− 91 − 教職研究 第 35号(臨時増刊)
立教大学 教職課程 2021 年 1 月
COVID-19 下での教員養成
-本学教職課程の取り組み-
立教大学 教職課程
1. はじめに
それは,2020 年 1 月 7 日の毎日新聞の小さ な記事で中国・武漢で原因不明の肺炎の流行 が報じられたことから始まった。1 月 14 日に は WHO が新型コロナウイルス感染症(国際正 式名称:COVID-19)を確認し,国内新聞各紙 の 1 面で報じられるようになった。以降,現在 まで新型コロナウイルス感染症(以下,COV
ID-19)に関する報道が日々,紙面を飾り,テ レビをとおして報じられることが続いている。
周知のように COVID-19 の感染経路は,接触 と飛沫によるものとされている。そのため,密 接・集密・密閉のいわゆる「3密」を避けるこ とが日常生活のなかで求められ,そのひとつと して 2020 年 5 月 4 日の安倍晋三首相(当時)
の記者会見で示された専門家会議による「感染 拡大を予防する新しい生活様式」のなかでも「3 密」回避は触れられている。確かに接触や飛沫 による感染症対策の基本である人と人との接触 を断つことは,感染を予防するためには最も有 効である。しかし,日本の学校教育システムは,
教室という場所で集団一斉授業をおこなうこと で成立している。教員養成では,教職課程履修 最終学年の春学期に中学校・高等学校において 教育実習をおこなうことによって教職課程の学 びを実践し,そして教職に就く際の課題を発見 することが重要な授業となっている。
COVID-19 のパンデミックの中,2020 年 2
月以降,社会情勢に基づき大学としての方針の もと教職課程として COVID-19 下での教員養 成をどのように考え,実行していけば良いのか,
情報を集めながら協議を重ねてきた。まだ CO VID-19 の終息には目処が立たない状況ではあ るが,ここで小括しておくことが本稿の目的で ある。
2.COVID-19 に関する対応の経緯
COVID-19 に関する報道は,1 月 16 日に国 内で武漢に渡航した中国籍男性の感染確認以 降,連日新聞紙面およびニュース番組で取り 上げられるようになる。本学でも 1 月 30 日の WHO による「国際的な緊急事態」の宣言の翌 日,海外渡航留意の一斉連絡メールが配信され た。2 月 1 日,政府は COVID-19 を指定感染 症と指定する。そして,2 月 3 日には,乗客の 感染が確認されたクルーズ船ダイヤモンド・プ リンセス号が横浜港に入港した。国内での感染 者が徐々にみられ,また感染による死亡者が確 認(2 月 13 日)されるなか,2 月 17 日に政府は,
「37.5 度が 4 日間以上」等,医療機関受診目安 を示した。
本学では,2月18日に大学WEBサイトのトッ プページ「大学からの重要なお知らせ」に学生・
教職員向けの注意事項を掲載した。同日の 2 月 18 日,文科省高等教育局私学部私学行政課企 画係から大学へ連絡「学校における新型コロナ
− 92 − 教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
ウイルスに関連した感染症対策について」が配 信され,発熱等の学生は自宅静養するなど感染 対策への留意が示された。また,2 月 20 日に は,東京都社会福祉協議会から介護等体験に関 して,「各種感染症流行に伴う感染予防の励行 について(協力依頼)」が配信された。この時 点では,介護体験予定の学生についての健康管 理,手洗い ・ マスク着用などの感染症予防の励 行など介護体験実施を前提として感染予防の依 頼連絡であった。
2 月 21 日には,文科省高等教育局私学部私 学行政課企画係からの厚労省「厚生労働省「イ ベント開催に関する国民の皆様へのメッセー ジ」の周知について(2020.2.21 発出)」に基づ き,大学より「学内イベント(講演会,研究会 等)の延期 ・ 中止検討」依頼が全学に対して配 信された。これにより 2 月末~ 3 月に予定され ていた学内での研究活動等は大きく制限を受け ることになり,教職課程では,定例の立教池袋 中高,立教新座中高および香蘭女学校との「教 科教育法演習2」「特別活動の理論と方法A」
に関わる連絡協議会を中止することとなった。
そして 2 月 26 日,文科省高等教育局私学部私 学行政課企画係からの「学校の卒業式・入学式 等の開催に関する考え方について(令和 2 年 2 月 25 日時点)」および「児童生徒等に新型コロ ナウイルス感染症が発生した場合の対応につい て(第二報)(令和 2 年 2 月 25 日)」が大学よ り学内に配信された。この通知に基づき,本学 では 2020 年度卒業式について「卒業生のみで 予定どおり実施。保護者の来校は控えていただ く。プロセッション参加は学部長のみ,来賓祝 辞はお断りする方針。最終的には 3 月 12 日部
