という流れが自分の中で確立され た。

・ 時間配分を上手にできるようになる。

・ 今まで授業を受ける側の気持ちしか分から なかったが、模擬授業をやってみて授業の 中の1つ1つの流れに意味があるというこ とがわかるようになった。

・ 目的を持って授業をし、授業の組み立てに 目を向けられるようになった。

・ 自然な流れを意識した授業作り。

2) 指導内容:音声や文脈・場面重視の口頭導 入~コミュニケーション活動迄の指導 模擬授業で初めて英語による口頭導入をやっ た履修生の中にも、やったことで自信を付け始 めていることを伝える記述が複数あった。

・ 自然な場面を想定した導入を作ることがで きるようになった。

・ 文法項目からその必然性があるシチュエー ションを想像できるようになった。

・ 生徒がどうしたら理解してくれるか考えて 口頭導入やコミュニケーション活動の構想

を練られるようになった。

・ 楽しめる授業を作れるアイデアを得た。

・ 教えている塾ではあまり英語を使ってこな かったが、積極的に英語を使う授業を考え られるようになった。

3 授業実践:授業運営や指導技術に関すること 特に指導技術に関わる点では、板書や掲示に 関する内容に関する記述が多く、自分の模擬授 業よりも他の学生の模擬授業から学ぶ記述が多 かった。記述数は多いが内容が共通しているの で代表的記述例とその要点を紹介したい。

1) 板書および掲示資料の活用:

・ 生徒役をやることで板書の構成を考える力 が向上した。

・ わかりやすい板書 / 板書の構成を考える力 が向上した。

・ 自分ができていないこと、特に板書の方法 が課題と感じていたが、他の学生の模擬授 業から改善する方法もいくつか見つけるこ とができた。

・ 生徒の立場に立って考えたお陰で、掲示の 大きさ色分けも含め説明方法を工夫できる ようになった。

・ 図や絵の使い方を他の模擬授業から学べ た。

・ イラストや絵などビジュアルの活用ができ るようになった。

2) ノンバーバルな手法の効果:

・ 言語以外の技術を駆使した指導ができる ようになった。

・ 掲示資料を利用した説明やボディーラン ゲージ(身振り・手振り・指さしなど)を

(13)

多く利用した表現方法を意識できた。

3) 言語活動の進め方やスキルの上達:

・ まず全体から個人に繰り返させる、さらに 生徒同士で、というような drill のやり方 を身に付けた。

・ 生徒から発言や答を引き出すスキルを身に 付けた。

4) 適切な話し方や発声ほか:

・ 声の強弱やトーンを変えることで抑揚のあ る授業を作ることができるようになった。

4.2.3 模擬授業全体を通した気づきと学びと今 後の課題

今回の記述回答から模擬授業全般を通した気 づきとして浮かび上がってきた 3 つのサブテー マについて、それぞれその分析結果と内容を最 後に報告したい。具体的には、1 自分自身に ついて、2模擬授業経験の意味、3今後の課題 や抱負、がサブテーマとなった。

1自分自身について

模擬授業のために周到な準備をし、何度練習 してもいざ教壇に立つと予定外のことが起こ る。生徒から期待通りの反応がかえってこない、

授業が計画通りに進まないなど、難しさに気が つく。回答者の記述には、教壇に立って初めて 自覚した内容が多かった。最も多い記述は、自 分に不足しているや力不足に関する自覚であっ た。また理想と現実の大きな gap や、模擬授 業を実際にやってから感じた内容が目立った。

さらにその自覚から改善に向けた今後の課題に 思い至り、それを記述した者も多く、注目でき た。内容がかなり似通っていることが多かった

ので、ここでは典型的な記述例だけを紹介する。

1) 自分自身と力不足の自覚:

・ 実際に教壇に立ってみると、自分が準備し た段取りも簡単にはできないことがわかっ た。

・ まず自分の知識がまだまだ足りないと思う ので英語の細かい所まで学び続けなければ ならない。

・ そもそもの英語力が大きく欠落している。

自分自身の英語力を向上させないことには 何も始まらない。

・ 英語で言い換える力をもっとつけたい。

・ 生徒と近い距離感で授業を行えるコミュニ ケーション術と全般的な英語力が必要。

2) 理想と現実の gap:

・ いかに自分の理想が高かったかを自覚し た。

・ イメージしていた授業と実際に出来た授業 の差を実感した。

3) 不安・心配:

・ 私立しか知らないので心配である。もっと 現状を知らないと。

4) 自分の信念やビリーフ:

記述の多くは、自分の抱いてきたイメージや、

これまであまり気づいてなかった英語学習に関 する自分の考えや信念、また過去の英語学習体 験に基づく英語指導へのイメージとの違いに言 及していた。さらに、戸惑いながらも新しい方 法を受け入れようとする姿勢が伝わる記述も目 立った。

・ 自分が学んだ授業とは異なるやり方を学ん だ。

・ 自分の中学時代が自分のベースだったが、

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模擬授業で必然性のある場面設定流れがわ かる。

・ 分かり易くするには日本語を使用したほう がいいと思っていたが実際に生徒に英語を 使用させる意義に気づいた。

・ 以前は分かり易い説明重要と思っていたが 実際は文法項目の必要性をいかに生徒に気 づかせるかが重要。

・ 固定観念を捨てることが重要であると思っ た。

2模擬授業経験の意味

模擬授業前の 4 回分の授業も含めて、模擬授 業からの学びをあらためて振り返って、気付い たことや感じたことが記されていた。模擬授業 の意義そのものを伝える記述もあり、各自の手 応えを伝える内容が目立った。

・ やはり大事なのは生徒の立場に立って考え ることだと思う。自分が授業をしてみてよ かれと思ってやったことでも学生からはよ くないという意見をもらったり全く気がつ かなかったことを指摘されたりした所はそ ういう目線があるんだと思って改善すべき だと思う。

・ 自分ができていないことを見つめ直すきっ かけとなった。

・ 実践したからこそ分かったこと多い。

・ やってみて分かる難しさだった。

・ イメージしていた授業と実際に出来た授業 の差を実感、先生と生徒間のやりとりや言 葉で表せない距離感などやらないと分から ないことを学ぶ。

3今後の課題と抱負

内容に共通していた項目を整理した結果、教 育実習に向けた記述を含む 6 つの項目が浮かび 上がってきた。模擬授業での学びや気づきを記 した後のせいか、目的や理由を示した上で、授 業力の向上に向けた自分自身の課題や教師とし ての姿勢、さらには今後の抱負への言及が顕著 だった。最後の教育実習に関する項目では、実 習に向けた履修生の前向きな姿勢も読み取れ る。6 つの項目それぞれの典型的な記述例だけ を紹介し、結果報告としたい。

1) 人間的成長:

・ 自分の可能性を広げるために、英語教育以 外にも興味をもちたい。

・ 教師として、あるいは 1 人の人間として英 語を通して何かおもしろい経験を積むとい うことも非常に大切であると思っている。

2) 英語や英語圏に関する知識や情報の増加:

・ 日々様々なことにアンテナを張ることが、

生徒の興味を持つ話題や手段を用いること につながると思う。

・ 英語の知識を増やし異文化交流すること で、自分の引き出しを増やしたい。そうす ることで英語やコミュニケーションの魅力 を身をもって伝えることができると思う。

・ 実際に生徒に教える際のために彼らに身近 な事の調査や背景知識の蓄積が必要。

3) 生徒の理解と興味・関心の喚起:

・ 生徒の心をつかむにはどんな掲示資料を使 えばいいかを考える。

・ 生徒のレベルに応じた指導を行うためにも 生徒について把握したい。

4) 自分の英語運用力の向上:

(15)

・ 特に speaking の力と語彙力を向上させる ために勉学に励みたい。

5) 授業実践力の向上:

・ 前は生徒が楽しめればだけだったが、今は 生徒に英語力をつける授業を行いたいと思 うようになった。そのためのストックを増 やしたい。

・ 実際に説明時や指導で使えるアイデアや導 入のバリエーションを増やすために、沢山 の授業を見たい。

6) 実習に向けて:

・ 自分の授業の強みと弱みを知ることができ て、教育実習までにどこを改善しどこは今 のままでいいのか明確になった。

・ 模擬授業を通して学んだ技術やこれからに 活かせる改善点を考慮してもっとよい授業 を構成し、実習では、模擬授業よりも生徒 が楽しく学べる授業を作りたい!