長会で決定する」ということが確認された。
潮目が大きく変わったのは,2 月 27 日に安 倍晋三首相(当時)が公表した全国全ての小学 校中学校高等学校と特別支援学校に対する 3 月 2 日から春休みまでの臨時休校要請であろう。
すなわち翌 2 月 28 日には,文科省事務次官文 書「新型コロナウイルス感染症対策のための小 学校 , 中学校 , 高等学校及び特別支援学校 等に おける一斉臨時休業について(通知)」により,
「小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)、
中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育 学校の前期課程を含む。)、高等学校(中等教育 学校の後期課程を含む。)、特別支援学校及び高 等課程を置く専修学校の設置者におかれては、
本年 3 月 2 日(月)から春季休業の開始日まで の間、学校保健安全法(昭和 33 年法律第 56 号)
第 20 条(同法第 32 条において専修学校に準用 する場合を含む。)に基づく臨時休業を要請」
が通知された。同日,文科省初等中等教育局健 康教育・食育課「新型コロナウイルス感染症対 策のための小学校、中学校、高等学校及び特別 支援学校等における一斉臨時休業に関するQ&
Aの送付について(2 月 28 日時点)」が配信さ れた。言うまでもなく各学校における 3 月は,
1 年度間のまとめの時期であり,特別活動のひ とつである卒業式や終業式など教育活動がおこ なわれる時期でもある。各校の教員や児童生徒 はこの節目の時期をどう迎えるかを十分に検討 する時間すら与えられず,また保護者は休校中 に家庭で子どもの世話をどうするのかを熟慮す る間もないまま全国一斉休校を迎えざるを得な くなった。本学も 2 月 28 日には大学の公示と して「2019 年度卒業式中止」の連絡が全学に
− 93 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
なされ,卒業式中止に基づく対応を検討するこ ととなった。教職課程は,毎年卒業式当日に学 生に教員免許状を授与しているが,急遽郵送に て送付する方針をとることとなった。
3 月に入り,2 日から全国の小中高が一斉休 校に入るに際して,3 月 2 日に文科省高等教育 局私学部私学行政課法規係より「【通知】新型 コロナウイルス感染症防止のための小学校等の 臨時休業に関連した放課後児童クラブ等の活用 による子どもの居場所の確保について(依頼)
(差し替え版)」が配信された。ここでは,小中 学校休校にともない「保護者が労働等により昼 間家庭にいない子どもについて、特に小学校低 学年の子ども等については、留守番が困難な場 合や保護者が休暇を取得することが困難な場合 も想定されることから、放課後児童健全育成事 業(以下「放課後児童クラブ」という。)や放 課後等デイサービス事業は感染の予防に留意し た上で原則として開所していただきたい」との 通知があった。これは,学校は休校とするが,
放課後児童クラブなどは通常どおりの活動をす るという COVID-19 感染予防の観点ではいさ さか矛盾を感じる状況が生じる対応であること はが否めない。大学からも「窓口時間変更と勤 務体制について(2020 年 3 月 3 日~ 3 月 31 日)」
通知が同日に配信され,また学生部からは「新 型コロナウイルス感染症に対する課外活動の活 動方針について(3/2 更新)」が発信,3 月末ま での正課外活動は全て中止,卒業式に関連す る学内外での食事会等の禁止が示された。大 学は授業期間ではないものの,「立教 Learn ing Style(RLS)」の一端をなす学生の正課外での 学びの機会が失われた最初である。そして 3 月
3 日に介護等体験に関して東京都社会教育協議 会から「新型コロナウィルス感染拡大防止のた めの、2019 年度教員免許特例法による社会福 祉施設における介護等体験の実施延期につい て」により 3 月 9 日以降の体験についてはすべ て延期,体験時期については 7 月までに実施完 了となるようなスケジュールを検討するという 通知が送付されてきた。
社会情勢としては,3 月 9 日に専門家会議は
「(1)換気の悪い密閉空間,(2)多くの人が密集,
(3)近距離での会話や発声(密接)」が感染の 要因であることを示し,この「3 条件の重なり を避け」ることを国民に呼びかけた。いわゆる 密閉・密集・密接の「3 密回避」の方針である。