・ 生徒のニーズに合わせた授業はどういうも のか知るため他の教師の授業を考察し続け たい。

・ 全ての役割を行ったお陰で教師がすべきこ とが明確になった。何度も事前準備をして 最高の授業をできる力量が教師には必要だ と思う。経験知を高め理想の教師になれる よう努力したい。

5 考察と示唆

本研究の目的は、模擬授業とその省察を通し た履修生の学びを明らかにすると共に、それを 可能にした要因や方法を検討することであっ

た。紙数の都合上掲載できなかったデータ結果 もあるが、報告した質的研究の結果に基づいて、

本章では、特に履修生の授業指導に関する洞察 の深まりと教師に求められる複眼的な思考に焦 点を当てる。そして、言語教師の認知(笹島 , 2014)の観点から、彼らの学びと成長のプロセ ス、さらにそれを可能にした要因や背景につい て検討し、考察を加えたい。

データ 1 が示す通り、履修生全員が模擬授業 からの学びを肯定的にとらえていたことは、ま ず強調すべき点であろう。データ 2 の分析結果 は明らかに、僅か 16 分間前後の自分の模擬授 業については勿論、他の履修生の模擬授業から も多くの学びがあったことを示しており、この 高い数値(M=4.41)を裏付けるはずだ。また これらの学びに、録画映像や履修生間のフィー ドバックが大きく寄与していることをデータ 1 の結果は示す。ここからは、数値に裏付けられ たデータ 2 の分析結果に基づいて、特筆すべき 4 つの観点から模擬授業を通しての気づきや学 びについて考察し、それを可能にする要因を探 る。

1学び手の視点に立つ授業作りへの視座 学習者目線を重視することへの言及は予想以 上に多かった。彼らが大学生として今、学ぶ側 で日々の授業を経験していることを考えれば、

これは確かにさほど不思議なことではない。模 擬授業からの学び、という点でより重要なのは、

実際に授業をする上でこれが何を意味するの か、学習者目線を回答者がどう捉えているかで あろう。今回の分析結果からは、興味などの動 機づけの喚起(Dornyei & Ushioda, 2011)から、

(16)

双方向のコミュニケーションの進め方、さらに 生徒目線の指導法や情報の伝え方まで、学び手 の視点に立つ分かり易い授業を具体的に追求し ようとする履修生の姿勢と学びの深化を読み取 ることができた。だが一方で、複数の履修生が 挙げた授業の「楽しさ」については、印象に留 まる記述が目立ち、具体的な根拠や指導方法を 示し切れていない。「楽しさ」の本質をより掘 り下げて考える視点が必要であると言えよう。

2 授業における教師役割や求められている資 質への気づき

教師役割の気づきは前述した学習者視点と表 裏一体をなす。教師次第で「生徒のコミュニケー ション能力は高めることも低めることも出来」、

「教え方は無限に広がる」、という回答者の認識 はまた、教師の仕事の大変さへの気づきにもつ ながっていた。さらに、教師には英語力のみな らず短期間では身に付かない様々な資質が求め られている(江原 , 2015、神保他 , 2011、木原 , 2012、石田他 , 2013)ことへの認知、さらにそ れを言語化できたことがやはり重要である。予 期せぬ生徒の反応に対応できる創造性や臨機応 変さといった様々な資質についての指摘もあ り、口頭のやりとりが多い英語授業に特に必要 な、授業中のリフレクション(木原 , 2012) へ の気づきを反映しているとも言える。だが同時 に、実際の授業指導場面において複眼的思考を 実践することがいかに難しいか、履修生があら ためて自覚したことも明らかになった。言うま でもなく、教師に必要な複眼的視点は、机上で 理論を学ぶだけで身に付けることはできない。

今回の結果は、模擬授業期間中に担当者が感じ

ていた彼らの成長−学び合いと協働の中で自他 の模擬授業を体験し、様々な視点から冷静に振 り返りを行う過程の中で、授業を客観的に捉え る視点を履修生が徐々に身に付けていったこと

−を裏付けるものであった。

3 授業指導についての学び、および信念ビリー フとの対峙

今回の模擬授業では、導入から産出活動まで の指導を中心としたが、中でも使用場面を意識 しながら英語を用いて行う文法項目の口頭導入 が、重要な到達目標であった。「英語で」行う 授業については、近年英語科教育法を学ぶ学生 の間でも一定の認知はあるが、英語で授業をす ることが即コミュニケーション能力の育成につ ながるわけではないのは自明である。授業の中 でのコミュニケーションをどう捉え、どのよう な言語活動を通してその力を育んでいくことが 求められているのか、この模擬授業には、生徒 の意味ある英語使用を促す観点から「英語で」

授業の意図を捉え直す視点を、模擬授業を通し て学ばせたいという授業指導者(=筆者)の意 図があった。

しかし本番の模擬授業に向けて各自が授業を 作り上げる過程で、履修生の中には、自分がこ れまで漠然と、あるいは明瞭に抱いている授業 指導観を意識せざるを得なかった者がいたこと を結果は伝えている。模擬授業が到達目標とす る文法項目の口頭導入を中心とする授業指導 は、履修生が理想とする、あるいは過去の学習 体験から想起する英語授業の指導法とは、必ず しも一致していない。それどころか前章でも一 部紹介したが、記述に散見した「これまでと異

(17)

なる」「経験したことがない」「新しい」等の言 葉は、口頭導入自体の経験が全く無い履修生も いたことを示し、事実その通りの記述もあった。

つまり今回の模擬授業で、過去の学習経験に深 く根付く自分の「信念(長峰 , 2011)」や「ビリー フ(Nagamine, 2006、稲葉 , 2014)」と対峙し、

あるいは新たな指導への挑戦に迫られた履修生 も少なからずいたことが分かる。

このような体験とも向き合いながら取り組ん だ実際の模擬授業からの指導に関する学びと は、あらためてどのようなものであっただろう か。

模擬授業では、扱う文法項目は同じでも、導 入から展開に至るまで、その内容や指導手順は 履修生によって異なる。自他の模擬授業を体験 し、さらに省察することで、履修生は、自身の 信念やビリーフとも対峙しながら、授業で求め られていた場面のある口頭導入を工夫し、双方 向性のある教師の英語使用についてより実践 的な学びを深めようとしていたと言える。ま た履修生の気づきと学びは、一般的に英語の 授業指導に必要とされる多岐に渡る項目(横 溝 , 2009、神保他 , 2011、JACET 教育問題研 究会 ,2014、石田他 , 2013、岡田他 , 2015)をか なり網羅していたことがわかる。そしてこれを 可能にした背景には、模擬授業前の計 2 回、授 業時間を使った授業指導や 2 段階に分けての指 導案作成ステップ、さらに学び合いの中での細 案の練り直しや本番に向けた熱心な練習があっ た。たとえ模擬授業経験の回数が少ない履修生 であっても、そのような試行錯誤を経て自ら苦 労して模擬授業を作り上げる過程を辿り、また 自他の模擬授業についての振り返りを通して学

びと理解を深めたことこそが、授業指導につい ての新たな学びと成長、即ちリフレクティブ・

プラクティスを促したと言ってよいであろう。

さらに 3 回に分けて異なる形で時間を置きなが ら行った振り返りも又(直後のリフレクション、

2 週間後の「振り返りシート」、全模擬授業終 了後の「アンケート課題」)模擬授業をより客 観的かつ批判的に視る目を養い、深い省察にも 貢献したことは、9 割を越える履修生が「模擬 授業を行ったことが自分の授業力を向上させる 上で役に立った」と結論を出したデータ 1 の結 果やデータ 2 の記述から明らかであろう。

4 未来志向の学びと省察

最後に、各履修生の学びと今後の成長を示唆 していると思われる点に言及したい。模擬授業 に対する履修生それぞれの認知は、只何がうま くいった、いかない、という次元に留まらず、

模擬授業を通した自分の教師としてのあり方と 向き合い多角的な視点から内省し、次の実践に つながる課題を見出そうとする、まさにリフレ クティブ・プラクティスの姿勢に通じるもので あった。

結果が示すように、履修生の学びは、英語力 増強や指導法に関する知識の増加、スキルの向 上などの授業指導に直接関わる項目への視点に 加え、授業に臨む姿勢や人間的な成長など、ま ず今の自分に不足している視点や力を直視し、

今後必要となる自らの課題と共に、その為に何 をすべきかまで視野にいれている。これはまさ に「教師の成長」(玉井 , 2009b、横溝 , 2009、

長峰 , 2011、神保他 , 2011, 石田他 , 2013)に不 可欠な自律的教師をめざす視点として注目に値

(18)

する。限られた条件下でも、彼らは自他の模擬 授業から学び、リフレクション・コメントや教 員コメントも参考にしながら模擬授業について の段階的な振り返りを重ねた。この自律的な内 省(笹島 , 2014, 2016)の姿勢を育てる過程こ そが、自らの力不足や現在の課題を自覚させ、