この時期は,次年度の各種年度当初の行事や 授業を検討する時期でもある。小中高校の休校 措置のなか,大学はどうなるのか,また教育実 習は早いところで 4 月下旬から始まる学生もい るなか,どうなるかということが教職課程内で 話題となり始めたとき,3 月 6 日に早稲田大学 が 2020 年度の授業開始日を繰り下げ,4 月 20 日以降とするという報道がされた。本学では,
3 月 19 日に 2020 年度春学期の授業開始日は,
学生の安全と健康を最優先し,キャンパスでの 対面授業の開始については当面の目安として 4 月 30 日とすることが決まった。同時にオンラ イン授業の可能性も含めて授業準備をすること が求められた。そして,オンライン授業の方針 としては次のガイドラインが示された。この段 階で,授業配信システムに Zoom があげられて いないのは,本学と Zoom 社との契約が 4 月 30 日まで待たねばならなかったからである。
①オンライン講義形式(一方向):Hangouts
− 94 − 教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
Meet による一方向のリアルタイム動画配信 : 教材の提示は配信画面上で可。その他課題等 は立教時間・Blackboard を利用。
②オンライン演習形式(双方向):Hangouts Meet による双方向のリアルタイム・ミー ティング形式 : 教材・課題の提示は立教時間・
Blackboard を利用。Hangouts Meet の運用 で,受講生をグルーピングすることも可能。
③オ ン ラ イ ン 課 題 等 形 式 : 立 教 時 間・
Blackboard を利用した課題提示,理解度確 認テスト等。
この時期の教職課程の打ち合わせなどで は,オンライン授業のイメージが浮かばない,
Han gouts Meet とはなんぞや?,立教時間も Blackboard もフルに活用したことが無い,と いった話題が出ている状況であった。そして 3 月 23 日には,文学部長が「文学部の 2020 年度 春学期授業実施方針」を教授会構成員に提示し,
オンライン授業となった際に「不開講」を出さ ないこと,そのために兼任講師を含めて,全学 のオンライン授業方針の①~③について,どの 方法を使うのか,その方法の説明と技術的習熟 の対応,学生の PC や通信手段など学習環境を 確認してほしいこと,新入生に対してのサポー トなどを各学科で対応してほしい旨の依頼がな された。この日以降,教授会および学部運営会 議のメーリングリストは,2020 年度春学期の オンライン授業対応のメールがもの凄い量で飛 び交うことになった。どの教員にとってもオン ライン授業はおろか,学習支援システム(LMS)
を使う授業はほぼ初めてのことゆえ,程度の差 があっても不安を拭い去ることはできないこと の証左であったのだろう。このようなかで,メ
ディアセンターはオンライン授業の技術的サ ポートとして,全学の教員対象の「オンライン 授業講習会」や Hangouts Meet(現在は,Go
ogle Meet)の接続テストなどを開催し,また 3 月 25 日には,WEB 上に解説サイトやヘルプ デスクを開設した。
学外に目を向けると,本来ならば 2019 年度 卒業式の日である 3 月 25 日に小池百合子東京 都知事が「今週末の外出自粛要請」と「平日の 在宅勤務推奨」を記者会見で表明した。大学と しては当面,4 月 11 日まで在宅勤務の延長が 決まった。4 月 1 日には,埼玉県教委より 8 月 末まで介護等体験実施はしない,9 月 1 日以降 の体験実施に関しては COVID-19 の感染状況 を踏まえ 7 月末を目途に実施可否について検討 する旨の通知がなされた。結果的には,2020 年度の介護等体験はオンライン教材を視聴して 代替することとなった。
大学は 4 月 3 日に 2020 年度春学期は 4 月 30 日から全ての授業をオンラインで実施するこ と,オリンピック・パラリンピックの延期に 伴い春学期の授業回数は 12 回とすること,試 験は全てレポート試験とすることを確定し,
WEB や一斉メールなどで学生に通知した。こ の時点から教職課程では,春学期開講の授業は 全て教員免許状取得に関わる科目であり不開講 となることは許されないことであり,そのため には科目担当教員へのサポート体制をどのよう にしていくことが必要であるかについて協議 し,全学の方針に基づくオンライン授業の方法 を周知していくことを確認した。
そして文科省は,4 月 3 日に教職課程認定大 学長あてに総合教育政策局教育人材政策課より
− 95 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
「令和 2 年度における教育実習の実施に当たっ ての留意事項について(通知)」を発信した。
骨子は,教育実習の時期を必要に応じて実施時 期を秋以降とすることも検討していただきた い。大学設置基準等において,実習は 30 時間 から 45 時間までの範囲で大学が定める時間の 授業をもって 1 単位としていることから,教育 実習の授業時間数や実施期間の設定に当たって は,教育実習生を受け入れる学校等の状況も踏 まえ弾力的に検討していただきたい,というこ とである。つまり,教育実習時期と期間の弾力 的運用の検討についての方針が示されたのであ る。この通知をもとに,教職課程は春学期期間 に教育実習を予定している実習校に実習時期の 変更打診の依頼をおこなった。また同日,文科 省の総合教育政策局教育人材政策課より「令和 2 年度における介護等体験の実施にあたっての 留意事項について(通知)」が発せられ,2020 年度の介護等体験は,教育委員会や社会福祉協 議会等と協議の上,必要に応じて実施時期を秋 以降等とすることも検討する旨の方針が示され た。
例年と異なる新年度を迎えた我々に,大学 チャプレン団は 3 日に「立教学院で働くすべて の勤務員の皆さまへ」のメッセージを発信し,
先の見えないまま授業や校務運営をする不安と 例年と異なる準備に忙殺される勤務員に向けて 祈りがあることそして,それぞれが「祈りの時 間」を持つことの奨励が伝えられた。
そして迎えた 4 月 7 日,安倍晋三首相(当時)
より改正新型インフルエンザ等対策特別措置法 第 32 条第 1 項の規定に基づき緊急事態宣言が 4 月 7 日から 5 月 6 日までの1か月間とし,埼
玉県・千葉県・東京都・神奈川県・大阪府・兵 庫県及び福岡県の7都府県に発出された。のち の 4 月 16 日には対象が全国に拡大された。そ して 5 月 14 日に北海道・東京都・埼玉県・千 葉県・神奈川県・大阪府・京都府・兵庫県の 8 都道府県を除く 39 県で緊急事態宣言を解除,
その後 5 月 21 日には、大阪府・京都府・兵庫 の3府県を,そして発出から約 1 ヶ月半経過し た 5 月 25 日に東京都・埼玉県・千葉県・神奈 川県の都県と北海道の緊急事態宣言が解除され た。緊急事態宣言解除にともない,全国の小中 高は地域の感染状況を鑑みつつ,3 密を避ける 形で分散登校をするなど徐々に再開しはじめ た。
教育実習に関しては,約 9 割の実習校が 8 月 末からの 2 学期にかけて実施と期日変更がおこ なわれた。そして,8 月 11 日に文部科学省総 合教育政策局から「教育職員免許法施行規則等 の一部を改正する省令の施行について(通知)」
が通知された。趣旨は,2020(令和 2)年度に 限り教育実習の科目の総授業時間数の全部また は一部を大学等が行う授業により行うことがで きること,またいわゆる学習指導員などとして の活動を教育実習の科目の授業として位置付け ることも可能であるというものである。この文 科省通知に該当する実習校は,教育実習を中止 する学校が 4 校,実習期間の短縮をおこなう学 校が 19 校であった。そのため 8 月 11 日の通知 に基づき該当する学生 25 名については,秋学 期に大学での教育実習代替措置を講じることが 求められることとなった。
そして秋学期の授業について教職課程は,教 育実習に関連する科目,すなわち「教職実践演
− 96 − 教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
習(中 ・ 高)」,「教科教育法演習 1」,「教科教 育法 2」についてはオンライン授業と対面授業 の併用にて実施することとし,その他の科目は オンライン授業とすることとなった。また「教 科教育法演習 1」は模擬授業を中心とする授業 となるため,オンラインで模擬授業がおこなえ るように配信機材やビデオカメラなどの授業環 境整備を夏期休業期間中におこなった。
3.教職課程の対応
教職課程としては,まず春学期の授業を残す ことなく開講し,かつ翌年ないし翌々年に教育 実習に参加する学生たちに必要な知識と体験を 教授するためにもオンライン授業を確実におこ なう方法を模索し,実施することとした。次に,
2020 年度教育実習生に対して,実習校との連 絡調整をはじめ,感染させない/感染しないよ うに「感染予防ガイドライン」を作成し,教育 実習がおこなえるような体制を整えた。あわせ てキャリア支援として毎年おこなっている「教 員採用試験模擬面接セミナー」をオンラインに て実施する方法を検討することとした。さらに,
文科省の方針により教育実習が中止ないし期間 短縮となった学生に対して教員免許状取得が可 能な大学内での特例措置をおこなう方法を検討 し,実施した。
①オンライン授業の実施を確保する
学生のオンライン授業の受講環境については 各学部で調査し,対応していることとし,4 月 初頭から教職課程としては兼任講師を含め教職 課程科目担当教員が授業を実施できることに力 点をおいた。オンライン授業は,通常の授業と