今後の課題に繋げる視点を育てる大きな要因と なっていたと言えるだろう。換言すれば、模擬 授業は履修生各自が目指す授業を近い将来実現 するための、貴重な省察の機会を提供した。模 擬授業を通して彼らは未来の教師として「成長 プロセス」(長峰 , 2011)の大きな第一歩を踏 み出したとも言えるだろう。

しかしながら、授業実践の機会の不足を心配 する記述に表れていた通り、履修生の授業経験 は圧倒的に少ない。彼らの認知には経験からく る裏付けが不足していることも又事実である。

言葉で表現できることがそのまま授業実践に活 かせるわけではない。今回の学びをより実質的 なものにしていくためには、自らの課題に対す る真摯な取り組みと共に、それを活かす豊かな 授業実施経験が今後必要なことは明らかであ る。

本研究結果は、協働と学び合いの中で行われ る自他の模擬授業体験とリフレクティブ・プラ クティスの視点に立つ省察が、教職課程に学ぶ 履修生に重層的な深い学びと未来志向の自律的 成長プロセスを促す貴重な契機となり得ること を示唆した、と言ってよいだろう。

6 今後の課題

本研究によって、教職課程で学ぶ履修生が自

分や同じ立場にある履修生との学び合いの中で 自他の模擬授業を体験し、さらにリフレクティ ブ・プラクティスの視点に立つ省察を段階的に 行うことが、教師の授業実践や指導についての 重層的な深い学びを引き出し、自律的成長プロ セスを促す貴重な契機になり得ることが、一定 程度示されたと言える。だが、本研究に参加し た履修生の数は少なく、対象となった 2 つの データの情報量も限られている。研究によって 模擬授業に対する履修生の学びの全容とその傾 向をある程度まで捉えることはできたが、外国 語学習への影響が大きいとされる過去の英語学 習経験や学習者ビリーフ(稲葉 , 2014)やそれ ぞれの背景など、履修生 1 人 1 人の違いを本研 究で扱うことはできなかった。これらについて は今後の課題として別の機会を設けて論じた い。さらに今後は、過去の模擬授業経験回数や 録画映像視聴回数などとの相関に加えて、自律 的な省察を促すリフレクティブ・プラクティス やアクションリサーチ(長﨑 , 2009)の研究、

さらに J-POSTL(2011)をはじめとする省察 に有効なツールを探り、模擬授業からの学びに ついて、詳細かつ客観的裏付けのある研究をし ていく必要があるだろう。

模擬授業を通した学びを探った本研究は、し かしながら、単に研究に留まらず、英語教師を めざした自分の在り方と向き合って今後の課題 を考える、省察する履修生の姿を映し出した。

事前の学習から最後の振り返りまで模擬授業全 体の過程を辿る中で紡ぎ出された数々の履修生 の言葉は、模擬授業を通した学びの本質ととも に、自律した教師としての彼らの成長の兆しを も示している、とも言えるだろう。豊かな学び

(19)

と成長につながる模擬授業をより充実せるため にも、その機会を保障する環境と諸条件が今後 さらに整えられていくことを、教職を担当する 1 人の教師として切に願うばかりである。

本研究は授業指導者である筆者にとってもま た、自らの教職課程の授業を省察するたいへん 貴重な機会であった。履修生の記述の言葉をそ のまま最後に付記したい。「教師という仕事の 魅力をあらためて感じることができた」。

参考文献

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−協働的課題研究型アクション・リサーチ のすすめ−」吉田達弘他編『リフレクティ ブな英語教育をめざして』75-118, ひつじ 書房

質問 1 「あなたは今回のMT以前に、英語の模擬授 業を行った経験がありますか」

質問 2 「模擬授業の録画映像は、自分が模擬授業を

ふり返る上で参考になったと思いますか」

質問 3 「他の学生からのコメントは、自分の模擬授

業をふり返る上で参考になったと思います か」

質問 4 「授業で自分が模擬授業を行ったことは、自 分の授業力を向上させる上で役に立ったと 思いますか」

質問 5 「模擬授業全体を通して、授業について新た

に学んだ、あるいは気付いたことがあった と思いますか」

*質問25への回答の選択枝: ) 大いに思う ) 思う ) どちらとも言えない ) あまり思わない ) 全く思わない

*質問1への回答の選択枝: ) 4回以上ある ) 3回ある ) 2回ある ) 1回ある ) 今回のMTが初め

ア) イ) ウ) エ) オ) 合計 平均

質         問

(21)

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