異なり,教員が授業配信用の URL を設定し,
それを開いておかないと学生は授業に参加でき ない。また PowerPoint や資料提示など教員が 自分のPCを操作しなければ,学生に提示する ことができない。したがって,教員向けの説明 マニュアルを用意することは必須となった。そ の際には,ベースラインにPCで office suite の操作ができ,インターネットに接続し本学の ヴァーチャルキャンパスである VCampus に アクセスすることが可能であるというPCスキ ルの教員を想定した。そして使用する用語や概 念はこのベースラインをもとにして説明マニュ アルを作成し,適宜メディアセンター,教務部,
大学教育開発・支援センターが大学 WEB 上に アップした説明を参照しつつ授業運営が可能と なることを目指した。さらに,授業途中でオン ライン授業実施に際して疑問が出た際にそれを 受け取る受け皿として「質問フォーム」を設置 し,適宜回答を「Q&A集」として共有するこ ととした。「Q&A集」は秋学期終了段階で第 7 集までリリースした(資料参照)。
ま た, 春 学 期 授 業 開 始 前 に は,Hangouts Meet の,秋学期授業開始前には Zoom の接続 テストをおこない延べ 16 名の兼任講師が参加,
その場でオンライン授業の意見交換もおこなう ことができた。また春学期初頭は Zoom の使用 が直前まで使用できなかったこともあり,授業 方法としては,春学期は Hangouts Meet を使 用した「①オンライン講義形式(一方向)」で 実施する科目が半数以上を占めており,残りは
「③オンライン課題等形式」の亜型,現時点で の表現では「オンデマンド型授業」となるが,
授業動画をクラウド(立教時間,Blackboard,
− 97 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
Google Classroom 等)にアップし学生が視聴,
リアクションペーパーを提出する方法の授業を おこなっていた。そして,秋学期は Zoom を使 用して「①オンライン講義形式(一方向)」お よび「②オンライン演習形式(双方向)」でお こなう授業がほとんどの科目でみられた。ま た,「各教科教育法演習 1」でおこなわれる模 擬授業については,開放制教員養成においては 数少ない教育実習前の授業者体験を学生がおこ なう授業であるため,担当教員がそれぞれ工夫 を凝らした姿が浮かび上がってくる。授業者役 学生と科目担当教員がキャンパスから模擬授業 を配信し,その際に模擬授業用に配信環境整備 によって設置した大型ディスプレイに Zoom の ギャラリービューで生徒役学生を大きく映しな がら発問をしたり,疑似対面授業をおこなうな どはひとつの例であろう。
② 2020 年度教育実習の円滑な実施
例年どおり教育実習校との連絡調整は,教育 研究コーディネーター(以下,教研 C)と教育 研究嘱託(以下,教研嘱託)がおこなうが,今 年度は学生に書類を配布できない,窓口で書類 回収ができないという状況となり,さらに在宅 勤務間中は,実習校との電話連絡ができないと いう状況におかれた。また実習関連の書類等 は,オリエンテーション等で配布,窓口に提出 という形式をもとにつくられているため,すべ て紙ベースの印刷物となっている。そこで,教 研 C と教研嘱託によって,配布・提出書類を 可能な限り,ファイルで配布し,Google Form 等を利用して提出するシステムに急遽,変更す ることが 4 月から 5 月初旬にかけておこなわれ
た。そして実習校との連絡は,実習生を介して ないしメールでおこなうことで対応することと した。学生からの問い合わせについては,「質 問フォーム」を用意し,そのフォームの回答を
「Q&A集」として大学が設置した「教務臨時 掲示板・教職課程」にアップし,全体に周知す る方法をとった。
教育実習校から訪問指導の要請があったのは 秋学期に 2 校であり,教職課程教員が校務と勘 案して対応することとし,そのうち 1 校につい て訪問指導をおこなった。また教育実習生には,
「感染防止ガイドライン(教育実習版)」を示し,
自身の健康状態チェック及び感染防止策を十分 にとることを指示した。教育実習期間中に教育 実習校で COVID-19 感染が発生したと報告が あったのは 3 校であり,1 校は実習生が 2 週間 の自宅待機を要請されることになった。
教育実習が秋学期に期間変更となった影響 は,例年 7 月におこなわれる首都圏の公立学 校教員採用試験受験時に,中高での授業体験 が全く無いまま臨まざるを得なかったことがあ げられる。近年,模擬授業を課したり,面接の 中で場面指導を問う自治体も多いが,受験した 学生たちは,大学での模擬授業体験や座学で学 んだことのみで採用試験に臨まなくてはならな かったわけである。例年8月に教員採用試験2 次試験の面接試験に向けて実施している「教員 採用試験模擬面接セミナー」は Zoom を使用し て,集団討論,集団面接,個別面接を参加希望 学生 25 名を対象に実施した。教育実習をおこ なわないまま面接で場面指導を語る不安のある 学生には,高校での管理職経験のある教員によ る教室での生徒の言動に対する具体的な対応方
− 98 − 教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
法のアドバイスは安心感や自信を与えることに なったのではないかと推測している。また学生 の通信環境により途中で接続が切れる学生がい る一定数いることやブレイクアウトセッション を頻繁に行う場合はPCスキルの高い教員がホ ストとしてシステム管理を専従でおこなう必要 性も垣間みえた。この経験は,「教職実践演習
(中 ・ 高)」のクラス合同授業(受講対象 189 名)
の運営にも活かされることになった。
さらに秋学期の「教職実践演習(中 ・ 高)」
の授業期間に教育実習が重複し,9 月から 11 月初旬にかけてはクラス全員がそろうことが余 りなかったこともあげられる。なお教育実習期 間の変更に伴い教育実習を辞退した学生はほぼ 見られなかった。
「教職実践演習(中 ・ 高)」は,教育実習体験 をもとにしながら教職課程履修の総括をおこな うことを目的とする科目であり,本学ではクラ ス別授業とクラス合同授業の 2 つで構成してい る。2002 年度のクラス合同授業は,「COVID-19 下での学校」とテーマを設定し3回の授業すべ てをオンラインにて実施した。
第1回は,教育実習生の立場で体験した CO
VID-19 下の授業や HR 指導,部活指導につい て自分の体験を語り他者の体験を取り入れなが ら,教育実習体験を深めることをおこなった。
第2回は卒業生教員 4 名(公立中,公立高,私 立中高,私立高校の教諭)に COVID-19 下で 4 月以降,2 学期終了時までの授業,HR 指導,
部活指導など時系列的にかつ生徒の状況と対応 方法など自分自身の体験を報告してもらった。
都内島嶼部や九州など遠隔地に勤務する卒業生 教員に参加が可能となったのは,オンラインな
らではの利点を活用したといえよう。そして最 後の第3回は,公立および私立学校の副校長・
教頭 2 名に COVID-19 下での学校マネジメン トの観点から,生徒及び教職員の安全確保,授 業時間確保,保護者対応などを報告していただ いた。この 3 回の授業をとおして,学生自身の 3週間の教育実習体験を補完する視点を現職の 教諭および管理職それぞれの立場からの実践報 告をうかがい,COVID-19 下で「学びを止め ない」ための中学校高等学校の教育実践を立体 的,複層的に理解することに繋がったと言えよ う。
③教育実習特例措置
対象となる学生は,教育実習中止学生(以下,
中止学生)が 6 名,教育実習期間短縮学生(以 下,短縮学生)が 19 名である。文科省の大学 における補充等による単位認定基準を満たすた めに,教職課程教員全員が担当する補充授業と 秋学期 2 単位科目の「教職特別演習 B」を設定 した。そして中止学生は,補充授業 60 時間と
「教職特別演習 B」(2 単位)の受講と単位取得,
短縮学生は補充授業 30 時間の受講を課すこと とした。
補充授業については,「HR 実習」と「授業 実習」を対面およびオンラインの授業で実施し た。しかし学生も教職課程教員も秋学期の通常 の時間割では授業等が既に予定されているなか での補充授業や講義の実施である。したがって 学校休校日や平日の 5 限以降,土曜 4 限以降を 利用して授業を実施せざるを得なかった。「HR 実習」では,学級通信をもちいた学級びらきを 学活の時間でおこなうことと,朝学活の際に遅
− 99 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
刻指導をおこなうことを想定した。オンライン で説明や学生間のディスカッションをおこない ながら,学級びらきと朝学活は対面授業として 実施した。短縮学生は,教育実習 2 週間の経験 値があり,それをもとに「教育実習前に体験し ておきたかった」といった感想を残した学生が 複数いた。これは教員間でも話題となったこと であり,今後の教職課程教育のなかに取り込ん でいきたいことのひとつである。
中止学生は「HR 実習」に加えて「授業実習」
をおこなった。これは中学校の教科書の単元を 指定し,それに基づく授業案作成とワークシー ト等の教材作成などをおこない,それをもとに 授業をおこなうという設えである。オンライン で授業準備をおこない,対面で授業実習をおこ なうという形式は「HR 実習」と同じである。
学生の感想としては,やはり実際の生徒を前に して作った授業案や教材を使って授業をしてみ たかった,という我々にとっても切なさが残る ものが散見した。
このほかにも 3 年次生対象の「教科教育法演 習 2」は,立教池袋中高および立教新座中高の 教諭に各教科科目に関する授業案作成の指導を 受ける科目である。例年は対面で単元理解や授 業案作成のポイントなど講義を受け,学生が授 業案を作成する課題が課される。そして提出さ れた授業案を各校教諭が添削し,対面の授業で 講評と実際の授業で活かせる授業案作成のアド バイスをいただくことになっている。3 年次の 教科教育法での学びは次年度の教育実習に反映 されるため,オンラインであっても対面と同等 の教育効果が求められる。したがって,この科 目をオンラインでどのように実施するかという
点については両校教諭と科目担当教員が事前調 整を複数回おこないながら,学生にとって教育 効果の高い方法を編み出していった。
2020 年度の予期せぬ状況への教職課程の対 応は,COVID-19 により学生に不利益を生じ させないという点で教員の意思が一致し,それ をもとに教職課程主任が適切な差配をおこなっ たうえで各科目担当教員がオンラインでの科目 運営の方向性を示したことによるものと言えよ う。オンラインによる授業や会議,各種提出物 のオンライン提出など,技術的には今後も活 用可能な点も少なくない。これは,COVID-19 による発見であったとも言えよう。しかし,場 の雰囲気や関係性のニュアンスといった不可視 ななにかあるものや,偶然性の産物などは,オ ンラインに象徴されるデジタル空間では分かち 合うことが難しい,そんなこともあぶり出され た。
4.終わりに
2020 年 1 月 7 日 に 報 道 が 始 ま っ た COV
ID-19 もほぼ 1 年が経過しようとしている。こ の 1 年の時間は長かったような短かったような 不思議な時間体験である。そして今までのあた り前の慣習的行為が通用しなくなり,距離をと りながらの協働関係や教授関係を作り出すリ モートワークを強いられ,知らず知らずのうち にそのノウハウを習得してきた 1 年でもあっ た。オンライン授業や現在のシステム内でオン ラインでの書類配布と回収などこの 1 年の成果 を今後,活かしていくことは考えなくてはなら ない。しかし,以前と同じような対面授業が中 心となり,学生の登校が全面的に再開した際に
− 100 − 教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
は,学生と教職課程とのタッチポイントを意図 的に作り出し,学生が見知らぬ他者とコミュニ ケートする機会,あるいは学生対応のフロント ラインである教研 C や教研嘱託が学生との窓 口での関わりをとおして学生を把握する機会は 残していかなくてはならないであろう。これは,
教育実習や介護等体験など学外での学習機会が 必須である教職課程カリキュラムの特性上,不 可欠なことである。
最後に 2020 年度の COVID-19 下で教職課程 運営を共におこなってきたスタッフの名を記し ておきたい。
教員:森田 満夫(2020 年度教職課程主任),
下地 秀樹(2020 年度秋学期研究休暇),
奈須恵子,逸見 敏郎,
岩瀧 大樹(2020 年 4 月着任),
青木 猛正
教育研究コーディネーター:
阿部 真弓,吉村 久美 教育研究嘱託:
坂本 恵美子,中野 直美,千葉 幸乃
文責:逸見 敏郎
参考
文部科学省文書は,以下のサイトの「新着 情報」に時系列的に掲出されている。
・文部科学省 新型コロナウイルスに関連 した感染症対策に関する対応について https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavir us/index.html
社会的情勢については,以下のサイトの
「ニュースを見る」に時系列的に掲出されて いる。
・NHK 特設サイト 新型コロナウイルス https://www3.nhk.or.jp/news/special/coron avirus/
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 101 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 102 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 103 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 104 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 105 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 106 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 107 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 108 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 109 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 110 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 111 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 112 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 113 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 114 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 115 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 116 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 117 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 118 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 119 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 120 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 121 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 122 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 123 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 124 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 125 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 126 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 127 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 128 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 129 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 130 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 131 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 132 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 133 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 134 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 135 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 136 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 137 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 138 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 139 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 140 −
COVID-19 下での教員養成 -本学教職課程の取り組み-
− 141 −
教職研究 第 35 号(臨時増刊)(2021)
− 142 −